(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の係合要素を係合して所定の変速段を達成する変速機構の入力側に設けられた回転電機を回生させた回生状態にて前記変速機構を変速する際に、前記回転電機の回生制動力を伝達可能な状態を維持したまま前記変速機構の変速を行うように前記変速機構を制御する車輌用駆動装置の制御装置であって、
前記回生状態で前記変速機構の変速を行うに際し、変速後の目標変速段が現在変速段から複数段離れている場合、現在変速段で係合し変速後の変速段で解放する係合要素又は現在変速段で解放し変速後の変速段で係合する係合要素に発生する発熱量を前記回生制動力に基づいて予測し、前記現在変速段と前記目標変速段との間で現在の変速段から複数段離れている変速段へ変速する飛び変速の実行が許可可能であるか否かを前記発熱量に基づいて判断し、前記飛び変速の実行が許可可能である場合、この飛び変速を実行しつつ前記現在変速段から前記目標変速段へと変速するように前記変速機構を制御する、
ことを特徴とする車輌用駆動装置の制御装置。
前記発熱量が、各係合要素に応じて設定された発熱量制限値以下の場合に、前記飛び変速の実行が許可可能であると判断し、前記発熱量制限値より大きい場合、前記飛び変速の実行を不許可とする、
請求項1記載の車輌用駆動装置の制御装置。
変速前までの累積の熱収支に基づき、前記発熱量が予測される係合要素の現在温度を演算すると共に、この演算した現在温度及び前記発熱量に基づいて、変速中における前記発熱量が予測される係合要素の推定温度を求め、
前記推定温度が、各係合要素ごとに設定された許容温度以下の場合、前記飛び変速の実行が許可可能であると判断し、前記許容温度より大きい場合、前記飛び変速の実行を不許可とする、
請求項1又は2記載の車輌用駆動装置の制御装置。
前記飛び変速の実行が許可可能であるか否かを判断するに際し、前記現在変速段から前記目標変速段へ直接変速する飛び変速から始まって、前記現在変速段から飛び変速後の変速段までの変速段差を1段ずつ少なくしていきながら前記飛び変速の実行が許可可能であるか否かを判断してゆき、最初に許可可能と判断された飛び変速を、前記現在変速段から飛び変速後の変速段までの変速段差が最も大きな飛び変速とする、
請求項5又は6記載の車輌用駆動装置の制御装置。
前記飛び変速が、前記現在変速段を形成している1つの係合要素を掴み換える飛び変速である場合、前記1つの係合要素を掴み換える際に前記回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ係合要素の発熱量を算出し、この算出した発熱量から前記1つの係合要素の掴み換えが実行可能と判断できる場合に、この飛び変速の実行を許可する、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の車輌用駆動装置の制御装置。
前記飛び変速が、前記現在変速段を形成している2つの係合要素の両方を掴み換える飛び変速である場合、これら2つの係合要素のそれぞれを掴み換える際に前記回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ各係合要素の発熱量を算出し、この算出した各発熱量から前記2つの係合要素のいずれの掴み換えもが実行可能と判断できる場合に、この飛び変速の実行を許可する、
請求項1乃至8のいずれか1項記載の車輌用駆動装置の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特開2008−94253号公報記載のハイブリッド車輌は、飛びダウンシフト変速の変速中は、回転電機による回生を禁止し、摩擦ブレーキによって変速中の減速度を確保している。そのため、上記変速中の運動エネルギを回収することができず、エネルギ効率が低下するという問題があった。
【0006】
一方、上記問題を解決するためには、特開2011−213252号公報記載のハイブリッド車輌のように、変速に係る係合要素をスリップ係合させて回生を行いながら変速を行うことも考えられる。しかしながら、この場合、係合側の係合要素がイナーシャ相中の回転制動力を受け持つためスリップ係合時の発熱が大きいと共に、飛び変速の場合、変速の前後で自動変速機の入力軸の回転速度差が大きく、通常のダウンシフト変速と比較して変速時間も長くなってしまうため、係合要素に発生する発熱量が大きくなるという問題があった。
【0007】
また、ダウンシフト変速のみならずアップシフト変速についても、例えば、アクセルを踏み込んだ状態からアクセルをオフしてブレーキを踏みこんだ場合など、制動力を確保しながら飛びアップシフト変速を行いたい状態がある。この場合についても、エネルギ効率の観点から特開2011−213252号公報のように、回転電機を回生しつつこの回転電機の回生によって車輌に制動力を発揮したい。しかしながら、上述したように飛び変速は、変速に要する時間が長く、イナーシャ相中も回転制動力を受け持つ解放側の係合要素に発生する発熱量が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、係合要素を必要以上に発熱させないで効率良く回転電機に回生を実行させて車輌用駆動装置のエネルギ効率を向上させる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)は、複数の係合要素を係合して所定の変速段を達成する変速機構(6)の入力側に設けられた回転電機(3)を回生させた回生状態にて前記変速機構(6)を変速する際に、前記回転電機(3)の回生制動力を伝達可能な状態を維持したまま前記変速機構(6)の変速を行うように前記変速機構(6)を制御する車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)であって、
前記回生状態で前記変速機構(100)の変速を行うに際し、変速後の目標変速段が現在変速段から複数段離れている場合、現在変速段で係合し変速後の変速段で解放する係合要素又は現在変速段で解放し変速後の変速段で係合する係合要素に発生する発熱量を
前記回生制動力に基づいて予測し、前記現在変速段と前記目標変速段との間で現在の変速段から複数段離れている変速段へ変速する飛び変速の実行が許可可能であるか否かを前記発熱量に基づいて判断し、前記飛び変速の実行が許可可能である場合、この飛び変速を実行しつつ前記現在変速段から前記目標変速段へと変速するように前記変速機構(6)を制御する、ことを特徴とする。
【0010】
従って、係合要素の発熱量が大きいために許可できない飛び変速については変速を実行せずに、発熱量の問題の無い飛び変速のみ実行することができる。これにより、変速時に掴み換えを行う係合要素の熱負荷が過大になることを防止することができると共に、できる限り飛び変速を行って変速回数を少なくすることができ、変速の際のエネルギ損失を低減することができる。また、早い時点にて効率の良い回転速度の範囲にて回転電機の回生をさせることができることとも相俟って、車輌用駆動装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0012】
また、前記発熱量が、各係合要素(C−1〜C−3,B−1,B−2,F−1)に応じて設定された発熱量制限値以下の場合に、前記飛び変速の実行が許可可能であると判断し、前記発熱量制限値より大きい場合、前記飛び変速の実行を不許可とすると好適である。
【0013】
このように、各係合要素に応じて発熱量制限値を設定し、予測演算した掴み換え変速を行う係合要素の発熱量が、この発熱量制限値より大きいか否かを判断することによって、1回の変速中の発熱量に基づいて容易に飛び変速の実行の可否を判断することができる。
【0014】
更に、変速前までの累積の熱収支に基づき、前記発熱量が予測される係合要素の現在温度を演算すると共に、この演算した現在温度及び前記発熱量に基づいて、変速中における前記発熱量が予測される係合要素の推定温度を求め、
前記推定温度が、各係合要素ごとに設定された許容温度以下の場合、前記飛び変速の実行が許可可能であると判断し、前記許容温度より大きい場合、前記飛び変速の実行を不許可とすると好適である。
【0015】
このように、推定温度を求める際に、変速前までの累積の熱収支に基づいて演算した係合要素の現在温度を考慮することによって、正確な変速中の係合要素の温度を推定することができ、正確に飛び変速の実行が可能か否かを判断することができる。
【0016】
また、車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)は、前記回転電機(3)が前記変速機構(6)に生じさせることの可能な最大回転変化加速度を求め、この最大回転変化加速度と変速前後の前記変速機構の回転速度差とから変速に必要な所
要時間を求め、この所
要時間が所定の変速制限時間よりも長い場合、演算した変速の実行を不許可とすると好適である。
【0017】
このように、制御装置が、この飛び変速に必要な所
要時間が所定の変速制限時間よりも長い場合、演算した飛び変速の実行を不許可とすると、変速時間が長くなってドライバビリティを損なうことを防止することができる。
【0018】
本発明に係る車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)は、複数の係合要素を係合して所定の変速段を達成する変速機構(6)の入力側に設けられた回転電機(3)を回生させた回生状態にて前記変速機構(6)を変速する際に、前記回転電機(3)の回生制動力を伝達可能な状態を維持したまま前記変速機構(6)の変速を行うように前記変速機構(6)を制御する車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)であって、
前記回生状態で前記変速機構(100)の変速を行うに際し、変速後の目標変速段が現在変速段から複数段離れている場合、現在変速段で係合し変速後の変速段で解放する係合要素又は現在変速段で解放し変速後の変速段で係合する係合要素に発生する発熱量を予測し、前記現在変速段と前記目標変速段との間で現在の変速段から複数段離れている変速段へ変速する飛び変速の実行が許可可能であるか否かを前記発熱量に基づいて判断し、前記飛び変速の実行が許可可能である場合、この飛び変速を実行しつつ前記現在変速段から前記目標変速段へと変速するように前記変速機構(6)を制御し、
実行を許可可能な前記飛び変速が複数ある場合、これら許可可能な複数の飛び変速の内、前記現在変速段から飛び変速後の変速段までの変速段差が最も大きくなる飛び変速を実行してゆ
く、ことを特徴とする。
また、前記発熱量は、前記回生制動力に基づいて予測されると好適である。
【0019】
このように、複数の飛び変速の実行を許可可能な場合、変速段差の最も大きな飛び変速を実行することによって、少ない変速回数で迅速に目標の変速段へと変速を行うことができる。
【0020】
また、車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)は、前記飛び変速の実行が許可可能であるか否かを判断するに際し、前記現在変速段から前記目標変速段へ直接変速する飛び変速から始まって、前記現在変速段から飛び変速後の変速段までの変速段差を1段ずつ少なくしていきながら前記飛び変速の実行が許可可能であるか否かを判断してゆき、最初に許可可能と判断された飛び変速を、前記現在変速段から飛び変速後の変速段までの変速段差が最も大きな飛び変速とすると好適である。
【0021】
このように、現在変速段から目標変速段へ直接変速する飛び変速から変速段差を1段ずつ少なくしていって飛び変速の実行を許可可能であるか否かを判断してゆくと、最初に実行を許可できる飛び変速を変速段差の最も大きな飛び変速であると確実にかつ容易に判断することができる。
【0022】
更に、車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)は、前記飛び変速が、前記現在変速段を形成している1つの係合要素を掴み換える飛び変速である場合、前記1つの係合要素を掴み換える際に前記回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ係合要素(例えば6−2変速の場合、C−1)の発熱量を算出し、この算出した発熱量から前記1つの係合要素の掴み換えが実行可能と判断できる場合に、この飛び変速の実行を許可すると好適である。
【0023】
これにより、発熱量の大きくなる係合要素の発熱量に基づいて、確実に変速の実行を許可できるか否かを判断することができる。
【0024】
また、車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)は、前記飛び変速が、前記現在変速段を形成している2つの係合要素の両方を掴み換える飛び変速である場合、これら2つの係合要素のそれぞれを掴み換える際に前記回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ各係合要素(例えば6−1変速の場合、C−1及びB−2)の発熱量を算出し、この算出した各発熱量から前記2つの係合要素のいずれの掴み換えもが実行を許可可能と判断できる場合に、この飛び変速の実行を許可すると好適である。
【0025】
これにより、現在変速段を形成している2つの係合要素の両方を掴み換える飛び変速であっても、確実に変速の実行を許可できるか否かを判断することができる。
【0026】
更に、前記回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ係合要素は、
前記飛び変速がアップシフト変速の場合は、解放側の係合要素(例えば1−6変速の場合、C−1及びB−2)であり、
前記飛び変速がダウンシフト変速の場合は、係合側の係合要素(例えば6−1変速の場合、C−1及びB−2)であると好適である。
【0027】
これにより、回生制動力を伝達するだけのトルク容量を持つために変速中の発熱量の大きな係合要素の発熱量に基づいて、確実に変速の実行を許可可能であるか否かを判断することができる。
【0028】
また、車輌用駆動装置(100)の制御装置(10)は、
前記回転電機が前記変速機構に生じさせることの可能な最大回転変化加速度と変速前後の前記変速機構の回転速度差とから求められる変速に必要な所
要時間、前記変速前後の変速機構(6)の回転速度差及び前記
発熱量の演算が行われる係合要素(C−1〜C−3,B−1,B−2,F−1)
が掴み換えの際に受け持つ前記回生制動力に相当するトルク容量に基づいて前記発熱量を算出すると好適である。
【0029】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態に係る車輌用駆動装置の制御装置について図面に沿って説明をする。なお、以下の説明において、駆動連結とは、互いの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、これら回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いはこれら回転要素がクラッチ等を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いる。また、飛び変速とは、現在の変速段から複数段離れている変速段へ変速する変速をいうこととする。
【0032】
<第1の実施の形態>
<ハイブリッド駆動装置の概略構成>
図1及び
図2に示すように、ハイブリッド車輌(以下、単に車輌という)1は、駆動源として、内燃エンジン2の他に、回転電機(以下、モータジェネレータもしくは単にモータという)3を有している。この車輌1のパワートレーンを構成する車輌用駆動装置としてのハイブリッド駆動装置100は、ワンモータ型のハイブリッド駆動装置であり、上記内燃エンジン2と車輪4との間の伝達経路上に配設された変速機構6と、該変速機構6と内燃エンジン2との間の入力部5と、を有して構成されている。
【0033】
変速機構6は、
図2に示すように複数の係合要素(より具体的には複数の摩擦係合要素)C−1〜C−3,B−1,B−2,F−1を有し、これら複数の係合要素の係合(本実施の形態においては掴み換え)によって変速歯車機構SP,PUの伝達経路を変更して複数の変速段を達成する多段式自動変速機(有段式自動変速機)によって構成されている。
【0034】
また、入力部5は、モータ3と、エンジン接続用クラッチK0とを有して構成されており、エンジン接続用クラッチK0は、エンジン2のクランク軸と駆動連結するエンジン連結軸9と変速機構6の入力軸11との間の動力伝達を断接するように構成されている。更に、モータ3は、上記変速機構6の入力側(動力伝達経路上、駆動車輪4と駆動連結する側とは反対側)に配設されており、変速機構6の入力軸11に駆動連結されている。
【0035】
このため、ハイブリッド駆動装置100は、内燃エンジン2及びモータ3の両方を駆動させて車輌を走行させる場合には、制御部(ECU、制御装置)10によって油圧制御装置12を制御してクラッチK0を係合させ、車輪側の伝達経路に駆動連結されたモータ3の駆動力だけで走行するEV走行時には、クラッチK0を解放して、内燃エンジン2側の伝達経路と車輪側の伝達経路とを切り離すようになっている。
【0036】
また、制御部10には、モータ3と同回転となる変速機構6の入力軸11の回転速度を検出する入力軸回転速度センサ13、変速機構6の出力軸14の回転速度を検出する車速センサ15、アクセル開度センサ16、ブレーキセンサ17などのセンサ類が通信可能に接続されている。制御部10は、アクセル開度センサ16が検出したアクセル開度、ブレーキセンサ17が検出したブレーキの踏み込み量、車速センサ15が検出した出力軸14の回転速度(車速)に基づき、上記油圧制御装置12を制御して変速機構6の摩擦係合要素C−1〜C−3,B−1,B−2を係脱させ、変速機構6の変速段を切換える。
【0037】
<変速機構の構成>
ついで、変速機構6の具体的構成について説明をする。
図2に示すように、変速機構6には、入力軸11上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
【0038】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0039】
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、ミッションケース18に対して固定されており、また、上記リングギヤR1は、上記入力軸11に駆動連結されて、該入力軸11の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチC−1及びクラッチC−3に接続されている。
【0040】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、ブレーキB−1に接続されてミッションケース18に対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
【0041】
更に、上記キャリヤCR2は、入力軸11の回転が入力されるクラッチC−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキB−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース18に対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、カウンタギヤに接続されており、該カウンタギヤは、カウンタシャフト、ディファレンシャル装置を介して駆動車輪4(
図1参照)に接続されている。
【0042】
上記構成の変速機構6は、
図2のスケルトン図に示す各クラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1,B−2、ワンウェイクラッチF−1が、
図3の係合表に示すように係脱されることにより、前進1速段(1st)〜前進6速段(6th)、及び後進1速段(Rth)を達成し、入力軸11に入力された回転を各変速段で変速して車輪4に出力する。
【0043】
<回生状態における変速の背景>
ところで、上述したモータ3が搭載されたハイブリッド駆動装置100では、できる限りモータ3によって回生して運動エネルギを電気エネルギに変換して回収し、エネルギ効率の向上を図りたい。この時、モータ3は、最も回生効率の良い回転速度の範囲にて回生することが望ましく、また、ドライバビリティの観点から、等パワーライン上でモータ3を回生させることが望ましい。従って、モータ3の回生は、高回転域で実行されることが望ましい。
【0044】
一方、変速機構6の引き摺りトルクは、入力軸11の回転数が高い程増加する。このため、モータ3が入力側に配設された変速機構6の変速マップは、
図4に示すように、回生要求がない場合には、高ギヤ段を選択して入力軸11の回転を低回転とし、回生要求がある場合には、低ギヤ段を選択して入力軸11を高回転とするように変速点が設定され、回生要求の有無に応じて目標変速段が変化するようになっている。
【0045】
従って、ブレーキペダルが踏み増されて回生要求が増加すると、変速機構6は、モータ3を効率の良い回転速度域にて回生させるために、モータ3の回生を行いながら複数段を跨いでダウンシフト変速する必要がある場合がある(
図4の矢印A参照)。また、アップシフト変速側についても、図中矢印Bに示すように、アクセルが踏み込まれている状態からアクセルが離された際に制動要求がある場合、モータ3にて回生を行いつつ複数の変速段を跨いでアップシフト変速を行う必要がある場合がある。
【0046】
ここで、上記モータ3の回生を行いながら行うダウンシフト変速である回生ダウンシフト変速、モータ3の回生を行いながら行うアップシフト変速である回生アップシフト変速のいずれにおいても、変速後の目標変速段が現在変速段から複数段離れている場合、回生効率の向上やドライバビリティの向上のため、できる限り少ない変速回数にて目標変速段へと変速を行いたいという要望がある。
【0047】
そのため、変速後の目標変速段が現在変速段から複数段離れている場合には、1段ずつ変速を行わずに変速段を飛ばして変速を行う飛び変速を実行することが考えられるが、この飛び変速を実行するにあたり、上記回生状態における変速の場合、以下のような問題がある。
【0048】
即ち、変速機構6の入力側に設けられたモータ(回転電機)3を回生させた回生状態にて変速機構6を変速する場合、モータ3の回生力によって車輌の制動力を確保している。このため、制御部10は、モータ3の回生制動力を伝達可能な状態を維持したまま、摩擦係合要素の掴み換えを行うように変速機構6を制御している。
【0049】
具体的には、
図5(a)に示すように、回生ダウンシフト変速においては、イナーシャ相において、係合側の摩擦係合要素のトルク容量を回生制動力に相当する値T1まで上昇させて変速を行っている。また、
図5(b)に示すように、回生アップシフト変速においては、イナーシャ相において、解放側の摩擦係合要素のトルク容量TRを回生制動抜けが許される範囲T2で下げ、回転数変化を実現しながら変速を行なっている。
【0050】
このように、最大でもエンジンフリクショントルク分しか負トルクが発生しない従来型の車輌用駆動装置(モータを有していない車輌用駆動装置)に比して、モータ3が回生状態の場合の変速は、回生によるモータ3の負トルク分だけ高負トルク下で変速を実施することとなる。即ち、上記回生ダウンシフト変速の場合にあっては、イナーシャ相における係合側の摩擦係合要素のトルク容量がモータ3の負トルク分だけ、従来型の車輌用駆動装置に比して高くなっている。また、回生アップシフト変速においては、解放側の摩擦係合要素がイナーシャ相中においてトルク容量を持たない従来型の車輌用駆動装置に比して、イナーシャ相中において解放側の摩擦係合要素が制動力に相当するトルク容量を持っている。
【0051】
このため、掴み換えを行う摩擦係合要素が回生制動力を車輪4に伝達することが可能な上記回生制動力に相当するトルク容量を持った状態でスリップ回転をするため、イナーシャ相にて発生する発熱量が大きくなる。
【0052】
飛び変速は、変速を行うのに必要な変速機構6の入力軸11の変速前後の回転速度差が1段ずつ変速する通常の変速に比して大きいためイナーシャ相の時間が長く、通常の変速よりも変速に要する所
要時間が長くなる。従って、ただでさえ発生する発熱量が増大している上に、飛び変速を行うことによってイナーシャ相が長くなると、上記掴み換え変速を行う摩擦係合要素の摩擦板に生じる発熱量が大きく、その温度が上昇する虞がある。
【0053】
そこで、本実施の形態に係る制御部10は、上記掴み換えを行う摩擦係合要素に過大な熱的な負荷が発生することを防止しつつ、できる限り変速回数を少なくし、トルク相における変速ロスを少なくして回生効率及びドライバビリティを向上させるように、回生変速中の変速機構6を制御している。以下、この回生変速中における制御部10の動作について、回生ダウンシフト変速の場合と、回生アップシフト変速の場合とに場合分けをして説明をする。
【0054】
<回生ダウンシフト変速>
図6(b)は、制御部10が飛びダウンシフト変速判断を実施する際に参照する飛びダウンシフト変速判断実施テーブルであり、この飛びダウンシフト変速実施テーブルには、制御部10が実施する可能性のある飛びダウンシフト変速の総てのパターンが記録されている。
【0055】
制御部10は、上記飛びダウンシフト変速判断実施テーブルに記載の総ての飛びダウンシフト変速について、実行を許可可能であるか否かを常時判断している。具体的には、制御部10は、
図7(a)に示すように、モータ3が現在出力可能な最大トルク及び最大パワー、変速後の入力軸11の回転数、現在のモータトルク、摩擦係合要素の入力側の回転部材に生じるイナーシャ(摩擦係合要素よりも入力側にて駆動系に連結されている回転要素の総イナーシャ)に基づいて変速機構6の入力軸11にモータ3が生じさせることの可能な最大回転変化加速度を算出する。
【0056】
即ち、制御部10は、最大回転変化加速度を算出する最大回転変化加速度算出部30として機能し、モータ最大パワーと変速後の回転速度とから変速後にモータ3が出力可能なモータトルクを算出する。また、インバータ制御によりモータ3が出力可能な最大トルクの値を取得し、これらモータ最大パワーから算出したモータトルクと取得したモータ最大トルクとの小さい方の値をモータ3の出力可能なトルク(即ち、回生制動力)とする。
【0057】
そして、制御部10は、上記モータ3の出力可能なトルクと、現在のモータトルクとからモータ3が出力可能な最大のイナーシャトルクを算出し、この最大のイナーシャトルクを、摩擦係合要素の入力側の回転部材に生じるイナーシャで除算することにより、変速機構6の入力軸11にモータ3が生じさせることの可能な最大回転変化加速度を算出する。
【0058】
また、各パターンの飛び変速の変速前後の入力軸11の回転速度は予め設定されているため、制御部10は、それぞれの飛び変速を行うのに必要となる入力軸11の回転速度差、即ち、変速前後の変速機構6の入力軸11の回転速度差を求めることができる(差回転算出部31)。そして、制御部10は、所
要変速時間算出部32として機能することによって、この変速前後の変速機構6の回転速度差を上記最大回転変化加速度で除算し、飛び変速を行うのに必要となる所
要変速時間(イナーシャ相の期間)を算出することができる。
【0059】
また、制御部10は、トルク容量算出部33としても機能し、エンジンのフリクショントルク(エンジンが動力伝達系につながっている場合のみ)とモータの駆動トルクとから変速機構6への入力トルクを算出し、この変速機構6への入力トルクに摩擦係合要素の分担比を乗算することによって、摩擦係合要素のトルク容量を算出する。
【0060】
そして、上記変速に必要な所
要時間、変速前後の変速機構の回転速度差及び摩擦係合要素のトルク容量が求まると、制御部10は発熱量算出部34として機能し、これら算出した変速の所要時間、変速前後の変速機構の入力軸11の回転速度差、摩擦係合要素のトルク容量に基づいて係合側の摩擦係合要素の発熱量を求めることができる。
【0061】
上記摩擦係合要素の発熱量を求めることができると、制御部10は、飛び変速の実行が許可可能である否かを判断する判断部36として機能し、この算出した発熱量が摩擦係合要素に応じて設定された発熱量制限値以下であるかを判断する(発熱量判断部37)。
【0062】
また、上記所
要変速時間が求まると制御部10は、この所
要変速時間がドライバビリティの観点から運転者に違和感を生じさせない長さに設定された変速制限時間以下であるかも判断する(変速時間判断部38)。そして、摩擦係合要素の発熱量が発熱量制限値以下でかつ、所
要変速時間が変速制限時間以下である飛び変速については変速の実行を許可し、上記発熱もしくは変速時間のいずれか1つの条件でも満たさない飛び変速のパターンについては変速の実行を不許可とする。
【0063】
ここで、
図6(a)に示すように、現在変速段が6速段で目標変速段が1速段である回生ダウンシフト変速の変速要求があった場合(S1のYES)、制御部10は、まず、現在変速段である6速段から目標変速段である1速段へと直接飛び変速が許可可能であるか否かの変速判断結果を参照する(S2)。そして、6−1変速が実行が許可可能であった場合(S2のYES)、制御部10はこの6−1変速を実行し(S3)、不許可の場合は(S2のNO)、現在変速段から目標変速段に向かって変速する際の変速段差が1段ずつ少なくように、6−2変速,6−3変速,6−4変速と実行可能な飛び変速があるか否かを判断して行く(S4〜S6)。
【0064】
制御部10は、上記飛び変速の実行の可否の判断において、許可可能な飛び変速が発見された場合、その飛び変速を実行し(S7〜S9)、その後、現在変速段が目標変速段になるまで、同様に許可可能な飛び変速がないか探しながら最も少ない変速回数で目標変速段(本実施の形態では1速段)まで変速を実行する。なお、実行が許可可能な飛び変速がない場合、制御部10は通常どおり変速段を1速段だけダウンシフト変速する(S10)。
【0065】
なお、
図6(b)において制御部10は、上記飛び変速の実行を許可可能であるか否かを判断するに際し、現在変速段を形成している1つの摩擦係合要素を掴み換える飛び変速(例えば6−2変速)である場合、この1つの摩擦係合要素の掴み換えにおいて回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ摩擦係合要素(例えばクラッチC1)の発熱量を算出する。そして、算出した発熱量及び変速の所
要時間に基づいて、上記摩擦係合要素の掴み換えが実行可能であることを判断した場合にのみ変速の実行を許可するようになっている。
【0066】
また、4要素掴み換え変速(例えば6−1変速)のように、現在変速段を形成している2つの摩擦係合要素の両方を掴み換える飛び変速である場合、制御部10は、各摩擦係合要素の掴み換えにおいて回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ摩擦係合要素、即ち変速時にスリップ回転しながら回生制動力を伝達する摩擦係合要素(例えばクラッチC1及びブレーキB2、以下、変速機構6の入力軸11の回転の回転変化を発生させる係合要素として主体側摩擦係合要素ともいう)の発熱量を算出する。そして、この算出した発熱量及び所
要時間に基づいて、上記2つの摩擦係合要素の掴み換えのいずれもが実行可能であることを判断した場合にのみ変速の実行を許可する。
【0067】
このため、制御部10は、発熱量の大きくなる摩擦係合要素の発熱量に基づいて、確実に変速の実行を許可できるか否かを判断することができると共に、現在変速段を形成している2つの摩擦係合要素の両方を掴み換える飛び変速であっても、確実に変速の実行を許可できるか否かを判断することができる。
【0068】
更に、上記
図6(a)においては、6速段からの飛び変速についてのみ説明をしたが、制御部10は、目標変速段である1速段に直接飛び変速しなかった場合、同様に、この飛び変速後の現在変速段から目標変速段に向かって変速段差を1速段ずつ少なくしながら飛び変速が可能であるか判断しつつ、最初に許可可能な飛び変速を現在変速段が目標変速段になるまで実行して行く。
【0069】
<回生アップシフト変速>
一方、回生アップシフト変速の場合も回生ダウンシフトの場合と同様に、
図8(b)に示す飛びアップシフト変速判断実施テーブルに記載の総ての飛び変速のパターンについて、許可可能であるか否か常時判断している。
【0070】
基本的な実行可能か否かの判断の方法も
図7(b)に示すように、回生ダウンシフト変速の場合と同様ではあるが、アップシフト変速であるため、モータ3の出せる最大のイナーシャトルクは、モータの最小トルク及び最少パワーから演算した。具体的には、アップシフト変速であるため、上記最大のイナーシャトルクは、マイナスの値になり、最大回転変化加速度もマイナスの値となる。また、発熱量を算出する摩擦係合要素は、解放側の摩擦係合要素となる。
【0071】
例えば、
図8(a)に示すように、現在変速段が1速段で目標変速段が6速段である回生アップシフト変速の変速要求があった場合(S20のYES)、制御部10は、まず、現在変速段である1速段から目標変速段である6速段へと直接飛び変速が可能であるか否かの変速判断結果を参照する(S21)。そして、1−6変速の実行が許可可能であった場合(S21のYES)、制御部10は、この1−6変速を実行する(S22)。一方、1−6変速の実行が不許可の場合は(S21のNO)、現在変速段から目標変速段に向かって変速する際の変速段差が1段ずつ少なくように、1−5変速,1−4変速,1−3変速と実行可能な飛び変速があるか否かを判断して行く(S23〜S25)。
【0072】
制御部10は、上記飛び変速の実行の可否の判断において、実行可能な飛び変速が発見された場合(S23〜S25のYES)、その飛び変速を実行し(S26〜S28)、その後、現在変速段が目標変速段になるまで、同様に実行可能な飛び変速がないか探しながら最も少ない変速回数で目標変速段(本実施の形態では6速段)まで変速を実行する。なお、実行可能な飛び変速がない場合、制御部10は通常どおり変速段を1速段だけアップシフト変速する(S29)。
【0073】
上述したように、制御部10は、モータ(回転電機)3の性能及び求められる回生制動力に基づいて、掴み換え変速を行う摩擦係合要素に発生する発熱量を予測演算し、この発熱量に基づいて、現在変速段と目標変速段との間で許可可能な飛び変速があるか否かを判断すると共に、実行可能な前記飛び変速がある場合、この飛び変速を実行しつつ前記現在の変速段から前記目標変速段へと変速するように前記変速機構を制御している。このため、摩擦係合要素の発熱量が大きいために許可できない飛び変速については変速を実行せずに、発熱量の問題の無い飛び変速のみ実行することができる。これにより、変速時に掴み換えを行う摩擦係合要素(即ち、現在変速段で係合し変速後の変速段で解放する係合要素又は現在変速段で解放し変速後の変速段で係合する係合要素、別の言い方をすると発熱量が予測される係合要素)の熱負荷が過大になることを防止することができると共に、できる限り飛び変速を行って変速回数を少なくすることができ、変速の際のエネルギ損失を低減することができる。また、早い時点にて効率の良い回転速度の範囲にて回転電機の回生をさせることができることとも相俟って、車輌用駆動装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0074】
また、飛び変速に必要な所
要時間が所定の変速制限値よりも長い場合、演算した飛び変速の実行を不許可とするため、変速時間が長くなってドライバビリティを損なうことを防止することができる。
【0075】
更に、複数の飛び変速の実行を許可可能な場合、変速段差の最も大きな飛び変速を実行することによって、少ない変速回数で迅速に目標の変速段へと変速を行うことができる。また、現在変速段から目標変速段へ直接変速する飛び変速から変速段差を1段ずつ少なくしていって飛び変速の実行を許可可能であるか否か判断してゆくため、最初に実行を許可できる飛び変速を変速段差の最も大きな飛び変速であると確実にかつ容易に判断することができる。
【0076】
また、制御部10は、摩擦係合要素の掴み換えにおいて回生制動力に相当するトルク容量を受け持つ摩擦係合要素(アップシフト変速の場合、解放側の摩擦係合要素、ダウンシフト変速の場合、係合側の摩擦係合要素)の発熱量を算出し、飛び変速の実行を許可出来るか否か判断している。このため、回生制動力を伝達するだけのトルク容量を持つために変速中の発熱量の大きな摩擦係合要素の発熱量に基づいて、確実に変速の実行を許可可能であるか否かを判断することができる。
【0077】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る車輌用制御装置について、
図9乃至
図11に沿って説明をする。なお、この第2の実施の形態は、変速時の摩擦係合要素の推定温度求め、この推定温度が許容温度より大きいか否かによっても、飛び変速の実行の可否を判断する点において相違している。そのため、以下の説明においては、上記第1の実施の形態との相違点についてのみ説明し、その他の部分については、その説明を省略する。
【0078】
図9は、車輌の走行中おける主体側摩擦係合要素の推定温度の推移を示した図である。
図9において、主体側摩擦係合要素摩擦係合要素は、時点t1〜t2と、時点t3〜t4とにおいて掴み換えられており、変速時に回生制動力を伝達しながらスリップ回転することによって発熱し、昇温していることが分かる。また、主体側摩擦係合要素が掴み換えられていない時点t2〜t3の間は、主体側摩擦係合要素の温度は低下して、変速機構6内の作動油(以下ATFという)の温度に収束して行っていることが分かる。
【0079】
ここで、上記第1回目の変速の開始時点t1では、主体側摩擦係合要素の温度は、ATFの油温と略等しくなっているが、
図9の場合のように第1回目の変速と第2回目の変速とが比較的に近い間隔で実施されると、第2回目の変速の開始時点t2で、第1回目の変速の際に昇温された熱が残っており、この第2回目の変速の開始の時点t2では、主体側摩擦係合要素の温度が、時点t1の温度よりも高くなっている。
【0080】
このため、上記第1回目及び第2回目の変速において、主体側摩擦係合要素に生じる発熱量が等しかったとしても、変速の開始時点における主体側摩擦係合要素の温度によっては、変速中の主体側摩擦係合要素の温度が、許容温度より大きくなったり、許容温度以下になったりすることが起こり得る。
【0081】
即ち、
図10に示すように、全く同様の変速を実行したとしても、変速開始時点の温度が高い場合には主体側摩擦係合要素の推定温度X1,X2が許容温度を超え、変速開始時点の温度が低い場合には主体側摩擦係合要素の推定温度X3,X4が許容温度を超えないことが起こりえる。
【0082】
このため、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態の発熱量及び制御時間の要件に加えて、主体側摩擦係合要素の現在温度を考慮した摩擦係合要素の変速中の推定温度の要件をも用いて飛び変速の実行の可否を判断している。即ち、
図11に示すように、本実施の形態に係る制御部10Aは、現在温度算出部40として機能しており、変速前までの累積の熱収支(主体側摩擦係合要素の入熱、放熱の合計やATFの油温)に基づき、主体側摩擦係合要素の現在温度を常時算出して推定している。
【0083】
制御部10Aは、変速に際して主体側摩擦係合要素の発熱量を算出すると、推定温度算出部41として機能し、上記主体側摩擦係合要素の現在温度及びこの変速時に主体側摩擦係合要素に発生する発熱量に基づいて、変速中における主体側摩擦係合要素の推定温度を求める。
【0084】
上記変速中における主体側摩擦係合要素の推定温度が求まると、温度判断部42としての制御部10Aは、この推定温度が、許容温度より大きくなるか否かを判断する。本実施の形態においては、上記温度判断部42、発熱量判断部37、変速時間判断部38を備えて、飛び変速の実行が許可可能である否かを判断する判断部36Aを構成しており、推定温度、発熱量及び変速時間の全ての要件が制限値以内の場合にのみ、飛び変速の実行を許可するようになっている。
【0085】
このように、本実施の形態によると、変速時に主体側摩擦係合要素に発生する発熱量に加えて、変速前までの累積の熱収支に基づいて主体側摩擦係合要素の現在温度についての演算も行い、これら発熱量及び現在温度に基づいて、変速中に主体側摩擦係合要素の推定温度を算出する。そして、変速中の主体側摩擦係合要素の推定温度が、許容温度以下の場合、飛び変速の実行が許可可能であると判断し、許容温度より大きい場合、飛び変速の実行を不許可とすることによって、より正確に飛び変速の実行の可否を判断することができる。
【0086】
<第3の実施の形態>
上記第2の実施の形態においては、発熱量の要件、推定温度の要件、変速時間の要件の全ての要件に基づいて飛び変速の実行の可否を判断していたが、例えば、発熱量の要件のみに基づいて飛び変速の実行の可否を判断しても良い。また、当然に推定温度の要件のみに基づいて飛び変速の実行の可否を判断しても良く、更に、これら発熱量の要件及び推定温度の要件のみに基づいて飛び変速の実行の可否を判断しても良い。
【0087】
なお、上記第1乃至3の実施の形態においては、車輌用駆動装置としてハイブリッド駆動装置を例にとって説明をしたが、必ずしも駆動源としてエンジンは必要とせず、変速機構の入力側に回転電機を備えた車輌用駆動装置であれば本発明を適用することができる。更に、変速機構についても、6段変速の多段自動変速機構である必要はなく、3速段以上の変速段を有する変速機構であれば良い。加えて、変速機構は、2つの摩擦係合要素を係合させて1つの変速段を形成するものである必要はなく、例えば、3つ以上の摩擦係合要素を係合させて1つの変速段を形成するような変速機構であっても良い。この場合も、上述したように変速時に回生制動力を伝達するだけのトルク容量を持つ摩擦係合要素の発熱量に基づいて変速の可否が判断され、例えば、2つ以上の摩擦係合要素の発熱量を算出して変速の可否を判断しても良い。
【0088】
また、上記変速時に回生制動力を伝達するためのトルク容量を持つ摩擦係合要素の一例として、本実施の形態では、回生アップシフト変速の場合は解放側の係合要素、回生ダウンシフト変速の場合は係合側の係合要素を主体側として回生制動力を伝達するだけのトルク容量を持たしている。しかしながら必ずしもこれに限られない。即ち、回生アップシフト変速の際に係合側の係合要素で回生制動力を伝達するためのトルク容量を持たしても良いし、回生ダウンシフト変速の場合に解放側の係合要素にてトルク容量を持たしても良い。
【0089】
別の言い方をすれば、制御部は、変速時に発熱量が大きくなる少なくとも一つの摩擦係合要素、即ち、回転変化を発生させる主体側の係合要素について発熱量を計算しており、この主体側の係合要素は、解放側でも係合側でもどちらにも設定するこが可能である。
【0090】
更に、上記主体側の係合要素の発熱量についても、回転制動力(即ちモータで発生する負トルク)に基づいて、変速所要時間などを算出して求める以外に、上記回転制動力に基づいて、変速の前後でエネルギ計算を行い、このエネルギ計算の収支から係合要素の発熱量を計算しても良い。
【0091】
また、自動変速機は、多板クラッチ以外にも、例えば、ドッグクラッチなどの摩擦によらないクラッチなどを上記クラッチ/ブレーキとして一部採用しても良く、これらの係合要素を組み合わせて複数の変速段を形成すれば良い。
【0092】
更に、上述した実施の形態においては、現在変速段から目標変速段へ直接変速する飛び変速から始まって、現在変速段から飛び変速後の変速段までの変速段差を1段ずつ少なくしていきながら飛び変速の実行が許可可能であるか否かを判断したが、現在変速段から変速段差を1段ずつ大きくしていきながら飛び変速の実行が許可可能であるか否かを判断していっても良い。この場合、実行が不許可となった飛び変速の1つ前の飛び変速が変速段差の最も大きな飛び変速となる。
【0093】
また、第2及び第3の実施の形態において、現在温度、推定温度、許容温度を温度の単位で計算しているが、クラッチの熱容量を用いて発熱量の単位に変換して計算することもできる。同様に、第1の実施の形態においても発熱量、発熱量制限値を温度などの単位で計算することも可能である。即ち、本発明において発熱量や、温度などの言葉は、どのような単位において表現されても良く、それらは実質的に同じである。
【0094】
また、摩擦係合要素の発熱量は、動力伝達系における総エネルギから、摩擦係合要素の動力伝達上流側のエネルギと摩擦係合要素の動力伝達下流側のエネルギとを減算し、この差分を発熱量として計算しても良い。
【0095】
更に、制御部10は、常時に摩擦係合要素の発熱量、変速時間を演算して飛び変速の可否を判断しているのではなく、変速要求のあった際に上記変速に係る摩擦係合要素の発熱量及び変速時間を演算して飛び変速の可否を判断しても良い。また、変速の可否を算出した摩擦係合要素の発熱量のみに基づいて判断しても良いと共に、上述した実施の形態に記載された発明は、どのように組み合わせても良い。