特許第5983889号(P5983889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983889
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/288 20060101AFI20160823BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20160823BHJP
   C23C 18/42 20060101ALI20160823BHJP
   C23C 18/50 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01L21/288 E
   H01L21/28 301R
   C23C18/42
   C23C18/50
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-538998(P2015-538998)
(86)(22)【出願日】2014年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2014070283
(87)【国際公開番号】WO2015045617
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-202726(P2013-202726)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】浦野 裕一
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−261415(JP,A)
【文献】 特開2005−19830(JP,A)
【文献】 特開2004−327464(JP,A)
【文献】 特開平11−168104(JP,A)
【文献】 特開2010−283312(JP,A)
【文献】 特開2004−303915(JP,A)
【文献】 特開2002−129342(JP,A)
【文献】 特開2008−227284(JP,A)
【文献】 特開2010−103310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/288
C23C 18/42
C23C 18/50
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面および裏面にそれぞれおもて面電極および裏面電極を有する半導体チップを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップとなる半導体ウェハのおもて面に、前記おもて面電極としておもて面電極層を形成するおもて面電極層形成工程と、
前記おもて面電極層形成工程後、前記半導体ウェハの裏面を研削して、前記半導体ウェハの厚さを薄くする薄化工程と、
前記薄化工程後、前記おもて面電極層の表面に、前記おもて面電極として電極めっき膜を形成するめっき工程と、
前記めっき工程後に、前記半導体ウェハの研削後の裏面に前記裏面電極を形成する裏面電極形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
おもて面および裏面にそれぞれおもて面電極および裏面電極を有する半導体チップを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップとなる半導体ウェハの裏面を研削して、前記半導体ウェハの厚さを薄くする薄化工程と、
前記薄化工程後、前記半導体ウェハのおもて面に、前記おもて面電極としておもて面電極層を形成するおもて面電極層形成工程と、
前記おもて面電極層形成工程後、前記おもて面電極層の表面に、前記おもて面電極として電極めっき膜を形成するめっき工程と、
前記めっき工程後に、前記半導体ウェハの研削後の裏面に前記裏面電極を形成する裏面電極形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記薄化工程後、前記めっき工程前に、前記半導体ウェハの裏面側に裏面構造をなす半導体領域を形成する裏面構造形成工程をさらに含み、
前記裏面電極形成工程では、前記裏面構造に接する前記裏面電極を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記裏面電極形成工程では、スパッタリング法により、前記半導体ウェハの裏面全面に前記裏面電極を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記裏面電極形成工程では、前記半導体ウェハの裏面に、チタンからなる金属層、ニッケルからなる金属層、および金からなる金属層を順に積層してなる前記裏面電極を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記裏面電極形成工程では、前記半導体ウェハの裏面に、アルミニウムからなる金属層、チタンからなる金属層、ニッケルからなる金属層、および金からなる金属層を順に積層してなる前記裏面電極を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記薄化工程では、前記半導体ウェハの厚さが30μm以上250μm以下の範囲内の厚さになるまで前記半導体ウェハの厚さを薄くすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記薄化工程では、前記半導体ウェハの厚さが140μm以下の厚さになるまで前記半導体ウェハの厚さを薄くすることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記おもて面電極層形成工程では、アルミニウムシリコンからなる前記おもて面電極層を形成し、
前記めっき工程では、ニッケル−リンからなる第1めっき膜、および金からなる第2めっき膜を順に積層してなる前記電極めっき膜を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記めっき工程では、ニッケル−リンからなる前記第1めっき膜を75℃以上85℃以下の温度で無電解めっき法により形成することを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記めっき工程では、2重量%以上10重量%以下の割合でリンを含む前記第1めっき膜を形成することを特徴とする請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記めっき工程では、無電解めっき法により前記電極めっき膜を形成することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の半導体素子の一つであるIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、MOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)の高速スイッチング特性および電圧駆動特性と、バイポーラトランジスタの低オン電圧特性を有する。その応用範囲は、従来の汎用インバータ、ACサーボ、無停電電源(UPS)およびスイッチング電源等からハイブリッド車向け昇圧DC−DCコンバータへと拡大してきている。
【0003】
上述したような半導体素子を製造する方法として、次のような方法が提案されている。シリコン(Si)基板のおもて面側に素子のおもて面構造を形成し、裏面を研削して基板厚さを薄くし、シリコン基板の裏面側にバッファ層およびコレクタ層を形成する。次に、裏面側のコレクタ層の表面に、厚さが0.3μm以上1.0μm以下で、シリコン濃度が0.5wt%以上2wt%以下、好ましくは1wt%以下のアルミニウムシリコン(AlSi)層を形成する。次に、アルミニウムシリコン層の表面にチタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)などの複数の金属層を蒸着またはスパッタリングにより順に形成する(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
また、おもて面および裏面にそれぞれ電極を備えたIGBT等の縦型の半導体素子の実装において、コレクタ電極などの裏面電極は、ヒートシンクとなる金属板にはんだを用いて接合される。一方、エミッタ電極などのおもて面電極は、アルミニウムワイヤーを用いたワイヤーボンディングによって接合されるのが主流である。しかし、最近では、おもて面電極との接合においても、はんだ接合が用いられることがある。おもて面電極との接合にはんだ接合を用いることで、高密度実装化、電流密度向上、スイッチング速度の高速化のための配線容量低減、半導体装置の冷却効率向上など、各種特性を大幅に改善することができる。
【0005】
半導体素子のおもて面電極に他部材をはんだ接合した半導体装置として、次の装置が提案されている。各半導体チップのおもて面電極にヒートシンクとなる第1の導体部材の裏面がはんだ接合され、各半導体チップの裏面に第2の導体部材のおもて面がはんだ接合されている。ヒートシンクのおもて面に第3の導体部材の裏面がはんだ接合されている。ヒートシンクには段差部が設けられて薄肉部が形成されており、ヒートシンクと各半導体チップとの接合面積よりもヒートシンクと第3の導体部材との接合面積が小さくなっている。第2の導体部材の裏面と第3の導体部材のおもて面とが露出した状態で、各部材が樹脂封止されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0006】
また、別の装置として、半導体素子と、第1の金属体と、第2の金属体と、第3の金属体とを備え、ほぼ全体が樹脂でモールドされた次の半導体装置が提案されている。第1の金属体は、半導体素子の裏面に接合され電極と放熱を兼ねている。第2の金属体は、半導体素子のおもて面に接合され電極と放熱を兼ねている。第3の金属体は、半導体素子のおもて面と第2の金属体との間に接合されている。そして、半導体素子おもて面のせん断応力、または、半導体素子と金属体とを接合する接合層における歪み成分等を低減させるように、半導体素子の厚さを薄くしている。さらに、接合層が錫(Sn)系はんだで構成されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0007】
実際に、半導体素子のおもて面電極に他部材をはんだ接合する場合、はんだとおもて面電極との密着性を向上させるために、おもて面電極の表面にニッケル等からなるめっき膜を形成する必要がある。めっき膜を形成するめっき処理法としては、電気めっき法や無電解めっき法などが一般的である。電気めっき法は、被めっき部材に外部電流を供給することにより、溶液中の金属イオンを被めっき部材に還元析出させる方法である。一方、無電解めっき法は、電気を使用することなく、溶液中の金属イオンを化学的に被めっき部材に還元析出する方法である(例えば、下記非特許文献1参照。)。無電解めっき法は、対極や直流電源などの電気回路を必要とする電気めっき法よりも、処理装置の構成や処理工程を簡略化することができる。
【0008】
無電解めっき法によりおもて面電極の表面にめっき膜を形成した半導体素子(半導体チップ)を実装した半導体装置として、次の装置が提案されている。半導体素子の裏面電極が絶縁基板上に構成された回路パターンに接合され、おもて面電極が接続導体に接合されている。半導体チップのおもて面電極を形成するアルミニウム層の上に、ジンケート法による無電解めっき処理によってニッケルめっき膜および金めっき膜を順に成膜してなる電極めっき膜が形成されている。ジンケート法による無電解めっき処理によって電極めっき膜を成膜するため、電極めっき膜の熱伝導率は均一となっている。電極めっき膜は、鉛をほぼ含まない鉛フリーはんだ層を介して、放熱経路となる接続導体に接合されている(例えば、下記特許文献4参照。)。
【0009】
次に、おもて面電極に他部材をはんだ接合可能な半導体素子(半導体チップ)を実装した半導体装置の製造方法について、IGBTを製造する場合を例に説明する。図15は、従来の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図16〜21は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、図16に示すように、半導体ウェハ100のおもて面の表面層に、例えばベース領域やエミッタ領域などIGBTのおもて面構造(不図示)を形成する(ステップS101)。おもて面構造は、ダイシング(切断)後に個々の半導体チップとなる領域にそれぞれ形成される。次に、おもて面電極101として、ゲート領域およびエミッタ領域にそれぞれ接するゲート電極およびエミッタ電極を形成する(ステップS102)。
【0010】
次に、図17に示すように、半導体ウェハ100のおもて面の全面に、ポリイミドからなる保護膜102を形成する。次に、保護膜102をパターニングして保護膜102のおもて面電極101上の部分を除去することにより、おもて面電極101が露出する開口部を形成する。次に、図18に示すように、半導体ウェハ100を裏面側から研削(バックグラインド)していき、さらに裏面の表面をエッチングすることにより、半導体装置として用いる製品厚さまで半導体ウェハ100を薄くする(以下、本工程を「薄化」と呼称する場合もある)(ステップS103)。次に、イオン注入および熱拡散により、半導体ウェハ100の裏面の表面層に、コレクタ領域などの裏面構造(不図示)を形成する(ステップS104)。
【0011】
次に、図19に示すように、半導体ウェハ100の裏面に、スパッタリング等のPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長)法により複数の金属層を順に積層して裏面電極103を形成する(ステップS105)。次に、図20に示すように、半導体ウェハ100の裏面に支持基板104を貼り付けて、裏面電極103を保護する。次に、図21に示すように、無電解めっき処理によりおもて面電極101の表面に複数のめっき膜105を順に積層して電極めっき膜を形成する(ステップS106)。その後、半導体ウェハ100をダイシングすることにより、おもて面電極101の表面にめっき膜105が形成された半導体チップが完成する。
【0012】
このように無電解めっき法によりおもて面電極の表面にめっき膜を形成する半導体装置の製造方法として、次の製造方法が提案されている。シリコンからなるウェハのおもて面側に形成された電極端子の端子面に無電解めっきを行う際に、ウェハの裏面側の全面に電気絶縁材料としてのダイシングテープを貼り付けて絶縁する。その後、電極端子の端子面に無電解めっきによりめっき膜を形成する(例えば、下記特許文献5参照。)。
【0013】
また、半導体チップの両面が一対の金属板で挟まれており、装置のほぼ全体が樹脂でモールドされてなる半導体装置を製造するにあたって、次の方法が提案されている。保持治具を配置した状態で、積層された状態の第1の金属体、第1の接合材、半導体素子、第2の接合材、第3の金属体、第3の接合材および第2の金属体に対して加熱処理を行う。これにより、第1の金属体と半導体素子、半導体素子と第3の金属体、第3の金属体と第2の金属体を、それぞれ接合する(例えば、下記特許文献6参照。)。特許文献6に記載の製造方法では、最終的な接合時に半導体チップ上に接合される金属板が動くことに起因する半導体装置の動作不良の発生と、半導体装置の寿命低下とを抑制している。
【0014】
また、半導体チップのおもて面電極と裏面電極とに、それぞれ電極と放熱体とを兼ねる金属体を配置し、装置のほぼ全体が樹脂でモールドされる半導体装置に実装される半導体チップを製造するにあたって、次の方法が提案されている。半導体ウェハの裏面を支持基板に固定した状態で、半導体ウェハのおもて面におもて面電極を形成する(例えば、下記特許文献7参照。)。
【0015】
また、別の方法として、次の方法が提案されている。まず、半導体ウェハのおもて面側にめっき膜を形成しておもて面電極を形成し、半導体ウェハの裏面を研削して半導体ウェハを薄化する。そして、半導体ウェハの研削後の裏面にニッケル膜を含む裏面電極を形成し、その後、半導体ウェハのおもて面側にめっき膜を形成する(例えば、下記特許文献8参照。)。
【0016】
また、別の方法として、次の方法が提案されている。まず、半導体ウェハのおもて面側に、性質を異にする複数の半導体領域が所定の位置関係で配置されている半導体素子領域を形成する。次に、半導体素子領域の位置関係に対して所定の位置関係でパターニングされているおもて面側電極を、半導体ウェハのおもて面側に形成する。次に、半導体ウェハの裏面にダイシングフレーム付きのダイシングテープを固定する。次に、ダイシングフレームを介して半導体ウェハを支持しながら、半導体ウェハのおもて面にめっき処理を行う(例えば、下記特許文献9参照。)。
【0017】
また、別の方法として、次の方法が提案されている。まず、半導体ウェハのおもて面のアルミニウム電極の表面上にめっき膜を形成する。次に、半導体ウェハの裏面側から研削して半導体ウェハを所望の厚さにする。その後、半導体ウェハの研削後の裏面に裏面電極を形成する(例えば、下記特許文献10参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−036211号公報
【特許文献2】特開2002−110893号公報
【特許文献3】特開2003−110064号公報
【特許文献4】特許第4344560号公報
【特許文献5】特開2005−353960号公報
【特許文献6】特許第3823974号公報
【特許文献7】特許第3829860号公報
【特許文献8】特許第4049035号公報
【特許文献9】特開2007−027477号公報
【特許文献10】特開2006−261415号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】電気鍍金研究会、「無電解めっき 基礎と応用」、日刊工業新聞社、1994年5月、p.36〜37
【非特許文献2】株式会社ディスコ、“TAIKOプロセス”、[online]、平成13年〜平成25年、インターネット、[平成25年9月19日検索]、<URL:http://www.disco.co.jp/jp/solution/library/taiko.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、次の問題が生じることが新たに判明した。図22は、従来の半導体装置の製造途中におけるめっき処理後の状態を示す断面図である。スパッタリング法等の物理気相成長法により半導体ウェハ100の裏面に裏面電極103を形成する場合、図19に示すように、裏面電極103が半導体ウェハ100の外周部からおもて面側に回り込むように形成される虞がある。この場合、裏面電極103の端部103aがウェハおもて面側の外周部の保護膜102上にまで延在した状態となる。裏面電極103が半導体ウェハ100の外周部からおもて面側に回り込むように形成される理由は、スパッタリング装置の構造に起因する。
【0021】
スパッタリング法では、電子ビームによる一般的な蒸着法と比較して、半導体ウェハ100よりも直径の大きいターゲットを用いる。また、ターゲットから飛び出した金属原子の平均自由行程が比較的短くなるアルゴン(Ar)雰囲気を用いる。このようなスパッタリング装置の構造に起因して、裏面電極103のウェハおもて面側への回り込みが起こる。また、薄化された半導体ウェハ100はおもて面側に凸に反った状態となっている。このため、裏面電極103を形成する際に、静電チャックなどによって半導体ウェハ100の反りを矯正することができない場合に、裏面電極103の、ウェハおもて面側への回り込みが助長される虞がある。
【0022】
裏面電極103がウェハおもて面側へ回り込むように形成されている場合、図20に示すように、ウェハ裏面に形成した裏面電極103を支持基板104で保護する方法では、裏面電極103の端部103aは露出された状態となる。このため、図21に示すように、おもて面電極101上にめっき膜105を形成するときに、露出された裏面電極103の端部103a上にもめっき膜105aが析出する。そして、図22に示すように、裏面電極103の端部103a上に析出しためっき膜105aは、めっき処理中またはめっき処理後に、裏面電極103の端部103aから剥離することが確認された。その理由は、次の通りである。
【0023】
裏面電極103は、基本的にウェハ裏面上の部分およびウェハ外周部上の部分(端部103a)ともに同じ積層構造となっている。しかしながら、裏面電極103を構成する各金属層の厚さは、ウェハ裏面上の部分に比べてウェハ外周部上の部分で薄くなっている。このため、おもて面電極101上にめっき膜105を形成するための無電解めっきの前処理によって、裏面電極103の端部103aの最表面層(例えば金層)がエッチングされ、下層のニッケル層が露出される。この状態でめっき処理を行った場合、ニッケル層が露出された部分にニッケルめっき膜(めっき膜105a)が成長する。おもて面側に回り込んだ裏面電極103の端部103aと裏面電極103の端部103aの下地は密着性に乏しいため、めっき処理後にニッケルめっき膜の内部応力によりニッケルめっき膜が剥離する。ここで裏面電極103の端部103aの下地とは、例えば保護膜102であったり,図示しないが半導体ウェハ100上の酸化膜であったりする。
【0024】
剥離しためっき膜105aがめっき槽内に落下した場合、剥離しためっき膜105aがめっき処理の結晶核となり、めっき槽内で異常析出を生じさせる原因となる。そして、めっき槽内で異常析出が発生した場合、例えばめっき液の主成分であるニッケル濃度が低下するなどめっき液組成が変化して正常なめっき処理を継続することができなくなる。このため、所定の膜厚でめっき膜105を形成することができなくなる。また、剥離しためっき膜105aが、めっき処理中またはめっき処理後のダイシング時に、半導体ウェハ100の表面に再付着する場合もある。この場合、再付着しためっき膜105aが外観不良や配線間ショート等のチップ不良を生じさせる原因となり、歩留りが低下するという問題がある。
【0025】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、歩留まりの高い半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、おもて面および裏面にそれぞれおもて面電極および裏面電極を有する半導体チップを備えた半導体装置の製造方法であって、次の特徴を有する。まず、前記半導体チップとなる半導体ウェハのおもて面に、前記おもて面電極としておもて面電極層を形成するおもて面電極層形成工程を行う。次に、前記おもて面電極層形成工程後、前記半導体ウェハの裏面を研削して、前記半導体ウェハの厚さを薄くする薄化工程を行う。次に、前記薄化工程後、前記おもて面電極層の表面に、前記おもて面電極として電極めっき膜を形成するめっき工程を行う。次に、前記めっき工程後に、前記半導体ウェハの研削後の裏面に前記裏面電極を形成する裏面電極形成工程を行う。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、歩留まりの高い半導体装置を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図2図2は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中における半導体ウェハの状態を示す平面図である。
図3図3は、図1の半導体チップのおもて面電極の平面レイアウトを示す平面図である。
図4図4は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図6図6は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図7図7は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図8図8は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図9図9は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図10図10は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図11図11は、第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について示すフローチャートである。
図12図12は、第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図13図13は、第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図14図14は、第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図15図15は、従来の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図16図16は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図17図17は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図18図18は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図19図19は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図20図20は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図21図21は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図22図22は、従来の半導体装置の製造途中におけるめっき処理後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の構造について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図1に示すように、第1の実施の形態にかかる半導体装置10は、半導体チップ1をパッケージに実装した構造を有する。半導体チップ1は、例えばIGBT等の縦型の半導体素子である。半導体チップ1の厚さは、例えば30μm以上250μm以下、好ましくは30μm以上140μm以下であるのがよい。その理由は、ドリフト領域の抵抗を減らすことができるため、飽和電圧Vce(sat)とターンオフ損失Eoffのトレードオフを改善することができるとともに、素子の放熱性が高まるため、耐熱性を向上させることができるからである。
【0031】
以下、半導体チップ1にIGBTを適用した場合を例に、半導体装置10の構造を詳細に説明する。半導体チップ1のおもて面には、エミッタ電極となる第1おもて面電極2aと、ゲートパッドや電流検出パッド、温度検出用パッドとなる第2おもて面電極2bと、が設けられている。第1,2おもて面電極2a,2bは、半導体チップ1側から、例えばアルミニウムシリコン層、ニッケル(Ni)−リン(P)めっき膜、および金(Au)めっき膜が順に積層されてなる。アルミニウムシリコン層は、例えば1wt%程度の割合でシリコンを含むアルミニウムで構成されている。ニッケル−リンめっき膜は、後述するはんだ層との密着性を向上させる機能を有する。また、ニッケル−リンめっき膜は、例えば2wt%以上10wt%以下程度の割合でリンを含むのが好ましい。その理由は、一般的にニッケルめっき浴が安定で、ニッケルめっきの付き周りが良好で、析出速度が早く、はんだ付け性が良好であるという特徴を有するからである。ニッケル−リンめっき膜の厚さは、はんだ接合時にはんだ層に溶融する分を考慮して、例えば3μm以上6μm以下であるのがよい。金めっき膜は、ニッケル−リンめっき膜の酸化を防止する機能を有する。金めっき膜の厚さは、例えば0.03μm程度であればよい。
【0032】
半導体チップ1の裏面には、コレクタ電極となる裏面電極3が設けられている。裏面電極3は、半導体チップ1側から、例えばアルミニウムシリコン層、チタン(Ti)層、ニッケル層、および金層が順に積層されてなる。チタン層は、ニッケル層中のニッケル原子がアルミニウムシリコン層中へ拡散するのを防止するバッファ層として機能する。ニッケル層は、後述するはんだ層との密着性を向上させる機能を有する。金層は、ニッケル層の酸化を防止する機能を有する。アルミニウムシリコン層、チタン層、ニッケル層および金層の厚さは、例えば、それぞれ0.5μm、0.2μm、0.7μmおよび0.05μmであればよい。また金層に代えて、0.5μm以上1μm以下の厚さの銀(Ag)層を設けてもよい。
【0033】
半導体チップ1の第1おもて面電極2aは、はんだ層11を介して第1金属板4の裏面に接合されている。第1金属板4のおもて面は、はんだ層12を介して第2金属板5の裏面に接合されている。半導体チップ1の裏面電極3は、はんだ層13を介して第3金属板6のおもて面に接合されている。半導体チップ1の第2おもて面電極2bは、ボンディングワイヤー14を介して、例えば外部装置(不図示)に接続するための第4金属板7に電気的に接続されている。ボンディングワイヤー14として、例えばアルミニウムや金等からなるワイヤーを用いればよい。第2金属板5と第3金属板6との間に挟まれた各部材は、樹脂8で封止されている。すなわち、半導体装置10のほぼ全体が封止されている。
【0034】
第1,2金属板4,5は、半導体チップ1の第1おもて面電極2aとともにエミッタ電極を構成している。第3金属板6は、半導体チップ1の第2おもて面電極2bとともにコレクタ電極を構成している。また、第1〜3金属板4〜6は、熱伝導性に優れた材料で形成され、半導体チップ1に発生した熱を放熱する放熱体として機能する。具体的には、第1〜3金属板4〜6として、例えば無電解めっき処理によって順に積層されたニッケル−リンめっき膜および金めっき膜からなるめっき膜で表面が覆われた銅(Cu)板を用いればよい。はんだ層11〜13は、錫(Sn)−銀−銅系はんだや錫−ニッケル−銅系はんだ等の鉛(Pb)を含まない鉛フリーはんだを用いればよい。はんだ層11,12,13の厚さは、半導体装置10におけるはんだ層の熱抵抗成分が大きくならないように例えば100μm以下であるのがよい。
【0035】
次に、上述したパッケージ構造の半導体装置10に実装される半導体チップ1をダイシングする前の半導体ウェハの状態について説明する。図2は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中における半導体ウェハの状態を示す平面図である。図2に示すように、第1の実施の形態にかかる半導体装置を製造するにあたって、半導体ウェハ20において、ダイシングしたときに個々の半導体チップ1となる領域にはそれぞれ例えばIGBTなどの半導体素子(不図示)が形成される。半導体ウェハ20のダイシング後に半導体チップ1となる領域は例えば格子状に配置され、ダイシング後に半導体チップ1となる領域間にはダイシングライン20aが配置される。
【0036】
次に、半導体チップ1のおもて面における第1,2おもて面電極2a,2bの平面レイアウトについて説明する。図3は、図1の半導体チップのおもて面電極の平面レイアウトを示す平面図である。図3に示すように、第1,2おもて面電極2a,2bは、半導体チップ1のおもて面にそれぞれ複数設けられる。第1,2おもて面電極2a,2bの平面形状は例えば略矩形であり、第1おもて面電極2aの占有面積は第2おもて面電極2bの占有面積よりも広い。第2おもて面電極2bは、例えば半導体チップ1の外周に沿って並列に配置される。半導体チップ1のおもて面に、第1,2おもて面電極2a,2bの他にさらに電極が設けられていてもよい。図3において半導体チップ1上の第1,2おもて面電極2a,2b以外の部分は、ポリイミドなどの絶縁材料からなる保護膜である。
【0037】
次に、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について、上述したパッケージ構造の半導体装置10を製造する場合を例に説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について示すフローチャートである。図5〜10は、第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、例えば直径6インチ(≒150mm)で厚さ600μmのシリコンからなる半導体ウェハ20を用意する。次に、一般的な方法により、半導体ウェハ20のおもて面の表面層に、例えばゲート領域やエミッタ領域などの一般的なIGBTのおもて面構造(不図示)を形成する(ステップS1)。おもて面構造は、ダイシング後に個々の半導体チップ1となる領域にそれぞれ形成される。
【0038】
次に、スパッタリング法等により、半導体ウェハ20のおもて面に、例えばアルミニウムシリコンからなるおもて面電極層21を成膜する。そして、図5に示すように、おもて面電極層21をパターニングする(ステップS2)。次に、例えばスピンコーターを用いて、半導体ウェハ20のおもて面の全面に、例えばポリイミドなどの絶縁材料からなる保護膜22を形成する。次に、図6に示すように、フォトリソグラフィにより保護膜22をパターニングして保護膜22のおもて面電極層21上の部分を除去し、おもて面電極層21が露出する開口部を形成する。
【0039】
このとき、半導体ウェハ20の外周部に保護膜22が残るように、保護膜22の形成およびパターニングを行うのが好ましい。その理由は、次の通りである。後述するめっき処理時に、シリコン部やおもて面電極層21のエッチング残渣が保護膜22で覆われずに露出された状態となっている場合、半導体ウェハ20の外周部にめっき膜が析出し、めっき処理中やめっき処理後に剥離する虞がある。この剥離しためっき膜によって、上述した従来技術による不具合が生じる虞があるからである。
【0040】
次に、図7に示すように、一般的な研削装置を用いて、半導体ウェハ20を裏面側から研削(バックグラインド)する。さらに、半導体ウェハ20の裏面をエッチングすることにより、研削によって生じたダメージ層を除去する。この研削およびエッチングにより、上述した半導体チップ1の厚さまで半導体ウェハ20を薄化する(ステップS3)。次に、一般的な方法(例えばイオン注入および熱拡散)により、半導体ウェハ20の研削後の裏面の表面層に、コレクタ領域などの裏面構造(不図示)を形成する(ステップS4)。
【0041】
ステップS4においては、例えば、加速エネルギーを50keVとし、ドーズ量を1×1015cm-2としてボロン(B)などのp型不純物をイオン注入した後に、注入したp型不純物を熱拡散させ、n型の半導体チップ1にp型のコレクタ領域を形成する。また、例えばリンやプロトン(H+)などのn型不純物をイオン注入した後に、注入したn型不純物を熱拡散させ、n型の半導体チップ1の裏面側にn型フィールドストップ領域を形成してもよい。このn型フィールドストップ領域は、オフ時にベース領域とドリフト領域との間のpn接合から伸びる空乏層が、コレクタ領域に達しないようにする機能を有する。イオン注入した不純物を熱拡散させるための熱処理は、例えば300℃以上の温度で行うのがよい。
【0042】
次に、図8に示すように、半導体ウェハ20の裏面に支持基板23を貼り付け、半導体ウェハ20の裏面(すなわちシリコン部)を保護する。支持基板23は、後述するめっき処理時に、半導体ウェハ20の裏面へのめっきの析出を防止するために用いられる。このため、支持基板23に対して、接着剤を介してガラスを貼り付けたり、粘着剤付きのテープを貼ったり、めっき液に耐性のある熱硬化性樹脂をスピンコートした後に熱処理して硬化させたり、めっき液に耐性のある紫外線硬化性樹脂をスピンコートした後に紫外線を照射して樹脂を硬化させたりなどの処理が施されていてもよい。次に、図9に示すように、例えば無電解めっき処理により、おもて面電極層21の表面に複数のめっき膜を順に積層して、電極めっき膜24を形成する(ステップS5)。
【0043】
ステップS5においては、電極めっき膜24として、上述したように例えばニッケル−リンめっき膜および金めっき膜を順に積層する。ニッケル−リンめっき膜は、例えば75℃以上85℃以下の浴温度に保持しためっき液を用いて形成するのがよい。その理由は、無電解ニッケルめっき処理では温度の上昇に伴ってめっき析出速度が指数関数的に増大する特性を有するため、成膜速度が早く、めっき液の分解が起こらない75℃以上85℃以下の浴温度でめっき処理を行うのが好ましいからである。電極めっき膜24を形成するためのめっき処理を行う前に、おもて面電極層21と電極めっき膜24との密着性を向上させるための前処理(例えばジンケート処理)を行ってもよい。
【0044】
図1で示した通り、第1おもて面電極2aとなるおもて面電極層21上の電極めっき膜24は、はんだ接合用である。そして、第2おもて面電極2bとなるおもて面電極層21上の電極めっき膜24は、ワイヤーボンディング用である。
【0045】
次に、半導体ウェハ20の裏面から支持基板23を除去する。そして、図10に示すように、半導体ウェハ20の裏面に、スパッタリング法等の物理気相成長法により複数の金属層を順に積層して、裏面電極3を形成する(ステップS6)。ステップS6においては、裏面電極3として、上述したように例えばアルミニウムシリコン層、チタン層、ニッケル層および金層を順に積層する。ステップS6では物理気相成長法を用いるため、裏面電極3の端部3aが半導体ウェハ20の外周部からおもて面側に回り込むように形成される。しかしながら、裏面電極3の形成後にめっき処理は行われないため、裏面電極3の端部3a上にめっき膜が析出することはない。
【0046】
次に、例えば350℃の熱処理を行い、裏面電極3と半導体ウェハ20のシリコン部とのオーミックコンタクトを形成し、裏面電極3のコンタクト抵抗を低減する。次に、ダイシングライン20aに沿って半導体ウェハ20をダイシングすることにより、図1の半導体装置10に実装する半導体チップ1が完成する。
【0047】
次に、一般的な方法により、半導体チップ1および第1〜3金属板4〜6が所定の配置となるように、それぞれの部材をはんだ接合する。そして、半導体チップ1の第2おもて面電極2bとなる電極めっき膜24にボンディングワイヤー14を介して第4金属板7を接続する。その後、少なくとも半導体チップ1全体を樹脂8で封止することにより、図1に示すパッケージ構造の半導体装置10が完成する。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について、上述したパッケージ構造の半導体装置10を製造する場合を例に説明する。図11は、第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について示すフローチャートである。図12〜14は、第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。以下の第2の実施の形態において、前述の第1の実施の形態との対応部分には同一符号を付し、重複する箇所は説明を省略する。
【0049】
まず、シリコンからなる半導体ウェハ20を用意する。次に、図12に示すように、一般的な方法により、半導体ウェハ20のおもて面の表面層に、一般的なIGBTのおもて面構造(不図示)を形成する(ステップS1)。
【0050】
次に、一般的な研削装置を用いて、半導体ウェハ20を裏面側から研削(バックグラインド)する。さらに、図13に示すように、半導体ウェハ20の裏面をエッチングすることにより、研削によって生じたダメージ層を除去する。この研削およびエッチングにより、上述した半導体チップ1の厚さまで半導体ウェハ20を薄化する(ステップS12)。
【0051】
次に、一般的な方法(例えばイオン注入および熱拡散)により、半導体ウェハ20の研削後の裏面の表面層に、コレクタ領域などの裏面構造を形成する(ステップS13)。ステップS13においては、例えば、加速エネルギーを50keVとし、ドーズ量を1×1015cm-2としてボロン(B)などのp型不純物をイオン注入した後に、注入したp型不純物を熱拡散させ、n型の半導体チップ1にp型のコレクタ領域を形成する。イオン注入した不純物を熱拡散させるための熱処理は、例えば300℃以上の温度で行うのがよい。
【0052】
次に、スパッタリング法等により、半導体ウェハ20のおもて面に、おもて面電極層21を成膜する。そして、おもて面電極層21をパターニングする。次に、例えばスピンコーターを用いて、半導体ウェハ20のおもて面の全面に、保護膜22を形成する。次に、図14に示すように、フォトリソグラフィにより保護膜22をパターニングして保護膜22のおもて面電極層21上の部分を除去し、おもて面電極層21が露出する開口部を形成する(ステップS14)。
【0053】
次に、半導体ウェハ20の裏面に支持基板23を貼り付け、半導体ウェハ20の裏面(すなわちシリコン部)を保護する。
【0054】
次に、図9に示すように、おもて面電極層21の表面に複数のめっき膜を順に積層して、電極めっき膜24を形成する(ステップS5)。ステップS5においては、電極めっき膜24として、上述したように例えばニッケル−リンめっき膜および金めっき膜を順に積層する。
【0055】
次に、半導体ウェハ20の裏面から支持基板23を除去する。そして、図10に示すように、半導体ウェハ20の裏面に、スパッタリング法等の物理気相成長法により複数の金属層を順に積層して、裏面電極3を形成する(ステップS6)。ステップS6においては、裏面電極3として、上述したように例えばアルミニウムシリコン層、チタン層、ニッケル層および金層を順に積層する。ステップS6では物理気相成長法を用いるため、裏面電極3の端部3aが半導体ウェハ20の外周部からおもて面側に回り込むように形成される。しかしながら、裏面電極3の形成後にめっき処理は行われないため、裏面電極3の端部3a上にめっき膜が析出することはない。
【0056】
次に、例えば350℃の熱処理を行い、裏面電極3と半導体ウェハ20のシリコン部とのオーミックコンタクトを形成し、裏面電極3のコンタクト抵抗を低減する。次に、ダイシングライン20aに沿って半導体ウェハ20をダイシングすることにより、図1の半導体装置10に実装する半導体チップ1が完成する。
【0057】
以上、説明したように、実施の形態によれば、ウェハおもて面のおもて面電極層上に電極めっき膜を形成した後に、ウェハ裏面に裏面電極を形成する。このため、裏面電極の端部がウェハおもて面側の外周部の保護膜上にまで延在したとしても、ウェハ外周部の裏面電極の端部上にめっき膜は析出しない。したがって、従来のようにめっき処理中またはめっき処理後に半導体ウェハの端部からめっき膜が剥離されることはない。このため、剥離しためっき膜によって生じるめっき槽中での異常析出を防止することができる。また、剥離しためっき膜が半導体ウェハに再付着することで生じるチップ不良を防止することができる。したがって、半導体チップの歩留りを向上させることができる。
【0058】
また、実施の形態によれば、ウェハ裏面側に裏面構造を形成した後に、ウェハおもて面のおもて面電極層上に電極めっき膜を形成する。このため、裏面構造を形成するための熱処理(不純物の熱拡散)によって、電極めっき膜が割れることを防止することができる。
【0059】
また、第2の実施の形態によれば、ウェハ裏面側に裏面構造を形成した後に、ウェハおもて面のおもて面電極層を形成する。このため、おもて面電極としてアルミニウムやその合金を用いた場合でも、電極の融点より高い温度で、イオン注入した不純物を熱拡散させるための熱処理を行うことができる。例えばセレン(Se)を注入イオンに用いた場合、熱拡散させるための熱処理温度は約900℃になり、アルミニウムの融点(660℃)より高温になる。第2の実施形態によれば、この場合においても、上述の歩留り向上などの効果を得ることができる。
【0060】
以上において本発明では、半導体チップに形成される半導体素子としてIGBTを例に説明している。しかしながら、上述した実施の形態に限らず、MOSFETや、FWD(Free Wheeling Diode)などの様々な半導体素子において、電極表面にめっき膜を形成する場合に適用可能である。また、上述した実施の形態では、6インチの半導体ウェハを用いた場合を例に説明しているが、これに限らず、例えば4インチや8インチ、12インチ等の様々な直径を有する半導体ウェハを用いることが可能である。また、半導体ウェハの構成材料は、シリコンに限らず、例えば炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)など様々な半導体材料であってもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、半導体ウェハの裏面を一様に研削した場合を例に説明している。しかしながら、例えば上記非特許文献2で提案されるように、半導体ウェハの裏面の中央部のみ研削し、外周部を所定の幅で厚く残したリブ部を有する半導体ウェハにも本発明は適用可能である。また、上述したチップおもて面の第1,2おもて面電極の配置は一例であり、半導体チップに形成される半導体素子の構造に合わせて種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法は、デバイス厚の薄い半導体チップを実装した半導体装置を製造するのに有用であり、特に、汎用インバータ、ACサーボ、無停電電源(UPS)、スイッチング電源やハイブリッド車向け昇圧DC−DCコンバータに用いられるIGBT等の電力用半導体装置の製造に適している。
【符号の説明】
【0063】
1 半導体チップ
2a 第1おもて面電極
2b 第2おもて面電極
3 裏面電極
3a 裏面電極の端部
4 第1金属板
5 第2金属板
6 第3金属板
7 第4金属板
8 樹脂
10 半導体装置
11、12、13 はんだ層
14 ボンディングワイヤー
20 半導体ウェハ
20a ダイシングライン
21 おもて面電極層
22 保護膜
23 支持基板
24 電極めっき膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22