特許第5983645号(P5983645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983645
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】作業機械のキャブ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20160823BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   E02F9/16 F
   B60J5/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-13339(P2014-13339)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-140554(P2015-140554A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】村上 良昭
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−286963(JP,A)
【文献】 特開2005−096607(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114878(WO,A1)
【文献】 特開平09−303024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00 − 9/16
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に設置されるキャブであって、
前記キャブは、
運転スペースの周囲を囲むキャブ本体と、
前記キャブ本体の側面の前側に設けられた開口と、
前記キャブ本体の側面に沿って横移動することにより、前記開口を開閉するドアと、
開き位置又は閉じ位置でロックされた前記ドアのロックを解除するロック解除装置と、
を備え、
前記ロック解除装置は、
前記ドアの内側に回動可能に設けられ、前記ドアが開き位置に在るときには、先端部が前記開口を通じて前記運転スペースに臨むインナーレバーと、
前記インナーレバーの操作に応じて、前記ドアのロックを解除するロック解除機構と、
を有し、
前記インナーレバー、前記ドアの壁面と略平行な軸を中心に回動可能に設けられるとともに前記軸が前記ドアの横移動方向と直交しないように配置され、当該インナーレバーの先端部を、前記運転スペース側に向かって引き出す操作で前記ドアのロックが解除され
前記ロック解除機構は、
前記インナーレバーよりも下方に位置して、前記ドアの壁面と略垂直な軸を中心に回動するリンクプレートと、
前記リンクプレートと連結され、開き位置の前記ドアを解除可能にロックする開きドアロック部と、
前記リンクプレートと連結され、閉じ位置の前記ドアを解除可能にロックする閉じドアロック部と、
を有し、
前記インナーレバーの操作に応じて前記リンクプレートが回動し、当該リンクプレートの回動に連動して、前記開きドアロック部及び前記閉じドアロック部の双方がロック解除動作を行い、
前記開きドアロック部は、
前記キャブ本体に回動可能に設けられ、前記ドアがロックされるロック位置の側に向かって弾性力で付勢されたフック部と、
前記フック部と噛み合うように前記ドアに回動可能に設けられ、前記リンクプレートと連結された逆フック部と、
を有し、
前記フック部と前記逆フック部とが連結され、前記リンクプレートの回動に連動して前記逆フック部が弾性力に抗して前記フック部を押し戻すことにより、前記ドアのロックが解除されるキャブ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャブにおいて、
前記インナーレバーが、先端部を上方又は上斜め前方に向けて配置されているキャブ。
【請求項3】
請求項1に記載のキャブにおいて、
前記ロック解除装置は、更に、前記ドアの外側に設けられたアウターレバー及び施錠部を有し、
前記ロック解除機構は、更に、
前記アウターレバーの操作に応じて回動する第2リンクプレートと、
前記施錠部の操作に応じて回動する第3リンクプレートと、
を有し、
前記第2リンクプレート及び前記第3リンクプレートは、前記リンクプレートと重ね合わせた状態で一体的に組み付けられ、
前記リンクプレートが、前記第2リンクプレート又は前記第3リンクプレートの回動に連動して回動するキャブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に設置されているキャブに関し、その中でも特に、スライド式やリンク式等、開閉時にキャブの側面に沿って横移動するドアを備えたキャブにおいて、そのドアのロックを内側から解除するロック解除技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来の作業機械の一例として油圧ショベル1を示す。通常、油圧ショベル1は、走行動作を行う下部走行体2と、その上に旋回自在に設置された機械本体3とで構成されている。機械本体3には、作業動作を行うアタッチメント4、油圧機器やエンジン等を収容した機械室5、キャブ6などが設置されている。
【0003】
図2に詳しく示すように、キャブ6は、搭乗者数が1名の箱型の運転室であり、運転スペース11の周囲をキャブ本体12やドア13などで囲んで構成されている。運転スペース11の後部中央には座席14が設置されており、その周囲に操作装置や計器等が集約して設置されている。
【0004】
機械本体3の外方に面しているキャブ本体12の側面12aの前側には、オペレータが運転スペース11に昇降するために縦長の開口15が設けられている。
【0005】
開口15を開閉するドアには、機能別に、スイング式ドアやスライド式ドア、リンク式ドアなどがある。この油圧ショベル1のドア13には、リンク式ドアが用いられており、その具体例は、例えば特許文献1に開示されている。
【0006】
ドア13は、リンク機構13aにより、開口15を閉鎖する閉じ位置と、開口15を開放する開き位置との間を、開口15の後方に連なる側面12aに沿って横移動する。リンク式の場合、開くことによってドア13が外側に変位するため、開き位置では、キャブ本体12の側面12aからドア13が離れて位置する。
【0007】
ドア13は、閉じ位置や開き位置に至ると、自動的にロックされて動かなくなるように構成されている。そして、閉じ位置や開き位置でロックされたドア13のロックを、手動操作で解除できるようにするために、キャブ6にはロック解除装置16が設置されている。
【0008】
すなわち、キャブ6の外側からドア13のロックを解除してドア13を開閉操作するために、ドア13の外面における前端部13bの中央部位には、アウターレバー17が設置されている。アウターレバー17の近傍には、閉じたドア13を施錠する施錠部18が設置されている。
【0009】
図3に示すように、ドア13の内面における前端部13bの中央部位には、キャブ6の内側からドア13のロックを解除するために、インナーレバー19が設置されている。また、図示はしないが、ドア13を内側から開閉操作するための把手も設置されている。
【0010】
図示のごとく従来のインナーレバー19は、棒状の部材からなり、摘まみ操作する先端部を上方に向けた状態で、基端部がドア13に軸支されている。インナーレバー19は、ドア13の壁面に直交して延びる軸を中心に、後方に向かって一定角度まで回動できるように構成されており、先端部を摘まんで後方に回動させることでドア13のロックが解除される。
【0011】
図3に示すように、開き位置では、ドア13の前端部は、開口15の後縁よりも前方に張り出していて、インナーレバー19の先端部は、開口15を通じて運転スペース11に臨んでいる。それにより、オペレータは、着座したままでインナーレバー19の先端部を摘まんで後方に回動させることができ、ドア13のロックが解除できるようになっている。
【0012】
インナーレバー19やアウターレバー17の操作に応じてドア13のロックを解除するロック解除機構20は、施錠機構とともにキャブ6に一体的に組み込まれている。
【0013】
従来のロック解除機構20は、平行リンク機構を主体に多数の部材を組み合わせて構成されており、その平行リンク機構は、ドア13の壁面に沿って前後方向に拡がるように配置されている。従来のロック解除機構20の具体例は、例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−214022号公報
【特許文献2】特開平9−303024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のキャブでは、インナーレバーで開き位置に在るドアのロックを解除できるようにするためには、インナーレバーの後方に、その回動スペースを確保する必要がある。そのため、インナーレバーの操作を容易にするには、インナーレバーを、開口の後縁よりもできるだけ前方に位置させるのが好ましい。ところがそうすると、ドアの前端が開口の前縁に近づいて、オペレータが通り抜ける昇降口の横幅W1が狭くなる。
【0016】
また、閉じ位置でドアを開く際、インナーレバーでロック解除した後に、開閉操作用の把手を用いずに、そのままインナーレバーが後方に引っ張られる場合がある。
【0017】
その場合、引っ張り力の作用する方向がインナーレバーの回動方向とほぼ一致しているため、インナーレバーの基端部や、基端部に連結された複雑な平行リンク機構に過度な負荷が加わって、これらの変形や破損を招くおそれがあった。
【0018】
そこで本発明の目的は、ドアの開閉操作が容易で、破損等を効果的に抑制でき、昇降口の横幅も拡げることができるキャブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、作業機械に設置されるキャブに係わる。前記キャブは、運転スペースの周囲を囲むキャブ本体と、前記キャブ本体の側面の前側に設けられた開口と、前記キャブ本体の側面に沿って横移動することにより、前記開口を開閉するドアと、開き位置又は閉じ位置でロックされた前記ドアのロックを解除するロック解除装置と、を備える。
【0020】
前記ロック解除装置は、前記ドアの内側に回動可能に設けられ、前記ドアが開き位置に在るときには、先端部が前記開口を通じて前記運転スペースに臨むインナーレバーと、前記インナーレバーの操作に応じて、前記ドアのロックを解除するロック解除機構と、を有している。そして、前記インナーレバーが、前記ドアの壁面と略平行な軸を中心に回動可能に設けられ、当該インナーレバーの先端部を、前記運転スペース側に向かって引き出す操作で前記ドアのロックが解除されるように構成されている。
【0021】
従って、本発明のキャブによれば、インナーレバーが、ドアの壁面と略平行な軸を中心に回動可能に設けられていて、その先端部が、運転スペース側に向かって引き出せるようになっているので、ドアの開閉操作が容易になるし、開き位置に在るドアのロックを解除する際、インナーレバーを操作するうえで必要とされる後方スペースを小さくできる。
【0022】
従って、インナーレバーの操作容易性を損なわずに、インナーレバーを開口の後縁の近傍に配置することが可能になり、昇降口の幅を広くできる。
【0023】
そして、インナーレバーの操作方向がドアを開く方向と異なっているため、インナーレバーを把手として誤用するのを効果的に防止できる。その結果、インナーレバーやロック解除機構に過度な負荷が加わることを回避でき、これらの変形や破損も効果的に防止できる。
【0024】
具体的には、前記軸が前記ドアの横移動方向と直交しないように、前記インナーレバーを配置するのが好ましい。
【0025】
そうすれば、インナーレバーを後方に引っ張り難くなるため、インナーレバーの把手としての誤用が抑制できる。仮にインナーレバーが誤用されても、その引っ張り力の作用する方向がインナーレバーの回動方向と一致しないため、インナーレバー等の変形や破損を軽減できる。
【0026】
特に、前記インナーレバーが、先端部を上方又は上斜め前方に向けて配置されているようにすればよい。
【0027】
そうすれば、座席に着座したままの姿勢で、インナーレバーを運転スペース側に向かって引き出し易くなるし、インナーレバーの誤用もよりいっそう防止できる。
【0028】
より具体的には、前記ロック解除機構は、前記インナーレバーよりも下方に位置して、前記ドアの壁面と略垂直な軸を中心に回動するリンクプレートと、前記リンクプレートと連結され、開き位置の前記ドアを解除可能にロックする開きドアロック部と、前記リンクプレートと連結され、閉じ位置の前記ドアを解除可能にロックする閉じドアロック部と、を有し、前記インナーレバーの操作に応じて前記リンクプレートが回動し、当該リンクプレートの回動に連動して、前記開きドアロック部及び前記閉じドアロック部の双方がロック解除動作を行うようにするとよい。
【0029】
そうすれば、インナーレバーの操作に応じて1つのリンクプレートが回動するだけで、開きドアロック部及び閉じドアロック部の双方のロック解除が行えるので、ロック解除機構の構造を簡素かつコンパクトにでき、強度及び剛性も向上できる。
【0030】
更に具体的には、前記ロック解除装置は、前記ドアの外側に設けられたアウターレバー及び施錠部を有し、前記ロック解除機構は、前記アウターレバーの操作に応じて回動する第2リンクプレートと、前記施錠部の操作に応じて回動する第3リンクプレートと、を有し、前記第2リンクプレート及び前記第3リンクプレートは、前記リンクプレートと重ね合わせた状態で一体的に組み付けられ、前記リンクプレートが、前記第2リンクプレート又は前記第3リンクプレートの回動に連動して回動するようにするとよい。
【0031】
そうすれば、インナーレバーによるロック解除だけでなく、アウターレバーによるロック解除や、施錠部による施錠及び解錠についても、重ね合わせて一体化された複数のリンクプレートが連動して回動することによって行えるので、ロック解除機構の構造をよりいっそう簡素かつコンパクトにでき、強度及び剛性もよりいっそう向上できる。
【0032】
また、前記開きドアロック部は、前記キャブ本体に回動可能に設けられ、前記ドアがロックされるロック位置の側に向かって弾性力で付勢されたフック部と、前記フック部と噛み合うように前記ドアに回動可能に設けられ、前記リンクプレートと連結された逆フック部と、を有し、前記フック部と前記逆フック部とが連結され、前記リンクプレートの回動に連動して前記逆フック部が弾性力に抗して前記フック部を押し戻すことにより、前記ドアのロックが解除されるようにしてもよい。
【0033】
そうすれば、開きドアロック部も構造が簡素かつコンパクトになって、部品点数やコストの削減、組み立て作業の向上などが図れる。
【発明の効果】
【0034】
このように、本発明のキャブによれば、従来のキャブよりもドアの開閉操作が容易になる。破損等も効果的に抑制でき、昇降口の横幅も大きくできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】従来の作業機械の一例を示す概略図である。
図2】従来のキャブの一例を示す概略斜視図である。
図3】従来のキャブの側面を内側から見た概略図である。
図4】本実施形態のキャブの側面を内側から見た概略図である。
図5】本実施形態のキャブの要部を示す概略図である。
図6】ロック解除機構の要部を示す概略分解斜視図である。
図7】(a)〜(c)は、開きドアロック部の動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。なお、上下や前後等の方向は、図に矢印で表すように、キャブを基準に示している。
【0037】
図4に、本発明を適用したキャブ10の図3に相当する図を示す。図1図2に示したように、キャブ10の基本的な構成は、従来の油圧ショベル1と同様である。そのため、便宜上、同じ内容の構成には同じ符号を用いることでその説明は省略する。
【0038】
本実施形態のキャブ10は、主に、インナーレバー40やロック解除機構50等、ロック解除装置30が従来のキャブ6と異なっている。
【0039】
(インナーレバー)
図4に示すように、インナーレバー40は、互いに離れて平行に延びる一対の脚部41,41と、これら脚部41,41の先端に架設された摘まみ部42とを有している。そして、ドア13の内面における前端部13bの中央部位には、細長く凹むトレイ状のレバー受け43が設けられている。インナーレバー40は、座席14よりも前方かつ上方に位置している。
【0040】
インナーレバー40は、このレバー受け43の内部に組み付けられており、先端の摘まみ部42が前方に向かって上向きに傾斜した方向に向くように、ドア13に傾斜した状態で配置されている。具体的には、各脚部41の基端部分は、レバー受け43を介してドア13に軸支されており、インナーレバー40が延びる方向に直交してドア13の壁面と略平行に延びるレバー軸RJを中心に回動可能となっている。
【0041】
それにより、摘まみ部42を運転スペース11の側に向かって下斜め後方に引き出せるようになっており、インナーレバー40は、摘まみ部42がレバー受け43に収容された状態のロック位置と、摘まみ部42がレバー受け43から引き出された状態のロック解除位置との間を変位する。インナーレバー40は、弾性力で付勢されていて、自動的にロック位置に戻るように構成されている。
【0042】
詳細は後述するが、摘まみ部42を引き出してインナーレバー40をロック解除位置にすることで、ドア13のロックは解除される。
【0043】
このキャブ10では、先端の摘まみ部42が前方に向かって上向きに傾斜するように、傾斜した状態でインナーレバー40が配置されていて、そのインナーレバー40の摘まみ部42が運転スペース11の側に向かって引き出せるようになっているので、ドアの開閉操作が容易になるし、閉じられたドア13のロックを解除する際、インナーレバー40を操作するうえで必要とされる後方スペースを小さくできる。
【0044】
従って、インナーレバー40の操作容易性を損なずに、インナーレバー40を開口15の後縁の近傍に配置することが可能になり、昇降口の横幅W2を広くすることができる。
【0045】
特に、リンク式のドア13は、開き位置においてキャブ本体12の側面12aから離れて位置する。そのため、摘まみ部42を運転スペース11の側に向かって引き出し易くなっており、よりいっそう操作性に優れる利点がある。
【0046】
また、レバー軸RJがドア13の横移動方向と直交しない方向に延びているため、インナーレバー40を回動する操作方向がドア13を開く方向と異なっている。それにより、開閉操作用の把手として用いる、インナーレバー40の誤用を効果的に防止できる。その結果、インナーレバー40やロック解除機構50に過度な負荷が加わることによる変形や破損を回避することができる。
【0047】
(ロック解除機構)
更に、このキャブ10では、ロック解除機構も、簡素かつコンパクトでありながら強度及び剛性も向上できるように工夫されている。
【0048】
図5に、そのロック解除機構50の概要を示す。図5はロック解除機構50の要部をドア13の内側から表したものであり、ロック解除機構50は、プレート複合体51や、開きドアロック部52、閉じドアロック部53などで構成され、ドア13の壁面内に設置されている。
【0049】
閉じドアロック部53は、閉じ位置に至ったドア13を自動的にロックする機能と、閉じ位置でロックされたドア13のロックを解除する機能とを有し、プレート複合体51の前方におけるドア13の前端部13bに配置されている。図4に示すように、キャブ本体12の開口15の前縁部分には、閉じドアロック部53と協働してドア13をロック又はロック解除するロック補助部54が設けられている。
【0050】
開きドアロック部52は、開き位置に至ったドア13を自動的にロックする機能と、開き位置でロックされたドア13のロックを解除する機能とを有し、プレート複合体51から後方に離れて配置されている(開きドアロック部52については、別途後述)。
【0051】
プレート複合体51は、ロック解除機構50の中核をなす部分であり、金属板のプレス加工品からなる複数のリンクプレートで構成されており、インナーレバー40の下斜め後方に配置されている。
【0052】
具体的には、図6に示すように、プレート複合体51は、第1リンクプレート61、第2リンクプレート62、第3リンクプレート63、及び支持プレート64を有し、これらを互いに重ね合わせた状態で一体的に組み付けて構成されている。これらリンクプレート61〜64は、ドア13の壁面と略平行にドア13に設置されている。
【0053】
支持プレート64は、第1〜第3のリンクプレート61〜63を支持する回動しないプレートであり、ドア13の壁面と略平行な姿勢で、ドア13にボルトBで固定されている。
【0054】
支持プレート64には、第1軸ピン65が回動不能に挿通される支持固定孔64aと、第2軸ピン66が回動可能に挿通される支持軸孔64bと、捩りコイルバネ67の一端が差し込まれる支持バネ孔64cとが形成されている。支持プレート64の裏面側(ドア13の外面側)には、係合ピン64dが1本立設されている。
【0055】
第3リンクプレート63は、施錠部18の操作に応じて回動するプレートであり、支持プレート64の裏面側に配置されている。第3リンクプレート63には、第1軸ピン65が回動可能に挿通される第3軸孔63aと、施錠部18と第3ロッド68を介して連結される第3連結孔63bと、第3軸ピン69が遊動可能に挿通される細長い第3係合孔63cと、捩りコイルバネ67の他端が差し込まれる第3バネ孔63dと、が形成されている。
【0056】
第3連結孔63bは、第3軸孔63aから離れて位置し、第3軸孔63aと第3連結孔63bとの間に、第3係合孔63cが配置されている。第3リンクプレート63の縁部には、更に、係合ピン64dが係合して第3リンクプレート63の回動を規制する係合凹部63eが形成されている。第3リンクプレート63は、捩りコイルバネ67の弾性力に抗して、ドア13の壁面と略垂直な第1軸ピン65を中心に回動する。
【0057】
第2リンクプレート62は、アウターレバー17の操作に応じて回動するプレートであり、支持プレート64の表面側に配置されている。第2リンクプレート62には、第2軸ピン66が回動可能に挿通される第2軸孔62aと、第3軸ピン69が遊動可能に挿通される略L字状の第2係合孔62bとが形成されている。
【0058】
また第2リンクプレート62には、アウターレバー17と第2ロッド70を介して連結される細長い第2連結孔62cと、引きコイルバネ71の一端が掛け止められる第2バネ孔62dと、が形成されている。引きコイルバネ71の他端は、第1軸ピン65の先端に取り付けられるフック具72に掛け止められている。
【0059】
第2連結孔62cは、第2軸孔62aから離れて配置され、第2軸孔62aを挟んだ反対側に、第2軸孔62aから離れて第2係合孔62bが配置されている。第2リンクプレート62の縁部には、更に、支持プレート64の縁部に係合して第2リンクプレート62の回動を規制するL字状の係合片部62eが形成されている。第2リンクプレート62は、引きコイルバネ71の弾性力に抗してドア13の壁面と略垂直な第2軸ピン66を中心に回動する。
【0060】
第2係合孔62bは、外力が作用していない無負荷の状態において、後述する第1係合孔61cとほぼ重なって延びる第1孔部62b1と、第1孔部62b1から屈曲して延びる第2孔部62b2と、を有している。第2孔部62b2は、第2軸孔62aを中心とした円弧状に形成されており、第2リンクプレート62の回動範囲に対応した長さに形成されている。
【0061】
第1リンクプレート61は、インナーレバー40の操作に応じて回動するプレートであり、第2リンクプレート62の表面側に配置されている。第1リンクプレート61には、第2軸ピン66が回動可能に挿通される第1軸孔61aと、インナーレバー40と第1ロッド73を介して連結される細長い第1連結孔61bと、第3軸ピン69が遊動可能に挿通される細長い第1係合孔61cと、が形成されている。
【0062】
第1リンクプレート61には、更に、閉じドアロック部53と前側連結ロッド74を介して連結される細長い第1前側連結孔61dと、開きドアロック部52と後側連結ロッド75を介して連結される第1後側連結孔61eと、が形成されている。第1リンクプレート61は、第2軸ピン66を中心に回動する。
【0063】
インナーレバー40を運転スペース11側に向かって引き出すことにより、図5図6に矢印で示すように、第1ロッド73がインナーレバー40側に引き付けられる。それにより、第1リンクプレート61は、ドア13の内側から見て、反時計回りに回動する。
【0064】
第1リンクプレート61の回動に連動して、前側連結ロッド74及び後側連結ロッド75が第1リンクプレート61側に引き付けられる。それにより、閉じドアロック部53及び開きドアロック部52の双方においてロック解除動作が行われ、ドア13のロックが解除される。
【0065】
アウターレバー17でロック解除操作が行われた場合には、図6に矢印で示すように、第2ロッド70がアウターレバー17側に引き付けられる。それにより、第2リンクプレート62は、ドア13の内側から見て、反時計回りに回動する。
【0066】
第3軸ピン69による第2係合孔62bの第1孔部62b1と第1係合孔61cとの係合により、第2リンクプレート62の回動に連動して、第1リンクプレート61が回動する。それにより、閉じドアロック部53及び開きドアロック部52の双方においてロック解除動作が行われ、ドア13のロックが解除される。
【0067】
施錠部18において解錠された状態では、第3軸ピン69が第3係合孔63cの内部で遊動し、第1リンクプレート61及び第2リンクプレート62の双方がロック及びロック解除の双方が可能となっている。
【0068】
そして、施錠部18において施錠操作が行われると、第3リンクプレート63が回動し、それに連動して第3軸ピン69が変位し、第2孔部62b2に第3軸ピン69が入り込む。そうすることにより、アウターレバー17でロック解除操作が行われて第2リンクプレート62が回動しても、第3軸ピン69が変位しなくなり、アウターレバー17でロック解除できなくなる。
【0069】
このように、本実施形態のキャブ10によれば、ロック解除機構50の主要部が、重ね合わせた複数のリンクプレート61〜64で構成されていて、これらリンクプレート61〜64が連動して回動することにより、ドア13のロックを解除できる。それにより、簡素かつコンパクトでありながら強度及び剛性も向上できるようになっている。
【0070】
更に、このキャブ10では、開きドアロック部52も、構造が簡素かつコンパクトになるように工夫されている。
【0071】
(開きドアロック部)
図5に示すように、開きドアロック部52は、フック部80や逆フック部81などで構成されていて、ドア13に設置されている。
【0072】
フック部80は、その先端部分に湾曲した係合部80aを有し、その係合部80aの先端は丸くなっている。フック部80は、その基端部分がドア13に軸支されており、ドア13の壁面に直交して延びる軸を中心に回動可能となっている。そして、フック部80は、係合部80aが前方に突き出す位置(ロック位置)に向かって、ドア13の内側から見て時計回りに弾性力で付勢されており、その係合部80aの凹んだ側が付勢方向に向いている。
【0073】
逆フック部81は、フック部80の前側に対向して配置されており、その先端部分に湾曲した逆係合部81aを有している。逆フック部81は、その基端部分に後側連結ロッド75が連結され、その中間部分がドア13に軸支されている。
【0074】
逆フック部81もまた、壁面に直交して延びる軸を中心に回動可能となっており、その逆係合部81aの凹んだ側が係合部80aの凹んだ側と噛み合うように設置されている。逆係合部81aの先端には、ドア13の壁面に直交して延びる円柱状の接触端部81bが取り付けられている。
【0075】
図7の(a)に示すように、ドア13が閉じられた状態では、フック部80は、ロック位置にあり、ドア13が開かれて開き位置に至る直前に、係合部80aに逆係合部81aが接触する。詳しくは、係合部80aの下側部分が接触端部81bの上側部分と接触する。
【0076】
更にドア13が開かれることで、係合部80aが逆フック部81に乗り上がってフック部80と逆フック部81とが連結される。その結果、図7の(b)に示す状態となり、ドア13が開き位置でロックされた状態となる。
【0077】
そして、開き位置において、インナーレバー40やアウターレバー17が操作されると、第1リンクプレート61が回動して後側連結ロッド75が引っ張られることにより、図7の(c)に示すように、逆フック部81がドア13の内側から見て時計回りに回動し、弾性力に抗してフック部80が反時計回りに押し戻される。その結果、ドア13のロックが解除されて、ドア13の閉じ操作が可能になる。
【0078】
このように、開きドアロック部52をフック部80や逆フック部81などで構成したことで、構造が簡素かつコンパクトになり、その結果、部品点数やコストの削減、組み立て作業の向上などが可能になっている。
【0079】
(その他)
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、説明では油圧ショベルを用いたが、それに限らず、適用される作業機械はクレーン等であってもよい。要は、スライド式やリンク式等、開閉時に側面に沿って横移動するドアを備えたキャブであればよい。
【0080】
インナーレバーは、その先端部を略上方に向けて配置してあってもよい。なお、インナーレバーが座席よりも下方に位置する場合には、その先端部を下方又は下斜め前方に向けて配置するのが好ましい。各リンクプレートを重ねる順番は、仕様に応じて適宜変更できる。
【符号の説明】
【0081】
10 キャブ
11 運転スペース
12 キャブ本体
12a 側面
13 ドア
15 開口
30 ロック解除装置
40 インナーレバー
50 ロック解除機構
52 開きドアロック部
53 閉じドアロック部
61 第1リンクプレート
62 第2リンクプレート
63 第3リンクプレート
64 支持プレート
RJ レバー軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7