(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
像担持体上に静電的に形成されたトナー像を、循環移動する中間転写ベルトに一次転写する一次転写手段と、中間転写ベルト上に形成される中間トナー像を画像支持体に二次転写する二次転写手段とを具える電子写真方式の画像形成装置において、
中間転写ベルトが請求項1〜請求項3のいずれかに記載の転写部材からなることを特徴とする画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
〔転写部材〕
本発明の転写部材は、電子写真方式の画像形成装置を構成する無端ベルト状のものであって、弾性体層上に表面層が形成されてなるものであり、転写部材が、当該転写部材表面に、バーコビッチ圧子で100μNの荷重を加えたときの押し込み深さ、および、当該転写部材表面におけるマイクロゴム硬度計による硬度が特定の範囲にあるものである。
【0014】
転写部材における押し込み深さは、400nm以上1500nm以下とされ、好ましくは400nm以上1000nm以下とされる。
転写部材における押し込み深さが上記範囲内にあることにより、転写部材表面(表面層)が適度な伸長性を有するものとなり、表面層が弾性体層の変形に対して追随するので、亀裂(ひび割れ、クラック)を抑制することができる。
本発明における押し込み深さは、転写部材表面における微小硬さ、すなわち表面層の微小変形歪み量を表す。
【0015】
本発明において、転写部材における押し込み深さは、以下のようにして測定される値である。
温度23℃、湿度50%RHの環境下でナノインデンテーション法によって行う。具体的には、下記条件で「Triboscope(トライボスコープ)」(Hysitron(ハイジトロン)社製)を用い、転写部材表面にバーコビッチ圧子で100μNの荷重を加えたときの押し込み深さを測定する。
−条件−
圧子:Berkovich(バーコビッチ圧子)
負荷:最大荷重400μN
負荷時間:5秒
除荷時間:5秒
【0016】
転写部材における硬度は、40°以上85°以下とされ、好ましくは60°以上80°以下とされる。
転写部材における硬度が上記範囲内にあることにより、転写部材自体が適度な変形性を有するものとなり、凹凸紙などに対しても優れた転写性が得られる。
本発明における硬度は、転写部材全体の硬度を表し、具体的には弾性体層の硬度に依存する。
【0017】
本発明において、転写部材における硬度は、以下のようにして測定される値である。
温度23℃、湿度50%RHの環境下で、マイクロゴム硬度計「MD−1 capa」(高分子計器(株)社製)を用いて行う。具体的には、転写部材の表面側から、タイプAの押針(円柱形(直径0.16mm、高さ0.5mm)を押し付けて行う。測定値は0ポイント〜100ポイントまで、0.1刻みで得られる。
【0018】
以上のように、本発明の転写部材においては、押し込み深さおよび硬度が上記範囲内にあることにより、紙などの画像支持体によって押圧された場合に、表面層が弾性体層の変形に追随するので、亀裂(ひび割れ、クラック)を抑制することができ、また、転写部材自体の変形の自由度が高く、凹凸紙などに対しても優れた転写性が得られる。具体的に説明すると、硬度が上記範囲を満たしていても押し込み深さが上記範囲を満たさない場合においては、例えば
図1(a)に示すように、画像支持体Pによる押圧に対し、転写部材1の表面層4は、急な勾配で変形する。一方、本発明の転写部材のように、押し込み深さが上記範囲を満たす場合においては、例えば
図1(b)に示すように、画像支持体Pによる押圧に対し、転写部材1の表面層4は、緩やかな勾配で変形する。すなわち、
図1(a)に示す転写部材は、硬度が本発明に規定する範囲を満たしているので、画像支持体Pによって押圧されたときの上下方向の変形量は
図1(b)に示す転写部材と変わらないが、微小変形歪み量である押し込み深さが本発明に規定する範囲を満たしていないので、表面層の変形が過大となる。従って、表面層4が弾性体層3の変形に追随するので、亀裂を抑制することができ、さらに、転写部材自体の変形の自由度は高いので、優れた転写性が得られる。
【0019】
本発明の転写部材1は、具体的には、
図2に示すように、基体2上に弾性体層3が形成され、この弾性体層3上に表面層4が形成されてなるものである。
【0020】
〔基体2〕
本発明の転写部材1を構成する基体2は、無端ベルト状のものであり、単層構成であっても、2層以上の複数層構成であってもよい。
基体2の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などよりなるものを用いることでき、ポリイミド樹脂よりなるものを用いることが好ましい。また、基体2は、上記のような樹脂に導電剤を分散させ、導電性を有するものであることが好ましい。
【0021】
基体2の肉厚は、機械的強度、画質、製造コストなどを考慮し、50〜250μmであることが好ましい。
【0022】
〔弾性体層3〕
本発明の転写部材1を構成する弾性体層3は、弾性体よりなり、その構成材料としては、例えば、ゴム、エラストマー、樹脂などが挙げられる。特に、耐久性の観点から、クロロプレンゴムを含むことが好ましい。
【0023】
弾性体層3の層厚は、機械的強度、画質、製造コストなどを考慮し、200〜500μmであることが好ましい。
【0024】
〔表面層4〕
本発明の転写部材1を構成する表面層4は、硬化(メタ)アクリル樹脂と、表面処理が施された金属酸化物微粒子とが含有されることが好ましい。
硬化(メタ)アクリル樹脂は、多官能(メタ)アクリレート、ポリウレタンアクリレートおよび低表面エネルギー基を有する重合性成分の少なくとも3種を含有する硬化型組成物を硬化することによって得られるものであることが好ましい。
【0025】
〔多官能(メタ)アクリレート〕
硬化型組成物を構成する多官能(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するもので、転写部材1の表面層4の耐摩耗性、強靱性、密着性を発現させるために用いられる。具体的には、ビス(2−アクリロキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ウレタンアクリレートなどの2官能性単量体;トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ウレタンアクリレート、多価アルコールと多塩基酸および(メタ)アクリル酸とから合成されるエステル化合物、例えばトリメチロールエタン/コハク酸/アクリル酸=2/1/4モルから合成されるエステル化合物などの3官能以上の多官能単量体などが挙げられる。塗膜にハードコート性を持たせるためには、3官能以上の多官能アクリレートを使用することが望ましい。
【0026】
多官能(メタ)アクリレートは、数平均分子量が3,000以下であることが好ましく、より好ましくは200以上1,000以下である。
多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量が上記範囲であることにより、硬化(メタ)アクリル樹脂の密度を向上させることができ、高い強度が得られる。
【0027】
本発明において、多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量は、測定試料を多官能(メタ)アクリレートとし、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)法により測定される値である。
【0028】
多官能(メタ)アクリレートは、硬化型組成物中20〜60質量%の割合で含有されることが好ましい。
【0029】
〔ポリウレタンアクリレート〕
硬化型組成物を構成するポリウレタンアクリレートは、ウレタン結合を有し、かつ、1分子中に1個以上のアクリロイルオキシ基を有する重合体である。
ポリウレタンアクリレートとしては、例えば、主鎖にウレタン結合を有し、1個以上のアクリロイルオキシ基が主鎖の末端または側鎖に結合しているものが挙げられる。
本発明において、ポリウレタンアクリレートは、表面層4の弾性体層3に対する追随性を付与する機能を有する。
【0030】
ポリウレタンアクリレートの数平均分子量は、3,000以上30,000以下であることが好ましく、特に好ましくは10,000以上20,000以下である。
ポリウレタンアクリレートの数平均分子量が上記範囲内にあることにより、硬化(メタ)アクリル樹脂に柔軟性と伸張性を与えることができ、また、強度低下を抑えることができる。
【0031】
本発明において、ポリウレタンアクリレートの数平均分子量は、上述した多官能(メタ)アクリレートの分子量の測定方法において、測定試料をポリウレタンアクリレートに変更することの他は同様にして測定される。
【0032】
ポリウレタンアクリレートは、硬化型組成物中30〜70質量%の割合で含有されることが好ましい。
【0033】
〔低表面エネルギー基を有する重合性成分〕
硬化型組成物を構成する低表面エネルギー基を有する重合性成分において、低表面エネルギー基とは、表面層の表面自由エネルギーを低減する機能を有する官能基をいい、具体的には、シリコーン変性またはフッ素変性されたアクリレート基のことをいう。このようなシリコーン変性部位としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられ、フッ素変性部位としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
【0034】
低表面エネルギー基を有する重合性成分としては、具体的には、1つ以上のポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖、および、3つ以上のラジカル重合性二重結合を有する数平均分子量5,000以上100,000以下のビニル共重合体(以下、「特定のビニル共重合体」ともいう。)が挙げられる。
【0035】
特定のビニル共重合体は、例えば、ラジカル重合性二重結合とポリオルガノシロキサン基またはポリフルオロアルキル基とを有する単量体(a)と、ラジカル重合性二重結合および反応性官能基を有する、単量体(a)以外の単量体(b)と、さらに必要に応じて単量体(a)および単量体(b)以外のラジカル重合性二重結合を有する単量体(c)をラジカル重合してなるビニル重合体(A)に、前記反応性官能基と反応可能な官能基およびラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)を反応させることにより得られる。
【0036】
特定のビニル共重合体は、単量体(a)と、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有する単量体(c′)と、必要に応じて単量体(c)とを重合させて得ることもできる。単量体(c′)が少量の場合、ゲル化することなく所期のビニル共重合体を得ることができる。また、単量体(c′)の一部または全部を、ラジカル重合性二重結合の一部をブロック基として付加させて保護することにより、よりゲル化し難くすることもできる。
【0037】
特定のビニル共重合体の数平均分子量が5,000未満である場合においては、結晶化しやすい構成となり、生産性が著しく低下するため好ましくない。ビニル共重合体の数平均分子量が、100,000を超える場合においては、表面層とした場合の表面硬度が低下し、転写部材としての機能が低下するため好ましくない。
【0038】
本発明において、特定のビニル共重合体の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)島津製作所(株)製で測定される値である。
【0039】
単量体(a)は、表面層の表面自由エネルギーを低くするためのものである。
ラジカル重合性二重結合とポリオルガノシロキサン基とを有する単量体(a)としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
〔一般式(1)中、R
1 はCH
2 =CHCH
2 −COO−(CH
2 )m−、CH
2 =C(CH
3 )−COO−(CH
2 )m−、CH
2 =CH−(CH
2 )m−、または、CH
2 =C(CH
3 )−(CH
2 )m−、(mは0から10の整数)を示し、R
2 は水素原子、メチル基、またはR
1と同じ官能基を示し、R
3 、R
4 、R
5 、R
6 、R
7 およびR
8 は、アルキル基またはフェニル基を示し、nは正の整数を示す。〕
なお、R
1 〜R
8 で示された水素原子は、本発明の効果を逸しない範囲で、水素原子以外の公知の置換基に置換されていてもよい。
【0042】
ラジカル重合性二重結合とポリオルガノシロキサン基とを有する単量体(a)としては、具体的には、例えば、東芝シリコーン(株)製のTSL9705などの片末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサン化合物、チッソ(株)製のサイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725などの片末端(メタ)アクリロキシ基含有ポリオルガノシロキサン化合物などが挙げられる。
【0043】
ラジカル重合性二重結合とポリフルオロアルキル基とを有する単量体(a)としては、例えば、パーフルオロアルキルエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0044】
これら単量体(a)は、要求性能に応じて1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
ビニル重合体(A)における単量体(a)の共重合比率は、中間転写ベルトの表面層の表面の表面自由エネルギー、硬化型組成物に含まれる他の成分との相溶性、弾性体層3との密着性、強靭性などの塗膜性能、および重合体の溶媒への溶解性などを考慮し、重合体を構成する単量体の総質量を基準として1〜80質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜45質量%である。
【0046】
ラジカル重合性二重結合および反応性官能基を有する、単量体(a)以外の単量体(b)は、一段目に重合したビニル重合体(A)にラジカル重合性二重結合を導入する起点となり、導入されたラジカル重合性二重結合が活性エネルギー線で架橋させてセットすることにより、ビニル重合体のブリードを抑制し、強靭な隔壁を形成させるためのものである。
【0047】
反応性官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基などが挙げられる。
【0048】
ヒドロキシ基を有する単量体(b)としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレンなどが挙げられる。
【0049】
カルボキシル基を有する単量体(b)としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。
【0050】
イソシアネート基を有する単量体(b)としては、具体的には、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネートとを反応させて得られるものが挙げられる。
【0051】
エポキシ基を有する単量体(b)としては、具体的には、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1,3−ブタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。単量体(b)は、要求性能に応じて1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
ビニル重合体(A)における単量体(b)の共重合比率は、中間転写ベルトの表面層の耐擦傷性、硬度、表面自由エネルギーなどを考慮し、重合体を構成する単量体の総質量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜90質量%、特に好ましくは40〜85質量%である。
【0053】
単量体(a)および単量体(b)以外のラジカル重合性二重結合を有する単量体(c)は、ビニル重合体と硬化型組成物に含まれる他の成分との相溶性の向上、および中間転写ベルトの表面層の硬度、強靭性、耐擦傷性などの物性を付与するために用いられる。
【0054】
単量体(c)としては、(I)アクリル酸誘導体、(II)芳香族ビニル単量体、(III )オレフィン系炭化水素単量体、(IV)ビニルエステル単量体、(V)ビニルハライド単量体、(VI)ビニルエーテル単量体などが挙げられる。
【0055】
(I)(メタ)アクリル酸誘導体としては、具体的には、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
(II)芳香族ビニル単量体としては、具体的には、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレンなどのスチレン類が挙げられる。
【0057】
(III )オレフィン系炭化水素単量体としては、具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1,4−ペンタジエンなどが挙げられる。
【0058】
(IV)ビニルエステル単量体としては、具体的には、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0059】
(V)ビニルハライド単量体としては、具体的には、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0060】
(VI)ビニルエーテル単量体としては、具体的には、ビニルメチルエーテルなどが挙げられる。これらの単量体は、2種以上を混合して用いても良い。
【0061】
ビニル重合体(A)における単量体(c)の共重合比率は、ビニル重合体と硬化型組成物に含まれる他の成分との相溶性の向上を考慮し、重合体を構成する単量体の総質量を基準として0質量%から89質量%であることが好ましい。
【0062】
ビニル重合体(A)は、公知の方法、例えば、溶液重合で合成することができる。重合時の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエチル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。重合時の単量体の仕込み濃度は、0〜80質量%が好ましい。
【0063】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどが用いられ、重合温度は、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜140℃である。
【0064】
得られるビニル重合体(A)の好ましい数平均分子量は、5,000〜100,000である。
【0065】
このようにして得られた反応性官能基およびポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖を有するビニル重合体(A)に、反応性官能基と反応可能な官能基およびラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)を反応させることにより、ラジカル重合性二重結合およびポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖を有するビニル共重合体が得られる。
【0066】
ビニル重合体(A)と化合物(B)とは、ビニル重合体(A)が有する反応性官能基の数に対し、該反応性官能基と反応可能な官能基の数が100%となる割合で反応させることが好ましい。光反応性を損なわない範囲であれば100%未満となる割合で反応させても良い。
【0067】
反応性官能基と、該反応性官能基と反応可能な官能基との組み合わせとしては、以下に示すような公知の種々の組み合わせと反応方法を採用することができる。
【0068】
1)反応性官能基がヒドロキシ基である場合、代表的な反応可能な官能基は、酸ハロゲン基、イソシアネート基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸クロライドまたはメタクリロキシエチルイソシアネートとの反応により、ラジカル重合性二重結合を導入することができる。(メタ)アクリル酸クロライドとの反応は、ポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖およびヒドロキシル基を有するポリマーの溶液に触媒を添加し、(メタ)アクリル酸クロライドを加え加熱することにより進められる。溶媒としては、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキソランなどのエーテル溶液を用いることができる。触媒としてはトリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどが好ましく、触媒量は固形分に対し0.1質量%から1質量%である。反応はゲル化抑制のため空気下で行い、反応温度は80℃から120℃で反応時間は1時間から24時間である。
【0069】
メタクリロキシエチルイソシアネートとの反応は、ポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖およびヒドロキシル基を有するポリマーの溶液に触媒としてオクチル酸スズ、ジブチルジラウリン酸錫、オクチル酸亜鉛などの金属化合物、あるいはトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどの3級アミンを0.05PHRから1PHR(Per Hundred Resin)触媒として添加し、加熱下メタクリロキシエチルメタクリレートを加えることにより進められる。溶媒としては、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキソランなどのエーテル溶液を用いることができる。
【0070】
2)反応性官能基がエポキシ基である場合、代表的な反応可能な官能基は、カルボキシル基が挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸との反応により、ラジカル重合性二重結合を導入できる。(メタ)アクリル酸との反応は、ポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖およびエポキシ基を有するポリマーの溶液に触媒を添加し、(メタ)アクリル酸を添加して加熱することにより進められる。反応条件としては、上記、1)反応性官能基がヒドロキシ基である場合と同様の条件が勧められるが、触媒としては、3級アミンが最も好ましい。カルボキシル基とラジカル重合性二重結合を持つ化合物としては、(メタ)アクリル酸の他に、ペンタエリスリトールトリアクリレート無水コハク酸付加物、(メタ)アクリロキシエチルフタレートが挙げられる。
【0071】
3)反応性官能基がイソシアネート基である場合、代表的な反応可能な官能基は水酸基が挙げられ、具体的にはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物などが挙げられ、反応条件としては、上記、1)反応性官能基がヒドロキシ基である場合と同様の条件が好ましい。
【0072】
硬化型組成物の不揮発分質量全体を基準として、ポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖を有する単量体(a)の含有量は、0.01〜10質量%とすることができる。1つのポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖、および3つ以上のラジカル重合性二重結合を持つ数平均分子量5,000から100,000のビニル共重合体は、硬化型組成物が弾性体層3に塗布された時に表面に濃縮される性質があるため、単量体(a)の量が少なくても十分に低い表面自由エネルギーを発現することができる。
【0073】
以上のような低表面エネルギー基を有する重合性成分としての、1つ以上のポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖、および、3つ以上のラジカル重合性二重結合を有する数平均分子量5,000以上100,000以下のビニル共重合体としては、市販品の「メガファック」(DIC社製)、「フルシェード」(東洋インキ社製)を用いることができる。
【0074】
低表面エネルギー基を有する重合性成分は、硬化型組成物中5〜40質量%の割合で含有されることが好ましい。
【0075】
以上のような硬化型組成物を硬化してられる硬化(メタ)アクリル樹脂において、多官能(メタ)アクリレートに由来の構造単位の含有割合は20〜60質量%であることが好ましく、ポリウレタンアクリレートに由来の構造単位の含有割合は30〜70質量%であることが好ましく、低表面エネルギー基を有する重合性成分に由来の構造単位の含有割合は5〜40質量%であることが好ましい。
【0076】
〔金属酸化物微粒子〕
本発明の転写部材1を構成する表面層4には、表面処理が施された金属酸化物微粒子が含有されていることが好ましい。表面層4に金属酸化物微粒子が含有されていることにより、表面層4に強靱性が得られ、高い耐久性が得られる。
金属酸化物微粒子は、未処理の金属酸化物微粒子(以下、「未処理金属酸化物微粒子」という。)を、表面処理剤によって表面処理することにより得ることができる。
【0077】
本発明に用いられる未処理金属酸化物微粒子は、遷移金属も含めた金属の酸化物であればよく、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどが例示されるが、中でも、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫などが好ましく、特にアルミナ、酸化錫が好ましい。
【0078】
これらの未処理金属酸化物微粒子は、気相法、塩素法、硫酸法、プラズマ法、電解法などの一般的な製造法で作製されたものが用いられる。
【0079】
未処理金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、1nm以上300nm以下の範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nmである。粒径が小さい場合は耐摩耗性が十分でなく、また、粒径が大きい場合には書き込み光を散乱させたり、粒子が光硬化を阻害し耐摩耗性が十分でなくなる可能性がある。
【0080】
未処理金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)ソフトウェアバージョン Ver.1.32を使用して数平均一次粒径を算出した値とする。
【0081】
未処理金属酸化物微粒子の表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、ラジカル重合性官能基を有する化合物などが挙げられる。このラジカル重合性官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基などが挙げられる。
また、低表面エネルギー性を付与するため、シリコーンオイルやポリフルオロアルキル基を有する化合物などを表面処理剤として用いることもできる。シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル(例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン(MHPS)など)、変性シリコーンオイル(例えば片末端カルビノール変性シリコーンオイルや片末端ジオール変性シリコーンオイルなど)などを用いることができる。
本発明においては、金属酸化物微粒子は、その表面が少なくともラジカル重合性官能基および低表面エネルギー官能基のいずれかが導入されたものであることが好ましい。ここで、低表面エネルギー官能基とは、低表面エネルギー性を付与するために用いる表面処理剤によって導入された官能基であって、例えば、シランカップリングされた、シリコーンオイル基やポリフルオロアルキル基などである。両者を導入する場合においては、ラジカル重合性官能基と低表面エネルギー官能基との比率は2:1〜1:2であることが好ましい。
【0082】
未処理金属酸化物微粒子の表面処理に用いるラジカル重合性官能基を有する表面処理剤としては、炭素・炭素二重結合を有する官能基と、未処理金属酸化物微粒子表面の水酸基とカップリングするアルコキシ基などの極性基を同一分子中に有する化合物が好ましい。
【0083】
ラジカル重合性官能基を有する表面処理剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線照射により重合(硬化)して、ポリスチレン、ポリアクリレートなどの樹脂となる官能基を有する化合物が好適であり、中でも、少ない光量または短い時間での硬化が可能であることから反応性アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するシラン化合物が特に好ましい。
【0084】
ラジカル重合性官能基を有する表面処理剤としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
〔一般式(2)中、R
9 は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアラルキル基、R
10は反応性二重結合を有する有機基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基を示し、mは1から3の整数である。〕
上記一般式(2)で表わされる化合物として、下記S−1〜S−30が挙げられる。
【0087】
S−1 CH
2 =CHSi(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−2 CH
2 =CHSi(OCH
3 )
3
S−3 CH
2 =CHSiCl
3
S−4 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−5 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(OCH
3 )
3
S−6 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(OC
2 H
5 )(OCH
3 )
2
S−7 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
3 Si(OCH
3 )
3
S−8 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )Cl
2
S−9 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 SiCl
3
S−10 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
3 Si(CH
3 )Cl
2
S−11 CH
2 =CHCOO(CH
2 )
3 SiCl
3
S−12 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−13 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 Si(OCH
3 )
3
S−14 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−15 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(OCH
3 )
3
S−16 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )Cl
2
S−17 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 SiCl
3
S−18 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(CH
3 )Cl
2
S−19 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 SiCl
3
S−20 CH
2 =CHSi(C
2 H
5 )(OCH
3 )
2
S−21 CH
2 =C(CH
3 )Si(OCH
3 )
3
S−22 CH
2 =C(CH
3 )Si(OC
2 H
5 )
3
S−23 CH
2 =CHSi(OCH
3 )
3
S−24 CH
2 =C(CH
3 )Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−25 CH
2 =CHSi(CH
3 )Cl
2
S−26 CH
2 =CHCOOSi(OCH
3 )
3
S−27 CH
2 =CHCOOSi(OC
2 H
5 )
3
S−28 CH
2 =C(CH
3 )COOSi(OCH
3 )
3
S−29 CH
2 =C(CH
3 )COOSi(OC
2 H
5 )
3
S−30 CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(OC
2 H
5 )
3
また、上記一般式(2)で表わされる化合物以外でも、ラジカル重合性官能基を有する化合物として、下記S−31〜S−33を用いてもよい。
【0089】
上記化合物は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0090】
また、表面処理剤として、下記S−35〜S−37で示されるエポキシ系化合物を使用することもできる。
【0092】
表面処理方法としては、例えば、未処理金属酸化物微粒子100質量部に対し、表面処理剤0.1〜200質量部、溶媒50〜5000質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用した方法が挙げられる。
【0093】
また、未処理金属酸化物微粒子および表面処理剤を含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式分散することにより、未処理金属酸化物微粒子の凝集体を解砕すると同時に未処理金属酸化物微粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化するので、均一でより微細な表面処理剤により表面処理された金属酸化物微粒子を得ることもできる。
【0094】
表面処理剤の表面処理量(表面処理剤の被覆量)は、金属酸化物微粒子に対し0.1質量%以上60質量%以下であることが好ましい。特に好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0095】
この表面処理剤の表面処理量は、表面処理後の金属酸化物微粒子を550℃で3時間熱処理し、その強熱残分を蛍光X線にて定量分析し、Si量から分子量換算で求めたものである。
【0096】
湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクを高速回転させることにより、金属酸化物微粒子の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、未処理金属酸化物微粒子に表面処理を行う際に未処理金属酸化物微粒子を十分に分散させ、且つ表面処理できる形式であれば問題なく、例えば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。具体的にはサンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミルなどが使用できる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズなどの粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、専断、ズリ応力などにより微粉砕、分散が行われる。分散型装置で用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1mmから2mm程度のものを使用するが、本発明では0.3mmから1.0mm程度のものを用いるのが好ましい。
【0097】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁が好ましい。
【0098】
以上の様な湿式処理により、表面処理剤により表面処理された金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0099】
以上のような金属酸化物微粒子は、硬化型組成物に対して4〜40体積%の割合で含有されることが好ましい。
【0100】
〔その他添加剤〕
表面層中には必要に応じて、有機溶剤、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤、表面改質剤などの添加成分を含ませることができる。
【0101】
有機溶剤は硬化型組成物の均一溶解性、分散安定性、さらには無端ベルト状基体との密着性および被膜の平滑性、均一性などの面から、硬化型組成物中に配合して用いられ、有機溶剤として特に限定されるものではなく、上記性能を満足するものであればよい。具体的には、アルコール系、炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、多価アルコール誘導体などの有機溶剤を挙げることができる。
【0102】
表面層4の層厚は、機械的強度、画質、製造コストなどを考慮し、1〜5μmであることが好ましい。
【0103】
〔転写部材の製造方法〕
本発明の転写部材の製造方法は、例えば、基体上に弾性体層を形成するための弾性体層形成用塗布液を塗布して、塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることにより、弾性体層を形成し、当該弾性体層上に表面層を形成するための表面層形成用塗布液を塗布して、塗膜を形成し、この塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化することにより、表面層を形成することが行われる。
【0104】
基体の作製方法としては、構成材料としてポリイミド樹脂を用いる場合においては、例えば、ポリアミド酸溶液を円筒状金型の外周面に浸漬する方式や、内周面に塗布する方式やさらに遠心する方式、または注形型に充填する方式などの適宜な方式でリング状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベル卜形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する方法などの従来に準じた適宜な方法により行うことができる(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報など)。無端ベルト状の基体の製造に際しては、型の離型処理や脱泡処理などの適宜な処理を施すことができる。
【0105】
弾性体層形成用塗布液の調製方法としては、例えば、弾性体層を形成する構成材料を溶剤に固形分濃度20〜30質量%の割合で添加する方法が挙げられる。
弾性体層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、ノズルによるスパイラル塗布などが挙げられる。
【0106】
表面層形成用塗布液は、多官能(メタ)アクリレート、ポリウレタンアクリレートおよび低表面エネルギー基を有する重合成分の少なくとも3種を含有する硬化型組成物と、表面処理が施された金属酸化物微粒子と、重合開始剤と、必要に応じて溶剤などのその他の成分とを含むものである。
【0107】
表面層形成用塗布液の調製方法としては、例えば、硬化型組成物および表面処理が施された金属酸化物微粒子を溶剤に固形分濃度3〜10質量%の割合で添加し、例えば湿式メディア分散型装置により分散する方法が挙げられる。湿式メディア分散型装置としては、例えば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。具体的にはサンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミルなどが使用できる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズなどの粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、専断、ズリ応力などにより微粉砕、分散が行われる。
【0108】
分散型装置で用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1mmから2mm程度のものを使用するが、本発明では0.3mmから1.0mm程度のものを用いるのが好ましい。
【0109】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁が好ましい。
【0110】
分散の終点は、分散液を、PETフィルム上にワイヤーバーで塗布した液を自然乾燥後、405nmの光透過率の1時間前との変化率が3%以下となる分散状態が好ましい。さらに望ましくは、1%以下が好ましい。
以上の様な分散処理により、表面層形成用塗布液を得ることができる。
【0111】
表面層形成用塗布液に含有される重合開始剤は、光などの活性エネルギー線によって硬化型組成物を重合させることができるものであれば特に限定されずに用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物などの光重合開始剤を用いることができる。
具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
これらのうち、光安定性、光開裂の高効率性、表面硬化性、硬化(メタ)アクリル樹脂との相溶性、低揮発性および低臭気性が得られるという観点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルー1−プロパン−1−オン、等を用いることが好ましい。を用いることが好ましい。
【0113】
表面層形成用塗布液における重合開始剤の含有割合は、1〜10質量%であることが好ましく、硬化性に優れ、表面層に十分な硬度が得られながら弾性体層への高い密着性が得られるという理由から、2〜8質量%であることがより好ましく、3〜6質量%であることがさらに好ましい。
【0114】
表面層形成用塗布液は、塗布性(作業性)が良好となるという理由から、溶剤を含有することが好ましい。
溶剤としては、具体的には、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0115】
表面層形成用塗布液には、必要に応じて光増感剤など他の成分を添加することもできる。
【0116】
表面層形成用塗布液の粘度は、10〜100cPであることが好ましい。
表面層形成用塗布液の固形分濃度は、3〜10質量%であることが好ましい。なお、表面層形成用塗布液において、固形分は、金属酸化物微粒子、並びに、多官能(メタ)アクリレート、ポリウレタンアクリレートおよび低表面エネルギー基を有する重合性成分とされる。
【0117】
表面層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬塗布法やスプレー塗布法などが挙げられる。
【0118】
表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布する装置として、例えば
図3に示す塗布装置が挙げられる。
この浸漬塗布装置9b1は、塗布部9b2と、被処理体の供給部9b3とを有している。塗布部9b2は、塗布槽9b2aと、塗布槽9b2aの開口部9b2a1から溢れる表面層形成用塗布液を受けるため塗布槽9b2aの上部に配設されたオーバーフロー液の受け槽9b4と、塗布液供給タンク9b5と、送液ポンプ9b6とを有している。
Sは表面層形成用塗布液を示す。また、9c1は表面層形成用塗布液調製容器、9c2は撹拌機、9c3は送液管を示す。
【0119】
塗布槽9b2aは、底部9b2a2と、底部9b2a2の周面から立ち上げられ側壁9b2a3を有し、上部が開口部9b2a1となっている。塗布槽9b2aは円筒の形状をしている。開口部9b2a1の径と底部9b2a2の径とは同じである。9b2a4は、塗布槽9b2aの底部9b2a2に設けられた塗布液供給口を示す。表面層形成用塗布液Sは、送液ポンプ9b6から塗布液供給口9b2a4を介して塗布槽9b2aに送られる。
【0120】
9b41は、オーバーフロー液の受け槽9b4の蓋を示す、蓋9b41は、中央に孔9b42を有している。9b43は、オーバーフロー液の受け槽9b4の表面層形成用塗布液Sを塗布液供給タンク9b5に戻す塗布液戻し口を示す。9b8は、塗布液供給タンク9b5に設けられた撹拌用の羽根を示す。
【0121】
供給部9b3は、ボールネジ9b3aと、ボールネジ9b3aを回転させる駆動部9b3bと、ボールネジ9b3aの回転速度を制御する制御部9b3cと、ボールネジ9b3aに螺合されている昇降部材9b3dと、ボールネジ9b3aの回転に伴い昇降部材9b3dを上下方向(図中の矢印方向)に移動させるガイド部材9b3eとを有している。9b3fは、昇降部材9b3dに取り付けられた被処理体70aの保持部材を示す。保持部材9b3fは、保持された被処理体70aが塗布槽9b2aのほぼ中央に位置する様に、昇降部材9b3dに取り付けられている。
【0122】
被処理体70aは、昇降部材9b3dに取り付けられた保持部材9b3fに保持される。中間ベルトのボールネジ9b3aの回転に伴い、昇降部材9b3dが上下方向に移動する。これにより、保持部材9b3fに保持された被処理体70aは、塗布槽9b2aの中の表面層形成用塗布液Sに浸漬され、その後引き上げられる。こうして、被処理体70aの表面に表面層形成用塗布液Sが塗布され、塗布膜が形成される。
【0123】
被処理体70aを引き上げる速度は、使用する表面層形成用塗布液Sの粘度により適宜変更する必要がある。例えば表面層形成用塗布液Sの粘度が10〜200mPa・sの場合は、塗布均一性、塗布膜厚、乾燥等を考慮し、被処理体70aを引き上げる速度は、0.5〜15mm/secが好ましい。
【0124】
硬化型組成物の硬化方法としては、活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、γ線などで、硬化型組成物を活性化させるエネルギー源であれば制限なく使用できるが、紫外線、電子線が好ましい。特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどを用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光なども用いることができる。スポット状の活性エネルギー線を照射するには紫外線レーザーを使用することが好ましい。
【0125】
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される50keVから1000keV、好ましくは100keVから300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0126】
照射条件はそれぞれの光源によって異なるが、照射光量は、硬化ムラ、硬度、硬化時間、硬化速度などを考慮し、5J/cm
2 以上が好ましく、さらに好ましくは、7〜20J/cm
2 であり、特に好ましくは、10〜12J/cm
2 である。
照射光量は、UIT250(ウシオ電機(株)製)で測定した値を示す。
【0127】
活性エネルギー線の照射時間は10秒間から8分間が好ましく、硬化効率、作業効率などからさらに好ましくは、30秒間から5分間である。
【0128】
活性エネルギー線照射時の雰囲気は、空気雰囲気で問題なく硬化可能であるが、硬化ムラ、硬化時間などを考慮すると雰囲気中の酸素濃度は、5%以下、特に1%以下であることが好ましい。該雰囲気にするには窒素ガスなどを導入することが有効である。
酸素濃度は、雰囲気ガス管理用酸素濃度計「OX100」(横河電機(株)製)で測定した値を示す。
【0129】
表面層形成用塗布液を弾性体層上に塗布した後、乾燥させることが好ましい。これにより溶剤が除去される。
塗膜の乾燥は、重合性成分の重合の前後、およびその重合中のいずれにおいて行われてもよく、これらを組み合わせて適宜選択することができるが、具体的には、塗膜の流動性がなくなる程度まで一次乾燥した後、重合性成分の重合を行い、その後、さらに表面層中の揮発性物質の量を規定量にするために二次乾燥を行うことが好ましい。
塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類、形成すべき表面層の層厚などよって適宜選択することができるが、乾燥温度は、例えば60〜120℃であることが好ましく、より好ましくは80〜100℃である。乾燥時間は、例えば1〜10分間であることが好ましく、より好ましくは5分間程度である。
【0130】
〔画像形成装置〕
以上のような転写部材は、モノクロの画像形成装置やフルカラーの画像形成装置など電子写真方式の公知の種々の画像形成装置における、中間転写ベルトとして好適に用いることができる。
【0131】
図4は、本発明の転写部材を備えた画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【0132】
この画像形成装置は、複数組の画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Bkと、これらの画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Bkにおいて形成されたトナー像を画像支持体P上に転写する中間転写部10と、画像支持体Pに対して加熱しながら加圧してトナー像を定着させてトナー層を得る定着処理を行う定着装置30とを有する。
【0133】
画像形成ユニット20Yにおいてはイエローのトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Mにおいてはマゼンタ色のトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Cにおいてはシアン色のトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Bkにおいては黒色のトナー像形成が行われる。
【0134】
画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Bkは、静電潜像担持体である感光体11Y,11M,11C,11Bkと、当該感光体11Y,11M,11C,11Bkの表面に一様な電位を与える帯電手段23Y,23M,23C,23Bkと、一様に帯電された感光体11Y,11M,11C,11Bk上に所望の形状の静電潜像を形成する露光手段22Y,22M,22C,22Bkと、有彩色トナーを感光体11Y,11M,11C,11Bk上に搬送して静電潜像を顕像化する現像手段21Y,21M,21C,21Bkと、一次転写後に感光体11Y,11M,11C,11Bk上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段25Y,25M,25C,25Bkとを備えるものである。
【0135】
中間転写部10は、循環移動する中間転写ベルト16と、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Bkによって形成されたトナー像を中間転写ベルト16に転写する、一次転写手段としての一次転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkと、一次転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkによって中間転写ベルト16上に転写された有彩色トナー像を画像支持体P上に転写する、二次転写手段としての二次転写ローラ13Aと、中間転写ベルト16上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段12とを有する。
【0136】
中間転写ベルト16として本発明の転写部材が用いられている。
この中間転写ベルト16は、複数の支持ローラ16a〜16dにより張架され、回動可能に支持された無端ベルト状のものである。
そして、中間転写ベルト16は、基体上の弾性体層の外周面に、硬化(メタ)アクリル樹脂および金属酸化物微粒子を含有する特定の表面層が形成されてなる構造を有するものである。
【0137】
画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Bkにより形成された各色のトナー像は、一次転写ローラ13Y,13M,13C,13Bkにより、回動する無端の中間転写ベルト16上に逐次転写されて、重畳されたカラー像が形成される。給紙カセット41内に収容された画像支持体Pは、給紙搬送手段42により給紙され、複数の中間ローラ44a〜44d、レジストローラ46を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ13Aに搬送され、画像支持体P上にカラー像が一括転写される。
カラー像が転写された画像支持体Pは、熱ローラ定着器が装着された定着装置30により定着処理され、排紙ローラに挟持されて機外の排紙トレイ上に載置される。
一方、二次転写ローラ13Aにより画像支持体Pにカラー像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト16は、クリーニング手段12により残留トナーが除去される。
【0138】
以上のような画像形成装置によれば、中間転写ベルトが本発明の転写部材からなることにより、当該中間転写ベルトが、優れた転写機能を有しながらも、高い耐久性を有するので、長期間にわたって画像品質の高い画像を形成することができる。
【0139】
〔現像剤〕
本発明の画像形成装置において用いられる現像剤は、磁性または非磁性のトナーによる一成分現像剤であってもよく、トナーとキャリアとが混合された二成分現像剤であってもよい。
現像剤を構成するトナーとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができるが、例えば体積基準のメジアン径が3〜9μmであり、重合法によって得られたいわゆる重合トナーを用いることが好ましい。重合トナーを用いることにより、形成される画像において高い解像力および安定した画像濃度が得られると共に画像カブリの発生が極めて抑制される。
【0140】
二成分現像剤を構成する場合のキャリアとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができるが、例えば体積基準のメジアン径が30〜65μmであり、磁化量が20〜70emu/gの磁性粒子からなるフェライトキャリアが好ましい。体積基準のメジアン径が30μm未満のキャリアを用いた場合は、キャリア付着が発生して白抜け画像が生じるおそれがあり、また、体積基準のメジアン径が65μmよりも大きなキャリアを用いた場合は、均一な画像濃度の画像が形成されない場合が生じうる。
【0141】
〔画像支持体〕
本発明の画像形成装置に使用される画像支持体Pとしては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0142】
〔転写部材の製造例1〕
(1)無端ベルト状基体の作製
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液「ユーワニスS(固形分18質量%)」(宇部興産製)に、乾燥した酸化処理カーボンブラック「SPECIAL BLACK4」(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0%)をポリイミド系樹脂固形分100質量部に対して、23質量部になるよう添加して、衝突型分散機「GeanusPY」(シーナス製)を用い、圧力200MPaで、最小面積が1.4mm
2 で2分割後衝突させ、再度2分割する経路を5回通過させて、混合して、カーボンブラック入りポリアミド酸溶液を得た。
このカーボンブラック入りポリアミド酸溶液を、円筒状金型の内周面に、ディスペンサーを介して0.5mmに塗布し、1500rpmで15分間回転させて均一な厚みを有する展開層とした後、250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、150℃で60分間加熱した。その後、360℃まで2℃/分の昇温速度で昇温し、更に360℃で30分間加熱して溶媒の除去、脱水閉環水の除去、およびイミド転化反応の完結を行った。その後室温に戻し、円筒状金型から剥離することにより、肉厚0.1mmの無端ベルト状基体〔1〕を作製した。
【0143】
(2)弾性体層の形成
クロロプレンゴムS−40A(電気化学社製)100質量部に対し、ファーネスブラック(旭カーボン社製)40質量部、水酸化アルミニウム40質量部、シリカ20質量部、タルク10質量部、加硫剤として、酸化マグネシウム4質量部、酸化亜鉛5質量部、加硫促進剤エチレンチオウレア1質量部を、プロセスオイル2質量部とともに混錬し弾性体材料〔1〕を得た。この弾性体材料〔1〕を、固形分濃度が20質量%となるよう、溶剤:トルエン中に溶解、分散させることにより、弾性層形成用塗布液〔1〕を調製した。
無端ベルト状基体〔1〕上に、ノズルを使用したスパイラル塗布により、弾性層形成用塗布液〔1〕を塗布して、乾燥膜厚が300μmの弾性体層〔1〕を形成した。
【0144】
(3)表面層の形成
(3−1)低表面エネルギー基を有する重合性成分の合成
(a)IPDIアダクトの合成
イソホロンジイソシアネート(IPDI)222質量部を、空気下、1Lの4つ口フラスコ内で80℃に加熱後、2−ヒドロキシエチルアクリレート116質量部およびハイドロキノン0.13質量部を2時間かけて滴下し、さらに80℃で3時間反応させて、イソシアネート基1個とビニル基1個を有する化合物〔X〕(IPDIアダクト)を得た。
(b)重合体〔1〕の合成
片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ社製「サイラプレーンFM−0721」)15質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート70質量部、ブチルメタクリレート15質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)200質量部を冷却管、撹拌装置および温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリル3質量部を加えて2時間重合反応を行い、さらに、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を加えて2時間重合反応を行った。次いで、化合物〔X〕(IPDIアダクト)204質量部とオクチル酸錫1質量部とをメチルエチルケトン(MEK)20質量部で溶解した溶液を約10分間で滴下し、滴下後2時間反応させた。得られた溶液に、不揮発分が10質量%となるようにシクロヘキサノンを添加して、重合体〔1〕の溶液を得た。重合体〔1〕の重量平均分子量は約20,000であった。
【0145】
(3−2)表面処理が施された金属酸化物微粒子の調製
数平均一次粒径34nmのアルミナ微粒子100体積部に対し、表面処理剤〔1〕(片末端カルビノール変性シリコーンオイル(信越シリコーン社製「X−22−170BX」))を15体積部、溶媒(トルエン:イソプロピルアルコール=1:1(体積比)の混合溶媒)400体積部を混合し、湿式メディア分散型装置を使用して分散し、溶媒を除去し、150℃で30分間乾燥して、表面処理が施された金属酸化物微粒子〔1〕を得た。
【0146】
(3−3)表面層形成用塗布液の調製
多官能(メタ)アクリレート:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 25体積部
ポリウレタンアクリレート:「UV−3000B」(日本合成化学社製) 50体積部
低表面エネルギー基を有する重合性成分:重合体〔1〕 25体積部
金属酸化物微粒子〔1〕 5体積部
を、固形分濃度が10質量%となるよう、溶剤:プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)中に溶解、分散させることにより、表面層形成用塗布液〔1〕を調製した。
【0147】
(3−4)表面層の形成
表面層形成用塗布液〔1〕100質量部に対し、重合開始剤(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)を0.5質量部添加・溶解し、これを、上記の弾性体層の外周面上に、
図3に示す塗布装置を使用して浸漬塗布方法によって下記の塗布条件で乾燥膜厚が5μmとなるように塗膜を形成し、この塗膜に活性エネルギー線として紫外線を、下記の照射条件で照射することにより、塗膜を硬化して表面層を形成し、これにより、転写部材〔1〕を得た。紫外線の照射は、光源を固定し、酸素濃度500ppm以下となるように窒素置換を行い、320nm以下の紫外線をカットするために膜厚3mmのホウケイ酸ガラスを介して、弾性体層〔1〕の外周面上に塗膜が形成された基材を周速度60mm/sで回転しながら行った。
−塗布条件−
塗布液供給量:1L/min
−紫外線の照射条件−
光源の種類:高圧水銀ランプ「H04−L41」(アイグラフィックス社製)
照射口から塗膜の表面までの距離:100mm
照射光量:1J/cm
2
照射時間(基材を回転させている時間):240秒間
【0148】
得られた転写部材〔1〕につき、上述した測定方法によって押し込み深さと硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0149】
〔転写部材の製造例2〜8〕
転写部材の製造例1において、表面層形成用塗布液の調製工程において表1の処方に従って表面層形成用塗布液を調製し、表面層の形成工程においてそれぞれこれらを用いたことの他は同様にして、転写部材〔2〕〜〔8〕を製造した。得られた転写部材〔2〕〜〔8〕につき、上述した測定方法によって押し込み深さと硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0150】
〔転写部材の製造例9〕
転写部材の製造例1における表面層の形成において、PVDF−HFP共重合樹脂「カイナー2851」(アルケマ社製)を固形分濃度が10質量%となるよう、溶剤:ジメチルアセトアミドに溶解した表面層形成用塗布液〔9〕を用い、弾性体層の外周面上に塗布して、150℃で30分間乾燥させたことの他は同様にして、転写部材〔9〕を製造した。得られた転写部材〔9〕につき、上述した測定方法によって押し込み深さと硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0151】
〔転写部材の製造例10〕
転写部材の製造例1において、表面層を形成せず、弾性層表面を、UV処理により表面処理(照射強度100mW/cm
2 において10秒間)することの他は同様にして、転写部材〔10〕を製造した。得られた転写部材〔10〕につき、上述した測定方法によって押し込み深さと硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0152】
表1において、弾性体層の欄の弾性体材料〔2〕〜〔3〕は、転写部材の製造例1における弾性体層の形成において、弾性体材料〔1〕を表2の処方に従って変更したことの他は同様にして得られたものである。
また、表1において、低表面エネルギー基を有する重合性成分の欄の重合体〔2〕〜〔4〕は、下記合成法によって得られたものである。
さらに、表1において、金属酸化物微粒子〔2〕〜〔5〕は、転写部材の製造例1における表面処理が施された金属酸化物微粒子の調製において、未処理金属酸化物の種類および表面処理剤の種類を表1に従って変更したことの他は同様にして得られたものである。なお、表面処理剤〔2〕は片末端ジオール変性シリコーンオイル「X−22−176DX」(信越シリコーン社製)、表面処理剤〔3〕はメチルハイドロジェンポリシロキサン「KF−9901」(信越シリコーン社製)、表面処理剤〔4〕は3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-5103」(信越シリコーン社製)である。
【0153】
<重合体〔2〕の合成>
片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ社製「サイラプレーンFM−0721」)20質量部、グリシジルメタクリレート70質量部、ブチルメタクリレート10質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)200質量部を冷却管、撹拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら90℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリル3質量部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル1質量部を加えて2時間重合を行った。次いで、100℃まで昇温し、流入ガスを窒素から空気に変更し、ジメチルベンジルアミン0.7質量部を加え、その後、アクリル酸35質量部を約10分間で滴下し、滴下後10時間反応させた。得られた溶液に、不揮発分が10質量%となるようにシクロヘキサノンを添加して、重合体〔2〕の溶液を得た。重合体〔2〕の重量平均分子量は約17,000であった。
【0154】
<重合体〔3〕の合成>
片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ社製「サイラプレーンFM−0721」)25質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート30質量部、ブチルメタクリレート45質量部、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を冷却管、撹拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリル1.6質量部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を加えて2時間重合を行った。次いで、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25.2質量部とオクチル酸錫0.6質量部とをメチルエチルケトン(MEK)20質量部で溶解した溶液を約10分間で滴下し、滴下後2時間反応させた。得られた溶液に不揮発分が20質量%となるようにシクロヘキサノンを添加して、重合体〔3〕の溶液を得た。重合体〔3〕の重量平均分子量は約24,000であった。
【0155】
<重合体〔4〕の合成>
片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ社製「サイラプレーンFM−0711」)20質量部、グリシジルメタクリレート70質量部、ブチルメタクリレート10質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)200質量部を冷却管、撹拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら90℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリル3質量部を加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル1質量部を加えて2時間重合を行った。次いで、100℃まで昇温し、流入ガスを窒素から空気に変更し、ジメチルベンジルアミン0.7質量部を加え、その後にアクリル酸35質量部を約10分間で滴下し、滴下後10時間反応させた。得られた溶液に不揮発分が10質量%となるようにシクロヘキサノンを添加して、重合体〔4〕の溶液を得た。重合体〔4〕の重量平均分子量は約15,000であった。
【0156】
ここで、本発明の転写部材においては、表面層の各成分の比重を、有機物が1.1程度、具体的には、DPHAが1.18、TMPTAが1.11、ポリウレタンアクリレートが1.1、低表面エネルギー基含有重合体成分が1.1、金属酸化物微粒子としてアルミナが3.5、酸化スズが6.3、チタニアが3.7、シリカが2.2として換算することができる。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
〔評価1:用紙エッジ傷〕
以上のようにして得られた転写部材〔1〕〜〔10〕を、画像形成装置「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)の中間転写体としてそれぞれ搭載し、厚み400μmの用紙を100万枚通紙し、エッジ領域の傷の状態を観察した。下記評価基準によって評価した。結果を表3に示す。
−評価基準−
◎:100万枚印字後に傷の発生なし
○:100万枚印字後に傷の発生数が1以上6未満
△:100万枚印字後に傷の発生数が6以上11未満
×:100万枚印字後に傷の発生数が11以上
【0160】
〔評価2:耐傷性〕
以上のようにして得られた転写部材〔1〕〜〔10〕を、画像形成装置「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)の中間転写体としてそれぞれ搭載し、温度20℃、湿度50%RHで、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の各色の印字率が2.5%の画像を、中性紙に100万枚印刷した。印刷前後に転写部材の表面状態を観察し、100mm×100mmの領域内にある傷の数によって評価した。結果を表3に示す。
−評価基準−
◎:100万枚印字後に傷の発生なし
○:100万枚印字後に傷の発生数が1以上6未満
△:100万枚印字後に傷の発生数が6以上11未満
×:100万枚印字後に傷の発生数が11以上
【0161】
〔評価3:凹凸紙転写性〕
以上のようにして得られた転写部材〔1〕〜〔10〕を、画像形成装置「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)の中間転写体としてそれぞれ搭載した。凹凸紙(レザック紙)を用いて、トナー濃度100%画像(ベタ画像)を出力し画像濃度を測定し、下記評価基準によって評価した。結果を表2に示す。なお、画像濃度はスキャナーを用いて、画像を取り込み、フォトショップ(Adobe製)を用い、画像処理により平均濃度を算出し以下の評価基準により比較を行った。結果を表3に示す。
−評価基準−
○:平均濃度90%以下の面積率が3%以下
△:平均濃度90%以下の面積率が5%以下
×:平均濃度90%以下の面積率が10%以下
【0162】
【表3】