特許第5983791号(P5983791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983791給電ユニット、マルチワイヤ放電加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983791
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】給電ユニット、マルチワイヤ放電加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23H 7/10 20060101AFI20160823BHJP
   B23H 7/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B23H7/10 E
   B23H7/02 Q
   B23H7/02 G
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-17627(P2015-17627)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-221488(P2015-221488A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-94051(P2014-94051)
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002761
【氏名又は名称】キヤノンマーケティングジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100188938
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】栗原 治弥
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−180370(JP,A)
【文献】 特開平04−135121(JP,A)
【文献】 実開平02−139025(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/10
B23H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設されたワイヤ群と被加工物との間の放電により当該被加工物をスライスするマルチワイヤ放電加工装置において、当該ワイヤ群に一括で接触して当該ワイヤ群に電圧を供給する給電子が装着される給電ユニットであって、
前記ワイヤ群に一括で接触する前記給電子が装着される装着部と、
前記ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向の前記装着部の傾きを調整する調整部と、
を備え、
前記給電子は、円筒状の給電子であり、
前記円筒状の給電子の内部の空間に挿入されるシャフトであって、前記給電子の部材よりも電気抵抗の低い部材で構成され、前記給電子の軸方向の長さよりも長いシャフトと、
前記円筒状の給電子の内部の空間に挿入されたシャフトの部位であって、前記給電子の前記内部の前記空間から前記軸方向にはみ出したシャフトの部位を前記装着部側に押し下げて前記給電子を前記装着部に固定する固定部材と、
を更に備えることを特徴とする給電ユニット。
【請求項2】
並設されたワイヤ群と被加工物との間の放電により当該被加工物をスライスするマルチワイヤ放電加工装置において、当該ワイヤ群に一括で接触して当該ワイヤ群に電圧を供給する給電子が装着される給電ユニットであって、
前記ワイヤ群に一括で接触する前記給電子が装着される装着部と、
前記ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向の前記装着部の傾きを調整する調整部と、
を備え、
前記給電子は、円柱状の給電子であって、前記円柱状の給電子の内側は前記給電子の外周の部材よりも電気抵抗の低い部材であり、前記円柱状の軸方向の給電子の両端にも当該部材が設けられた給電子であり、
前記円柱状の軸方向の給電子の両端に設けられた当該部材を前記装着部側に押し下げて前記給電子を前記装着部に固定する固定部材を更に備えることを特徴とする給電ユニット。
【請求項3】
前記調整部は、前記ワイヤ群が並設される方向に対する前記装着部の傾きを調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の給電ユニット。
【請求項4】
前記調整部は、前記ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向に離れた位置の前記装着部に複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の給電ユニット。
【請求項5】
前記装着部を支持する支持部と、
前記装着部と前記支持部とを締結する締結部と、
を更に備え、
前記調整部は、前記締結部から、前記ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向に離れた位置の前記装着部と前記支持部との間の距離を調整することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の給電ユニット。
【請求項6】
前記調整部により調整された傾きを維持した状態で、前記装着部に装着される給電子を前記ワイヤ群に接触させるべく前記装着部を前記ワイヤ群の方向に移動させる移動部を更に備えることを請求項1乃至の何れか1項に記載の給電ユニット。
【請求項7】
前記移動部により移動された前記装着部を当該移動された位置に固定する固定部を更に備えることを特徴とする請求項に記載の給電ユニット。
【請求項8】
記装着部は、前記給電子の外周が前記ワイヤ群と一括で接触するように装着されることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の給電ユニット。
【請求項9】
記装着部の給電子が装着される部位の形状は、前記給電子の円の中心点が前記装着部内に位置し、前記給電子の外周のうち半分以上の外周が接する形状であり、
前記給電子を前記装着部に押圧して固定する第1の固定部材を備えることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の給電ユニット。
【請求項10】
前記電気抵抗の低い部材は、銅、又はステンレスを含む材料を含むことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の給電ユニット。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の前記給電ユニットを備える前記マルチワイヤ放電加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電ユニット、マルチワイヤ放電加工装置に関し、特に、給電子を装着部に固定し、並設されたワイヤ群に一括で接触する給電子と当該ワイヤ群との接触圧のばらつきを低下させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体材料や太陽電池材料、硬質材料等の被加工材料を、放電加工により、短時間で同時に複数切り出す方法が開発されている。
【0003】
たとえば、ワイヤ放電加工装置は、当該被加工材料を薄板状に切り出すために、給電子を介してワイヤに電圧を印加しながら走行させ、そのワイヤに当該被加工材料を近づけることで放電現象を発生させ、当該被加工材料を放電加工するものである。
【0004】
特許文献1には、円筒形、又は円柱形の給電子を用い、その外周面部分をワイヤ電極との接触位置として利用することが記載されている。
【0005】
また特許文献2には、銅や黄銅の小電気抵抗の材料で構成し、その表面に硬質材料のメッキ層で構成した給電子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−19920号公報
【特許文献2】特開平04−105821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記引用文献1、2は、いずれもシングルワイヤの放電加工装置である。
【0008】
そのため、並設されたワイヤ群に一括で接触して当該ワイヤ群に電圧を供給する給電子を用いるマルチワイヤ放電加工装置では、その給電子とワイヤ群とを平行に配置して接触させなければ、給電子とワイヤとの接触圧にばらつきが出来てしまい、安定的にワイヤに給電できないおそれがある。
【0009】
また、安定的にワイヤに給電するために給電子をワイヤに強く押し付けると、給電子の磨耗やワイヤの損傷の度合いが大きくなってしまい、安定した放電加工を長期間行うことは難しくなってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、給電子を装着部に固定し、並設されたワイヤ群に一括で接触する給電子と当該ワイヤ群との接触圧のばらつきを低下させるための仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、並設されたワイヤ群と被加工物との間の放電により当該被加工物をスライスするマルチワイヤ放電加工装置において、当該ワイヤ群に一括で接触して当該ワイヤ群に電圧を供給する給電子が装着される給電ユニットであって、前記ワイヤ群に一括で接触する前記給電子が装着される装着部と、前記ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向の前記装着部の傾きを調整する調整部と、を備え、前記給電子は、円筒状の給電子であり、前記円筒状の給電子の内部の空間に挿入されるシャフトであって、前記給電子の部材よりも電気抵抗の低い部材で構成され、前記給電子の軸方向の長さよりも長いシャフトと、前記円筒状の給電子の内部の空間に挿入されたシャフトの部位であって、前記給電子の前記内部の前記空間から前記軸方向にはみ出したシャフトの部位を前記装着部側に押し下げて前記給電子を前記装着部に固定する固定部材と、を更に備えることを特徴とする。
また、本発明は、並設されたワイヤ群と被加工物との間の放電により当該被加工物をスライスするマルチワイヤ放電加工装置において、当該ワイヤ群に一括で接触して当該ワイヤ群に電圧を供給する給電子が装着される給電ユニットであって、前記ワイヤ群に一括で接触する前記給電子が装着される装着部と、前記ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向の前記装着部の傾きを調整する調整部と、を備え、前記給電子は、円柱状の給電子であって、前記円柱状の給電子の内側は前記給電子の外周の部材よりも電気抵抗の低い部材であり、前記円柱状の軸方向の給電子の両端にも当該部材が設けられた給電子であり、前記円柱状の軸方向の給電子の両端に設けられた当該部材を前記装着部側に押し下げて前記給電子を前記装着部に固定する固定部材を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、給電子を装着部に固定し、並設されたワイヤ群に一括で接触する給電子と当該ワイヤ群との接触圧のばらつきを低下させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】マルチワイヤ放電加工システムを前方から見た外観図である。
図2図1に示した給電子11の外形を示す図である。
図3図1に示した給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301の側面図である。
図4図1に示した給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301、及び給電子固定ブロック支持部402の側面図である。
図5図1に示した給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301、及び給電子固定ブロック支持部402の側面図であって、給電子固定ブロック支持部402が、給電子11とワイヤ群7との平行を維持したまま、鉛直方向に移動した図である。
図6】給電子11が装着された給電ユニット10を上部から見た図である。
図7】給電子11が装着された給電ユニット10を右側から見た図である。
図8】給電子11が装着された給電ユニット10を右側から見た図であって、ワイヤ群7と給電子11とが平行になっていない様子を示す図である。
図9】給電子11が装着された給電ユニット10を右側から見た図であって、後側の高さ調整用ねじ603をしめることで、後方の給電子固定ブロック301とプレート501との間の距離を長くし、ワイヤ群7と給電子11とを平行にした図である。
図10】複数の形態の給電子11の側面図である。
図11】給電子11の内部を銅1002やステンレスなどの部材で構成し、外周を超硬合金1001で構成した給電子11の斜視図(a)、側面図(b)、平面図(C)である。
図12】給電子11の内部を空(中空1003)にし、外周を超硬合金1001で構成した給電子11の斜視図(a)、側面図(b)、平面図(C)である。
図13】給電子11の中空にシャフト1301を挿入した図である。
図14】給電子11が装着された給電ユニット10を右側から見た図である。
図15】給電子11が装着された給電ユニット10を上部から見た図である。
図16】側面にマークが付されている各給電子11の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を好適な実施形態に従って詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るマルチワイヤ放電加工装置1を前方から見た外観図である。尚、図1に示す各機構(各手段)の構成は一例であり、目的や用途に応じて様々な構成例があることは言うまでもない。
【0016】
本発明の実施の形態に係るマルチワイヤ放電加工システムは、マルチワイヤ放電加工装置1、電源ユニット(電源装置)15、加工液供給装置18から構成されている。
【0017】
マルチワイヤ放電加工システムは、放電により、並設された複数本のワイヤの間隔で被加工物5(シリコンインゴットなど)を薄片にスライスすることができる。
【0018】
マルチワイヤ放電加工装置1は、電源ユニット15と電線(電圧印加線)を介して接続されており、電源ユニット15から供給される電力により作動する。
【0019】
マルチワイヤ放電加工装置1は、不図示のサーボモータにより駆動される被加工物の送り装置3が上下方向に移動することにより、被加工物の送り装置3に接着部4(たとえば、導電性接着剤)により接着されている被加工物5を上下方向に移動することができる。
【0020】
また、マルチワイヤ放電加工装置1は、本発明に係るマルチワイヤ放電加工装置の適用例であり、ワイヤ群7と被加工物5との間で発生する放電により被加工物5をスライスして加工する。
【0021】
本発明の実施の形態では、被加工物5が下方向に移動することで、被加工物5とワイヤ群7とが接近し、被加工物5とワイヤ群7との間で放電が発生し、被加工物5の放電加工を行う。このとき、被加工物5とワイヤ群7との間の間隙には加工液が満たされており、この加工液が所定幅の電気抵抗値を有していることから、被加工物5とワイヤ群7との間で放電が発生し、被加工物5の放電加工を行うことができる。
【0022】
また、被加工物の送り装置3をワイヤ群7よりも下部へ設け、被加工物5を上方向へ移動させることにより、被加工物5とワイヤ群7との間で放電加工を行わせるようにすることも可能である。
【0023】
本実施の形態では、被加工物5の一例としてシリコンインゴットを用いて説明するが、SIC(炭化シリコン)などの、絶縁体ではない他の材料(導体又は半導体)を用いることもできる。
【0024】
マルチワイヤ放電加工装置1は、図1に示すように、マルチワイヤ放電加工装置1の土台として機能するブロック19と、ブロック19の上部に設置されている、ブロック2と、被加工物の送り装置3と、接着部4と、被加工物5と、加工液供給口701を備えた加工液槽6と、メインローラ8と、ワイヤ群7と、メインローラ9と、給電ユニット10と、給電子11とを備えている。
【0025】
15は、電源ユニット(電源装置)であり、3は、サーボモータを制御する放電サーボ制御回路が放電の状態に応じて効率よく放電を発生させるために放電ギャップを一定の隙間に保つように制御し、また被加工物5の位置決めを行い、放電加工を進行させる。
【0026】
被加工物の送り装置3は、接着部4により接着(接合)されている被加工物5を上下方向に移動する機構を備えた装置であり、被加工物の送り装置3が下方向に移動することにより、被加工物5をワイヤ群7に近づけることが可能となる。
【0027】
18は、加工液供給装置であり、ワイヤ群7と被加工物5との間で放電が発生する放電加工部の冷却、加工チップ(屑)の除去に必要な加工液をポンプにより加工液槽6に加工液供給口701を介して供給すると共に、加工液中の加工チップの除去、イオン交換樹脂による比抵抗または電導度(1μS〜250μS)の管理及び調整、液温(20℃付近)の管理及び調整を行う。加工液には、主に水が使用されるが、放電加工油を用いることもできる。本実施の形態では、加工液の例として水を用いるが、放電加工油でもよい。
【0028】
8,9はメインローラであり、メインローラには、所望する厚さで加工出来るようにあらかじめ決められたピッチ、数の溝が形成されており、不図示のワイヤ供給ボビンからの張力制御された1本のワイヤ801が2つのメインローラに必要数巻きつけられ、巻き取りボビンへ送られる。そして、1本のワイヤ801が並設されたワイヤ群7の走行速度は100m/minから900m/min程度が用いられる。
【0029】
メインローラ9が回転することによりメインローラ9に巻きつけられたワイヤ群7を走行させる。
【0030】
2つのメインローラが同じ方向でかつ同じ速度で連動して回転することにより、不図示のワイヤ繰出し部から送られた1本のワイヤ801がメインローラ(2つ)の外周を周回し、並設されている複数本のワイヤ群7を同一方向に走行させることができる。
【0031】
ワイヤ群7は、1本の繋がったワイヤ801であり、図示しないボビンから繰り出され、メインローラ8、9の外周面のガイド溝(図示しない)に嵌め込まれながら、当該メインローラの外側に多数回(最大で2000回程度)螺旋状に巻回された後、図示しないボビンに巻き取られる。
【0032】
加工液槽6は、所定の範囲の比抵抗(電気伝導度)に管理及び調整された水を、並設されたワイヤ群7(ワイヤ801のことをワイヤ電極とも言う)と被加工物5とが近接する放電ギャップの位置(放電点)に加工液として供給している。
【0033】
加工液槽6は、被加工物5とワイヤ群7との間の放電に用いられる加工液が貯留される加工液槽であって、被加工物5とワイヤ群7との間に加工液槽6内の加工液が位置するように設けられている。
【0034】
加工液槽6内への加工液の供給は、加工液槽6の下部に備えられた加工液供給口701(加工液供給部とも言う。)から行われる。
【0035】
給電ユニット10は、電源ユニット15から電線を介して給電子11に対して電圧を印加し、当該電圧が印加される給電子11を装着して固定する給電装置である。
【0036】
すなわち、給電ユニット10は、本発明の給電ユニットであり、並設されたワイヤ群7に一括で接触してワイヤ群7に電圧を供給する給電子11が装着される給電ユニット10である。
【0037】
給電ユニット10は、円柱の形状、又は円筒の形状(中空を有する形状)の給電子を装着し、ワイヤ群7の走行方向に対して垂直方向(ワイヤ群が並んでいる幅方向)と平行になるように、給電子11の(円柱又は円筒の)軸の傾きを調整する軸方向調整機構(調整部)と、ワイヤ群の走行方向に対して垂直に給電子を押し当てるために、給電子(円柱又は円筒の)をワイヤ群に対して平行に移動させる機構(移動部)とを備えている。
【0038】
給電子11の表面のみ、又は給電子11の内部を含む全ては、機械的摩耗に強く、導電性がある超硬合金が使用されている。
【0039】
メインローラ8,9の間の中央部の上部に、被加工物5が配置され、被加工物5は被加工物の送り装置3に取付けられており、被加工物の送り装置3が上下方向に移動することにより、被加工物5が上下方向に移動し、被加工物5の加工を行う。
【0040】
また、メインローラ8,9間の中央部に加工液槽6を設け、ワイヤ群7および被加工物5を加工液槽6内の加工液に浸漬し、放電加工部の冷却、加工チップの除去を行う。
【0041】
また、ワイヤ801は、電気伝導体であり、電源ユニット15から電圧が供給された給電ユニット10の給電子11と、ワイヤ群7とが接触することにより、当該供給された電圧が給電子11からワイヤ群7に印加される。(給電子11を介してワイヤ群7に電圧を印加している。)
【0042】
そして、各ワイヤ801と、被加工物5との間で放電が起き、被加工物5を加工し(放電加工を行い)、薄板状の加工物(例えばシリコンウエハ)を作成することが可能となる。
次に、図2について、説明する。
図2は、図1に示した給電子11の外形を示す図である。
【0043】
図2の(a)は、給電子11の斜視図であり、図2の(b)は、給電子11の側面図であり、図2の(c)は、給電子11の平面図である。
図2に示すように、給電子11は、円柱の形状である。
【0044】
このように、給電子を円柱状にすることで、ワイヤ群7にまとめて(一括で)給電することが可能となり、給電子11とワイヤ群7とが接触することによるワイヤ群のダメージを低減すると共に、給電子の円の全ての外周を、ワイヤ群と接触する部分として利用することが可能となるため、給電子の交換頻度を少なくし、給電子を長く使用することが可能となる。
次に、図3について、説明する。
【0045】
図3は、図1に示した給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301の側面図である。
【0046】
すなわち、図3は、マルチワイヤ放電加工装置1を前方から見た場合の給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301の図である。
【0047】
図3に示すように、給電子11の円柱の外周に、複数のワイヤ群7が接触している。
【0048】
給電子固定ブロック301は、本発明の装着部の適用例であり、給電子の外周がワイヤ群7に一括で接触する給電子が装着される。
【0049】
また、給電子固定ブロック301は、給電子を固定するためのブロックであり、給電子11を装着できるように、給電子11の円柱の円と同じ形状の凹みが形成されている。
【0050】
この凹み(装着部の給電子が装着される部位の形状)は、円柱状、又は円筒状の給電子の円の中心点が装着部内に位置し、円柱状、又は円筒状の給電子の外周のうち半分以上の外周が接する形状である。
【0051】
また、図3に示すように、給電子11の円の中心点が、給電子固定ブロック301の内部に位置するように、給電子固定ブロック301に彫り(凹み)が形成されており、給電子11を、給電子11の円柱の軸方向にスライドさせて給電子固定ブロック301に装着することが可能となる。
【0052】
ただ、単に、給電子11の円柱の軸方向にスライドさせて給電子固定ブロック301に装着しただけでは、走行するワイヤ群7に接触することで給電子11が回転することも考えられる。そのため、給電子11の回転を防止するために、給電子を固定するための固定ねじ302を設けている。
【0053】
この固定ねじ302は、給電子固定ブロック301に設けられたねじ穴から挿入され、給電子11に接触させることで、給電子11を固定する。
【0054】
この固定ねじ302は、本発明の第1の固定部材の適用例であり、給電子を装着部の方向に押圧して固定する部材である。
【0055】
次に、図4図5図6図7を用いて、図1に示した給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301、及び給電子固定ブロック支持部402について説明する。
【0056】
図4は、図1に示した給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301、及び給電子固定ブロック支持部402の側面図である。
【0057】
図5は、図1に示した給電子11が装着された給電ユニット10が備える給電子固定ブロック301、及び給電子固定ブロック支持部402の側面図であって、給電子固定ブロック支持部402が、給電子11とワイヤ群7との平行を維持したまま、鉛直方向に移動した図である。
図6は、給電子11が装着された給電ユニット10を上部から見た図である。
図7は、給電子11が装着された給電ユニット10を右側から見た図である。
【0058】
図4に示すように、給電ユニット10は、給電子固定ブロック301、及び給電子固定ブロック支持部402を備えている。
【0059】
給電子固定ブロック301は、給電子11を固定する固定ねじ302と、高さ調整用ねじ603と、締結用ねじ602と、それぞれのねじのねじ穴を備えている。
【0060】
また、給電子固定ブロック支持部402は、絶縁プレート403と、プレート601と、固定ねじ405と、シャフト固定部409を備えるレバー404と、シャフト406と、固定ねじ407と、カム408と、締結用ねじ602のねじ穴を備えるプレート501と、固定ねじ401と、シャフト604と、シャフト406とを備えている。
【0061】
給電子固定ブロック301を本発明の装着部として説明するが、給電子固定ブロック301と給電子固定ブロック支持部402とをあわせたものを本発明の装着部としてもよい。
【0062】
給電子固定ブロック支持部402は、電源ユニット15から電線を介して給電子に供給される電圧が、給電ユニット10の土台であるブロック19に漏電させないための絶縁プレート403を更に備えている。絶縁プレート403は、絶縁体の部材を備えるプレートである。
【0063】
また、図6に示すように、給電子固定ブロック301と給電子固定ブロック支持部402は、締結用ねじ602により締結されている。
【0064】
本実施例では、給電子固定ブロック301と給電子固定ブロック支持部402とが別体でねじ等により締結されている給電ユニット10の例を示しているが、給電子固定ブロック301と給電子固定ブロック支持部402とが一体となり、一体になったものを給電ユニット10とすることもできる。
【0065】
固定ねじ401は、図4〜7に示すように、プレート601とプレート501とを締結し、プレート501を重力方向上部又は下部に回転移動させるための支持部(回転軸)となる。
【0066】
また、レバー404は、楕円の形状のカム408と締結(結合)しているシャフト406と、固定ねじ407により締結されている。
【0067】
レバー404が備えているシャフト固定部409(レバー404とシャフト固定部409とは一体である)、及びシャフト406には、固定ねじ407のねじ穴があり、固定ねじ407により、シャフト406とレバー404が締結されている。
【0068】
また、固定ねじ405は、プレート501が、固定ねじ401を軸として回転した状態を維持するために設けられており、固定ねじ405を締めることで、レバー404を固定するためのねじである。
【0069】
この固定ねじ405は、本発明の固定部の適用例であり、移動部により移動された装着部を当該移動された位置に固定する。
【0070】
シャフト406は、前後方向のプレート601の穴(シャフト406を通す穴)に装着されている。そして、シャフト406は、楕円の形状のカム408と結合している。
【0071】
そのため、図5に示すように、レバー404を、シャフト406を軸に、左回転させると、カム408がプレート501に接触して、プレート501を固定ねじ401からシャフト604の直線を軸にして、プレート501を左回転させることで、給電子11を重力方向上部に移動させることが可能となる。
【0072】
シャフト406を中心にカム408を回転させる際に、固定ねじ405も、図5の通り、左回転する。この固定ねじ405が移動するためにプレート601には円弧状の溝が設けられている。
【0073】
レバー404、シャフト406、カム408、プレート501、固定ねじ407は、本発明の移動部の適用例である。
【0074】
上述の通り、本発明の移動部は、後述する調整部により調整された傾きを維持した状態で、装着部に装着される給電子11をワイヤ群7に接触させる位置に装着部移動させる(装着部をワイヤ群7の方向に移動させる)。
【0075】
プレート501は、給電子固定ブロック301と締結用ねじ602により締結されている。
【0076】
プレート501は、本発明の支持部の適用例であり、締結用ねじは、本発明の締結部の適用例である。
【0077】
締結用ねじ602(締結部)は、給電子固定ブロック301(装着部)と、給電子固定ブロック301を支持するプレート501(支持部)とを締めて締結する。
【0078】
締結用ねじ602は、給電子固定ブロック301とプレート501とを完全には固定はしないものの、給電子固定ブロック301とプレート501との締結を維持し、緩みを有するねじである。そのため、高さ調整用ねじのプレート501への押し付けにより、給電子固定ブロック301とプレート501と間の距離を長くしたり、短くしたりすることができる。
【0079】
また、締結用ねじ602は、給電子固定ブロック301とプレート501とを締結するねじであり、その締結用ねじ602が、給電子固定ブロック301とプレート501との間で、少なくとも1箇所締結されており、その締結用ねじ602から、ワイヤ群7の走行方向に対して交差する方向に離れた位置の、給電子固定ブロック301又はプレート501に、少なくとも1箇所締結されている構成でもよい。
【0080】
プレート601は、給電子固定ブロック支持部402の前側(前方)、及び後側(後方)に、それぞれ設けられており、それぞれ固定ねじ401とシャフト604によりプレート501と締結されている。
【0081】
また、高さ調整用ねじ603は、給電子固定ブロック301を、ワイヤ群7の走行方向に対して垂直方向(ワイヤ群が並んでいる幅方向)と平行になるように、プレート501と給電子固定ブロック301との間の高さを調整するものである。ここで、高さ調整用ねじ603は、本発明の調整部(軸方向調整機構)の適用例である。
【0082】
本発明の調整部は、ワイヤ群7の走行方向に対して交差する方向の装着部の傾きを調整する。すなわち、調整部は、ワイヤ群7が並設される方向に対する装着部の傾きを調整するものである。
【0083】
高さ調整用ねじ603(調整部)は、図6などに示している通り、ワイヤ群7の走行方向に対して交差する方向に離れた位置の給電子固定ブロック301(装着部)に複数設けられている。
【0084】
高さ調整用ねじ603がねじ穴にかみ合い締められることによる当該高さ調整用ねじ603の移動方向に位置するプレート501の部位には、高さ調整用ねじ603のねじ穴が無いプレートの部材が有るため、高さ調整用ねじ603が締められることにより高さ調整用ねじ603が当該部材を押し出し、給電子固定ブロック301とプレート501との間の距離を広げて調整することができる。
【0085】
そのため、高さ調整用ねじ603は、図8、9などに示している通り、締結用ねじ602から、ワイヤ群7の走行方向に対して交差する方向に離れた位置の給電子固定ブロック301とプレート501との間の距離を調整することができる。
【0086】
図8は、給電子11が装着された給電ユニット10を左側から見た図であって、ワイヤ群7と給電子11とが平行になっていない様子を示す図である。
【0087】
図8では、前方のワイヤ801と給電子11との間の距離(L1)よりも、後方のワイヤ801と給電子11との間の距離(L2)の方が短くなっている。
【0088】
そのため、後側の高さ調整用ねじ603を締めることで、後方の給電子固定ブロック301とプレート501との間の距離を長くし、ワイヤ群7と給電子11とを平行にすることが出来るようになる。
【0089】
後側の高さ調整用ねじ603を締めることで、後方の給電子固定ブロック301とプレート501との間の距離を長くし、ワイヤ群7と給電子11とを平行にした状態を示す図が図9である。
【0090】
図9は、給電子11が装着された給電ユニット10を右側から見た図であって、後側の高さ調整用ねじ603を締めることで、後方の給電子固定ブロック301とプレート501との間の距離を長くし、ワイヤ群7と給電子11とを平行にした図である。
【0091】
このように、ワイヤ群と給電子11とを平行にして、図5に示すように、レバー404を左回転させることで、給電子11とワイヤ群7とを平行に接触させることが可能となる。
次に、給電子11の変形例について説明する。
【0092】
これまで説明した給電子11は、図10の(a)に示すように、超硬合金1001から構成されていることを前提に説明したが、給電子11の内部を、図10の(b)に示すように、銅1002やステンレスなどの部材で構成するようにすることもできる。
【0093】
また、図10の(c)に示すように、給電子11の内部を空(中空1003)にすることもできる。
図10は、複数の形態の給電子11の側面図である。
【0094】
図10の(b)に示したように、給電子11の内部を銅1002やステンレスなどの部材で構成し、外周を超硬合金1001で構成した給電子11の斜視図(図11の(a))、側面図(図11の(b))、平面図(図11の(C))を図11に示す。
【0095】
図11に示すように、超硬合金1001の内部は銅1002が充填されており、給電子の超硬合金1001の軸方向の距離よりも長めに、銅1002が設けられている。
【0096】
このように、給電子11の内部を、超硬合金1001より安価で電気抵抗の低い銅1002やステンレスなどの部材で構成し、外周を超硬合金1001で構成することにより、安価に給電子を製作することができる。
【0097】
図11に示す給電子は、図11に示すように、円柱状の給電子であって、円柱状の給電子の内側は給電子の外周の部材(超硬合金1001)よりも電気的に低抵抗の部材(銅1002やステンレスなどの部材)であり、円柱状の軸方向の給電子の両端にも当該低抵抗の部材が設けられた給電子である。
【0098】
本実施形態に記載された電気的に低抵抗の部材は、銅、又はステンレスを含む材料を含む。
【0099】
次に、図10の(c)に示したように、給電子11の内部を空(中空1003)にし、外周を超硬合金1001で構成した給電子11の斜視図(図12の(a))、側面図(図12の(b))、平面図(図12の(C))を図12に示す。
図12の給電子は、円筒状の給電子である。
【0100】
このように中空1003を有する給電子11を用いる場合には、超硬合金1001より安価で電気抵抗の低い銅1002やステンレスなどの部材であるシャフト1301を、図13に示すように、円筒状の給電子の内部の空間に挿入することで、給電子11の中心部の部材(シャフト1301)を再利用することが可能となる。
【0101】
また、この場合も、図11で説明したように、給電子の超硬合金1001の軸方向の距離よりも長いシャフト1301が用いられる。
【0102】
すなわち、シャフト1301は、円筒状の給電子の内側に挿入されるシャフトであって、外周の給電子の部材(超硬合金1001)よりも電気的に低抵抗の部材(銅1002やステンレスなどの部材)で構成され、給電子の軸方向の長さよりも長いシャフトである。
【0103】
次に、このような給電子を給電子固定ブロック301に固定する方法について、説明する。
【0104】
図14図15に示すように、給電子固定ブロック301と、銅1002、又はシャフト1301とを給電子固定用ねじ401で締結する。
【0105】
給電子固定用ねじ401は、本発明の第2の固定部材の適用例であり、円柱状の軸方向の給電子の両端に設けられた当該低抵抗の部材を装着部の方向に押圧して固定する。
【0106】
給電子固定用ねじ401は、本発明の第3の固定部材の適用例であり、円筒状の給電子に挿入されたシャフトの両端、又はいずれか一方を装着部の方向に押圧して固定する。

【0107】
これにより、給電子11を固定し、ワイヤが走行することにより給電子が回転することを防ぐことができる。また、図3で示した固定ねじ302を用いる必要がなくなり、給電子の外周表面を固定ねじ302で傷つけるおそれも低減できる。
図16は、給電子11の側面にマークを付した給電子の一例を示す図である。
【0108】
図16に示すように、給電子の側面にマークを付けることにより、給電子を回転した距離を容易に把握することが可能となる。
【0109】
本実施形態では、例えば、図8に示すように、高さ調整用ねじ603が給電子固定ブロック301に設けられている例を説明したが、その代わりに、高さ調整用ねじ603がプレート501に設けられていても良い。この場合、プレート501に高さ調整用ねじ603のねじ穴があり、給電子固定ブロック301に当該ねじ穴が無い構成となる。
【0110】
この場合、高さ調整用ねじ603が当該ねじ穴にかみ合い締められることによる当該高さ調整用ねじ603の移動方向に位置する給電子固定ブロック301の部位には、高さ調整用ねじ603のねじ穴が無く給電子固定ブロック301の部材が有るため、高さ調整用ねじ603が締められることにより高さ調整用ねじ603が当該部材を押し出して、給電子固定ブロック301とプレート501との間の距離を広げて調整することができる。この場合も、高さ調整用ねじ603は、ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向に離れた位置のプレート501に設けられている。そして、高さ調整用ねじ603は、ワイヤ群が並設される方向に対する装着部の傾きを調整することができる。
【0111】
以上、本実施例によれば、マルチワイヤ放電加工装置に用いられる給電ユニットが、並設されたワイヤ群に一括で接触する給電子が装着される装着部と、当該ワイヤ群の走行方向に対して交差する方向の装着部の傾きを調整する調整部と、を備えるので、給電子と並設されたワイヤ群とを平行に配置することが容易に調整でき、並設されたワイヤ群に一括で接触する給電子と当該ワイヤ群との接触圧のばらつきを低下させることが可能となる。
【0112】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法としての実施形態も可能であり、具体的には、一又は複数の機器からなる装置に適用してもよい。
〔他の実施形態〕
【0113】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 マルチワイヤ放電加工装置
2 ブロック
3 被加工物の送り装置
4 接着部
5 被加工物
6 加工液槽
701 加工液供給口
8 メインローラ
9 メインローラ
10 給電ユニット
11 給電子
15 電源ユニット(電源装置)
18 加工液供給装置
19 ブロック


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16