特許第5983698号(P5983698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983698
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/38 20060101AFI20160823BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B65H5/38
   B65H5/06 D
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-206965(P2014-206965)
(22)【出願日】2014年10月8日
(62)【分割の表示】特願2010-125226(P2010-125226)の分割
【原出願日】2010年5月31日
(65)【公開番号】特開2015-3830(P2015-3830A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内野 雄太
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−176635(JP,A)
【文献】 実開平3−91443(JP,U)
【文献】 特開2004−244193(JP,A)
【文献】 特開2009−113901(JP,A)
【文献】 特開2003−165653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H5/36−5/38、29/52
B41J13/10
G03G15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点にてシートを挟んだ状態でシートを搬送する駆動ローラ及び従動ローラと、
切欠き部が形成されたガイド面を有するガイド部材であって、上記ガイド面に形成された上記切欠き部が上記駆動ローラの回転軸と当接した状態で上記ガイド面によってシートを上記接点にガイドするための第1姿勢と、当該第1姿勢とは異なる第2姿勢とに姿勢変化するガイド部材と、
上記ガイド部材が上記第1姿勢である場合に、上記回転軸と当接した状態で上記回転軸を、上記切欠き部に向けて付勢する部材と、を備え、
上記切欠き部は、上記回転軸において、上記駆動ローラ及び従動ローラによるシート搬送方向に沿う方向の下流側に当接する第1平面と、当該第1平面と交差し且つ上記回転軸における上記従動ローラが配置されている側とは反対側と当接する第2平面と、を有し、
上記部材は、上記回転軸を上記第1平面及び上記第2平面に向けて付勢する搬送装置。
【請求項2】
上記切欠き部は、上記第2平面と交差する第3平面を有し、
上記ガイド部材が上記第1姿勢である場合に、上記回転軸は、上記第1平面と上記第3平面との間に位置し、且つ上記第1平面と上記第2平面とに当接する請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
接点にてシートを挟んだ状態でシートを搬送する駆動ローラ及び従動ローラと、
切欠き部が形成されたガイド面を有するガイド部材であって、上記ガイド面に形成された上記切欠き部が上記駆動ローラの回転軸と当接した状態で上記ガイド面によってシートを上記接点にガイドするための第1姿勢と、当該第1姿勢とは異なる第2姿勢とに姿勢変化するガイド部材と、
上記ガイド部材が上記第1姿勢である場合に、上記回転軸と当接した状態で上記回転軸を、上記切欠き部に向けて付勢する部材と、を備え、
上記切欠き部は、互いに交差する二つの面であって、上記ガイド部材が上記第1姿勢である場合に互いに上記回転軸と当接する二つの面を有し、
上記部材は、上記ガイド部材が上記第1姿勢である場合に、上記二つの面に向けて上記回転軸を付勢する搬送装置。
【請求項4】
接点にてシートを挟んだ状態でシートを搬送する駆動ローラ及び従動ローラと、
切欠き部が形成されたガイド面を有するガイド部材であって、上記ガイド面に形成された上記切欠き部が上記駆動ローラの回転軸と当接した状態で上記ガイド面によってシートを上記接点にガイドするための第1姿勢と、当該第1姿勢とは異なる第2姿勢とに姿勢変
化するガイド部材と、を備え、
上記ガイド部材は、上記ガイド面を有するリブが、上記駆動ローラ及び上記従動ローラによるシート搬送方向と直交する第1方向において間隔をあけて、複数形成されており、
さらに、上記ガイド部材において、隣合う上記複数のリブの間に配置され、且つ上記ガイド部材が上記第1姿勢である場合に、上記回転軸と当接した状態で上記回転軸を、上記切欠き部に向けて付勢する部材と、を備える搬送装置。
【請求項5】
上記切欠き部は、上記回転軸において、上記シート搬送方向に沿う方向の下流側に少なくとも当接し、
上記部材は、上記回転軸において、上記シート搬送方向に沿う方向の上流側に当接する請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
上記部材は、上記ガイド部材が上記第1姿勢から上記第2姿勢に向く方向であって上記シート搬送方向と上記第1方向とに交差する方向に沿って上記回転軸に当接し、
上記切欠き部は、上記部材と上記回転軸とが当接する箇所と対向する部分において上記回転軸に当接する請求項4又は5に記載の搬送装置。
【請求項7】
上記切欠き部と上記部材は、少なくとも、上記駆動ローラの回転中心と上記従動ローラの回転中心とを結ぶ方向において、上記回転軸を挟む請求項1乃至6のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項8】
上記切欠き部は、上記回転軸の径よりも大きい請求項1乃至7のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項9】
上記切欠き部は、上記駆動ローラの径よりも小さい請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
上記切欠き部は、上記従動ローラの径よりも小さい請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
上記ガイド部材の上記ガイド面は、シートを上記接点に向けてガイドする第1部と、上記接点を通過したシートをガイドする第2部とを有し、上記切欠き部は、上記第1部と上記第2部との間に形成される請求項1乃至10のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項12】
上記部材は、上記ガイド部材における上記切欠き部が形成された上記ガイド面とは異なる箇所に形成される請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項13】
上記部材は、弾性を有しており、
上記部材は、先端部から突出しており、上記ガイド部材が上記第1姿勢である場合に、上記回転軸と当接する爪部を有しており、
更に、上記ガイド部材が上記第2姿勢から上記第1姿勢へと遷移する過程で、上記爪部が上記回転軸と当接することで上記部材が弾性変形し、さらに上記ガイド部材が上記第1姿勢となった際に弾性変形した上記部材の復元力により、上記爪部が上記回転軸を付勢する請求項4又は12に記載の搬送装置
【請求項14】
トレイ内のシートを上記接点に向けて給紙する給紙ローラを備え、
上記ガイド部材は、上記第2姿勢である場合に、上記給紙ローラから上記接点に至る搬送路が露出する請求項1乃至13のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の搬送装置と、
上記接点を通過したシートを挟持した状態で搬送する搬送ローラ及びピンチローラと、
上記搬送ローラ及び上記ピンチローラによって搬送されるシートに画像を記録する記録
手段と、を備える画像記録装置。
【請求項16】
上記記録手段は、上記搬送ローラ及び上記ピンチローラによって搬送されるシートにインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドを備える請求項15に記載の画像記録装置。

以 上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被搬送媒体を挟んで搬送する搬送ローラ対の間に被搬送媒体を案内するガイド部が可動部材に設けられた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録用紙や葉書や封書などのシート状の被搬送媒体を挟んで搬送する搬送ローラ対と、被搬送媒体が通過する搬送路と、を備えた搬送装置が提供されている。搬送装置は、搬送される被搬送媒体に画像を記録する記録部を備えた画像記録装置や、搬送される被搬送媒体を走査して画像を取り込むスキャナ部を備えたスキャナなどに用いられている。
【0003】
上述の搬送装置には、被搬送媒体の搬送向きを変える湾曲部を搬送路が備えるものがある。この種の搬送装置は、例えば、記録部又はスキャナ部と、被搬送媒体が載置される載置部と、を上下に配した画像記録装置やスキャナなどに用いられている。搬送装置は、湾曲部で被搬送媒体の搬送向きを変えることで、載置部に載置された被搬送媒体を載置部の上方や下方に配された記録部又はスキャナ部に搬送する。
【0004】
ところで、搬送装置には、開口が設けられた筐体の外壁に可動部材を開閉可能に取り付け、この可動部材に上述の湾曲部の湾曲外側を形成するガイド部を設けた構成を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載された搬送装置は、筐体と、この筐体の下部に収容された載置部と、この載置部に載置された被搬送媒体を後方に送り出す給送部と、この給送部により後方に送り出された被搬送媒体の搬送向きを前向きに変える湾曲部を有する搬送路と、載置部の上方に配置され、搬送向きが変更された被搬送媒体に画像を記録する記録部と、開口が設けられた筐体の後壁に開閉可能に取り付けられた可動部材と、を備えている。この可動部材に、湾曲部の湾曲外側を形成するガイド部が設けられている。ガイド部が可動部材に設けられることにより、可動部材を開いて搬送路を筐体の外部に露出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−34202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような湾曲部を有する搬送装置においては、例えば、上記湾曲部に搬送ローラ対を設けることで、被搬送媒体と湾曲部との間の摩擦力の影響を低減し、被搬送媒体を確実に搬送することが考えられる。湾曲部に搬送ローラ対を配置すると、被搬送媒体は、可動部材のガイド部により、搬送ローラ対の間であるニップ位置に案内されることになる。しかしながら、可動部材に設けられたガイド部では、ニップ位置に対する位置精度が悪く、被搬送媒体が搬送ローラ対に衝突して凹む恐れがある。
【0008】
ガイド部をニップ位置に近接させると、搬送される被搬送媒体とニップ位置との位置ずれを低減することができるが、ガイド部をニップ位置に近接させすぎると、被搬送媒体が搬送ローラ対の間を通過している時において、湾曲部で湾曲された被搬送媒体がガイド部に強く押し付けられ、被搬送媒体とガイド部との間の摩擦力が大きくなって、被搬送媒体の搬送に支障が生じたり、ガイド部により被搬送媒体の表面に擦り傷が付いたりする。
【0009】
上述のように、湾曲部の外側を形成するガイド部が可動部材に設けられた搬送装置において、湾曲部の上流側に搬送ローラ対が設けられると、搬送ローラ対のニップ位置とガイド部との相対位置の精度の悪さにより、被搬送媒体の搬送に支障が生じることが予想される。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑み、搬送ローラ対のニップ位置と可動部材に設けたガイド部との相対位置の精度を高めることができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の搬送装置は、駆動ローラ及び当該駆動ローラに従動する従動ローラを有しており、シート状の被搬送媒体を挟んで搬送する搬送ローラ対と、この搬送ローラ対により搬送される被搬送媒体の搬送向きを変える湾曲部を有しており、上記湾曲部に上記搬送ローラ対が配置された搬送路と、上記湾曲部の湾曲外側に配置されており、被搬送媒体を案内する第1姿勢、及び上記湾曲部を開放する第2姿勢に姿勢変化可能な可動部材と、を備える。
【0012】
上記可動部材は、上記第1姿勢において被搬送媒体を上記搬送ローラ対の間へ案内するガイド部と、上記第1姿勢において上記駆動ローラの軸に対して上記ガイド部の位置決めを行い、かつ上記第2姿勢において上記軸から離反される位置決め部と、を備える。
【0013】
上記ガイド部は、上記位置決め部により、上記駆動ローラの軸に対して位置決めされるから、上記ガイド部と上記搬送ローラ対のニップ位置との相対位置の精度を高めることができ、その結果、上記湾曲部の曲率半径を小さくしても被搬送媒体を正常に搬送できる搬送装置、及び、被搬送媒体の種類によらず被搬送媒体を正常に搬送できる搬送装置が実現される。
【0014】
(2) 上記位置決め部は、上記軸と嵌脱可能な嵌合部と、上記軸と上記嵌合部とが嵌合した状態を保持し、かつ上記軸と上記嵌合部との嵌脱において弾性変形可能な変形部と、を備える。この変形部は、上記第1姿勢において、上記搬送向きの上流側から上記軸と係合し、かつ、上記搬送向きの上流側へ弾性変形可能に設けられる。
【0015】
上記可動部材は、搬送される被搬送媒体と上記ガイド部との間に生じる摩擦力により上記搬送向きの下流側に移動しようとするが、上記変形部は、上記第1姿勢において、上記搬送向きの上流側から上記軸と係合するから、上記変形部が上記軸に当接することで上記可動部材の下流側への移動が禁止され、その結果、被搬送媒体の搬送により上記ガイド部が上記搬送ローラ対のニップ位置に対して位置ずれしない搬送装置が実現される。
【0016】
(3) 上記可動部材は、上記第1姿勢における上記変形部を挟んだ上記駆動ローラの軸の反対側に回動軸を備えており、上記回動軸を中心に上記第1姿勢と上記第2姿勢との間で回動するものであることが望ましい。
【0017】
上記第1姿勢において、上記回動軸と上記駆動ローラの軸との間に上記変形部が位置するから、上記第2姿勢から上記第1姿勢に上記可動部材が姿勢変化する際に、上記変形部を上記回動軸側から上記軸に強く押し付けることができ、その結果、上記駆動ローラの軸に対しての上記可動部材の位置決めをより確実に行うことができ、また、上記可動部材を上記軸に確実に係止することができる。
【0018】
(4) 複数の上記駆動ローラ対が軸方向に離間して上記軸に設けられ、上記変形部は、隣り合う上記駆動ローラの間において上記軸と係合することが望ましい。被搬送媒体の搬送により、上記軸は、上記駆動ローラが設けられた位置において変形する恐れがあるが、上記変形部が変位の比較的少ない上記駆動ローラの間において上記軸に係合することで、上記軸の変形による上記ガイド部と上記ニップ位置との相対位置のずれを抑えることができるからである。
【0019】
(5) 上記駆動ローラは、上記湾曲部の湾曲外側に配置されており、上記従動ローラは、上記湾曲部の湾曲内側に配置されることが望ましい。上記駆動ローラを湾曲外側に配置することで上記軸と上記可動部材とが同じ側となり、上記位置決め部を上記搬送路を避けて設ける必要がなく、上記位置決め部の構成が簡単になるからである。
【0020】
(6) 上記ガイド部は、上記第1姿勢において上記搬送向きに沿って延びるリブであることが望ましい。被搬送媒体と上記可動部材との間に生じる摩擦力を低減でき、その結果、被搬送媒体をスムースに搬送できるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、搬送ローラ対のニップ位置と可動部材に設けたガイド部との相対位置の精度を高めることができ、被搬送媒体が搬送ローラ対に激突することや、被搬送媒体がガイド部に強く押し付けられることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】可動部材が閉じた第1姿勢にある状態の複合機の背面側の斜視図である。
図2】可動部材が開いた第2姿勢にある状態の複合機の背面側の斜視図である。
図3】プリンタ部の模式的な断面図である。
図4】可動部材の図で、(A)は平面図で、(B)は正面図で、(C)は左側面図で、(D)は右側面図である。
図5図4(B)のAA断面図である。
図6図3の一部を拡大した拡大図である。
図7】変形例1の可動部材を示す断面図である。
図8】変形例2の可動部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の搬送装置30の好ましい実施形態として、搬送装置30を、印刷・スキャン・コピー・ファックス機能を有した図1の複合機10が備える図3のプリンタ部15に用いた例が説明される。なお、図1に示されているように、複合機10の高さ方向が上下方向7と定義され、奥行き方向が前後方向8と定義され、幅方向が左右方向9と定義され、以下説明がされる。
【0024】
[複合機10の概要]
複合機10は、図1に示されたように、プリンタ筐体11と、このプリンタ筐体11の上方に配置されたスキャナ筐体12と、このスキャナ筐体12の上方に配置された原稿カバー13と、を備えている。プリンタ筐体11は、図3に示されたように、記録用紙や葉書や封書など可撓性を有するシート状の被搬送媒体19が載置される給紙カセット14を引き出し可能に下部に収容し、この給紙カセット14に載置された被搬送媒体19に画像を記録するプリンタ部15を上部に収容している。また、プリンタ筐体11は、画像記録後の被搬送媒体19を受ける排紙トレイ16を、給紙カセット14の上方において支持している。
【0025】
また、図1に示されたように、プリンタ筐体11は、収容したプリンタ部15を外部に露出させるための開口11Bを後壁11Aに備え、この後壁11Aにより、後述される可動部材50を開閉可能に支持している。可動部材50は、紙詰まりの際などにユーザにより開かれる。
【0026】
スキャナ筐体12は、プリンタ筐体11に開閉可能に支持され、原稿カバー13を開閉可能に支持している。スキャナ筐体12は、画像取り込みが行われる原稿を原稿カバー13と共に挟んで固定する。スキャナ筐体12には、挟んだ原稿の画像を走査して取り込むフラットベッドスキャナなどの不図示のスキャナ部が収容されている。このスキャナ部やプリンタ部15の制御は、制御部により行われる。制御部は、例えば、制御基板に実装されたマイコンなどの種々の電子部品により実現される。
【0027】
制御部には、プリンタ筐体11の前面側に装着された不図示の操作パネルに設けられた入力スイッチや、パソコンなどの不図示の外部機器から信号が入力される。入力した信号により、制御部は、画像の取り込みや画像の記録を行う。具体的には、制御部は、スキャナや、後述される記録部20や、駆動モータなどの制御を行う。以下、画像の記録を行うプリンタ部15について説明がされる。
【0028】
[プリンタ部15]
プリンタ部15は、図3に示されたように、給紙カセット14に載置された被搬送媒体19を搬送する搬送装置30と、この搬送装置30により搬送される被搬送媒体19に画像を記録する記録部20と、記録部20が有する後述の記録ヘッド21や、後述の搬送装置30が備える給紙ローラ31A,31B及び駆動ローラ35A、36A、37Aなどを駆動する不図示の駆動部と、を備えている。この駆動部は、上述の制御部により駆動制御がされる複数個の駆動モータと、この駆動モータの駆動力を記録ヘッド21などに伝達する駆動伝達機構と、を備えている。
【0029】
[記録部20]
記録部20は、プリンタ筐体11に装着された給紙カセット14の後部の上方に配置された板状のプラテン22と、このプラテン22の上方にプラテン22に対向して配置された記録ヘッド21と、この記録ヘッド21を左右方向9に移動可能に支持する不図示のレール体と、を備えている。
【0030】
[記録ヘッド21]
記録部20の記録ヘッド21は、不図示の複数のノズルを備えている。各ノズルは、下方に開放する吐出口をそれぞれ備え、例えば圧電素子により変形されることで吐出口からインク滴を下方のプラテン22に向けてそれぞれ吐出する。また、記録ヘッド21は、上述の駆動部により左右方向9に移動される。後述されるように、被搬送媒体19は搬送装置30によりプラテン22上を前方に向かって搬送され、被搬送媒体19の前方への搬送と、記録ヘッド21の左右方向9の移動とにより、記録ヘッド21は、被搬送媒体19の表面のほぼ全面に画像を記録し得る。
【0031】
[給紙カセット14]
被搬送媒体19が載置される給紙カセット14は、図3に示されたように、上方に開放する箱状にそれぞれ形成され上下に配置された2つのトレイ14A,14Bを備えている。トレイ14A,14Bの後壁は、上記底の後端から後方斜め上に延びるように形成されている。トレイ14A又はトレイ14Bに載置された被搬送媒体19は、トレイ14A又はトレイ14Bの後壁と、以下に説明される搬送装置30により後方斜め上に向かって送り出される。
【0032】
[搬送装置30]
搬送装置30は、トレイ14Aに載置された被搬送媒体19を送り出す給紙ローラ31Aと、トレイ14Bに載置された被搬送媒体19を送り出す給紙ローラ31Bと、給紙ローラ31A,31Bにより送り出された被搬送媒体19が通過する搬送路40と、この搬送路40に付設され被搬送媒体19を挟んで搬送する3組の搬送ローラ対35,36,37と、を備えている。
【0033】
[給紙ローラ31A,31B]
給紙ローラ31Aは、図3に示されたように、トレイ14Aの後部の上方に配置され、上述の駆動部により回転駆動される回転軸32Aとアーム33Aとを用いて上下に揺動可能に支持されている。アーム33Aは、給紙ローラ31Aが回動可能に一端部に取り付けられ、他端部が回転軸32Aに回動可能に支持されている。給紙ローラ31Aは、トレイ14Aに載置された被搬送媒体19に当接し、回転軸32Aが回転することで回転し、当接する被搬送媒体19を搬送路40に送り出す。給紙ローラ31Bは、給紙ローラ31Aと同様の構成を有しており、トレイ14Bに載置された被搬送媒体19に当接し、回転することで被搬送媒体19を搬送路40に送り出す。
【0034】
[搬送路40]
搬送路40は、図3に示されたように、給紙ローラ31A,31Bにより送り出された被搬送媒体19が通過する第1搬送路41と、この第1搬送路41と繋がる第2搬送路42と、を備えている。
【0035】
[第1搬送路41]
第1搬送路41は、図3に示されたように、断面弧状の湾曲部41Aを備え、一端が、プリンタ筐体11に装着された給紙カセット14のトレイ14Aの後壁の上端の上方に位置し、他端が上述のプラテン22の後端の後方に位置する構成を有している。湾曲部41Aによって被搬送媒体19の搬送向きを変えることにより、複合機10をコンパクトにすることができる。
【0036】
第1搬送路41は、湾曲部41Aの湾曲外側に位置する後述の可動部材50と、湾曲内側に位置する不図示のガイド部材と、により形成されている。第1搬送路41は、湾曲部41Aにより、後方斜め上向きに送り出された被搬送媒体19の搬送向きを前向きに変える。第1搬送路41は請求項に記載の搬送路に相当し、湾曲部41Aは請求項に記載の湾曲部に相当する。
【0037】
[第2搬送路42]
第2搬送路42は、図3に示されたように、プラテン22上を通る断面直線状に形成されている。第2搬送路42は、不図示のガイド部材及びプラテン22により形成されている。被搬送媒体19は、以下に説明される搬送ローラ対35,36により第2搬送路42上を搬送され、上述の記録部20により画像が記録される。
【0038】
[搬送ローラ対35,36]
搬送ローラ対35は、左右方向9に沿う不図示の軸に取り付けられた複数個の駆動ローラ35Aと、この駆動ローラ35Aに従動する複数個の従動ローラ35Bと、を備えている。駆動ローラ35Aが取り付けられた軸は上述の駆動部により回転駆動される。搬送ローラ対35の高さ位置は、第2搬送路42がニップ位置を通る位置に設定されている。搬送ローラ対35は、駆動ローラ35Aと従動ローラ35Bとで被搬送媒体19を挟んで搬送する。また、搬送ローラ対35の前後方向8の位置は、プラテン22の後方となる位置に設定されている。
【0039】
搬送ローラ対36は、搬送ローラ35と同様の構成を有し、複数個の駆動ローラ36A及び従動ローラ36Bと、を備えている。搬送ローラ対36の高さ位置は、第2搬送路42がニップ位置を通る位置に設定されている。搬送ローラ対36の前後方向の位置は、プラテン22の前方となる位置に設定されている。
【0040】
搬送ローラ対36がプラテン22の前方に配置され、上述のように搬送ローラ対35がプラテン22の後方に配置されることで、プラテン22上にある被搬送媒体19は、前後両端が搬送ローラ対35,36で支持される。上述の制御部は、駆動ローラ35Aが取り付けられた軸及び駆動ローラ36Aが取り付けられた軸の回転角や回転量などを制御することで、プラテン22上における被搬送媒体19の位置を制御し、被搬送媒体19に画像を記録する。
【0041】
[搬送ローラ対37]
搬送ローラ対37は、左右方向9に沿う軸37Cに取り付けられた複数個の駆動ローラ37Aと、この駆動ローラ37Aに従動する複数個の従動ローラ37Bと、を備え、湾曲部41Aに配置されている。各駆動ローラ37Aは軸37Cの軸方向において互いに離間している。
【0042】
駆動ローラ37Aと従動ローラ37Bとの一方は、断面弧状の湾曲部41Aの湾曲内側と湾曲外側との一方にそれぞれ配置され、駆動ローラ37Aと従動ローラ37Bとは、第1搬送路41を挟んで湾曲部41Aの径方向において互いに対向している。つまり、搬送ローラ対37は、そのニップ位置を第1搬送路41が通る位置に設けられている。図示例では、駆動ローラ37Aが湾曲外側に配置され、従動ローラ37Bが湾曲内側に配置されている。また、図示例では、搬送ローラ対37は、湾曲部41Aの途中に設けられているが、湾曲部41Aの上流側に設けられてもよい。
【0043】
駆動ローラ37Aが取り付けられた軸37Cは、上述の駆動部により回転駆動される。搬送ローラ対37は、駆動ローラ37Aと従動ローラ37Bとで被搬送媒体19を挟んで搬送する。給紙ローラ31により送り出された被搬送媒体19は、搬送ローラ対37により高められた搬送力により湾曲部41Aを通過し、搬送ローラ対35に至る。つまり、本実施形態の搬送装置30は、湾曲部41Aの曲率半径を小さくしても被搬送媒体19を搬送でき、また、大きい摩擦力が生じる材質の被搬送媒体19やA3サイズなど大きな被搬送媒体19なども搬送することができる。搬送ローラ対37は請求項に記載の搬送ローラ対に相当し、駆動ローラ37Aは請求項に記載の駆動ローラに相当し、従動ローラ37Bは請求項に記載の従動ローラに相当し、軸37Cは請求項に記載の軸に相当する。
【0044】
ところで、給紙ローラ31A,31Bにより送り出された被搬送媒体19は、第1搬送路41を形成する可動部材50のガイドリブ52により搬送ローラ対37のニップ位置にガイドされる。以下、可動部材50について詳しい説明がされる。
【0045】
[可動部材50]
可動部材50は、合成樹脂成型品であり、図4,5に示されたように、矩形板状の基部51と、この基部51の厚み方向の一面から突出する複数個のガイドリブ52と、上記一面から突出する左右一対の係合部54と、を一体に備えている。可動部材50は請求項に記載の可動部材に相当する。
【0046】
[基部51]
基部51は、図4(B)に示されたように、図における左右両側面の下端部から左右一対の軸部56が突出する構成を有し、プリンタ筐体11の後壁11Aに開設された開口11Bを閉塞する図1の第1姿勢と、開口11Bを開放する図2の第2姿勢と、の間で開閉可能にプリンタ筐体11に支持されている。閉じた第1姿勢における基部51の後面の上端部には、例えば、ユーザが可動部材50を開くために指を掛ける突起や凹所が被操作部として設けられる。可動部材50が開かれることにより、第1搬送路41がプリンタ筐体11の外部に露出する。第1姿勢は請求項に記載の第1姿勢に相当し、第2姿勢は請求項に記載の第2姿勢に相当する。以下では、特に言及しない限り、可動部材50は閉じた第1姿勢にあるものとして説明がされる。
【0047】
[ガイドリブ52]
複数個のガイドリブ52は、図3,4に示されたように、第1姿勢においてそれぞれ上下方向7に延びる形状に形成され、左右方向9に並んでいる。ガイドリブ52には、第1姿勢において軸37Cが嵌る切欠き53が、図4(C)における上端寄りの位置に設けられている。つまり、切欠き53は、回動先端部寄りに設けられ、可動部材50の回転により、図4(C),(D)において、軸部56を中心とする円弧上を移動する。
【0048】
切欠き53は、第1姿勢において前方に開放し、第1姿勢における上面53Bと下面53Cとの間の寸法が軸37Cの直径よりも大きく設定されている。可動部材50が開いた第2姿勢から閉じた第1姿勢に姿勢変化されると、前方から軸37Cが進入し、軸37Cが切欠き53の内底面53Aに当接する。可動部材50が閉じた第1姿勢から開いた第2姿勢に姿勢変化されると、切欠き53から軸37Cが退出する。すなわち、切欠き53は、軸37Cが嵌脱可能な構成を有している。切欠き53は請求項に記載の嵌合部に相当する。
【0049】
ガイドリブ52は、上述の切欠き53により、上部の第1部52Aと下部の第2部52Bとに別かれている。ガイドリブ52の第2部52Bにより、給紙カセット14から送り出された被搬送媒体19が搬送ローラ対37のニップ位置に案内される。ガイドリブ52の第2部52Bの上部及びガイドリブ52の第1部52Aにより、湾曲部41Aの外側が形成されている。つまり、本実施形態では、湾曲部41Aの途中に搬送ローラ対37が設けられている。ガイドリブ52の第2部52Bは、請求項に記載のガイド部及びリブに相当する。
【0050】
また、図6に示されたように、ガイドリブ52の第2部52Bは、湾曲部41Aの一部を形成する上部に対して、下部が直線状に形成された構成を有しており、第2部52Bの上端位置C以外の先端面上の任意の点(図示例では点D,E,F)と搬送ローラ対37のニップ位置Bとを通る直線G,H,Iの上又は後方(図示例では後方)に、第2部52Bの上端位置Cが存在する形状に形成されている。上記直線G,H,Iの後方に上端位置Cが位置するから、被搬送媒体19がニップ位置Bを通過する際において、被記録媒体19が第2部52Bの上部から浮き上がろうとし、被搬送媒体19と第2部52Bの上部との間に生じる摩擦力を低減できると共に、被搬送媒体19が上端位置Cにおいてガイドリブの第2部52Bに押し付ける力を低減でき、その結果、被搬送媒体19に擦り傷が付くことを防止した上でスムーズに被記録媒体19を搬送することができる。
【0051】
第1姿勢にある可動部材50は、軸37Cの前方以外を周面53A,53B,53Cで囲む上述の切欠き53と、以下に説明される左右一対の係合部54と、により、軸37Cの径方向において軸37Cとの相対位置が決められかつロックされる。
【0052】
[係合部54]
係合部54は、図4,5に示されたように、第1姿勢における基部51の前面から前向きに突出し第1姿勢において軸37Cに下方から当接する基片54Aと、この基片54Aの先端部から第1姿勢において上向きに突出し、第1姿勢において軸37Cに引っ掛かる爪部54Bと、を備えている。基片54Aの左右方向9の設置位置は、左右方向9において隣り合う駆動ローラ37Aの中間となる位置に設定されている。係合部54は、爪部54Bが引っ掛かることで軸37Cに係合し、軸37Cと切欠き53とが嵌合した状態を保持する。係合部54は、請求項に記載の変形部に相当する。
【0053】
[可動部材50の動作]
開いた第2姿勢にある可動部材50がユーザにより閉じられると、可動部材50の回動先端部に設けられた切欠き53に軸37Cが進入すると共に、軸37Cが係合部54の爪部54Bに当接する。係合部54の基片54Aは、上述のように合成樹脂材料で形成されており、弾性変化が可能であるから、軸37Cが爪部54Bに当接すると、基片54Aは、先端部が下方に移動するように撓む。基片54Aの先端部が下方に移動することで、爪部54Bが軸37Cに摺接しながら軸37Cの前方に回り込み、可動部材50が第1姿勢の位置に到達した時点で軸37Cに前方から当接する。つまり、爪部54Bは軸37Cに引っ掛かる。このように、係合部54は、いわゆるスナップフィットにより軸37Cに係合する。
【0054】
軸37Cに引っ掛かった爪部54Bは、切欠き53の内底面53Aと共に、駆動ローラ37Aの中心と従動ローラ37Bの中心とを結ぶ直線に沿う方向において軸37Cを挟む。一方、撓んでいた基片54Aは、爪部54Bが軸37Cに引っ掛かると、元の形状に戻り、軸37Cに下方から当接し、切欠き53の上側の周面53Bと共に、被搬送媒体19の搬送方向において軸37Cを挟む。
【0055】
上述のように、切欠き53の内底面53A及び周面53Bと、係合部54の基片54A及び爪部54Bと、により軸37Cの周面を囲むことで、第1姿勢にある可動部材50は、軸37Cの径方向において軸37Cに対して位置決めされると共に、軸37Cにより係止される。可動部材50の位置決めを行う切欠き53と係合部54とは、請求項に記載の位置決め部に相当する。
【0056】
一方、軸37Cは、回転する際は、切欠き53の内底面53A及び周面53Bと、係合部54の基片54A及び爪54Bと、に摺接する。つまり、本実施形態の搬送装置30は、軸37Cの回転を阻害することなく、可動部材50の位置決めと、可動部材50のロックとを行うことができる。
【0057】
閉じた第1姿勢にある可動部材50がユーザにより開かれると、基片54Aが撓んで爪部54Bが軸37Cから外れ、可動部材50のロックが解除される。
【0058】
[本実施形態の効果]
本実施形態の搬送装置30は、駆動ローラ37Aが取り付けられた軸37Cにより可動部材50を位置決めするから、可動部材50のガイドリブ52と搬送ローラ対37のニップ位置Bとの相対位置の精度を高めることができる。特に、爪部54Bと切欠き53の内底面53Aとで軸37Cを挟むことで、駆動ローラ37Aの中心と従動ローラ37Bの中心とを結ぶ直線に沿う方向における軸37Cと可動部材50との相対位置の精度を高めることができる。
【0059】
相対位置の精度を高めることができるから、ガイドリブ52の第2部52Bの上端位置Cをニップ位置Bに近接させなくても、給紙カセット14から送り出された被記録媒体19と搬送ローラ対37との激突を防止することができ、その結果、被記録媒体19が上端位置Cにおいてガイドリブ52に擦れることを抑制した上で、被搬送媒体19をニップ位置Bに正確に案内することができる。なお、上述されたように、複合機10は、ガイドリブ52の第2部52Bの形状によっても被搬送媒体19が第2部52Bの上端に押し付けられる力を緩和していて、ガイドリブ52による擦り傷の発生を効果的に防止している。上述のように複合機10は、第1搬送路41の湾曲部41Aの曲率半径を小さくしても、被搬送媒体19が擦れることを防止した上で、被搬送媒体19を正常に搬送することができ、また、被搬送媒体19の種類に因らず被搬送媒体19を正常に搬送することができる。
【0060】
また、湾曲部41Aの曲率半径を小さくすることができるから、複合機10は、プリンタ筐体11の高さ寸法を小さくしてコンパクトにでき、又は、給紙カセット14に載置可能な被搬送媒体19の枚数を、プリンタ筐体11の高さ寸法を大きくすることなく増やすことができる。
【0061】
また、被搬送媒体19の種類に因らず被搬送媒体19を正常に搬送できるから、本発明の搬送装置30は、普通紙や光沢紙など種々の被搬送媒体19に画像の記録が可能なインクジェット記録方式の画像記録装置や、A3サイズなど大型の被搬送媒体19に画像を記録する画像記録装置に用いることができる。
【0062】
また、係止部54は、被搬送媒体19の搬送向きにおける上流側である下側から軸37Cに当接するから、搬送向きにおける下流側である上側への可動部材50の移動を禁止することができる。つまり、被搬送媒体19との間に生じた摩擦力によって可動部材50が上方に移動するとガイドリブ52と搬送ローラ対37のニップ位置Bとの間に位置ずれが生じるが、本実施形態では、基片54Aと軸37Cとの当接により可動部材50の上方への移動を禁止することができ、その結果、ニップ位置Bと搬送向きにおける位置ずれを防止することができるのである。
【0063】
また、可動部材50は、図3における下端部を軸に上端部が回転し、この回転する上端部に係合部54が設けられるから、係合部54の基片54Aを軸37Cに押し付けて、可動部材50を確実に軸37Cに係止させることができ、その結果、可動部材50が簡単に開いてしまうことを防止することができる。
【0064】
また、上述のように、係合部54の左右方向9の位置は、左右方向9において隣り合うガイドリブ52の中間となる位置に設定されている。駆動ローラ37Aが取り付けられた軸37Cは、搬送ローラ対37が挟んだ被搬送媒体19により生じるニップ圧によって変形することが考えられるが、係合部54は、変形による変位の小さい箇所である駆動ローラ37Aの中間において軸37Cに引っ掛かるから、軸37Cの変形による可動部材50の位置ずれを抑えることができ、その結果、被搬送媒体19の搬送によるガイドリブ52の位置ずれを抑えることができる。
【0065】
また、上述のように、搬送ローラ対37は、駆動ローラ37Aが湾曲部41Aの湾曲外側に配置された構成を有しているから、可動部材50を係止する軸37Cは、可動部材50と同じ湾曲外側に位置し、第1搬送路41を避けて可動部材50を軸37Cに係止させる必要がなく、その結果、可動部材50の構成を簡単にできる。つまり、係合部54と切欠き53という簡単な構成で可動部材50を軸37Cに対して位置決めすることができる。なお、駆動ローラ37Aを湾曲部41Aの湾曲内側に配置し、従動ローラ37Bを湾曲外側に配置した構成とすることもできる。この構成の場合、例えば、軸37Cの左右両端部において爪部54Bが軸37Cに引っ掛かるように係合部54の左右方向9の位置が設定される。
【0066】
また、本実施形態では、可動部材50が第1姿勢に姿勢変化すると爪部54Bが軸37Cに引っ掛かるから、可動部材50を開閉する作業と可動部材50を軸37Cに対して係脱する作業とを一の作業で行うことができ、複合機10の使い勝手が良い。なお、爪部54Bを基部51に対して姿勢変化可能に設け、可動部材50が第1姿勢にある状態においてユーザが爪部54Bを姿勢変化させて、爪部54Bを軸37Cに係脱させる構成が採用されてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、可動部材50が回動により開閉される構成が説明されたが、可動部材50がユーザによる着脱によって開閉する構成が採用されてもよいし、スライドにより開閉する構成が採用されてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、ガイド部の一例としてガイドリブ52が説明されたが、ガイド部はガイドリブ52に限られるものではない。例えば、基部51に、第1搬送路41の外側を形成する面を形成し、この面をガイド部とすることもできる。但し、ガイド部をリブで形成する構成の方が、被搬送媒体19と可動部材50との間に生じる摩擦力を小さくでき、被搬送媒体19をよりスムースに搬送することができる。
【0069】
また、本実施形態では、搬送装置30を画像記録装置に用いた例が説明されたが、搬送装置30はスキャナに使用することもできる。例えば、被搬送媒体である原稿が載置される載置部とスキャナ部とが上下に配されたスキャナに本発明の搬送装置30が用いられた場合、載置部とスキャナ部との間の離間寸法を小さくしてスキャナをコンパクトにしたり、載置部に載置可能な原稿の最大枚数をスキャナの筐体の高さ寸法を変えずに増やしたり、摩擦の大きな原稿やA3などサイズの大きな原稿の画像の取り込みを行うことができる。
【0070】
[変形例1]
上述では、係合部54及び切欠き53により可動部材50が位置決めされる構成が説明されたが、本変形例では、係合部54及び切欠き53の代わりに、図7に示された係合部55により可動部材50が位置決めされる構成が説明される。係合部55は、リング状の一部が切り欠かれたC字状に形成され、可動部材50が第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化する際に軸37Cが圧入される位置に設けられている。
【0071】
係合部55は、軸37Cの周面が内周面に当接することで、可動部材50を軸37Cに対して位置決めすると共に、可動部材50を軸37Cに係止させる。回転する軸37Cは、係合部55の内周面に摺接する。つまり、係合部55は、軸37Cの回転を阻害せずに可動部材50の位置決めとロックとを行うことができる。
【0072】
[変形例2]
上述では、スナップフィットにより爪部54Bを軸37Cに引っ掛ける構成が説明されたが、図8に示された板ばねや、コイルスプリングなどの弾性部材を用いて爪部54Bを上下方向7に移動可能支持し、爪部54Bを軸37Cに引っ掛ける構成が用いられても良い。
【0073】
図8では、爪部54Bは、一端が可動部材50の基部51に固着された板ばね57の他端に固着され、第1姿勢における上下方向7に移動可能に板ばね57に支持されると共に、第1姿勢における上向きに付勢されている。板ばね57及び爪部54Bは、請求項に記載の変形部に相当する。
【符号の説明】
【0074】
10・・・複合機(画像記録装置)
11・・・プリンタ筐体
15・・・プリンタ部
19・・・被搬送媒体
20・・・記録部
30・・・搬送装置
37・・・搬送ローラ対
37A・・駆動ローラ
37B・・従動ローラ
37C・・軸
41・・・第1搬送路(搬送路)
41A・・湾曲部
50・・・可動部材
51・・・基部
52・・・ガイドリブ
52A・・第1部
52B・・第2部(ガイド部、リブ)
53・・・切欠き(嵌合部)
54・・・係合部(変形部)
55・・・係合部
B・・・・ニップ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8