(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、超臨界二酸化炭素中で、
シリコーンオイル又はフッ素オイルであるオイルと共にシラン系疎水化処理剤を含む混合物によりシリカ粒子の表面を表面処理する工程を有する。
【0015】
ここで、未処理のシリカ粒子は、親水性が高く、樹脂への親和性や粉体への付着分散性が悪いことから、しばしば各種シラン系の処理剤やオイル(例えばシリコーンオイル)などの表面処理が施されて使用されている。特に、オイル(特にシリコーンオイル)により表面処理されたシリカ粒子は、疎水性が高まり易く、有利である。
【0016】
しかしながら、オイルは、シラン系の処理剤に比べ比較的粘度が高いことから、スプレードライや従来の湿式処理によって表面処理を行うと、オイルむらが発生し易く、シリカ粒子の表面に対してより均一近い状態での表面処理を施すことが難しい。また、これに比べ、シリカ粒子が凝集し易く、粗粉が発生することが多くなる。
【0017】
そこで、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、超臨界二酸化炭素中で、オイルによりシリカ粒子の表面を表面処理する。これにより、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、粗粉の発生を抑制し、且つオイルによるより均一近い状態での表面処理が実現される。
この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0018】
オイルによりシリカ粒子の表面を表面処理する際、超臨界二酸化炭素中で行うと、超臨界二酸化炭素中にオイルが溶解した状態となると考えられる。超臨界二酸化炭素は界面張力が極めて低いという特性を持つことから、超臨界二酸化炭素中に溶解した状態で、当該オイルが超臨界二酸化炭素中で拡散すると考えられる。このため、比較的粘度が高いオイルであっても、シリカ粒子の表面全体により均一近い状態で付着すると考えられる。これに加え、拡散したオイルは、超臨界二酸化炭素と共に、シリカ粒子の表面の孔部の深くまで拡散して到達し易くなるものと考えられる。これにより、シリカ粒子の表面のみならず、孔部の奥深くまで、表面処理がなされると考えられる。
このため、超臨界二酸化炭素中で、オイルによりシリカ粒子の表面を表面処理すると、より均一に近い表面処理が実現されると考えられる。
【0019】
また、オイルが超臨界二酸化炭素中で拡散するため、シリカ粒子の表面全体にオイルが接触、つまりシリカ粒子同士の間にオイルが介在した状態となるため、オイルによる表面処理中、シリカ粒子同士の凝集が発生し難くなると考えられる。
【0020】
ここで、オイルにより表面処理されたシリカ粒子の利点は、高温高湿環境と低温低湿環境との摩擦帯電差の抑制、圧力がかかった際の粒子間凝集の抑制、樹脂との親和性向上できることである。特に、超臨界二酸化炭素中でオイルにより表面処理されたシリカ粒子は、大気中処理したシリカ粒子等と比較して遊離オイルが少量であるが、オイル処理シリカ粒子と接触した材料系に十分なオイル量を付与することができる利点がある。これは、大気中での表面処理に比べてシリカ粒子の表面により均一に近い状態でオイル処理されるためだと考えられる。
【0021】
以上から、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、粗粉の発生を抑制し、且つオイルによるより均一近い状態での表面処理が実現されると考えられる。
【0022】
特に、ゾルゲルシリカ粒子(ゾルゲル法により得られたシリカ粒子)は、気相法により得られるフュームドシリカ粒子や、溶融シリカ粒子に比べ、その表面や孔内部にシラノール基を多く有することから、凝集が生じ、粗粉の発生も生じ易い傾向にあるが、表面処理を施すシリカ粒子としてゾルゲルシリカ粒子を適用しても、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、これが改善される点で有利である。
なお、表面処理を施すシリカ粒子としては、ゾルゲルシリカ粒子に限られず、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法により得られるフュームドシリカ粒子、溶融シリカ粒子であってもよい。
【0023】
一方、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法において、オイルにより表面処理する工程は、オイルと共にシラン系疎水化処理剤を含む混合物により、シリカ粒子の表面を表面処理する工程であることがよい。オイルとシラン系疎水化処理剤とを含む混合物により表面処理を施すことで、より効果的に、粗粉の発生を抑制し、且つオイルによるより均一に近い状態での表面処理が実現される。
【0024】
この理由は定かではないが、オイルとシラン系疎水化処理剤は互いに相溶するため、超臨界二酸化炭素中で共に拡散し、シリカ粒子の表面でシラン系疎水化処理剤が反応するときに、相溶したオイルもシリカ粒子の表面に付着すると考えられるためである。また、超臨界二酸化炭素の「臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つ」といった性質により、比較的低温(例えば250℃以下)で、シラン系疎水化処理剤の反応が進行し、遊離オイルが存在し易い状態となって(つまり、オイルが超臨界二酸化炭素中で拡散して、シリカ粒子同士の間にオイルが介在した状態となって)、表面処理中、シリカ粒子同士の凝集が発生し難くなると考えられるためである。
【0025】
なお、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、1)オイルとシラン系疎水化処理剤との混合物を予め調製しておき、この混合物をシリカ粒子含む系中に投入して、当該混合物による表面処理を行う方法、2)シラン系疎水化処理剤、及びオイルをこの順で、シリカ粒子含む系中に投入して、オイルとシラン系疎水化処理剤との混合物による表面処理を行う方法のいずれであってもよい。
【0026】
ここで、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、オイルによるシリカ粒子の表面処理工程に超臨界二酸化炭素を利用するが、シリカ粒子の他の製造過程(例えば、溶媒除去工程等)において、超臨界二酸化炭素を利用してもよい。
【0027】
他の製造過程において超臨界二酸化炭素を利用するシリカ粒子の製造方法としては、例えば、シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する工程(以下、「分散液準備工程」と称する)と、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液から溶媒を除去する工程(以下、「溶媒除去工程」と称する)と、超臨界二酸化炭素中で、オイルにより、溶媒を除去した後のシリカ粒子の表面を表面処理する表面処理工程(以下、「表面処理工程」と称する)と、を有するシリカ粒子の製造方法が挙げられる。
【0028】
他の製造過程において超臨界二酸化炭素を利用するシリカ粒子の製造方法では、より効果的に、粗粉の発生が抑えられる。
【0029】
この理由は定かではないが、1)シリカ粒子分散液の溶媒を除去する場合、超臨界二酸化炭素が「界面張力が働かない」という性質から、溶媒を除去する際の液架橋力による粒子同士の凝集もなく溶媒を除去できるものと考えられる点、2)超臨界二酸化炭素の「臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つ」といった性質により、比較的低温(例えば250℃以下)で、超臨界二酸化炭素に効率良く接触し、溶媒を溶解することから、この溶媒を溶解した超臨界二酸化炭素を除去することで、シラノール基の縮合による2次凝集体等の粗粉を生じることなくシリカ粒子分散液中の溶媒を除去できるものと考えられる点等が理由として考えられる。
【0030】
ここで、溶媒除去工程、及び表面処理工程は、個別に行なってもよいが、連続(つまり大気圧下に開放しない状態で各工程を実施)して行うことが望ましい。これら各工程を連続して行うと、溶媒除去工程後において、シリカ粒子が水分を吸着する機会を無くし、シリカ粒子への過剰な水分の吸着が抑えられた状態で、表面処理工程が行える。これにより、大量のオイルを使用したり、過剰な加熱を行って、表面処理工程を行う必要がなくなる。その結果、より効果的に、粗粉の発生が抑えられる。
【0031】
以下、他の製造過程において超臨界二酸化炭素を利用するシリカ粒子の製造方法について、各工程別に詳細に説明する。
なお、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法は、これに限られるわけではなく、例えば、1)表面処理工程のみ超臨界二酸化炭素を使用する態様、2)予め乾式シリカ粒子を準備し、これに表面処理工程を順次行う態様、3)各工程を個別に行う態様等であってもよい。
【0032】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0033】
−分散液準備工程−
分散液準備工程では、例えば、シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する。
具体的には、分散液準備工程程は、例えば、湿式(例えば、ゾルゲル法等)によりシリカ粒子分散液を作製して、これを準備する。特に、シリカ粒子分散液は、湿式としてゾルゲル法、具体的には、テトラアルコキシランを、アルコール及び水の溶媒にアルカリ触媒存在下で、反応(加水分解反応、縮合反応)を生じさせてシリカ粒子を生成し、シリカ粒子分散液を作製することがよい。
【0034】
シリカ粒子の体積平均粒径は、例えば、10nm以上500nm以下であることがよく、望ましくは20nm以上300nm以下である。
シリカ粒子の体積平均粒径は、LSコールター(ベックマン-コールター社製粒度測定装置)によって測定した体積粒径の累積頻度における50%径(D50v)として得られる。
【0035】
シリカ粒子の形状は、球形状、異形状のいずれであってもよいが、流動性や耐熱安定性の観点から、例えば、円形度0.5以上0.85以下の異形状がよい。
シリカ子粒子の円形度は、一次粒子の平均円形度であり、樹脂粒子の表面に付着しているシリカ子粒子の一次粒子の画像を、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事社製)を用いて解析し、下記式により算出される「100/SF2」として得られる。
・式:円形度(100/SF2)=4π×(A/I
2)
〔式中、Iは画像上における粒子の周囲長を示し、Aは粒子の投影面積を表す。〕
そして、シリカ粒子の平均円形度は、上記画像解析によって得られた一次粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0036】
分散液準備工程において、例えば、シリカ粒子を湿式により得る場合、シリカ粒子が溶媒に分散された分散液(シリカ粒子分散液)の状態で得られる。
【0037】
ここで、溶媒除去工程に移行する際、準備するシリカ粒子分散液は、そのアルコールに対する水の質量比が例えば0.1以上1.0以下であることがよく、望ましくは0.15以上0.5以下、より望ましくは0.2以上0.3以下である。
シリカ粒子分散液において、そのアルコールに対する水の質量比を上記範囲とすると、表面化処理後にシリカ粒子の粗粉の発生が少なく、良好な電気抵抗を有するシリカ粒子が得られ易くなる。
アルコールに対する水の質量比が0.1を下回ると、溶媒除去工程において、溶媒を除去する際のシリカ粒子表面のシラノール基の縮合が少なくなることから、溶媒除去後のシリカ粒子表面への吸着水分が多くなることで、表面化処理後のシリカ粒子の電気抵抗が低くなり過ぎることがある。また、水の質量比が1.0を超えると、溶媒除去工程において、シリカ粒子分散液中の溶媒除去の終点付近で水が多く残留し、液架橋力によるシリカ粒子同士の凝集が生じ易く、表面処理後に粗粉として存在することがある。
【0038】
また、溶媒除去工程に移行する際、準備するシリカ粒子分散液は、そのシリカ粒子に対する水の質量比が例えば0.02以上3以下であることがよく、望ましくは0.05以上1以下、より望ましくは0.1以上0.5以下である。
シリカ粒子分散液において、そのシリカ粒子に対する水の質量比を上記範囲とすると、シリカ粒子の粗粉の発生が少なく、良好な電気抵抗を有するシリカ粒子が得られ易くなる。
シリカ粒子に対する水の質量比が0.02を下回ると、溶媒除去工程において、溶媒を除去する際のシリカ粒子表面のシラノール基の縮合が極端に少なくなることから、溶媒除去後のシリカ粒子表面への吸着水分が多くなることで、シリカ粒子の電気抵抗が低くなり過ぎることがある。
また、水の質量比が3を超えると、溶媒除去工程において、シリカ粒子分散液中の溶媒除去の終点付近で水が多く残留し、液架橋力によるシリカ粒子同士の凝集が生じ易くなることがある。
【0039】
また、溶媒除去工程に移行する際、準備するシリカ粒子分散液は、当該シリカ粒子分散液に対するシリカ粒子の質量比が例えば0.05以上0.7以下がよく、望ましくは0.2以上0.65以下、より望ましくは0.3以上0.6以下である。
シリカ粒子分散液に対するシリカ粒子の質量比が0.05を下回ると、溶媒除去工程において、使用する超臨界二酸化炭素の量が多くなり、生産性が悪くなってしまうことがある。
また、シリカ粒子分散液に対するシリカ粒子の質量比が0.7を超えると、シリカ粒子分散液中においてシリカ粒子間距離が近くなり、シリカ粒子の凝集やゲル化による粗粉が発生し易くなることがある。
【0040】
−溶媒除去工程−
溶媒除去工程は、例えば、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する工程である。
つまり、溶媒除去工程では、超臨界二酸化炭素を流通させることにより、超臨界二酸化炭素をシリカ粒子分散液に接触させて、溶媒を除去する工程である。
具合的には、溶媒除去工程では、例えば、密閉反応器内に、シリカ粒子分散液を投入する。その後、密閉反応器内に、液化二酸化炭素を加えて加熱し、高圧ポンプにより反応器内を昇圧させ、二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器内に超臨界二酸化炭素を導入すると共に、排出し、密閉反応器内、つまりシリカ粒子分散液に流通させる。
これにより、超臨界二酸化炭素が溶媒(アルコール及び水)を溶解しつつ、これを同伴してシリカ粒子分散液の外部(密閉反応器内の外部)へと排出され、溶媒が除去される。
【0041】
ここで、超臨界二酸化炭素とは、臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つものである。
【0042】
溶媒除去の温度条件、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、31℃以上350℃以下がよく、望ましくは60℃以上300℃以下、より望ましくは、80℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し難くなるため、溶媒の除去がし難くなることがある。また溶媒や超臨界二酸化炭素の液架橋力により粗粉が生じ易くなることがあると考える。一方、この温度が上記範囲を超えると、シリカ粒子表面のシラノール基の縮合により2次凝集体等の粗粉が生じやすくなることがあると考えられる。
【0043】
溶媒除去の圧力条件、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、例えば、7.38MPa以上40MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上35MPa以下、より望ましく15MPa以上25MPa以下である。
この圧力が上記範囲未満であると、超臨界二酸化炭素に溶媒が溶解し難くなる傾向にあり、一方、圧力が上記範囲を超えると、設備が高額となる傾向となる。
【0044】
また、密閉反応器内への超臨界二酸化炭素の導入・排出量は、例えば、15.4L/分/m
3以上1540L/分/m
3以下であることがよく、望ましくは77L/分/m
3以上770L/分/m
3以下である。
導入・排出量が15.4L/分/m
3未満であると、溶媒除去に時間がかかるため生産性が悪くなり易くなる傾向となる。
一方、導入・排出量が1540L/分/m
3以上であると、超臨界二酸化炭素がショートパスし、シリカ粒子分散液の接触時間が短くなってしまい、効率的に溶媒除去でき難くなる傾向となる。
【0045】
−表面処理工程−
表面処理工程は、例えば、溶媒除去工程と連続して、超臨界二酸化炭素中で、オイルによりシリカ粒子の表面を表面処理する工程である。
つまり、表面処理工程では、例えば、溶媒除去工程から移行する前に、大気開放を行わず、超臨界二酸化炭素中で、オイルによりシリカ粒子の表面を表面処理する。
具体的には、表面処理工程では、例えば、溶媒除去工程における密閉反応器内への超臨界二酸化炭素を導入・排出を停止した後、密閉反応器内の温度、圧力を調整し、密閉反応器内に、超臨界二酸化炭素が存在する状態で、シリカ粒子に対して一定の割合のオイルを投入する。そして、この状態を維持した状態、つまり超臨界二酸化炭素中で、オイルを反応させて、シリカ粒子の表面処理を行う。
【0046】
ここで、表面処理工程は、超臨界二酸化炭素中で(つまり超臨界二酸化炭素の雰囲気下で)、オイルの反応を行えばよく、超臨界二酸化炭素を流通(つまり密閉反応器内への超臨界二酸化炭素を導入・排出)させながら表面処理を行ってよいし、非流通で表面処理を行ってもよい。
【0047】
表面処理工程において、反応器の容積に対するシリカ粒子の量(つまり仕込み量)は、例えば、30g/L以上600g/L以下がよく、望ましくは50g/L以上500g/L以下、より望ましくは80g/L以上400g/L以下である。
この量が上記範囲より少ないとオイルの超臨界二酸化炭素に対する濃度が低くなりシリカ表面との接触確率が低下し、反応が進み難くなることがある。一方で、この量が上記範囲よりも多いと、オイルの超臨界二酸化炭素に対する濃度が高くなり、オイルが超臨界二酸化炭素へ溶解しきれず分散不良となり、粗大凝集物を発生させやすくなる。
【0048】
超臨界二酸化炭素の密度は、例えば、0.10g/ml以上0.80g/ml以下がよく、望ましくは0.10g/ml以上0.60g/ml以下、より望ましくは0.2g/ml以上0.50g/ml以下)である。
この密度が上記範囲より低いと、超臨界二酸化炭素に対するオイルの溶解度が低下し、凝集物を発生させる傾向がある。一方で、密度が上記範囲よりも高いと、シリカ細孔への拡散性が低下するため、表面処理が不十分となる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカ粒子に対しては上記密度範囲での表面処理を行うことがよい。
なお、超臨界二酸化炭素の密度は、温度及び圧力等により調整される。
【0049】
オイルとしては、潤滑油及び油脂からなる群から選択される1以上の化合物が挙げれる。オイルとして具体的には、例えば、シリコーンオイル、パラフィンオイル、フッ素オイル、植物性オイル等が挙げられる。オイルは、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
【0050】
オイルの粘度は、例えば、1cSt以上1000cSt以下がよく、望ましくは10cSt以上500cSt以下、より望ましくは50cSt以上300cStである。
オイルの粘度が上記範囲より少ないとオイルの反応性が低くなりシリカ粒子の表面への処理性が低下し、十分なオイル処理が実現され難くなることがある。一方で、オイルの粘度がが上記範囲よりも多いと、オイルの反応性、粘度が高いことで分散不良となり、粗大凝集物を発生させやすくなることがある。
【0051】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、αメチルスチレン変性シリコーンオイル等が挙げられる。パラフィンオイルとしては、例えば、流動パラフィン等が挙げられる。フッ素オイルとしては、例えば、フッ素オイル、フッ素塩化オイル等が挙げられる。鉱物油としては、例えば、機械油等が挙げられる。植物性オイルとしては、例えば、ナタネ油、パーム油等が挙げられる。
【0052】
これらオイルの中でも、シリコーンオイルを適用すると、シリカ粒子にオイルが薄膜状に均一に表面処理され、付着対象物の流動性の向上が高まり易くなる。
【0053】
オイルの使用量は、特に限定はされないが、例えば、シリカ粒子に対し、例えば、1質量%以上30質量%以下がよく、望ましくは3質量%以上20質量%以下、より望ましくは5質量%以上15質量%以下である。
【0054】
なお、オイルは、単独で使用してもよいが、オイルが溶解しやすい溶媒との混合液として使用してもよい。この溶媒としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0055】
表面処理工程では、オイルと共にシラン系疎水化処理剤を含む混合物によりシリカ粒子の表面処理を行ってもよい。
【0056】
シラン系疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を持つ公知の珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。シラン系疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
これらシラン系疎水化処理剤の中も、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などのトリメチル基を有する珪素化合物、特にヘキサメチルジ
シラザン(HMDS)が好適である。
【0057】
シラン系疎水化処理剤の使用量は、特に限定はされないが、例えば、シリカ粒子に対し、例えば、1量%以上100質量%以下がよく、望ましくは3質量%以上80質量%以下、より望ましくは5質量%以上50質量%以下である。
シラン系疎水化処理剤とオイルとの比率は、例えば、質量比(シラン系疎水化処理剤/オイル)で10/1乃至1/1がよく、望ましくは7/1乃至7/5、より望ましくは7/2乃至7/4以下である。
【0058】
なお、シラン系疎水化処理剤は、単独で使用してもよいが、シラン系疎水化処理剤が溶解しやすい溶媒との混合液として使用してもよい。この溶媒としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0059】
表面処理の温度条件、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、80℃以上300℃以下がよく、望ましくは100℃以上250℃以下、より望ましくは120℃以上200℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、オイルによる表面処理能力が低下することがある。一方で、温度が上記範囲を超えると、シリカ粒子のシラノール基間による縮合反応が進み、粒子凝集が発生することがある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカ粒子に対しては上記温度範囲での表面処理を行うことがよい。
【0060】
一方、表面化処理の圧力条件、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、上記密度を満足する条件であればよいが、例えば、8MPa以上30MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上25MPa以下、より望ましく15MPa以上20MPa以下である。
【0061】
以上説明した各工程を経て、シリカ粒子が得られる。
【0062】
本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法により製造されるシリカ粒子は、トナー、化粧品、研磨剤等の種々の分野に適用し得る。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、「部」は特に断りがない限り「質量部」を示す。
尚、本実施例においては、「実施例6」を「参考例6」と読み替えるものとする。
【0064】
[実施例1]
(シリカ粒子(S1)の作製)
−シリカ粒子分散液(S1)の調製−
攪拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器にメタノール300g、10%アンモニア水46gを添加して混合し、アルカリ触媒溶液を得た。
このアルカリ触媒溶液を30℃に調整した後、攪拌しながら、テトラメトキシシラン140gと3.8%アンモニア水360gとを同時に滴下を行い、体積平均粒径(D50vと表記)120nm、平均円形度0.95の球形状で親水性のシリカ粒子分散液(固形分濃度9.5質量%)を得た。ここで、滴下時間は30分とした。
なお、テトラアルコキシシランの供給量は、アルカリ触媒溶液におけるアルコールのモル数に対して、0.0053mol/(mol・min)とした。 テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対してNH
3量は0.54molとした。
その後、得られたシリカ粒子分散液をロータリーフィルターR−ファイン(寿工業社製)で固形分濃度40質量%まで濃縮した。この濃縮したものをシリカ粒子分散液(S1)とした。
【0065】
−シリカ粒子の表面化処理−
以下に示すようにして、シリカ粒子分散液(S1)の溶媒除去工程と共に、シリカ粒子に対して、オイルによる表面処理を行った。なお、表面処理には、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素ポンプ、エントレーナポンプ、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、圧力弁を具備した装置を用いた。
【0066】
まず、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)へ、シリカ粒子分散液(S1)を300部投入し、攪拌機を100rpmで回転させた。その後、オートクレーブ内を液化二酸化炭素を注入し、ヒーターにより昇温しながら二酸化炭素ポンプにより昇圧し、オートクレーブ内を15
0℃、15MPaの超臨界状態とした。圧力弁でオートクレーブ内を15MPaに保ちながら二酸化炭素ポンプより超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液(S1)からメタノールと水を除去した。
【0067】
次に、流通した超臨界二酸化炭素の流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)が100部となった時点で、超臨界二酸化炭素の流通を停止した。
その後、ヒーターにより温度150℃、二酸化炭素ポンプにより圧力15MPaを維持し、オートクレーブ内で二酸化炭素の超臨界状態を維持させた状態で、オイルとしてジメチルシリコーンオイル(DSO:商品名「KF-96(信越化学工業社製)」)10部及びシラン系疎水化処理剤としてヘキサメチルジ
シラザン(HMDS:有機合成薬品工業社製)35部の混合物をエントレーナポンプにてオートクレーブ内に添加し、撹拌しながら、処理時間として30分間保持した。その後、撹拌を停止し、圧力弁を開けてオートクレーブ内の圧力を大気圧まで開放し温度を室温(25℃)まで下げた。
このように、溶媒除去工程、オイルによる表面処理を順次行い、シリカ粒子(S1)を得た。
【0068】
[実施例2〜11]
(シリカ粒子(S2)〜(S11)の作製)
シリカ粒子(S1)の作製において、表1に従って、アルカリ触媒溶液(メタノール量、及び10%アンモニア水量)、粒子生成条件(アルカリ触媒溶液へのテトラメトキシシラン(TMOSと表記)及び3.8%アンモニア水の総滴下量、並びに、滴下時間)、表面処理条件(雰囲気、オイル種及びその部数、シラン系疎水化処理剤及びその部数、並びに、処理時間)を変更した以外は、シリカ粒子(S1)と同様にして、シリカ粒子(S2)〜(S11)を作製した。
但し、実施例4では、気相法によって得られた市販のヒュームドシリカ(「OX50(日本アエロジル製)」)を使用し、このシリカ粉末に対して、表面処理を行って、シリカ粒子(S4)を作製した。
また、実施例6は、オイルとシラン系疎水化処理剤との混合物に代えて、オイルと溶媒との混合物(組成は表1に記載)を使用し、シリカ粒子(S6)を作製した。
【0069】
[比較例1〜3]
(シリカ粒子(SC1)〜(SC3)の作製)
シリカ粒子(S1)〜(SC3)の作製において、超臨界二酸化炭素を流通させず、大気雰囲気で溶媒除去、及び表2に従った条件で表面処理を行った以外は、シリカ粒子(S1)と同様にしてシリカ粒子(SC1)〜(SC3)を作製した。
但し、比較例3は、オイルとシラン系疎水化処理剤との混合物に代えて、オイルと溶媒との混合物(組成は表2に記載)を使用し、シリカ粒子(SC3)を作製した。
【0070】
[比較例4]
[比較例4(シリカ粒子(SC4)の作製)
シリカ粒子(S1)の作製において、気相法によって得られた市販のヒュームドシリカ(「OX50(日本アエロジル製)」)を使用し、このシリカ粉末に対して、超臨界二酸化炭素を流通させず、大気雰囲気で大気雰囲気で溶媒除去、及び表面処理を行った以外は、シリカ粒子(S1)と同様にしてシリカ粒子(SC4)を作製した。
【0071】
[評価]
各例で得られたシリカ粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(粗粉発生状況)
各例で得られたシリカ粒子の粗大粒子数は次のようにして求めた。
粗大粒子数は、LSコールター(ベックマンコールター社製)より測定し、1μm以上の粒子の割合として求めた。1%以下が良く、0.1%以下がよりよい。なお、0に近いものが良いのは言うまでもないが、0.1%以下は<0.1%と表記した。
【0073】
(遊離オイル量)
各例で得られたシリカ粒子の遊離オイル量を、次のようにして求めた。
日本電子(JEOL)製AL−400(磁場9.4T(H核400MHz))を用い、プロトンNMRの測定を行うことによって、遊離オイル量を求めた。具体的には、サンプル、重クロロホルム溶媒、基準物質としてTMS(テトラメチルシリコン)をジルコニア製サンプルチューブ(直径5mm)に充填する。このサンプルチューブをセットして、例えば、周波数:Δ87kHz/400MHz(=Δ20ppm)、測定温度:25℃、積算回数:16回、分解能0.24Hz(32000point)で測定を行い、オイル由来のピーク強度から検量線を用いて遊離オイル量に換算する。なお、未処理の無機酸化物粒子とシリコーンオイル(5水準程度量を振る)のNMR測定を行い、遊離オイル量とNMRピーク強度との検量線を作成した上で、上記測定を行う。
これを反応槽内の底部、中央部、上部でサンプリングして測定し、標準偏差(表中「バラツキG」と表記)を求めた。
評価基準を以下の通りである。
A:標準偏差 0.1未満
B:標準偏差 0.1以上1.0未満
C:標準偏差 1.0以上1.5未満
D:標準偏差 1.5以上
【0074】
以下、各例で得られたシリカ粒子について、既述に従って測定した特性、及び上記評価結果を表3に一覧にして示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、粗粉発生状況、遊離オイル量のバラツキGの各評価について、良好な結果が得られたことがわかる。