(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一実施形態は、耐熱性樹脂と、被膜で被覆された導電性ステンレス繊維と、を含み、且つ、下記式(1)を満たすことを特徴とする抵抗発熱体である。
【0014】
式(1) 1≦(r1/r0)≦1.03
r0:初期の抵抗発熱体の抵抗値
r1:30℃・相対湿度80%で1週間放置した後の抵抗発熱体の抵抗値。
【0015】
上記特許文献1では、定着装置用の発熱ベルトにおいて、耐熱性樹脂に導電性フィラーとしてステンレス繊維を分散させた系を用いている。ステンレスは元々空気酸化による不動態被膜を有し、外部の環境変化(熱や水分)には比較的耐性を有するものと考えられていた。しかしながら、本発明者らは、耐熱性樹脂に導電性フィラーとしてステンレス繊維を分散させた系で、経時的な抵抗増加がみられ、特に負荷(熱・水分)がかかると、抵抗の変化が顕著となることを見出した。具体的には、後述の比較例1のように、高温高湿条件下での過酷試験後の抵抗値の上昇が顕著なものとなる。かような抵抗増加の原因を探究したところ、不動態被膜を有するステンレス繊維であっても、熱や水分負荷によってステンレス繊維が酸化し、導電性材料の抵抗が増加するものと推測した。酸化により、純金属に対して動ける自由電子が少なくなり、全体抵抗値が増加するものと考えられる。そこで、導電性のステンレス繊維に酸化防止被膜を形成することによって、外部からの酸化が抑制され、経時的な抵抗が抑制されるのではないかと仮定した。
【0016】
また、本発明者らは、耐熱性樹脂に導電性フィラーとしてステンレス繊維を分散させた系において、経時的な抵抗を増加させる要因が、熱・水分によるものと想定したため、高温高湿条件下において長期間保存する、具体的には、30℃・相対湿度80%で1週間放置した場合の抵抗値を測定し、初期抵抗値に対してどの程度増加しているかを算出すれば、経時的な抵抗値が安定しているか否かを判断する指標として最適であることを見出した。
【0017】
その上で、r1/r0が1.03以下であれば、長期間使用した場合であっても抵抗値が安定している抵抗発熱体が得られることを見出したものである。なお、r1/r0の下限は1であり、これは、過酷試験後の抵抗値が初期値に対して変化しない場合を指す。
【0018】
[抵抗発熱体]
抵抗発熱体は、耐熱性樹脂および被膜で被覆された導電性ステンレス繊維を含む。該ステンレス繊維は樹脂内で分散されていることが好ましい。以下、被膜で被覆された導電性ステンレス繊維を被覆ステンレス繊維とも称する。
【0019】
耐熱性樹脂とは、高温でも機械的強度を維持できる樹脂を指す。好ましくは、耐熱性樹脂は、アメリカ材料試験協会の試験法ASTM−D648に準拠して、1.82MPaの荷重で求められる荷重たわみ温度が200℃以上のものである。
【0020】
耐熱性樹脂としてはポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等が挙げられる。耐熱性の点からはポリイミド樹脂が好ましい。
【0021】
ポリイミド樹脂は、前駆体であるポリアミド酸を200℃以上の加熱、または触媒を用いて脱水・環化(イミド化)反応を進めることによって得ることができる。このため、耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用いる場合には、ポリアミド酸と、被覆ステンレス繊維とを混合した後、200℃以上の温度で加熱することが好ましい。ポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶媒に溶解し、混合・加熱による重縮合反応によって製造してもよいし、市販品を用いてもよい。ここで用いられるジアミン化合物およびテトラカルボン酸二無水物としては、特開2013−25120号公報の[0123]〜[0131]に挙げられた化合物を用いることができる。
【0022】
耐熱性樹脂の抵抗発熱体中の含有量は、成形性等の観点から、発熱抵抗体中、40体積%以上90体積%以下含有していることが好ましい。
【0023】
被覆ステンレス繊維に用いられるステンレスとしては、オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系などが挙げられる。オーステナイト系としては、SUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317が挙げられる。オーステナイト・フェライト系としては、SUS329J1が挙げられる。マルテンサイト系としては、SUS403、SUS420が挙げられる。フェライト系としては、SUS405、SUS430、SUS430LXが挙げられる。析出硬化系としては、SUS630が挙げられる。中でも、酸化防止の観点からオーステナイト系、フェライト系を用いることが好ましい。
【0024】
本明細書において、繊維とは、長径(繊維長;L)に対する短径(繊維断面径=繊維断面が円形の場合は直径、それ以外の場合は、繊維断面径の最も長い半径;l)の比(l/L)が0.25以下であるものをいう。好ましくは、長径に対する短径の比(l/L)が0.025〜0.25である。ステンレス繊維の短径は、好適には0.5〜30μmであり、より好ましくは1〜10μmである。また、ステンレス繊維の長さ(長径(繊維長;L))は、5〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。なお、上記繊維の長径および短径は、ステンレス繊維の500個のサンプルを採取し、平均値を規定する。具体的には、走査型電子顕微鏡写真を用いてステンレス繊維を500倍にて撮影し、スキャナーにて取り込んだ画像から500個の繊維の短径と長径を測定し、その平均値より算出する。
【0025】
ステンレス繊維は従来公知の製造方法により得られる。即ち、ノズルから引き出し繊維状にしたものを、さらに細くする必要がある場合には延伸することにより(このとき必要に応じて加熱する)、所望の被覆ステンレス繊維の直径を得たのち、その被覆ステンレス繊維を所定の長さに切断することによってステンレス繊維を得ることができる。
【0026】
導電性ステンレス繊維は被膜を有する。被膜は酸化防止機能を有する酸化防止被膜であることが好ましい。かような被膜としては特に限定されるものではないが、式(1)を満たす抵抗発熱体が得られやすいことから、Cr、Mo、Cu、およびSiの少なくとも一の酸化物、およびこれらの複合酸化物から形成される膜であることが好ましく、酸化クロム被膜であることがより好ましい。
【0027】
酸化防止被膜は、ステンレス繊維の全体を被覆していてもよく、部分的に被覆されていてもよいが、略全体的にステンレス繊維は被覆されていることが好ましい。
【0028】
酸化防止被膜の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、(1)ステンレス繊維の酸化防止剤を含む溶液に導電性ステンレス繊維を浸漬する方法、(2)導電性ステンレス繊維を酸素または清浄な空気中において低温加熱する方法、(3)導電性ステンレス繊維を、酸化剤を含む溶液中において陽極分極させる方法などが挙げられる。中でも、均一性の観点から、(1)の方法によりステンレス繊維を被覆する方法が好ましい。
【0029】
上記(1)における酸化防止剤としては、一般的な酸化剤が挙げられ、具体的には、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、重クロム酸などが挙げられる。上記酸化剤を含む酸化性の水溶液中に浸漬することによって、ステンレス中のCr、Mo、Cu、およびSiなどの成分が酸化され、CrやNi、Ti、Mo、Al、Siなどの各種酸化物(複合酸化物)の被膜を生成させることができる。
【0030】
上記(1)〜(3)の方法は、ステンレスの不動態化処理に用いられる方法であり、したがって、上記酸化防止被膜は、ステンレスの不動態化処理を行って得られる被膜であることが好ましい。
【0031】
なお、ステンレス自体も特に上記不動態化処理を行わずとも不動態被膜を有するが、後述の比較例1のように、処理を行わない場合、抵抗発熱体の抵抗値が上記(1)の範囲から大きく外れることとなる。
【0032】
上記被覆ステンレス繊維は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0033】
式(2) 1≦(rs1/rs0)≦10
rs0:初期の導電性材料の抵抗値
rs1:30℃・相対湿度80%で1週間放置した後の導電性材料の抵抗値
上記(2)を満たすことによって、導電性材料自体の高温高湿条件下での抵抗値上昇が抑制されているため、抵抗発熱体に用いた場合であっても、長期で抵抗が安定する。なお、rs1の抵抗値が初期値のrs0と不変である場合がrs1の下限であるので、rs1/rs0=1が下限となる。長期での抵抗値変化がより安定するため、rs1/rs0が5以下であることがより好ましい。
【0034】
ここで、導電性材料の抵抗値は、後述の実施例に記載の方法によって求められる。
【0035】
被覆ステンレス繊維の抵抗発熱体中の含有量は、適切な強度、靱性、及び導電性を付与する等の観点から、発熱抵抗体中、10体積%以上60体積%以下含有していることが好ましく、15体積%以上45体積%以下含有していることがより好ましい。
【0036】
抵抗発熱体には、上記酸化防止被膜を被覆した導電性ステンレス繊維以外の他の導電性材料を本発明の効果が阻害されない範囲で含んでもよい。他の導電性材料としては、金、銀、鉄、アルミニウムなどの純金属、ステンレス(SUS)、ニクロムなどの合金、または炭素、黒鉛などの非金属が挙げられる。上記導電性物質の形状としては、球状粉末状、不定形粉末状、扁平粉末状、繊維状などが挙げられる。
【0037】
本実施形態の抵抗発熱体は、式(1) 1≦(r1/r0)≦1.03(r0:初期の抵抗発熱体の抵抗値、r1:30℃・相対湿度80%で1週間放置した後の抵抗発熱体の抵抗値)を満たす。30℃・相対湿度80%で1週間という条件は、高温・高湿条件下での過酷試験である。r1/r0が1.03を超えると、抵抗発熱体を長期間使用した場合に抵抗値が安定せず、画像形成装置の定着ベルトに用いた場合に、トナーの固着不良に起因する定着ムラが見られるようになる。なお、r1の抵抗値が初期値のr0と不変である場合がr1の下限であるので、r1/r0=1が下限となる。
【0038】
ここで、抵抗発熱体の抵抗値は、後述の実施例に記載の方法によって求められる。
【0039】
本実施形態の抵抗発熱体の体積抵抗率ρvは、0.08×10
−4(Ω・cm)以上10×10
−4(Ω・cm)以下であることが好ましい。抵抗発熱体の体積抵抗率がかような範囲にあることで、抵抗発熱体の導電性が適切なものとなり、発熱が効率的に行われる。体積抵抗率は、断面積W×tに一定電流I(A)を流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差V(V)を測ることにより求められる:体積抵抗率ρv=VWt/IL。
【0040】
本実施形態の抵抗発熱体の通電発熱における経時的な抵抗変化率(%)(100×{(通電発熱における経時的な抵抗値/初期抵抗値)−1})は5%以下であることが好ましい。経時的な抵抗変化率が5%以下であることで、抵抗発熱体を長期間使用した場合であっても抵抗値が安定し、画像形成装置の定着ベルトに用いた場合に、トナーの固着不良に起因する定着ムラが抑制される。通電発熱における経時的な抵抗値とは、下記実施例に記載のように、抵抗発熱体をシームレス樹脂ベルトとし、シームレス樹脂ベルトの両端に電極を配置し、電極間に電圧を印加することによりシームレス樹脂ベルトを通電発熱により180℃に温調し、1分温調・1分温調解除によるヒートサイクル試験を1万サイクル行ったときの抵抗発熱体の抵抗値を指す。抵抗発熱体の通電発熱における経時的な抵抗変化率(%)は3%以下であることがより好ましい。なお、抵抗発熱体の通電発熱における経時的な抵抗変化率(%)は低ければ低いほどよいため、下限は0%である。
【0041】
抵抗発熱体の厚さとしては、10〜150μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。
【0042】
[定着装置]
本発明の第二実施形態は、シームレス樹脂ベルトと、シームレス樹脂ベルトの内側に配置された内周面の一部分で接触する定着ローラと、定着ローラに向けてシームレス樹脂ベルトの外周面を押圧する加圧ローラと、シームレス樹脂ベルトに給電する給電装置とを有し、シームレス樹脂ベルトが、無端状に形成された第一実施形態の抵抗発熱体を有する、定着装置である。すなわち、第三実施形態の定着装置におけるシームレス樹脂ベルトは、第二実施形態のシームレス樹脂ベルトである。
【0043】
図1は本実施形態の一例を示す定着装置の拡大概略図である。
図1Aは定着装置の拡大概略斜視図である。
図1Bは
図1Aに示すA−A’に沿った概略断面図である。
【0044】
図中、24は定着装置を示す。定着装置24は環状の発熱ベルト(シームレス樹脂ベルト)24aと、定着ローラー24bと、環状の発熱ベルト24aを圧接しながら回動する加圧ローラー24cとを有している。
【0045】
定着ローラー24bが駆動ローラーとなっており、定着ローラー24bの回転(図中の矢印方向)に伴い、環状の発熱ベルト24aは矢印方向に巻回する様になっている。
【0046】
環状の発熱ベルト24aを介して定着ローラー24bと加圧ローラー24cとの間に定着ニップ部Nを形成する様になっている。定着ニップ部Nで、トナー像(顕像)が転写された記録媒体を挟み込み、環状の発熱ベルト24aによりトナー像(顕像)を溶融定着し最終画像を形成する様になっている。
【0047】
24a1は発熱ベルト24aの端に設けられた給電用電極を示し、24a2は発熱ベルト24aの他の端に設けられた給電用電極を示し、給電用電極24a1と給電用電極24a2とで一対となっている。
【0048】
24d1は給電用電極24a1に接触し、発熱ベルト24aに給電する給電部材を示す。24d2は給電用電極24a2に接触し、発熱ベルト24aに給電する給電部材を示す。給電部材を配設する位置は、環状の発熱ベルト24aの温度、定着安定性等を考慮し、給電用電極24a1と給電部材24d1との接触を安定にするため、給電用電極24a1が定着ローラー24bと接触している位置で、且つ定着ニップ部Nの近傍が好ましい。
【0049】
給電部材は給電用電極に均一に接触させるため、給電用電極に押圧手段(例えばバネ)で押圧して接触させることが好ましい。
【0050】
[シームレス樹脂ベルト(発熱ベルト)]
図2Aは
図1に示す発熱ベルトの拡大概略平面図である。
図2Bは
図2AのB−B′に沿った概略拡大断面図である。なお、
図1と同一部材には同一の符号を付してある。
【0051】
図中、24aは環状の発熱ベルトを示す。環状の発熱ベルト24aは両端部に給電用電極24a1、24a2を有する発熱層24a3と、給電用電極24a1、24a2を除き接着層24a4を介して弾性層24a5と、接着層24a6を介して離型層24a7とを有する構成を有している。尚、弾性層24a5、接着層24a4、24a6は、必要に応じて設けることが可能である。
【0052】
本図では、発熱層24a3側の面が定着ローラー24b(
図1参照)と接触し、離型層24a7の面が加圧ローラー24c(
図1参照)と接触する様になっている。
【0053】
弾性層24a5は、記録シート上のトナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性層を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。
【0054】
弾性層を構成する材料としては、弾性を有し、かつ耐熱性の高い材質であれば特に限定されない。弾性層を構成する材料として、具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。シリコーンゴムは、シロキサン結合(−Si−O−Si)を主鎖に持つものであり、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン、フッ化ポリシロキサンなどがあり、具体的には、ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴムなどが挙げられる。フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合ゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどを挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、市販されているものを用いてもよく、例えば、シリコーンゴムとしては、商品名;1成分加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムTSE3250(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)等を用いてもよい。中でも、耐熱性、耐寒性、加工時における自由度の高さの点で、弾性層がシリコーンゴムを含むことが好ましい。
【0055】
弾性層には、熱伝導性を高める目的で、無機粒子を配合することが好ましい。弾性層に含有されうる無機粒子としては、炭化ケイ素、ボロンナイトライド、アルミナ、窒化アルミニウム、チタン酸カリウム、マイカ、シリカ、酸化鉄、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0056】
弾性層は、2層以上の積層形態であってもよい。円筒状の弾性層5の厚み(肉厚)は、省エネ性、転写紙に対してニップを確保を達成するためにゴム弾性を付与する等の観点から、通常0.1〜30mmであり、好ましくは0.1〜20mmである。
【0057】
弾性層には、使用目的、設計目的などに応じて、増量充填剤、加硫剤、着色剤、耐熱剤、顔料等の種々の配合剤を適量配合することが出来る。
【0058】
離型層24a7は、トナーに対する離型性を確保するためのチューブ状(円筒状)の層である。チューブ状(円筒状)の離型層は、押し出し成形または延伸成形により製造することができる。
【0059】
上記離型層を構成する材料としては、トナーに対する離型性を確保することができればよいが、耐熱性、耐摩耗性、耐久性、機械的強度等の観点から、フッ素系樹脂材料を好適に用いることができる。上記フッ素系樹脂材料としては、具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体)等が挙げられる。これらの材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上混合してもよい。中でも、成形性やトナー離型性などの点で、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)が好ましい。離型層(フッ素系樹脂チューブ)は、熱収縮性であっても、非熱収縮性であってもよい。離型層として用いられるフッ素系樹脂チューブは、市販品を用いることもでき、独自に合成したものを使用することができ、例えば、デュポン社製451HP、351HP、950HPなどのHPシリーズ;旭硝子社製802UP;グンゼ社製NST、NSE、SMT、SME、GRCなどが挙げられる。
【0060】
上記離型層(フッ素系樹脂チューブ)の厚さ(肉厚)は、省エネ性・強度確保等の観点から、10〜500μm程度であり、好ましくは20〜200μmであり、より好ましくは20〜50μmである。
【0061】
上記離型層(フッ素系樹脂チューブ)の内径は、基材径によっても異なるが、弾性層までの基材径より、やや小さめの径が望ましい等の観点から、通常15〜80mm、好ましくは15〜40mmの範囲である。
【0062】
発熱層24a3と弾性層24a5との間に、発熱層と弾性層との密着性を向上させるために、プライマーまたは接着剤を用いてなる接着層24a4を設けてもよい。この場合、発熱層3の上(表面)にプライマーまたは接着剤を用いて接着層を形成し、この接着層の上に、加硫前の液状シリコーンゴムやフッ素ゴム等を用いて弾性層24a5を形成すればよい。ここで、接着剤は分子間力+アンカー効果で離型層と弾性層を接着するものをいい、プライマーは分子間力+化学結合で離型層と弾性層を接着(濡れ性良い)するものをいう。
【0063】
また、同様に弾性層24a5と離型層24a7との間に、弾性層と離型層との密着性を向上させるために、プライマーまたは接着剤を用いてなる接着層24a6を設けてもよい。
【0064】
給電用電極24a1、24a2の形成は特に限定はなく、例えば導電性テープを貼合してもよい。
【0065】
[画像形成装置]
本発明の第三実施形態は、転写材上に電子写真方式によって形成された未定着のトナー画像を加熱および加圧によって前記転写材に定着させる定着装置を有する画像形成装置において、定着装置が第三実施形態の定着装置である、画像形成装置である。
【0066】
図3は、電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。尚、本図はフルカラー画像形成装置の場合を示している。
【0067】
図3において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
【0068】
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、画像支持体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0069】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、ドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、ドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0070】
また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、ドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。さらに、他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、ドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0071】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0072】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の画像支持体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、画像支持体P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された画像支持体Pは、発熱ベルトによる定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0073】
一方、2次転写ロール5Aにより画像支持体Pにカラー画像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0074】
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0075】
2次転写ロール5Aは、ここを画像支持体Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接するよう構成されている。
【0076】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とを有する。
【0077】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体形成ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体形成ユニット7は、ローラー71、72、73、74、76、77を巻回して回動可能な無端の中間転写ベルト70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとを有している。
【0078】
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0079】
この様に、感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して画像支持体Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を画像支持体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0080】
感光体については、特に限定はなく無機系の感光体、有機系の感光体共に用いることができる。
【0081】
画像支持体(記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、例えば、上述した画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー画像を保持するものであれば特に限定されるものではない。使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
【0082】
[抵抗発熱体の製造方法]
以下、好適な耐熱性樹脂であるポリイミドと、被覆ステンレス繊維とを含む抵抗発熱体を定着ベルトの発熱層として用いる場合の製造方法の一例を示す。
【0083】
発熱層の製造方法としては、被覆ステンレス繊維の準備工程、ポリアミド酸ドープ液調製工程、塗布・乾燥工程、およびイミド化反応工程を有する。
【0084】
(被覆ステンレス繊維の準備工程)
被覆ステンレス繊維は、上述したように、好適にはステンレス繊維の酸化防止剤を含む溶液に導電性ステンレス繊維を浸漬することによって得られる。酸化防止剤としては、一般的な酸化剤が挙げられ、具体的には、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、重クロム酸などが挙げられる。
【0085】
浸漬後、ステンレス繊維は洗浄、乾燥することが好ましい。
【0086】
(ポリアミド酸ドープ液調製工程)
ポリアミド酸に被覆ステンレス繊維を分散させる工程である。
【0087】
ポリアミド酸ドープ液を調製する方法としては、ポリアミド酸溶液に被覆ステンレス繊維を添加し、加熱攪拌混合して、被覆ステンレス繊維分散ポリアミド酸溶液を調製してもよいし、溶媒に被覆ステンレス繊維を分散し、分散液にポリアミド酸の原料であるテトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を溶解した後、混合・加熱して重縮合反応して調製してもよい。
【0088】
上記溶媒(またはポリアミド酸溶液の溶媒)としては、ポリアミド酸の良溶媒(ポリアミド酸を、25℃において20質量%以上の濃度で均一に溶解することができる溶媒)が用いられ、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルスルホルアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホンなどのスルホン類などの有機極性溶媒を挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0089】
ポリアミド酸溶液としては市販品を用いてもよく、U−ワニスS301(宇部興産社製)などを用いることができる。
【0090】
被覆ステンレス繊維の分散方法としては公知の方法が適用でき、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転分散方式などの各種混合機を用いて混合・攪拌する方法が挙げられる。
【0091】
また、被覆ステンレス繊維の分散時には、被覆ステンレス繊維の分散安定性を更に高めるために、非イオン系高分子を添加してもよい。非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(n−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(n−ビニルカプロラクタム)、ポリ(n−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することが出来る。これらの中では、被覆ステンレス繊維の分散性がより高まることから、ポリ(n−ビニル−2−ピロリドン)を含むことがより好ましい。
【0092】
(塗布・乾燥工程)
次いで、得られたポリアミド酸ドープ液を、金型に塗布し、乾燥して溶媒を除去する。塗布方法としては特に限定はなく、バーコーター、ドクターブレード、スライドホッパー、スプレーコート、スパイラル塗布、Tダイ押出しなどの薄膜化手段を用いることができる。
【0093】
溶媒を蒸発させるための乾燥温度は、後述するイミド化開始温度より低い温度であって、溶媒が蒸発し得る温度であれば特に制限されず、例えば、40〜280℃、好ましくは60〜150℃である。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、発熱定着ベルト形成用塗膜(被覆ステンレス繊維分散ポリアミド酸塗膜)表面が傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥時間は、溶媒が適切な量除去されるよう適宜設定される。
【0094】
(イミド化反応工程)
このイミド化反応工程は、特定の焼成温度において所定時間にわたって焼成することによりポリアミド酸をイミド化して、ポリイミド樹脂による発熱層を形成させる工程である。
【0095】
イミド化反応に係る特定の焼成温度は、イミド化開始温度であって、通常200℃以上、好ましくは280〜500℃である。また、焼成時間は、通常10分間以上、好ましくは20〜240分間である。
【0096】
かようにして得られた発熱層上に適宜、弾性層および離型層を形成して発熱ベルトを製造すればよい。一例を挙げれば、発熱層の上に給電用電極を除き弾性層形成用塗布液を塗布した後、乾燥することで弾性層が形成される。なお、弾性層と発熱層との接着を良くするためにプライマー層を形成した後に弾性層を形成することが好ましい。次いで、給電用電極を除き弾性層の上に離型層形成用塗布液を塗布した後、乾燥することで離型層が形成される。なお、弾性層と離型層との接着を良くするためにプライマー層を形成した後に離型層を形成することが好ましい。その後、円筒状金型を抜き取ることで被覆ステンレス繊維を含有した発熱層と、弾性層と、離型層とを順次形成した環状の発熱定着ベルトを製造することができる。
【0097】
または、離型層として樹脂チューブに発熱層を形成した金型を挿入し、該発熱層と樹脂チューブとの間に離型層形成用塗布液を注入してもよい。この際、各層間には密着性を向上させるためのプライマー層を形成させてもよい。
【0098】
給電用電極24a1、24a2は、離型層を形成した後にテープ貼合機を使用し、発熱層の両端に導電性テープを貼合することで形成することが可能である。
【実施例】
【0099】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。なお、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
【0100】
[面状発熱体の作製]
(実施例1)
ステンレス繊維(直径 8μm、長さ 35μm、アスペクト比(直径/長さ=0.229)、鋼種SUS430の表面油分をアセトンで取り除いた後、ステンレス繊維を25質量%硝酸溶液に1時間含浸した。含浸後、蒸留水で洗浄、2時間乾燥を行って、被膜で被覆された導電性ステンレス繊維を得た。
【0101】
上記で得られたステンレス繊維20g、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液(宇部興産社製 U−ワニスS301、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)100gを混合し、自転公転分散機により、攪拌脱泡し、ポリアミド酸ドープ液を調整した。
【0102】
作製したドープ液をスパイラル塗布にて、焼成後膜厚が100μmとなるように金型上に円筒状に塗布し、120℃で60分間乾燥後、450℃20分間で焼成を行い、円筒状の面状発熱体を製造した。面状発熱体における被覆ステンレス繊維の含有量は、15体積%であった。
【0103】
(比較例1)
被覆ステンレス繊維の代わりに、被膜で被覆されていないステンレス繊維(直径 8μm、長さ 35μm、アスペクト比(直径/長さ=0.229)、鋼種SUS430)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして面状発熱体を得た。
【0104】
(比較例2)
ステンレス繊維(直径 8μm、長さ 35μm、アスペクト比(直径/長さ=0.229)、鋼種SUS430)の表面油分をアセトンで取り除いた後、亜鉛を90質量%以上含んだ防錆溶液(商品名:ノックスドール:株式会社創新)にステンレス繊維を1分間含浸した。含浸後、蒸留水で洗浄、1日乾燥を行って、亜鉛被膜ステンレス繊維を得た。
【0105】
実施例1で作製した被膜ステンレス繊維の代わりに、上記亜鉛被膜ステンレス繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様にして面状発熱体を得た。
【0106】
(比較例3)
ステンレス繊維(直径 8μm、長さ 35μm、アスペクト比(直径/長さ=0.229)、鋼種SUS430)の表面油分をアセトンで取り除いた後、樹脂被膜型の防錆剤(商品名:ニューピールPN−1、株式会社ネオス)にステンレス繊維を1分間含浸した。含浸後、蒸留水で洗浄、1日乾燥を行って、樹脂被膜ステンレス繊維を得た。
【0107】
実施例1で作製した被膜ステンレス繊維の代わりに、上記樹脂被膜ステンレス繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様にして面状発熱体を得た。
【0108】
(比較例4)
ステンレス繊維(直径 8μm、長さ 35μm、アスペクト比(直径/長さ=0.229)、鋼種SUS430)の表面油分をアセトンで取り除いた後、SUS粉および樹脂含有の防錆剤(商品名:FC−113 ステンレスカラーコート、ファインケミカルジャパン株式会社)にステンレス繊維を1分間含浸した。含浸後、蒸留水で洗浄、1日乾燥を行って、SUS被膜ステンレス繊維を得た。
【0109】
実施例1で作製した被膜ステンレス繊維の代わりに、上記SUS被膜ステンレス繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様にして面状発熱体を得た。
【0110】
[(被覆)ステンレス繊維および抵抗発熱体の抵抗値の測定]
製造した円筒形の面状発熱体を30℃・相対湿度80%で1週間放置し、放置後の抵抗値(r1)を求め、初期抵抗値(r0)に対する比(r1/r0)を測定した。抵抗値(Ω)測定は、抵抗テスター(ロレスタGP、三菱化学アナリテック社製)を用いて300mm間の抵抗値を測定した。
【0111】
また、各実施例および比較例で用いた被覆ステンレス繊維(またはステンレス繊維)を30℃・相対湿度80%で1週間放置し、放置後の抵抗値(rs1)を求め、初期抵抗値(rs0)に対する比(rs1/rs0)を測定した。抵抗値(Ω)測定は、抵抗テスター(ロレスタGP、三菱化学アナリテック社製)を用いて繊維中10mm間の抵抗値を測定した。
【0112】
結果を表1に示す。
【0113】
[シームレス樹脂ベルトの作製]
上記実施例1および比較例1〜4で得られた面状発熱体上にプライマー(信越化学社製:KE−1880)を塗布し、常温で30分乾燥させた。プライマー(Momentive社製:XP−A6361)を内側に塗布したフッ素樹脂チューブ(グンゼ社製:GRC)に上記面を挿入した。
【0114】
その後、シリコーンゴム(Momentive社製:XE15−C2038)をポリイミド樹脂管状物とフッ素樹脂チューブの間に注入した。その後、150℃の温度で30分一次加硫し、さらに200℃で4時間二次加硫を行い、ポリイミド樹脂管状物の外層に200μmの厚みでシリコーンゴム層が成形された管状物を得た。
【0115】
ついで、冷却後、金型から管状物を分離した。両端周面に幅10mm、厚さ2mmの導電性テープCU−35C(3M製)を1巻貼着し給電用電極を形成して定着ベルトを得た。
【0116】
[抵抗発熱体の体積抵抗率]
抵抗発熱体の体積抵抗率は、定着ベルトの円周方向全周の両端部に導電テープで電極部を設け、その両端の抵抗値を測定し、下記式にて算出した。なお、定着ベルトの発熱ベルト以外の構成部材は絶縁体であるため上記測定により抵抗発熱体の体積抵抗率が求まる。
【0117】
体積抵抗率(ρ)=×(R・d・W)/L(Ω・cm)
(但し、両端間の抵抗値(R:Ω)、発熱層厚み(d:cm)、円周方向長さ(W:cm)、電極間の長さ(L:cm)である。)
抵抗値(Ω)測定は、抵抗テスター(ロレスタGP、三菱化学アナリテック社製)を用いた。
【0118】
結果を表1に示す。
【0119】
[経時的な抵抗(R)変化率]
シームレス樹脂ベルトの電極間に電圧を印加することによりシームレス樹脂ベルトを通電発熱により180℃に温調した。1分温調・1分温調解除によるヒートサイクル試験を1万サイクル行ったときの抵抗発熱体の初期抵抗に対する抵抗変化率を測定した。抵抗測定は上記抵抗発熱体の抵抗測定と同様に行った。
【0120】
[定着ムラ評価]
上記シームレス樹脂ベルトを上記ヒートサイクル試験と同様のヒートサイクル試験後、
図1で示した構成を有する定着装置に装填して、発熱ベルトを
図3に示した画像形成装置に組み込み、A4の画像支持体50万枚を1万枚毎に5分間中断しながら通紙した。画像の定着ムラ(トナーの固着不良と観察される部位)の有無を以下評価基準にしたがって評価した。
【0121】
○:定着ムラ部位の最大長さが1mm以下である。
【0122】
×:定着ムラ部位の最大長さが1mmを超える。
【0123】
結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
上記表1の結果より、本発明の抵抗発熱体は、長期間抵抗値が安定しているため、画像形成装置の定着ベルトに用いた場合であっても、トナーの固着不良に起因する定着ムラが抑制されることがわかる。