特許第5983869号(P5983869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

特許5983869ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法
<>
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000002
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000003
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000004
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000005
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000006
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000007
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000008
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000009
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000010
  • 特許5983869-ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983869
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20160823BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H02K15/02 K
   H02K15/03 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-511167(P2015-511167)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2014057241
(87)【国際公開番号】WO2014167951
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-82224(P2013-82224)
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100148231
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100185878
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 清
(72)【発明者】
【氏名】大島 巧
(72)【発明者】
【氏名】松下 靖志
(72)【発明者】
【氏名】堀 晃久
(72)【発明者】
【氏名】岸 倫人
(72)【発明者】
【氏名】関川 岳
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−78268(JP,A)
【文献】 特開2012−39746(JP,A)
【文献】 特開2001−16808(JP,A)
【文献】 特開2011−15571(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101814805(CN,A)
【文献】 特開平9−163649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K15/02
H02K15/03
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのロータコアに設けられた磁石挿入孔に複数の磁石片を挿入するロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置であって、
磁石投入口および磁石出口を有し、前記磁石投入口に投入された複数の磁石片が前記磁石出口を出るまでの間に整列させて、整列された複数の磁石片が前記磁石出口を経て前記磁石挿入孔に挿入されるように導くガイド手段を備え、
前記ガイド手段の磁石投入口の大きさは、前記磁石挿入孔の大きさよりも大きく、且つ、前記磁石出口の大きさは、前記磁石挿入孔の大きさ以下であって、前記磁石投入口から前記磁石出口に向かう途中までの形状がテーパ形状となっている、
ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置において、
前記ガイド手段の上側に位置する前記磁石投入口に投入された複数の磁石片が前記ガイド手段の下側に位置する前記磁石出口から落ちないように下から支える支持手段と、
複数の磁石片が前記支持手段によって支持された状態で前記支持手段を下降させることによって、複数の磁石片を前記磁石挿入孔に挿入させる下降手段と、
をさらに備えるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置において、
前記支持手段によって支持された複数の磁石片を前記支持手段との間で挟み込むために、上方から押さえ込む押さえ込み手段をさらに備え、
前記下降手段は、前記支持手段および前記押さえ込み手段によって複数の磁石片を挟み込んだ状態で前記支持手段および前記押さえ込み手段を下降させることによって、複数の磁石片を前記磁石挿入孔に挿入させる、
ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置において、
前記磁石挿入孔の位置を検出する磁石挿入孔位置検出手段と、
前記磁石挿入孔位置検出手段によって検出された前記磁石挿入孔の位置に基づいて、前記ガイド手段をロータコアの上に設置する設置手段と、
をさらに備えるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置。
【請求項5】
請求項1に記載のロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置において、
積み重ねた複数の磁石片を下から支える支持手段と、
複数の磁石片が前記支持手段によって支持された状態で前記支持手段を上昇させることによって、前記ガイド手段の下側に位置する前記磁石投入口から複数の磁石片を挿入し、複数の磁石片が前記ガイド手段によって整列された状態で前記支持手段をさらに上昇させることによって、前記ガイド手段の上側に位置する前記磁石出口を経て前記磁石挿入孔に複数の磁石片を挿入させる上昇手段と、
をさらに備えるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置。
【請求項6】
モータのロータコアに設けられた磁石挿入孔に複数の磁石片を挿入するロータコア磁石挿入孔への磁石挿入方法であって、
磁石投入口および磁石出口を有し、前記磁石投入口の大きさは、前記磁石挿入孔の大きさよりも大きく、且つ、前記磁石出口の大きさは、前記磁石挿入孔の大きさ以下であって、前記磁石投入口から前記磁石出口に向かう途中までの形状がテーパ形状となっているガイド手段の前記磁石投入口に複数の磁石片を投入して前記磁石出口を出るまでの間に整列させ、
整列された複数の磁石片を、前記磁石出口を経て前記磁石挿入孔に挿入する、
ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコアの磁石挿入孔に磁石を挿入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのロータコアの磁石挿入孔に挿入する磁石として、複数に分割された磁石片を一体化して形成された長板状磁石を用いる技術が知られている(WO2001/095460A参照)。このように、ロータコアの磁石挿入孔に挿入する磁石を複数の磁石片で形成して、個々の磁石片の体積を小さくすることにより、作用する磁界の変動により発生する渦電流を低減させることができる。
【0003】
ここで、複数の磁石片を接着して長板状にするのには大きな製造コストが発生するため、コスト低減のために、複数の磁石片を接着する工程を廃止して、複数の磁石片をそのままロータコアの磁石挿入孔に挿入する方法が考えられる。
【0004】
しかしながら、ロータコアの磁石挿入孔と磁石片との間の隙間が非常に小さいため、磁石片を磁石挿入孔の真上に高精度で位置決めしないと挿入できないという問題がある。
【0005】
本発明は、高精度の位置決めを必要とせずに、ロータコアの磁石挿入孔に磁石片を挿入することができる技術を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様における、モータのロータコアに設けられた磁石挿入孔に複数の磁石片を挿入するロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置は、磁石投入口および磁石出口を有し、磁石投入口に投入された複数の磁石片が磁石出口を出るまでの間に整列させて、整列された複数の磁石片が磁石出口を経て磁石挿入孔に挿入されるように導くガイド手段を備える。ガイド手段の磁石投入口の大きさは、磁石挿入孔の大きさよりも大きく、且つ、磁石出口の大きさは、磁石挿入孔の大きさ以下であって、磁石投入口から磁石出口に向かう途中までの形状がテーパ形状となっている。
【0007】
本発明の実施形態については、添付された図面とともに以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態におけるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置によって磁石が挿入されたロータを備える回転電機の主要部の構成を示す概略構成図である。
図2図2は、磁石挿入孔に挿入する複数の磁石片を示す図である。
図3図3は、磁石下端位置決め治具の上にロータコアをセットし、磁石挿入孔の位置を検出する工程について説明するための図である。
図4図4は、ロータコアの上にガイド治具をセットする工程について説明するための図である。
図5図5は、ロータコアの下方から、ロータコアの磁石挿入孔内に下側プッシュロッドを挿入し、ガイド治具の下端の位置で停止させる工程について説明するための図である。
図6図6は、ガイド治具の上方から磁石片を1つずつ投入する工程について説明するための図である。
図7図7は、上側プッシュロッドと下側プッシュロッドで複数の磁石片を挟み込む工程について説明するための図である。
図8図8は、複数の磁石片を挟み込んだ上側プッシュロッドと下側プッシュロッドを下降させる工程について説明するための図である。
図9図9は、ガイド治具、下側プッシュロッド、上側プッシュロッドを初期位置に戻す工程について説明するための図である。
図10】複数の磁石片をロータコアの下方から磁石挿入孔に挿入する方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態におけるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置によって磁石が挿入されたロータを備える回転電機の主要部の構成を示す概略構成図である。図1において、左側の図は、回転電機の断面図であり、右側の図は、側面図である。回転電機AAは、図示しないケーシングの一部を構成する円環形のステータ10と、このステータ10と同軸的に配置された円柱形のロータ20とを備える。この回転電機AAは、例えば、電動機であり、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動源として用いられる。ただし、回転電機は発電機であってもよいし、用途が自動車に限定されることはない。
【0010】
ステータ10は、ステータコア11と、複数のコイル12とを備える。複数のコイル12は、ステータコア11に軸心Oを中心とした同一円周上に等角度間隔で形成されるスロット13に収設される。
【0011】
ロータ20は、ロータコア21と、ロータコア21と一体的に回転する回転軸23と、複数の界磁極用磁石体30とを備える。複数の界磁極用磁石体30は、軸心Oを中心とした同一円周上に等角度間隔でロータコア21に形成される磁石挿入孔(スロット)22に収設される。
【0012】
ロータ20の磁石挿入孔22に収設される界磁極用磁石体30は、図2に示すように、長板状の磁石体30を割断分割した複数の磁石片31を、樹脂を用いて接着することによって、一列に整列した磁石片31の集合体として構成されたものである。ただし、後述するように、磁石挿入孔22への挿入時には、割断分割された磁石片の状態で挿入する。そして、全ての磁石片31を磁石挿入孔22に挿入した状態で、樹脂を用いて磁石挿入孔22内で全ての磁石片31を一体化する。
【0013】
続いて、図3図10を用いて、本実施形態におけるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置を用いて、磁石挿入孔22に複数の磁石片31を挿入する方法について説明する。複数の磁石片31は、ロータ20の回転軸方向に設けられているロータコア21の磁石挿入孔22に1つずつ挿入する。ただし、一度に挿入する磁石の数を2つ以上としてもよい。
【0014】
まず初めに、ロータコア支持盤41の上にロータコア21をセットする(図3参照)。ロータコア支持盤41には、ロータコア21の磁石挿入孔22よりも小さい孔41aが設けられている。
【0015】
磁石挿入孔位置検出装置42は、ロータコア21の磁石挿入孔22の位置を高精度に検出する装置であって、例えば、非接触レーザ検出器、タッチプローブ式座標測定器、画像処理により位置を検出する装置である。
【0016】
次に、磁石挿入孔位置検出装置42で検出された磁石挿入孔22の位置に基づいて、ロータコア21の上にガイド治具43をセットする(図4参照)。ガイド治具43のセットは、例えば、簡易ロボットを用いて行うことができる。
【0017】
ガイド治具43には、磁石片31を整列させてロータコア21の磁石挿入孔22に導くための磁石整列孔43aが設けられている。磁石整列孔43aの上部は、磁石片31を挿入しやすくするためにテーパ形状となっている。すなわち、磁石片31の投入口であるガイド治具43の上端の孔の大きさは、磁石片31の出口であるガイド治具43の下端の孔(磁石整列孔43a)の大きさよりも大きく、かつ、ロータコア21の磁石挿入孔22の大きさよりも大きい。また、ガイド治具43の磁石整列孔43aを通過した磁石片31がロータコア21の磁石挿入孔22に入る際に、磁石挿入孔22の入り口で引っかからないように、ガイド治具43の下端の孔(磁石整列孔43a)の大きさは、ロータコア21の磁石挿入孔22の大きさ以下となっている。
【0018】
ガイド治具43は、磁石整列孔43aがロータコア21の磁石挿入孔22と同じ大きさなら、磁石整列孔43aとロータコア21の磁石挿入孔22の側壁の位置が一致するようにセットする。また、磁石整列孔43aがロータコア21の磁石挿入孔22よりも小さい場合には、磁石整列孔43aの側壁が磁石挿入孔22の側壁よりも内側に位置するように、ガイド治具43をセットする。
【0019】
ガイド治具43の内側、すなわち、磁石整列孔43aを形成している側壁43bには、摩擦力の低減と耐摩耗性向上を目的として、DLCコーティング(ダイヤモンドライクコーティング)やCrNコーティング(窒化クロムコーティング)などの表面コーティングが施されている。
【0020】
続いて、ロータコア支持盤41およびロータコア21の下方から、ロータコア21の磁石挿入孔22内に下側プッシュロッド44を挿入し、ガイド治具43の下端の位置で停止させる(図5参照)。なお、下側プッシュロッド44の作動は、図示しないアクチュエータを用いて行うことができる。
【0021】
次に、ガイド治具43の上方から、磁石片31を1つずつ投入する(図6参照)。ガイド治具43の上部(磁石投入口)は、ロータコア21の磁石挿入孔22よりも大きく、かつ、テーパ形状となっているので、磁石片を投入する際に高精度の位置決めは必要とされない。最初に投入された磁石片31は、ガイド治具43の磁石整列孔43a内を落下し、下側プッシュロッド44の上に乗って停止する。その後に投入された磁石片31は、それまでに投入されて積み重なった磁石片31の上に積み重なっていく。これにより、投入された複数の磁石片31は、ガイド治具43の磁石整列孔43a内で、横ずれ無く高精度に整列される。
【0022】
続いて、ガイド治具43の上方から、ガイド治具43の磁石整列孔43aに向けて上側プッシュロッド45を挿入し、上側プッシュロッド45と下側プッシュロッド44で複数の磁石片31を挟み込むようにする(図7参照)。これにより、複数の磁石片31は、上側プッシュロッド45と下側プッシュロッド44で上下を挟み込まれて、横ずれしない状態となる。なお、上側プッシュロッド45の作動は、図示しないアクチュエータを用いて行うことができる。
【0023】
続いて、複数の磁石片31を挟み込んだ状態で、最も下に位置している磁石片31がロータコア支持盤41の上端と当接するまで、上側プッシュロッド45と下側プッシュロッド44を下降させる。これにより、複数の磁石片31は、横ずれしない状態でロータコア21の磁石挿入孔22内に挿入される(図8参照)。
【0024】
最後に、ガイド治具43、下側プッシュロッド44、上側プッシュロッド45を初期位置に戻す(図9参照)。すなわち、ガイド治具43をロータコア21から取り外すとともに、下側プッシュロッド44を下方に、上側プッシュロッド45を上方に移動させる。
【0025】
ロータコア21の磁石挿入孔22に全ての磁石片31が挿入されると、次工程である磁石樹脂モールド工程において、複数の磁石片31を磁石挿入孔22内で樹脂モールドにより固定する処理が行われる。なお、磁石挿入孔22に挿入された磁石片の落下防止のために、ロータコア21を磁石樹脂モールド工程へ搬送する際には、ロータコア支持盤41もロータコア21と共に搬送する。
【0026】
<変形例>
上述した説明では、複数の磁石片31をロータコア21の上方から磁石挿入孔22に挿入したが、ロータコア21の下方から磁石挿入孔22に挿入することもできる。
【0027】
図10は、複数の磁石片31をロータコア21の下方から磁石挿入孔22に挿入する方法について説明するための図である。
【0028】
まず初めに、ロータコア支持盤41の上にロータコア21をセットする。ロータコア支持盤41には、後述するように、ロータコア支持盤41の内側にガイド治具43をセットするための孔が設けられている。また、図示しない磁石挿入孔位置検出装置によって、磁石挿入孔22の位置を検出する。
【0029】
次に、磁石挿入孔位置検出装置で検出された磁石挿入孔22の位置に基づいて、ロータコア21の下であって、かつ、ロータコア支持盤41の内側にガイド治具43をセットする(図10参照)。
【0030】
続いて、下側プッシュロッド44の上に、直接、複数の磁石片31を仮積みする。ここでは、複数の磁石片31の横位置がずれないように高精度に積み重ねる必要はない。
【0031】
次に、ロータコア21の上部から磁石挿入孔22内を通過するように上側プッシュロッド45を下降させて、上側プッシュロッド45と下側プッシュロッド44で仮積みされた複数の磁石片31を挟み込む。複数の磁石片31を挟み込んで倒れないようにした状態で、上側プッシュロッド45および下側プッシュロッド44を上昇させて、複数の磁石片31をガイド治具43の磁石整列孔43aに挿入する。この時、磁石片31が磁石整列孔43aに挿入され始めると、磁石片31が倒れる恐れはなくなるため、上側プッシュロッド45を少し上昇させて挟み込む力を緩める。これにより、複数の磁石片31は、ガイド治具43の磁石整列孔43a内で、横ずれ無く高精度に整列される。
【0032】
全ての磁石片31が磁石整列孔43a内で整列されると、上側プッシュロッド45および下側プッシュロッド44で複数の磁石片31を再度挟み込んで横ずれしない状態とし、その状態で、上側プッシュロッド45と下側プッシュロッド44を上昇させて、複数の磁石片31をロータコア21の磁石挿入孔22内に挿入する。なお、磁石挿入孔22内における磁石片の上端を位置決めするための上端位置決め部材を設けて、複数の磁石片31のうちの最上位の磁石片31が上端位置決め部材に当接するまで上側プッシュロッド45と下側プッシュロッド44を上昇させるようにすれば、磁石挿入孔22内における複数の磁石片31の位置決めを容易に行うことができる。
【0033】
複数の磁石片31がロータコア21の磁石挿入孔22内に挿入されると、ガイド治具43、下側プッシュロッド44、上側プッシュロッド45を初期位置に戻す。ただし、この変形例では、下側プッシュロッド44を初期位置に戻す前に、複数の磁石片31の落下防止のために、ロータコア支持盤41とは別の部材である磁石片支持部材を取り付ける必要がある。
【0034】
以上、一実施の形態におけるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置によれば、磁石投入口および磁石出口を有し、磁石投入口に投入された複数の磁石片31が磁石出口を出るまでの間に整列させて、整列された複数の磁石片31が磁石出口を経て磁石挿入孔22に挿入されるように導くガイド治具43を備える。ガイド治具43の磁石投入口の大きさは、磁石挿入孔22の大きさよりも大きく、且つ、磁石出口の大きさは、磁石挿入孔22の大きさ以下であって、磁石投入口から磁石出口に向かう途中までの形状がテーパ形状となっている。磁石片31を磁石挿入孔22に挿入するために、テーパ形状となっているガイド治具43の磁石投入口に磁石片31を投入すればよいので、磁石片31を磁石挿入孔22に対して高精度に位置決めすることなく挿入することができる。これにより、ロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置を安価に製造することができ、モータの製造コストを低減することができる。
【0035】
また、ガイド治具43で複数の磁石片31を整列させてからスムーズに磁石挿入孔22に挿入することができるので、磁石片31の角を面取りする必要がなく、面取りの手間を省くことができる。また、磁石片31の角を面取りすると、その分体積が減って磁石の性能が低下するが、そのような問題が生じることもない。
【0036】
さらに、磁石片31をそのままロータコアの磁石挿入孔22に挿入しようとすると、長板状磁石を挿入する場合に比べて、1つの磁石片の重量が小さくなるため、その分、磁石挿入時の落下エネルギーが小さくなる。従って、磁石片31が磁石挿入孔22の側壁に接触すると、その摩擦抵抗により、磁石片31の姿勢が傾き、磁石挿入孔22の途中で磁石片31が引っかかりやすくなるという問題が生じる。しかし、本実施形態によれば、ガイド治具43で複数の磁石片31を整列させてから磁石挿入孔22に挿入するので、磁石片31が磁石挿入孔22の側壁に接触することによって姿勢が傾いて磁石挿入孔22の途中で引っかかるという問題が生じるのを防ぐことができる。
【0037】
また、一実施の形態におけるロータコア磁石挿入孔への磁石挿入装置によれば、ガイド治具43の上側に位置する磁石投入口に投入された複数の磁石片31がガイド治具43の下側に位置する磁石出口から落ちないように、下側プッシュロッド44によって下から支える。そして、複数の磁石片が下側プッシュロッド44によって支持された状態で下側プッシュロッド44を下降させることによって、複数の磁石片31を磁石挿入孔22に挿入させる。これにより、複数の磁石片31は、ガイド治具43の磁石整列孔43a内で横ずれ無く高精度に整列されるので、複数の磁石片31を精度良く磁石挿入孔22に挿入することができる。
【0038】
さらに、磁石挿入孔の位置を検出し、検出した磁石挿入孔の位置に基づいて、ガイド治具43をロータコア21の上に設置するので、複数の磁石片31を精度良く磁石挿入孔22に挿入することができる。
【0039】
また、複数の磁石片31を下側プッシュロッド44および上側プッシュロッド45によって挟み込んだ状態で、下側プッシュロッド44および上側プッシュロッド45を下降させることによって、複数の磁石片31を磁石挿入孔22に挿入させる。これにより、ガイド治具43から磁石挿入孔22に複数の磁石片31を挿入する際に、磁石片の倒れや横ずれが発生するのを防ぐことができる。
【0040】
また、積み重ねた複数の磁石片31を下側プッシュロッド44によって下から支え、複数の磁石片31が下側プッシュロッド44によって支持された状態で下側プッシュロッド44を上昇させることによって、ガイド治具43の下側に位置する磁石投入口から複数の磁石片31を挿入し、複数の磁石片31がガイド治具43によって整列された状態で下側プッシュロッド44をさらに上昇させることによって、ガイド治具43の上側に位置する磁石出口を経て磁石挿入孔22に複数の磁石片31を挿入させることも可能である。この方法によれば、下側プッシュロッド44の上に複数の磁石片31を仮積層してから、ガイド治具43内に挿入するので、ガイド治具43内で複数の磁石片31が積層されるまで待つ必要がなく、より早く複数の磁石片31を磁石挿入孔22に挿入することができる。
【0041】
本発明は、上述した一実施の形態に限定されることはなく、様々な変形や応用が可能である。
【0042】
本願は、2013年4月10日に日本国特許庁に出願された特願2013−082224に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10