(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各アサイナーは、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象とする音高を選択するための選択ルールに従い、前記受付部で受け付けた前記楽音発生指示に係る音高のうち、高音側もしくは低音側から音高順に所定数の音高を、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象として選択するように構成されている、請求項1記載の装置。
前記各アサイナーは、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象とする音高を選択するための選択ルールに従い、前記受付部で受け付けた前記楽音発生指示に係る音高のうち、高音側もしくは低音側から所定数の音高を除外した残りの音高を、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象として選択するように構成されている、請求項1記載の装置。
少なくとも1つの前記アサイナーは、複数の異なる選択ルールを組み合わせることにより、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象となる音高を選択するように構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
さらに、前記アサイナーで決定された前記1又は複数の音高の楽音を、当該アサイナーによって割り当てられた音色で発生するように構成された楽音発生器を備える、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
前記制御部は、当該アサイナーによって割り当てられた音色で楽音を発生すべきと決定された前記1又は複数の音高が、当該アサイナーによって割り当てられる音色の前記発音可能音域から外れている場合に、当該音高が該発音可能音域内に収まるようにオクターブシフトするように構成されている、請求項6記載の装置。
前記制御部は、当該アサイナーによって割り当てられた音色で楽音を発生すべきと決定された前記1又は複数の音高が、当該アサイナーによって割り当てられる音色の前記発音可能音域から外れている場合に、当該音高の楽音の発生を禁止するように構成されている、請求項6記載の装置。
前記アサイナーに対応して、当該アサイナーによって割り当てられる音色と、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象とする音高を選択するための条件と、前記優先順位とを規定するためのテーブルを具備し、前記優先順位は、優先ルールと、当該アサイナーによって割り当てられる音色の同時発音可能数との組み合わせによって規定される、請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施例による電子楽器100のハードウェア構成の一例を表すブロック図である。この電子楽器100は、本発明に従う発音割り当てのための装置をその内部に組み込んでいる。
【0014】
電子楽器100のバス6には、RAM7、ROM8、CPU9、検出回路11、表示回路13、記憶装置15、音源回路18、通信インターフェイス(I/F)21が接続される。
【0015】
RAM7は、再生バッファ等のバッファ領域、フラグ、レジスタ、各種パラメータ等を記憶するCPU9のワーキングエリアを有する。
【0016】
ROM8には、音色に対応する波形データや自動演奏データ、自動伴奏データ(伴奏スタイルデータ)などの各種データファイル、各種パラメータ及び制御プログラム、又は本実施例を実現するためのプログラムや、各種テーブル等を記憶する。すなわち、本発明に係る発音割り当てのためのプログラムは、ROM8内又は後述する記憶装置15内に記憶されている。
【0017】
CPU9は、ROM8又は、記憶装置15に記憶されている制御プログラム又は本実施例を実現するためのプログラム(発音割り当てのためのプログラム)等を実行可能であり、該プログラムに従い、演算又は装置の制御を行う。タイマ10が、CPU9に接続されており、基本クロック信号、割り込み処理タイミング等がCPU9に供給される。
【0018】
ユーザは、検出回路11に接続される設定操作子12を用いて、各種入力及び設定、選択をすることができる。設定操作子12は、例えば、スイッチ、パッド、フェーダー、スライダ、ロータリーエンコーダ、ジョイスティック、ジョグシャトル、文字入力用キーボード、マウス等、ユーザの入力に応じた信号を出力できるものならどのようなものでもよい。また、設定操作子12は、カーソルスイッチ等の他の操作子を用いて操作するディスプレイ14上に表示されるソフトスイッチ等でもよい。また、ディスプレイ14表面に設けられるパネル操作面に対するユーザの押下操作を検出し、被操作位置の位置情報(例えば、xy座標)を出力するタッチパネルを設定操作子12として用いることもできる。
【0019】
表示回路13は、ディスプレイ14に接続され、各種情報をディスプレイ14に表示することができる。ディスプレイ14は、電子楽器100の設定のための各種情報等を表示することができる。
【0020】
記憶装置15は、ハードディスク、FD(フレキシブルディスク又はフロッピー(登録商標)ディスク)、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多目的ディスク)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ等の記録媒体とその駆動装置の組み合わせの少なくとも1つで構成される。
【0021】
音源回路18は、例えば、記憶装置15、ROM8又はRAM7等に記録された波形データ、オーディオデータ、自動伴奏データ、自動演奏データ又は演奏操作子(鍵盤)22あるいは通信インターフェイス21に接続された外部機器等から供給される演奏信号、MIDI信号、フレーズ波形データ等に応じて楽音信号を生成し、各種音楽的効果を付加して、DAC20を介して、サウンドシステム19に供給する。DAC20は、供給されるデジタル形式の楽音信号をアナログ形式に変換し、サウンドシステム19は、アンプ、スピーカを含み、DA変換された楽音信号を発音する。音源回路18は、例えば複数のチャンネルで楽音を発生することが可能な楽音発生器として構成される。
【0022】
通信インターフェイス21は、USBやIEEE1394等の汎用近距離有線I/F、Ethernet(登録商標)等の汎用ネットワークI/F等の通信インターフェイス、MIDI I/Fなどの汎用I/F、無線LANやBluetooth(登録商標)等の汎用近距離無線I/F等の通信インターフェイス及び音楽専用無線通信インターフェイスのうち少なくとも1つで構成され、外部機器、サーバー等との通信が可能である。
【0023】
演奏操作子(鍵盤等)22は、検出回路11に接続され、ユーザの演奏動作に従い、演奏情報(演奏データ)を供給する。演奏操作子22は、ユーザによる演奏を入力するための操作子であり、ユーザによる楽音発生指示操作をリアルタイムに受け付ける。検出回路11は演奏操作子(鍵盤等)22における各操作子(各鍵)のオン/オフを検出し、ユーザが操作した操作子(鍵)に対応する音楽ノートすなわち音高を識別しうるようなデータ形態で、かつ、該ユーザの操作子に対する操作開始タイミング及び終了タイミングを識別しうるようなデータ形態で、キーオン信号(若しくはノートオンイベント)及びキーオフ信号(若しくはノートオフイベント)を出力する。出力されたキーオン信号(若しくはノートオンイベント)及びキーオフ信号(若しくはノートオフイベント)はバス6を介してCPU9によって取り込まれる。また、公知のように、演奏操作子22に対するユーザの演奏操作態様に応じてベロシティ値等の各種パラメータを入力することが可能である。なお、本実施例では、鍵盤型の演奏操作子22を備えているものとして説明するが、これに限るものではない。一例として、この演奏操作子22が、任意の1又は複数の音高の楽音発生指示を受け付ける受付部(後述する発音指示受付部32)として機能する。
【0024】
なお、本実施例による電子楽器は、演奏操作子を持たない音楽装置や、さらに音楽装置以外の電子機器として構成されていてもよく、その場合には外部機器として演奏操作子が接続される。また、演奏操作子に対するユーザによるリアルタイム演奏に基づく演奏データに限らず、自動演奏装置によって発生される自動演奏に基づく演奏データを、任意の1又は複数の音高の楽音発生指示として受け付ける構成であってもよい。また、ディスプレイ14やサウンドシステム19なども外付けの機器で代替可能であり、その他の各構成は必要に応じて適宜追加及び省略が可能である。
【0025】
図2は、本発明の実施例による電子楽器100の割当制御機能(発音割り当てのための装置としての機能)を表すブロック図である。
【0026】
電子楽器100は、発音指示受付部32、押鍵状態検出部31、割当制御部33、楽音発生部34及び出力部35を含んで構成される。
【0027】
発音指示受付部32は、例えば、
図1の演奏操作子22で構成され、本実施例では鍵盤型の演奏操作子である。発音指示受付部32は、ユーザによる発音指示、すなわち任意の1又は複数の音高の楽音発生指示、を受け付ける。例えば、演奏操作子22である鍵盤のいずれかの鍵が押鍵されることに応じて、当該押鍵されている鍵に対応する演奏信号の入力を受け付け、入力された演奏信号を後段の押鍵状態検出部31に供給する。
【0028】
なお、発音指示受付部32は、鍵盤のほか、弦楽器や管楽器などの形態をもつ電子楽器の演奏操作子の操作を受け付ける構成であってもよいし、あるいは、通信I/Fを介して外部からノートオン/オフデータ(ノートオン/オフイベント)を受信することでもよいし、シーケンスデータのような自動演奏データを再生する構成からなっていてもよい。
【0029】
押鍵状態検出部31は、発音指示受付部32からの演奏信号に基づき、現在押鍵されている鍵のノートナンバー(音高)を取得し、キーオン信号(ノートオンイベント)と共に、後段の割当制御部33に供給する。さらに、公知のように、それまで押鍵されていた鍵が離鍵されたときに、該離鍵された鍵のノートナンバー(音高)と共にキーオフ信号(ノートオフイベント)を、割当制御部33に供給するようになっていてもよい。
【0030】
割当制御部33は、複数のアサイナーAS(1)〜AS(n)を含んで構成され、各アサイナーASは、それぞれ押鍵状態検出部31から供給されるノートナンバー(音高)に対して、各アサイナー毎に独自の音色を割り当てるものである。詳しくは、各アサイナーASは、それぞれ押鍵状態検出部31から供給されるノートナンバー(音高)とその押鍵順(楽音発生指示順)とに基づき、発音指示受付部32が受け付けた全演奏操作(全押鍵)のうちどの演奏操作(押鍵)に対応する音高の楽音を当該アサイナーを介して発音させるか(つまり当該アサイナーに対応する音色を割り当てるか)を決定し、該発音させることを決定した音高情報を楽音発生部34に供給する。なお、図において、アサイナーAS(1)〜AS(n)は、便宜上、アサイナー1〜アサイナーnと記されている。なお、割当制御部33における各アサイナーAS毎の演奏操作(押鍵)の音高の楽音の割当制御処理については、
図3を参照して後述する。
【0031】
楽音発生部34(楽音発生器すなわち前記音源回路18に対応)は、各アサイナーASによって決定された演奏操作(押鍵)に対応する音高の楽音信号を当該アサイナーASによって割り当てられた音色TC1〜TCmで生成する。生成された楽音信号は、出力部(スピーカー)35を介して発音される。例えば、公知のように、楽音発生部34は、複数のチャンネルでそれぞれ任意の音高の楽音信号を発生することが可能である。各アサイナーASは、該アサイナーが発音すべきと決定した1又は複数の音高の楽音信号を該アサイナーによって割り当てた音色で発生するように、楽音発生部34のいずれか1又は複数のチャンネルに指示し、該1又は複数のチャンネルを介して該1又は複数の音高の楽音信号を該音色で発生させる。
【0032】
図3は、本発明の実施例による割当制御処理を表すフローチャートである。割当制御処理は、例えば、
図2の発音指示受付部32で演奏操作に応じて受け付けた楽音発生指示に係る任意の1又は複数の音高に対応する楽音信号を何らかの音色で発生させるための割り当て処理を、割当制御部33の各アサイナーAS(1)〜AS(n)を介して実行させるための処理である。なお、この例では、電子楽器100は、演奏操作子22として複数の鍵を有する鍵盤を備えているものとする。
【0033】
ステップS1では、割当制御処理を開始する。この処理は、押鍵状態の変化を検出した場合、例えば、
図2の発音指示受付部32で新たな発音指示を受け付けたときであり、具体的にはノートオンまたはノートオフを受信するたびに起動される処理である。なお、ノートオンを受信したときのみに起動するようにして、ノートオフの受信時には起動しないようにしてもよい。
【0034】
ステップS2では、現在の押鍵状態(演奏操作の状態)を取得する。ここで、押鍵状態(演奏操作の状態)とは、押鍵中(演奏操作中)の各音の音高と、押鍵(演奏操作)された順序とを示す。押鍵の順序は、後述する優先ルールにおいて、「後着優先」となっている場合等に必要となる。何らかの演奏操作子22が操作されるたびに、どのキーが押された(または離された)かの情報(以下、押鍵状態という)がRAM7に順次記憶されていき、RAM7に記憶された情報(押鍵状態)を参照することで、現在押鍵中の鍵(音高)やその鍵が押された順序がわかるようになっている。なお、押鍵順序を利用しない場合には、これを省略することができる。
【0035】
ステップS4〜S6の処理は、1つのアサイナーASが実行する割当処理のタスクである。このステップS4〜S6の割当処理タスクを、各アサイナーAS毎に順次実行することにより、複数のアサイナーASによる発音割当処理が事実上並列的に実行される。まず、ステップS3では、複数のアサイナーASから、今回の割当処理タスクを実行する1つのアサイナーAS(N)を選択する。ここで、割当処理起動時には「N=1」に設定されており、後述するステップS8において1ずつ増えていき、アサイナーASの総数と等しくなるまで繰り返される。すなわち、この割当処理起動時には、アサイナーAS(1)が選択され、2回目以降の処理において、アサイナーAS(2)、AS(3)、AS(4)・・・AS(n)が順次選択される。
【0036】
ステップS4では、ステップS2で取得した押鍵状態に対して、ステップS3で選択したアサイナーAS(N)の割り当て対象となる対象押鍵があるか否かを判断する。対象押鍵の有無の判断は、例えば、
図4に示すアサイナー設定テーブルを参照して行う。
【0037】
図4は、本発明の実施例によるアサイナー設定テーブルの一例である。アサイナー設定テーブルには、各アサイナーASごとに対象押鍵、優先ルール、発音数、音色が規定されている。なお、
図4において、アサイナーAS(1)〜AS(5)は、便宜上、アサイナー1〜アサイナー5と記されている。
【0038】
「対象押鍵」は、各アサイナーASによって割り当てられる対象となる押鍵を規定しており、この規定に従って全押鍵のうち当該アサイナーASが音高を割り当てる対象押鍵を選択する。対象押鍵は、例えば、「すべて」、「(すべての押鍵から)最高音を除く」、「高音側から3音まで」、「低音側から2音まで」等である。さらに、押鍵の順番に応じて「最後に押鍵されたものから・・・音を選択」や「最初に押鍵されたものから・・・音を無視」などのパラメータを用意してもよい。すなわち、アサイナー設定テーブルにおける「対象押鍵」のコラムにおいては、各アサイナー毎に、前記楽音発生指示に係る前記1又は複数の音高のうち、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象とする音高を選択するための条件が規定されている。
【0039】
「優先ルール」は、各アサイナーASの対象押鍵(音高)の中から、実際に発音させる押鍵(音高)を決定するための優先順位を規定したものであり、当該優先順位に従い所定数の押鍵(音高)が選択される。「高音優先」の場合は、「対象押鍵」の高音側から「発音数」分の音高が選択され、「低音優先」の場合は、「対象押鍵」の低音側から「発音数」分の音高が選択される。また、「後着優先」となっている場合は、「対象押鍵」の中で発音順序が遅い音高から「発音数」分選択する。「先着優先」となっている場合は、「対象押鍵」の中で発音順序が早い音高から「発音数」分選択する。
【0040】
「発音数」は、当該アサイナーASを介して同時に発音可能な音数(同時発音可能数)を規定するものであり、「音色」は、前記楽音発生指示に係る前記1又は複数の音高に対して当該アサイナーASによって割り当てられる独自の音色を示す。すなわち、アサイナー設定テーブルにおける「音色」のコラムにおいては、当該アサイナーによって割り当てられる音色を規定する。また、アサイナー設定テーブルにおける「優先ルール」のコラムと「発音数」(同時発音可能数)のコラムの組み合わせは、各アサイナー毎に、前記選択された音高の中から、当該アサイナーによって割り当てられた音色で楽音を発生すべき1又は複数の音高を絞り込んで決定するための、該絞り込みのための優先順位を規定する。なお、いずれのパラメータもアサイナーASごとに異なる値を設定可能である。勿論、全てのアサイナーASごとにパラメータが異なっている必要はなく、各アサイナーASごとに独自に設定され得るものであればよい。例えば、当該アサイナーASによって割り当てられる特定の「音色」に対応する楽器種類に特有の同時発音可能な音数に合わせて「発音数」を規定するとよい。例えば、単音発音タイプの管楽器音色を割り当てる各アサイナーASにおいては、同時発音可能数を「1」に設定するのが好ましく、本発明によれば、そのような好ましい割り当てを実現することができる。このようなアサイナー設定テーブルは、記憶装置15等に記憶されている。なお、アサイナー設定テーブルの適用の具体例については
図6及び
図7を参照して後述する。
【0041】
図3に戻り、割当制御処理の説明を続ける。ステップS4で、対象押鍵があると判断した場合は、YESの矢印で示すステップS5に進み、対象押鍵がなしと判断した場合には、NOの矢印で示すステップS7に進む。なお、「対象押鍵」が「・・・を除く」となっている場合(所定数の音高を除外又は無視する場合)は、対象押鍵が「なし」と判断される場合があるが、「対象押鍵」が「すべて」や「高(低)音側から・・・音」等となっている場合は、常に対象押鍵が「あり」と判断される。このステップS4の処理は、各アサイナーAS毎に、前記受付部32により受け付けられた前記楽音発生指示に係る前記1又は複数の音高のうち、当該アサイナーASによって音色を割り当てる対象とする音高を選択する処理に相当する。一例として、各アサイナーASは、当該アサイナーASによって音色を割り当てる対象とする音高を選択するために、各アサイナーAS毎に設定された選択ルールに従い、前記受付部32で受け付けた前記楽音発生指示に係る音高のうち、高音側もしくは低音側から音高順に所定数の音高を、当該アサイナーASによって音色を割り当てる対象として選択するように構成されている。別の例として、各アサイナーASは、当該アサイナーASによって音色を割り当てる対象とする音高を選択するためには、各アサイナーAS毎に設定された選択ルールに従い、前記受付部32で受け付けた前記楽音発生指示に係る音高のうち、高音側もしくは低音側から所定数の音高を除外した残りの音高を、当該アサイナーASによって音色を割り当てる対象として選択するように構成されている。
【0042】
ステップS5では、アサイナー設定テーブルを参照して、ステップS3で選択した1つの(N番目の)アサイナーAS(N)の「優先ルール」及び「発音数」に基づき、当該アサイナーAS(N)で発音する音高(押鍵)をステップS4で判定した対象押鍵の中から選んで決定する。このステップS5の処理は、各アサイナー毎に、当該アサイナーに対応して設定された優先順位(つまり「優先ルール」及び「発音数」の組み合わせ)に基づき、前記選択された音高のうち、当該アサイナーによって割り当てられた音色で楽音を発生すべき1又は複数の音高を決定する処理に相当する。
【0043】
ステップS6では、ステップS5で決定した1又は複数の音高(押鍵)に対応する楽音を当該アサイナーAS(N)によって割り当てられた音色で発生するように、楽音発生部34に指示する。これに応じて、楽音発生部34の1又は複数のチャンネルにおいて、ステップS5で決定した1又は複数の音高(押鍵)に対応する楽音信号が当該アサイナーAS(N)によって割り当てられた音色で発生される。
【0044】
ステップS7では、今回選択されているアサイナーAS(N)が最後のアサイナーか否かを判断する。ここでは、「N」がアサイナーASの総数と等しいか否かを判断する。「N」と総数が等しい場合は、今回選択されているアサイナーAS(N)が最後のアサイナーであるので、YESの矢印で示すステップS9に進んで今回の割当制御処理を終了する。「N」と総数が等しくない場合は、今回選択されているアサイナーAS(N)は最後のアサイナーではないので、NOの矢印で示すステップS8に進んで、「N」を1つ増加させ(N=N+1)、その後、ステップS3に戻り以降の処理を繰り返す。
【0045】
図5は、本発明の実施例による音域外ノート処理の設定テーブルの一例である。
【0046】
通常、生楽器(自然楽器)では出せる音域が限られているが、電子楽器では実際の生楽器では出せない音域の音を鳴らすことが可能である。これについて、音色ごとに音域外の音高による発音指示がなされた場合の処理を、例えば、
図5に示す音域外ノート処理の設定テーブルに規定しておくことができる。
【0047】
音域外ノート処理の設定テーブルには、例えば、音色、当該音色の音域、音域外ノート処理、音量等が規定されている。音域外ノート処理は、音域パラメータで指定されている音域外の音高での発音指示があった場合に当該音域外の音高についてどのように処理するかを規定するパラメータである。例えば、「そのまま発音」や「オクターブシフト」がある。「オクターブシフト」の場合には、音域外の音高が音域内に収まるようにオクターブシフト(音高変換)してから発音する。
図5に示す例では、例えば、「トランペット」の音色は、音域が「E2〜B♭4」と規定され、この音域外の音高での発音指示があった場合でも、「そのまま発音」される。なお、音量は「100」に設定されている。また、「テナーサックス」の音色は、音域が「G♯1〜E♭4」と規定され、この音域外の音高での発音指示があった場合には、「オクターブシフト」される。なお、音量は「64」に設定されている。各楽器ごとに音量を設定しておくことにより、実際の(生楽器でのアンサンブルのときと同じような)音量バランスで発音させることが可能となる。なお、ここで設定された音量に押鍵の強さ(ベロシティ)をかけた値で、発音音量を決定してもよい。
【0048】
このように、音域外ノート処理をあらかじめ定めることで、生楽器の特性を考慮したより自然なアンサンブル演奏を実現することができる。このような音域外ノート処理は、CPU9によって実行可能なコンピュータプログラムによって実現可能である。すなわち、CPU9によって実行される前記音域外ノート処理は、各アサイナー毎に、当該アサイナーによって割り当てられた音色で楽音を発生すべきと決定された前記1又は複数の音高が、当該アサイナーによって割り当てられる音色の前記発音可能音域から外れている場合に、当該音高に対応する楽音の発音態様を制御する制御部として機能する。なお、一例として、該制御部の機能(音域外ノート処理)は、各アサイナーASによって実行されるように構成されてもよい。なお、このような音域外ノート処理を実行するための制御部は、コンピュータプログラムに限らず、専用のハードウェア回路によっても実現可能である。音域外ノート処理の前記設定テーブルは、記憶装置15等に記憶されている。
【0049】
以下、
図6及び
図7に示す楽譜例を参照して
図3に示す割当制御処理の一例を具体的に説明する。この例では、
図4に示すアサイナー設定テーブルが用いられているものとする。
図4に示すアサイナー設定テーブルは管楽五重奏用のものである。
【0050】
図6は、ユーザが演奏操作子(鍵盤)22を用いて行った演奏による押鍵状態の変化を表す楽譜例である。
図6に示す楽譜例のようにユーザが鍵盤を弾くと、押鍵状態が変わるたびに各アサイナーASはそれぞれ対象押鍵を選択し、対象押鍵の中からどれを優先的に発音させるかを決定し、
図7に示すように、決定した押鍵についてアサイナーASに設定された音色で発音させる。
【0051】
図7は、
図6に示す楽譜に対して割当制御処理を行った場合のアサイナーAS(1)〜AS(5)の発音状態を表す楽譜である。なお、
図7において、アサイナーAS(1)〜AS(5)は、便宜上、アサイナー1〜アサイナー5と記されている。
【0052】
アサイナーAS(1)は、
図4に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、すべての押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは高音優先で、発音数は「1」である。音色は、トランペットに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(1)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(1)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断されるが、アサイナーAS(1)の対象押鍵はすべての押鍵なので、常に対象押鍵ありと判断され、ステップS5に進む。ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(1)での発音音高を決定するが、アサイナーAS(1)の優先ルールは高音優先で、発音数は1であるので、
図7(A)に示すように、押鍵状態の最高音1音がアサイナーAS(1)の発音音高として決定される。その後、ステップS6において、トランペットの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。
【0053】
アサイナーAS(2)は、
図4に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、最高音を除いた他の押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは高音優先で、発音数は「1」である。音色は、トランペットに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(2)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(2)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断される。アサイナーAS(2)の対象押鍵は最高音を除く他の押鍵なので、1鍵(1音)しか演奏されていない時(楽譜例の1小節目)は、その音が最高音とみなされるため、対象押鍵はなしと判断される。すなわち、アサイナーAS(2)は、1音しか演奏されていない時は発音されない。楽譜例の2小節目以降は2音以上演奏されているので対象押鍵ありとされてステップS5に進む。ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(2)での発音音高を決定するが、アサイナーAS(2)の優先ルールは高音優先で、発音数は1であるので、
図7(B)に示すように、押鍵状態の高音側から2音目の1音がアサイナーAS(2)の発音音高として決定される。その後、ステップS6において、トランペットの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。
【0054】
アサイナーAS(3)は、
図4に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、高音側から3音までの押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは低音優先で、発音数は「1」である。音色は、トロンボーンに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(3)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(3)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断される。アサイナーAS(3)の対象押鍵は高音側から3音までの押鍵なので、すべての小節で対象押鍵ありとされてステップS5に進む。なお、楽譜例において、4小節目の最低音と5小節目の低音側から2音は対象押鍵とはみなされない。その後、ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(3)での発音音高を決定する。アサイナーAS(3)の優先ルールは低音優先で、発音数は1であるので、
図7(C)に示すように、対象押鍵の最低音(1〜3小節目では、押鍵状態の最低音、4及び5小節目では、押鍵状態の高音側から3音目)の1音がアサイナーAS(3)の発音音高として決定される。すなわち、1音しか演奏されていない時は、その音が選択され、2音しか演奏されていない時は高音側から2音目が選択され、3音以上演奏されている時は高音側から3音目が選択される。その後、ステップS6において、トロンボーンの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。
【0055】
アサイナーAS(4)は、
図4に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、低音側から2音までの押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは高音優先で、発音数は「1」である。音色は、テナーサックスに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(4)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(4)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断される。アサイナーAS(4)の対象押鍵は低音側から2音までの押鍵なので、すべての小節で対象押鍵ありとされてステップS5に進む。なお、楽譜例において、3小節目の最高音、4小節目の高音側から2音、5小節目の高音側から3音は対象押鍵とはみなされない。その後、ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(4)での発音音高を決定する。アサイナーAS(4)の優先ルールは高音優先で、発音数は1であるので、
図7(D)に示すように、対象押鍵の最高音(1及び2小節目では、押鍵状態の最高音、3〜5小節目では、押鍵状態の低音側から2音目)の1音がアサイナーAS(4)の発音音高として決定される。すなわち、1音しか演奏されていない時は、その音が選択され、2音以上演奏されている時は低音側から2音目が選択される。その後、ステップS6において、テナーサックスの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。
【0056】
アサイナーAS(5)は、
図4に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、すべての押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは低音優先で、発音数は「1」である。音色は、バリトンサックスに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(5)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(5)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断されるが、アサイナーAS(5)の対象押鍵はすべての押鍵なので、常に対象押鍵ありと判断され、ステップS5に進む。ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(5)での発音音高を決定するが、アサイナーAS(5)の優先ルールは低音優先で、発音数は1であるので、
図7(E)に示すように、押鍵状態の最低音1音がアサイナーAS(5)の発音音高として決定される。その後、ステップS6において、バリトンサックスの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。
【0057】
なお、アサイナーAS(1)の1小節目の最初の2音(一点鎖線で囲んだ部分)、アサイナーAS(2)の2小節目の最初の2音(一点鎖線で囲んだ部分)、アサイナーAS(5)の5小節目の3音(一点鎖線で囲んだ部分)は、いずれも各アサイナーASに設定されている音色に対応する生楽器の音域に含まれない音高である。これらの音高については、
図5に示す音域外ノート処理の設定テーブルを参照して処理することにより、生楽器に近い自然な演奏とすることができる。例えば、トランペットの音色は、
図5に示す音域外ノート処理の設定テーブルでは、音域外の音高であってもそのまま発音することになっているので、アサイナーAS(1)の1小節目の最初の2音(一点鎖線で囲んだ部分)及びアサイナーAS(2)の2小節目の最初の2音(一点鎖線で囲んだ部分)は楽譜例に示す音高で発音する。一方、バリトンサックスについては、音域外の音高はオクターブシフトすることになっているので、アサイナーAS(5)の5小節目の「C1」の3音(一点鎖線で囲んだ部分)は、バリトンサックスの音域(D1〜F♯3)よりも低音であるため、1オクターブ高くして音域内に収まるようにして、「C2」の音として発音される。このように、音域外処理を行うことで、生楽器の特性を考慮したより自然なアンサンブル演奏を実現することができる。
【0058】
次に、
図8及び
図9に示す楽譜例を参照して
図3に示す割当制御処理の他の例を具体的に説明する。この例では、
図10に示すアサイナー設定テーブルが用いられているものとする。ここでは、弦楽合奏を例とする。
【0059】
図8は、本発明の実施例による割当制御処理を説明するための押鍵状態の他の例を示す楽譜であり、
図9は、
図8に示す楽譜に対して割当制御処理を行った場合のアサイナーAS(1)〜AS(3)の発音状態を表す楽譜である。なお、
図9において、アサイナーAS(1)〜AS(3)は、便宜上、アサイナー1〜アサイナー3と記されている。
図10は、本発明の実施例によるアサイナー設定テーブルの他の例である。
図10のアサイナー設定テーブルには、
図4に示すアサイナー設定テーブルと同様に、各アサイナーASごとに対象押鍵、優先ルール、発音数、音色が規定されている。
【0060】
アサイナーAS(1)は、
図10に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、すべての押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは高音優先で、発音数は「1」である。音色は、バイオリンに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(1)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(1)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断されるが、アサイナーAS(1)の対象押鍵はすべての押鍵なので、常に対象押鍵ありと判断され、ステップS5に進む。ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(1)での発音音高を決定するが、アサイナーAS(1)の優先ルールは高音優先で、発音数は1であるので、
図9(A)に示すように、押鍵状態の最高音1音がアサイナーAS(1)の発音音高として決定される。その後、ステップS6において、バイオリンの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。
【0061】
アサイナーAS(2)は、
図10に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、最高音を除いた他の押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは後着優先で、発音数は「無制限」である。音色は、ストリングスに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(2)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(2)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断される。アサイナーAS(2)の対象押鍵は最高音を除く他の押鍵なので、1鍵(1音)しか演奏されていない時(楽譜例の1小節目)は、その音が最高音とみなされるため、対象押鍵はなしと判断される。すなわち、アサイナーAS(2)は、1音しか演奏されていない時は発音されない。楽譜例の2小節目以降は2音以上演奏されているので対象押鍵ありとされてステップS5に進む。ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(2)での発音音高を決定するが、アサイナーAS(2)の優先ルールは後着優先であるが、発音数が無制限なので、
図9(B)に示すように、押鍵状態の最高音を除くすべての音(すべての対象押鍵)がアサイナーAS(2)の発音音高として決定される。その後、ステップS6において、ストリングスの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。なお、発音数が無制限でない場合に、優先ルールが後着優先の場合は、押鍵状態に含まれる押鍵順に従い、押鍵順の遅いものから発音数分の音が発音音高として決定される。
【0062】
この例では、アサイナーAS(2)に設定されている音色がストリングスなので、発音数が無制限に設定されている。ストリングスはもともと複数の弦楽器の音を混ぜて作られている音色なので、単音発音させる必要がないためである。このように、アサイナーAS(1)や後述のアサイナーAS(3)のように音色がバイオリンやコントラバスに設定されている場合は、一般的に2音以上発音させることが少ない楽器なので複数の同時押鍵があっても1音しか発音しないように設定する一方、音色がストリングスに設定されている場合は、複数の同時押鍵があれば複数音が発音するように設定できる。
【0063】
アサイナーAS(3)は、
図10に示すアサイナー設定テーブルで規定されているように、最高音を除いた他の押鍵が対象押鍵となっており、優先ルールは低音優先で、発音数は「1」である。音色は、コントラバスに設定されている。まず
図3のステップS3でアサイナーAS(3)が選択されると、ステップS4でアサイナーAS(3)の対象押鍵が、現在の押鍵状態に含まれるか否かが判断される。アサイナーAS(3)の対象押鍵は最高音を除く他の押鍵なので、1鍵(1音)しか演奏されていない時(楽譜例の1小節目)は、その音が最高音とみなされるため、対象押鍵はなしと判断される。すなわち、アサイナーAS(3)は、1音しか演奏されていない時は発音されない。楽譜例の2小節目以降は2音以上演奏されているので対象押鍵ありとされてステップS5に進む。ステップS5では、優先ルール及び発音数に基づきアサイナーAS(3)での発音音高を決定するが、アサイナーAS(3)の優先ルールは低音優先で、発音数は1であるので、
図9(C)に示すように、押鍵状態の最低音の1音がアサイナーAS(3)の発音音高として決定される。その後、ステップS6において、コントラバスの音色で決定された発音音高の楽音を発音する。
【0064】
なお、アサイナーAS(3)の3〜4小節目の音高は、いずれもアサイナーAS(3)に設定されている音色(コントラバス)に対応する生楽器の音域に含まれない音高である。これらの音高については、
図11に示す音域外ノート処理の設定テーブルを参照して処理することにより、生楽器に近い自然な演奏とすることができる。
【0065】
図11は、本発明の実施例による音域外ノート処理の設定テーブルの他の例である。
図5に示す設定テーブルと同様に、音色、当該音色の音域、音域外ノート処理、音量等が規定されている。
図11に示す他の例では、「バイオリン」の音色は、音域が「G2〜A5」と規定され、この音域外の音高での発音指示があった場合でも、「そのまま発音」される。なお、音量は「100」に設定されている。また、「ストリングス」の音色は、音域が設定されておらず、この音域外の音高での発音指示があった場合の設定もない。これは上述したようにストリングスは複数の弦楽器を合わせた音色であるので、特定の音域をもたないからである。なお、音量は「64」に設定されている。「コントラバス」の音色は、音域が「E0〜F3」と規定され、この音域外の音高での発音指示があった場合は、「無視(発音しない)」。なお、音量は「64」に設定されている。
【0066】
アサイナーAS(3)に設定されているコントラバスの音色は、
図11に示す音域外ノート処理の設定テーブルでは、音域外の音高は無視する(発音しない)ことになっているので、アサイナーAS(3)の2小節目〜4小節目の音域外の音高は無視される。一方、5小節目の「A2」は音域内なので、発音される。
【0067】
以上、本発明の実施例によれば、各アサイナーASがそれぞれ独立して対象押鍵を決定し、それぞれのアサイナーASの対象と判断された押鍵について、さらに優先ルールに基づき(高音優先、後着優先等)、発音数に応じて発音させる押鍵(音高)を決定する。
【0068】
また、各アサイナーASごとに対象押鍵の決定ルールを変えることにより、優先的に発音させたい音色(押鍵があるたびに発音される音色)と、所定数以上の押鍵があったときのみ発音する音色とを区別して設定できる。
【0069】
さらに、各アサイナーASごとに、優先ルールと発音数を設定することで、各楽器の特性にあった発音が可能となる。よって、本実施例のようにそれぞれ独立して設定可能なアサイナーASを複数組み合わせることで、特性の異なる複数の楽器を使用した自然なアンサンブル演奏が実現できる。
【0070】
なお、上記実施例では、アサイナーASの対象押鍵を選択するための選択ルールとして、「すべて」のほかに「最高音を除く」や「低音側から2音まで」といったように、所定の順序(たとえば音高の高い順または低い順)に沿って何音かを連続的に選択するまたは除外するルールを採用することを説明したが、これら複数の異なる選択ルールを組み合わせることによって対象押鍵を選択するように構成してもよい。1つの具体例として、少なくとも1つの或るアサイナーASにおける選択条件が、「最高音を除く」と「最低音を除く」という2つの選択ルールの組み合わせからなる場合について説明する。この組み合わせでは、同時押鍵数が1または2のときは、最高音および最低音が除かれるため、対象押鍵は「なし」となる。つまり、当該アサイナーASでは押健された音高に対して音色を割り当てることなく、従って発音割り当てがなされず、当該アサイナーASを介した発音がなされないことになる。同時押鍵数が3のときは、3押鍵のうち最高音と最低音を除いた真ん中の鍵が対象押鍵として選択され、発音される。同時押鍵数が4以上のときも同様に、押鍵された複数鍵中の中間音高に相当する複数鍵が対象押鍵として選択され、その中から優先順位に従って最終的に発音する1又は複数鍵が決定される。したがって、この例では、押鍵数が2以下では発音せず、3以上になった場合には中間音高に相当する鍵(複数ある場合はその中で優先順位の高いもの)が発音割り当てされる、といった割り当て動作が可能になる。
【0071】
別の具体例として、少なくとも1つの或るアサイナーASにおける選択条件が、「最高音を除く」と「高音側から2音まで」という2つの選択ルールの組み合わせからなる場合について説明する。この組み合わせでは、同時押鍵数が1のときは、最高音が除かれるため、対象押鍵は「なし」となる。つまり、当該アサイナーASでは押健された音高に対して音色を割り当てることなく、従って発音割り当てがなされず、当該アサイナーASを介した発音がなされないことになる。押鍵数が2以上のときは、高音側から2音のうち最高音を除いた状態、つまり高音側から2音目が対象押鍵となる。したがって、この例では、押鍵数が1のときは発音せず、押鍵数が2以上のときは常に高音側から2音目の押健に対応する音高に対して音色が割り当てられ、該押健に対応する音高の楽音を発音する、といった割り当て動作が可能になる。このように、複数の選択ルールを組み合わせて対象押鍵を選択することによって、各音色を発音させる鍵をより詳細に選択できるようになる。
【0072】
なお、上記実施例では各アサイナーAS(1)〜AS(n)毎に発音すべき音高を決定する処理(つまり、前記ステップS4,S5による、当該アサイナーによって音色を割り当てる対象とする音高を選択する処理及び当該アサイナーによって割り当てられた音色で楽音を発生すべき1又は複数の音高を決定する処理)を実行しているが、2以上のアサイナーに同一の対象押鍵選択ルールおよび優先ルールが設定されている場合には、1つのアサイナーでのみこれらの処理を実行するようにしてもよい。同じ設定をもつアサイナーであれば発音させる音高は同じになるので、実行された1の処理に基づき決定された音高を、同じ設定がなされている他のアサイナーにも適用して音色を割り当てるようにすればよい。
【0073】
また、上記実施例では、各アサイナーにそれぞれ対象押鍵選択ルールや優先ルールが設けられていたが、これらのルールを持たないアサイナーと併用してもよい。具体的には、複数のアサイナーのうちのいくつかには本発明を適用して、対象押鍵選択ルールと優先ルール、発音数に基づき音高を決定するようにし、残りのアサイナーは対象押鍵選択ルールを持たず優先ルールのみに基づき音高を決定するようにする、といった応用が考えられる。
【0074】
なお、本発明の実施例は、電子楽器の形態に限らず実施例に対応するコンピュータプログラム等をインストールした市販のコンピュータ等によって、実施させるようにしてもよい。その場合には、各実施例に対応するコンピュータプログラム等を、CD−ROM等のコンピュータが読み込むことが出来る記録媒体に記憶させた状態で、ユーザに提供してもよい。また、そのコンピュータ等が、LAN、インターネット、電話回線等の通信ネットワークに接続されている場合には、通信ネットワークを介して、コンピュータプログラムや各種データ等をユーザに提供してもよい。
【0075】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。