特許第5983607号(P5983607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983607
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】有機電子デバイス製造装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20160818BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160818BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20160818BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20160818BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   B05C5/02
   B05C11/10
   B05C11/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-522573(P2013-522573)
(86)(22)【出願日】2012年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2012065077
(87)【国際公開番号】WO2013005536
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-147843(P2011-147843)
(32)【優先日】2011年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」共同研究 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 敦希
(72)【発明者】
【氏名】蔵方 慎一
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−207469(JP,A)
【文献】 特開2010−091990(JP,A)
【文献】 特開2007−130588(JP,A)
【文献】 特開2010−099597(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/129819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に複数の素子をなす領域が所定の間隔を空けて延在方向に沿って配列され、前記領域毎に所定の電極パターン及び当該電極パターンの幅方向に所定のアライメントマークが形成された当該透明基材に対して、有機電子デバイス層を塗布する有機電子デバイス製造装置であって、
前記透明基材をロールトゥロールで搬送する搬送部と、
前記搬送部における前記透明基材の搬送経路上に当該透明基材の幅方向に移動自在に配置され、前記透明基材に対して前記有機電子デバイス層を塗布する塗布部と、
前記塗布部に対して前記透明基材の搬送方向の上流側に配置され、前記アライメントマークを検出して幅方向における前記透明基材の基準位置からのズレ量を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記ズレ量を補正するように、前記塗布部を前記幅方向に移動させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記検出部により前記アライメントマークが検出された領域の直下流にある前記所定の間隔が前記塗布部を通過するまでに当該塗布部の移動を完了させることを特徴とする有機電子デバイス製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の有機電子デバイス製造装置において、
前記制御部は、前記検出部により前記アライメントマークが検出された領域の直下流にある前記所定の間隔の下流側の半分の位置が前記塗布部を通過するまでに当該塗布部の移動を完了させることを特徴とする有機電子デバイス製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の有機電子デバイス製造装置において、
前記検出部は、同軸照明を備えたカメラであって、
前記アライメントマークが前記カメラに対向した場合にのみ前記同軸照明による照明及び前記カメラによる撮影が同時に行われることを特徴とする有機電子デバイス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電子デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型TV需要の高まりに伴い、液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス・フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なる何れのディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成技術となっている。また、テレビ以外でも、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことのできない技術要素となっている。
【0003】
従来、透明電極は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基材上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法、スクリーン印刷法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。そして、透明電極は透明基材上に所定のパターンとして成膜されているが、これに重なるように有機電子デバイス層を塗布することで有機電子デバイスの製造を行っている(例えば特許文献1参照)。
ここで、透明基材に有機電子デバイス層を塗布する際に、透明基材が幅方向に位置ズレしていると正確な位置への塗布が阻害されてしまう。このため、透明基材を幅方向に移動させて位置ズレを補正することで透明基材に対する塗布位置を調整してから、有機電子デバイス層の塗布を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、透明基材を幅方向に移動させて塗布位置を物理的手段により調整する場合、透明基材がなんらかの物理的手段により擦れてしまうために、透明基材に傷が発生したり、粉塵が発生したりする一因となっていた。特にロールトゥロールで透明基材を搬送する場合には、搬送ロール等を用いて透明基材を幅方向に移動させて塗布位置を調整するが、その際、透明基材と搬送ロール等との摩擦力が大きいため透明基材に傷が発生したり、粉塵が多量に発生したりするおそれがあった。
本発明の課題は、ロールトゥロールで透明基材を搬送する際に、透明基材を幅方向に移動させずに塗布位置の調整を可能とすることで、透明基材の傷の発生及び粉塵の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
透明基材上に複数の素子をなす領域が所定の間隔を空けて延在方向に沿って配列され、前記領域毎に所定の電極パターン及び当該電極パターンの幅方向に所定のアライメントマークが形成された当該透明基材に対して、有機電子デバイス層を塗布する有機電子デバイス製造装置であって、
前記透明基材をロールトゥロールで搬送する搬送部と、
前記搬送部における前記透明基材の搬送経路上に当該透明基材の幅方向に移動自在に配置され、前記透明基材に対して前記有機電子デバイス層を塗布する塗布部と、
前記塗布部に対して前記透明基材の搬送方向の上流側に配置され、前記アライメントマークを検出して幅方向における前記透明基材の基準位置からのズレ量を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記ズレ量を補正するように、前記塗布部を前記幅方向に移動させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記検出部により前記アライメントマークが検出された領域の直下流にある前記所定の間隔が前記塗布部を通過するまでに当該塗布部の移動を完了させることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の有機電子デバイス製造装置において、
前記制御部は、前記検出部により前記アライメントマークが検出された領域の直下流にある前記所定の間隔の下流側の半分の位置が前記塗布部を通過するまでに当該塗布部の移動を完了させることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の有機電子デバイス製造装置において、
前記検出部は、同軸照明を備えたカメラであって、
前記アライメントマークが前記カメラに対向した場合にのみ前記同軸照明による照明及び前記カメラによる撮影が同時に行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロールトゥロールで透明基材を搬送する際に、透明基材を幅方向に移動させずに塗布位置の調整を可能とすることで、透明基材の傷の発生及び粉塵の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る有機電子デバイス製造装置の概略構成を示す説明図である。
図2】本実施形態に係る透明基材の概略構成を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る有機電子デバイス製造装置における主制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
図1は本実施形態に係る有機電子デバイス製造装置の概略構成を示す正面図である。この図1に示すように、有機電子デバイス製造装置1は、透明基材2をロールトゥロールで搬送する搬送部3と、透明基材2に対して有機電子デバイス層を塗布する塗布部4と、透明基材2の基準位置からのズレ量を検出する検出部5とを備えている。ここで、透明基材2の基準位置からのズレ量とは、本来、透明基材2が搬送されるべき搬送位置(基準位置)に対して透明基材2がずれた量のことを指す。
【0013】
搬送部3は、透明基材2を回転自在に保持する引出部31と、透明基材2をロール状に巻き取る巻取部32とを備えており、これにより透明基材2をロールトゥロールで搬送できるようになっている。引出部31と、巻取部32との間には、透明基材2の搬送経路を形成する搬送ローラ33,34が設けられている。
【0014】
塗布部4は、例えばダイコーターであり、搬送ローラ34に対向するように配置されている。塗布部4は、搬送ローラ34の表面に支持された透明基材2に対して有機電子デバイス層を形成する塗布材料を塗布するようになっている。そして、塗布部4は、搬送部3における透明基材2の搬送経路上で当該透明基材2の幅方向に移動自在に配置されている。有機電子デバイス層としては、例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層が挙げられる。
【0015】
図2は、透明基材2の概略構成を示す正面図である。図2に示すように透明基材2には、複数の素子をなす領域21が所定の間隔22を空けて透明基材2の延在方向に沿って配列されている。この各領域21に対して塗布部4が有機電子デバイス層をなす塗布材料を塗布するようになっている。
【0016】
ここで、各領域21には、所定の電極パターン(図示省略)が形成されているとともに、アライメントマーク24が形成されている。これら電極パターン及びアライメントマーク24は、例えばスクリーン印刷によって予め透明基材2上に形成されている。
【0017】
図1に示すように、検出部5は、塗布部4に対して透明基材2の搬送方向の上流側に配置されている。検出部5は同軸照明51を備えたカメラ52である(図3参照)。検出部5は、塗布部4による塗布が行われる列のアライメントマーク24を画面内に収められる位置に配置されている。ここで、同軸照明51による照明及びカメラ52による撮影は、アライメントマーク24がカメラ52に対向した場合にのみ行われる。すなわち、アライメントマーク24がカメラ52に対向していない場合には、当該同軸照明51を消灯して暗くすることで撮影が出来ない状態にして誤検出を防止する、あるいは、当該カメラ52の撮影を停止することでアライメントマーク24の誤検出を防止することが好ましい。このように、誤検出は、同軸照明51を消灯するか、あるいはカメラ52の撮影を停止することで防止することが可能であるが、同軸照明51の消灯及びカメラ52の撮影停止の両方行った方が、電力の消費の観点から、さらに好ましい。検出部5は、アライメントマーク24を検出して幅方向における透明基材2の基準位置からのズレ量を検出する。
【0018】
図3は、有機電子デバイス製造装置1における主制御構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御部10は、CPU、RAM、ROMを備えており、制御部10には、巻取部32の駆動源である巻取部駆動源11と、検出部5と、塗布部4とが電気的に接続されている。
制御部10は、検出部5が検出したズレ量を補正するように、塗布部4を制御し透明基材2の幅方向に移動させる。塗布部4を移動させる際には、制御部10は、検出部5によりアライメントマーク24が検出された領域21の直下流にある所定の間隔22が塗布部4を通過するまでに当該塗布部4の移動を完了させる。図2を例示して具体的に説明すると、アライメントマーク24が検出された領域21がAの部分だとすると、その直下流にある所定の間隔22はBの部分となる。このBの部分が塗布部4に達すると、当該塗布部4の透明基材2の幅方向の移動が開始され、Bの部分が塗布部4を通過するまでに塗布部4の移動を完了させるようになっている。
【0019】
次に、本実施形態の搬送方法について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
まず、制御部10が巻取部駆動源11を制御して、巻取部32を回転させると引出部31から透明基材2が引き出され、透明基材2の搬送が行われる。搬送中、透明基材2の各領域21内のアライメントマーク24が検出部5に対向すると、検出部5の同軸照明51が点灯し、カメラ52によりアライメントマーク24の撮影が行われる。検出部5は撮影により取得した画像からアライメントマーク24の基準位置に対するズレ量を算出する。撮影後においては、次のアライメントマーク24が検出部5に対向するまで、同軸照明51を消灯するか、あるいはカメラ52による撮影を停止しておくことが好ましく、特に、好ましくは両方行うことである。
【0020】
そして、制御部10は、検出部5が検出したズレ量を補正するように、塗布部4を制御し幅方向に移動させる。塗布部4を移動させる際には、制御部10は、検出部5によりアライメントマーク24が検出された領域21の直下流にある所定の間隔22が塗布部4を通過するまでに当該塗布部4の移動を完了させる。
そして、領域21に塗布部4が対向した後、塗布部4は領域21に対して有機電子デバイス層を塗布する。有機電子デバイス層が塗布された領域21は巻取部32に巻き取られる。
これを透明基材2の各領域21に対して行うことで、1ロール全ての領域21に対する位置ズレを補正することができる。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、検出部5によりアライメントマーク24が検出された領域21の直下流にある所定の間隔22が塗布部4を通過するまでに当該塗布部4の移動を完了させて塗布部4の位置ズレを補正しているので、有機電子デバイス層を領域21に塗布する際には位置ズレが解消された状態となっている。そして、位置ズレの補正は塗布部4を移動させることで行っているので、従来のように透明基材を移動させることで位置ズレ補正を行っている場合と比べても、透明基材2が摩耗することは防止される。このように、本実施形態であると、ロールトゥロールで透明基材2を搬送する際に、透明基材2を幅方向に移動させずに塗布位置の調整が可能となり、傷や粉塵の発生を防止することができる。
【0022】
また、同軸照明51による照明及びカメラ52による撮影は、アライメントマーク24がカメラ52に対向した場合にのみ同時に行われているので、電力消費を極力抑えつつ確実にアライメントマーク24の誤検出を防止することができる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。なお、以下の説明において上記実施形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
例えば、上記実施形態では、塗布部4の移動は、検出部5によりアライメントマーク24が検出された領域21の直下流にある所定の間隔22が塗布部4を通過するまでに行われている場合を例示して説明したが、検出部5によりアライメントマーク24が検出された領域21の直下流にある所定の間隔22の下流側の半分以下が塗布部4を通過するまでに当該塗布部4の移動を完了させていることがより好ましい。これにより、塗布部4が幅方向に移動してから、有機電子デバイス層を塗布するまでの間に、待機時間を確保することができる。この待機時間によって、移動時の慣性力が有機電子デバイス層の塗布に作用することを抑えることができ、均一な成膜を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る有機電子デバイス製造装置は、有機電子デバイス層を透明基材に塗布する有機電子デバイスの製造分野において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0025】
1 有機電子デバイス製造装置
2 透明基材
3 搬送部
4 塗布部
5 検出部
10 制御部
11 巻取部駆動源
21 領域
22 間隔
24 アライメントマーク
31 引出部
32 巻取部
33 搬送ローラ
34 搬送ローラ
51 同軸照明
52 カメラ
図1
図2
図3