(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
(実施形態1〜4)
以下
図1〜23を参照して、具体的に説明する。
図1〜4は実施形態1〜4を模式的に示すものである。
図5〜10は実施形態1の構造を具体的に示すものである。同様に、
図11〜15は実施形態2の構造を具体的に示し、
図16〜23は実施形態3の構造を具体的に示すものである。
図2において、軸方向DAは、ステアリングシャフトの軸方向を示し、前方DFおよび後方DBは、ステアリング装置を車体に取り付けた場合の車体の前方および後方を示している。
【0021】
実施形態1は、雄ステアリング軸106と雌ステアリング軸105からなるステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置120であって、ステアリングコラムはインナーコラム121とアウターコラム122からなり、テレスコピック調整可能、及び、衝撃吸収可能に軸方向にストロークする機能を備えており、車体に取り付けられるチルトブラケット123を介してチルト調整可能であり、チルトブラケット123に備えられた締付機構129でアウターコラム122を締め付けることでインナーコラム121を保持するものであって、締付機構129の摩擦面を増加させるテレスコ多板125を有しており、テレスコ多板125はコラム(121,122)の底面側、かつ、アウターコラム122のスリット間に設けた固定ブラケット124に固定され、インナーコラム121の孔と固定ブラケット124の孔を一致させてせん断ピンを挿通することで、固定ブラケット124からインナーコラム121が離脱可能に支持されていることを特徴とするステアリングコラム装置120である。
【0022】
実施形態2は、雄ステアリング軸106と雌ステアリング軸105からなるステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置120であって、ステアリングコラム装置120はインナーコラム121とアウターコラム122からなり、テレスコピック動作及び衝撃吸収可能機能を有し、相対的に軸方向にストロークするものであり、車体に取り付けられるチルトブラケット123を介してチルト調整可能に車体に取り付けられ、チルトブラケット123は締付機構129を備えており、アウターコラム122を締め付けることでインナーコラム121を保持するものであって、アウターコラム122はスリットを有し、スリットに対し左右方向から締付機構129の作用により押圧する押圧ブラケット1232でインナーコラム121を包持しており、このスリットの間に、インナーコラム121に離脱可能に取り付けられた固定板としての機能を有するカム及びギヤ機構148を配置し、締付機構129を構成するチルトレバー127の回転により、チルトレバー中央部のカムであるカムロック機構133を回転させることで、チルトボルト中央部153に形成されたカム部を固定板に下方から上方に向かって押し付け、保持する締付機構を有することを特徴とするステアリングコラム装置120である。
【0023】
実施形態3は、ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置であって、ステアリングコラムはインナーコラムとアウターコラムからなり、テレスコピック調整機能及び衝撃吸収可能に軸方向にストロークするものであって、車体に取付られるチルトブラケットを備え、チルト調整可能に車体に取り付けられるものであって、締付機構により、チルトブラケットとアウターコラムと摩擦板としてのテレスコ多板とを締め付けることで、アウターコラムに内嵌されたインナーコラムを保持するものであって、アウターコラムはスリットを有し、締付機構により、スリットに対し左右方向から押圧する押圧ブラケットでインナーコラムを包持し、このスリット間にインナーコラムに離脱可能に取り付けられた摩擦板としての固定板であるインナープレート158を配置し、さらに摩擦板を固定する固定ブラケットとの間を樹脂の射出成形にて形成したせん断ピン137,138でインナーコラムに結合固定したことを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0024】
実施形態4は、実施形態1〜3の何れかに記載のステアリングコラム装置を備えるステアリング装置である。
【0025】
実施形態4のステアリング装置は、車両の操向装置として好適に使用できる。
【0026】
(実施形態5)
図24は、実施形態5に係るステアリング装置の周辺を模式的に示す図である。
図25は、実施形態5に係るステアリング装置を底面側から見た斜視図である。
図24および
図25を用いて、実施形態5に係るステアリング装置の概要を説明する。また、以下の説明において、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの前方は、単に前方と記載され、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの後方は、単に後方と記載される。
図24において、前方は、図中の左側であり、後方は、図中の右側である。
【0027】
(ステアリング装置)
ステアリング装置100は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、を備え、ピニオンシャフト87と、に接合している。
【0028】
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを含む。入力軸82aは、一方の端部がステアリングホイール81に連結され、他方の端部が出力軸82bに連結される。出力軸82bは、一方の端部が入力軸82aに連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。実施形態5では、入力軸82a及び出力軸82bは、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材等から形成される。
【0029】
ロアシャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。
【0030】
また、ステアリング装置100は、入力軸82aを回転可能に支持する筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状のアウターコラム54と、を含むステアリングコラム50を備える。インナーコラム51は、アウターコラム54よりも後方側に配置されている。以下の説明において、インナーコラム51の軸方向およびアウターコラム54の軸方向は、適宜単に軸方向と記載される。
【0031】
ステアリング装置100は、車体側部材13に固定されてアウターコラム54を支持するアウターコラムブラケット52を備える。アウターコラムブラケット52は、車体側部材13に固定される取付板部52bと、取付板部52bに一体に形成された枠状支持部52aと、を備えている。アウターコラムブラケット52の取付板部52bは、例えば取付孔52hを有しており、取付孔52hおよびボルト等の固定部材を用いて車体側部材13に固定される。アウターコラムブラケット52の枠状支持部52aは、アウターコラム54の両側に配置され、アウターコラム54を締め付けている。また、枠状支持部52aには、長穴であるチルト調整孔23hが設けられている。
【0032】
また、アウターコラム54は、前方側端部に設けられるピボットブラケット55を有する。ピボットブラケット55は、回転軸55aを中心として回転可能に車体側部材12に支持されている。回転軸55aは、例えば水平方向に平行である。これにより、アウターコラム54は、鉛直方向に揺動可能に支持されている。
【0033】
図26は、
図24におけるd−d断面を示す図である。
図27は、
図26におけるe−e断面を示す図である。
図28は、実施形態5に係るステアリング装置の底面を示す図である。
図26に示すように、アウターコラム54は、2つのロッド貫通部31と、スリット54sと、を有する。ロッド貫通部31は、インナーコラム51の外周面から径方向外側に突出する部分であり、
図27に示すように丸孔であるロッド貫通孔31hを有する。径方向は、軸方向に対して直交する方向であり、以下の説明においても同様の意味で用いられる。2つのロッド貫通部31が有するそれぞれのロッド貫通孔31hは、径方向に対向している。また、ロッド貫通部31の一部は、枠状支持部52aと対向している。ロッド33は、2つのロッド貫通孔31hを貫通すると共に枠状支持部52aのチルト調整孔23hを貫通し、操作レバー53と連結されている。
【0034】
また、スリット54sは、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いた長穴であって、アウターコラム54の外周面において2つのロッド貫通部31の間の位置に設けられている。アウターコラム54は、スリット54sを有するので、締め付けられると内径が小さくなる。これにより、アウターコラム54が締め付けられている状態では、アウターコラム54がインナーコラム51を覆う部分において、アウターコラム54の内周面とインナーコラム51の外周面とは接触している。このため、アウターコラム54とインナーコラム51との間に摩擦力が生じている。また、スリット54sの軸方向の両端が塞がれていてもよい。すなわち、スリット54sは閉構造であってもよい。
【0035】
図26に示すように、ステアリング装置100は、第1テレスコ摩擦板21と、第2テレスコ摩擦板22と、を有する。第1テレスコ摩擦板21は、軸方向を長手方向とする長穴であるテレスコ調整孔21hを有する板状部材である。第1テレスコ摩擦板21は、例えば、枠状支持部52aとロッド貫通部31との間の位置に2つずつ重ねて配置される。第2テレスコ摩擦板22は、例えば、板材を曲げて形成された部材であって、軸方向から見て略U字形状である。第2テレスコ摩擦板22は、2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置される2つの摩擦部22aと、2つの摩擦部22aを連結する連結部22bと、連結部22bに設けられる屈曲部22cと、を含む。なお、第1テレスコ摩擦板21は、必ずしも枠状支持部52aとロッド貫通部31との間の位置に配置されていなくてもよく、第1テレスコ摩擦板21とロッド貫通部31とで枠状支持部52aを挟むように配置されていてもよい。
【0036】
摩擦部22aは、丸孔であるロッド貫通孔22hを有する。ロッド33は、テレスコ調整孔21hおよびロッド貫通孔22hを貫通している。連結部22bは、2つの摩擦部22aを連結して一体にすることで、摩擦部22aを2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置する作業を容易にしている。また、連結部22bは、屈曲部22cを有することで、たわんだ状態を保つことができる。これにより、連結部22bは、アウターコラムブラケット52の締め付け状態が変化して2つの摩擦部22a同士の距離が変化した場合でも、摩擦部22aを引っ張りにくくなっている。このため、摩擦部22aが連結部22bに引っ張られることによって摩擦部22aと第1テレスコ摩擦板21との間に隙間が生じる事態が抑制されている。
【0037】
枠状支持部52aが締め付けられると、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22の摩擦部22aは、枠状支持部52aによってアウターコラム54のロッド貫通部31に押し付けられる。これにより、枠状支持部52aと第1テレスコ摩擦板21との間、第1テレスコ摩擦板21と第2テレスコ摩擦板22の摩擦部22aとの間、第1テレスコ摩擦板21とロッド貫通部31との間においてそれぞれ摩擦力が生じる。このため、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22を有さない場合に比較して、摩擦力が生じる面積が増加する。枠状支持部52aは、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22によってより強固にアウターコラム54を締め付けることができる。
【0038】
また、操作レバー53が回転させられると、枠状支持部52aに対する締め付け力が緩められ、枠状支持部52aとアウターコラム54との間の摩擦力がなくなるまたは小さくなる。これにより、アウターコラム54のチルト位置の調整が可能となる。また、操作レバー53が回転させられると、枠状支持部52aに対する締め付け力が緩められ、アウターコラム54のスリット54sの幅が大きくなる。これにより、アウターコラム54がインナーコラム51を締め付ける力がなくなるため、インナーコラム51が摺動する際の摩擦力がなくなる。これにより、操作者は、操作レバー53を回転させた後、ステアリングホイール81を介してインナーコラム51を押し引きすることで、テレスコ位置を調整することができる。
【0039】
図27および
図28に示すように、ステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4を備える。
図29は、実施形態5に係るインナーコラムブラケットの斜視図である。
図29に示すように、インナーコラムブラケット4は、例えば、腕部41と、差込部42と、首部44と、脚部43と、を含む。例えば、腕部41は、
図28に示すように、アウターコラム54の両側で対向する2組の第1テレスコ摩擦板21を接続する棒状の部分である。差込部42は、腕部41の両端に設けられ、第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれる部分である。差込部42は、腕部41よりも細く形成されている。首部44は、腕部41の一部から腕部41の長手方向に対して直交方向に向かって突出する部分である。脚部43は、首部44の腕部41とは反対側の端部に設けられる板状の部分であって、ベースプレート6に接触している。
図29に示すように、脚部43のベースプレートに対向するベースプレート側表面43bは、平坦面である。また、インナーコラムブラケット4の脚部43は、ベースプレート側表面43bとは反対側の表面に窪みである表側凹部45を有する。
【0040】
インナーコラムブラケット4は、
図28に示すように、アウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に連結されている。インナーコラムブラケット4は、差込部42が第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれることによって、第1テレスコ摩擦板21に支持されている。また、アウターコラム54の両側に配置される第1テレスコ摩擦板21は、インナーコラムブラケット4の腕部41を挟んで対向している。また、インナーコラムブラケット4は、脚部43でベースプレート6に連結されている。
【0041】
図30は、実施形態5に係るベースプレートをブラケット側表面側から見た斜視図である。
図31は、実施形態5に係るベースプレートをインナーコラム側表面側から見た斜視図である。
図27に示すように、ベースプレート6は、インナーコラム51の外周面に設けられる。
図30および
図31に示すように、ベースプレート6は、インナーコラムブラケット4の脚部43に対向するブラケット側表面61に、窪みである固定具凹部65を有し、インナーコラム51に対向するインナーコラム側表面62に、窪みである裏側凹部66を有する。ブラケット側表面61は、平坦に形成され、インナーコラム側表面62は、インナーコラム51の外周面の形状に沿った形状にされている。固定具凹部65の底面の一部には、ブラケット側表面61からインナーコラム側表面62に向かって貫通する固定具孔65hが開けられている。
【0042】
図27に示すように、ベースプレート6は、固定具孔65hに挿入される固定具64でインナーコラム51に固定されている。例えば、固定具64は、リベットである。固定具64は、ブラケット側表面61側から固定具孔65hに挿入され、ベースプレート6およびインナーコラム51を貫通してベースプレート6およびインナーコラム51を連結している。固定具凹部65の深さは固定具64の頭部の高さよりも大きくなるように形成されている。これにより、固定具64の頭部は、ブラケット側表面61よりもインナーコラムブラケット4側には突出しにくくなる。このため、ベースプレート6が軸方向に移動するときに、固定具64の頭部がインナーコラムブラケット4に接触しにくくなる。したがって、ベースプレート6の軸方向の移動が妨げられにくくなっている。なお、固定具64は、ボルト等のネジ部材であってもよい。
【0043】
ベースプレート6とインナーコラムブラケット4とを離脱可能に連結するため、
図27に示すようにベースプレート6には第1孔6hが開けられ、インナーコラムブラケット4には第2孔43hが開けられている。
図31に示すように、第1孔6hは、裏側凹部66の底面の少なくとも一部に開けられる。
図29に示すように、第2孔43hは、表側凹部45の底面の少なくとも一部に開けられる。第1孔6hと第2孔43hとは、連通している。例えば実施形態5において、第1孔6hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ設けられている。第1孔6hと第2孔43hとに跨る位置に連結部材Mが挿入されることで、インナーコラムブラケット4の脚部43とベースプレート6とが離脱可能に連結されている。また、第1孔6hおよび第2孔43hは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
【0044】
なお、表側凹部45および裏側凹部66は、なくてもよいし、どちらか一方だけがあってもよい。表側凹部45がない場合、第2孔43hは、ベースプレート側表面43bとは反対側の表面からベースプレート側表面43bまで貫通するように開けられる。裏側凹部66がない場合、第1孔6hは、インナーコラム側表面62からブラケット側表面61に貫通するように開けられる。
【0045】
また、ベースプレート6は、少なくとも一部がアウターコラム54のスリット54sに嵌まるように配置されている。具体的には、ベースプレート6の側面がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっている。
【0046】
実施形態5において、連結部材Mは、樹脂部材であって、例えばポリアセタールで形成されている。樹脂部材である連結部材Mが第1孔6hと第2孔43hとに跨る位置に充填されて固まることで、インナーコラムブラケット4とベースプレート6とが連結される。実施形態5において、インナーコラムブラケット4とベースプレート6とは、予め連結された状態でインナーコラム51に組み付けられる。
【0047】
インナーコラムブラケット4とベースプレート6とを連結するときは、第1孔6hと第2孔43hとを連通させた状態で、第1孔6hおよび第2孔43hに連結部材Mが充填される。充填された連結部材Mは、表側凹部45、第2孔43h、第1孔6hおよび裏側凹部66に充填されたあと固まる。これにより、表側凹部45および裏側凹部66で固まった連結部材Mが抜け止めになるので、連結部材Mが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。このため、予め連結されたインナーコラムブラケット4およびベースプレート6が分離する事態が抑制される。
【0048】
なお、表側凹部45および裏側凹部66のうちいずれか一方がなくても、表側凹部45または裏側凹部66で固まった連結部材Mが抜け止めになるので、連結部材Mが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。
【0049】
実施形態5に係るステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4とベースプレート6とを予め連結部材Mで連結しておくことができるので、ステアリング装置100全体の組み付け作業において、連結部材Mを流し込んで固めるという作業を省略することができる。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、組み付け作業をより簡略化することができる。
【0050】
ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、加えられた荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。インナーコラム51が移動することで、固定具64を介して固定されているベースプレート6が一体となって前方へ移動する。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、連結部材Mにせん断力が加わるので、ステアリングホイール81から加えられた荷重が連結部材Mの許容せん断力を超える場合、連結部材Mは切断される。また、連結部材Mの許容せん断力は、固定具64の許容せん断力よりも小さく設定されている。これにより、連結部材Mが切断される前に固定具64が切断されることが抑制されている。連結部材Mが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。よって、操作者がステアリングホイール81に衝突して過大荷重が加わった場合、過大荷重が加わった直後にインナーコラム51を移動させるための力が低減し衝撃を吸収する。
【0051】
また、連結部材Mが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、連結部材Mが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。
【0052】
また、連結部材Mが切断された後において、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動することが望ましい。インナーコラム51の移動する方向がアウターコラム54の軸方向に対して角度をなす方向である場合、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じやすくなるためである。
【0053】
実施形態5において、インナーコラムブラケット4は、
図28に示したようにアウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受けるので、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0054】
また、第1孔6hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0055】
また、仮にインナーコラムブラケット4が、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、ベースプレート6がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっているので、ベースプレート6がスリット54sによって軸方向に案内され、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。
【0056】
なお、連結部材Mの許容せん断力は、第1孔6hおよび第2孔43hの個数、第1孔6hおよび第2孔43hの断面積、連結部材Mの材料を変更することで調節することができる。例えば、第1孔6hおよび第2孔43hの個数は、それぞれ1個でもよいし3個以上であってもよい。また、連結部材Mは、例えば、非鉄金属を含む金属、接着剤、またはゴムで形成されていてもよい。
【0057】
図32は、比較例におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図である。
図33は、実施形態5におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図である。
図32および
図33において、横軸はステアリングコラムの前方への変位量であり、縦軸はステアリングコラムを前方へ移動させるために必要な荷重である。
【0058】
比較例は、特許文献1に記載の技術のように、アウターコラムがカプセルを介して車体に取り付けられている場合の例である。比較例においては、アウターコラムがインナーコラムよりも後方側に配置されており、アウターコラムに過大荷重が加わると、アウターコラムと一体に設けられたテレスコ調整孔の端部にロッドが接触し、ブラケットを介して荷重がカプセルに伝わるようになっている。
図32に示す力F5は、カプセルの許容せん断力を示している。
【0059】
比較例において、アウターコラムは、ブラケットの締め付けによってインナーコラムとの間に生じる摩擦力によって軸方向に支持されている。
図32で示す力F4は、アウターコラムを支持している摩擦力を示している。力F4は、力F5よりも小さい。通常使用において加わるような荷重によってアウターコラムが移動しないようにするために、力F4は、所定値以上に保たれる必要がある。
【0060】
比較例において、アウターコラムに力F5以上の荷重が加わると、カプセルが切断されアウターコラムが車体から離脱する。その後、アウターコラムが、インナーコラムとの摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。しかし、上述したように、力F4が所定値以上に保たれているので、アウターコラムの移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることが難しい。
【0061】
一方、実施形態5において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。
図33に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、
図33に示す力F2は、連結部材Mの許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
【0062】
実施形態5において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、連結部材Mが切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4から離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、連結部材Mが切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。実施形態5に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0063】
実施形態5においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、実施形態5に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0064】
上述したように、実施形態5に係るステアリング装置100は、ステアリングホイール81に連結される入力軸82aを回転可能に支持する筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の外周面に設けられ、第1孔6hが開けられたベースプレート6と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状であって、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いたスリット54sを有するアウターコラム54と、を備える。また、ステアリング装置100は、車体側部材13に固定され、アウターコラム54を支持し、板材であるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)と共にアウターコラム54を締め付けるアウターコラムブラケット52を備える。また、ステアリング装置100は、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)に支持され、第2孔43hが開けられたインナーコラムブラケット4を備える。また、ステアリング装置100は、第1孔6hと第2孔43hとに跨る位置にあって、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を離脱可能に連結する連結部材Mを備える。
【0065】
これにより、実施形態5に係るステアリング装置100において、ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、加えられた荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。インナーコラム51が移動することで、固定具64を介して固定されているベースプレート6が一体となって前方へ移動する。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、連結部材Mにせん断力が加わるので、ステアリングホイール81から加えられた荷重が連結部材Mの許容せん断力を超える場合、連結部材Mは切断される。連結部材Mが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、連結部材Mが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、連結部材Mが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(連結部材Mの許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
【0066】
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、インナーコラムブラケット4は、ベースプレート6に対向するベースプレート側表面43bとは反対側の表面に、窪みである表側凹部45を有し、第2孔43hは、表側凹部45の底面の少なくとも一部に開けられる。また、連結部材Mは、第1孔6h、第2孔43hおよび表側凹部45に充填される樹脂部材である。これにより、表側凹部45で固まった連結部材Mが抜け止めになるので、連結部材Mが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、連結されたインナーコラムブラケット4およびベースプレート6が分離する事態を抑制することができる。
【0067】
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、ベースプレート6は、インナーコラム51に対向するインナーコラム側表面62に、窪みである裏側凹部66を有し、第1孔6hは、裏側凹部66の底面の少なくとも一部に開けられる。また、連結部材Mは、第1孔6h、第2孔43hおよび裏側凹部66に充填される樹脂部材である。これにより、裏側凹部66で固まった連結部材Mが抜け止めになるので、連結部材Mが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、連結されたインナーコラムブラケット4およびベースプレート6が分離する事態を抑制することができる。
【0068】
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、ベースプレート6は、インナーコラムブラケット4に対向するブラケット側表面61側に、窪みである固定具凹部65を有し、貫通孔である固定具孔65hが、固定具凹部65の底面の一部に開けられ、ベースプレート6およびインナーコラムブラケット4を連結する固定具64が固定具孔65hに挿入されている。これにより、固定具64の頭部は、ブラケット側表面61よりもインナーコラムブラケット4側には突出しにくくなる。このため、ベースプレート6が軸方向に移動するときに、固定具64の頭部がインナーコラムブラケット4に接触しにくくなる。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、ベースプレート6の軸方向の移動がインナーコラムブラケット4によって妨げられる事態を抑制することができる。
【0069】
(実施形態5の変形例)
図34は、実施形態5の変形例に係るステアリング装置を、
図26のe−e断面に相当する平面で切った図である。
図35は、
図34の連結部材の周辺を拡大して示す図である。
図36は、実施形態5の変形例に係る連結部材がせん断された後の状態を示す図である。実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、上述した実施形態5と比較して、連結部材Pが樹脂製ピンである点が異なる。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0070】
図34および
図35に示すように、第1孔6hと第2孔43hとに跨る位置に連結部材Pが挿入されることで、インナーコラムブラケット4の脚部43とベースプレート6とが離脱可能に連結されている。インナーコラムブラケット4とベースプレート6とは、予め連結された状態でインナーコラム51に組み付けられる。なお、インナーコラムブラケット4の脚部43は、
図34および
図35に示すように、上述した実施形態5で示した表側凹部45を備えていなくてもよい。
【0071】
実施形態5の変形例において、連結部材Pは、樹脂製ピンであって、例えばポリアセタールで形成されている。また、
図35に示すように連結部材Pは、本体部P1と、本体部P1の一端に設けられる頭部P2と、本体部P1の他端に設けられるフック部P3と、を備える。本体部P1は、第1孔6hおよび第2孔43hに挿入されており、第1孔6hおよび第2孔43hの内壁に対向している。本体部P1の直径は、例えば第1孔6hおよび第2孔43hの内径と略等しい。頭部P2およびフック部P3は、第1孔6hおよび第2孔43hの外部に配置されている。頭部P2は、例えば円盤形状である。頭部P2の外周は、第1孔6hおよび第2孔43hの内周よりも大きい。頭部P2は、例えば脚部43の表面に接している。フック部P3は、例えば連結部材Pの端部に向かって外周が小さくなる略円錐形状である。フック部P3の最大直径は、第1孔6hおよび第2孔43hの内径よりも大きい。フック部P3は、例えば裏側凹部66の底面に接している。また、連結部材Pは、フック部P3から頭部P2に向かって設けられるすりわりP4を備える。なお、連結部材Pは、頭部P2が裏側凹部66の底面に接するように配置されていてもよい。
【0072】
第1孔6hと第2孔43hとを連通させた状態で、第1孔6hおよび第2孔43hに樹脂製ピンが挿入されることで、インナーコラムブラケット4とベースプレート6とが連結される。樹脂製ピンを挿入する作業は、樹脂部材を充填して固める作業に比較して、固めるための時間が不要であることから短時間で行うことができる。このため、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4およびベースプレート6の連結を容易にすることができる。
【0073】
連結部材PがすりわりP4を備えるので、フック部P3は、外周から内側に向かって押圧されると、容易に弾性変形することができる。連結部材Pがフック部P3側の端部から第1孔6hおよび第2孔43hに挿入されると、フック部P3は、第1孔6hおよび第2孔43hの内壁に接触することで弾性変形する。フック部P3が第1孔6hおよび第2孔43hを通過して外部に達すると、フック部P3の弾性変形が元に戻るので、フック部P3が連結部材Pの軸方向の動きを規制する。このため、フック部P3が抜け止めになるので、連結部材Pが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。よって、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4およびベースプレート6の連結を容易にし、かつ連結されたインナーコラムブラケット4およびベースプレート6が分離する事態を抑制することができる。
【0074】
より具体的には、例えば実施形態5の変形例において連結部材Pは、第2孔43h側から挿入される。フック部P3側の端部が第2孔43hに挿入されると、フック部P3は、第2孔43hの内壁に接触することで弾性変形する。フック部P3が第2孔43hおよび第1孔6hを通過して裏側凹部66に達すると、フック部P3の弾性変形が元に戻るので、フック部P3が第1孔6hの縁に引っかかる。また、フック部P3が第1孔6hの縁に引っかかるとともに、頭部P2が第2孔43hの縁に引っかかる。これにより、頭部P2およびフック部P3が連結部材Pの軸方向の動きを規制する。このため、頭部P2およびフック部P3が抜け止めになるので、連結部材Pが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。なお、連結部材Pは、第1孔6h側から挿入されてもよい。
【0075】
裏側凹部66は、上述したようにベースプレート6のインナーコラム側表面62に設けられた窪みである。このため、インナーコラム側表面62がインナーコラム51に接した状態において、裏側凹部66は、インナーコラム51とベースプレート6との間に隙間を生じさせる。このため、連結部材Pのうち第1孔6hからインナーコラム51の方向に突出する部分がインナーコラム51と干渉しにくくなる。よって、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、連結部材Pとインナーコラム51との干渉を防ぐために、インナーコラム51に対して施す加工を削減するまたはなくすことができる。
【0076】
より具体的には、例えば実施形態5の変形例において、連結部材Pのうちフック部P3が裏側凹部66に配置されている。このため、フック部P3がインナーコラム51と干渉しにくくなっている。さらに、連結部材Pの軸方向におけるフック部P3の高さは、裏側凹部66の深さよりも小さいことが好ましい。この場合、フック部P3は、インナーコラム51に干渉しなくなる。よって、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、連結部材Pとインナーコラム51との干渉を防ぐために、インナーコラム51に対して施す加工を低減またはなくすことができる。なお、連結部材Pのうち頭部P2が裏側凹部66に配置されていてもよい。この場合、連結部材Pの軸方向における頭部P2の高さは、裏側凹部66の深さよりも小さいことが好ましい。
【0077】
連結部材Pは、2次衝突時にせん断力を受けて破断するメカニカルヒューズである。ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、加えられた荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。インナーコラム51が移動することで、固定具64を介して固定されているベースプレート6が一体となって前方へ移動する。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、連結部材Pにせん断力が加わるので、ステアリングホイール81から加えられた荷重が連結部材Pの許容せん断力を超える場合、連結部材Pは、
図36に示すように樹脂片Pf1と樹脂片Pf2とに切断される。例えば実施形態5において、第1孔6hおよび第2孔43hの境界部分には、連結部材Pの本体部P1が配置されている。このため、連結部材Pは、本体部P1で切断される。本体部P1の許容せん断力は、固定具64の許容せん断力よりも小さく設定されている。これにより、連結部材Pが切断される前に固定具64が切断されることが抑制されている。
【0078】
連結部材Pが樹脂片Pf1と樹脂片Pf2とに切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、連結部材Pが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、連結部材Pが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(連結部材Pの本体部P1の許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
【0079】
また、実施形態5の変形例に係る連結部材Pは、本体部P1の直径を調節することで、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値を容易に変更することができる。このため、実施形態5の変形例に係る連結部材Pは、離脱荷重の設定値を下げて、体重の軽い操作者をより保護することができる。
【0080】
上述したように、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100において、連結部材Pは、第1孔6hおよび第2孔43hを貫通する樹脂製ピンである。これにより、第1孔6hと第2孔43hとを連通させた状態で、第1孔6hおよび第2孔43hに樹脂製ピンが挿入されることで、インナーコラムブラケット4とベースプレート6とが連結される。樹脂製ピンを挿入する作業は、樹脂部材を充填して固める作業に比較して、固めるための時間が不要であることから短時間で行うことができる。このため、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4およびベースプレート6の連結を容易にすることができる。
【0081】
また、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100において、連結部材Pは、第1孔6hおよび第2孔43hの内周よりも大きな外周を有するフック部P3を一端に備え、フック部P3から他端に向かって設けられるすりわりP4を備える。これにより、フック部P3は、外周から内側に向かって押圧されると、容易に弾性変形することができる。連結部材Pがフック部P3側の端部から第1孔6hおよび第2孔43hに挿入されると、フック部P3は、第1孔6hおよび第2孔43hの内壁に接触することで弾性変形する。フック部P3が第1孔6hおよび第2孔43hを通過して外部に達すると、フック部P3の弾性変形が元に戻るので、フック部P3が連結部材Pの軸方向の動きを規制する。このため、フック部P3が抜け止めになるので、連結部材Pが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。よって、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4およびベースプレート6の連結を容易にし、かつ連結されたインナーコラムブラケット4およびベースプレート6が分離する事態を抑制することができる。
【0082】
また、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100において、ベースプレート6は、インナーコラム51に対向するインナーコラム側表面62に、窪みである裏側凹部66を有し、第1孔6hは、裏側凹部66の底面の少なくとも一部に開けられる。これにより、インナーコラム側表面62がインナーコラム51に接した状態において、裏側凹部66は、インナーコラム51とベースプレート6との間に隙間を生じさせる。このため、連結部材Pのうち第1孔6hからインナーコラム51の方向に突出する部分がインナーコラム51と干渉しにくくなる。よって、実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、連結部材Pとインナーコラム51との干渉を防ぐために、インナーコラム51に対して施す加工を削減するまたはなくすことができる。
【0083】
(実施形態6)
図37は、実施形態6に係るステアリング装置を、
図26のe−e断面に相当する平面で切った図である。
図38は、実施形態6に係るステアリング装置の底面を拡大して示す図である。
図39(a)(b)は、実施形態6に係るインナーコラムブラケットの上からと下からの斜視図である。
図40は実施形態6に係るベースプレートの斜視図である。ステアリング装置100は、上述した実施形態5と比較して、連結部材PがボールプランジャーBである点が異なる。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0084】
図37に示すように、第1孔6hと本体ネジ孔部B1とに跨る位置にボールプランジャーBが介挿されることで、インナーコラムブラケット4の脚部43とベースプレート6とが離脱可能に連結されている。インナーコラムブラケット4のガイド溝部B3がベースプレート6のガイド部B4に、予め嵌め込まれた状態でインナーコラム51に組み付けられる。なお、インナーコラムブラケット4の脚部43は、
図37および
図38に示すように、上述した実施形態5で示した表側凹部45を備えていなくてもよい。
【0085】
実施形態6において、連結部材Pは、ボールプランジャーBであって、例えば本体は鉄製で出来ており、
図37に示すようにその外形はネジ山が形成されており、本体部の一端に設けられる頭部B2を備える。ボールプランジャーBは一般的には割り出しや位置決めに使われており、本体内部にはバネとボールが組み込まれている。バネで与圧されたボールは、通常ボールの一部が本体から突き出ている頭部B2がある。ボールの頭部B2に加わる外部荷重により、突き出し方向とは逆の方向(へこむ)へ移動する性質がある。ボールプランジャーBの内部バネの調整等により、へこむ荷重が変えられる物もあり、ボールプランジャーの特徴の一つでもある。ボールプランジャーBは、インナーコラムブラケット4の第2孔43hに加工された雌の本体ネジ孔部B1にネジ込まれた状態で挿入固定されており、一端の頭部B2はベースプレート6に設けられた第1孔6hの中にバネにより押圧された状態で嵌り込む事により位置決めがなされる。ボールプランジャーBの頭部B2による押圧力は、ベースプレート6に設けられたガイド部B4に、インナーコラムブラケット4のガイド溝部B3が嵌り込むことによって、頭部B2の押圧力を受ける構造となっている。また、この頭部B2の押圧力の効果をより高める為には、第1孔6hの直径は本体ネジ孔部B1の突き出した状態の直径よりも小さく、突き出しているボールの頭部B2のボール直径と略等しいかそれ以下の関係が良い。つまり本体ネジ孔部B1直径>頭部B2直径>第1孔6h直径の関係が良い。
【0086】
第1孔6hと本体ネジ孔部B1とを連通させた状態で、第1孔6hにボールプランジャーBの頭部B2が介挿され、インナーコラムブラケット4のガイド溝部B3がベースプレート6のガイド部B4内に組み込まれてインナーコラムブラケット4とベースプレート6とが一体化される。この場合、突き出したボールの頭部B2にはテンションがかかる程度の位置でボールプランジャーBが固定されるのが良い。またボールプランジャーBを介挿する作業は、樹脂部材を充填して固める作業に比較して、固めるための時間が不要であることから短時間で行うことができる。このため、実施形態6に係るステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4およびベースプレート6の一体化を容易にすることができる。またこのガイド構造(ガイド部B4とガイド溝部B3による)により連結部材Pが第1孔6hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。
【0087】
連結部材Pは、2次衝突時にせん断力を受けて変形する一種のメカニカルヒューズである。ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、加えられた荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。インナーコラム51が移動することで、固定具64を介して固定されているベースプレート6が一体となって前方へ移動する。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、連結部材Pにスラスト方向のせん断力が加わるので、ステアリングホイール81から加えられた荷重が連結部材Pの許容変形力を超える場合、連結部材Pは、頭部B2の嵌りが第1孔6hから外れてしまう。例えば実施形態6において、第1孔6hおよび第2孔43hの境界部分には、連結部材Pの頭部B2が配置されている。頭部B2の許容変形力(へこむ方向の力)は、固定具64の許容せん断力よりも小さく設定されている。これにより、連結部材Pが変形される前に固定具64が切断されることが抑制されている。
【0088】
連結部材Pの頭部B2が変形して頭部B2の先端がへこむと、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、連結部材Pが解除されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、連結部材Pが解除されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態6に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(連結部材Pの本体部P1の許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
【0089】
また、実施形態6に係る連結部材Pは、ボールプランジャーBの頭部B2の押圧力を調節する又は物の選択を変更することで、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値を容易に変更することができる。このため、実施形態6に係る連結部材Pは、離脱荷重の設定値を下げて、体重の軽い操作者をより保護することができる。
【0090】
上述したように、実施形態6に係るステアリング装置100において、連結部材Pは、第1孔6hおよび第2孔43hに介挿されるボールプランジャーBである。これにより、第1孔6hと第2孔43hとを連通させた状態で、第1孔6hおよび第2孔43hにボールプランジャーBが介挿されることで、インナーコラムブラケット4とベースプレート6とが連結される。ボールプランジャーBを挿入する作業は、樹脂部材を充填して固める作業に比較して、固めるための時間が不要であることから短時間で行うことができる。このため、実施形態6に係るステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4およびベースプレート6の連結を容易にすることができる。
【0091】
またボールプランジャーBは外力により、その頭部B2がへこんでも、また突き出させることが出来るので、インナーコラム51を元の位置に戻す事によって、インナーコラムブラケット4およびベースプレート6の連結を復元できる可能性が大きいので、緊急的にステアリング操作を可能に出来るという利点もある。