特許第5983885号(P5983885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5983885-車両の回生制動制御装置 図000002
  • 特許5983885-車両の回生制動制御装置 図000003
  • 特許5983885-車両の回生制動制御装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983885
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】車両の回生制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/14 20060101AFI20160823BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B60L7/14
   B60L7/24 G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-529449(P2015-529449)
(86)(22)【出願日】2014年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2014065840
(87)【国際公開番号】WO2015015931
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-156325(P2013-156325)
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−240904(JP,A)
【文献】 特開平11−141365(JP,A)
【文献】 特開2011−148411(JP,A)
【文献】 特開2013−123279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
B60K 6/20−6/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより制駆動される車輪を具え、該車輪のモータ駆動により走行可能であって、該車輪の制動力を前記モータの回生制動力によって賄うようにした車両の回生制動制御装置において、
前記モータの電源であるバッテリの蓄電状態が、前記モータに発電負荷をかけても前記回生制動力を発生させ得なくなる回生制動力発生不可上限レベルよりも高いバッテリ蓄電状態設定値から前記回生制動力発生不可上限レベルへ低下している間、前記回生制動力を零に向け徐々に低下させるよう構成したことを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された、車両の回生制動制御装置において、
前記バッテリ蓄電状態設定値は、前記バッテリ蓄電状態が前記回生制動力発生不可上限レベルへ低下する瞬時よりも所定時間前のタイミングを判定するための回生制限開始判定用バッテリ蓄電状態として予め設定しておき、バッテリ蓄電状態が該バッテリ蓄電状態設定値まで低下した時から前記所定時間中、前記回生制動力の低下を行うよう構成したことを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項3】
車両が車輪の摩擦制動によっても制動可能である、請求項2に記載された、車両の回生制動制御装置において、
前記回生制動力の低下中、該回生制動力の低下減量を前記車輪の摩擦制動により補って補償するよう構成したことを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載された、車両の回生制動制御装置において、
前記回生制動力の低下終末期における前記摩擦制動による車輪制動力を、前記回生制動力の低下量と異ならせて、前記所定時間の経過時に車両制動力が変化するよう構成したことを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載された、車両の回生制動制御装置において、
前記回生制動力の低下終末期における前記摩擦制動による車輪制動力を、該終末期の開始時における値に保持することにより、前記所定時間の経過時に車両制動力が低下するよう構成したことを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより制駆動される車輪を具え、該車輪のモータ駆動により走行可能であって、該車輪の制動力をモータの回生制動力によって賄うようにした車両の回生制動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制動は、例えば特許文献1に記載のごとく、アクセルペダルを釈放したコースト走行や、アクセルペダルを釈放してブレーキペダルを踏み込む制動操作時に、アクセル釈放操作およびブレーキ操作などの運転状態や、自車周辺の走行状態に応じて要求される目標制動トルクを求め、車輪駆動系のモータによる回生制動と、液圧ブレーキや電磁ブレーキによる摩擦制動との組み合わせにより、当該目標制動トルクを実現するような協調制御を旨とする。
【0003】
回生制動によりモータが発電した電力は、モータの電源である車載バッテリに蓄電しておき、以後におけるモータ駆動に供される。
上記の協調制御に際しては、回生制動を優先的に利用し、回生制動だけでは目標制動トルクを実現し得ない場合に、不足分を摩擦制動で補うことにより目標制動トルクを実現するという協調制御方式を採用するのが一般的である。
【0004】
かようにすることで、バッテリの蓄電状態などにより決まる可能最大回生制動力を上限として、可能な限り回生制動が利用され、摩擦制動の利用を必要最小限に抑え得ることとなり、
摩擦制動が車両の運動エネルギーを熱として消失させてしまうのを最小限にしつつ、回生制動が車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリへ回収するエネルギー量を最大にすることができる。
その結果、エネルギー効率が向上し、燃料消費率や電気消費率を向上させるできることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−153315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来の回生制動制御では、回生制動による充電中であっても、バッテリ消費電力がそれよりも大きく、バッテリ蓄電レベルが徐々に低下して、遂にはモータに発電負荷をかけても回生制動力を発生させ得なくなる電欠状態に至ったとき、以下のような問題を生ずる。
【0007】
かかるバッテリ電欠状態により回生制動力が発生されなくなると、この回生制動力消失分だけ車両減速度が低下し、これが運転状態とは異なる車両減速度変化であることから、運転者に違和感を与えるという問題を生ずる。
【0008】
この時、上記した協調制御が回生制動力消失分を摩擦制動によって補償するものの、この補償は、バッテリの電欠による回生制動力の消失後であり、この協調制御によっては上記違和感の問題を解消し得ない。
【0009】
それよりか、協調制御による摩擦制動力の発生時に、回生制動力消失分だけ低下していた車両減速度を目標制動トルク対応の元の減速度に戻すことから、これが制動ショックの原因になるという問題をも生ずる。
【0010】
本発明は、これらの問題を生ずるバッテリ蓄電状態となるとき急に回生制動力が得られなくなって上記問題が発生するとの事実認識に基づき、
当該バッテリ蓄電状態となる直前の所定時間中から前もって回生制動力を徐々に低下させ、これにより上記の問題が発生することのないよう改良した車両の回生制動制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、本発明による車両の回生制動制御装置は、これを以下のごとくに構成する。
先ず本発明の前提となる車両を説明するに、これは、モータにより制駆動される車輪を具え、該車輪のモータ駆動により走行可能であって、該車輪の制動力を前記モータの回生制動力によって賄うようにしたものである。
【0012】
本発明は、かかる車両の回生制動制御装置であって、
前記モータの電源であるバッテリの蓄電状態が前記回生制動力を予定通りに発生させ得なくなるレベルまで低下する直前の所定時間中、前記回生制動力を漸減させるよう構成した点に特徴づけられるものである。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明による車両の回生制動制御装置にあっては、
バッテリの蓄電状態が回生制動力を予定通りに発生させ得なくなるレベルまで低下する直前の所定時間中、前もって回生制動力を漸減させるため、
バッテリ蓄電状態が上記レベルに低下したとき急に回生制動力が得られなくなるという現象を回避することができ、当該回生制動力消失現象に起因した車両減速度変化(低下)による違和感を運転者に与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例になる回生制動制御装置を具えた電気自動車の制駆動力制御系に係わる全体制御システムを示す概略系統図である。
図2図1における車両コントローラが、バッテリ電欠状態であるときに実行する回生制動制御プログラムを示すフローチャートである。
図3図2の制御プログラムによる回生制動制御の動作タイムチャートである。
【符号の説明】
【0015】
1FL,1FR 左右前輪
1RL,1RR 左右後輪(モータ制駆動車輪)
2 電動モータ(モータ)
3 終減速機
4 バッテリ
5 インバータ
6FL,6FR 左右前輪ブレーキキャリパ
6RL,6RR 左右後輪ブレーキキャリパ
7 ブレーキペダル
8 電動ブレーキブースタ
9 マスターシリンダ
10 ブレーキユニット
11 車両コントローラ
12 ブレーキペダル踏力センサ
13 アクセル開度センサ
14 車速センサ
15 バッテリ蓄電状態センサ
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施例を添付の図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
<構成>
図1は、本発明の一実施例になる回生制動制御装置を具えた電気自動車の制駆動力制御系に係わる全体制御システムを示す概略系統図である。
【0018】
この電気自動車は、左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRを具え、左右後輪1RL,1RRを電動モータ2により駆動して走行可能であり、また左右前輪1FL,1FRの転舵により操向可能なものとする。
なお電動モータ2は、ディファレンシャルギヤ装置を含む終減速機3を介して左右後輪1RL,1RRに駆動結合し、これら左右後輪1RL,1RRの共通な動力源とする。
【0019】
電動モータ2は、バッテリ4の電力によりインバータ5を介して駆動される。
インバータ5は、バッテリ4の直流(DC)電力を交流(AC)電力に変換して電動モータ2へ供給すると共に電動モータ1への供給電力および電流方向を制御して、電動モータ2の駆動力および回転方向を制御する。
【0020】
なお電動モータ2は、発電機としても機能し得るモータ/ジェネレータとし、通常は上記の通り左右後輪1RL,1RRをモータ駆動するが、制動操作時にこれら左右後輪1RL,1RRを所定の発電負荷によって回生制動し得るものとする。
この回生制動中に電動モータ2が発電した電力を、インバータ5により交流(AC)→直流(DC)変換してバッテリ4に蓄電し、以後のモータ駆動に供する。
以上によって左右後輪1RL,1RRはそれぞれ、共通な電動モータ2により終減速機3を介し個別に制駆動されて、車両を駆動走行させたり、減速走行させることができる。
【0021】
車両を走行状態から停車させたり、この停車状態に保つに際しては、左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRと共に回転するブレーキディスク(図示せず)を、個々のキャリパ6FL,6FR,6RL,6RR により挟圧して摩擦制動することで目的を達することができる。
【0022】
キャリパ6FL,6FR,6RL,6RR は、運転者が踏み込むブレーキペダル7の踏力に応動して電動ブレーキブースタ8による倍力下でブレーキペダル踏力対応のブレーキ液圧を出力するマスターシリンダ9に、ブレーキユニット10を介して接続する。
ブレーキユニット10は、マスターシリンダ9からのブレーキ液圧をキャリパ6FL,6FR,6RL,6RR に導き、これらキャリパ6FL,6FR,6RL,6RRの作動により車両(車輪1FL,1FR, 1RL,1RR)を摩擦制動する。
【0023】
図1の電気自動車は、インバータ5を介した電動モータ2の駆動制御および回生制御を行うために車両コントローラ11を具え、車両コントローラ11は更に、回生制御中における前記した協調制御用に電動ブレーキブースタ8を介したブレーキ液圧(摩擦制動力)制御をも遂行するものとする。
【0024】
そのため車両コントローラ11には、ブレーキペダル7の踏力BPFを検出するブレーキペダル踏力センサ12からの信号と、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ13からの信号と、車速VSPを検出する車速センサ14からの信号と、バッテリ4の蓄電状態SOCを検出するバッテリ蓄電状態センサ15からの信号とを入力する。
【0025】
<回生制動制御>
車両コントローラ11は、これら入力情報を基に周知の演算によって、左右後輪1RL,1RRに係わる電動モータ2の目標モータトルクTm(駆動トルクは正値、回生トルクは負値)を求める。
この目標モータトルクTmは、電動モータ2の駆動・回生制御を司るインバータ5に指令される。
インバータ5は目標モータトルクTm(正値の駆動トルク)に応動して、バッテリ4から電動モータ2へ対応するDC→AC変換電力を供給することにより、モータトルクTmで左右後輪1RL,1RRを駆動したり、または目標モータトルクTm(負値の回生トルク)に対応した発電負荷を電動モータ2にかけて左右後輪1RL,1RRを回生制動すると共に、このとき電動モータ2が発電した電力をAC→DC変換してバッテリ4へ蓄電する。
【0026】
上記の回生制動中において車両コントローラ11は同時に、前記した協調制御用の目標摩擦制動力Tbを求め、この目標摩擦制動力Tbを電動ブレーキブースタ8に供給する。
電動ブレーキブースタ8は、目標摩擦制動力Tbに応動してマスターシリンダ9からのブレーキ液圧を目標摩擦制動力Tbに対応したものとなし、このブレーキ液圧でキャリパ6FL,6FR,6RL,6RRを作動させて、車輪1FL,1FR, 1RL,1RR)を摩擦制動する。
【0027】
以上は通常の制御であるが、以下に本発明が狙いとするバッテリ電欠時の回生制動制御を説明する。
本発明が狙いとするバッテリ電欠時回生制動制御に際し、車両コントローラ11は本実施例の場合、図2の制御プログラムを実行して、図3のタイムチャートに示すごとくに当該バッテリ電欠時回生制動制御を遂行する。
【0028】
ステップS11においては、バッテリ蓄電状態SOCが回生制限開始判定用SOC設定値SOCs以下であるか否かをチェックする。
設定値SOCsを図3につき詳述する。
図3は、バッテリ蓄電状態SOCが図示のごとくに徐々に低下する状況下で、瞬時t1に「アクセルOFF」として示すようにアクセルペダルが釈放され、その後の瞬時t2に「ブレーキON」として示すようにブレーキペダル7が踏み込まれた場合の動作タイムチャートである。
【0029】
また図3のSOCLは、回生制動力を予定通りに発生させ得なくなるSOC限界値で、SOC≦SOCLの低SOC領域でバッテリ4は、回生制動力を予定通りに発生させ得ない電欠状態となり、この領域を図3では「回生制動力発生不可域」と記した。
本実施例では、バッテリ蓄電状態SOCが回生制動力を予定通りに発生させ得なくなるSOC限界値SOCLに低下する瞬時t6よりも所定時間ΔTMs前のタイミングt3を判定するための予定のバッテリ蓄電状態として上記の設定値SOCsを設定しておく。
【0030】
ステップS11でバッテリ蓄電状態SOCが回生制限開始判定用の設定値SOCs以下でない(SOC>SOCs)と判定する場合は、未だ本発明が狙いとする制御を開始すべきでない(図3の瞬時t3よりも前である)ため、ステップS12において電欠判定タイマTMを0にリセットした後、図2の制御プログラムから抜ける。
【0031】
ステップS11でバッテリ蓄電状態SOCが回生制限開始判定用の設定値SOCs以下(SOC≦SOCs)と判定する場合は、本発明が狙いとする制御を開始すべきである(図3の瞬時t3に至っている)ため、制御をステップS13以降に進める。
ステップS13においては、ステップS12で0にリセットされていた電欠判定タイマTMを歩進(インクリメント)させることにより、ステップS11で(SOC≦SOCs)と判定している継続時間、つまり図3の瞬時t3からの経過時間を計測する。
【0032】
次のステップS14においては、電欠判定タイマTM値(SOC≦SOCs状態の継続時間である、図3の瞬時t3からの経過時間)が、図3につき前述した所定時間ΔTMs以上を示しているか否か(図3の瞬時t6に至ったか否か)をチェックする。
ステップS14でTM<ΔTMsと判定する間(図3の瞬時t3〜t6間)と判定する場合、制御を順次ステップS15およびステップS16を進め、ステップS15において回生トルクTm(図1参照)を徐々に0に向け漸減させ、ステップS16においてステップS15での回生トルク減少分を摩擦制動トルクTb(図1参照)によって補填する。
【0033】
ステップS15で回生トルクTmを徐々に0に向け漸減させるに際しては、これを以下のごとくに遂行する。
バッテリ蓄電状態SOCなどによって、図3の瞬時t3までの破線により例示するごとくに決まる回生制限トルクTm_Limを、図3の(SOC≦SOCs)判定瞬時t3以降、徐々に低下するよう、また(TM=ΔTMs)判定瞬時t6に丁度Tm_Lim=0になるような時間変化勾配θで漸減させる。
【0034】
そして、かように漸減する回生制限トルクTm_Limに回生トルクTmが一致した図3の瞬時t4より、回生トルクTmを成すコースト分トルクTm_cおよび協調回生分制動トルクTm_bのうち、協調回生分制動トルクTm_bをTm_Limに沿って時間変化勾配θで低下するよう漸減させ、これにより協調回生分制動トルクTm_bが0になる瞬時t5より、残りのコースト分トルクTm_cもTm_Limに沿って時間変化勾配θで低下するよう漸減させることにより、瞬時t6に回生トルクTmを0となす。
【0035】
なお、回生トルクTm(協調回生分制動トルクTm_bおよびコースト分トルクTm_c)の上記低下勾配θは、図3の瞬時t3〜t6間の所定時間ΔTMsによって決まり、この所定時間ΔTMsは、回生トルクTm(協調回生分制動トルクTm_bおよびコースト分トルクTm_c)の低下勾配θが運転者に前記した違和感を与えることのないようにするのに必要な最短時間とするのが良い。
【0036】
ステップS16において、ステップS15での回生トルク減少分を摩擦制動トルクTbによって補填するに際しては、これを以下のごとくに遂行する。
瞬時t4〜t5において上記の通り協調回生分制動トルクTm_bをTm_Limに沿って時間変化勾配θで低下するよう漸減させる間、当該協調回生分制動トルクTm_bの漸減分を補填して合成トルク(Tm+Tb)を瞬時t4における値に保持する摩擦制動トルクTbを図3に二点鎖線で示すように発生させる。
【0037】
ただし、この摩擦制動トルクTbを瞬時t5以降は図3に二点鎖線で示すように瞬時t5での値に保持し、これにより合成トルク(Tm+Tb)が、瞬時t5以後におけるコースト分トルクTm_cの漸減に倣って時間変化勾配θで低下するようになす。
【0038】
図2のステップS14で電欠判定タイマTM値(SOC≦SOCs状態の継続時間である、図3の瞬時t3からの経過時間)が所定時間ΔTMs以上を示している(図3の瞬時t6に至った)と判定するとき、バッテリ4が電欠状態になって回生制動力を予定通りに発生させ得ないことから、制御をステップS17に進めて電欠判定を行った後、図2の制御から抜ける。
【0039】
<効果>
上記した実施例の回生制動制御によれば、バッテリ蓄電状態SOCが回生制動力を予定通りに発生させ得なくなるレベルSOCLまで低下する直前(図3の瞬時t6の直前)における所定時間ΔTMs中、前もって回生制動トルクTmを漸減させるよう構成したため、
バッテリ蓄電状態SOCが上記レベルSOCLに低下した瞬時t6に急に回生制動トルクTmが得られなくなるという現象を回避することができ、この回生制動力消失現象に起因して車両減速度が、運転者の操作に係わりのない変化(低下)を持ったものになる違和感を防止することができる。
【0040】
また、上記の作用・効果を得るに際し本実施例では、バッテリ蓄電状態SOCが、上記レベルSOCLよりも大きな設定値SOCs以下になったと判定する時から(ステップS11)、回生制限トルクTm_Limを上記の所定時間ΔTMs中、この所定時間ΔTMsにより決まる時間変化勾配θで0に向け漸減させ、これに沿うよう回生制動トルクTmを漸減させる構成としたため、
上記の回生制動トルクTmの漸減制御が、もともと回生制御に既存の回生制限トルクTm_Limを漸減させるだけで可能となり、回生制動トルクTmの漸減制御が容易であって、コスト的にも大いに有利である。
【0041】
更に本実施例では、回生制動トルクTmの漸減中、該回生制動力Tmの漸減量を摩擦制動トルクTbにより補って補償するよう構成したため、上記回生制動トルクTmの漸減中も車両制動力を不変に保ち得て、車両減速度が変化するという違和感なしに上記の効果を達成することができる。
【0042】
加えて本実施例では、回生制動力Tmの漸減量を補償するための摩擦制動トルクTbを、回生制動トルクTmの漸減終末期(図3のt5〜t6)に、回生制動力Tmの漸減量と異ならせ、漸減終末期(図3のt5〜t6)の開始時(t5)における値に保持する構成としたため、
図3のt5〜t6における合成制動トルク(Tm+Tb)の変化から明らかなように、電欠判定時t6に車両制動力が低下されることとなる。
かかる車両制動力(合成制動トルクTm+Tb)の低下から運転者は、バッテリ4が電欠状態になったのを感覚的に知ることができ、バッテリ電欠状態への対処を確実に行うことができる。
【0043】
なお本実施例では、図3のt5〜t6における合成制動トルク(Tm+Tb)の低下(車両制動力の低下)により運転者に、バッテリ4の電欠状態を知らせることとしたが、
この代わりに図3のt5〜t6で合成制動トルク(Tm+Tb)の増大(車両制動力の増大)変化が発生するような摩擦制動トルクTbを、回生制動トルクTmの漸減終末期(図3のt5〜t6)に付与するようにしてもよいのは言うまでもない。
【0044】
更に本実施例では、車両が図1に示す電気自動車である場合について本発明を説明したが、本発明はかかる電気自動車に限られず、車輪を電動モータにより制駆動される全ての車両に適用可能であって、いずれの車両においても同様な作用・効果を奏し得ること勿論である。
図1
図2
図3