(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
輸送機器等における摺動部品や回転部品では、使用条件によって高面圧となり、オイル供給が不足することがある。均一な油膜形成が難しく、固体接触が起きやすい境界・混合潤滑下では、固体接触による摩擦抵抗の増加や、摩耗・焼付きが発生し易い。この摩擦抵抗の増加や摩耗・焼付き防止の観点から、摺動部材に滑りが良好な樹脂材料をコーティングして潤滑性能を向上させる一方、摺動部材の摺動面の耐摩耗性、耐焼付き性、摺動特性をより向上させるために、摺動部材の樹脂表面にディンプル(凹部)を形成した技術もある。
【0007】
しかし、摺動部材の樹脂表面にディンプルを形成するためには、樹脂材料のコーティング加工後に、ディンプル成形加工を追加して実施しなければならず、独立したショットブラスト装置やレーザ加工装置等のディンプル形成装置が必要となる。しかも、従来技術では、摺動部材の樹脂表面にディンプルの形成自体が困難で、ディンプルの成形加工が繁雑で複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、基材上の皮膜をディンプルと樹脂コーティング層とから同時に成形でき、耐摩耗性、耐焼付き性、摺動特性を向上させた摺動部材およびその製造方法ならびに樹脂皮膜の生成方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、熱的挙動特性の異なる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を混合した混合樹脂を熱処理することにより、樹脂コーティング層とディンプルとを同時に成形した皮膜を基材上にコーティングすることができる摺動部材およびその製造方法ならびに樹脂皮膜の生成方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、熱的挙動特性が異なり、混合前に液体の熱硬化性樹脂と固体粒状の熱可塑性樹脂を混合してコーティングし、熱処理して樹脂コーティング層にディンプルを形成した皮膜を得ることができ、ディンプル形成装置を不要にして皮膜の成形が容易な摺動部材およびその製造方法ならびに樹脂皮膜の生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の
目的を達成するために、本発明に係る実施形態は、基材と、該基材の表面に
液体状の熱硬化性樹脂
の固化物である熱硬化樹脂と熱可塑性樹脂と
の混合樹脂のコーティングからなる摺動部材において、前記混合樹脂は
前記熱硬化性樹脂
中に、前記熱硬化樹脂より線膨張係数が大きい固体粒子状の熱可塑性樹脂
が分散配置された混合物であり、
前記混合樹脂のコーティングにより、前記基材
上に樹脂コーティング層の樹脂皮膜が設けられ、前記樹脂皮膜は、前記基材上の樹脂表面が前記樹脂コーティング層と前記熱可塑性樹脂の直上に形成されたディンプルとで構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
上記実施例において、前記混合樹脂は、ポリアミドイミド樹脂製熱硬化性樹脂の内部にナイロン12樹脂製熱可塑性樹脂の固形粒子を
均一に混合させた混合物であることが好ましい。
【0014】
また、樹脂コーティング層の表面に形成されるディンプルの形状は、前記熱可塑性樹脂の固形粒子の大きさと形状で規定(または決定)されることが好ましい。
【0015】
さらにまた、樹脂コーティング層の表面に形成されるディンプルの分布状態は、前記熱可塑性樹脂の固形粒子の添加量で規定(または決定)されることが好ましい。
【0016】
望ましくは、前記熱可塑性樹脂の固形粒子は球状である。
【0017】
本発明の目的を達成するための他の実施形態における摺動部材の製造方法においては、基材を準備し、該基材の表面に、液体状の熱硬化性樹脂と
線熱膨張係数が前記熱硬化性樹脂より大きい固形粒子状の熱可塑性樹脂とを混合させた混合樹脂をコーティングし、前記コーティングされた混合樹脂を熱処理して前記基材上に樹脂コーティング層を形成し、前記樹脂コーティング層を冷却して、樹脂コーティング層の表面にディンプルを形成し、前記ディンプルを形成した樹脂コーティング層で前記摺動部材の摺動面を構成することを特徴とする。
【0018】
この摺動部材の製造方法においては、前記混合樹脂は
ポリアミドイミド樹脂製熱硬化性樹脂の内部にナイロン樹脂製熱可塑性樹脂の固形粒子を均一混合させ、分散させた混合物であり、この均一混合した混合樹脂を熱可塑性樹脂の融点T
1以上で、かつ熱硬化性樹脂の硬化温度T
2以上に加熱して熱処理する事が望ましい。
【0019】
また、前記混合樹脂の熱処理温度は、熱硬化性樹脂の硬化温度以上でかつ熱可塑性樹脂の融点からの温度差が50℃未満であることが望ましい。
【0020】
また、前記基材上の樹脂コーティング層表面に形成されるディンプルの形状と大きさを、熱可塑性樹脂の固形粒子の形状と大きさにより規定(または決定)することが望ましい。
【0021】
また、前記基材の樹脂コーティング層表面に形成されるディンプルの分布状態を、熱可塑性樹脂の固形粒子の添加量の調節により規定(または決定)することが望ましい。
【0022】
本発明の目的を達成するための他の実施形態における樹脂皮膜の生成方法は、基材の表面に液体状の熱硬化性樹脂と
線熱膨張係数が前記熱硬化性樹脂より大きい固形粒子状の熱可塑性樹脂とを均一混合させた液体状の混合樹脂をコーティングし、コーティングされた液体状の混合樹脂を熱処理して前記樹脂コーティング層の表面にディンプルを形成し、前記樹脂コーティング層とディンプルを備えた皮膜により前記基材の摺動面を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、(摺動部材の)基材上に熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合樹脂をコーティングして熱処理するだけで、樹脂コーティング層とディンプルを備えた皮膜を構成し、基材上の皮膜表面にディンプルを自動的に設けることができ、樹脂本来の摺動特性に加えて、ディンプルによるオイル保持機能の相乗効果が得られ、耐摩耗性、耐焼付き性、摺動特性を向上させることができる。
【0024】
摺動部材の基材上にコーティングされる樹脂コーティング層の表面に、ディンプルを自動的にかつ樹脂コーティング層の成形と同時にディンプル形成装置を用いることなく構成することができ、ディンプル付きの樹脂コーティング層を備えた皮膜の成形が容易で成形加工も簡素化することができる。
【0025】
本発明実施例による更なる特徴及び効果は添付図面を参照した以下の記載によりさらに明白になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0028】
[摺動部材およびその基材上の皮膜]
本発明は、自動車等の輸送機器における内燃機関のピストン、ピストンリング等の摺動部品、その他移動機器の回転機械軸受、摺動部品等の摺動部材を対象とし、摺動部材の摺動面の摩擦係数の低減、耐摩耗性、耐焼付き性、摺動特性の向上を目的として、摺動部材である基材上にコーティングされる皮膜に樹脂コーティング層とディンプルの成形加工を同時に強制的な力を加えないで実現可能とするものであり、また、皮膜表面のディンプルの生成にディンプル形成装置の使用を不要としたものである。
【0029】
摺動部材である基材にコーティングされる皮膜は、熱的挙動特性の異なる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の複数種類、例えば2種類の樹脂を混合させて、熱処理することで、基材上に皮膜を形成し、この皮膜の表面に多数のディンプルを自然にかつ自動的に成形したものである。したがって、基材上の皮膜に樹脂コーティング層とディンプルを同時に実現することができる。これらのディンプルはオイル溜りとして構成され、優れたオイル保持機能を有する。使用される熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂はそれぞれ1種類に限定されず、例えば熱可塑性樹脂は複数種類を組み合せて使用してもよい。
【0030】
この実施形態の摺動部材は、基材の摺動面を熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を混合し、分散させた液体状の混合樹脂をコーティングして樹脂コーティング層を形成する一方、この樹脂コーティング層の表面にオイル溜りとなるディンプルをディンプル形成装置を使用することなく自動的に形成でき、樹脂コーティング層とディンプルを備えた皮膜を基材上に構成したものである。
【0031】
一方、樹脂材料は熱によって硬化する熱硬化性樹脂と、熱によって軟化する固体状の熱可塑性樹脂に分類される。熱硬化性樹脂の多くは、加熱による熱処理時により硬化し、架橋による硬化時に体積収縮を伴う。また、熱可塑性樹脂、特に結晶性樹脂は加熱による融解時に結晶状態から非結晶状態に相変化が生じ、可逆的な体積変化が発生する。
【0032】
本実施形態では、熱的挙動の異なる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の、例えば2種類の樹脂を巧に利用して組み合せ、混合して液体状の混合樹脂を基材の表面にコーティングする。その後、基材上にコーティングされた液体状混合樹脂を加熱する熱処理(焼成)を行なって皮膜を形成すると、基材上に樹脂コーティング層とディンプルからなる皮膜が自動的に形成されることを知見したものである。
【0033】
摺動部材の基材上に形成される皮膜は、ディンプル形成装置を用いなくても、混合前液体状の熱硬化性樹脂と、固体粒子状の熱可塑性樹脂の混合樹脂をコーティングし、熱処理することにより、基材の樹脂コーティング層上の表面にディンプルを同時に成形でき、樹脂コーティング層とディンプルを備えた皮膜が得られるようにしたものである。
【0034】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂等が用いられる。
【0035】
また、これらの熱硬化性樹脂と組み合される熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等が用いられる。熱可塑性樹脂は、熱処理によって軟化、又は融解し可逆的な体積変化を伴うもので、熱硬化性樹脂中に均一に分散させることのできるものが選択されて使用される。
【0036】
また、基材上の皮膜は樹脂コーティング層とディンプルにより構成される。樹脂コーティング層を形成する熱硬化性樹脂表面に形成されるディンプルのサイズは、熱硬化性樹脂に混入される熱可塑性樹脂の固形粒子サイズと比例的な相関関係にあり、密に関係していることを知見した。したがって、熱可塑性樹脂の固形粒子にはサブマイクロメートルからマイクロメートル程度のサイズの粒子が用いられ、熱可塑性樹脂は平均粒径が、例えば数μm〜数100μm、好ましくは10数μmの固形粒子が用いられる。熱可塑性樹脂の粒子形状や粒子径は特に限定を受けないが、粒子形状と大きさは基材の皮膜のディンプル形状とディンプルサイズに影響を与える。このため、粒子形状に関しては球状が好ましい。固形粒子が球形であれば、基材の皮膜表面に略円形のディンプルを形成でき、熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂に混合するときの分散性が良好となる。
【0037】
<摺動部材の製造方法>
次に、摺動部材の製造方法の実施形態を説明する。
【0038】
この実施形態では、内燃機関や回転機械の摺動部材の表面に樹脂コーティング層を形成する一方、この樹脂コーティング層の形成と同時にディンプルが得られる摺動部材の製造手順を示すものである。
【0039】
摺動部材の表面をコーティングする樹脂材料には、熱によって硬化する熱硬化性樹脂と熱によって軟化する熱可塑性樹脂が用いられる。本実施形態では、熱的挙動の異なる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の2種類の樹脂を所要の体積比率で混合し、分散させた混合樹脂をコーティングして熱処理することで樹脂コーティング層を基材上に形成する一方、この形成と同時に樹脂コーティング層の表面にディンプルが得られるようにした摺動部材の製造方法である。
【0040】
熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂との混合前に液体状のポリアミドイミド樹脂あるいはイミド樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。熱硬化性樹脂の多くは熱処理する硬化時に体積収縮を伴う樹脂材料が使用される。
【0041】
一方、熱硬化性樹脂に混合される熱可塑性樹脂は固形粒子状、好ましくは、数μm〜数10μmの球状固形粒子のポリアミド樹脂もしくはポリエチレン樹脂、混合ポリマーが用いられる。熱可塑性樹脂、特に結晶性樹脂は、加熱による融解時に結晶状態から非結晶状態に変化し、可塑的な体積変化が生じる。
【0042】
本実施形態では、摺動部材の製造手順の第1段階として、
図1に示すように容器10内に液体状の熱硬化性樹脂11に固体粒子状の熱可塑性樹脂12を混合して均一に分散させて収容する。液体状の熱硬化性樹脂11に数μm〜数10μmの固体粒子状の熱可塑性樹脂12を均一に分散させるために、撹拌機や混練混合機(共に図示せず)等が用いられ、全体として液体状の混合樹脂13が構成される、液体状混合樹脂13には有機溶剤、例えば(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や、ガンマブチロラクトン(GBL)など)を添加することで、熱可塑性樹脂12の粘度調整が行なわれる。
【0043】
また、熱可塑性樹脂12は、液体状の熱硬化性樹脂11を希釈する際に用いる溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)や、ガンマブチロラクトン(GBL)など)に対して耐溶剤性を持つ必要がある。さらに、熱可塑性樹脂12は、熱硬化性樹脂11への固形粒子の分散性を考慮した場合、球状の形状が望ましく、固形粒子を安定化させるための分散剤や安定化剤、さらに液状混合樹脂のコーティング時の気泡発生を抑止する消泡剤を適宜用いてもよい。
【0044】
熱硬化性樹脂表面に形成されたマイクロディンプルのサイズは、分散された固形粒子のサイズと密に関係し、比例的相関関係がある。熱可塑性樹脂12の固形粒子のサイズはサブマイクロメートルからマイクロメートル程度のサイズを有するものが選択される。固形粒子の平均サイズ(平均粒径)は、例えば数μm〜数10μmの中から適宜選択される。
【0045】
第2段階として、液体状の熱硬化性樹脂11と固形粒子状の熱可塑性樹脂12の液体状混合樹脂13は、摺動部材15の基材16表面に、
図2(2A)に示すように、塗布や噴霧、孔版印刷等の方法によりコーティングされる。このコーティングにより数μm〜数10μm程度の均一な厚さの液状混合樹脂皮膜18が形成される。
【0046】
基材16には熱硬化性樹脂11の耐熱温度より高い熱安定性を有する材質の材料、例えば鉄鋼材料、アルミニウム材料が用いられる。基材16と液体状混合樹脂13との密着性が不充分な場合には、基材表面に凹凸を形成して接触表面積を大きくしても、また基材表面に表面処理を施した状態であってもよい。
【0047】
第3段階として、基材16上に液体状混合樹脂13をコーティングして液状混合樹脂皮膜18を形成した後、熱可塑性樹脂12の融点(溶解点)T
1以上に加熱する熱処理が行なわれる。この熱処理により、融点T
1を超えると熱可塑性樹脂12は、
図2(2B)に示すように、固形粒子が熱膨張する。
【0048】
続いて、
図2(2C)に示すように熱可塑性樹脂12の融点T
1以上で、かつ熱硬化性樹脂11の硬化(開始)温度T
2以上で熱処理を行なうことにより、熱硬化性樹脂11は硬化が開始され、凝固に伴う体積収縮が始まる。熱硬化性樹脂11の硬化に伴う体積収縮により、力のバランス関係が変化し、熱可塑性樹脂12に体積変形が生ずる。
【0049】
その後、基材16の表面にコーティングされた混合樹脂が冷却されると、熱可塑性樹脂の可逆的な体積変化(収縮)によって体積が縮小し、熱硬化性樹脂表面の一部が内部から引張られる。熱可塑性樹脂12は引張応力の作用で結果として
図2(2D)に示すように、基材16上に液体状混合樹脂13の皮膜21が形成される。基材16上の皮膜21は樹脂コーティング層19と多数の(マイクロ)ディンプル20とから構成され、摺動部材15の摺動面を形成している。ディンプル20の大きさと形状は熱可塑性樹脂の固形粒子の大きさと形状と略相関関係を有するように構成される。
【0050】
その際、熱硬化性樹脂11として、熱可塑性樹脂12の融点T
1と同等か、あるいは少し高めの温度で、かつ温度差が50℃以下で硬化する樹脂の選択が望ましい。熱可塑性樹脂12の融点T
1より大幅に高い温度、例えば融点T
1より50℃を超える温度で硬化処理を行なうと、熱可塑性樹脂12の流動性が高くなり、熱硬化性樹脂11の内部で原型を留めることが困難となり、この影響で熱硬化性樹脂11の表面に形成されるディンプル形成も変形してしまうためである。
【0051】
また、
図2(2A)〜(2D)は、摺動部材15の基材16表面にコーティングされる液体状混合樹脂13の熱処理条件と(マイクロ)ディンプルの形成メカニズムを示すものである。
【0052】
本実施形態の摺動部材の製造方法では、液体状の熱硬化性樹脂11と固形形状の熱可塑性樹脂12とを所要の体積比率で混合した液体状混合樹脂13が用いられる。
【0053】
初めに、均一混合した液体状混合樹脂13を摺動部材15の基材16表面に所要の一定厚さでコーティングして基材16上に液状混合樹脂皮膜18を
図2(2A)のように形成した後、この液体状混合樹脂13を熱可塑性樹脂12の融点T
1以上に加熱することで、熱可塑性樹脂12が
図2(2B)に示すように熱膨張する。
【0054】
また、融点T
1以上の加熱で熱可塑性樹脂12の固形粒子が熱膨張する一方、さらに熱硬化性樹脂11の硬化開始温度点T
2以上に加熱する熱処理により、
図2(2C)に示すように、熱硬化性樹脂11は液体から固体への相変化が生じて硬化し、体積収縮が生じ、熱可塑性樹脂12は力のバランスを失い、固形粒子が熱膨張状態で変形する。次に、自然冷却や強制冷却により冷却されると固形粒子は可逆体積変化が生じて体積収縮が生じる。固形粒子が融点T
1以下に冷却されると、熱可塑性樹脂12は可逆的体積変化により、固形粒子が凝固して体積収縮が生じて変形し、熱硬化性樹脂11表面の一部と固形粒子内部から引張り、引張応力を作用させる。
【0055】
この結果、
図2(2D)に示すように、皮膜21の樹脂コーティング層は、熱硬化性樹脂表面、すなわち、樹脂コーティング層19の表面にマイクロディンプル20が自動的に構成され、基材16上に樹脂コーティング層19とマイクロディンプル20を構成した皮膜21が得られる。基材16上に焼成してコーティングされた皮膜21は、例えば5〜20μm程度の厚さを有する。
【0056】
次に、摺動部材の製造方法の具体的な実施例を説明する。
【0057】
[実施例1]
実施例1では、熱硬化性樹脂11として、熱硬化後に熱安定性が高く、高温による摺動性に優れた特徴を持つ、N−メチル−2−ピロリドンを主溶媒として溶解したポリアミドイミド樹脂を用いた例を示す。熱硬化温度は、熱硬化性樹脂11の組成によって異なるが、硬化温度が比較的低く180℃から硬化開始するものを用いた。
【0058】
しかして、熱硬化性樹脂11に混合して分散させる熱可塑性樹脂12としてナイロン12(東レ株式会社製)の固形粒子(グレード:SP−500,平均粒径5μm)を用いる。熱可塑性樹脂12は固形粒子が無添加の場合と1,3,5,9,17vol%添加した場合におけるSP−500添加量と摩擦係数および表面粗さとの関係をボールオンディスク試験機により測定した結果を
図3および
図4にそれぞれ示す。
【0059】
図3(3A)はSP−500添加量と摩擦係数の関係を示す測定値であり、
図3(3B)はその測定グラフである。
【0060】
図3(3A)および(3B)からSP−500添加量が3vol%以上添加した場合、無添加の場合より摩擦係数が小さく、摺動特性に優れ、滑り性が良好であることがわかる。
【0061】
また、
図4は、SP−500添加量と表面粗さの関係をJIS(B0601−1994)規格で示したものである。
図4(4)はSP−500添加量と表面粗さの関係を示す測定値のテーブルであり、
図4(4B)はその測定グラフである。
【0062】
図4(4A)及び(4B)から、表面粗さは、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)は、熱可塑性樹脂の固形粒子添加量に比例して略直線的に増加することを示している。
【0063】
次に、具体例として、ポリアミドイミド樹脂製熱硬化性樹脂11に混合して分散させるナイロン12樹脂製熱可塑性樹脂12として、前記SP−500の球状固形粒子を9vol%添加して熱処理した例を説明する。
【0064】
この熱可塑性樹脂12の固形粒子は、融点が165〜171℃、平均粒子径5μm、かさ密度3.5〜5.0cc/gのほぼ球状固形粒子である。
【0065】
しかして、ポリアミドイミド(PAI)樹脂の熱硬化性樹脂11に、平均粒径5μmの熱可塑性樹脂12の固形粒子を9vol%添加して、混合し、分散混合させた液体状混合樹脂13を摺動部材15の基材16、例えば鉄基材に塗布して、2通りの熱処理を行なった。
【0066】
1つは、140℃で2時間の熱処理(焼成処理)を行ない、残りは、
図5に示すように、180℃(T
3)で焼成し、2時間の熱処理(焼成処理)を行なった。
【0067】
実施例1の液体状混合樹脂13の焼成時間を180℃(T
3)で2時間とした例では、この焼成時間が10分であっても樹脂表面にマイクロディンプルの形成がSEM(Scanning Electron Microscope:走査顕微鏡)で確認することができた。ただ、焼成時間10分では熱硬化性樹脂11のポリアミドイミド(PAI)樹脂が完全に硬化しないため、必要な焼成時間は30分以上が望まれる。また、焼成時間は2時間以上加熱しても樹脂の物性は変化しないので、意味がない。したがって、180℃の焼成温度でマイクロディンプル20の形成には30分以上の加熱時間があれば足りる。
【0068】
一方、(1)140℃×2時間の熱処理(焼成時間)では、混合樹脂の樹脂コーティング層表面にディンプルが形成されず、樹脂コーティング層表面は平滑であった。
【0069】
(2)180℃×2時間の熱処理では、
図6に示すAFM(Atomic Force Microscope)像の表面観察結果に示すように、混合樹脂の表面には、内部に混合した熱可塑性樹脂12の球状固形粒子と略同等の直径約5μm、深さ約1μmのディンプル(マイクロディンプル)20がランダムに形成されていることが確認された。
【0070】
このことから、摺動部材15の基材16にコーティングされた球状混合樹脂20を異なる温度が熱処理したものを断面観察したところ(図示は省略)、(1)140℃×2時間の熱処理では、樹脂コーティング層19内部の熱可塑性樹脂12のナイロン12の球状固形粒子(以下、ナイロン粒子という。)は、混合添加前と同じ球状固形粒子を保っていたが、(2)180℃×2時間の熱処理ではナイロン粒子が基材16に対して垂直方向につぶれ、楕円形形状に変形していた。熱硬化性樹脂11の内部に熱可塑性樹脂12の固形粒子を混入した液体状混合樹脂13は、熱硬化性樹脂11の硬化に伴って、熱可塑性樹脂の固形粒子に可逆的な体積変化が生じて変形し、マイクロディンプル20の形成要因になったと考えられる。
【0071】
摺動部材15の基材16表面への液体状混合樹脂13のコーティングにより形成される樹脂コーティング層19を、熱可塑性樹脂12の融点T
1以上で、かつ熱硬化性樹脂11の硬化開始温度T
2以上に加熱する熱処理を実施することにより、基材16の表面に焼成される樹脂コーティング層19には、熱可塑性樹脂12の固形粒子にほぼ比例した相関関係を有する(マイクロ)ディンプル20を同時に形成することができた。
【0072】
摺動部材15の基材16上の皮膜21として、樹脂コーティング層19とディンプル20を同時に、ディンプル形成装置を用いることなく成形でき、しかも、樹脂コーティング層19は樹脂特有の潤滑性に加えて、樹脂コーティング層19表面のディンプル20が油溜りとなり優れたオイル保持機能を有するために、摺動部材15は耐焼付性、耐摩耗性および摺動特性を向上させることができる。
【0073】
[実施例2]
摺動部材15の基材16表面にコーティングされる液体状混合樹脂13として熱硬化性樹脂11には実施例1と同じポリアミドイミド樹脂(PAI)を使用し、熱硬化性樹脂11に混合して分散される熱可塑性樹脂12にナイロン12(東レ株式会社製)(グレード:SP−10;平均粒径10μm)の球状固形粒子を用いた場合として、熱可塑性樹脂12の固形粒子は無添加の場合と、1,3,5,9,17vol%添加した場合におけるSP−10添加量と摩擦係数および表面粗さとの関係を、ボールオンディスク試験機により測定した結果を
図7および
図8にそれぞれ示す。
【0074】
図7(7A)はSP−10添加量と摩擦係数の関係を示す測定値のテーブルであり、
図7(7B)はその測定グラフである。
【0075】
図7(7A)および(7B)からSP−10添加量が3vol%以上でかつ10数vol%以下の場合が摩擦係数が小さく、摺動特性に優れていることがわかる。
【0076】
また、
図8は、SP−10添加量と表面粗さの関係をJIS(B0601−1994)規格で示したものである。
図8(8A)はSP−10添加量と表面粗さの関係を示す測定値の表であり、
図8(8B)はその測定グラフである。
【0077】
図8(8A)および(8B)から、表面粗さは最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)は熱可塑性樹脂の固形粒子添加量に比例して略直線的に増加することを示している。
【0078】
次に、具体例として、熱硬化性樹脂11に混合して分散される熱可塑性樹脂として、前記SP−10の球状固形粒子(平均粒径10μm)を9vol%添加して熱処理した例を説明する。
【0079】
熱可塑性樹脂の球状固形粒子が平均粒径10μmの場合、固形粒子の粒径は6.0〜14.0μmで、かさ密度が2.0〜4.0cc/g、融点165℃〜171℃である。
【0080】
この実施例に用いられる液体状混合樹脂13の混合方法、摺動部材15の基材16への塗布は、実施例1と同様な方法で行ない、基材16に塗布された液状混合樹脂皮膜18の熱処理は、180℃×2時間とした。
【0081】
摺動部材15の基材16にコーティングされた液状混合樹脂皮膜18を熱処理した後には、
図9に示すように、焼成された液体状混合樹脂13の樹脂コーティング層19表面に直径約10μm、深さ約2μmの(マイクロ)ディンプル20の形成がAFM像(3次元)の表面観察の結果確認された。摺動部材15の基材16表面にコーティングされる液状混合樹脂皮膜18の樹脂コーティング層19の断面観察では、実施例1の断面観察と同様に、熱可塑性樹脂の変形の結果生じるディンプル20である。
【0082】
[摺動面と摩擦係数の関係]
図10は基材16の表面にコーティングされる皮膜21の表面状態が熱可塑性樹脂12の固形粒子の添加量に応じて変化する状態を示すもので、(10A)は熱硬化性樹脂のポリアミドイミド(PAI)樹脂だけの表面状態、(10B)〜(10F)はPAI樹脂に熱可塑性樹脂のSP−10をそれぞれ所要量添加した場合における表面状態をAFMによる3次元画像を示す図である。
図10の(10B)はSP−10の添加量が1vol%の場合、(10C)はSP−10の添加量が3vol%の場合、(10D)はSP−10の添加量が5vol%の場合、(10E)はSP−10の添加量が9vol%の場合、(10F)はSP−10の添加量が17vol%の場合の表面状態をそれぞれ示すものである。
図10(10A)〜(10F)から熱可塑性樹脂のSP−10の添加量が増加するに従って、皮膜21の表面状態は滑らかな平坦な状態から次第に起伏(凹凸の割合)が大きくなることがわかる。
【0083】
ところで、基材16の摺動を説明する上でストライベック曲線が重要になる。このストライベック曲線では、境界潤滑、混合潤滑、流体潤滑の大きく3領域に分けることができる。
【0084】
潤滑油が摺動面間に存在する場合、摺動面が互いに鏡面状態では、摺動面間に薄い油膜が形成されて、摩擦係数は最も低くなる(流体潤滑)。しかし、面圧が高くなると油膜切れが発生し固体接触が発生し摩擦係数(μ)が高くなる(混合潤滑)が、この時マイクロディンプルが存在することで、ピットに保持されたオイルが摺動面間に供給されて、油膜切れ(摩擦係数の上昇)を防止する(流体潤滑)ことができる。
【0085】
基材の摺動面と摩擦係数との一般的な関係は次の表に示すように表わされる。
【表1】
【0086】
図10に示された基材16の表面を考察すると、固形粒子の添加量が増加すると、皮膜(樹脂コート)21のマクロ的な表面粗さが粗くなり、(マイクロ)ピットによる摩擦係数の低減効果より、表面が粗くなったことによる固体接触面積(真実接触面積)の増加に伴う摩擦係数への悪影響が強くなると考えられる。
【0087】
[実施例3]
摺動部材15の基材16表面にコーティングされる液体状混合樹脂13として、熱硬化性樹脂11には、実施例1とポリアミドイミド樹脂を使用し、熱硬化性樹脂11に混合して分散される熱可塑性樹脂12にナイロン6(東レ株式会社製)(グレード:TR−2)の球状固形粒子を9vol%添加した。
【0088】
この熱可塑性樹脂12は、球状固形粒子の平均粒径が17〜23μm、かさ密度2.5〜4.5cc/g、融点210℃〜220℃のものを用いた。
【0089】
実施例3に用いられる液体状混合樹脂13の混合方法や、摺動部材15の基材16への塗布は、実施例1と同様な方法で行なった。基材16に塗布された液体状混合樹脂13は250℃×2時間の焼成を行なって熱処理した。液体状混合樹脂13の熱処理温度は、熱可塑性樹脂12のナイロン粒子の融点より約30℃程度高い温度である。
【0090】
摺動部材15の基材16にコーティングされた液体状混合樹脂13を熱処理した後での、熱処理品のAFMによる観察結果を
図11に示す。熱処理された基材16の樹脂コーティング層19の樹脂表面には、直径約20μm、深さ約4μmのディンプル20の形成が観察された。断面観察では、添加した熱可塑性樹脂12のナイロン粒子の変形も一部認められたが、実施例1および2に比べて変形量が大きく、変形形状も一様でなく、いびつであった。これは、熱処理温度が熱可塑性樹脂の融点より約30℃程度と比較的高い温度差の温度で熱処理したことで、流動性が高くなり、実施例1および2に比べて変形量が大きくなったためと考えられる。
【0091】
図12は、実施例1〜3で形成された皮膜の表面状態をAFMで観察した結果、AFM像により求めたマイクロディンプル直径φ(μm)とその割合(vol%)の関係を示すグラフである。
【0092】
図12から、AFM像の分析・測定により、皮膜の樹脂コーティング層表面に形成されるマイクロディンプルの形状は、熱硬化性樹脂11内部の熱可塑性樹脂12の球状固形粒子形状と強い比例的な相関関係があることが確認できた。
【0093】
図12において、符号Aは熱可塑性樹脂12にSP−500の固形(ナイロン12)粒子を添加した場合のディンプル直径の分布状態を示し、符号Bは同じくSP−10の固形(ナイロン12)粒子を添加した場合、符号CはTR−2の固形(ナイロン6)粒子を添加した場合の分布状態をそれぞれ示す。
【0094】
<ディンプル径と熱可塑性樹脂の固形粒子径との関係について>
熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を混合させた液体状の混合樹脂13を基材16上にコーティングし、熱処理(焼成)して基材16上に混合樹脂の皮膜21が構成される。この基材16上の皮膜21の表面に形成されるディンプル20のディンプル径は添加される熱可塑性樹脂12の固形粒子の粒子径と略等しい関係がどの程度の粒子径まで存在するのか否か、熱可塑性樹脂12として、ダイセル・エボニック社製のナイロン12の固形粒子(グレード:ベストジント−1111,ベストジント−2157)を用いて実施例1〜3で示す例と同様に試験して確認した。
【0095】
熱可塑性樹脂12の固形粒子の平均粒径が50μm以上のダイセル・エボニック社製のナイロン12の固形粒子で確認したところ、皮膜21は
図13および
図14に示すようにAFMによる表面観察作業が3次元画像で得られた。これらの図を分析したところ、
図13に示すように、固形粒子の粒子径が60〜150μmのベストジント−1111の固形粒子を用いても、また、平均粒径が50μm相当(100μm以下)のベストジント−2157の固形粒子を用いても、皮膜21は樹脂コーティング層19の表面に固形粒子の粒子径に相当する凹み(ディンプル)20が形成されることが確認できた。
【0096】
したがって、熱硬化性樹脂11に熱可塑性樹脂12を混合した液体状混合樹脂13をコーティングし、熱処理(焼成)して得られる皮膜21のディンプル20は、添加される熱可塑性樹脂の固形粒子の平均粒径が50μm以上であっても、固形粒子の粒子径に比例して相関関係のディンプル20が樹脂コーティング層19と同時に形成できることが確認できた。
【0097】
<樹脂コーティング層−ディンプルを形成する必要条件>
最後に、基材16の表面に焼成され、コーティングされる皮膜21に(マイクロ)ディンプル20を樹脂コーティング層19と同時に形成する必要条件を説明する。
【0098】
皮膜21に(マイクロ)ディンプル20を樹脂コーティング層19と共に同時に形成する必要条件を要約すると、以下の項目を満たす必要がある。
【0099】
1.熱硬化性樹脂11と熱可塑性樹脂12の混合物であること。
【0100】
使用する熱硬化性樹脂11と熱可塑性樹脂12は、それぞれ1種類に限定されない。例えば添加する熱可塑性樹脂12は、複数(例えば数種類)の樹脂を添加してもよい。
【0101】
2.混合前の熱硬化性樹脂11は液体であり、加熱により硬化する樹脂材料であること。
【0102】
3.混合前の熱可塑性樹脂12は、固体粒子状であること。
【0103】
熱可塑性樹脂12は、固体の粒子であり、好ましくは球状粒子が熱硬化性樹脂11の内部に均一に分散混合処理される上で優れている。
【0104】
4.熱可塑性樹脂12の融点(T
1)と熱硬化性樹脂の硬化温度(T
2)は、T
1<T
2の関係にあること。
【0105】
熱硬化性樹脂11と熱可塑性樹脂12を混合して混合樹脂(混合物)は、熱可塑性樹脂の融点T
1以上、熱硬化性樹脂の硬化温度T
2以上で熱処理される。
【0106】
5.混合物の熱処理温度(焼成温度)(T
3)は、熱硬化性樹脂11の硬化温度(T
2)と熱可塑性樹脂12の融点温度(T
1)との間に、(T
2≦T
3<T
1+50℃)の関係にあること。
【0107】
熱硬化性樹脂11の内部に分散される熱可塑性樹脂12の液体状混合樹脂が、熱処理(焼成)温度T
3で熱処理されることによって、熱可塑性樹脂12の固形粒子が変形して、熱硬化性樹脂の樹脂表面にディンプルが形成されるディンプルの形成には、熱可塑性樹脂12の固形粒子が可逆的体積変化が起こる熱可塑性樹脂12の融点T
1以上、かつ熱硬化性樹脂11が硬化温度T
2以上で熱処理することが必要である。
【0108】
混合物(混合樹脂)の熱処理温度T
3が、熱可塑性樹脂12の融点T
1を50℃を超える場合、すなわち、熱処理温度T
3が(T
3>T
1+50℃)で熱処理すると、熱可塑性樹脂12の変形または流動が大きくなるため、目的とするディンプルが樹脂表面に形成できないためである。
【0109】
その際、混合物(混合樹脂)の樹脂表面に形成されるディンプルの形状および大きさは、混合前液体状の熱硬化性樹脂に分散される熱可塑性樹脂12の固体粒子の形状と粒子径で規定(または決定)される。固体粒子が球状であれば、略円形あるいは楕円形のディンプルが得られる。また、混合物の樹脂表面に形成されるディンプルの分布状態は、熱可塑性樹脂12の添加量で規定(または決定)される。
【0110】
さらに、混合物(混合樹脂)の樹脂表面に形成されるディンプルの形状および大きさは、混合する熱可塑性樹脂12の固体粒子のサイズや形状で規定(または決定)され、かつディンプルの分布状態は熱可塑性樹脂12の添加量で規定(または決定)されるので、摺動速度、荷重、潤滑オイル等の潤滑液の粘度等の諸条件から、ディンプル20のサイズや分布状態を適切に設定することができ、ディンプル20を備えた皮膜21の摺動特性が改善される。
【0111】
また、混合物(混合樹脂)の樹脂表面に独立したディンプル形成装置を用いることなく、皮膜21に樹脂コーティング層19とディンプル20の形成を同時に実現でき、樹脂本来の摺動特性に加え、オイル潤滑下ではオイルスポット効果により摺動特性が向上する。
【0112】
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、請求の範囲に記載の範囲を逸脱しない限り他の変形例、修正例も含みうる。