特許第5983561号(P5983561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983561
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/201 20110101AFI20160818BHJP
【FI】
   B60R21/201
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-166981(P2013-166981)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33987(P2015-33987A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 郁雄
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−174071(JP,A)
【文献】 実開昭61−198702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、
該エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の折り崩れを防止するために、前記折り完了体の周囲を覆うように巻き付けられるラッピング部材と、
を備える構成とされ、
前記折り完了体が、前記エアバッグを前記収納部位に取り付けるための取付手段を、突出させるように構成され、
前記ラッピング部材が、可撓性を有したシート体から構成されるとともに、前記折り完了体への巻き付け方向側の両端側に、前記取付手段に係止可能な係止孔を有した係止部を備える構成のエアバッグ装置であって、
少なくとも一方側の前記係止部が、巻き付け方向側での前記折り完了体への巻き付け長さを、縮め可能とするように、第1取付片と第2取付片とを備える2枚重ね状として、それぞれに、前記巻き付け方向側で並設される各々の前記係止孔を、配置させて、2段階で前記取付手段に係止可能に、構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記折り完了体が、略直方体形状として構成され、
前記ラッピング部材が、前記折り完了体の上面側を略全面にわたって覆い可能な構成とされるとともに、前記巻き付け方向を、前記折り完了体の短手方向に沿わせるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
一方側の前記係止部に加えて、他方の前記係止部も、第1取付片と第2取付片とを備える2枚重ね状として、それぞれに、前記取付手段を挿通可能な係止孔を、配置させる構成とされていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを折り畳んだ折り完了体の周囲に、折り崩れ防止可能なラッピング部材を巻き付けて、収納部位内に収納させる構成のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグを折り畳んだ折り完了体の周囲を、ラッピング部材によって覆う構成のエアバッグ装置としては、折り完了体から突出している取付手段に係止可能な係止孔を配設させたラッピング部材を、係止孔に取付手段を挿通させて係止させるようにして、折り完了体の周囲に巻き付ける構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、エアバッグ装置としては、エアバッグを、収納部位内に収納可能に、前後縮小折りと左右縮小折りとを経て折り畳む際に、ラッピング部材の一部を、前後縮小折り時に、一旦巻き付け、左右縮小折り後に、再度、ラッピング部材の残部を巻き付けることにより、折り完了体の周囲をラッピング部材によって、二重で覆う構成のものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−301107号公報
【特許文献2】特開2005−306358公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、従来のエアバッグ装置では、エアバッグをコンパクトに収納部位内に収納させるために、一旦折り畳んだ折り完了体に、プレス加工を施して、高さ寸法を縮めた状態で、収納部位内に収納する場合があった。このプレス加工時には、折り完了体を所定の治具に挿入させて、プレス加工し、プレス加工後に、治具から取り出して、周囲にラッピング部材を巻き付けていた。しかしながら、このような手順で、上記特許文献1に記載のラッピング部材を、エアバッグの周囲に巻き付ける場合、治具から取り出す際に、スプリングバックによって折り完了体の高さ寸法が戻る場合があって、折り完了体の外形形状を維持しつつ収納部位に収納させる点に、改善の余地があった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載のラッピング部材を使用して、一部を折り畳んだエアバッグの周囲に巻き付けた状態で、折り完了体にプレス加工を施し、その後、残部を折り完了体に巻き付ける構成とすれば、スプリングバックを抑制できるが、この特許文献2に記載のラッピング部材は、折り完了体の周囲を二重で覆う構成であることから、ラッピング部材自体が、嵩張ることとなり、一層コンパクトにする点に、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体を、コンパクトな外形形状を維持して、収納部位内に円滑に収納可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアバッグ装置は、収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、
エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の折り崩れを防止するために、折り完了体の周囲を覆うように巻き付けられるラッピング部材と、
を備える構成とされ、
折り完了体が、エアバッグを収納部位に取り付けるための取付手段を、突出させるように構成され、
ラッピング部材が、可撓性を有したシート体から構成されるとともに、折り完了体への巻き付け方向側の両端側に、取付手段に係止可能な係止孔を有した係止部を備える構成のエアバッグ装置であって、
少なくとも一方側の係止部が、巻き付け方向側での折り完了体への巻き付け長さを、縮め可能とするように、第1取付片と第2取付片とを備える2枚重ね状として、それぞれに、巻き付け方向側で並設される各々の係止孔を、配置させて、2段階で取付手段に係止可能に、構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のエアバッグ装置では、ラッピング部材において、折り完了体への巻き付け方向側の両端側に、折り完了体から突出している取付手段に係止可能な係止孔を有した係止部が、配置され、この係止部の内、一方側が、折り完了体への巻き付け長さを縮め可能に、2段階で取付手段に係止可能な構成とされている。そのため、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの折り畳み完了時に、折り完了体の周囲に、ラッピング部材を巻き付け、一方側の係止部において、ラッピング部材の縁部側に配置される係止孔(外側の係止孔)に取付手段を係止させ、その後、ラッピング部材ごと、折り完了体に、プレス加工を施し、プレス加工後に、折り完了体への巻き付け長さを縮めるように、一方側の係止部において、内側に配置される係止孔に、取付手段を係止させれば、ラッピング部材の実質的な長さ寸法を小さくすることができて、プレス加工を施されて高さ寸法を縮められた状態の折り完了体の周囲に、ラッピング部材を隙間なく巻き付けることができる。その結果、本発明のエアバッグ装置では、ラッピング部材ごとプレス加工を施し、プレス加工後に、一方側の係止部の係止孔を取付手段に再度係止させて、折り完了体への巻き付け長さを縮められることから、プレス加工を施されて高さ寸法を縮められた状態の折り完了体の周囲を隙間なく覆うことができ、プレス加工された折り完了体のスプリングバックを抑制できて、高さ寸法を縮められたコンパクトな状態を維持することができる。
【0010】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体を、コンパクトな外形形状を維持して、収納部位内に円滑に収納させることができる。
また、本発明のエアバッグ装置では、一方側の係止部を、第1取付片と第2取付片とを備える2枚重ね状として、それぞれに、巻き付け方向側で並設される各々の係止孔を配置させる構成としていることから、プレス加工後に、第1取付片の係止孔に取付手段を係止させた状態で、第1取付片の係止孔よりも折り完了体への巻き付け長さを縮められている第2取付片の係止孔(内側の係止孔)に、取付手段を係止させれば、ラッピング部材の実質的な長さ寸法を小さくすることができ、折り完了体の周囲を隙間なく覆うことができる。そのため、外側の係止孔から一旦、取付手段を外し、内側の係止孔に取付手段を係止させる作業が不要となって、このような取り外し作業の際に、折り完了体のスプリングバックを抑制できる。
【0012】
さらに、本発明のエアバッグ装置において、折り完了体を、略直方体形状として構成し、
ラッピング部材を、折り完了体の上面側を略全面にわたって覆い可能な構成とするとともに、巻き付け方向を折り完了体の短手方向に沿わせるように、構成することが、好ましい。
【0013】
このような構成のエアバッグ装置では、折り完了体が、長手方向に沿った広い領域(長辺側)を、略全域にわたって、ラッピング部材により押えられることから、折り完了体にスプリングバックが生ずることを、極力抑制して、コンパクトな状態を維持させることができて、好ましい。
【0014】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、一方側の係止部に加えて、他方の係止部も、第1取付片と第2取付片とを備える2枚重ね状として、それぞれに、取付手段を挿通可能な係止孔を、配置させる構成としてもよく、このような構成とする場合、ラッピング部材における巻き付け方向側の中央を、折り完了体の中央と略一致させることができ、例えば、ラッピング部材に破断予定部を設け、この破断予定部を係止部間の中央に配置させている場合等に、破断予定部が位置ずれすることを抑制できて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグ装置の車両前後方向に沿った縦断面図である。
図2】実施形態の助手席用エアバッグ装置に使用するエアバッグを単体で膨張させた状態の前方側から見た斜視図である。
図3図2のエアバッグの前後方向に沿った縦断面図である。
図4図2のエアバッグの前後方向に沿った概略横断面図であり、図3のIV−IV部位に対応する。
図5】実施形態のエアバッグを構成する基布を示す平面図である。
図6】実施形態の助手席用エアバッグ装置に使用されるラッピング部材を平らに展開した状態の平面図である。
図7】実施形態のエアバッグを予備折りした予備折りエアバッグの平面図と底面図とを示す図である。
図8】実施形態のエアバッグの折り畳み工程を示す概略図である。
図9】第1実施形態のエアバッグの折り畳み工程を示す概略図であり、図8の後の工程を示す図である
図10】エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の周囲にラッピング部材を巻き付ける工程を示す概略図である。
図11】本発明の他の実施形態のラッピング部材を平らに展開した状態の平面図である。
図12図12のラッピング部材を、折り完了体の周囲に巻き付ける工程を示す概略図である。
図13】本発明のさらに他の実施形態のラッピング部材を平らに展開した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置として、助手席の前方に配置される助手席用エアバッグ装置Mを、例に採り、説明をする。実施形態の助手席用エアバッグ装置M(以下「エアバッグ装置」と省略する)は、図1に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2の内部に配置されるトップマウントタイプとされている。
【0017】
エアバッグ装置Mは、図1に示すように、折り畳まれたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ15の上方を覆うエアバッグカバー6と、エアバッグ15を折り畳んで形成される折り完了体71(71A,71B)の周囲を覆うラッピング部材49と、を備えて構成されている。
【0018】
エアバッグカバー6は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ15の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6bを、エアバッグ15に押されて開くように、構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース12に連結される連結壁部6cが、形成されている。
【0019】
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
【0020】
収納部位としてのケース12は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部12bと、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを取付手段として、エアバッグ15におけるガス流入口19の周縁、ラッピング部材49、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター8のフランジ部8cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。また、ケース12の底壁部12aには、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
【0021】
エアバッグ15は、実施形態の場合、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体16と、バッグ本体16内に配置されてバッグ本体16の膨張完了形状を規制するテザー28と、バッグ本体16内への膨張用ガスの流入を制御する整流布34と、を備えている。
【0022】
バッグ本体16は、図1の二点鎖線に示すように、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置可能な略袋状として構成されている。具体的には、バッグ本体16は、図2〜4に示すように、膨張完了時の形状を、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状とされるもので、膨張完了時に乗員側となる乗員側壁部23と、乗員側壁部23の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状の周壁部17と、を備えている。
【0023】
周壁部17は、エアバッグ15の膨張完了時に、主にインパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置される部位であり、上下両側で略左右方向に沿って配置される上壁部17a,下壁部17bと、左右両側で略前後方向に沿って配置される左壁部17c,右壁部17dと、を備えている。バッグ本体16の膨張完了時の前端付近となる下壁部17bの前端近傍において、左右方向の略中央となる位置には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して、周縁をケース12の底壁部12aに取り付けられるガス流入口19が、形成されている。ガス流入口19の周縁には、リテーナ9のボルト9aを挿通させて、ガス流入口19の周縁をケース12の底壁部12aに取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔20が、形成されている。また、周壁部17における左壁部17cと右壁部17dとには、バッグ本体16内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール21が、形成されている。
【0024】
乗員側壁部23は、バッグ本体16の膨張完了時に、乗員側となるバッグ本体16の後端側において、略鉛直方向に沿って配設される。乗員側壁部23は、バッグ本体16の膨張完了時において、左右方向の略中央となる位置に、上下の略全域にわたって凹ませるような凹部24を、配設させた構成とされている。そして、乗員側壁部23において凹部24の左右両側には、相対的に後方側へ突出する突出部25L,25Rが、配設されている。すなわち、実施形態のバッグ本体16の乗員側壁部23には、バッグ本体16の膨張完了時に、左右方向の中央で凹む凹部24と、凹部24の左右両側に配置される突出部25L,25Rと、が、上下方向に沿って連続的に配設されている(図3,4参照)。具体的には、実施形態の場合、左右の突出部25L,25Rの隆起した状態と凹部24の凹んだ状態とは、乗員側壁部23の上端側の領域を最も大きくして、乗員側壁部23の下端側と、周壁部17における上壁部17aの領域内における前方側と、にかけて、それぞれ、凹凸を収束させるような形状とされている。そして、実施形態のバッグ本体16では、凹部24における凹みの底部(前端24a)は、後述する内左パネル42L,内右パネル42Rの内周縁42a,42a相互を縫着させて形成される内側縫合部44から、構成され、各突出部25L,25Rにおける突出頂部25aは、後述する外左パネル40L,外右パネル40Rの後縁40e,40eと、内左パネル42L,内右パネル42Rの外周縁42b,42bと、を、それぞれ縫着させて形成される外側縫合部45L,45Rから、構成されている(図3,4参照)。
【0025】
バッグ本体16内に配置されるテザー28は、膨張完了時の凹部24の底部(前端24a)側の後方への突出を抑制するように、バッグ本体16内に配置されるもので、実施形態の場合、図3,4に示すように、周壁部17側となる前側部位29と、乗員側壁部23側となる後側部位30と、を備えて構成されている。
【0026】
前側部位29は、実施形態の場合、図5に示す前側部位用素材32の一部を折って構成されるもので、ガス流入口19を中心とした左右対称形として、バッグ本体16の膨張完了時における外形形状を、図3,4に示すように、前端29a側を左右方向に略沿わせ、後端29b側を上下方向に略沿わせるような略三角錐形状に近似した立体形状とされている。実施形態の場合、前側部位29は、前端29a側の領域を、ガス流入口19の周縁となる領域で、周壁部17の下壁部17bに連結され、このガス流入口19の周縁との連結部位から後方に延びる部位を、折目をつけて略三角錐状に近似した形状に、形成している。そして、前側部位29は、後端29b側を、後側部位30の前端30a側に縫着されている。
【0027】
後側部位30は、外形形状を略台形状として構成され、図3に示すように、幅広の後端30b側を、乗員側壁部23の上下の略中央となる位置において、凹部24の底部(前端24a)側に縫着させ、狭幅の前端30a側を、前側部位29の後端29b側に縫着させている。
【0028】
バッグ本体16内に配置される整流布34は、図3,4に示すように、ガス流入口19の上方を覆うように配設されるとともに、ガス流入口19から流入した膨張用ガスGを、前後両側へ整流可能に、前後方向の両端を開口させた略筒形状とされている。すなわち、実施形態では、ガス流入口19から流入した膨張用ガスGは、整流布34の前後の開口34a,34bから、前後方向に沿って、バッグ本体16内に流入することとなる。また、実施形態の場合、整流布34は、図5に示す一対の整流布素材36,36から、構成されている。整流布素材36は、左右対称形とされるもので、それぞれ、ガス流入口19の周縁に縫着される連結部37と、連結部37から左右の外方に延びる本体部38と、を備えている。そして、実施形態では、整流布34は、各整流布素材36の連結部37を、それぞれ、ガス流入口19の周縁に縫着させるようにしてバッグ本体16に取り付け、本体部38において、連結部37から離れた側の先端38a相互を、縫着させることにより、整流布34を構成している。
【0029】
バッグ本体16は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、図5に示すように、膨張完了時に左右方向の外方に配置される外左パネル40L,外右パネル40Rと、膨張完了時に左右方向の内方に配置される内左パネル42L,内右パネル42Rと、の4枚の基布から構成されている。
【0030】
外左パネル40L,外右パネル40Rは、左右対称形として、膨張完了時のバッグ本体16において、主に、周壁部17の領域と、乗員側壁部23における各突出部25L,25Rの突出頂部25aから左右方向の外方となる部位の領域と、を構成するもので、これらの領域を、ガス流入口19の周縁となる部位を除いて、ガス流入口19の中央を通るとともに前後方向に沿うような分割面で、左右で分割するようにして、それぞれ、別体として構成されている。実施形態の場合、各外左パネル40L,外右パネル40Rは、図5に示すように、ガス流入口19の周縁の部位を構成する突出部40aを、備えている。
【0031】
内左パネル42L,内右パネル42Rは、乗員側壁部23における各突出部25L,25Rの突出頂部25a間となる内方の領域を構成するもので、この領域を、凹部24の底部(前端24a)となる位置で、左右に2分割するようにして、構成されている。
【0032】
また、実施形態のバッグ本体16には、ガス流入口19の周縁を補強する略円形の補強布39が、配設されている。この補強布39は、ガス流入口19から前方に延びる延設部39aを、備えている。この延設部39aは、図3に示すように、エアバッグ15の膨張完了時において、後述する前側縫合部46の内周側を覆って、この前側縫合部46に、ガス流入口19から内部に流入した膨張用ガスが直接当たることを防止している。
【0033】
実施形態では、バッグ本体16を構成する外左パネル40L,外右パネル40R,内左パネル42L,内右パネル42R,補強布39、整流布34を構成する整流布素材36、テザー28を構成する前側部位用素材32(前側部位29),後側部位30は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布であって、実施形態の場合、シリコン等のコーティング剤を塗布させていないノンコート布から、構成されている。
【0034】
エアバッグ15を折り畳んで形成される折り完了体71の周囲を覆うラッピング部材49は、エアバッグ15と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布であって、シリコン等のコーティング剤を塗布しないノンコート布から構成されている。実施形態の場合、エアバッグ15を折り畳んで形成される折り完了体71は、長手方向を左右方向に略沿わせた略直方体状として構成されるもので(図9のB参照)、ラッピング部材49は、巻き付け方向を、折り完了体71の短手方向に沿わせるようにして(実施形態の場合、前後方向に略沿わせるようにして)構成されている。
【0035】
ラッピング部材49は、実施形態の場合、折り完了体71(71A,71B)の外周面を略全域にわたって覆うように構成されるもので、図6に示すように、平らに展開した形状を、略十字形状とされている。すなわち、ラッピング部材49は、幅寸法W1(図6参照)を、折り完了体71(71A,71B)の長手方向側(左右方向側)の幅寸法W3(図9のB参照)と略一致させて構成される帯状の本体部50と、本体部50から左右の外方に突出して形成される補助取付片59,60と、を備えている。本体部50は、中央に配置されて折り完了体71(71A,71B)における上面側を覆う天井壁部51と、天井壁部51から前方に延びて折り完了体71(71A,71B)の前面を覆う前壁部53と、天井壁部51から後方に延びて折り完了体71(71A,71B)の後面を覆う後壁部55と、を備えている。
【0036】
天井壁部51は、折り完了体71(プレス加工後の折り完了体71B)とともにケース12内に収納させた際に、エアバッグカバー6と折り完了体71(プレス加工後の折り完了体71B)との間に介在される部位であり、折り完了体71(71A,71B)の上面側を全面にわたって覆うような略長方形状として、ケース12の前後方向の中央に対応した位置に、エアバッグ15が膨張する際に破断可能とされる破断予定部52を、配置させている。破断予定部52は、実施形態の場合、天井壁部51に切れ目を入れるように構成されるもので、天井壁部51の前後の中央である中心線CL(図6参照)上を通るように、中心線CLに沿った直線状として断続的に形成される3本のスリット本体52aと、中央側のスリット本体52aの両端側を前後で挟むように配置される4本の補助スリット52bと、から構成されている。また、左側と右側とに配置されるスリット本体52aは、端縁を、左右の補助取付片59,60の領域内に進入させるように、構成されている。なお、天井壁部51における前後の中心線CLは、車両搭載時において、ケース12の前後の中心と略一致する位置に配置されるものであり、この中心線CLは、係止孔54a,56a間の中央から少しずれて、係止孔54a,56b間の中央と略一致している。
【0037】
前壁部53は、図6に示すように、外形形状を先端53a側にかけて狭幅とされる略台形状として、構成されるもので、先端53a側における左右方向の中央側を、インフレーター8の外形形状にあわせて凹ませて構成されるとともに、先端53a側に、折り完了体71(71A,71B)から突出しているリテーナ9のボルト9a(取付手段)に係止可能な係止部54を、備えている。この係止部54は、固定側係止部として、ボルト9aに係止可能な1組(2個)の係止孔54aを、備えている。
【0038】
後壁部55は、図6に示すように、外形形状を略長方形状として構成されるもので、先端55a側における左右方向の中央側を、インフレーター8の外形形状にあわせて凹ませて構成されるとともに、先端55a側に、折り完了体71(71A,71B)から突出しているリテーナ9のボルト9aに係止可能な係止部56を、備えている。この係止部56は、前壁部53に形成される係止部54との間の離隔距離、すなわち、巻き付け方向側での折り完了体71への巻き付け長さを縮め可能とするように、2段階でボルト9aに係止可能な可動側係止部として構成されるもので、2組の係止孔56a,56b(計4個)を、巻き付け方向側となる前後方向側で、並設させて構成されている。詳細に説明すれば、係止孔56a,56bのうち、後壁部55の端縁側(外側)に配置される1組の係止孔56aが、ラッピング部材49をプレス加工前の折り完了体71Aに巻き付けた当初に、ボルト9aに係止される第1の係止孔56aであり、天井壁部51側(内側)に配置される1組の係止孔56bが、プレス加工を施した後の折り完了体71Bにおいて、第1の係止孔56aから外したボルト9aを、再度係止させる第2の係止孔56bである。すなわち、本体部50では、プレス加工前の巻き付け長さL1(図6参照)は、平らに展開させた状態のラッピング部材49における係止孔54a,56a間の離隔距離と一致し、プレス加工後の巻き付け長さL2(図6参照)は、平らに展開させた状態のラッピング部材49における係止孔54a,56bの離隔距離と一致して、プレス加工前の巻き付け長さL1より縮められることとなる。また、この後壁部55は、先端55a側にかけて幅寸法を略一定として構成されており、この先端55a側の部位の左右両縁側の部位を、プレス加工後に第2の係止孔56b,56bをボルト9aに係止させる際に、把持する把持部57,57として、この作業を行いやすくしている。
【0039】
補助取付片59,60は、天井壁部51から左右両側に突出するように形成されるもので、幅寸法W2(図6参照)を、折り完了体71(71A,71B)の短手方向側(前後方向側)の幅寸法W4(図9のB参照)と略一致させて構成されている。各補助取付片59,60は、外形形状を略長方形状として構成されるもので、先端59a,60a側における前後方向の中央側を、インフレーター8の外形形状にあわせて凹ませて構成されるとともに、先端59a,60a側に、折り完了体71(71A,71B)から突出しているリテーナ9のボルト9aに係止可能な2つの係止孔59b,60bを、それぞれ、前後で並設させて構成されている。また、各補助取付片59,60における元部側の領域であって、スリット本体52aの端末近傍となる部位には、スリット本体52aの端末近傍から前後に延びる直線状の補助スリット59c,60cが、前後の略全域にわたって、配置されている(図6参照)。実施形態では、ラッピング部材49は左右対称形とされている。
【0040】
次に、実施形態のエアバッグ15の製造について説明をする。予め、内左パネル42Lと内右パネル42Rとを、平らに展開した状態で周縁相互を一致させるように重ね、さらに、テザー28の後側部位30を重ねて、内周縁42a,42a相互と後端30bとを、縫合糸を用いて縫着させ、内側縫合部44を形成しておく。まず、外左パネル40Lと外右パネル40Rとを、平らに展開した状態で周縁相互を一致させるように重ね、下縁40d,40d相互を縫合糸を用いて縫着させる。そして、突出部40a,40a相互を重ねるように、外左パネル40Lと外右パネル40Rとを開く。その後、突出部40a,40a上に、整流布素材36,36、テザー28の前側部位用素材32、補強布39を順に重ね、ガス流入口19の周縁となる部位で、縫合糸を用いて縫着させ、その後、孔開け加工により、ガス流入口19と取付孔20とを形成する。次いで、外左パネル40Lと外右パネル40Rとを周縁相互を一致させるように重ね、上縁40c,40c相互を縫合糸を用いて縫着させる。その後、外左パネル40Lと外右パネル40Rとを、後縁40e,40e相互を離すように開き、外周縁42b,42b相互を離すように広げた内左パネル42L,内右パネル42Rを重ねて、外左パネル40Lの後縁40eと内左パネル42Lの外周縁42bとを縫合糸を用いて縫着させて外側縫合部45Lを形成し、同様に、外右パネル40Rの後縁40eと内右パネル42Rの外周縁42bとを縫着させて外側縫合部45Rを形成する。その後、テザー28の前側部位29を二つ折りして、折り曲げた状態の後端29b側を、後側部位30の前端30a側に縫着させ、テザー28を形成する。その後、外左パネル40L,外右パネル40Rにおいて未縫合部分である前縁40b側の部位の開口を利用して、縁部の縫い代が外部に露出しないように、バッグ本体16を反転させる。その後、外左パネル40L,外右パネル40Rの前縁40bを、それぞれ、二つ折りするようにして重ね、縫合糸を用いて縫着させて、前側縫合部46を形成する。次いで、各整流布素材36の本体部38をガス流入口19から外部に引き出し、先端38a相互を縫合糸を用いて縫着させて、整流布34を形成し、この整流布34をガス流入口19の内部に戻せば、エアバッグ15を製造することができる。
【0041】
そして、エアバッグ15の製造後、各取付孔20からボルト9aを突出させるようにして、内部にリテーナ9を配置させた状態で、エアバッグ15を、ケース12内に収納可能に折り畳む。具体的には、エアバッグ15は、予備折り工程を経た後、左右方向の幅寸法を縮めるような左右縮小折り工程と、前後方向の幅寸法を縮めるような前後縮小折り工程と、を経て折り畳まれることとなる。
【0042】
予備折り工程では、図7に示すような予備折りエアバッグ63を形成することとなる。予備折りエアバッグ63は、図7のA,Bに示すように、内側縫合部44を中心として、外側縫合部45L,45Rを左右両側に開くようにして、乗員側壁部23の領域を平らに展開し、この平らに展開した乗員側壁部23を、ガス流入口19の下方に位置させるように、周壁部17の領域を、折目をつけて折り畳んで、形成されている。そして、この予備折りエアバッグ63において、まず、図7のBに示すように、ガス流入口19の左側となる左側部位64と、ガス流入口19の右側となる右側部位65と、を、それぞれ、先端64a,65aをガス流入口19側に接近させるように、乗員側壁部23側に向かって巻くように、ロール折りし、左右縮小折りエアバッグ67を形成する(図8のA参照)。その後、左右縮小折りエアバッグ67において、ガス流入口19の後側となる後側部位68を、後端68aをガス流入口19側に接近させるようにロール折りし、ロール折り部位69を、ガス流入口19上に載せる(図8及び図9のA参照)。その後、左右縮小折りエアバッグ67において、ガス流入口19の前方側となる前側部位70(図9のA参照)を、ロール折り部位69の前面を覆うように折り曲げれば、エアバッグ15の折り畳みが完了して、図9のBに示すように、左右方向側を幅広とした略直方体状の折り完了体71Aを形成することができる。
【0043】
次に、折り完了体71Aの周囲にラッピング部材49を巻き付ける。まず、図10のA,Bに示すように、各補助取付片59,60の係止孔59b,60bに、折り完了体71Aから突出しているリテーナ9のボルト9aを挿通させて、各補助取付片59,60を取り付ける。その後、前壁部53に形成される係止孔54aに、ボルト9aを挿通させて、係止部54をボルト9aに係止させる。同様にして、後壁部55の外側(端縁側)に形成される係止孔56aに、ボルト9aを挿通させて、係止部56をボルト9aに係止させて、折り完了体71Aの周囲にラッピング部材49の本体部50を巻き付ける(図10のC参照)。
【0044】
そして、ラッピング部材49を巻き付けた状態の折り完了体71Aを、所定の治具にセットし、高さ寸法を縮めるように、プレス加工を施す。プレス加工後の折り完了体71B(押圧折り完了体)を、治具から取り出し、後壁部55の係止孔56aから一旦ボルト9aを外し、後壁部55を、強く引っ張るようにして、内側(天井壁部51側)に形成される係止孔56bにボルト9aを挿通させ、係止部56を、巻き付け長さを縮められた状態で、ボルト9aに係止させれば、図10のDに示すように、高さ寸法を縮められた状態の折り完了体71Bの周囲に、ラッピング部材49を隙間なく巻き付けることができる。
【0045】
その後、各ボルト9aをケース12の底壁部12aから突出させるようにして、折り完了体71Bをケース12内に収納させ、底壁部12aから突出している各ボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させて、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、折り畳まれたエアバッグ15(折り完了体71B)とインフレーター8とをケース12に取り付けることができる。そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに、ケース12の周壁部12bを係止させ、ケース12の図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側に固定させれば、エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0046】
エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時に、インフレーター8の各ガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方へ突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、図1の二点鎖線に示すように、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
【0047】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ラッピング部材49において、折り完了体71(71A,71B)への巻き付け方向側の両端側(前後両端側)に、折り完了体71(71A,71B)から突出している取付手段としてのボルト9aに係止可能な係止孔54a,56a,56bを有した係止部54,56が、配置され、この係止部54,56の内、一方側となる後壁部55に形成される係止部56が、可動側係止部として、折り完了体71(71A,71B)への巻き付け長さL1,L2を、縮め可能に、2段階でボルト9aに係止可能な構成とされている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置では、エアバッグ15の折り畳み完了時に、プレス加工前の折り完了体71Aの周囲に、ラッピング部材49を巻き付け、一方側の係止部56において、ラッピング部材49の縁部側に配置される係止孔56a(外側の係止孔)にボルト9aを係止させ、その後、ラッピング部材49ごと、折り完了体71Aに、プレス加工を施し、プレス加工後に、折り完了体71Bへの巻き付け長さを縮めるように、一方側の係止部56において、内側に配置される係止孔56bに、ボルト9aを係止させれば、ラッピング部材49の実質的な長さ寸法を小さくすることができて、プレス加工を施されて高さ寸法を縮められた状態の折り完了体71Bの周囲に、ラッピング部材49を隙間なく巻き付けることができる。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ラッピング部材49ごとプレス加工を施し、プレス加工後に、一方側の係止部56の係止孔56bをボルト9aに再度係止させて、折り完了体71Bへの巻き付け長さを縮められることから、プレス加工を施されて高さ寸法を縮められた状態の折り完了体71Bの周囲を隙間なく覆うことができ、プレス加工された折り完了体71Bのスプリングバックを抑制できて、高さ寸法を縮められたコンパクトな状態を維持することができる。
【0048】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ15を折り畳んで形成される折り完了体71Bを、コンパクトな外形形状を維持して、ケース12内に円滑に収納させることができる。
【0049】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、折り完了体71(71A,71B)を、略直方体形状として構成し、ラッピング部材49を、折り完了体71(71A,71B)の上面側を略全面にわたって覆い可能な構成とするとともに、巻き付け方向を折り完了体71(71A,71B)の短手方向に沿わせるように、構成している。そのため、折り完了体71(71A,71B)が、長手方向に沿った広い領域(長辺側)を、略全域にわたって、ラッピング部材49の本体部50により押えられることから、プレス加工を施された折り完了体71Bにスプリングバックが生ずることを、極力抑制して、コンパクトな状態を維持させることができる。もちろん、このような点を考慮しなければ、ラッピング部材として、巻き付け方向を折り完了体の長手方向に沿わせるように、構成したものを使用してもよい。なお、実施形態では、ラッピング部材49として、本体部50から左右に突出する補助取付片59,60を備えるものを使用し、これらの補助取付片59,60が、折り完了体71(71A,71B)の短辺側を覆うように構成されているが、この補助取付片は、折り完了体71(71A,71B)の周囲を全周にわたって覆うために配設されるものであって、このような点を考慮しなければ、配設させない構成としてもよい。
【0050】
次に、他の実施形態のラッピング部材75について、説明をする。ラッピング部材75は、図11に示すように、可動側係止部としての係止部77を有する後壁部76以外は、前述のラッピング部材と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
後壁部76は、天井壁部51Aから連なるように、前壁部53Aと前後で略対称形として構成されるもので、詳細には、係止部77の第1取付片78を、構成している。係止部77は、この第1取付片78と、第1取付片78の外表面側(平らに展開した状態の上面側)に縫着される第2取付片79と、を備える2枚重ね状とされている。
【0052】
後壁部76(第1取付片78)は、先端78a側における左右方向の中央側を、インフレーター8の外形形状にあわせて凹ませて構成されるとともに、先端78a側に、折り完了体71から突出しているリテーナ9のボルト9aに係止可能な係止孔78cを、備えている。第2取付片79は、外形形状を、第1取付片78と略相似形状として、第1取付片78より僅かに小さく構成され、元部79b側を、第1取付片78の元部78b側に、縫合糸を用いて縫着されている。そして、第2取付片79は、先端79a側に、リテーナ9のボルト9aに係止可能な係止孔79cを、備えている。実施形態では、第2取付片79は、先端79aを、第1取付片78の先端78aよりも内側(天井壁部51A側)であって、かつ、係止孔78cよりも外側に、配置させている。これらの第1取付片78に形成される係止孔78cと、第2取付片79に形成される係止孔79cと、は、前壁部53Aに形成される係止部54Aとの離隔距離、すなわち、巻き付け方向側での折り完了体71への巻き付け長さを、縮め可能とするように、2段階でボルト9aに係止可能に構成されるもので、巻き付け方向側となる前後方向側で、並設させて構成されている。このラッピング部材75では、第1取付片78に形成される係止孔78cが、後壁部76の端縁側(外側)に配置されて、ラッピング部材75をプレス加工前の折り完了体71Aに巻き付けた当初に、ボルト9aに係止される第1の係止孔78cであり、第2取付片79に形成される係止孔79cが、天井壁部51A側(内側)に配置されて、プレス加工後の折り完了体71Bから突出しているボルト9aに、係止される第2の係止孔79cである。すなわち、このラッピング部材75の本体部50Aにおいても、プレス加工前の巻き付け長さL3(図11参照)は、平らに展開させた状態のラッピング部材75における係止孔54a,78c間の離隔距離と一致し、プレス加工後の巻き付け長さL4(図11参照)は、平らに展開させた状態のラッピング部材75における係止孔54a,79cの離隔距離と一致して、プレス加工前の巻き付け長さL3より縮められることとなる。このような構成のラッピング部材75も、図12に示すように、前述のラッピング部材49と同様の手順で、折り完了体71(71A,71B)の周囲に巻き付けることができる。
【0053】
このような構成のラッピング部材75を使用したエアバッグ装置では、上述の作用に加えて、以下のような作用を得ることができる。ラッピング部材75を使用したエアバッグ装置では、折り完了体71Aのプレス加工後に、図12のC,Dに示すように、第1取付片78の係止孔78cにボルト9aを係止させた状態で、第1取付片78の係止孔78cよりも折り完了体71Bへの巻き付け長さを縮められている第2取付片79の係止孔79c(内側の係止孔)に、ボルト9aを係止させれば、ラッピング部材75の本体部50Aの実質的な長さ寸法を小さくすることができ、プレス加工後の折り完了体71Bの周囲を隙間なく覆うことができる。そのため、前述のエアバッグ装置Mにおいて使用されるラッピング部材49のごとく、外側の係止孔から一旦、ボルト9aを外し、内側の係止孔に取付手段を係止させる作業が不要となって、このような取り外し作業の際に、折り完了体71Bのスプリングバックを抑制できる。
【0054】
さらに、ラッピング部材82として、図13に示すように、前壁部83と後壁部87とに形成される係止部84,88を、ともに、第1取付片85,89と第2取付片86,90とを備える2枚重ね状として、各第1取付片85,89,第2取付片86,90の先端85a,86a,89a,90a側に、ボルト9aを挿通可能な係止孔85b,86b,89b,90bを、配置させる構成のものを使用してもよい。このラッピング部材82において、前述のラッピング部材49と同様の部材は、同一の図符号の末尾に「B」を付して、詳細な説明を省略する。このラッピング部材82は、前後左右に対称形とされている。このようなラッピング部材82を使用する場合、ラッピング部材82における巻き付け方向側の中央を、折り完了体の中央と略一致させることができ、天井壁部51Bに形成されて、係止部84,88間の中央に配置される破断予定部52Bが、位置ずれすることを抑制できる。
【0055】
なお、実施形態では、助手席用エアバッグ装置Mを例に採り、説明したが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は助手席用に限られるものではなく、ステアリングホイール用のエアバッグ装置や、さらには、折り完了体の外形形状が略直方体ではないサイドエアバッグ装置、膝保護用エアバッグ装置等にも、適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
8…インフレーター、9…リテーナ、9a…ボルト(取付手段)、12…ケース(収納部位)、15…エアバッグ、49…ラッピング部材、54…係止部、54a…係止孔、56…係止部、56a,56b…係止孔、71(71A,71B)…折り完了体、75…ラッピング部材、77…係止部、78…第1取付片、78c…係止孔、79…第2取付片、79c…係止孔、82…ラッピング部材、84,88…係止部、85,89…第1取付片、85b,89b…係止孔、86,90…第2取付片、86b,90b…係止孔、M…エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13