特許第5983877号(P5983877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983877内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983877
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/06 20060101AFI20160823BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20160823BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20160823BHJP
   F16C 9/02 20060101ALI20160823BHJP
   F16C 9/04 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F01M1/06 K
   F02B75/32 A
   F02F7/00 301F
   F16C9/02
   F16C9/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-522631(P2015-522631)
(86)(22)【出願日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】JP2014061558
(87)【国際公開番号】WO2014203618
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-129506(P2013-129506)
(32)【優先日】2013年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】星川 裕聡
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−239497(JP,A)
【文献】 特開2005−002839(JP,A)
【文献】 特開2006−132456(JP,A)
【文献】 特開2008−075631(JP,A)
【文献】 特開2009−281242(JP,A)
【文献】 特開2004−116434(JP,A)
【文献】 特開2012−172625(JP,A)
【文献】 特開昭63−179114(JP,A)
【文献】 特開2010−185329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/06
F02B 75/32
F02F 7/00
F16C 9/02
F16C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトのクランクピンに支持されたロアリンクと、このロアリンクの一端部とピストンピンとを連結するアッパリンクと、上記ロアリンクの他端部とコントロールシャフトの偏心軸部とを連結するコントロールリンクと、を含む内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構において、
上記クランクシャフトは、シリンダブロックとメインベアリングキャップとで構成されるクランクシャフト軸受部に半割状のメインベアリングメタルを介して回転自在に支持されており、
上記コントロールシャフトは、上記メインベアリングキャップとコントロールシャフトベアリングキャップとで構成されるコントロールシャフト軸受部に半割状のコントロールシャフトベアリングメタルを介して回転自在に支持されており、
さらに、
上記シリンダブロック内部に形成され、該シリンダブロックのオイルギャラリから上記クランクシャフト軸受部へ至るブロック内油通路と、
上記ブロック内油通路の先端開口に対応するように上記メインベアリングメタルに開口形成された第1油孔と、
この第1油孔と連通するように上記メインベアリングメタルの内周面に全周に亘って形成された油溝と、
上記メインベアリングキャップ側となる範囲内で上記油溝と連通するように上記メインベアリングメタルに開口形成された第2油孔と、
上記メインベアリングキャップ内部に形成され、一端が上記第2油孔に対応し、かつ他端が上記コントロールシャフト軸受部へ至るキャップ内油通路と、
上記キャップ内油通路の先端開口に対応するように上記コントロールシャフトベアリングメタルに開口形成された第3油孔と、
を備えてなる内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造。
【請求項2】
上記第2油孔の直径が上記キャップ内油通路の直径よりも小さい、請求項1に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造。
【請求項3】
上記第1油孔の開口面積が上記第2油孔の開口面積よりも大きい、請求項1または2に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造。
【請求項4】
上記第2油孔の直径が上記第3油孔の直径よりも大きい、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造。
【請求項5】
燃焼圧が最大のときに上記コントロールシャフトに上記コントロールリンクから荷重が作用する荷重方向に対して、上記第3油孔は、上記荷重方向から外れた周方向位置に配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造。
【請求項6】
上記第2油孔は、半円筒形をなすメインベアリングメタルの周方向の中心かつ軸方向の中心となる位置に開口している、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造。
【請求項7】
上記第3油孔は、半円筒形をなすコントロールシャフトベアリングメタルの周方向の中心かつ軸方向の中心となる位置に開口している、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複リンク式ピストンクランク機構を備えた内燃機関に関し、特に、複リンク式ピストンクランク機構におけるクランクシャフトおよびコントロールシャフトの軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関におけるピストンクランク機構として、特許文献1に見られるように、クランクシャフトのクランクピンに支持されたロアリンクと、このロアリンクの一端部とピストンピンとを連結するアッパリンクと、ロアリンクの他端部とコントロールシャフトの偏心軸部とを連結するコントロールリンクと、を備えた複リンク式ピストンクランク機構が公知である。
【0003】
このような複リンク式ピストンクランク機構では、クランクシャフトとコントロールシャフトとをそれぞれ回転可能に支持する必要があり、特許文献1には、シリンダブロックのバルクヘッドとメインベアリングキャップとの間でクランクシャフトを支持する一方、メインベアリングキャップの下側にコントロールシャフトベアリングキャップを取り付け、両者の間でコントロールシャフトを支持するようにした軸受構造が開示されている。
【0004】
そして、上記コントロールシャフトベアリングキャップは、複数個のベアリングキャップを機関前後方向に延びたビーム部でもって梯子状に連結したベアリングビーム構造をなしており、ビーム部内に形成されたオイルギャラリからコントロールシャフト軸受部にそれぞれ潤滑油が供給される構成となっている。
【0005】
特許文献2には、複リンク式ピストンクランク機構ではないが、クランクシャフトのメインジャーナル部を半割状のメインベアリングメタルを介して支持し、かつメインベアリングメタルの内周面に周方向に沿った油溝を設けることが開示されている。
【0006】
特許文献1のようにビーム部内を通してコントロールシャフト軸受部に潤滑油供給を行う構成では、コントロールシャフトベアリングキャップをベアリングビーム構造とすることが必須となり、設計の自由度が少ない。また、オイルギャラリを備えたベアリングビーム構造となるため、構成が複雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−116434号公報
【特許文献2】特開2008−20028号公報
【発明の概要】
【0008】
この発明に係る内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の軸受構造は、
クランクシャフトのクランクピンに支持されたロアリンクと、このロアリンクの一端部とピストンピンとを連結するアッパリンクと、上記ロアリンクの他端部とコントロールシャフトの偏心軸部とを連結するコントロールリンクと、を含む内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構において、
上記クランクシャフトは、シリンダブロックとメインベアリングキャップとで構成されるクランクシャフト軸受部に半割状のメインベアリングメタルを介して回転自在に支持されており、
上記コントロールシャフトは、上記メインベアリングキャップとコントロールシャフトベアリングキャップとで構成されるコントロールシャフト軸受部に半割状のコントロールシャフトベアリングメタルを介して回転自在に支持されており、
さらに、
上記シリンダブロック内部に形成され、該シリンダブロックのオイルギャラリから上記クランクシャフト軸受部へ至るブロック内油通路と、
上記ブロック内油通路の先端開口に対応するように上記メインベアリングメタルに開口形成された第1油孔と、
この第1油孔と連通するように上記メインベアリングメタルの内周面に全周に亘って形成された油溝と、
上記メインベアリングキャップ側となる範囲内で上記油溝と連通するように上記メインベアリングメタルに開口形成された第2油孔と、
上記メインベアリングキャップ内部に形成され、一端が上記第2油孔に対応し、かつ他端が上記コントロールシャフト軸受部へ至るキャップ内油通路と、
上記キャップ内油通路の先端開口に対応するように上記コントロールシャフトベアリングメタルに開口形成された第3油孔と、
を備えて構成されている。
【0009】
上記の構成においては、シリンダブロックのオイルギャラリからクランクシャフト軸受部を経由してコントロールシャフト軸受部へと潤滑油が供給される。
【0010】
具体的には、ブロック内油通路を介してオイルギャラリからクランクシャフト軸受部へ潤滑油が供給され、この潤滑油は、第1油孔を通してメインベアリングメタル内周側へ導かれる。これによって、クランクシャフトとメインベアリングメタルとの摺動面が潤滑される。さらに潤滑油は、メインベアリングメタル内周面の油溝を通して第2油孔へ至り、この第2油孔からキャップ内通路を介してコントロールシャフト軸受部へ供給される。そして、キャップ内通路から第3油孔を通して、コントロールシャフトベアリングメタルの内周側へ導かれ、この潤滑油によって、コントロールシャフトとコントロールシャフトベアリングメタルとの摺動面が潤滑される。
【0011】
この発明によれば、シリンダブロックのオイルギャラリからクランクシャフト軸受部の油溝を経由してコントロールシャフト軸受部へ潤滑油が供給されるので、コントロールシャフトベアリングキャップを必ずしもビーム構造とする必要がなく、設計の自由度が高くなるとともに、油路の構成が簡素となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施例における複リンク式ピストンクランク機構の構成を示す説明図。
図2】上記実施例の軸受構造を油通路とともに示す断面図。
図3】クランクシャフト軸受部およびコントロールシャフト軸受部の油路の詳細を示す断面図。
図4図3のA−A線に沿ってメインベアリングメタルの内周側を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
初めに、図1に基づいて、この実施例における複リンク式ピストンクランク機構の構成を説明する。図示するように、シリンダブロック1に形成されたシリンダ2内に、ピストン3が摺動可能に配設されており、このピストン3に、アッパリンク4の一端がピストンピン5を介して揺動可能に連結されている。アッパリンク4の他端は、第1連結ピン6を介してロアリンク7の一端部に回転可能に連結されている。ロアリンク7は、中央部においてクランクシャフト8のクランクピン9に揺動可能に取り付けられている。クランクシャフト8は、シリンダブロック1とメインベアリングキャップ10とで構成されるクランクシャフト軸受部11において回転自在に支持されている。
【0015】
上記ロアリンク7の他端部には、コントロールリンク13の一端が第2連結ピン14を介して回転可能に連結されている。このコントロールリンク13の他端は、コントロールシャフト14の偏心軸部15に回転可能に嵌合している。コントロールシャフト14は、クランクシャフト8の下側に該クランクシャフト8と平行に配置されており、メインベアリングキャップ10とコントロールシャフトベアリングキャップ16とで構成されるコントロールシャフト軸受部17において回転自在に支持されている。
【0016】
図2に示すように、上記メインベアリングキャップ10は、シリンダブロック1の下縁、詳しくは各気筒間のバルクヘッド21の下縁に、3本のボルト22,23,24でもって取り付けられている。また、上記コントロールシャフトベアリングキャップ16は、上記メインベアリングキャップ10の下縁に取り付けられている。詳しくは、上記の3本のボルト22〜24の中の2本のボルト23,24が、メインベアリングキャップ10およびコントロールシャフトベアリングキャップ16の双方を貫通しており、いわゆる共締めの形でメインベアリングキャップ10とコントロールシャフトベアリングキャップ16とがシリンダブロック1に固定されている。2本のボルト23,24は、図2に示すように、それぞれ円形の開口部となるクランクシャフト軸受部11およびコントロールシャフト軸受部17の両側を通過している。上記メインベアリングキャップ10とバルクヘッド21との接合面およびメインベアリングキャップ10とコントロールシャフトベアリングキャップ16との接合面は、互いに平行であり、いずれもシリンダ2の中心軸線Lに対し直交した平面に沿っている。
【0017】
なお、上記ボルト22〜24としては、頭部を備えた通常のボルトであってもよく、あるいは、ナットと組み合わせて用いられるスタッドボルトであってもよい。
【0018】
次に、クランクシャフト軸受部11およびコントロールシャフト軸受部17に対する潤滑油の供給系統について説明する。
【0019】
図2に示すように、シリンダブロック1の内部(コントロールリンク13側のスカート部上縁部付近)に、気筒列方向に直線状に延びたオイルギャラリ31が形成されている。このオイルギャラリ31は、オイル供給通路32を介して図示せぬオイルポンプの吐出側に連通している。そして、シリンダブロック1のバルクヘッド21の内部を通して、上記オイルギャラリ31からクランクシャフト軸受部11へ至るブロック内油通路33が形成されている。このブロック内油通路33は、シリンダブロック1下面側からドリル加工された直線状の油通路であり、円形をなすクランクシャフト軸受部11の中心を指向するように、シリンダ2の中心軸線Lに対し斜めに傾斜した形に形成されている。なお、ブロック内油通路33は、クランクシャフト軸受部11側が僅かに大径となった緩やかなテーパ状をなしている。
【0020】
また、円形をなすクランクシャフト軸受部11の最下部から同じく円形をなすコントロールシャフト軸受部17の最上部へ至るキャップ内油通路34が、メインベアリングキャップ10内部に形成されている。このキャップ内油通路34は、メインベアリングキャップ10の上縁におけるクランクシャフト軸受部11となる半円形切欠部から下縁におけるコントロールシャフト軸受部17となる半円形切欠部へと貫通するように直線状にドリル加工されている。ここで、図2に示すように、シリンダ2の中心軸線Lを直立させた姿勢においては、クランクシャフト軸受部11の中心とコントロールシャフト軸受部17の中心とが左右方向に僅かにオフセットしており、具体的には、コントロールシャフト軸受部17の中心がクランクシャフト軸受部11の中心よりも図の右側つまりコントロールリンク13側に僅かに片寄って位置している。従って、クランクシャフト軸受部11の最下部からコントロールシャフト軸受部17の最上部へ至るキャップ内油通路34は、シリンダ2の中心軸線Lに対し僅かに傾斜している。なお、図2等から明らかなように、コントロールシャフト14の径(詳しくはジャーナル部の径)はクランクシャフト8の径(詳しくはジャーナル部の径)よりも小径である。
【0021】
図3は、両軸受部11,17における油路の詳細を示している。図示するように、クランクシャフト軸受部11には、半割状の一対のメインベアリングメタル41が装着されており、このメインベアリングメタル41を介してクランクシャフト8が回転自在に支持されている。個々のメインベアリングメタル41は、半円筒形をなし、バルクヘッド21側の半円形切欠部およびメインベアリングキャップ10側の半円形切欠部にそれぞれ非回転に装着されている。なお、クランクシャフト軸受部11内での回転防止のために例えば爪状をなす係合部などが設けられているが、図示は省略されている。
【0022】
上記メインベアリングメタル41には、ブロック内油通路33の先端開口部33aに対応する位置に、図4にも示すように、周方向に延びた長孔状をなす第1油孔42が開口形成されている。上記第1油孔42は、半円筒の周方向の中心位置(換言すれば90°の位置)から外れた斜め方向に位置しているが、この実施例では、特に、メインベアリングメタル41の組付時の方向性が不要なように、90°の中心位置を挟んで対称となる2箇所に第1油孔42がそれぞれ開口形成されている。また、一対のメインベアリングメタル41は、部品として全く同一の構成であり、従って、メインベアリングキャップ10側に配置されるメインベアリングメタル41も、同じく一対の第1油孔42を備えている。なお、これらの第1油孔42は、メインベアリングメタル41の軸方向に関する位置としては、メインベアリングメタル41の軸方向寸法の中心にあり、やはり、組付時の方向に拘わらず一定の位置に第1油孔42が得られる。
【0023】
上記メインベアリングメタル41の内周面には、周方向に延びる油溝43が全周に亘って形成されている。この油溝43は、半円筒形をなすメインベアリングメタル41の軸方向の中心に位置し、図4に示すように、第1油孔42の短径に対応した溝幅を有している。つまり、上記第1油孔42は、上記油溝43に対して開口している。
【0024】
また、半円筒形のメインベアリングメタル41の周方向の中心位置(つまり90°の位置)には、真円形をなす第2油孔44が開口形成されている。この第2油孔44は、メインベアリングメタル41の軸方向においても、その中心となる位置に配置されており、内周側では、図4に示すように、油溝43に対し開口している。前述したように、一対のメインベアリングメタル41は部品として全く同一の構成であり、従って、組付状態では、クランクシャフト軸受部11の最上部と最下部とに第2油孔44が出現するが、最下部に位置する第2油孔44がキャップ内油通路34の上端開口部34aに対応した配置となる。なお、上記のように第2油孔44が周方向および軸方向の中心に位置するので、2個のメインベアリングメタル41をどのように組み付けても、下側の第2油孔44がキャップ内油通路34と必ず合致する。
【0025】
上記のメインベアリングメタル41と同様に、コントロールシャフト軸受部17においても、半割状の一対のコントロールシャフトベアリングメタル45が装着されており、このコントロールシャフトベアリングメタル45を介してコントロールシャフト14が回転自在に支持されている。個々のコントロールシャフトベアリングメタル45は、半円筒形をなし、メインベアリングキャップ10側の半円形切欠部およびコントロールシャフトベアリングキャップ16側の半円形切欠部にそれぞれ非回転に装着されている。なお、コントロールシャフト軸受部17内での回転防止のために、やはり図示しない係合部などが設けられている。
【0026】
半円筒形をなすコントロールシャフトベアリングメタル45の周方向の中心位置(つまり90°の位置)には、真円形をなす第3油孔46が開口形成されている。この第3油孔46は、コントロールシャフトベアリングメタル45の軸方向においても、その中心となる位置に配置されている。一対のコントロールシャフトベアリングメタル45は、メインベアリングメタル41と同様に、部品としては全く同一の構成である。従って、組付状態では、コントロールシャフト軸受部17の最上部と最下部とに第3油孔46が出現するが、最上部に位置する第3油孔46がキャップ内油通路34の下端開口部34bに対応した配置となる。なお、上記のように第3油孔46が周方向および軸方向の中心に位置することから、2個のコントロールシャフトベアリングメタル45をどのように組み付けても、上側の第3油孔46がキャップ内油通路34と必ず合致する。
【0027】
上記コントロールシャフトベアリングメタル45の内周面には、周方向に延びる油溝47が全周に亘って形成されており、上記第3油孔46は、内周側では、この油溝47に対して開口している。この油溝47は、やはりコントロールシャフトベアリングメタル45の軸方向の中心に位置している。
【0028】
また、各部の寸法関係として、上記のクランクシャフト軸受部11における長孔である第1油孔42の開口面積は、第2油孔44の開口面積よりも大きい。また、真円形をなす第2油孔44の直径は、対向するキャップ内油通路34の上端開口部34aの直径よりも小さい。さらに、キャップ内油通路34の上端開口部34aに対応する第2油孔44の直径は、キャップ内油通路34の下端開口部34bに対応する第3油孔46の直径よりも大きい。なお、第1油孔42の形状を円形とし、その直径を第2油孔44の直径よりも大きくすることで第1油孔42の開口面積を第2油孔44の開口面積より大きくするようにしてもよい。
【0029】
なお、図3は、図示の都合上、クランクシャフト軸受部11とコントロールシャフト軸受部17とを近付けて描いてあり、従って、キャップ内油通路34が本来の寸法よりも短いものとなっている。
【0030】
上記のような構成においては、オイルギャラリ31内の高圧の潤滑油がブロック内油通路33を介してクランクシャフト軸受部11へ供給される。クランクシャフト軸受部11では、メインベアリングメタル41の第1油孔42を通して内周側の油溝43に潤滑油が導かれ、油溝43を介して、クランクシャフト8とメインベアリングメタル41との摺動面が全周に亘って確実に潤滑される。
【0031】
油溝43に供給された潤滑油の一部は、クランクシャフト軸受部11下部の第2油孔44を通してキャップ内油通路34に入り、キャップ内油通路34を介してコントロールシャフト軸受部17へ供給される。コントロールシャフト軸受部17では、コントロールシャフトベアリングメタル45の第3油孔46を通して内周側の油溝47に潤滑油が導かれ、油溝47を介して、コントロールシャフト14とコントロールシャフトベアリングメタル45との摺動面が全周に亘って確実に潤滑される。
【0032】
このように、上記構成では、クランクシャフト軸受部11の軸受面における油溝43が、潤滑のために潤滑油を全周に分配する機能に加えて、下側のコントロールシャフト軸受部17への潤滑油供給の油路としても機能している。従って、コントロールシャフト軸受部17への潤滑油供給の構成が簡単なものとなる。仮に、クランクシャフト軸受部11内周面とメインベアリングメタル41との間に油路となる溝を形成したような場合には、メインベアリングメタル41外周面における面圧が増大し、好ましくない。上記構成では、クランクシャフト8の潤滑に必要な油溝43を利用してコントロールシャフト軸受部17への潤滑油供給がなされるので、油路形成に伴う面圧増加の問題がない。
【0033】
ここでクランクシャフト軸受部11の油溝43においては、上記のように潤滑油の入口側となる第1油孔42の開口面積が出口側となる第2油孔44の開口面積よりも大きく設定されているので、クランクシャフト8の確実な潤滑とコントロールシャフト軸受部17側への潤滑油供給とが両立する。
【0034】
さらに、第3油孔46の開口面積が第2油孔44の開口面積よりも小さいので、キャップ内油通路34が常に潤滑油で満たされた状態となり、コントロールシャフト軸受部17側への潤滑油供給が常に安定したものとなる。つまり、オイルギャラリ31から比較的離れた位置となるコントロールシャフト軸受部17での過渡的な潤滑油不足の発生が抑制される。
【0035】
ところで、キャップ内油通路34の口径は、第2油孔44や第3油孔46の直径よりも大きく、実質的な流路面積が第2油孔44および第3油孔46の径によって調整されている。従って、各々の流路面積の精度が向上するとともに、キャップ内油通路34の加工が容易となる。キャップ内油通路34は、比較的長い通路としてドリル加工されるので、小径の孔を直線状に精度良く加工することは困難である。上記構成では、キャップ内油通路34を比較的大径の孔として容易に加工することができる。
【0036】
一方、燃焼サイクルにおいて燃焼圧が最大のときに、コントロールシャフト14は、コントロールリンク13の傾斜姿勢にほぼ沿った矢印F1(図3参照)方向の荷重を受ける。コントロールシャフト軸受部17における第3油孔46は、このような荷重方向F1から外れた周方向位置に配置されており、従って、第3油孔46に起因した摺動面の面圧増加の問題がない。
【0037】
また、上記実施例では、一対のメインベアリングメタル41をどのように組み付けても誤組付の問題がなく、一対のコントロールシャフトベアリングメタル45についても同様である。
図1
図2
図3
図4