(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983874
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】内燃エンジンの始動制御装置及び始動制御方法
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20160823BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20160823BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20160823BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20160823BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20160823BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20160823BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20160823BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
F02D29/02 321B
F02N11/04 D
F02N11/08 K
F02N11/08 Z
B60K6/485ZHV
B60K6/543
B60K6/20 320
B60K6/20 310
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-519734(P2015-519734)
(86)(22)【出願日】2014年4月11日
(86)【国際出願番号】JP2014060473
(87)【国際公開番号】WO2014192439
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-113818(P2013-113818)
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100148231
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100195914
【弁理士】
【氏名又は名称】紙谷 康史
(72)【発明者】
【氏名】大埜 健
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 桂
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−136508(JP,A)
【文献】
特開2001−152901(JP,A)
【文献】
特開2008−157095(JP,A)
【文献】
特開2001−193612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
B60K 6/485
B60K 6/543
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 20/00
F02N 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標アイドル回転速度まで内燃エンジンをクランキングできる強クランキング装置と、
前記強クランキング装置よりも出力が小さく目標アイドル回転速度までは前記内燃エンジンをクランキングできない弱クランキング装置と、
を備える内燃エンジンの始動制御装置であって、
前記強クランキング装置でクランキングして前記内燃エンジンを目標アイドル回転速度にして始動する燃焼圧力不要モードで始動するか、前記弱クランキング装置でクランキングしつつ前記内燃エンジンに燃料を供給することで生じた燃焼圧力を併用して前記内燃エンジンを目標アイドル回転速度にして始動する燃焼圧力併用モードで始動するかを判定する始動モード判定部と、
前記燃焼圧力不要モードで始動する場合と前記燃焼圧力併用モードで始動する場合とで、クランキング中の吸入空気量を異ならせる吸気量制御部と、
を含む内燃エンジンの始動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃エンジンの始動制御装置において、
前記吸気量制御部は、前記燃焼圧力不要モードで始動する場合には、前記燃焼圧力併用モードで始動する場合に比べて、クランキング中の吸入空気量を少なくする、
内燃エンジンの始動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃エンジンの始動制御装置において、
前記吸気量制御部は、前記燃焼圧力不要モードでのクランキング中の吸入空気量が、前記燃焼圧力併用モードでのクランキング中の吸入空気量に対して、目標アイドル回転速度のときに前記強クランキング装置が出力できるトルクに相当する燃焼圧力を発生するのに必要な空気量分だけ少なくする、
内燃エンジンの始動制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の内燃エンジンの始動制御装置において、
前記吸気量制御部は、前記燃焼圧力不要モードで始動する場合に、クランキング中の吸入空気量を、目標アイドル回転速度を維持するのに必要な量のみにする、
内燃エンジンの始動制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の内燃エンジンの始動制御装置において、
前記強クランキング装置は、車両の走行にも用いられる電動機であり、
前記弱クランキング装置は、前記車両の走行には用いられない電動機である、
内燃エンジンの始動制御装置。
【請求項6】
目標アイドル回転速度まで内燃エンジンをクランキングできる強クランキング装置と、
前記強クランキング装置よりも出力が小さく目標アイドル回転速度までは前記内燃エンジンをクランキングできない弱クランキング装置と、
を備える内燃エンジンの始動制御方法であって、
前記強クランキング装置でクランキングして前記内燃エンジンを目標アイドル回転速度にして始動する燃焼圧力不要モードで始動するか、前記弱クランキング装置でクランキングしつつ前記内燃エンジンに燃料を供給することで生じた燃焼圧力を併用して前記内燃エンジンを目標アイドル回転速度にして始動する燃焼圧力併用モードで始動するかを判定する始動モード判定手順と、
前記燃焼圧力不要モードで始動する場合と前記燃焼圧力併用モードで始動する場合とで、クランキング中の吸入空気量を異ならせる吸気量制御手順と、
を含む内燃エンジンの始動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃エンジンの始動を制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2001−193612Aでは、エンジン始動用モーター(スターター)又はモータージェネレーターを用いて内燃エンジンを始動する。そして、乗員が感じる違和感を防止すべく、いずれで始動するのかを、車速に応じて切り替えている。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、
JP2001−193612Aでは、スターターで始動するのかモータージェネレーターで始動するのかに応じた始動時の吸入空気量について検討されていない。そのため、始動直後にエンジン回転速度が吹け上がったり落ち込んだりする可能性がある。
【0004】
そこで本発明では、始動直後のエンジン回転速度の吹け上がりや落ち込みを低減できる内燃エンジンの始動制御装置及び始動制御方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、出力が大きく目標アイドル回転速度まで内燃エンジンをクランキングできる強クランキング装置と、出力が小さく目標アイドル回転速度までは前記内燃エンジンをクランキングできない弱クランキング装置と、を備える内燃エンジンの始動制御装置が提供される。そして、この内燃エンジンの始動制御装置は、前記強クランキング装置でクランキングして前記内燃エンジンを目標アイドル回転速度にして始動する燃焼圧力不要モードで始動するか、前記弱クランキング装置でクランキングしつつ前記内燃エンジンに燃料を供給することで生じた燃焼圧力を併用して前記内燃エンジンを目標アイドル回転速度にして始動する燃焼圧力併用モードで始動するかを判定する始動モード判定部と、前記燃焼圧力不要モードで始動する場合と前記燃焼圧力併用モードで始動する場合とで、クランキング中の吸入空気量を異ならせる吸気量制御部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明による内燃エンジンの始動制御装置を適用するシステムの要部構成図である。
【
図2】
図2は、内燃エンジンの始動制御装置のコントローラーが実行する制御内容を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、エンジン冷却水温と燃焼圧力不要モード及び燃焼圧力併用モードの補正用空気量との相間を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、
図2に示された制御ロジックが実行され、燃焼圧力不要モードが選択された場合のタイミングチャートである。
【
図4B】
図4Bは、
図2示された制御ロジックが実行され、燃焼圧力併用モードが選択された場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明による内燃エンジンの始動制御装置を適用するシステムの要部構成図である。
【0008】
本発明による内燃エンジンの始動制御装置は、たとえばハイブリッド車両(Hybrid Electric Vehicle;以下適宜「HEV」と称す)に適用される。ここで、HEV100の要部構成について説明する。
【0009】
HEV100は、内燃エンジン110と、スターター機構120と、モータージェネレーター130と、トランスミッション140と、を含む。
【0010】
内燃エンジン110及びモータージェネレーター130は、HEV100の駆動源である。
【0011】
スターター機構120は、弱クランキング装置としてのスターター121と、ピニオンギヤ122と、リングギヤ123と、を含む。ピニオンギヤ122は、スターター121の回転軸に設けられる。リングギヤ123は、内燃エンジン110と、強クランキング装置としてのモータージェネレーター130との間に設けられる。リングギヤ123は、ピニオンギヤ122に噛合する。このような構成になっているので、スターター用バッテリー124から電力が供給されると、スターター121が回転し、その回転トルクがピニオンギヤ122及びリングギヤ123を介して、内燃エンジン110へ伝達される。スターター121は、クランキング回転速度(たとえば200rpm)までしか、トルクを出すことができず、目標アイドル回転速度(たとえば700rpm)では、トルクを出力できない。そこで、スターター121を用いて内燃エンジン110を始動するときには、スターター121で回転させた内燃エンジン110に燃料を供給することで生じた燃焼圧力を併用して内燃エンジン110を始動する。なおこのようなエンジン始動は、ごく一般的な方法である。
【0012】
モータージェネレーター130は、たとえば三相交流モーターである。モータージェネレーター130は、必要に応じて、ハイブリッド用バッテリー131の電力が、インバーター132を介して供給されて回転する。モータージェネレーター130の回転トルクによって、HEV100を走行させることができる。またモータージェネレーター130の回転トルクによって、内燃エンジン110をクランキングして始動することもできる。モータージェネレーター130のクランキングトルクは、スターター121のクランキングトルクよりも大きい。スターター121は、目標アイドル回転速度では、トルクを出力できないが、モータージェネレーター130は、出力トルクが大きく、内燃エンジン110の目標アイドル回転速度でも、十分なクランキングトルクを出すことができる。この場合は、内燃エンジンの始動に際して、燃焼圧力は特には必要ではない。
【0013】
なおモータージェネレーター130が外力を受けて回転駆動されれば、回生電力を発生する。この回生電力がインバーター132を介してハイブリッド用バッテリー131に充電される。
【0014】
このように、モータージェネレーター130は、HEV100の駆動源であり、かつ、回生電力を発生する発電機であるとともに、内燃エンジン110を始動するための電磁始動装置としての機能をも果たす。
【0015】
トランスミッション140は、内燃エンジン110及び/又はモータージェネレーター130の出力回転を変速する。トランスミッション140とモータージェネレーター130との間には、クラッチ150が設けられる。このクラッチ150は、内燃エンジン110を始動するときには開放される。このようにすることで、内燃エンジン110を始動するときのクランキングトルクが、無用にトランスミッション140に伝達してしまうことを防止できる。
【0016】
ここで、本実施形態の理解を容易にするために、本実施形態の要旨について説明する。
【0017】
上記の通り、本実施形態の内燃エンジンの始動制御装置では、スターター121を用いて内燃エンジンを始動するモード(燃焼圧力併用モード)と、モータージェネレーター130を用いて内燃エンジンを始動するモード(燃焼圧力不要モード)がある。
【0018】
燃焼圧力併用モードでは、クランキングトルクが小さいスターター121を用いて、スターター121で内燃エンジン110を回転させて燃料を供給して燃焼圧力を発生させて内燃エンジン110を始動する。
【0019】
燃焼圧力不要モードでは、モータージェネレーター130で目標アイドル回転速度まで内燃エンジンをクランキングして内燃エンジン110を始動する。モータージェネレーター130は、クランキングトルクが大きいので、内燃エンジンの燃焼圧力を併用しなくても目標アイドル回転速度を維持できる。モータージェネレーター130で始動すれば、スターター121で始動するよりも、短時間で始動できる。そこで、できるだけモータージェネレーター130で始動することが好ましい。
【0020】
ただし、ハイブリッド用バッテリー131の残量が少なかったり、温度が低くて、モータージェネレーター130のクランキングトルクが低下している事態が生じることがある。
【0021】
このような場合には、上述のように燃焼圧力併用モードとして、スターター121を用いて、内燃エンジン110の燃焼圧力を併用して内燃エンジン110を始動するのである。
【0022】
ところで、モータージェネレーター130を用いて内燃エンジン110を始動する場合に、始動時の吸入空気量をどのようにするのかが、従来は、検討されていなかった。従来のスターターで始動するときの設定であるスロットルの開口面積(吸入空気量)を、モータージェネレーターで始動する場合にも適用すると、始動直後にエンジン回転速度が吹け上がったり落ち込んだりしてしまう。内燃エンジンが目標アイドル回転速度まで燃焼で引き上げるためのイナーシャ分を考慮して、空気量を多めにしているためである。
【0023】
そこで、本実施形態では、燃焼圧力不要モードと燃焼圧力併用モードとで吸入空気量を異ならせることに着想したのである。
【0025】
図2は、内燃エンジンの始動制御装置のコントローラーが実行する制御内容を示すフローチャートである。
【0026】
なおこのフローチャートは、微小時間(たとえば10ミリ秒)ごとに繰り返し実行される。
【0027】
ステップS101においてコントローラーは、内燃エンジン110の始動指令があるか否かを判定する。エンジン始動は、ドライバーの操作によって指令される。またアイドリングストップからの復帰時に指令される。なおアイドリングストップは、車両が停止中に内燃エンジン110が停止される場合や、EVモードで走行中に内燃エンジン110が停止される場合がある。コントローラーは、始動指令があるまでは処理を抜け、始動指令があったらステップS102へ処理を移行する。
【0028】
ステップS102においてコントローラーは、燃焼圧力不要モードで始動するか否かを判定する。上述のように、エンジン始動は、ドライバーの操作によって指令され、またアイドリングストップからの復帰時に指令される。アイドリングストップは、バッテリーの残量が十分にあるときにしか許可されない。したがって、アイドリングストップからの復帰シーンでは、通常、燃焼圧力不要モードが選択される。また、アイドリングストップ中に、たとえばエアコンディショナーの使用やEVモードでの走行などによってバッテリーの残量が低下した場合は、燃焼圧力不要モードでエンジン始動ができる残量まで低下したタイミングで内燃エンジン110が始動される。したがって、この場合も、燃焼圧力不要モードが選択される。
【0029】
ドライバーの操作によってエンジン始動するときは、バッテリーの残量が十分であれば燃焼圧力不要モードが選択される。バッテリーの残量が少ない場合や、バッテリーの温度が低く出力可能電力が小さい場合は、燃焼圧力併用モードが選択される。
【0030】
なお燃焼圧力不要モードと燃焼圧力併用モードとを比較すると、燃焼圧力不要モードの方がエンジン始動に要する時間が短い。そこで、いずれのモードでも内燃エンジン110を始動できるときは燃焼圧力不要モードが選択され、燃焼圧力不要モードで始動できないときにのみ燃焼圧力併用モードが選択される。
【0031】
ステップS102においてコントローラーは、判定結果が肯であればステップS103へ処理を移行し、判定結果が否であればステップS104へ処理を移行する。
【0032】
ステップS103においてコントローラーは、燃焼圧力不要モードテーブルTaに基づいて補正用空気量Qaddを設定する。またステップS104においてコントローラーは、燃焼圧力併用モードテーブルTbに基づいて補正用空気量Qaddを設定する。この具体的な内容は、後述される。
【0033】
ステップ
S105においてコントローラーは、目標アイドル回転速度を維持するのに必要な空気量Qbaseに補正用空気量Qaddを加算して総空気量Qallを求める。そして、この総空気量Qallを供給できるように、吸気スロットルの開度、動弁の開閉時期(バルブタイミング)などを制御する。
【0034】
次に、
図3を参照して、燃焼圧力不要モード(ステップS103)及び燃焼圧力併用モード(ステップS104)で設定する補正用空気量について説明する。なお
図3は、エンジン冷却水温と燃焼圧力不要モード及び燃焼圧力併用モードの補正用空気量との相間を示す図である。
【0035】
図3から明らかなように、冷却水温が高いほど、補正用空気量が小さくなる。また燃焼圧力不要モードの補正用空気量のほうが、燃焼圧力併用モードの補正用空気量よりも小さい。
【0036】
燃焼圧力併用モードでは、スターター121で内燃エンジン110を回転させて燃料を供給して燃焼圧力を発生させて内燃エンジン110を始動する。そこで、フリクショントルクに抗してエンジン回転速度を引き上げるのに十分な空気量を設定する。
【0037】
これに対して、燃焼圧力不要モードでは、上述のように、モータージェネレーター130のクランキングトルクだけで内燃エンジン110を目標アイドル回転速度に維持できる。したがって、エンジン冷却水温が十分に高ければ、補正用空気量Qaddを追加することなく、目標アイドル回転速度を維持するのに必要な空気量Qbaseだけを供給すればよい。ただし、エンジン冷却水温が低ければ、燃料が気化しにくいので、エンジン冷却水温が低いほど、多くの補正用空気量Qaddを追加する。
【0038】
なお燃焼圧力不要モードの補正用空気量と燃焼圧力併用モードの補正用空気量との空気量差ΔQaddは、目標アイドル回転速度のときにモータージェネレーター130が出力できるトルクに相当する燃焼圧力を発生するのに必要な空気量である。すなわち、燃焼圧力不要モードでは、目標アイドル回転速度のときにモータージェネレーター130が出力できるトルクに相当する燃焼圧力を発生するのに必要な空気量分だけ、燃焼圧力併用モードで供給する空気量に対して少なくしている。
【0039】
始動完了後は、補正用空気量Qaddは、ゼロまで減少させられる。
【0040】
図4A、
図4Bは、
図2に示された制御ロジックが実行された場合のタイムチャートである。
【0041】
なお以下では、上述のフローチャートとの対応が分かりやすくするために、フローチャートのステップ番号を併記する。
【0042】
図4Aには、燃焼圧力不要モード(モータージェネレーターによる始動モード)の場合が記載されている。
【0043】
時刻t0で内燃エンジン110の始動が指令されて(ステップS101)、燃焼圧力不要モードが選択される(ステップS102でYes)。この場合は、燃焼圧力不要モードテーブルTaに基づいて補正用空気量Qaddが設定され(ステップS103)、総空気量Qallが設定される(S105)。そして、この総空気量Qallが供給されて、内燃エンジン110が始動される。
【0044】
時刻t1で内燃エンジン110の始動が完了した後は、補正用空気量Qaddは、ゼロまで減少させられる。
【0045】
図4Bには、燃焼圧力併用モード(スターターによる始動モード)の場合が記載されている。
【0046】
時刻t0で内燃エンジン110の始動が指令されて(ステップS101)、燃焼圧力併用モードが選択される(ステップS102でNo)。この場合は、燃焼圧力併用モードテーブルTbに基づいて補正用空気量Qaddが設定され(ステップS104)、総空気量Qallが設定される(S105)。そして、この総空気量Qallが供給されて、内燃エンジン110が始動される。
【0047】
時刻t2で内燃エンジン110の始動が完了した後は、補正用空気量Qaddは、ゼロまで減少させられる。
【0048】
図4A、
図4Bに示されるように、燃焼圧力併用モードが選択された場合には、クランキングトルクが小さいスターター121で内燃エンジン110を回転させて燃料を供給したときに、内燃エンジン110を始動させるのに十分なクランキングトルクが生じるように燃焼圧力が発生するように、大きな補正用空気量Qaddが設定される。したがって、内燃エンジン110の確実な始動が担保される。
【0049】
一方、燃焼圧力不要モードが選択された場合には、モータージェネレーター130のクランキングトルクだけで内燃エンジン110を目標アイドル回転速度まで上げて内燃エンジン110を始動する。このとき、基本的には、目標アイドル回転速度を維持するのに必要な空気量Qbaseだけ供給する。エンジン冷却水温が低ければ、燃料が気化しにくいので、補正用空気量Qaddを追加する。つまり、エンジン冷却水温によって多少するものの、目標アイドル回転速度を維持するのに必要な空気量しか供給されない。燃焼圧力不要モードでは、燃焼圧力併用モードに比して小さな補正用空気量Qaddが設定される。このようにするので、内燃エンジン110の回転が吹け上がってドライバーに違和感を与えることを防止できる。またその後のクラッチ締結時のショックを低減できる。さらにEVモードで走行中に内燃エンジン110を始動するときに、駆動力段差が生じることを抑制できる。さらにまた始動時の空気量が無用に多くならないので、始動時の燃料消費量が少なくなり、良好な燃費性能が得られる。内燃エンジンがガソリンエンジンの場合には、本実施形態のように、空気量を少なくして吹け上がりを抑えるのではなく、点火時期をリタードさせるなどして吹け上がりを防止することも考えられるが、そのような手法では燃費が悪化する。本実施形態のように、始動時の無用な空気量を減らすことで、始動時の燃料消費量が少なくなり、良好な燃費性能が得られるのである。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0051】
たとえば、
図3のテーブルは、一例に過ぎない。
図3に実線で示した燃焼圧力不要モードテーブルTaに代えて、エンジン冷却水温が所定温度
よりも高いときには、ゼロに集束する、
図3に破線で示した燃焼圧力不要モードテーブルTa0を用いてもよい。テーブルの具体的な内容は、適宜設定すればよい。
【0052】
また上記説明においては、内燃エンジンの始動制御装置をHEVに適用したが、必ずしもHEVでなくてもよい。
【0053】
目標アイドル回転速度まで内燃エンジンをクランキングできる強クランキング装置と、強クランキング装置よりも出力が小さく目標アイドル回転速度までは内燃エンジンをクランキングできない弱クランキング装置と、を有していれば、内燃エンジンだけで駆動される車両に適用してもよい。
【0054】
本願は2013年5月30日に日本国特許庁に出願された特願2013−113818に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。