(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び
図2は本発明の苗移植機の典型例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。搭乗オペレータが乗用型田植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0024】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10、10及び左右一対の後輪11、11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13、13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13、13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10、10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18、18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18、18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11、11が取り付けられている。
【0025】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧無段変速装置(HST)
Hを介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13、13に伝達されて前輪10、10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18、18に伝達されて後輪11、11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0026】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10、10を操向操作するハンドル34が設けられており、この領域を操縦部33とする。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(
図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0027】
昇降リンク装置3は平行リンク機構であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41、41を備えている。これらリンク40、41、41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0028】
メインフレーム15に固着した支持部材(図示せず)と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧式シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0029】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植え付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ64(
図1)等を備えている。
【0030】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56、56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、56、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、56、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植え付けられる。各フロート55、56、56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧式シリンダ46を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0031】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55、56、56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体76(
図1)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0032】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(第1ロータ27aと第2ロータ27bの組み合わせを単にロータ27ということがある)が取り付けられている。
また、苗載せ台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65bと支持ローラ65aからなる枠体構造物65をレール状にして左右方向にスライドする構成である。
【0033】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗載せ台38、38が機体の前後に張り出す位置と上下に並んだ位置とに回動可能に設けられている。
【0034】
一方の機体側面にある第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b、第3予備苗載せ台38cは上下三段に配置され、又は同一平面に配置される。
予備苗載せ台38は走行車体2のフロアステップ35の下部に基部側を配置した支持機枠49a、49bに支持され、3つの移動リンク部材39を介して前記した上下三段(積載状態)又は同一平面上(展開状態)に配置される。
【0035】
さらに、切替駆動装置70により予備苗載せ台38a、38b、38cを展開状態と積載状態とに切り替え操作する切替操作手段として切替スイッチ63(ボタン、レバーでもよい)(
図1、
図2)を座席31近傍に設けている。
【0036】
本実施例の油圧無段変速装置HSTの油圧回路の構成を
図3に示し、ポートディスクの正面図を
図4に示し、油圧無段変速装置HSTの側断面図を
図5に示し、油圧無段変速装置(HST)の平断面図を
図6に示す。また
図7にシリンダブロックとポートディスクの間に装着する弁板の正面図を示し、
図10(a)には
図3の油圧無段変速装置のトラニオン軸とクランクアームと斜板の一部の拡大断面図を示し、
図10(b)には
図10(a)のA−A線矢視図を示す。また、
図8(a)は
図7の弁板に移動溝を設けた場合の正面図であり、
図8(b)、
図9(a)、
図9(b)は
図8(a)の丸枠内のそれぞれノッチ数を変えた場合の正面図である。
【0037】
図3に示す油圧回路66と油圧回路67で閉回路を構成し、
図5に示す可変容量型油圧ポンプA側の斜板69が、正転側に傾斜角を増すと、油圧回路66を経て固定容量型油圧モータB側へ働く油圧が高圧となり、このとき油圧回路66の反対側の油圧回路67は、低圧となって固定容量型油圧モータB側から排出されるオイルが可変容量型油圧ポンプAへ吸入されて行く。また、
図4には弁板(ポートディスク)86の正面図を示す。
【0038】
図5、
図6に示すポートブロック71に可変容量型油圧ポンプA及び固定容量型油圧モータBを内装するHSTケース72及びブーストポンプ73(
図3参照)のケース等を重合させて一体的構成とし、軸方向が互いに平行な入力軸74と出力軸75を軸受けする。この入力軸74の回りに油圧ポンプA及びブーストポンプ73(
図3参照)のトロコイドロータ(図示せず)等を設け、出力軸75の回りに油圧モータBを設ける。
【0039】
これら油圧ポンプA及び油圧モータBは、入力軸74と出力軸75の回りに多数のシリンダ47を、軸方向と平行に配設してシリンダブロックを構成し、各シリンダ47には軸方向に摺動するピストン48を設けている。この各ピストン48は、先端部をジョイントディスク77の各ボールジョイントによって揺動自在に支持し、斜板69のスラストプレート78に対して、軸74、75回りに回転自在に設ける。
【0040】
該シリンダブロックは、入力軸74と出力軸75等と共に一体的に回転するが、ピストン48と共に回転するジョイントディスク77及び摺動案内されるスラストプレート78やこれと一体の斜板69は、HSTケース72と一体の球座79の回りに傾斜角が変更自在であり、このうち、油圧モータB側の斜板69の角度は一定として、油圧ポンプA側の斜板69の角度をコントロールレバー等によって操作して制御作動することにより、この油圧ポンプA側のピストン48の往復移動のストローク量を変更し、これによって前進側の油圧回路66と後進側の油圧回路67を経て相手側の油圧モータBのピストン48の一定ストローク量のもとにおける回転数を増域変更して、変速する。なお、前記前進側の油圧回路66と後進側の油圧回路67の一部はポートブロック71の内部に設けられている。
【0041】
従って、斜板69が入力軸74に対して直角状態にあるときは、この入力軸74側のシリンダ47が回転されても、各ピストン48は軸方向には往復移動しないから、出力軸75側への伝動は行われず中立状態にある。また、この油圧ポンプA側の斜板69が、正転側に傾斜角を増すと、このピストン48のストロークも大きくなり、油圧回路66を経て油圧モータB側へ働く油圧も高圧となる。このとき油圧回路66の反対側の油圧回路67は、低圧となって油圧モータB側から排出されるオイルがポンプA側へ吸入されて行く。従って、モータBによる出力軸75は、中立状態から正転側高速状態に順次増速される。
【0042】
また、逆に油圧ポンプA側の斜板69の角度を中立状態から、逆転側へ増すと、油圧回路67が高圧となって油圧モータB側へオイルが流れ、油圧回路66が低圧となってポンプA側へ吸入されて、この結果出力軸75は逆転方向に無段変速されることとなる。前記ブーストポンプ73は、タンクポートTから油圧回路66、67内へオイルを補給するもので、オイルフィルタ80、メインリリーフバルブ81、フィールドバルブ(チェックバルブ)82a、82b及びニュートラルバルブ83等を経て各油圧回路66、67に連通する。これら両油圧回路66、67間に亘って高圧リリーフバルブ85が設けられている。
【0043】
このように、ポンプA及びモータBのシリンダ47のブロックは、各入力軸74、出力軸75と共に回転するが、各シリンダ47のブロックのポートブロック71側の端面には、各シリンダ47のシリンダポート90、91(
図4参照)が等配角間隔で配設されて、ポートブロック71に対して取り付けられた弁板(ポートディスク)86に回転摺動する。この弁板86には、中心部に入力軸74と出力軸75の挿通される軸穴87が形成され、この軸穴87の外周に該各シリンダポート90、91の回転面に沿って、しかも所定の回転角度に亘って円弧状長穴のポート88、89を形成している。
【0044】
各シリンダポート90、91は、油圧回路66、67の形成されるポートブロック71とポート88、89を介して連通するが、斜板69の操作角が正転側変速位置にあるものとして、一側のポート88を油圧吐出側の高圧とすれば、他側のポート89が油圧吸入側の低圧となる。また、斜板69の操作角が中立位置を越えて逆転側変速位置にあるときは、吐出側と吸入側とが反転される。
【0045】
前記弁板(ポートディスク)86の下死点における圧力遷移区間(ロ)の中央部にリリーフポート(図示省略)を設け、このリリーフポートに通ずるリリーフバルブ(図示省略)をポートブロック71に取り付ける。これによって、油圧ポンプA又は油圧モータBのシリンダブロックの各シリンダポート90、91が、高圧域側のポート88から圧力遷移区間(ロ)を経て、低圧域側のポート89へ移るとき、シリンダポート90はポート88との連通状態から圧力遷移区間(ロ)のリリーフポートへ切換えられて、リリーフバルブによる油圧力吸収が行われる。従って、このときの油圧力が高過ぎるときは、リリーフバルブによって緩和吸収されて、続く低圧域のポート89への切換において、油圧力低下が円滑に行われることとなる。
【0046】
このようなリリーフポート及びリリーフバルブは、油圧ポンプAと油圧モータBとの両方に跨るポートブロック71に設けてもよく、いずれか一方の弁板(ポートディスク)86に設けてもよい。
【0047】
また、調整ねじ94は、前記ケース72に対して入力軸74の方向へ螺挿し、斜板69をこの入力軸74方向に沿って移動調節することにより、シリンダ47との間隔を変更調節する。このとき入力軸74と直交方向のトラニオン軸95が設けられていて、このトラニオン軸95の先端にトラニオン軸95と一体のクランクアーム96のピンスライダ98を、斜板69に形成したローラ溝69aに係合させて、トラニオン軸95を回動操作することによって、ピンスライダ98を揺動させて、斜板69の傾斜角度を操作する。
【0048】
図3に示すように本実施例の作業車両は、エンジン20からの動力を入力する入力軸74と連動して複数の並列配置されたピストン48の往復運動により吐出する作動油の量と吐出方向を調整する可変容量型油圧ポンプAと、該油圧ポンプAの吐出油量と油の吐出方向に応じて出力軸75の回転速度と方向を変更する固定容量型油圧モータBとを油圧閉回路66、67を介して接続した静油圧式無段変速装置Hを備えている。
【0049】
また
図5と
図6に示すように油圧閉回路66、67の一部を内部に備え、入力軸74と出力軸75に直交する方向にポートブロック71を配置し、該ポートブロック71と油圧ポンプAを内装した油圧ポンプ側シリンダ47のブロック内部及び油圧モータBを内装した油圧モータ側シリンダ47のブロック内部の間をそれぞれ接続して前記油圧閉回路66、67を形成している。
【0050】
さらに、ポートブロック71と油圧ポンプA側のシリンダ47のブロックの間及びポートブロック71と油圧モータB側のシリンダ47のブロックとの間に
図4及び
図7に正面図と
図5、
図6に僅かに示す油圧閉回路形成用の空間部88、89を有する薄板状の弁板86を設けている。
【0051】
本実施例では弁板86には油圧ポンプA側のシリンダ47からの前記油圧閉回路66、67を流れる作動油を空間部88、89に向けて噴出する移動溝(ノッチ)84を少なくとも2個設けていることを
図8と
図9に示す。
図8(a)は
図7の弁板にノッチを設けた場合の正面図であり、
図8(b)、
図9(a)、
図9(b)は
図8(a)の丸枠内のそれぞれノッチ数を変えた場合の正面図である。
図8(a)に示すように、例えば円弧状の6つの空間部(長孔)88、89が弁板86の中心Oの回りに同一円周上に設けられている。
【0052】
図8(b)に示すように弁板86に作動油を走行速度の増減操作に合わせて段階的に噴出させるように形成した2個並列配置したノッチ84から空間部88、89内に向けて作動油を噴出して、空間部88、89内で噴出された作動油同士がぶつかり合う角度に各々のノッチ84の噴出角度を設定すると、作動油同士をぶつけ合わせて噴流の勢いを弱めて、空間部88、89の壁面で作動油がぶつかった際に発生するおそれがあるキャビテーションが発生せずに、静油圧式無段変速装置Hの耐久性を従来以上に向上させることができる。
【0053】
また、こうして作動油の噴流が直接空間部88、89を形成する弁板86の壁面に当たることがないので、空間部88、89の形状が変化することを防止でき、作動油の噴出量が変化することもなく、静油圧式無段変速装置Hの出力が安定する。
【0054】
図8(b)と
図9(b)に示すように弁板86にノッチ84を偶数個設け、環状に配置した複数の空間部88、89がなす円の中心Oを通る対角線上の一対の空間部88、89に2個又は4個のノッチ84同士を隣接して設け、これら偶数個のノッチ84から噴出した作動油が弁板86の空間部88、89を形成する壁面に到達する前に空間部88、89内部で合流する噴出角度とした。
【0055】
偶数のノッチ84同士を複数の空間部88、89のなす円の中心Oを通る対角線上に配置し、ノッチ84から噴出する作動油が弁板86の空間部88、89を形成する壁面に到達する前に空間部88、89内部で合流するように作動油の噴出角度に設定したことにより、ノッチ84から噴出する作動油同士を空間部88、89の内部でぶつけ合わせて噴流の勢いを弱めることができるので、弁板86に形成した空間部88、89を形成する壁面で作動油がぶつかって生じる可能性のあるキャビテーションが発生せず、静油圧式無段変速装置Hの耐久性が従来技術より向上する。
【0056】
また、ノッチ84を複数形成したことにより、作動油の通過に必要な空間の体積を確保することができるので静油圧式無段変速装置Hの出力変更時に騒音や振動が生じることが防止され、作業者が不快感を覚えにくく、また操作性が従来に比べて向上する。
【0057】
弁板86の各空間部88、89を環状に配置し、
図9(a)に示すように空間部88、89に達するノッチ84を3個以上の奇数個設け、複数の空間部88、89のなす円の中心Oを通る対角線上の一対の空間部88、89に前記奇数個のノッチ84同士を隣接させて設け、該奇数個のノッチ84から噴出する作動油が各空間部88、89を形成する弁板壁面に到達する前に各空間部88、89内部で合流する噴出角度とした構成でも良い。
【0058】
この場合は、弁板86に環状に配置した複数の空間部88、89のなす円の中心Oを通る対角線上の一対の空間部88、89に前記奇数個のノッチ84同士を隣接させて設け、該奇数個のノッチ84から噴出する作動油が各空間部88、89を形成する弁板86の壁面に到達する前に各空間部88、89内部で合流する構成としたので、作動油の噴流の勢いを弱めることができ、また、奇数個のノッチ84から噴出する作動油が空間部88、89の端部にぶつかった際にキャビテーションが発生することが無く、静油圧無段変速装置Hの耐久性が従来技術より向上する。
【0059】
なお、上述のような、中央部のノッチ84を基準として他のノッチ84を形成する構成以外に、特定のノッチ84を基準とせず、各々のノッチ84の角度を噴き出す作動油が空間部88,89内部で合流する角度とする構成としてもよい。
【0060】
ノッチ84が奇数個あることでノッチ84全体の体積を確保することができるので、静油圧式無段変速装置Hの出力変更時に騒音や振動が生じることが防止され、作業者が不快感を覚えにくく、また操作性が従来技術より向上する。
【0061】
図10(a)には
図6に示すトラニオン軸95とクランクアーム96と斜板69の一部の拡大断面図を示し、
図10(b)には
図10(a)のA−A線矢視図を示す。
斜板69を操作するクランクアーム96とピンスライダ98の間に偏芯カム100を介在させている。偏芯カム100はクランクアーム96とピンスライダ98にそれぞれピン100aとピン100bを回動自在に挿入しており、この2つのピン100a、100bが互いに偏心した位置に設けられている。
【0062】
従って、トラニオン軸95の回動位置に応じてクランクアーム96が操作されると、偏芯カム100を介してその操作量がピンスライダ98に伝えられて、該ピンスライダ98が斜板69の溝62aを所定量だけスライドする。ピンスライダ98の所定量のスライドに応じて斜板69の傾斜角度が決まる。
【0063】
図12(
図6の矢印A方向から見た矢視図)と
図13(
図12の矢印B方向から見た一部透視矢視図をポートブロック71を取り外した状態)で示すように、トラニオンアーム95を設けた側で、且つポートブロック71寄りの位置にある静油圧式無段変速装置(HST)ケース72を貫通する貫通孔72aを設け、該貫通孔72aに第1磁力体(永久磁石)125を着脱自在に装着し、トラニオンアーム95に第2磁力体126を装着した構成を採用しても良い。
【0064】
この構成を採用することにより、HSTケース72のうち、トラニオンアーム95を設けた側で、且つポートブロック71寄りの位置に形成した貫通孔72aに第1磁力体125を着脱自在に設けたことにより、作動油内に混入した金属性の夾雑物を第1磁力体125により吸着させることができるので、第1磁力体125を外すと前記夾雑物の除去が容易に行え、静油圧式無段変速装置の作動性が従来以上に向上する。
【0065】
トラニオンアーム95に第2磁力体126を設けたことにより、第1磁力体125と第2磁力体126とが引き合う力を生じさせることができるので、静油圧式無段変速装置を中立に操作したときに、戻り抵抗によるトルクに打ち勝って中立位置に回動し、確実に出力が停止され、走行の停止が確実になる。
【0066】
また、本発明の作業車両には苗植付部4や苗植付部4に代えて播種機などの作業装置を昇降させる昇降リンク機構3を作動させる昇降シリンダ46と該昇降シリンダ46に作動油を供給する油圧バルブ機構Cを設けている。
【0067】
前記作業装置を昇降させる際、特に作業装置を下降させるときには、従来は前記油圧バルブ機構Cに作業装置下降速度制御を調整式のニードル弁を用いて行っていた。しかし作業装置の負荷の大きさにより、作業装置の下降速度にばらつきが生じ、その調整は難しかった。
【0068】
そこで、
図11に示すような油圧バルブ機構Cの油圧回路を設けた。
図11の油圧回路には昇降リンク機構3の下降時の負荷圧力を一定に保つ減圧弁105と作動油の通過流量を一定に規制するオリフィス106を設けたことに特徴がある。
【0069】
図11に示す油圧回路の油圧ポンプPから昇降シリンダ46に作動油を供給する油圧バルブ機構Cには分流弁109と分流弁切替弁110、昇降シリンダ46の昇降切替弁112及びチェックバルブ113を順次経由して昇降シリンダ46へ作動油が送られる。
【0070】
図11に示す油圧回路では昇降切替弁112における昇降シリンダ46の下降時の作動油の油路にオリフィス106を配置し、また減圧弁105には昇降シリンダ46の下降時における作動油が正常な油路を通るのではなく、分流弁109と分流弁切替弁110、昇降シリンダ46の昇降切替弁112及びチェックバルブ113を経由することなく減圧弁105から直接油タンクTに油を戻すことができる構成も備える。
【0071】
こうして昇降シリンダ46の下降時の油圧バルブ機構Cの負荷圧力を減圧弁105で一定に制御すると共に、オリフィス106で作動油の通過流量を一定に規制することにより、昇降リンク機構3の下降時に作業装置の重量によって下降速度が速くなることを防止することができる。これにより作業者の意図よりも早く作業装置が下降して地面に衝突したり、作業高さが乱れたりすることが防止される。
【0072】
なお、油圧ポンプPの出口の油路にはリリーフバルブ115が設けられ、また昇降シリンダ46の直前の油路には、昇降シリンダ46の伸張時、即ち苗植付部4が下降するときに閉じる逆止弁114を減圧弁105と並列位置に配置しているので、昇降シリンダ46の収縮時、即ち苗植付部4が上昇するときには作動油が逆止弁114を自由に通過する構成となり、作動油の流動速度が速く、苗植付部4の上昇が素早く行われるようになる。
【0073】
これにより、苗植付部4の上昇時に油圧が不安定になり、苗植付部4が圃場面から離間するタイミングが遅くなることが防止され、苗植付部4の下部が破損したり、旋回時等に圃場面を荒らして苗の植付深さに影響を与えることが防止される。
【0074】
また、減圧弁105と逆止弁114はチェックバルブ113とシリンダ46の間に配置した。こうしてチェックバルブ113で保持する圧力が一定になることで、作業機が下降時にチェックバルブ113を押し開くパイロット圧力の設定が容易になる。
【0075】
図14(a)にフロントカバー部分の要部側面図、
図14(b)にフロントカバー部分の要部平面図に示すように、フロントカバー32の内部からフロアステップ35に広がる燃料タンク117において、燃料タンク117の給油口117aを上面左後方に設ける。
【0076】
図14(a)の実線位置から
図14(b)の実線位置まで、ホース118を仕切板119の左後方の角部まで伸ばしてホース118にキャップ121を設ける。ホース118とキャップ121の周辺を囲む仕切板部分は別体とし、ホース118に固定する。さらにこの別体とした仕切板122の後方内側には取っ手122bを設け、別体仕切板122の前方に鉛直回動軸122aを設け、該回動軸122aを中心にホース118、キャップ121、別体仕切板122が燃料タンク117との連結部で水平に回動するようにした。
【0077】
こうして今まで、燃料タンク117の給油口117aがフロントカバー32内にあった場合にはフロントカバー32の下に潜って給油しなければならなかったが、上記構成により、その欠点が解消され、給油口117aが上方に開放される位置に引き出すことができ、給油作業が容易になり、また通常時には給油口117aがフロントカバー32内に収納できるので、作業の邪魔にならない。
【0078】
図15(a)は操縦部付近の要部側面図であり、
図15(b)は座席31を折り曲げて肥料タンク60に肥料袋Rから肥料を補給する様子を示す操縦部付近の要部側面図である。
【0079】
座席31は
図15(a)に示すように
第1折り曲げ支点31a
と第2折り曲げ支点31b
を設け、肥料タンク60に肥料袋Rから肥料を補給するときには、
図15(b)に示すようにハンドル34を下向きに傾斜させた後、その上に座席31の一部が重なるように前側に倒して、座席31上に肥料袋Rを載せる。このとき座席31の折り曲げ支点31a、31bはロックしておく。そして肥料袋Rを載せた座席31をその支持部31cを中心に180度回転させて肥料袋Rを肥料タンク60の上方に移動することで、楽に肥料を肥料袋Rから肥料タンク60内に移動させることができる。