(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記物体高さ分布データ作成手段は、前記死角の範囲の物体高さのデータを、前記最も遠い点の物体高さに等しい値に統一するように修整する請求項1記載のクレーン運転支援装置。
前記物体高さ分布データに基づいて、前記移動体に吊られて下降しているコンテナまたはコンテナ吊具が物体に衝突する前に、その下降速度を減速させる自動減速手段を更に備える請求項1または2記載のクレーン運転支援装置。
前記物体高さ分布データに基づいて、前記移動体とともに移動しているコンテナまたはコンテナ吊具が物体に衝突する前に、前記移動体の移動速度を減速させる自動減速手段を更に備える請求項1または2記載のクレーン運転支援装置。
前記移動体に吊られたコンテナの下端の位置を前記走査型距離計測器により計測した情報に基づいて当該コンテナの高さ寸法を検出するコンテナ高さ寸法検出手段を更に備え、
前記自動減速手段は、前記移動体に吊られたコンテナの下面の位置を、前記コンテナ高さ寸法検出手段により検出された情報に基づいて計算することにより、減速を開始する位置を決定する請求項3または4記載のクレーン運転支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、本発明は、以降に示す各実施の形態のあらゆる組み合わせを含むものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1のクレーン運転支援装置を適用したクレーンを示す斜視図である。
図2は、
図1に示すクレーン100の正面図である。本実施形態におけるクレーン100は、直方体形状のコンテナ108を集積して保管するコンテナヤードにおいて使用される。以下の説明では、クレーン100に吊られているコンテナ108を指す場合にはコンテナ108Rと称し、コンテナヤードに置かれているコンテナを指す場合にはコンテナ108Qと称し、特に区別しない場合にはコンテナ108と総称する。
【0012】
図1および
図2に示すように、コンテナヤードには、コンテナ108Qを、複数列(図示の構成では5列)に並べ、且つ、複数段(図示の構成では4段)に積み重ねて、置くことができる。コンテナ108は、トラック107の荷台110に積まれて、コンテナヤードに搬入され、あるいは、コンテナヤードから搬出される。コンテナヤードには、トラック107が走行可能な車線が、コンテナ108Qが置かれるスペースに隣接して、コンテナ108Qの列方向(すなわち、コンテナ108Qの長手方向)に平行に設けられている。
【0013】
クレーン100は、コンテナヤードに集積されたコンテナ108Qおよびトラック107の走行車線を跨ぐ門型のフレーム101と、フレーム101をコンテナ108Qの列方向に移動可能にする複数の走行車輪102と、フレーム101の横桁に沿って水平方向に移動可能な移動体103とを備えている。移動体103は、コンテナヤードに集積されたコンテナ108Qの上方において、コンテナ108Qの列方向に直交する方向に直線的に移動可能になっている。以下の説明では、移動体103の移動方向に平行な方向を「横方向」と称する。また、横方向への移動を「横行」と称する。
【0014】
移動体103には、運転室111と、巻き上げ電動機8により駆動される巻き取りドラム112と、走査型距離計測器109とが設置されている。巻き取りドラム112からは、コンテナ108を掴んだり放したりすることのできるスプレッダのようなコンテナ吊具105が、ワイヤーロープ104を介して吊り下げられている。巻き取りドラム112は、ワイヤーロープ104を巻き取ることによりコンテナ吊具105を上昇させ、ワイヤーロープ104を繰り出すことによりコンテナ吊具105を下降させることができる。運転室111は、コンテナ吊具105の鉛直上方に重ならない位置に配置されている。走査型距離計測器109は、コンテナ吊具105の鉛直上方に重ならない位置に配置されている。本実施形態では、運転室111と走査型距離計測器109とは、コンテナ吊具105の鉛直上方の位置を挟んで、互いに反対側に配置されている。
【0015】
クレーン運転士は、運転室111内に設けられた操作デスク1の操作機器を操作して、クレーン100を運転する。すなわち、クレーン運転士は、まず、走行車輪102を駆動して、目的の位置までフレーム101を走行させ、停止する。なお、フレーム101の走行時には、コンテナ吊具105は、コンテナ108Rを掴んでいない状態で、常用上限位置に巻き上げられている。また、フレーム101の走行時には、フレーム101に対する移動体103の位置は、任意である。フレーム101を停止した後、トラック107が運んできたコンテナ108を、コンテナ吊具105で掴み、巻き取りドラム112を駆動して吊り上げた後、移動体103とともに横行させる。そして、移動体103を目的の位置に停止し、ワイヤーロープ104を繰り出すことによりコンテナ吊具105とともにコンテナ108Rを下降させて着床させる。このようにして、トラック107が運んできたコンテナ108を、指示された場所に積む作業を行う。逆に、コンテナヤードからコンテナ108を搬出する指示が与えられた場合には、クレーン運転士は、保管されているコンテナ108の中から、指示されたものを吊り上げて運搬し、空のトラック107に積む作業を行う。
【0016】
走査型距離計測器109は、例えばレーザー光またはマイクロ波のような計測用電磁波を対象物に照射し、その反射波との位相差などを検出することにより、対象物との間の距離を計測可能なものである。また、走査型距離計測器109は、計測用電磁波の照射方向を回転させながら逐次計測を行うことにより、計測点ごとに、計測用電磁波の照射角度と、その角度に対応した距離計測値とを出力可能である。
図2に示すように、走査型距離計測器109は、横方向に平行な鉛直面内で計測用電磁波の照射方向を走査することにより、移動体103の移動範囲の下方にある物体(例えば、置かれたコンテナ108Q、トラック107の荷台110、地面等)との間の距離および角度を計測可能になっている。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態1のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態のクレーン100は、クレーン運転士が操作する操作機器が設けられた操作デスク1と、クレーン駆動制御装置2と、運転支援制御装置3と、巻き取りドラム112を駆動する巻き上げ電動機8と、コンテナ吊具105の昇降速度を検出する昇降速度検出器13と、移動体103を横行させる横行電動機9と、移動体103の横行速度を検出する横行速度検出器14とを備えている。なお、
図3では、本発明の説明に関係の無い補機類については図示を省略している。
【0018】
クレーン駆動制御装置2は、操作信号および補機信号から補機指令信号および速度基準信号を生成する主幹コントローラと、巻き上げ電動機8および横行電動機9を駆動する電力変換装置とを有している。
【0019】
運転支援制御装置3は、吊具データ分離計算手段4と、物体高さ分布データ作成手段5と、減速判定手段6と、必要距離計算手段7と、速度位置変換手段12とを備えている。速度位置変換手段12は、昇降速度検出器13により検出された昇降速度に基づいてコンテナ吊具105の高さ位置を計算する。また、速度位置変換手段12は、横行速度検出器14により検出された移動体103の横行速度に基づいて移動体103の位置を計算する。なお、速度位置変換手段12に代えて、コンテナ吊具105の高さ位置を検出する高さ位置検出器13aと、移動体103の位置を検出する移動体位置検出器14aとを設けるようにしても良い。
【0020】
走査型距離計測器109は、角度と、その角度に対応した距離計測値とからなる計測情報を運転支援制御装置3に送信する。走査型距離計測器109による計測情報の一例を、
図2中の太線で模式的に表す。運転支援制御装置3の吊具データ分離計算手段4は、走査型距離計測器109から送信された計測情報のうち、コンテナ吊具105および吊られたコンテナ108Rに対応する部分を認識し、当該部分を分離する。物体高さ分布データ作成手段5は、コンテナ吊具105および吊られたコンテナ108Rに対応する部分が除かれた計測情報に基づいて、移動体103の移動範囲の下方にある物体、例えば、コンテナ108Q、荷台110、地面等の高さの分布を表すデータである物体高さ分布データを作成する。物体高さ分布データ作成手段5は、例えば、走査型距離計測器109により計測された各点を線で結ぶようにして、物体高さ分布データを作成する。走査型距離計測器109は、移動体103の移動中にも計測を逐次行う。物体高さ分布データ作成手段5は、移動体103の位置に対応した物体高さ分布データを作成する。
【0021】
本実施形態では、減速判定手段6および必要距離計算手段7により、自動減速手段が構成される。移動体103に吊られたコンテナ108Rが下降している場合に、減速判定手段6は、物体高さ分布データと、必要距離計算手段7により計算される、減速に必要な距離の値とに基づいて、コンテナ108Rが、その鉛直下方にある物体、例えば、コンテナ108Q、荷台110、地面等に衝突する前に、コンテナ108Rの下降速度を自動的に減速させるように、クレーン駆動制御装置2に対して下降減速指令を出す。また、コンテナ108を掴んでいないコンテナ吊具105が下降している場合には、減速判定手段6は、物体高さ分布データと、必要距離計算手段7により計算される、減速に必要な距離の値とに基づいて、コンテナ吊具105が、その鉛直下方にある物体に衝突する前にコンテナ吊具105の下降速度を自動的に減速させるように、クレーン駆動制御装置2に対して下降減速指令を出す。
【0022】
また、移動体103に吊られたコンテナ108Rが移動体103とともに横行している場合に、減速判定手段6は、物体高さ分布データと、必要距離計算手段7により計算される、減速に必要な距離の値とに基づいて、コンテナ108Rが、その進行方向の先にある物体、例えばコンテナ108Q等に衝突する前に、移動体103の横行速度を自動的に減速させるように、クレーン駆動制御装置2に対して横行減速指令を出す。また、コンテナ108を掴んでいないコンテナ吊具105が移動体103とともに横行している場合には、減速判定手段6は、物体高さ分布データと、必要距離計算手段7により計算される、減速に必要な距離の値とに基づいて、コンテナ吊具105がその進行方向の先にある物体に衝突する前にコンテナ吊具105の横行速度を自動的に減速させるように、クレーン駆動制御装置2に対して横行減速指令を出す。
【0023】
本実施形態によれば、上記のような自動減速を行うことができるため、クレーン運転士が目測を誤ったり減速の操作をし遅れたりした場合であっても、移動体103に吊られて下降あるいは横行しているコンテナ108Rまたはコンテナ吊具105が、高速で物体に衝突することを確実に防止することができる。これにより、コンテナ108R,108Qおよびその中の荷物、トラック107の荷台110、あるいはトラック107の運転手などにダメージを与えることを確実に防止することができ、これらを確実に保護することができる。特に、移動体103に吊られて横行しているコンテナ108Rが、高く積み重ねられたコンテナ108Qに高速で衝突し、高く積み重ねられたコンテナ108Qが倒れるような事故を確実に防止することができるので、高い安全性が得られる。
【0024】
図4は、自動減速および後述する物体高さ分布データの修整について説明するための図である。
図4に示すように、本実施形態では、物体高さ分布データを、横方向の位置Xと、高さ位置Hとからなる座標を用いて表す。また、現在の速度をVtとし、減速完了後の速度であるクリープ速度をVLとし、減速の開始から完了までの移動距離をYLとし、現在速度Vtから停止までに要する減速時間をTとし、現在速度Vtからクリープ速度VLまでに要する減速時間をTLとし、減速度をAとする。クリープ速度VLは、コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105がコンテナ108Q、荷台110、地面等に着床または当たった場合でもダメージがないような、低い速度である。減速に必要な距離YLは、次式により求めることができる。次式は、下降と横行とに共通である。また、ここでは、説明を簡略化するために減速度Aが一定であると仮定しているが、実際の制御においては、減速の開始時および終了時に減速度Aが徐々に変化するようにしても良い。
TL=T・(Vt−VL)/Vt ・・・(1)
YL=(Vt−VL)・TL+A・TL/2 ・・・(2)
【0025】
必要距離計算手段7は、上記式(1)および(2)に基づいて、減速に必要な距離YLを計算し、減速判定手段6に与える。コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の鉛直下方にある物体の高さをHpとし、コンテナ吊具105の下面の高さをHsとし、吊られたコンテナ108Rの高さ寸法をChとし、余裕距離をYhとする。下降自動減速を行う場合には、減速判定手段6は、物体高さ分布データに基づいて、次式が成立した時点で、クレーン駆動制御装置2に対して下降減速指令を出す。
D−YL−Yh≦Hp ・・・(3)
ただし、上記(3)式中のDは、コンテナ吊具105がコンテナ108Rを吊っている場合には、次式により計算する。
D=Hs−Ch ・・・(4)
コンテナ吊具105がコンテナ108Rを吊っていない場合には、上記(3)式中のDは、次式により求める。
D=Hs ・・・(5)
【0026】
以上の制御により、下降しているコンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の下面が、その鉛直下方の物体高さHpに対して余裕距離Yhだけ上の位置にあるときに減速が完了し、下降速度がクリープ速度VLに等しくなる。このため、コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の下面が物体に衝突する前に、減速を確実に完了することができる。
【0027】
また、移動体103の横行時には、必要距離計算手段7は、上記式(1)および(2)と同様の計算を行うことにより、減速に必要な距離XLを計算し、減速判定手段6に与える。コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の
図4中で右側の側面の位置をXaとし、コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の
図4中で左側の側面の位置をXbとし、余裕距離をXhとする。減速判定手段6は、物体高さ分布データに基づいて、移動体103の進行方向の前方であって物体高さHがコンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の下面の高さD以上になる位置Xpを求める。移動体103が
図4中の右方向に横行している場合には、減速判定手段6は、次式が成立した時点で、クレーン駆動制御装置2に対して横行減速指令を出す。
Xa+XL+Xh≧Xp ・・・(6)
【0028】
また、移動体103が
図4中の左方向に横行している場合には、減速判定手段6は、次式が成立した時点で、クレーン駆動制御装置2に対して横行減速指令を出す。
Xb−XL−Xh≦Xp ・・・(7)
【0029】
以上の制御により、横行しているコンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の側面が、衝突する可能性のある物体の位置Xpに対して余裕距離Xhだけ手前の位置にあるときに減速が完了し、横行速度がクリープ速度VLに等しくなる。このため、コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の側面が物体に衝突する前に、減速を確実に完了することができる。
【0030】
なお、クリープ速度VLで移動中に、クレーン運転士が移動方向を逆方向に転換する操作を行った場合には、衝突のおそれはないので、クレーン駆動制御装置2は、減速状態を解除し、通常の移動速度に制御することが好ましい。
【0031】
図5は、
図1に示すクレーン100の正面図である。
図5には、移動体103が位置Aから位置Bへ横行する場合が示されている。位置Aは、移動体103のホームポジション、すなわちクレーン運転士が運転室111に乗り込むときの位置である。また、位置Aは、コンテナ吊具105が、
図5中で最も左側の列のコンテナ置き場の鉛直上方になる位置である。位置Bは、コンテナ吊具105が、トラック107の走行車線の鉛直上方になる位置である。すなわち、位置Bは、トラック107にコンテナ108を積むとき、またはトラック107からコンテナ108を吊り上げるときの位置である。移動体103が位置Aから位置Bへ横行する間に走査型距離計測器109により計測された情報に基づいて作成される物体高さ分布データを、
図5中の太線で模式的に表す。
図5に示す場合においては、走査型距離計測器109の死角が生じないので、物体の高さの分布を適切に検出することができる。
【0032】
図6は、
図1に示すクレーン100の正面図である。
図6には、移動体103が位置Bにある状態で走行車輪102を駆動してフレーム101を目的の位置まで移動した後、トラック107で運ばれてきたコンテナ108Rを吊り上げて、移動体103が位置Bから位置Cへ横行し、コンテナ108Rを吊り降ろす場合が示されている。位置Cは、コンテナ吊具105が、
図6中で左側から2列目のコンテナ置き場の鉛直上方になる位置である。移動体103が位置Bから位置Cへ横行する間に走査型距離計測器109により計測された情報に基づいて作成される物体高さ分布データを、
図6中の太線で模式的に表す。
図6に示す場合においては、
図6中で斜線を付した三角形の範囲が、走査型距離計測器109の死角になる。このような死角は、走査型距離計測器109が、コンテナ108Rを吊り降ろす位置の鉛直上方に達しないために発生する。
【0033】
このようにして走査型距離計測器109の死角が発生すると、上述した三角形の斜面が物体高さとして認識されるため、下降または横行の自動減速を行う場合には、この三角形の斜面に衝突する前に減速が完了するように制御される。しかしながら、コンテナ108の幅は、ISO(International Organization for Standardization)により規格化されていて一定であるので、実際には、上述した三角形の範囲にコンテナ108が存在することはない。したがって、死角の範囲では、必要以上に手前から自動減速が開始されてしまうことになる。その結果、コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105の下降または横行に要する時間が長くなり、操業効率が低下する。
【0034】
このような点を改善するため、本実施形態では、物体高さ分布データに走査型距離計測器109の死角が発生した場合には、以下のようにして、死角の範囲の物体高さデータを修整することにした。物体高さ分布データ作成手段5は、死角の範囲との重なりを持つ仮想のコンテナ存在範囲の中で走査型距離計測器109から最も遠い点の物体高さのデータに基づいて、死角の範囲の物体高さデータを修整する。
図6中では、死角の範囲は、左側から2列目のコンテナ置き場に発生しているため、細い破線で示す範囲が、死角の範囲との重なりを持つ仮想のコンテナ存在範囲CTである。したがって、
図6の場合では、死角の範囲との重なりを持つ仮想のコンテナ存在範囲CTの中で走査型距離計測器109から最も遠い点の物体高さのデータとは、点Pdの高さである。物体高さ分布データ作成手段5は、作成した物体高さ分布データに死角が発生している場合には、死角の範囲の物体高さのデータを、この最も遠い点Pdの物体高さに等しい値に統一するように修整する。
【0035】
図4を参照して、物体高さ分布データの修整について更に説明する。
図4の上のグラフの中の太い破線Sは、修整前の、死角の範囲の物体高さのデータを示すラインである。物体高さ分布データ作成手段5は、死角が発生した場合には、死角の範囲の物体高さデータのラインSを、ラインHnおよびXnに書き直すようにして修整する。
図4の下のグラフは、修整後の物体高さ分布データを示す。修整後の物体高さ分布データでは、死角の範囲の物体高さのデータが、上記最も遠い点Pdの物体高さに等しくなるように修整されている。物体高さ分布データ作成手段5は、このようにして修整した物体高さ分布データをメモリに格納する。減速判定手段6は、その格納された、修整後の物体分布データに基づいて、減速を開始する位置を決定し、クレーン駆動制御装置2に対して減速指令を出す。修整後の物体高さ分布データでは、死角になった三角形の範囲が除去されている。このため、修整後の物体高さ分布データに基づいて自動減速を行うことにより、必要以上に手前から自動減速が開始されてしまうことを回避することができる。このため、操業効率を向上することができる。なお、
図4のグラフにおいて、左側に、距離未計測域があるが、この領域は、移動体103の位置が左に横行した場合に逐次検出されるので、物体と衝突する危険は無い。
【0036】
本実施形態では、
図6に示すように、移動体103が
図6中の左方向に横行した場合に、走査型距離計測器109の死角が発生する可能性がある。このため、移動体103の横行方向を判定し、移動体103が
図6中の左方向に横行した場合に、物体高さ分布データの修整を行うようにしてもよい。また、コンテナ吊具105の位置が、コンテナヤードのコンテナ108Qを置く範囲の鉛直上方にあるかどうかを判定し、コンテナ吊具105の位置が、コンテナヤードのコンテナ108Qを置く範囲の鉛直上方にあると判定された場合に、物体高さ分布データの修整を行うようにしてもよい。
【0037】
図7は、物体高さ分布データの修整について説明するための図である。以下、
図7を参照して、物体高さ分布データ作成手段5による物体高さ分布データの修整について更に説明する。
図7に示すように、走査型距離計測器109の死角が発生したコンテナ置き場の隣の列のコンテナ108Qの側面の位置から、コンテナ108の幅Waと、コンテナ間の隙間の幅Wbとの和に相当する距離だけ離れた位置を、仮想のコンテナ存在範囲CT1の境界として設定すれば良い。または、より安全側に余裕を持つために、隣の列のコンテナ108Qの側面の位置から、コンテナ108の幅Waだけ離れた位置を、仮想のコンテナ存在範囲CT2の境界として設定しても良い。仮想のコンテナ存在範囲CT1を設定した場合には、その中で走査型距離計測器109から最も遠い点の物体高さのデータは、点Pd1の高さである。したがって、仮想のコンテナ存在範囲CT1を設定した場合には、死角の範囲の修整前の物体高さデータのラインSは、点Pd1の物体高さに等しい高さのラインである、ラインHn1に修整される。一方、仮想のコンテナ存在範囲CT2を設定した場合には、その中で走査型距離計測器109から最も遠い点の物体高さのデータは、点Pd2の高さである。したがって、仮想のコンテナ存在範囲CT2を設定した場合には、死角の範囲の修整前の物体高さデータのラインSは、点Pd2の物体高さに等しい高さのラインである、ラインHn2に修整される。
【0038】
図7に示す例では、走査型距離計測器109の死角の範囲には、コンテナ108Qが1段に置かれている。そして、走査型距離計測器109は、死角の範囲のコンテナ108Qの上面を全く計測できていない。本実施形態によれば、この
図7に示す例のように、死角の範囲のコンテナ108Qの上面を走査型距離計測器109が全く計測できない場合であっても、死角の範囲の物体高さ分布データを修整することができる。このため、自動減速が必要以上に手前から開始されてしまうことを可能な限り抑制し、操業効率を向上することができる。
【0039】
以上の説明では、死角の範囲の物体高さのデータを修整する場合に、死角の範囲との重なりを持つ仮想のコンテナ存在範囲の中で走査型距離計測器109から最も遠い点の物体高さに等しい値に統一するように修整しているが、より安全側に余裕を持つために、この最も遠い点の物体高さよりやや高い位置に統一するように修整しても良い。
【0040】
本実施形態では、移動体103に走査型距離計測器109を1個だけ設置している。上述したように、本実施形態によれば、走査型距離計測器109の死角が発生した場合であっても、死角の範囲の物体高さ分布データを適切に修整することができる。このため、走査型距離計測器109の死角が発生することを防止するために複数の走査型距離計測器109を設ける必要がないので、コストダウンが図れる。ただし、本発明では、移動体103に複数の走査型距離計測器109を設置してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、物体高さ分布データに基づいて自動減速を行う制御をしているが、本発明では、必ずしも自動減速の制御を行わなくても良く、例えば、物体高さ分布データを画像化してクレーン運転士に提示することによって運転を支援しても良い。その場合において、走査型距離計測器109の死角が発生して物体高さ分布データを修整した場合には、修整前および修整後の物体高さ分布データを併せてクレーン運転士に提示しても良い。
【0042】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図8は、本発明の実施の形態2のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図8に示すように、本実施の形態2における運転支援制御装置3は、実施の形態1と同様の構成に加えて、コンテナ高さ寸法設定手段15aを更に備えている。
【0043】
コンテナヤードでは、高さ寸法Chの異なる複数種類のコンテナ108が混在して集積される場合がある。本実施の形態2では、そのような場合において、複数種類のコンテナ108のうちで高さ寸法が最も大きいものの値を、コンテナ高さ寸法設定手段15aにて設定可能になっている。コンテナ高さ寸法設定手段15aにて設定するコンテナ高さ寸法の最大値は、例えば、クレーン運転士が操作デスク1から入力可能にされている。減速判定手段6は、実施の形態1で説明した式(4)の計算を行う場合に、コンテナ高さ寸法設定手段15aにて設定されたコンテナ高さ寸法の最大値をChとして用いることにより、移動体103に吊られたコンテナ108Rの下面の位置を計算する。本実施の形態2によれば、このような制御を行うことにより、移動体103に吊られたコンテナ108Rが、最大の高さ寸法を有するものとして、下降および横行の自動減速の開始位置が決定される。このため、移動体103がどの種類のコンテナ108Rを吊っている場合であっても、下降および横行の自動減速を安全に行うことができる。
【0044】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図9は、本発明の実施の形態3のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図9に示すように、本実施の形態3における運転支援制御装置3は、実施の形態1と同様の構成に加えて、コンテナ高さ寸法検出手段15bを更に備えている。
【0045】
コンテナ高さ寸法検出手段15bは、移動体103により吊り上げられたコンテナ108Rの下端の位置を走査型距離計測器109により計測した情報に基づいて、コンテナ108Rの高さ寸法Chを検出する。
図10は、本実施の形態3において、コンテナ108Rの高さ寸法Chを検出する方法を説明するための図である。
図10に示すように、コンテナ高さ寸法検出手段15bは、移動体103により吊り上げられたコンテナ108Rの下端の位置を走査型距離計測器109により計測した情報に基づいて、コンテナ108Rの下端の高さHcを計算し、その値と、既知であるコンテナ吊具105の下面の高さHsとに基づき、コンテナ108Rの高さ寸法Chを次式により計算する。
Hs−Hc=Ch ・・・(8)
【0046】
減速判定手段6は、実施の形態1で説明した式(4)の計算を行う場合に、コンテナ高さ寸法検出手段15bにより検出されたコンテナ高さ寸法Chを用いることにより、移動体103に吊られたコンテナ108Rの下面の位置を計算する。本実施の形態3によれば、このような制御を行うことにより、移動体103が吊っているコンテナ108Rの高さ寸法Chを自動的に検出してコンテナ108Rの下面の位置を計算し、下降および横行の自動減速の開始位置を決定することができる。これにより、移動体103がどのような高さ寸法のコンテナ108Rを吊っている場合であっても、自動減速の開始位置を最適にすることができるため、高い安全性が得られるとともに、操業効率を更に向上することができる。
【0047】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図11は、本発明の実施の形態4のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図11に示すように、本実施の形態4における運転支援制御装置3は、実施の形態1と同様の構成に加えて、コンテナ高さ寸法設定手段15aを更に備えている。また、操作デスク1には、クレーン運転士がコンテナ108の高さ寸法Chの情報を選択可能な選択手段としての選択スイッチ1aが設けられている。
【0048】
本実施の形態4では、クレーン運転士は、選択スイッチ1aを操作することにより、移動体103で吊るコンテナ108Rの種類に応じて、コンテナ108Rの高さ寸法Chの情報を選択する。コンテナ高さ寸法設定手段15aは、選択スイッチ1aからの信号を受信し、クレーン運転士が選択したコンテナ108Rの高さ寸法Chを設定する。減速判定手段6は、実施の形態1で説明した式(4)の計算を行う場合に、コンテナ高さ寸法設定手段15aにて設定されたコンテナ高さ寸法Chを用いることにより、移動体103に吊られたコンテナ108Rの下面の位置を計算する。本実施の形態4によれば、このような制御を行うことにより、移動体103が吊っているコンテナ108Rの高さ寸法Chの情報をクレーン運転士から受け取り、その情報に基づいてコンテナ108Rの下面の位置を計算し、下降および横行の自動減速の開始位置を決定することができる。これにより、移動体103がどの種類のコンテナ108Rを吊っている場合であっても、自動減速の開始位置を最適にすることができるため、高い安全性が得られるとともに、操業効率を更に向上することができる。
【0049】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図12は、本発明の実施の形態5のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図12に示すように、本実施の形態5における運転支援制御装置3は、実施の形態1と同様の構成に加えて、コンテナ高さ寸法設定手段15aを更に備えている。
【0050】
本実施の形態5のクレーン制御システムは、上位システムであるヤード統括システム16から伝送装置を介して送られるコンテナ運搬指示情報を受信可能になっている。ヤード統括システム16は、コンテナヤード全体の作業を統括するシステムであり、コンテナ108の搬入および搬出、配置、保管、コンテナ船への積み下ろしなどに関する計画、指示などを行う。本実施の形態5では、ヤード統括システム16から送られるコンテナ運搬指示情報に、コンテナ108の高さ寸法Chの情報が含まれている。コンテナ高さ寸法設定手段15aは、ヤード統括システム16から送信されたコンテナ運搬指示情報に基づいて、コンテナ108の高さ寸法Chを設定する。減速判定手段6は、実施の形態1で説明した式(4)の計算を行う場合に、コンテナ高さ寸法設定手段15aにて設定されたコンテナ高さ寸法Chを用いることにより、移動体103に吊られたコンテナ108Rの下面の位置を計算する。本実施の形態5によれば、このような制御を行うことにより、移動体103が吊っているコンテナ108Rの高さ寸法Chの情報を、ヤード統括システム16から受信し、その情報に基づいてコンテナ108Rの下面の位置を計算し、下降および横行の自動減速の開始位置を決定することができる。これにより、移動体103がどの種類のコンテナ108Rを吊っている場合であっても、自動減速の開始位置を最適にすることができるため、高い安全性が得られるとともに、操業効率を更に向上することができる。
【0051】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図13は、本発明の実施の形態6のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図13に示すように、本実施の形態6は、実施の形態1と同様の構成に加えて、操作デスク1に、報知手段17を更に備えている。また、操作デスク1は、物体高さ分布データ作成手段5から信号を受信可能になっている。本実施の形態6では、物体高さ分布データ作成手段5は、走査型距離計測器109の死角が発生し、物体高さ分布データを修整した場合には、その情報を操作デスク1に送信する。そして、報知手段17は、物体高さ分布データ作成手段5から受信した情報に基づいて、走査型距離計測器109の死角が発生し、物体高さ分布データが修整されたことを、例えばランプの点灯、音、音声、画像、またはこれらの組み合わせなどにより、クレーン運転士に知らせる。本実施の形態6では、このようにしてクレーン運転士に注意を促すことができるので、安全性を更に高めることができる。
【0052】
実施の形態7.
次に、本発明の実施の形態7について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図14は、本発明の実施の形態7のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図14に示すように、本実施の形態7は、実施の形態1と同様の構成に加えて、操作デスク1に、報知手段18を更に備えている。また、操作デスク1は、減速判定手段6から信号を受信可能になっている。本実施の形態7では、減速判定手段6は、下降または横行の自動減速を実行する場合には、その情報を操作デスク1に送信する。そして、報知手段18は、減速判定手段6から受信した情報に基づいて、下降または横行の自動減速が実行されていることを、例えばランプの点灯、音、音声、画像、またはこれらの組み合わせなどにより、クレーン運転士に知らせる。これにより、本実施の形態7では、自動減速が実行されたときにクレーン運転士がそのことを即座に知ることができる。
【0053】
実施の形態8.
次に、本発明の実施の形態8について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図15は、本発明の実施の形態8のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
【0054】
本実施の形態8では、減速判定手段6は、実施の形態1と同様に、移動体103の横行時には、コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105が物体に衝突する前に、クレーン駆動制御装置2に対して横行減速指令を出し、移動体103の横行速度をクリープ速度まで減速させる。更に、本実施の形態8では、移動体103がクリープ速度で進みながら、コンテナ108Rまたはコンテナ吊具105が物体に当たる位置まで到達した場合には、減速判定手段6は、クレーン駆動制御装置2に対して横行停止指令を出し、移動体103の横行を自動的に停止させる。本実施の形態8によれば、このような制御を行うことにより、クレーン運転士による移動体103の横行を停止させる操作の遅れを許容することができ、安全性を更に向上することができる。
【0055】
実施の形態9.
次に、本発明の実施の形態9について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図16は、本発明の実施の形態9のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。本実施の形態9は、実施の形態1と同様の構成に加えて、移動体103に吊られたコンテナ108Rが着床したことを検知可能な着床検知手段20を更に備えている。着床検知手段20は、コンテナ吊具105に設けられている。着床検知手段20は、コンテナ吊具105の下面とコンテナ108Rの上面との間の隙間の大きさの変化を検出可能になっている。着床検知手段20は、コンテナ108Rが着床したときに当該隙間が縮小することを検出することにより、コンテナ108Rの着床を検知することができる。
【0056】
本実施の形態9では、減速判定手段6は、実施の形態1と同様に、コンテナ108Rの下降時には、コンテナ108Rが、物体に衝突する前、すなわち着床する前に、クレーン駆動制御装置2に対して下降減速指令を出し、コンテナ108Rの下降速度をクリープ速度まで減速させる。更に、本実施の形態9では、コンテナ108Rがクリープ速度で下降しながら、コンテナ108Rが着床したことが着床検知手段20により検知された場合には、減速判定手段6は、クレーン駆動制御装置2に対して下降停止指令を出し、ワイヤーロープ104の繰り出しを自動的に停止させる。本実施の形態9によれば、このような制御を行うことにより、クレーン運転士によるコンテナ108Rの下降を停止させる操作の遅れを許容することができ、安全性を更に向上することができる。
【0057】
実施の形態10.
次に、本発明の実施の形態10について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
図17は、本発明の実施の形態10のクレーン運転支援装置を適用したクレーン制御システムを示すブロック図である。
図17に示すように、本実施の形態10は、実施の形態1と同様の構成に加えて、減速判定手段6からクレーン駆動制御装置2へ出される下降減速指令または横行減速指令を選択的に無効にすることのできる減速指令無効化手段21と、操作デスク1に設けられた操作スイッチ1bとを備えている。
【0058】
クレーン運転士の好みによっては、下降方向の自動減速、あるいは横行方向の自動減速を行う機能が煩わしいと感じる場合もある。本実施の形態10では、そのような場合に、クレーン運転士は、操作スイッチ1bを操作することにより、下降方向の自動減速を行う機能と、横行方向の自動減速を行う機能との何れか一方または両方を無効にすることができる。減速指令無効化手段21は、操作スイッチ1bからの信号に基づき、クレーン運転士の選択に応じて、減速判定手段6からクレーン駆動制御装置2へ出される下降減速指令および横行減速指令のうちの何れか一方または両方を無効にする。このような本実施の形態10によれば、クレーン運転士の好みに応じて、下降方向の自動減速を行う機能と、横行方向の自動減速を行う機能との何れか一方または両方を無効にすることができる。このため、クレーン運転士の多様な好みに応じることができる。