(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プレ空調制御手段は、車室内温度または外気温度と、前記出発予定時刻とに基づいて前記加熱手段の作動開始時刻を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態においては車両用空調装置を搭載する車両は、バッテリの電力によって駆動モータを作動させ、駆動輪を駆動して走行する電気自動車である。尚、本発明の車両用空調装置を搭載する車両としては、エンジン等の内燃機関を備えた車両、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車両、外部充電可能なプラグインハイブリッド車両、燃料電池で駆動される燃料電池車両であっても構わない。
【0010】
本実施形態におけるプレ空調は、バッテリの蓄電量を消費して走行可能距離を低減させないために、電気自動車に充電用の外部電源が接続されている状態で実行し、外部電源からプレ空調のための電力供給することが好ましい。
【0011】
(車両用空調装置について)
図1は、本発明に係る車両用空調装置の構成例を説明するシステム構成図である。
図1において、車両用空調装置は、車室内に温度調整された空気を吹き出す冷暖房空調(HVAC:Heating Ventilation and Air-conditioning)ユニット4を備えている。また車両用空調装置は、冷却手段として、室内熱交換器6、膨張弁7、コンデンサ8及びコンプレッサ9を備えた冷却システムと、加熱手段として、ヒータコア10,電動ウォータポンプ11及びPTCヒータ12を備えたヒータシステムと、を備える。
【0012】
冷暖房空調ユニット4は、空気取り入れ口として、車室内の空気を導入する内気導入口1と、車室外の空気である外気を導入する外気導入口2と、内気導入口1と外気導入口2を切り替える内外気切替手段としてのインテークドア3とを有する。プレ空調時に、インテークドア3が内気導入口1を開いて外気導入口2を閉じている状態が内気循環モードであり、外気導入口2を開いて内気導入口1を閉じている状態が外気導入モードである。
【0013】
インテークドア3は運転者によって設定された、もしくはオートエアコン制御によって要求される内気混入率に基づいて、車両用空調装置の制御部であるA/Cコントローラ20により適宜開閉制御される。A/Cコントローラ20は、空調制御手段及びプレ空調制御手段を兼ねている。
【0014】
空気取り入れ口から導入された空気は、モータ5aにより駆動されるブロワファン5により室内熱交換器6に供給される。ブロワファン5の駆動を行うモータ5aは、運転者によって設定された、もしくはオートエアコン制御によって要求される送風量に基づいてA/Cコントローラ20により適宜駆動される。
【0015】
(冷却システムについて)
室内熱交換器6は、膨張弁7、コンデンサ8、コンプレッサ9とともに、冷却手段である冷却システムを構成している。冷却システムは、加圧液化された冷媒が膨張弁7から霧状に室内熱交換器6へ放出される際に気化熱を奪うことで、室内熱交換器6に流通する空気と熱交換を行い、空気の冷却を行う。室内熱交換器6において熱交換が終了した冷媒は、電動冷媒圧縮機であるコンプレッサ9により圧縮される。コンプレッサ9は、図示しない電動モータによって駆動され、供給される電力に応じた圧縮能力を備えている。
【0016】
コンプレッサ9により圧縮され高温となった冷媒は、コンデンサ8により放熱冷却されて液化され、膨張弁7により再び室内熱交換器6内に供給される。この冷却システム自体は周知の構成であるため、詳細は省略する。
【0017】
(ヒータシステムについて)
室内熱交換器6を通過した空気は、空気通路の下流に設置されたヒータコア10に供給されて、空気の加熱が行われる。ヒータシステムは、ヒータコア10と、PTCヒータ12と、ポンプ11を有する。ヒータコア10には温水が流通する。ヒータコア10は、導入された空気と温水との間で熱交換を行って、空気の加熱を行う。ポンプ11は電動モータ11aにより駆動され、ヒータコア10とPTCヒータ12との間の温水の循環を行う。
【0018】
PTCヒータ12は、正の温度係数(positive temperature coefficient)特性を有する抵抗体を用いた発熱体である。PTCヒータ12を定電圧で駆動すると、温度上昇につれて抵抗値が増加し、電流が減少することにより発熱量が減少する。このため、PTCヒータ12は、温度が上昇して所定温度に到達すると、この温度を保つ機能を有する。
【0019】
(空調機能について)
ヒータコア10の直前に設けられたエアミックスドア13は、室内熱交換器6を通過した空気の内、ヒータコア10を通過する空気の比率を制御する機能を有する。A/Cコントローラ20は、エアミックスドア13の開度を制御することにより、吹出口14から車室内へ吹き出す空気の温度が目標温度となるように調整する。
図1には、1つの吹出口14のみを示しているが、実際には、車室内には複数の吹出口(ベンチレータ)及びデフロスタ(DEF)が設けられており、運転者が選択する、もしくはオートエアコン制御によって要求される吹き出しモードに応じて、空調された空気が吹き出す吹出口の数が適宜制御される。
【0020】
吹出口の数が多いモードが選択されたときには、吹き出し空気量が増えることから風量は大きくなり、吹出口の数が少ないモードが選択されたときには、吹き出し空気量が減少することから風量は小さくなる。
【0021】
A/Cコントローラ20には、タッチパネルを備えた表示ユニット21が接続されている。ユーザは、表示ユニット21を介して、オートまたはマニュアルの空調運転モード、内気循環モード/外気導入モードの切替、設定風量、設定温度、空調された空気の吹出口の選択、デフロスタの作動/非作動の設定等を入力できるようになっている。また表示ユニット21からは、ユーザがプレ空調を行う際の出発予定時刻や、必要に応じてプレ空調時の設定温度を入力できるようになっている。また、表示ユニット21には、空調モード、設定温度、室内温度、外気温度、出発予定時刻等の表示が可能となっている。
【0022】
また、A/Cコントローラ20には、外気導入口2近傍に配置され外気温度を検出する外気温センサ15、内気導入口1近傍に配置され車室内温度を検出する室温センサ16、日射量を検出する日射センサ17が接続されている。
【0023】
A/Cコントローラ20は、外気温センサ15、室温センサ16及び日射センサ17からそれぞれの検出値を受信し、目標吹出温度の演算や、ブロアファン5、エアミックスドア13、コンプレッサ9、PTCヒータ12や電動ウォータポンプ11の制御を行なう。
【0024】
また、A/Cコントローラ20は、表示ユニット21からプレ空調の設定を受け付けて、プレ空調の制御を行なうことができる。プレ空調は、予め設定された時間に車両用空調装置を運転して乗車前に車室内を快適な状態にする機能で、イグニション・オフ状態で作動する。プレ空調時は、空調の消費電力を最小限にするために基本的に内気循環モード(REC)で運転を行なう。プレ空調時の冷房運転は、コンプレッサ9をオンし、PTCヒータ12と電動ウォータポンプ11はオフする。プレ空調時の暖房運転はコンプレッサ9をオフし、PTCヒータ12と電動ウォータポンプ11をオンする。プレ空調の設定の有無や風量や設定温度や吹出口の数等の空調状態は、表示ユニット21に表示される。
【0025】
尚、
図1では、温水を加熱するPTCヒータを用いたが、ヒータコア10の位置に設けられた、空気を直接加熱するPTCヒータを用いてもよい。また、車両用空調装置は、冷暖房空調ユニット4内に1つの室内熱交換器を備えた冷却システムを用いたが、冷暖房空調ユニット4内に複数の熱交換器を配置する冷却システムを用いてもよい。
【0026】
(A/Cコントローラの制御)
次に、
図2〜5の制御フローチャートを参照して、本発明の車両用空調装置の制御部であるA/Cコントローラ20による制御内容を説明する。尚、特に限定されないが、本実施形態では、A/Cコントローラ20は、CPUと、作業用RAMと、不揮発性メモリであるEEPROMと、入出力インタフェースとを備えたマイクロプロセッサで構成されている。そして、CPUがEEPROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、A/Cコントローラ20の制御機能が実現されている。
【0027】
図2において、まず、ステップS210で制御を開始すると、ステップS220では、A/Cコントローラ20は各センサの検出値を読み込む。具体的には、A/Cコントローラ20は、外気温センサ15から外気温度を検出し、室温センサ16から車室内温度を検出し、日射センサ17から日射量を検出する。
【0028】
ステップS230では、A/Cコントローラ20は、イグニション・スイッチのポジションがオンか否かを判断する。イグニションがオンならば、通常の空調制御を行なうためにステップS240に進む。イグニションがオフならばステップS310に進む。尚、電気自動車においては、内燃機関の点火がないので、イグニッション・スイッチの代わりに、駆動用バッテリから電力を供給する電源をオン・オフするスイッチが設けられている。しかし、従来の内燃機関自動車からの慣習で、電源をオン・オフするスイッチもイグニッション・スイッチと呼んでいるので、本実施形態でも電源をオン・オフするスイッチをイグニッション・スイッチと呼ぶ。
【0029】
ステップS240では、イグニションがオフからオンに切り替えられた直後が否かを判断する。イグニションがオフからオンに切り替えられた直後ならば、ステップS250に進む。イグニションがオフからオンに切り替えられた直後でなければ、ステップS270に進む。
【0030】
ステップS250では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9がオンされたことを表すためのフラグFcomp・onを0にリセットして、ステップS260に進む。
【0031】
ステップS260では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9の積算運転時間をカウントするためのタイマーTcomp・onを0にリセットして、ステップS270に進む。
【0032】
ステップS270では、A/Cコントローラ20は、通常の空調制御を行なう。ここで、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9、PTCヒータ12、電動ウォータポンプ11、ブロアファン5、エアミックスドア13、インテークドア3、及び吹出口14を制御して室内を設定温度に温度調整する。
【0033】
ステップS280では、A/Cコントローラ20は、室内熱交換器6を吸熱器とする運転でコンプレッサ9をオンしたか否かを判断する。室内熱交換器6を吸熱器として運転した場合には、ステップS290に進む。室内熱交換器6を吸熱器として運転していない場合には、ステップS220に戻って、制御を繰り返す。
【0034】
ステップS290では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9がオンされたことを表すためのフラグFcomp・onに1をセットして、ステップS300に進む。
【0035】
ステップS300では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9の積算運転時間をカウントするためのタイマーTcomp・onをカウントアップして、ステップS220に戻って、制御を繰り返す。
【0036】
ステップS230でイグニションがオフと判定された場合には、ステップS310に進む。
【0037】
ステップS310では、A/Cコントローラ20は、プレ空調を開始するか否かを判断する。まず、A/Cコントローラ20は、プレ空調が設定されているか否かを判断する。プレ空調が設定されていない場合には、ステップS220に戻って、制御を繰り返す。プレ空調が設定されている場合には、A/Cコントローラ20は、プレ空調を開始するか否かを判断する。具体的には、A/Cコントローラ20は、外気温センサ15による外気温度または室温センサ16による室内温度と、日射センサ17による日射量とに基づいて、プレ空調により車室内温度を設定温度とするのに必要な時間を計算する。このプレ空調に必要な時間の計算方法は、特開平8−230441号公報等により公知であるので、詳細は省略する。そして、A/Cコントローラ20が内蔵する時計が示す現在時刻が、出発予定時刻からプレ空調に必要な時間まで遡った時刻に達すると、A/Cコントローラ20は、プレ空調を開始すると判断する。プレ空調を開始すると判断した場合は、ステップS320に進む。プレ空調を開始すると判断しない場合は、ステップS220に戻って、制御を繰り返す。
【0038】
ステップS320では、A/Cコントローラ20は、ステップS220で検出した、外気温度または室内温度と、日射量と、A/Cコントローラ20の設定温度とに基づいて、目標吹出温度XMを演算する。
【0039】
ステップS330では、A/Cコントローラ20は、ステップS320で演算した目標吹出温度XMとステップS220で検出した外気温度Tambとの温度差(XM−Tamb)に基づいて、暖房運転(H)か冷房運転(C)かの運転状態を選択する。ステップS330中のグラフに示すように、温度差(XM−Tamb)が所定値ΔT2より大きい場合には、暖房運転(H)が選択される。温度差(XM−Tamb)が所定値ΔT1より小さい場合には、冷房運転(C)が選択される。さらに、一旦、暖房運転(H)が選択された場合には、温度差(XM−Tamb)が所定値ΔT1に達するまでは暖房運転(H)が継続される。一旦、冷房運転(C)が選択された場合には、温度差(XM−Tamb)が所定値ΔT2に達するまでは冷房運転(C)が継続される。このように、運転状態の選択には、ヒステリシス特性を持たせてある。この特性は、目標吹出温度が外気温度に近い状態において、頻繁に暖房運転と冷房運転が切り替わることを防止するためである。
【0040】
ステップS340では、ステップS330で選択された運転状態に応じて、ステップS350又はS440に進む。具体的には、暖房運転(H)が選択された場合にはステップS350に進む(
図3)。冷房運転(C)が選択された場合にはステップS440に進む(
図4)。
【0041】
ステップS350では、A/Cコントローラ20は、暖房運転開始直後か否かを判断する。暖房運転開始直後ならば、ステップS360に進む。暖房運転開始直後でなければ、ステップS370に進む。
【0042】
ステップS360では、A/Cコントローラ20は、プレ空調時の暖房運転時間を計測するためのタイマーThotを0にリセットする。タイマーThotの計測値は、プレ空調時の暖房運転における内気循環モードと外気導入モードとの切り替え判断に使用される。
【0043】
ステップS370では、A/Cコントローラ20は、プレ空調時の暖房運転時間を計測するためのタイマーThotをカウントアップし、ステップS380に進む。
【0044】
ステップS380では、A/Cコントローラ20は、タイマーThotが0〜Δt1の間である第1所定時間の間にあるか否かを判断する。タイマーThotが0〜Δt1の第1所定時間の間にある場合には、内気循環モードで暖房運転を行うためにステップS420に進む。タイマーThotが0〜Δt1の第1所定時間の間にない場合には、ステップS390に進む。
【0045】
ステップS390では、A/Cコントローラ20は、タイマーThotがΔt1〜(Δt1+Δt2)の間である第2所定時間の間にあるか否かを判断する。タイマーThotがΔt1〜(Δt1+Δt2)の第2所定時間の間にある場合には、ステップS410に進む。タイマーThotがΔt1〜(Δt1+Δt2)の第2所定時間の間にない場合、すなわちタイマーThotが(Δt1+Δt2)を超えている場合には、ステップS400に進む。
【0046】
ステップS400では、A/Cコントローラ20は、第1所定時間(Δt1)の内気循環モードと第2所定時間(Δt2)の外気導入モードによる1サイクルが終了したので、プレ空調時の暖房運転時間を計測するためのタイマーThotを0にリセットする。
【0047】
ステップS410では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9がオンされたことを表すためのフラグFcomp・onの値は1であるか否かを判定する。Fcomp・onの値が1である場合には、コンプレッサ9をオンして室内熱交換器6を吸熱器として運転していたため、室内熱交換器6に付着する凝結水(ドレーン)が蒸発して窓曇りが発生する可能性がある。それゆえ、Fcomp・onの値が1である場合には、窓曇りを回避するためにステップS430に進む。ステップS430では、A/Cコントローラ20は、外気導入モード(FRE)、デフロスタ(DEF)吹出、ブロアファン高速回転(HI)で車両用空調装置を運転する。Fcomp・onの値が0である場合には、室内熱交換器6を吸熱器として運転していないので、室内熱交換器6の表面に付着する凝結水の蒸発によって窓曇りが発生する可能性は低い。それゆえ、Fcomp・onの値が0である場合には、ステップS420に進む。ステップS420では、A/Cコントローラ20は、内気循環モード(REC)、設定温度25℃、オートモード(AUTO)の設定で車両用空調装置の運転を行なう。
【0048】
ステップS380からステップS410の条件判断により、プレ空調時の暖房運転中、A/Cコントローラ20は、第1所定時間(Δt1)の間はステップS420の内気循環モードの運転とし、第2所定時間(Δt2)の間はステップS430の外気導入モードの運転とする切替えを交互に繰り返す。このため、プレ空調中に車室内の湿気が車外へ排出されるので、プレ空調の途中で乗員が車両に乗り込んでも窓曇りの発生が無い状態を維持することが可能になる。
【0049】
ステップS380やステップS390のΔt1やΔt2は、後述の
図5のフローチャートに示すように、コンプレッサ9の積算運転時間をカウントするためのタイマーTcomp・onや日射量(Qsun )や外気温度(Tamb )に応じて補正される。
【0050】
なお、本実施形態ではFcomp・onの値が0である場合にはステップS420に進んで、内気循環モード(REC )、設定温度25℃、オートモード(AUTO)の設定で車両用空調装置の運転を行なうとしたが、Fcomp・onの値が0である場合にもステップS430に進んでもよい。すなわち、ステップS410のFcomp・onの判定結果にかかわらず、ステップS430に進んで、A/Cコントローラ20は、外気導入モード(FRE)、デフロスタ(DEF)吹出、ブロアファン高速回転(HI)で運転してもよい。
【0051】
また、ステップS420では、設定温度25℃のオートモード(AUTO)運転としたが、乗員がプレ空調時の出発予定時刻を設定する際に、設定温度を任意に設定してもよい。この場合には、ステップS420及び後述するステップS470の設定温度は、乗員が設定した温度となる。
【0052】
また、ステップS430では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9をオンしていないが、コンプレッサ9をオンして室内熱交換器6で除湿しながら運転すれば、Δt2を短縮し、さらに確実に窓曇りを除去する効果を得ることができる。
【0053】
ステップS440では、A/Cコントローラ20は、室内熱交換器6を吸熱器とする運転でコンプレッサ9をオンしたか否かを判断する。室内熱交換器6を吸熱器として運転した場合には、ステップS450に進む。室内熱交換器6を吸熱器として運転していない場合には、ステップS470に進む。
【0054】
ステップS450では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9がオンされたことを表すためのフラグFcomp・onに1をセットして、ステップS460に進む。
【0055】
ステップS460では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9の積算運転時間をカウントするためのタイマーTcomp・onをカウントアップし、ステップS470に進む。タイマーTcomp・onはステップS260でイグニッション・オン直後のみ0にリセットされるので、ステップS460では、A/Cコントローラ20は、プレ空調開始前(イグニッション・オフ前)の値からカウントアップを始める。これにより、A/Cコントローラ20は、通常運転時とその後のプレ空調時で室内熱交換器6を吸熱器として運転した時間を積算することができる。
【0056】
ステップS470では、A/Cコントローラ20は、内気循環モード(REC)、設定温度25℃、オートモード(AUTO)の設定で車両用空調装置の運転を行なう。
【0057】
(Δt1(第1所定時間)とΔt2(第2所定時間)の補正)
図5は、ステップS380やステップS390のΔt1(第1所定時間)やΔt2(第2所定時間)の補正のフローを示している。
【0058】
ステップS510では、A/Cコントローラ20は、Δt1の初期値となる時間を設定する。ここではΔt1=10分を設定する。ステップS520では、Δt2の初期値となる時間を設定する。ここではΔt2=5分を設定する。
【0059】
ステップS530では、A/Cコントローラ20は、コンプレッサ9の積算運転時間をカウントしたタイマーTcomp・onに応じて、Δt1の補正値α1(t1)と、Δt2の補正値α1(t2)を算出する。タイマーTcomp・onが大きくなると室内熱交換器6に付着する凝結水(ドレーン)量が増えるので、タイマーTcomp・onの増加にしたがってΔt1が小さく、Δt2が大きくなるように補正値を設定している。本実施形態では、コンプレッサ積算運転時間タイマーTcomp・onを30分未満、30分以上60分未満、60分以上の3区分により、予めテーブルに記憶した補正値を選択するようにしたが、3区分に限らず他の数による区分でもよい。また、予め記憶した計算式に基づいて、タイマーTcomp・onの値から補正値を計算してもよい。
【0060】
ステップS540では、A/Cコントローラ20は、ステップS220で検出した日射量(Qsun)に応じてΔt1の補正値α2(t1)とΔt2の補正値α2(t2)を算出する。日射量が増えれば窓曇りは発生し難くなるので、日射量の増加にしたがってΔt1が大きく、Δt2が小さくなるように補正値を設定している。本実施形態では、日射量(Qsun)を300W/m2未満、300W/m2以上500W/m2未満、500W/m2以上の3区分により、予めテーブルに記憶した補正値を選択するようにしたが、3区分に限らず他の数による区分でもよい。また、予め記憶した計算式に基づいて、日射量(Qsun)の値から補正値を計算してもよい。
【0061】
ステップS550では、A/Cコントローラ20は、ステップS220で検出した外気温度(Tamb)に応じてΔt1の補正値α3(t1)とΔt2の補正値α3(t2)を算出する。外気温が低下すると窓曇りが発生しやすくなるので、外気温の低下にしたがってΔt1が小さく、Δt2が大きくなるように補正値を設定している。本実施形態では、外気温度(Tamb)を5℃未満、5℃以上20℃未満、20℃以上25℃未満、25℃以上の4区分により、予めテーブルに記憶した補正値を選択するようにしたが、4区分に限らず他の数による区分でもよい。また、予め記憶した計算式に基づいて、外気温度(Tamb)の値から補正値を計算してもよい。
【0062】
ステップS560では、A/Cコントローラ20は、ステップS530からステップS550で演算した補正値を使ってΔt1(第1所定時間)を補正する。 ステップS570では、A/Cコントローラ20は、ステップS530からステップS550で演算した補正値を使ってΔt2(第2所定時間)を補正する。
【0063】
本実施形態では、プレ空調時に車室内の暖房要求がある場合には、インテークドアを制御して、第1所定時間の間は内気循環モードとし、第2所定時間の間は外気導入モードとする切替を交互に行わせるようにした。このため、予め設定した出発予定時刻前に乗員が車両に乗り込んでも、窓曇りがなく、直ちに車両を発車させることができるという効果を奏することができる。
【0064】
本実施形態では、第1所定時間の初期値は、記第2所定時間の初期値より長くなるように設定した。このため、基本動作を内気循環モードとすることができ、換気熱損失を低減し、電力消費を抑制することができるという効果がある。
【0065】
本実施形態にでは、プレ空調制御手段は、車室内温度または外気温度と、出発予定時刻とに基づいて加熱手段の作動開始時刻を決定するようにした。このため、湿度センサや湿度検出値を用いた判断制御ロジックを設けることなく、窓曇りの無いプレ空調を提供することができるという効果がある。
【0066】
本実施形態では、イグニッション・オフ前又はプレ空調中に冷却手段を運転する場合にのみ、外気導入モードの運転を行うようにした。このため、室内熱交換器表面の凝結水による窓曇りも防止し、かつ、凝結水がない場合には、換気熱損失を低減し、電力消費を抑制することができるという効果がある。
【0067】
本実施形態では、イグニッション・オフ前及びプレ空調中の冷却手段の累積運転時間に応じて、第1所定時間と第2所定時間とを補正するようにした。このため、室内熱交換器に付着した液水の量に応じて、内気循環モードの運転時間と、外気導入モードの運転時間とを補正することができ、換気熱損失を低減し、電力消費を抑制することができるという効果がある。
【0068】
本実施形態では、日射センサが検出した日射量に応じて、第1所定時間と第2所定時間とを補正するようにした。このため、日射量が多くて窓曇りが発生し難い条件では、内気循環モードの運転時間を長く、外気導入モードの運転時間を短く補正することができ、更に換気熱損失を低減し、電力消費を抑制することができるという効果がある。
【0069】
本実施形態では、外気温センサが検出した外気温度に応じて、第1所定時間と第2所定時間とを補正するようにした。このため、外気温度が低く、窓曇りが発生し易い条件では、内気循環モードの運転時間を短く、外気導入モードの運転時間を長く補正し、確実に窓曇りの防止が図れるとともに、換気熱損失を低減し、電力消費を抑制することができるという効果がある。
【0070】
本発明によれば、空調時に暖房を行っても窓曇りが発生せず、出発予定時刻前に乗車しても直ちに車両を動かすことができる車両用空調装置及び車両用空調方法を提供することができるという効果がある。
【0071】
本発明の車両用空調装置及び車両用空調方法は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することが可能である。
【0072】
本出願は、2012年9月14日に出願された日本国特許願第2012−202339号に基づく優先権を主張しており、これらの出願の全内容がここに援用される。