(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記マストが前記走行方向に対して直立するように前記接続片部と前記フレーム部とを位置決めする位置決め部材であって、前記接続片部および前記フレーム部の少なくとも一方から着脱可能な位置決め部材を備え、
前記位置決め部材は、前記接続片部および前記フレーム部に装着された場合、前記接続片部および前記フレーム部を前記軸部材とは異なる位置で軸支する
請求項1または2に記載のクレーン装置。
さらに、前記接続片部の前記フレーム部に対する回動可能な方向において、前記フレーム部と前記接続片部との間に介在することで、前記接続片部の前記軸部材を中心とした回動の角度を規制する規制部材を備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレーン装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示されるように、マストを下部台車に対して揺動自在に取り付けた場合、マストと下部台車との接続部に生じる過大な応力は抑制される一方で、マストの姿勢が安定し難いという問題が生じ得る。
【0009】
例えば、下部台車が正規の位置で停止し、かつ、上部台車が正規の位置から少しずれた位置に停止した場合、その少しのずれは、そのままマストの傾きとして現れる。この場合、マストに沿って昇降する移載装置は、上に行けば行くほど、走行方向における正規の位置からずれた位置に停止する。
【0010】
その結果、荷物の移載作業のやり直し(例えば、荷物の置きなおし、または、移載装置の位置の微調整)などの、例えば荷物の移載効率の観点から好ましくない事象の発生頻度が上昇する可能性がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、マストに沿って移載装置を昇降させるクレーン装置であって、信頼性が向上されたクレーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るクレーン装置は、走行路に沿って走行するクレーン装置であって、上下方向に延在し、荷物の移載を行う移載装置の昇降をガイドするマストと、前記走行路に接触する少なくとも1つの車輪を有し、走行方向に延在するフレーム部と、前記マストを前記フレーム部に接続する接続片部と、前記マストが前記走行方向に回動可能なように、前記接続片部と前記フレーム部とを軸支する軸部材と、前記接続片部を前記フレーム部に所定の締結力により固定する固定部材であって、前記マストに加わる前記走行方向の力が所定の値を超えた場合に、前記接続片部の前記軸部材を中心とした回動を許容する固定部材とを備える。
【0013】
この構成によれば、マストは、走行路に沿って移動するフレーム部に、接続片部を介して接続される。この接続片部とフレーム部とは軸部材によって軸支される。従って、マストは、フレーム部に対して軸部材を中心とした回動が可能である。
【0014】
さらに、接続片部は所定の締結力によりフレーム部に固定される。そのため、通常時では、マストの姿勢は正常な姿勢に維持される。つまり、マストの姿勢が安定しないことに起因して発生する、荷物の移載作業のやり直し等の無駄な作業の発生が抑制される。
【0015】
また、本態様のクレーン装置では、例えば過大な力がマストにかけられた場合には、接続片部が、軸部材を中心としてフレーム部に対して回動することで、当該過大な力が逃がされる。つまり、マスト等の部材は、当該過大な力に起因する損傷から免れる。
【0016】
このように、本態様のクレーン装置は、マストに沿って移載装置を昇降させるクレーン装置であって、信頼性が向上されたクレーン装置である。
【0017】
また、本発明の一態様に係るクレーン装置は、さらに、前記走行路に接触する少なくとも1つの車輪を有する基台を備え、前記マストは、前記基台に立設されており、前記接続片部は、前記基台から前記走行方向に突出するように前記基台に設けられているとしてもよい。
【0018】
この構成によれば、マストは、基台および接続片部を介してフレーム部に接続され、接続片部は基台から走行方向に突出した状態で設けられる。つまり、マストとフレーム部とは全体としてL字状の構造物を形成する。
【0019】
この場合、マストの下端とフレーム部との間の空間に、マストとフレーム部とを接続する部分存在しないため、例えば、フレーム部の上面またはその近傍まで移載装置を降下させることができる。その結果、比較的に低い位置に配置された棚に対しても荷物の移載が可能となる。
【0020】
また、マストは、車輪を有する基台に立設されるため、当該車輪が、モータ等の駆動源に回転駆動される駆動輪である場合、マストおよび移載装置等の重量により、駆動輪が走行路の路面に押圧され、その結果、駆動源による駆動力が効率よく路面に伝達される。つまり、駆動輪の空転等の無駄なエネルギーの消費が抑制される。
【0021】
また、本発明の一態様に係るクレーン装置は、さらに、前記マストが前記走行方向に対して直立するように前記接続片部と前記フレーム部とを位置決めする位置決め部材であって、前記接続片部および前記フレーム部の少なくとも一方から着脱可能な位置決め部材を備え、前記位置決め部材は、前記接続片部および前記フレーム部に装着された場合、前記接続片部および前記フレーム部を前記軸部材とは異なる位置で軸支するとしてもよい。
【0022】
この構成によれば、当該クレーン装置の組み立ての際に、容易に、マストを正規の姿勢(直立)にすることができ、その状態で、固定部材で接続片部をフレーム部に固定することで、マストを正規の姿勢に維持することができる。
【0023】
また、クレーン装置の使用時において、例えばマストに過大な力が加えられたことにより、接続片部がフレーム部に対して回動し、その結果、マストが直立した状態から傾いた場合、位置決め部材によって、容易に、マストを直立状態に戻すことができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係るクレーン装置は、さらに、前記接続片部の前記フレーム部に対する回動可能な方向において、前記フレーム部と前記接続片部との間に介在することで、前記接続片部の前記軸部材を中心とした回動の角度を規制する規制部材を備えるとしてもよい。
【0025】
この構成によれば、接続片部の回動角、すなわち、マストの回動角を、必要最小限に抑えることができる。その結果、マストが大きく傾くことに起因してクレーン装置が走行不能になるなどの不具合の発生が抑制される。
【0026】
また、本発明の一態様に係るクレーン装置において、前記接続片部には、前記固定部材が貫通する第一貫通孔が形成されており、前記フレーム部には、前記固定部材が貫通する第二貫通孔が形成されており、前記固定部材は、前記第一貫通孔と前記第二貫通孔とを、前記走行方向および前記上下方向に交差する方向に貫通した状態で前記接続片部を前記フレーム部に固定し、前記第一貫通孔および前記第二貫通孔の少なくとも一方の内径が、前記固定部材の外径よりも大きいことで、前記接続片部の前記軸部材を中心とした回動が許容されるとしてもよい。
【0027】
この構成によれば、固定部材は、例えばボルトのような簡易かつ取り扱いの容易な部材で実現される。また、ボルトの締結時のトルクの調整により、接続片部とフレーム部との間の締結力の調整が可能である。つまり、所定の条件のもとで接続片部の軸部材を中心とした回動が許容されるような締結力の調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本願発明によれば、マストに沿って移載装置を昇降させるクレーン装置であって、信頼性が向上されたクレーン装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態のクレーン装置ついて、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0031】
また、以下で説明する実施の形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0032】
図1は、実施の形態における自動倉庫200の構成概要を示す斜視図である。
【0033】
図2は、実施の形態における下部台車120の構成概要を示す斜視図である。
【0034】
図1に示すように、自動倉庫200は、複数の棚201を有するラック210と、ラック210に沿って配置された走行路に沿って走行するクレーン装置100とを備えている。
【0035】
ラック210は、上下方向(Z軸方向)、および、水平の一方向(X軸方向)に荷物202を並べて保持し、水平の他方向(Y軸方向)に荷物202を独立して出し入れすることができる構造物である。
【0036】
クレーン装置100は、マスト103と、フレーム部130と、マスト103をフレーム部130に接続する接続片部140と、接続片部140とフレーム部130とを軸支する軸部材160と、接続片部140をフレーム部130に固定する固定部材170とを備える。
【0037】
マスト103は、上下方向に延在し、荷物202の移載を行う移載装置102の昇降をガイドする。フレーム部130は、走行方向(本実施の形態ではX軸方向)に延在し、走行路に接触する少なくとも1つの車輪を有する。
【0038】
軸部材160は、マスト103が走行方向に回動可能なように、接続片部140とフレーム部130とを軸支する。
【0039】
固定部材170は、接続片部140をフレーム部130に所定の締結力により固定し、マスト103に加わる走行方向の力が所定の値を超えた場合に、接続片部140の軸部材160を中心とした回動を許容する。
【0040】
本実施の形態では、クレーン装置100は、上部台車114および下部台車120が左右方向(X軸方向)へ移動し、かつ、昇降台104が上下方向(Z軸方向)へマスト103に沿って移動することで、荷物202の搬送作業を行う。
【0041】
つまり、クレーン装置100は、上記動作により、移載装置102をラック210の各棚201の前方に移動させることがきる。これにより、クレーン装置100は、ラック210からの任意の荷物202の取り出し、および、ラック210の任意の位置への荷物202の載置を行うことができる。
【0042】
下部台車120は、走行路に沿って移動し、クレーン装置100を水平方向(X軸方向)に走行させる走行車である。本実施の形態では、下部台車120は、走行用モータ125を備え、建屋の床面に敷設された、走行路の一例である下部レール111上を水平方向に走行する。
【0043】
具体的には、下部台車120は、
図2に示すように、フレーム部130と、接続片部140によってフレーム部130に接続された基台121とを備え、基台121に、マスト103が立設されている。つまり、本実施の形態では、マスト103は、基台121および接続片部140を介して、フレーム部130と接続されている。
【0044】
また、上部台車114は、走行用のモータ(図示せず)を備え、建屋の上部に配設された上部レール113に沿って水平方向に走行する。
【0045】
さらに、下部台車120および上部台車114は同期して移動するように、自動倉庫200を制御するコントローラ(図示せず)に制御される。つまり、マスト103が走行方向に対して直立した姿勢(Z軸に平行な姿勢)を維持した状態で水平方向(X軸方向)に移動するように、下部台車120および上部台車114が制御される。
【0046】
ここで、下部台車120および上部台車114の移動の完全な同期は困難であり、かつ、移載装置102が保持する荷物202の慣性およびマスト103自体の慣性などに起因し、マスト103に、走行方向(X軸方向)に過大な力がかかる場合がある。この場合、マスト103、および、マスト103と下部台車120との接続部分などに大きな応力が生じる。
【0047】
このような場合、本実施の形態におけるクレーン装置100では、接続片部140の回動が許容されることで、マスト103が回動する。その結果、上記大きな応力が逃され、これにより、マスト103等の部材が保護される。
【0048】
接続片部140など、実施の形態におけるクレーン装置100の特徴的な構成については、
図3A〜
図8を用いて後述する。
【0049】
移載装置102は、ラック210とクレーン装置100との間で荷物202の移載を行う装置である。本実施の形態の場合、移載装置102は、多関節のアームユニットにより荷物202の移載を行うスカラーアーム方式が採用されている。
【0050】
移載装置102はアームユニットを関節において回転させることで、狭い空間でもラック210との間で荷物202の移載を行うことができる。
【0051】
なお、
図1では図示していないが、クレーン装置100を挟んでラック210とは反対側に、当該ラック210と対向するように他のラック210を配置することもできる。この場合、移載装置102は当該他のラック210に対しても、荷物202の移載を行うことができる。
【0052】
昇降台104は、マスト103に対し上下方向に摺動自在に取り付けられており、基台121に配置された昇降用モータ126によって、昇降が駆動される。つまり、昇降台104に取り付けられた移載装置102は、マスト103によって昇降がガイドされる。
【0053】
次に、実施の形態におけるクレーン装置100の詳細を、下部台車120の構造を中心に説明する。
【0054】
図3Aは、実施の形態における下部台車120の平面図であり、
図3Bは、実施の形態における下部台車120の側面図である。
【0055】
図3Aおよび
図3Bに示すように、下部台車120は、フレーム部130と、マスト103が立設された基台121とを備える。
【0056】
フレーム部130は、台車部131と、台車部131および基台121を接続する一対のフレーム132とを有する。
【0057】
台車部131は、少なくとも1つの車輪を有する。本実施の形態では、断面がI型の下部レール111の上面に接触して回転する副車輪151と、下部レール111を幅方向(Y軸方向)の両側から挟むように配置された一対の水平ローラ154と、台車部131の浮き上がりを防止する一対の浮上防止ローラ156とを有する。
【0058】
基台121は、マスト103を支持し、少なくとも1つの車輪を有する台車である。本実施の形態では、基台121は、下部台車120の走行を駆動する台車である。
【0059】
具体的には、下部台車120には、上述のように走行用モータ125が配置されており、走行用モータ125により主車輪150が回転駆動されることで、下部台車120が、下部レール111に沿って走行する。
【0060】
また、基台121にはさらに、下部レール111を幅方向(Y軸方向)の両側から挟むように配置された一対の水平ローラ153と、基台121の浮き上がりを防止する一対の浮上防止ローラ155とを有する。
【0061】
このような構成のフレーム部130と基台121とは、接続片部140によって接続されている。
【0062】
接続片部140は、本実施の形態では、基台121から走行方向に突出するように基台121に設けられている。具体的には、基台121における、フレーム部130の一対のフレーム132に対応するそれぞれの位置に、接続片部140が複数のボルトで基台121に取り付けられている。
【0063】
なお、フレーム部130と基台121との接続の態様は、2つの接続片部140のそれぞれにおいて同様であるため、以下、1つの接続片部140に着目し、当該接続片部140およびその周辺の構造的な特徴等を説明する。
【0064】
本実施の形態において、接続片部140とフレーム部130とは、軸部材160によって軸支されている。なお、
図3Aでは、軸部材160は、一点鎖線で概念的に図示されている。
【0065】
また、接続片部140は、固定部材170によってフレーム部130に固定されている。具体的には、接続片部140は、軸部材160の周囲に配置された4つの固定部材170によって固定されている。本実施の形態では、接続片部140とフレーム部130とを締結するボルトによって、固定部材170が実現されている。
【0066】
図4は、実施の形態における下部台車120の、接続片部140の周辺の分解斜視図である。なお、
図4では、フレーム132は切断図で示されている。
【0067】
図4に示すように、軸部材160は、フレーム部130のフレーム132に設けられた第一軸孔133と、接続片部140に設けられた第二軸孔143とを貫通した状態で、接続片部140とフレーム部130とを軸支する。
【0068】
なお、軸部材160は、例えばフレーム132を貫通し軸部材160に一部が挿入されるネジなどの部材(図示せず)によって、フレーム132に固定される。
【0069】
また、複数の固定部材170のそれぞれは、フレーム132に設けられた第一貫通孔135と、接続片部140に設けられた第二貫通孔145とを貫通し、対応するナット171と螺合することで、接続片部140をフレーム部130に所定の締結力で固定する。
【0070】
より詳細には、所定の条件下において、接続片部140の軸部材160を中心とした回動が許容されるように、接続片部140がフレーム部130に固定される。このような固定のメカニズムについては、
図5および
図6を用いて後述する。
【0071】
また、本実施の形態のクレーン装置100は、接続片部140とフレーム部130とを位置決めする位置決め部材180を備えている。具体的には、位置決め部材180は、フレーム132に設けられた第一位置決め孔139と、接続片部140に設けられた第二位置決め孔149とを貫通することで、マスト103が走行方向に対して直立するように接続片部140とフレーム部130とを位置決めする。
【0072】
つまり、位置決め部材180は、本実施の形態では、接続片部140およびフレーム部130に装着された場合、接続片部140およびフレーム部130を軸部材160とは異なる位置で軸支する。
【0073】
例えば、クレーン装置100の組み立て時において、位置決め部材180が、接続片部140とフレーム部130のフレーム132とを貫通した状態で、複数の固定部材170によって、接続片部140がフレーム部130に固定される。その後、位置決め部材180は、接続片部140およびフレーム部130から抜き出される。
【0074】
これにより、マスト103が正規の姿勢(走行方向(X軸方向)に対して直立した姿勢)となった状態で、クレーン装置100が組み立てられる。
【0075】
なお、
図4では、位置決め部材180は、接続片部140およびフレーム部130のそれぞれから分離された状態で図示されている。しかし、位置決め部材180は、接続片部140およびフレーム部130のいずれ一方のみから取り外し可能に備えられていてもよい。
【0076】
例えば、位置決め部材180が、ワイヤ、チェーン、または回動するアームによってフレーム部130または接続片部140に接続されていてもよい。
【0077】
つまり、位置決め部材180は、接続片部140およびフレーム部130の少なくとも一方から着脱可能であればよい。
【0078】
ここで、接続片部140は、上述のように、固定部材170によって、フレーム部130に完全には固定すされず、所定の条件下で軸部材160を中心とした回動が許容されるように固定される。
【0079】
図5は、実施の形態における第一貫通孔135と第二貫通孔145との位置および大きさの関係の一例を示す図である。
【0080】
図6は、実施の形態における第二貫通孔145と固定部材170との相対的なずれを示す図である。
【0081】
なお、
図5は、フレーム132を透視した図であり、フレーム132は点線で示され、接続片部140は実線で示されている。
【0082】
図5に示すように、軸部材160の中心軸(回動軸)をPとした場合を想定する。なお、回動軸Pは、
図5において点Pを通り、紙面に垂直(Y軸に平行)な直線である。
【0083】
本実施の形態では、フレーム132において、回動軸Pから半径rの円周上に、等間隔に4つの第一貫通孔135が配置されている。
【0084】
また、接続片部140では、これら4つの第一貫通孔135に対応するそれぞれの位置に、第二貫通孔145が配置されている。
【0085】
また、丸孔である第一貫通孔135の内径は、固定部材170の外径(第一貫通孔135を貫通する部分の外径)とほぼ同一であり、第一貫通孔135に、固定部材170を無理なく挿入可能である。
【0086】
また、第二貫通孔145は、貫通方向(Y軸方向)に垂直な断面が長円状の孔であり、最大内径が、固定部材170の外径よりも大きく形成されている。
【0087】
より詳細には、
図6に示すように、第二貫通孔145は、第二貫通孔145に挿入された固定部材170が、回動軸Pを中心とする半径rの円周方向に相対的に移動可能な形状および大きさに形成されている。
【0088】
言い換えると、接続片部140は、第二貫通孔145に挿入された固定部材170に対して、Pを中心とする周方向に移動が可能である。
【0089】
ここで、フレーム132と接続片部140とは、固定部材170により、Y軸方向に互いに押圧し合うように所定の締結力によって固定される。この状態において、接続片部140にY軸方向に直交する方向に回動するような外力が掛けられ、かつ、当該外力が、所定の締結力による生じる接続片部140のフレーム132に対する固定力を超えた場合を想定する。
【0090】
この場合、上述のように、接続片部140の第二貫通孔145は固定部材170の外径に対して余裕をもった形状および大きさに形成されているため、接続片部140は、軸部材160を中心として、フレーム132(フレーム部130)に対して回動することができる。
【0091】
すなわち、固定部材170は、第一貫通孔135と第二貫通孔145とを、走行方向(X軸方向)および上下方向(Z軸方向)に交差する方向(本実施の形態ではY軸方向)に貫通した状態で接続片部140をフレーム部130に固定している。
【0092】
また、本実施の形態では、第二貫通孔145の内径が、固定部材170の外径よりも大きいことで、接続片部140の軸部材160を中心とした回動が許容される。
【0093】
従って、マスト103に走行方向(X軸方向)に過大な力が加えられた場合におけるマスト103等の部材の損傷の発生は抑制される。
【0094】
具体的には、マスト103に走行方向(X軸方向)に過大な力が掛けられた場合、フレーム部130(下部台車120)は、構造上、下部レール111と平行な状態に維持されるため、接続片部140には軸部材160を中心とした回動方向の大きな力が働く。
【0095】
このとき、この回動方向の大きな力が、固定部材170による所定の締結力から生じる固定力を越えた場合、接続片部140は、フレーム132に対して回動が許容される。
【0096】
これにより、マスト103に走行方向の力が加わることで生じる、マスト103および接続片部140等の部材で発生する応力は逃がされる。その結果、マスト103および接続片部140等の部材における損傷の発生が抑制される。
【0097】
また、このようなマスト103に過大な力が加えられる状況にない通常時においては、固定部材170により、マスト103は直立した姿勢に安定的に維持される。そのため、マスト103の姿勢が安定し難いことに起因して発生する、荷物202の移載作業のやり直し等の非効率的な動作の発生が抑制される。
【0098】
なお、固定部材170による上記所定の締結力は、理論計算または実験などによって求められる。具体的には、マスト103に走行方向の力が加えられた場合において、マスト103および接続片部140等の部材に、塑性変形または割れなどが生じる前に、接続片部140がフレーム132に対して回動するように、所定の締結力が求められる。
【0099】
また、所定の締結力により生じる固定部材170の接続片部140に対する固定力は、当該所定の締結力、および、接続片部140とフレーム132との間の摩擦係数等を用いて求められる。
【0100】
また、固定部材170による締結力の調整は、例えば、ボルトとして実現される固定部材170では、固定部材170を締め付ける際のトルクの調整によって行われる。
【0101】
ここで、接続片部140がフレーム部130に対して回動した場合、つまり、マスト103が正規の姿勢から傾いた場合、各固定部材170の締結を一旦緩め、位置決め部材180(
図4参照)を用いて、接続片部140とフレーム部130とを位置決めする。これにより、マスト103が正規の姿勢に戻される。
【0102】
つまり、この状態で、各固定部材170を締めなおして接続片部140をフレーム部130に固定する。これにより、マスト103が正規の姿勢(走行方向に対して直立する姿勢)に戻された状態で、クレーン装置100を再度稼動させることができる。
【0103】
また、本実施の形態では、接続片部140は、基台121から走行方向(X軸方向)に突出した状態で設けられている。そのため、マスト103とフレーム部130とは全体としてL字状の構造物を形成している。
【0104】
つまり、マスト103の下端とフレーム部130との間の上下方向の空間に、マスト103とフレーム部130とを接続する部分が存在しない。これにより、例えば、フレーム部130の上面またはその近傍まで移載装置102を降下させることができる。その結果、比較的に低い位置に配置された棚201に対しても荷物202の移載が可能となる。
【0105】
また、マスト103は、駆動輪である主車輪150を有する基台121に立設されるため、マスト103および移載装置102等の重量により、主車輪150が走行路の路面に押圧される。その結果、走行用モータ125による駆動力が効率よく下部レール111に伝達される。つまり、主車輪150の空転等の無駄なエネルギーの消費が抑制される。
【0106】
また、本実施の形態のクレーン装置100はさらに、接続片部140の軸部材160を中心とした回動の角度を規制する規制部材138を備える。
【0107】
具体的には、規制部材138は、接続片部140のフレーム部130に対する回動可能な方向において、フレーム部130と接続片部140との間に介在することで、接続片部140の回動角を規制する。
【0108】
なお、本実施の形態では、
図5に示すように、フレーム132に、接続片部140を挟むように2つの規制部材138が配置されており、
図5における右回りおよび左回りの双方の回動角が規制される。
【0109】
具体的には、
図5に示す、規制部材138と接続片部140との間のクリアランスDを調整することで、
図5における右回りおよび左回りの双方の回動角が、例えば1°に調整される。
【0110】
なお、クリアランスDの調整は、例えば、規制部材138の厚みを変更することで行われる。
【0111】
図7は、実施の形態における規制部材138のフレーム132への取り付けの態様を示す図である。なお、
図7では、フレーム132および接続片部140は、切断図で示されている。
【0112】
図7に示すように、規制部材138は、フレーム132にボルト172によって着脱可能に取り付けられる。なお、
図7では、接続片部140の上方の規制部材138を図示しているが、接続片部140の下方の規制部材138も同様に、フレーム132にボルト172によって着脱可能に取り付けられる。
【0113】
そのため、各規制部材138を、より厚い規制部材138に変更することで、クリアランスDを小さくすること、つまり、接続片部140(マスト103)の回動可能な角度を小さくすることができる。
【0114】
また、各規制部材138を、より薄い規制部材138に変更することで、クリアランスDを大きくすること、つまり、接続片部140(マスト103)の回動可能な角度を大きくすることができる。
【0115】
なお、規制部材138を、例えば、積層可能な複数の金属板で構成することで、規制部材138を構成する金属板の枚数によって、クリアランスDを調整することが可能である。
【0116】
図8は、実施の形態におけるマスト103の回動可能な角度を示す図である。
【0117】
ここで、
図8において、左方をクレーン装置100における前方とし、右方をクレーン装置100における後方とした場合を想定する。
【0118】
この場合、
図8の(a)に示すように、マスト103が、後方に傾いたとき、接続片部140が、接続片部140の上方に配置された規制部材138に当接することで、マスト103の回動角は右回りにθに規制される。
【0119】
また、
図8の(b)に示すように、マスト103が、前方に傾いたとき、接続片部140が、接続片部140の下方に配置された規制部材138に当接することで、マスト103の回動角は左回りにθに規制される。
【0120】
なお、本実施の形態では、接続片部140の上下のクリアランスDが同一であり、その結果、マスト103の右回りおよび左回りの回動可能な角度は同一であるが、マスト103の右回りおよび左回りの回動可能な角度は異なっていてもよい。
【0121】
このように、本実施の形態のクレーン装置100では、接続片部140の回動可能な角度が規制部材138によって規制され、その結果、マスト103の回動可能な角度が規制される。これにより、例えば、マスト103が大きく傾くことに起因してクレーン装置100が走行不能になるなどの不具合の発生が抑制される。
【0122】
ここで、仮に規制部材138が存在しない場合であっても、各第二貫通孔145の内面に、当該第二貫通孔145を貫通する固定部材170が当接することにより、接続片部140の回動角を規制することは可能である。しかしながら、例えば
図5および
図7に示すようにクレーン装置100に規制部材138を配置することで、当該回動角の規制をより確実に行うことができる。
【0123】
以上、本発明のクレーン装置について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0124】
例えば、本実施の形態では、マスト103は、下部台車120の走行を駆動する基台121に立設されるとした。しかしながら、マスト103は、例えば、フレーム部130の上方に設置されてもよい。
【0125】
図9は、フレーム部130の上方にマスト103が設置された場合の下部台車120の一例を示す側面図である。
【0126】
例えば、
図9に示すように、マスト103から下方に突出するように設けられた接続片部141とフレーム部130とが、軸部材160によって軸支されてもよい。つまり、この場合、マスト103に直接的に接続された接続片部141と、フレーム部130とが軸部材160によって軸支され、1以上の固定部材170によって、接続片部141とフレーム部130とが回動が許容されるように固定される。
【0127】
この場合であっても、マスト103に走行方向(X軸方向)に過大な力が加えられた場合において、接続片部141の軸部材160を中心とした回動が許容されることで、マスト103が回動する。その結果、フレーム部130マスト103等の部材の損傷の発生は抑制される。
【0128】
また、本実施の形態では、位置決め部材180は、接続片部140およびフレーム部130を貫通する棒体として実現されている。しかしながら、位置決め部材180は、接続片部140とフレーム部130とを位置決めできる形状、構造および強度を有していればよい。
【0129】
例えば、位置決め部材180が、上述の規制部材138のように、接続片部140の回動可能な方向においてフレーム部130と接続片部140との間に介在する部材として実現されてもよい。この場合であっても、軸部材160に軸支された状態の接続片部140の位置決め(接続片部140のフレーム132に対する姿勢の決定)は可能である。
【0130】
また、本実施の形態では、第二貫通孔145の、貫通方向(Y軸方向)に垂直な断面が長円状であるとしたが、第二貫通孔145の断面形状に特に限定はない。第二貫通孔145の断面形状は、例えば、固定部材170の外径よりも大きな円であってもよく、また、直線と曲線とが組み合わされた形状であってもよい。
【0131】
また、本実施の形態では、第二貫通孔145の内径が固定部材170の外径よりも大きいことで、接続片部140の軸部材160を中心とした回動が許容されるとした。しかし、第一貫通孔135の内径が、固定部材170の外径よりも大きいことで、接続片部140の軸部材160を中心とした回動が許容されてもよい。
【0132】
また、第一貫通孔135および第二貫通孔145の双方の内径が、固定部材170の外径よりも大きくてもよい。
【0133】
つまり、第一貫通孔135および第二貫通孔145の少なくとも一方の内径が、固定部材170の外径よりも大きければ、接続片部140の軸部材160を中心とした回動を許容することは可能である。
【0134】
また、固定部材170は、ナット171と螺合することで、接続片部140とフレーム部130とを締結するとした、しかし、ナット171は必須の構成要素ではない。例えば、接続片部140の第二貫通孔145の内面に雌ネジが形成されている場合、ボルトである固定部材170による、接続片部140とフレーム132との締結は可能である。
【0135】
また、固定部材170は、接続片部140およびフレーム部130の双方を貫通しなくてもよい。
【0136】
例えば、固定部材170が、フレーム132の第一貫通孔135を貫通し、固定部材170の先端部が、接続片部140を貫通していない雌ネジ穴に挿入されてもよい。この場合、第一貫通孔135を、その内径が固定部材170の外径よりも大きくなるようにフレーム132に形成することで、接続片部140の軸部材160を中心とした回動を許容することができる。
【0137】
また、例えば、クランプのような締め具によって固定部材170が実現されてもよい。つまり、重ね合わされた接続片部140とフレーム132とを重ね合わせの方向の両側から締め付けるようにして接続片部140をフレーム132に固定してもよい。この場合、接続片部140およびフレーム部130のいずれにも、固定部材170が貫通する孔を設ける必要はない。
【0138】
また、1つの接続片部140に対応して設置される固定部材170の個数に特に限定はなく、例えば1〜3のいずれかであってもよく、5以上であってもよい。
【0139】
また、規制部材138は、フレーム部130と別体の部材ではなく、例えば、フレーム132の一部として実現されてもよい。また、規制部材138が、フレーム部130ではなく、接続片部140に取り付けられていてもよい。
【0140】
つまり、規制部材138は、接続片部140のフレーム部130に対する回動可能な方向において、フレーム部130と接続片部140との間に介在していれば、どのような態様でクレーン装置100に設けられてもよい。
【0141】
また、フレーム部130は、車輪(ローラ)として、副車輪151のみを有していてもよい。つまり、フレーム部130は、走行方向(X軸方向)に交差する方向への下部レール111からのずれを防止できる構造を有していれば、フレーム部130が備える、下部レール111と接触する車輪は1つのみであってもよい。
【0142】
また、基台121も同様に、走行方向(X軸方向)に交差する方向への下部レール111からのずれを防止できる構造を有していれば、下部レール111と接触する車輪は1つのみ(主車輪150のみ)であってもよい。
【0143】
また、本実施の形態における自動倉庫200の用途に特に限定はない。例えば、工業製品の生産のための保管庫、または、物流倉庫において種々の荷物を一時的に保管するための保管庫として自動倉庫200が用いられてもよい。
【0144】
また、移載装置102の移載方式としては、スカラーアーム方式に限定されることはなく、例えば、フォーク方式またはプッシュプル方式が採用されてもよい。