(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983726
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】起動用UIを提示可能な機器、その提示方法および提示プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/32 20060101AFI20160823BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20160823BHJP
G06F 3/048 20130101ALI20160823BHJP
【FI】
G06F1/32 Z
H04M1/00 R
G06F3/048
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-501835(P2014-501835)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2012006618
(87)【国際公開番号】WO2013128510
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-46559(P2012-46559)
(32)【優先日】2012年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】北谷 謙一
【審査官】
宮下 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−182072(JP,A)
【文献】
特開2002−123359(JP,A)
【文献】
特開2007−96707(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/065752(WO,A1)
【文献】
田中聡,写真で解説する「INFOBAR C01」,[online],日本,ITmedia,2012年 1月17日,インターネット<http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1201/17/news019.html>[検索日:平成24年11月14日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
G06F 1/32
G06F 3/048
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
省電力モードを有する機器であって、
省電力モードからの復帰を検出する省電力モード復帰検出手段と、
前記機器の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記省電力モード復帰検出手段が省電力モードからの復帰を検出する以降に前記姿勢検出手段が検出する姿勢が、所定の機能について使用される部品の向きに基づいて設定された所定範囲の姿勢である場合、前記所定の機能を起動するための起動用ユーザインタフェースを提示するユーザインタフェース提示手段と
を備える機器。
【請求項2】
誤操作防止のためのロック状態、及び、セキュリティ確保のためのセキュリティロック状態の少なくともいずれかを設定するロック設定手段をさらに備え、
前記ユーザインタフェース提示手段は、前記姿勢検出手段が前記所定範囲の姿勢を検出する場合、前記ロック設定手段の設定に関わらず、前記起動用ユーザインタフェースを提示することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記ユーザインタフェース提示手段は、前記姿勢検出手段が前記所定範囲の姿勢を所定時間検出する場合、前記起動用ユーザインタフェースを提示することを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の機器。
【請求項4】
前記ユーザインタフェース提示手段は、ユーザが前記起動用ユーザインタフェースを用いて前記所定の機能を選択することを検出する後に、前記セキュリティロック状態を解除するためのユーザインタフェースを提示することを特徴とする請求項2に記載の機器。
【請求項5】
省電力モードからの復帰を省電力モード復帰検出手段により検出し、
前記省電力モード復帰検出手段が前記省電力モードからの復帰を検出する以降における姿勢を姿勢検出手段により検出し、
前記姿勢検出手段が、所定の機能について使用される部品の向きに基づいて設定された所定範囲の姿勢を検出すると、前記所定の機能を起動するための起動用ユーザインタフェースを、ユーザインタフェース提示手段により提示する
ことを特徴とする起動用UI提示方法。
【請求項6】
誤操作防止のためのロック状態、及び、セキュリティ確保のためのセキュリティロック状態の少なくともいずれかをロック設定手段で設定できる機器に適用され、
前記姿勢検出手段が前記所定範囲の姿勢を検出する場合、前記ロック設定手段の設定に関わらず、前記起動用ユーザインタフェースを前記ユーザインタフェース提示手段により提示することを特徴とする請求項5に記載の起動用UI提示方法。
【請求項7】
前記姿勢検出手段が前記所定範囲の姿勢を所定時間検出する場合、前記ユーザインタフェース提示手段により前記起動用ユーザインタフェースを提示することを特徴とする請求項5又は6の何れかに記載の起動用UI提示方法。
【請求項8】
ユーザが前記起動用ユーザインタフェースを用いて前記所定の機能を選択することを検出する後に、前記セキュリティロック状態を解除するためのユーザインタフェースを前記ユーザインタフェース提示手段により提示することを特徴とする請求項6に記載の起動用UI提示方法。
【請求項9】
請求項5ないし8の何れかに記載の方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする起動用UI提示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラムにより起動用UI(User Interface)を表示画面に提示することが可能な機器に関し、特に、省電力のためのスリープモードを有し、スリープモードから再起動(復帰)した後の姿勢に応じて起動用UIを提示する機器および起動用UI提示方法、並びにこの起動用UI提示方法をコンピュータによって実行するプログラ
ムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、カメラ、プロジェクタ、方位計、携帯情報端末(PDA,Personal Digital Assistants)、携帯型ナビゲーションシステム等の各種の機器には、内蔵のCPU(Central Processing Unit)や表示部(ディスプレイ)における電力の消費を低減するために、スリープモード等の省電力モードを有するものが多い。
【0003】
スリープモードでは、使用時にメモリに記憶されている作業用データはメモリにそのまま保持し、ハードディスクにも同じ作業用データを記録している。ユーザが画面へのタッチやキーボードによる入力等といった機器に対するアクセスを一定時間以上に亘って行わなかったとき、或いはスリープモードに入るための操作を行ったときに、機器はスリープモードに入る。
【0004】
スリープモードにある機器に対し、タッチパネル機能を有する表示画面へのタッチ、キーボード上のキーの押下、或いは筐体を一定距離以上移動させる等のアクセス操作をし、或いはスリープモード解除用ボタンの操作をすることにより、スリープモードが解除され、機器が動作モードに復帰する。スリープモードが解除され、動作モードに復帰した状態においても、誤操作防止用のロックを解除するためにロック解除のボタン操作をし、更にセキュリティ確保用のセキュリティロックを解除するためにパスワードの入力をしなければ、コマンドを実行できないように機器は設定されることが多い。
【0005】
ロック及びロックの解除を入力するためのロック/ロック解除スイッチを有する機器では、このロック/ロック解除スイッチをロック側に操作しておけば、何らかのコマンドの入力操作がなされても、そのコマンドがCPUに入力されるのを阻止するように、予め設定できる。ロック/ロック解除スイッチをロック側に設定することにより、機器をロック状態に設定できるようにすること、即ちロック/ロック解除スイッチの操作を有効に設定すること、即ちロック有効の設定は、機器が通常の作業可能状態にあるときに任意に行える。また、そのロック/ロック解除スイッチの操作を無効に設定すること、即ちロック無効の設定も、機器が通常の作業可能状態にあるときに任意に行える。
【0006】
機器がロック有効に設定してあるときに、ロック/ロック解除スイッチをロック側に設定し、機器をロック状態にしておくことにより、ユーザの意図しない誤操作があったとしても、機器の状態が維持される。タッチパネル機能を有する表示画面にタッチしたり、或いはキーボードのキーの押下によるコマンドの入力を有効にしようとするときは、ロック/ロック解除スイッチをロック解除側に設定する。機器がロック有効に設定してあれば、スリープモードが解除され、動作モードに復帰した状態においても、ロック解除のボタン操作をし、機器のロックを解除しなければ、パスワードの入力等の次の操作ができない。
【0007】
パスワードの入力がないときは、機器は、次のコマンド(例えば、カメラ機能用の起動用UIの表示を命令するキー入力)を入力できない。機器が他人に不正に使用されることにより、個人情報やデータが盗用され、或いはデータが改竄されることを防止するために、パスワードの入力があったときにのみ、次のコマンドの入力を受け付けるように、機器は設定してあることが多い。
【0008】
機器には、カメラ、プロジェクタ、方位計など、特定の姿勢において利用される機能がある。例えば、カメラ機能は表示画面を垂直に保持して使用され、プロジェクタ機能や方位計機能は表示画面を水平に保持したときに利用されることが多い。例えば、表示画面に対し垂直に光軸を向けてレンズが搭載してあるカメラでは、地表面上の人物等の被写体に光軸を向けるには、表示画面を垂直に保持する必要があるし、また、筐体の長手軸方向(表示画面に対し平行)に光軸を向けてレンズが搭載してあるプロジェクタでは、地面に垂直な方向に垂らして設けられたスクリーンに画像などを投影するには、表示画面を水平に保持する必要がある。このように、機器の姿勢と使用される機能とが対応しているのである。また、方位計の例では、表示画面を水平に保持したときに、機器の長手軸など所定の軸が指向している向きの方位が正確に表示画面に表示されるので、やはり機器の姿勢と使用される機能(この例では、方位計機能)とが対応している。
【0009】
そこで、機器に姿勢検知機能を持たせ、姿勢検知機能が特定の姿勢を検知したときに、或いはその姿勢の検知が所定時間継続したときに、その姿勢に対応したUIが表示画面に自動的に提示される(「表示される」と同義)ならば、そのUIの表示をさせるための格別の操作を入力する必要がないので、機器の操作性において迅速性、軽便性が向上する。
【0010】
このように、機器に姿勢検知機能を持たせ、特定の姿勢になったとき、或いは特定の姿勢が所定時間継続したときに、その特定の姿勢に対応付けた所定機能用のUIを提示するようにした機器が、特許文献1(特開2011−182072号公報)に「携帯端末装置及びその表示省電力状態からの復帰制御方法」なる発明として、特にその明細書の段落0035−0043並びに
図4および
図5に開示されている。特許文献1の携帯端末装置では、姿勢検知機能は加速度センサにより得ている。
【0011】
そして、特許文献1の携帯端末装置では、加速度センサが静止状態を検知し、携帯端末装置が表示省電力状態(表示OFF)にあったときに、加速度センサが一定量(例えば、10cm)移動を検知すると、表示省電力状態の解除トリガを発生し(
図4の静止状態(1))、表示省電力状態を解除する。表示省電力状態の解除がされた後は、ヒンジ部が上の姿勢で、加速度センサが所定時間(例えば、2秒)以内に静止状態を検知すると、受信メール一覧表を表示し(
図4の静止状態(2))、ヒンジ部が下の姿勢で、加速度センサが所定時間以内に静止状態を検知すると、発着信履歴を表示し(
図4の静止状態(3))、ヒンジ部が右横の姿勢で、加速度センサが所定時間以内に静止状態を検知すると、カメラプレビューを表示し(
図4の静止状態(4))、ヒンジ部が左横の姿勢で、加速度センサが所定時間以内に静止状態を検知すると、TV映像を表示する(
図4の静止状態(5))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−182072号公報(段落0035−0043及び
図4、
図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の特許文献1の携帯端末装置では、加速度センサで検知する携帯端末装置の姿勢に応じて受信メール一覧表、発着信履歴、カメラプレビュー及びTV映像を表示している。そこで、この特許文献1の携帯端末装置で行っていることは、表示省電力状態解除に続いて必要となる表示切替のためのコマンドの入力手段として、ヒンジ部の姿勢を用いているといえる。
【0014】
上述のように、特許文献1の携帯端末装置では、表示省電力状態解除に続いて必要となる表示切替コマンドの入力手段として、ヒンジ部の姿勢を用いているだけであるので、ヒンジ部がある姿勢をとったときに次に必要とされる確率の高いUIとは関係のないUIが表示部に提示される。例えば、ヒンジ部が右横の姿勢で、加速度センサが所定時間以内に静止状態を検知すると、カメラプレビューを表示する(
図4の静止状態(4))と説明されているが、ヒンジ部が右横の姿勢のときにカメラレンズがどの方向を指向するのかは不明であり、携帯端末装置の姿勢に応じて、その姿勢で利用される可能性が高い、即ち姿勢に応じた適切なUIの提示は考慮されていない。したがって、特許文献1の携帯端末装置では、姿勢に応じて予め定めたUIが表示画面に表示されるが、ある姿勢において利用される確率の高いUIが表示されるわけはないので、表示省電力状態を解除した後にユーザが行おうとしている作業のために必要となる操作数の軽減の効果はなく、操作性向上の効果は低い。
【0015】
また、機器には、スリープモード等の省電力モードを解除し、通常状態に復帰したとしても、コマンド(例えば、カメラの起動用UIを表示画面に表示させるという命令。)の入力を可能にするのに先立って、ロック解除の操作やパスワードの入力を必要とするものが多い。コマンドの入力は、例えば、タッチパネルとしての機能を備える表示画面を指でタッチすることにより、行われる。上記特許文献1の携帯端末装置が、ロック解除の操作やパスワードの入力を要するものであれば、その携帯端末装置は、ロック解除の操作やパスワードの入力という操作をした後でなければ、コマンドの入力はできない。このように、特許文献1の携帯端末装置では、スリープモード等の省電力モードの解除により通常状態(省電力状態から離脱した状態)に復帰したとしても、起動用UI提示のためのコマンドの入力には更なる操作を要していた。
【0016】
そこで、本発明の目的は、省電力モードから復帰したときは、そのときの姿勢に対応付けられる所定の機能を起動するための起動用UIを自動的に提示できる機器、起動用UI提示方法および起動用UI提示プログラムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の課題を解決するため、本発明による機器、起動用UI提示方法および起動用UI提示プログラ
ムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
(1)本発明による機器は、
省電力モードを有する機器であって、
省電力モードからの復帰を検出する省電力モード復帰検出部と、
前記機器の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記省電力モード復帰検出部が省電力モードからの復帰を検出する以降に前記姿勢検出部が検出する姿勢が所定範囲の姿勢である場合、当該所定範囲の姿勢に対応付けられる所定の機能を起動するための起動用ユーザインタフェースを提示するユーザインタフェース提示部と
を備えることを特徴とする。
(2)本発明による起動用UI提示方法は、
省電力モードからの復帰を省電力モード復帰検出部により検出し、
前記省電力モード復帰検出部が前記省電力モードからの復帰を検出する以降における姿勢を姿勢検出部により検出し、
前記姿勢検出部が所定範囲の姿勢を検出すると、当該所定範囲の姿勢に対応付けられる所定の機能を起動するためのユーザインタフェースを、ユーザインタフェース提示部により提示する
ことを特徴とする。
(3)本発明による起動用UI提示プログラ
ムは、前記(2)に記載の方法を、コンピュータによって実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による機器、起動用UI提示方法および起動用UI提示プログラムは、省電力モードから復帰したときは、そのときの姿勢に対応付けられる所定の機能を起動するための起動用UIを自動的に提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態である起動用UI提示携帯機器の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した起動用UI提示携帯機器における動作を示す流れ図である。
【
図3】
図1に示した起動用UI提示携帯機器の一変形例における動作を示す流れ図である。
【
図4】
図1に示した起動用UI提示携帯機器の姿勢と、この姿勢に対応する機能との関係を表形式で表す姿勢・機能対応テーブルの図である。
【
図5】本発明の機器について、携帯機器の姿勢と、この姿勢に対応する機能との関係を各種の例について表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による機器および起動用UI提示方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明の一実施形態の機器を携帯電話機能を有する携帯機器として説明するが、本発明の機器は通信機能を必ずしも必要としないので、通信機能を備えない機器であっても、省電力の待機モードであるスリープモード等の省電力モードを有し、また姿勢検知手段を有して、この姿勢検知手段で検知した姿勢に応じて利用される可能性の高い機能が予め対応付けられている機器として本発明が実施できることは、殊更に言うまでもない。従って、本発明の機器は、携帯電話機の他に、カメラ、プロジェクタ、方位計、PDA(Personal Digital Assistants)、PC(Personal Computer)、スマートフォン端末、PHS(Personal Handy−Phone System)、タブレット端末、音楽プレーヤ端末、更には、拡張現実(Augmented Reality)機能、水準器機能、ナビゲーション機能、地図表示機能、星座早見機能などの各種の機能を備えた携帯機器としても実現可能である。また、後述するように、本発明は、携帯機器とは称されない機器にも適用できる。なお、以下においては、本発明による機器および起動用UI提示方法の好適な実施形態について説明するが、その起動用UI提示方法はコンピュータプログラムとして実施できることは格別の説明をするまでもない。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態である携帯機器の外観を示す斜視図である。この実施形態の携帯機器1は、筐体2の表側に表示画面5を有し、CPU、メモリ等の電子回路、携帯電話機能用の送受信回路、携帯電話機能用のアンテナ、カメラ機能を実現する光学系、プロジェクタ機能を実現する光学系、方位計を実現するGPS装置、筐体2の姿勢を検知する加速度センサ、表示部(ディスプレイ)、全ての電子回路の電源および表示部照明用の電池、などを内蔵している。携帯機器1内の各電子回路は、ハードディスクに記憶され、ハードディスクからメモリに読み出され、CPUで作動するコンピュータプログラムにより制御され、携帯電話機能、カメラ機能、プロジェクタ機能、方位計機能等を実現する。コンピュータプログラム及びこのコンピュータプログラムを実行するハードウエアは、この携帯機器の制御部をなしている。電源ON/OFFスイッチ、スリープモード入り/スリープモード解除スイッチ、ロック/ロック解除スイッチ、携帯電話呼び出し音ON/OFF用サイレントモードスイッチ等が筐体2の側面にあるが、これらの図示は省略してある。
【0022】
図1に示すように、携帯機器1は、カメラ用光学系の開口レンズとしてカメラレンズ3を備える。カメラレンズ3は、筐体2の裏面側(背面)に開口を有し、その光軸31は表示画面5に垂直である。また、携帯機器1は、プロジェクタ用光学系の開口レンズとしてプロジェクタレンズ4を備える。プロジェクタレンズ4は、筐体2の長手軸方向の端面(上面)に開口を有し、その光軸41は筐体2の長手軸に一致しており、表示画面5に平行である。
【0023】
図1の携帯機器1における表示画面5は、液晶表示装置でなる表示部の表示面であり、タッチパネル機能を有する。ユーザは、制御部により表示画面5に表示されるボタンやキーボードを指で触れる(タッチする)ことにより、制御部に対しコマンドを入力することができる。
【0024】
図1の携帯機器1は、省電力モードの一種であるスリープモードを有する。前述のとおり、スリープモードでは、使用時にメモリに記憶されている作業用データはメモリにそのまま保持し、ハードディスクにも同じ作業用データを記録している。ユーザが表示画面5へのタッチによるコマンドやデータの入力等といった携帯機器1に対するアクセスを一定時間(例えば、10分)以上に亘って行わなかったとき、或いはスリープモード入り/スリープモード解除スイッチをスリープモード入りに設定する操作を行ったときに、携帯機器1はスリープモードに入る。
【0025】
スリープモードにある携帯機器1に対し、表示画面5へのタッチ等のアクセス操作をし、或いはスリープモード入り/スリープモード解除スイッチをスリープモード解除に操作することにより、スリープモードが解除され、携帯機器1が動作モードに復帰する。
【0026】
携帯機器1の筐体2に内蔵されている加速度センサは、スリープモードの解除後、携帯機器1の姿勢(筐体2の姿勢と同じ。)を直交3軸に関して常に検出している。スリープモードから解除されたとき、携帯機器1の制御部は、加速度センサから送られる携帯機器1の姿勢が、カメラ、プロジェクタ、方位計等それぞれに関し予め定めた基準姿勢から所定の範囲内にあるか否かを判断し、その姿勢がその所定の範囲内にあれば、その基準姿勢において利用される可能性が最も高い機能の起動用UIとして予め対応付けられている起動用UIを表示画面5に表示する。本実施の形態では、この起動用UIの表示(提示)は、前述のロック解除を要せず、またパスワードの入力も要せずに、スリープモードの解除に続いて、制御部が自動的に行う。以下に、
図1の実施の形態の携帯機器1の作動につき、一層具体的に説明する。
【0027】
図2は、
図1の携帯機器1の作動を説明する流れ図である。携帯機器1がスリープモードにあるとき、表示画面5へのタッチ等のアクセス操作またはスリープモード入り/スリープモード解除スイッチをスリープモード解除に設定する操作がされることにより、スリープモードが解除され、携帯機器1が再起動されると(ステップS1)、携帯機器1の制御部は加速度センサから出力される携帯機器1の姿勢を検出し(ステップS2)、その姿勢が
図4の姿勢欄に記載されている姿勢範囲の何れかに属するか否かを判定し(ステップS3)、この姿勢の判定がYESであるときは、その姿勢に応じた機能の起動用UIが表示画面5に表示される(ステップS5)。前述の基準姿勢は、カメラについては、カメラレンズの光軸が水平になる姿勢である。また、プロジェクタの基準姿勢は、プロジェクタレンズの光軸が水平になる姿勢である。また、方位計の基準姿勢は、表示画面5が水平になる姿勢(
図1における「表示画面に垂直な軸51」が鉛直になる姿勢)である。
【0028】
図1の携帯機器1は、姿勢に関連する機能としてカメラ機能、プロジェクタ機能および方位計機能を有する。カメラ機能は、カメラレンズ3の光軸31を水平から±15度以内の方向に指向して用いることが多い。そこで、カメラレンズ3の光軸31が水平から±15度以内を指向するときの携帯機器1の姿勢には、カメラ機能を対応付けておく。プロジェクタ機能は、プロジェクタレンズ4の光軸41を水平から±15度以内の方向に指向して用いることが多い。そこで、プロジェクタレンズ4の光軸41が水平から±15度以内を指向するときの携帯機器1の姿勢には、プロジェクタ機能を対応付けておく。また、方位計機能は、水平面に対する表示画面5の傾きを±15度以内にして用いることが多い。そこで、水平面に対する表示画面5の傾きが±15度以内であるときの携帯機器1の姿勢には、方位計機能を対応付けておく。
図4は、
図1の携帯機器1のある姿勢において最も利用される可能性の高い機能として、姿勢に対応付けて予め制御部の記憶領域に記憶しておく機能との関係を表す姿勢・機能対応テーブルを示している。
【0029】
図4を参照して分かるように、スリープモードが解除され、携帯機器1が再起動されたとき、カメラレンズ3の光軸31が水平から±15度以内になる姿勢に携帯機器1が保持されておれば、携帯機器1の表示画面5にはカメラ起動用UIが表示される。同様に、スリープモードが解除され、携帯機器1が再起動されたとき、プロジェクタレンズ4の光軸41が水平から±15度以内になる姿勢に携帯機器1が保持されておれば、携帯機器1の表示画面5にはプロジェクタ起動用UIが表示される。また、スリープモードが解除され、携帯機器1が再起動されたとき、水平面に対する表示画面5の傾きが±15度以内になる姿勢に携帯機器1が保持されておれば、携帯機器1の表示画面5には方位計起動用UIが表示される。
図1には、方位計アプリの表示画像50として方位計起動用UIが例示してある。
【0030】
図1に斜視図で外観を示すように、
図1の実施形態では、プロジェクタレンズ4の光軸41が水平になるように筐体2の姿勢を設定するために、携帯機器1は机上等の水平面に載置されることが多い。このとき、表示画面5が水平面に平行になるので、方位計の利用がされる可能性もある。即ち、表示画面5が水平面に平行になる姿勢では、プロジェクタ機能と方位計機能との両機能が好適に利用可能である。そこで、本実施形態では、ユーザが両機能のうちのどちらかを選択して立ち上げることができるように、スリープモードが解除されたときに、プロジェクタ起動用UIと方位計起動用UIとの両者を表示画面5に提示する。この実施形態では、起動用UIはアイコンであるので、プロジェクタ起動用UIと方位計起動用UIとの両者を表示画面5に提示することは容易である。両起動用UIのうちから、ユーザは利用しようとする方の起動用UIをタッチすることにより選択して、選択したUIに係る機能を実行することができる。
【0031】
図3は、
図1の実施の形態の一変形例の作動を示す流れ図である。この
図3の変形例では、
図2の実施形態のステップS3とS5との間に、ステップS4が加入してある。ステップS4では、スリープモードから解除されたときにおける携帯機器1の姿勢に対応付けられた機能がある(Yes)とステップS3において判断されたときに、その姿勢が所定時間(例えば、2秒)以上に亘って継続しているか否かが判断され、姿勢が所定時間以上に亘って継続している(Yes)ときにはステップ5に進み、その姿勢に予め対応付けられている機能の起動用UIが表示画面5に表示され、もし姿勢が所定時間以上に亘って継続していない(NO)のときにはステップ2に戻す。この
図3の変形例の携帯機器を採用することにより、
図2の実施形態の携帯機器よりも、ユーザは意図する機能の起動用UIを一層確実に表示画面に表示させることができる。
【0032】
図2及び
図3に流れ図で示した実施形態の他に、本実施形態は、次の(1)−(5)の如くに変形した態様でも実施できる。
【0033】
(1)スリープモード解除から所定期間T
0(例えば、T
0=1分)内に、所定の姿勢が所定時間T
1(例えば、T
1=2秒)継続したときは、その姿勢に対応した機能の起動用UIを提示する。
【0034】
(2)
図2又は
図3のステップ5の次に、ステップ6を設け、所定時間以上の期間に亘った所定角度以内の姿勢が維持されるか否かを判断し、ステップ5で一旦起動用UIを提示後に、所定角度以内の姿勢が維持されるときは、その起動用UIの提示を継続し、もし所定角度以内の姿勢が維持されないときは、その起動用UIを表示しない。
【0035】
(3)また、
図2の実施形態では、ステップS2で携帯機器の姿勢を検出し、ステップS3でその姿勢に対応付けられる機能がある(Yes)と判断された場合、その姿勢に対応付けられる機能のUIをステップS5で提示するが、ステップS3でYesと判断の後に携帯機器の姿勢が変化し、そのUIに対応する姿勢の範囲から外れたときも、そのステップS5で一旦提示したUIは、提示を継続するようにしてもよい。
同様に、
図3の実施形態において、
図2と同じくステップS2及びS3の処理を行い、続いて、所定の機能に対応付けられる姿勢が所定時間継続する(Yes)とステップS4で判断されると、その姿勢に対応付けられる機能のUIをステップS5で提示するが、ステップS4での判断の後に携帯機器の姿勢が変化し、そのUIに対応する姿勢の範囲から外れたときも、そのステップS5で一旦提示したUIは、提示を継続するようにしてもよい。
【0036】
(4)
図2及び
図3の実施形態並びに上記(1)及び(2)の変形例では、この起動用UIの表示は、ロック解除を要せず、またパスワードの入力も要せずに、スリープモードの解除に続いて、制御部が自動的に行うが、これらの実施形態において、起動用UIの表示に続いて、パスワード確認UIを表示するようにする。
【0037】
(5)
図2の実施形態では、ステップS2で携帯機器の姿勢を検出し、ステップS3でその姿勢に対応付けられる機能がある(Yes)と判断された場合、その姿勢に対応付けられる機能のUIをステップS5で提示し、また、
図3の実施形態では、
図2と同じステップS2及びS3の処理を行い、続いて、ステップS4で姿勢が所定時間継続する(Yes)か否か(No)を判断し、姿勢が所定時間継続する(Yes)のときは、その姿勢に対応付けられる機能のUIをステップS5で提示するが、
図2、
図3の実施形態を変形し、ステップS5では、姿勢に対応付けられるUIに代えて、姿勢に対応付けられる機能を表示する。ここで表示する機能は、カメラ機能、プロジェクタ、方位計等である。例えば、カメラ機能が表示されると、カメラレンズ3の視野内の対象物が表示画面5に表示される。
【0038】
上に
図1−
図4を参照して説明した実施形態は、
図4の姿勢・機能対応テーブル部の機能欄に示すカメラ、プロジェクタ及び方位計の機能を備えたものであったが、これら機能の他に、筐体の姿勢に関連した起動用UIの提示が有用である例として、
図5に表形式でまとめて示す機能を有する携帯機器にも本発明は適用できる。
図5の機能欄に記載されているように、カメラ、プロジェクタ及び方位計の機能の他に、AR(拡張現実;Augmented Reality)、水準器、ナビゲーション、地図、星座早見など各種の姿勢関連機能を搭載した携帯機器に本発明は適用可能である。
【0039】
前述の従来の携帯機器では、スリープモードが解除され、動作モードに復帰した状態においても、ロック/ロック解除スイッチをロック解除に操作し、更にパスワードの入力をしなければ、コマンドを実行できなかったのに対し、上述の本発明の実施の形態では、ロック解除に操作も、パスワードの入力も要することなく、スリープモードが解除されたときの姿勢において最も利用される可能性の高い機能の起動用UIが表示画面に提示されるので、ユーザは、少ない操作で、短時間に、所要の機能を実行できる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、上述の実施形態は、省電力モードとしてスリープモードを有する携帯機器であったが、スリープモードに限らず、スタンドバイ、サスペンド、休止状態など各種の用語で称される省電力モードを有する携帯機器にも本発明は適用できる。また、上述の実施形態では、起動用UIとしてアイコンを提示するとしたが、ウイジェット(Widget)やガジェット(gadget)等と称されるものを用いても本発明は実施できる。
【0041】
また、上記実施の形態は携帯電話機能を有する携帯機器であったが、本発明は、必ずしも携帯機器に限定されず、姿勢に対応した機能を有する機器であれば、適用可能である。携帯機器とはいえないが、本発明を適用できる機器としては、例えば、姿勢の変更を可能にするための吊下げ保持具で保持される天井吊下げ用の方位計付きカメラ等が考えられる。また、机上に置かれたり、車両に搭載されたりして用いられる機器であって、姿勢の変更が容易な支持具で支持された機器であっても、本発明は適用できる。更には、航空機の如く、運用中に姿勢が変動する移動体に搭載された機器であれば、移動体の姿勢に応じて機器の姿勢が変動するので、移動体搭載用の機器であっても本発明を適用して有用である。
【0042】
また、上記実施の形態では、UIの提示は表示画面5に表示することにより行ったが、UIの提示は、画面表示に限られず、音声メッセージであっても差し支えない。音声によるUIの例としては、操作案内メッセージがある。
【0043】
またさらに、上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。 また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0044】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0045】
この出願は、2012年3月2日に出願された日本出願特願2012−046559を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0046】
1 携帯機器
2 筐体
3 カメラレンズ
4 プロジェクタレンズ
31 カメラレンズの光軸
41 プロジェクタレンズの光軸
50 方位計アプリの表示画像
51 表示画面に垂直な軸