特許第5983899号(P5983899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983899極細高強力ポリアミドマルチフィラメントおよびそれを用いたカバリング糸、ストッキング、織物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5983899
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】極細高強力ポリアミドマルチフィラメントおよびそれを用いたカバリング糸、ストッキング、織物
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20160823BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20160823BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20160823BHJP
   A41B 11/14 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   D01F6/60 311C
   D01F6/60 321C
   D02G3/04
   D03D15/00 C
   A41B11/14 E
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-501468(P2016-501468)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2015081110
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-230055(P2014-230055)
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲たか▼木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳史
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−13511(JP,A)
【文献】 特開2002−88514(JP,A)
【文献】 特開2009−203563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00−11/14
D01F 1/00−6/96
D01F 9/00−9/04
D02G 1/00−3/48
D02J 1/00−13/00
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総繊度が4.0dtex〜6.0dtex、単糸繊度が1.2dtex以下、強伸度積が9.1以上、伸度が40〜50%であることを特徴とする極細高強力ポリアミドマルチフィラメント。
【請求項2】
糸斑(U%)が1.2以下であることを特徴とする請求項1に記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメント。
【請求項3】
硫酸相対粘度が2.5〜3.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを被覆したカバリング糸。
【請求項5】
請求項4に記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを被覆したカバリング糸を一部に用いたストッキング。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを経糸または/かつ緯糸に使用した織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細高強力ポリアミドマルチフィラメントに関するものである。さらに詳しくは、本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントをストッキングに用いたとき、ソフト性、耐久性、透明感に優れたストッキングを提供し、織物に用いたとき、ソフト性、耐久性、軽量感に優れた織物を提供することができる極細高強力ポリアミドマルチフィラメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成繊維であるポリアミド繊維やポリエステル繊維は、機械的・化学的性質において優れた特性を有することから衣料用途や産業用途で広く利用されている。特に、ポリアミド繊維はその独特の柔らかさ、高強度、染色時の発色性、耐熱性、吸湿性等において優れた特性を有することから、ストッキング、インナーウエア、スポーツウエアなど一般衣料用途で広く使用されている。
【0003】
ストッキングの消費者ニーズとしては、履き心地が良く、かつ素肌感を出すため、耐久性は従来並で、ソフト性、透明感の追求が望まれていた。
【0004】
これらの問題を解決するために、例えば特許文献1では、伸度が38〜40%の市販の高強度ナイロン糸を更に加熱延伸することで極細高強度ポリアミド繊維を製造し、肌触りが良く、高い透明感を有し、優れた耐久性を有するストッキングを提供している。また、特許文献2では、伸度が40〜45%のナイロン6糸を更に加熱延伸することで極細高強度ポリアミド繊維を製造し、耐久性、透明性、触感に優れたストッキングを提供している。
【0005】
一方、近年のアウトドアスポーツの普及に伴い、スポーツ衣料用織物の需要が年々増加し、織物の軽量、薄地化が進んでおり、耐久性は従来並で、ソフト性、軽量感の追及が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−212601号公報
【特許文献2】特開平11−279884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、加熱延伸加工を施す工程を介するため、追延伸の際に毛羽が発生する。また、得られたナイロン糸の伸度が38%未満となるため、カバリング糸やストッキング製造工程の高次通過性、ストッキング製品品位で劣るといった問題があった。
【0008】
すなわち、特許文献1、2記載のナイロン糸をストッキングに用いた場合、ソフト性、耐久性、透明感に優れたストッキングが得られるものの、高次通過性と製品品位に劣る問題があると共に、消費者ニーズとして、耐久性は従来並で、さらなるソフト性と透明感の追及が望まれている。また、特許文献1、2に記載されたナイロン糸を織物に用いた場合も同様で、耐久性は従来並であり、さらなるソフト性と軽量感の追及が望まれている。
【0009】
本発明は上記問題を解決するものであり、総繊度、単糸繊度ともに極細でありながら、高強伸度積、適性伸度を有したポリアミドマルチフィラメントを提供することを課題とする。さらに詳しくは、総繊度、単糸繊度ともに極細でありながら、高強伸度積、適性伸度を有したポリアミドマルチフィラメントによって、高次通過性と製品品位に優れ、優れたソフト性や耐久性、透明感を有するストッキング、及び優れたソフト性や耐久性、軽量感を有する織物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0011】
(1)総繊度4.0dtex〜6.0dtex、単糸繊度が1.2dtex以下、強伸度積が9.1以上、伸度が40〜50%であることを特徴とする極細高強力ポリアミドマルチフィラメント。
【0012】
(2)糸斑(U%)が1.2以下であることを特徴とする上記(1)記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメント。
【0013】
(3)硫酸相対粘度が2.5〜3.5であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメント。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを被覆したカバリング糸。
【0015】
(5)上記(4)に記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを被覆したカバリング糸を一部に使用したストッキング。
【0016】
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを経糸または/かつ緯糸に使用した織物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、総繊度、単糸繊度ともに極細でありながら、高強伸度積、適正伸度を有するポリアミドマルチフィラメントである。さらには、本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントより、高次通過性と優れた製品品位、ソフト性や耐久性、透明感を有するストッキング、及び優れたソフト性や耐久性、軽量感を有する織物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを構成するポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であって、かかるポリアミドは、製糸性、機械特性に優れており、主としてポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)が好ましく、ゲル化し難しく、製糸性が良いことからポリカプロアミド(ナイロン6)がさらに好ましい。前記における「主として」とは、ポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位の割合が全モノマー単位中80モル%以上であることを言い、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン等の単位が挙げられる。
【0020】
また、本発明の効果を有効に発現するためには、ポリアミドには酸化チタンに代表される艶消し剤など各種添加剤を含有しないことが好ましいが、耐熱剤など、効果を阻害しない範囲で添加剤を必要に応じて含有していてもよい。また、その含有量は0.001〜0.1wt%の間で必要に応じて混合していてもよい。
【0021】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、総繊度が4.0〜6.0dtexであることが必要である。かかる範囲とすることにより、ストッキングの場合はソフト性と透明感に優れ、織物の場合は、ソフト性と軽量感に優れる。総繊度が4.0dtex未満の場合では、ソフト性は得られるものの、糸強力が低下し、ストッキングや織物の耐久性が低下する。総繊度が6.0dtexを超える場合、ストッキングでは透明感、織物では軽量感が低下する。本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、総繊度が4.5〜6.0dtexであることが更に好ましい。
【0022】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、単糸繊度が1.2dtex以下であることが必要である。かかる範囲とすることにより、ストッキング、織物のソフト性に優れる。単糸繊度が1.2dtexを超えると、風合いが硬くなりソフト性が低下する。また、単糸繊度は小さいほど好ましいが、本発明におけるその下限値は0.7dtex程度である。
【0023】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、強伸度積が9.1以上であることが必要である。かかる範囲とすることにより、ストッキングや織物の耐久性が実使用に耐えるレベルとなる。強伸度積が9.1未満の場合、ストッキングや織物の耐久性が実使用に耐えないレベルとなり、また、高次加工工程での糸切れが増加し高次通過性が悪化する。本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、強伸度積が9.5以上であることが更に好ましい。また、強伸度積は大きいほど好ましいが、本発明におけるその上限値は10.0程度である。
【0024】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、伸度が40〜50%であることが必要である。かかる範囲とすることにより、高次加工工程での糸切れが減少し高次通過性や製品品位が良好となる。特に、高速で編立、製織する際に高次通過性に優れる。伸度が40%未満の場合、ストッキング製造工程(カバリング糸製造工程やストッキング編立工程)や織物製造工程(整経工程、製織工程)などの高次加工工程での糸切れが増加し高次通過性が悪化する。さらには、ストッキングや織物の風合いが硬くなりソフト性が低下する。伸度が50%を超えると、強伸度積が低下し、ストッキングや織物の耐久性が実使用に耐えないレベルとなり、また、高次加工工程での糸切れが増加し高次通過性が悪化し、製品品位が低下する。
【0025】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、総繊度、単糸繊度、強伸度積、伸度の全てをかかる範囲とすることが必要である。すなわち、総繊度、単糸繊度を極細化することで、ソフト性、透明感、軽量感は得られるものの耐久性が悪くなる。一方、耐久性は総繊度と単糸繊度に比例するため、ソフト性、透明感、軽量感、耐久性を満たすためには、強伸度積を高くする必要が生じる。また、高次通過性や製品品位を保つためには、適正の伸度とする必要がある。そこで、本発明者らは鋭意検討し、高次通過性と製品品位に優れ、優れたソフト性や耐久性、透明感を有するストッキング、及び優れたソフト性や耐久性、軽量感を有する織物を提供するための、総繊度、単糸繊度、高強伸度積、伸度の適正領域を見出した。
【0026】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、糸斑(U%)が1.2以下であることが好ましい。U%を1.2以下とすることにより、ストッキングや織物を染色した後に、糸条の太い部分が濃染となることもなく、筋の発生がなく外観が良好で製品品位に優れたものとなる。さらに好ましくは、ストッキング用途の場合は1.0以下、織物用途の場合は0.8以下である。また、U%は小さいほど好ましいが、本発明におけるその下限値は0.4程度である。
【0027】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、硫酸相対粘度が2.5〜3.5であることが好ましい。さらに好ましくは3.1〜3.5である。硫酸相対粘度を2.5〜3.5とすることにより、ストッキングや織物の耐久性が実使用に耐えるレベルとなる。さらには、製品品位が良好となる。
【0028】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントの断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、丸断面、偏平断面、レンズ型断面、三葉断面、マルチローバル断面、3〜8個の凸部と同数の凹部を有する異形断面、中空断面その他公知の異形断面でもよい。
【0029】
次に本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントの製造方法について説明する。
【0030】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは公知の溶融紡糸装置で製造できる。公知の溶融紡糸を例示すると、ポリアミドを溶融し、ギヤポンプにて計量・輸送し、紡糸口金から吐出し、チムニー等の糸条冷却装置によって冷却風を吹き当てることにより糸条を室温まで冷却し、給油装置で給油するとともに集束し、流体交絡ノズル装置で交絡し、引き取りローラー、延伸ローラーを通過し、その際引き取りローラーと延伸ローラーの周速度の比に従って延伸する。さらに、糸条を延伸ローラーの加熱により熱処理し、ワインダー(巻取装置)で巻き取ることでポリアミドマルチフィラメントを製造することができる。
【0031】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、溶融紡糸に用いるポリアミドポリマーの硫酸相対粘度を2.5〜3.5とし、溶融紡糸の溶融温度をポリアミドの融点に対して20℃より高く、かつ85℃より低くするとともに、口金下の雰囲気温度を高温に保つため、スチームシールのヒーター温度を200℃以上とすること、口金下の吐出孔から出たポリアミドポリマーを徐冷するため、冷却開始距離を70〜150mmとし、引き取りローラー速度を1300〜2000m/min、延伸倍率を1.7〜3.0倍、巻き取り速度を3000m/min以上4500m/min以下の紡糸条件とすることで製造することができる。
【0032】
このような直接紡糸延伸法での条件を採用することにより、9.1以上の高い強伸度積、40〜50%の伸度の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントが得られる。更には、硫酸相対粘度を2.5〜3.5とすることにより、より高い強伸度積のポリアミドポリマーが得られる。
【0033】
更には、引き取りローラーを低速度の領域(1300〜1800m/min)、巻き取り速度を高速度の領域(3500〜4000m/min)とすることにより、ドラフト延伸ムラの抑制、糸条冷却の均一化が可能となり、U%を1.2以下と低く抑えることができた。
【0034】
また、延伸ローラーを加熱ローラーとして熱処理を施すことが好ましく、その熱処理温度は120〜180℃が好ましい。熱処理を施すことでマルチフィラメントの熱収縮を設計することが可能となるためである。
【0035】
引き取りローラー、延伸ローラーなど、各ローラーはネルソンローラー、駆動ローラーに従動型のセパレートローラーがついたもの、片掛けローラーのいずれであってもよい。
【0036】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、カバリング糸の被覆糸として用いられる。カバリング糸として、弾性糸を芯糸とし、被覆糸を一重に巻き付けるシングルカバリング糸、被覆糸を二重に巻き付けるダブルカバリング糸に用いられる。
【0037】
弾性糸として、ポリウレタン系弾性繊維、ポリアミド系エラストマ弾性繊維、ポリエステル系エラストマ弾性繊維、天然ゴム系繊維、合成ゴム系繊維、ブタジエン系繊維等が用いられ、弾性特性や熱セット性、耐久性等により適宜選択すればよい。中でも好ましいのは、ポリウレタン系弾性繊維及びポリアミド系エラストマ弾性繊維である。
【0038】
弾性糸の太さは、ストッキングの種類、締め付け圧の設定により異なるが、耐久性と透明感、ソフト性を両立させるためには、一般に8〜40dtex程度であればよい。なかでも好ましいのは14〜25dtexである。8dtex未満では、糸強力が不足するのでカバリング時及び編立て時に芯糸切れ等のトラブルを生じ易く、ストッキングとしての伸縮性、耐久性が不十分となり易い。逆に、40dtexを越えると締付け力が強くなり過ぎて粗硬感が強くなりソフト性が低下、さらに透明感も低下しやすくなる。
【0039】
カバリング撚数は被覆糸の繊度、収縮率や製品風合い、透明感、耐久性を考慮して設計すればよい。カバリング撚数を高くすると見かけ太さが細くなるため、透明感が向上する方向にあるが、高すぎると弾性糸を締め付けすぎて耐久性が落ち、あるいはカバリング工程の生産性が低下しやすくなる。また、カバリング撚数が低すぎると被覆性が低下して耐久性と透明感、ソフト性が低下しやすくなる。したがって、例えば、6dtexの被覆糸をシングルカバリング糸として用いる場合には2000〜2600T/mを目安に設計することが好ましい。さらにダブルカバリング糸とする際には、下撚数の0.7〜0.95倍を目安に設定すればよく、撚方向としても下撚と上撚を同方向、逆方向のどちらでも設定可能であるが、トルクを抑制するために逆方向にカバリングすることが好ましい。また、ドラフト倍率も狙いとする着圧に合わせて設計すればよく、例えば、2.5 〜3.5倍に設定することが好ましい。
【0040】
なお、カバリング糸を製造する場合は、常法のカバリング加工を実施すればよい。例えば、繊維の百科事典(丸善株式会社、平成14年3月25日発行、p.439)に記載の加工を実施すればよい。すなわち一例を挙げると弾性糸を定速で引きだし、2つのローラー間で一定のドラフトをかけた状態で、予めHボビンに巻き付けた被覆糸を弾性糸に一定のカバリング撚数にて巻き付け、得られたカバリング糸をチーズに巻き取るものである。
【0041】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、上記記載のカバリング糸を一部に使用したストッキングに用いられる。なかでもストッキングとしては透明感、素足感とシャドウ効果に優れた光沢感を生かしてレッグ部に好ましく用いられる。ここで、ストッキングとは、パンティストッキング、ロングストッキング、ショートストッキングで代表されるストッキング製品が挙げられ、レッグ部とは、例えばパンティストッキングの場合、ガーター部からつま先までの範囲を指す。
【0042】
また、ストッキングの編機として、通常の靴下編み機を用いることができ、制限はなく、2口あるいは4口給糸の編機を用い、本発明のカバリング糸を供給して編成するという通常の方法で編成すればよい。シングルカバリング糸の場合は、S方向カバリングのシングルカバリング糸とZ方向カバリングのシングルカバリング糸とを交互に編む方法が好適である。その他シングルカバリング糸と生糸の交編、ダブルカバリング糸と生糸の交編、ダブルカバリング糸とダブルカバリング糸のゾッキなどが挙げられる。さらに編機の針本数としてはおおむね360〜474本が用いられ、針本数が少ないほど、透明感は高くなるが、耐久性は劣り、針本数が多くなるほど耐久性は向上するが、透明感は低下する傾向にある。したがって、使用する被覆糸、弾性糸の繊度と狙いとする耐久性、透明感、ソフト性に合わせて選択することができる。一例として被覆糸6dtexにて針本数400 〜 440本とすることが好ましい。
【0043】
さらに編成後の染色やそれに続く後加工、ファイナルセット条件についても公知の方法にしたがい行えばよく、染料として酸性染料、反応染料を用いることやもちろん色なども限定されるものではない。
【0044】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントは、経糸または/かつ緯糸に使用した織物として用いられる。その製造方法は、公知の方法で製織が施される。例えば、経糸用のマルチフィラメントをクリールに並べて整経をおこないビームに巻き、つづいてビームに巻いたマルチフィラメントを糊付け・乾燥して経糸の準備をおこなう。つづいて経糸を織機のオサに通し、緯糸用のマルチフィラメントを打ち込んで織物を仕立てる。織機はシャトル織機、エアジェットルーム織機、ウォータージェットルーム織機、レピア織機、グリッパシャトル織機などの種類があるがいずれの織機で製造しても良い。また、緯糸の打ち込み方により、平組織、斜文組織(ツイル)、朱子組織(サテン)などのいくつかの織組織があるが目的に応じていずれをも選ぶことができる。
【0045】
続いて、公知の方法で染色加工が施される。一般的には、精錬、中間セット、染色、仕上げセットを施して仕上げる。染色機には、液流染色機、ジッガー染色機、ビーム染色機、ウインス染色機などの種類があるがいずれの染色機で染色してもよい。染色は、ポリアミド繊維に使用される酸性染料、金属錯塩酸性染料を用いることができ、90℃ 以上の温度で、30〜90分程度処理することにより行われる。また、濃色の場合は、織物の色落ちを防ぐため、その後、合成タンニン、タンニン/ 吐酒石などによるフィックス処理を施してもよい。
【0046】
染色後、機能付与を目的とした機能加工を施してもよい。例えば、ダウンジャケット基布の場合は、機能付与として、カレンダー加工、撥水加工を施す。カレンダー加工は片面または両面に施してもよいし、染色加工工程のいかなる段階でも可能であるが、染色加工後に施されることが好ましい。撥水加工は、パラフィン系、フッ素樹脂系、シリコーン系樹脂等の撥水剤を用いて、パッド、コーティング、吸塵、ラミネートなどにより樹脂加工等を施す。
【0047】
本発明の極細高強力ポリアミドマルチフィラメントを用いた薄地軽量織物は、ウィンドブレーカーやダウンジャケットなどのスポーツ用衣料において、薄くて軽量であり、適度な通気性を有することから幅広く有用であり、例えば、ウィンドブレーカーに用いた場合、薄地・軽量で、また充分な強度と更に適度な通気性があるので着用感が良好である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0049】
A.強度、伸度、強伸度積
JIS L1013−2010−引張強さ及び伸び率に準じて繊維試料を測定した。試験条件としては、試験機の種類は定速緊張形、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minにて行った。なお、切断時の強さが最高強さより小さい場合は、最高強さおよびそのときの伸びを測定した。
【0050】
強度、伸度、強伸度積は、下記式にて求めた。
強度=切断時の強さ(cN)/繊度(dtex)
伸度=切断時の伸び(cm)又は最高荷重時の伸び(cm)/つかみ間隔(cm)×100
強伸度積={強度(cN/dtex)}×{伸度(%)+100}/100 。
【0051】
B.繊度
1.125m/周の検尺器に繊維試料をセットし、500回転させて、ループ状かせを作成し、熱風乾燥機にて乾燥後(105±2℃×60分)、天秤にてかせ質量を量り、公定水分率を乗じた値から繊度を算出した。なお、公定水分率は4.5%とした。
【0052】
C.硫酸相対粘度(ηr)
ポリアミドチップ試料又は繊維試料0.25gを、濃度98質量%の硫酸100mlに対して1gになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98質量%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
【0053】
D.糸斑(U%)
zellweger uster社製のUSTER TESTER IVを用いて試料長:500m、測定糸速度V:100m/min、Twister:S、30000/min、1/2Inertで繊維試料を測定した。
【0054】
E.ストッキング製品のレッグ部の評価
(a)ソフト性
ストッキング製品を人体足型に履かせ、風合い評価経験豊富な検査者(5人)によりソフト性を相対評価した。その結果は、各検査者の評価点の平均値をとり、平均値が、4〜5をS、3〜4をA、2〜3をB、1〜2をCとした。
5点:非常に優れる
4点:やや優れる
3点:普通
2点:やや劣る
1点:劣る
S、Aをソフト性合格とした。
【0055】
(b)耐久性
ストッキング製品を人体足型に表を外側にして履かせ、踵から大腿部方向に60cmの位置にガーター部を合わせた上で、踵から大腿部方向に52.5cmの位置を中心として、足型の大腿部裏側に測定枠の大きさに合わせて円形の印を付けておく。測定枠に製品を固定する際には先につけた円形の印に合わせて固定することで、着用状態と同じ状態で破裂強さを測定し、耐久性の指標とした。
【0056】
破裂強さはJIS L1096−2010−破裂強さ、ミューレン形法(A法)に準じてストッキング製品を測定した。その破裂強さ(測定回数は3回とし、その平均値)により、次の基準で4段階評価した。
S:1.2kg/cm以上、
A:1.0kg/cm以上1.2kg/cm未満、
B:0.9kg/cm以上1.0kg/cm未満、
C:0.9kg/cm未満。
S、Aを耐久性合格とした。
【0057】
(c)透明感
ストッキング製品を人体足型に表を外側にして履かせ、踵から大腿部方向に60cmの位置にガーター部つま先側境界線を合わせた上で、その部分の着用状態を固定するために刺繍枠(内枠外径が15cm、枠の厚み1cm)で固定した。すなわち、着用状態を固定するために刺繍枠の上下位置が踵からの位置として60および45cm となるように刺繍枠の内枠を入れ、外枠を被せることで固定した。これを刺繍枠に固定した状態で足型からはずし、製品の表を測定装置側にして刺繍枠の中心を測定位置に合わせ、上から(製品の裏側から)カラースタンダード白板(L値88.29)を置いた時の編地のL値(Lw)、およびカラースタンダード黒板(L値7.74)を置いたときの編地のL値(Lb)を、色差計SM−T(スガ試験機(株)製)により測定した。L値(Lw、Lb)から、次の計算式により、透明度を算出した。この値が高い程、透明感は優れている。
透明度=(Lw−Lb)/(W−B)
(ここで、W はカラースタンダード白板のL値、Bはカラースタンダード黒板のL値である。)
透明度を3回測定し、その平均値により、次の基準で4段階評価した。
S:70%以上、
A:65%以上70%未満、
B:60%以上65%未満、
C:60%未満。
S、Aを透明感合格とした。
【0058】
(d)品位
ストッキング製品の染め斑の程度を、検査者(5人)により相対評価した。その結果は、各検査者の評価点の平均値をとり、平均値が、4〜5をS、3〜4をA、2〜3をB、1〜2をCとした。
5点:非常に優れる
4点:やや優れる
3点:普通
2点:やや劣る
1点:劣る
S、Aを品位合格とした。
【0059】
(e)工程通過性
靴下編機にて、回転数400rpmで、ストッキングを1時間連続運転し編立した際の編立時の糸切れによる停台回数を、次の基準で評価した。
S:糸切れ2回未満、
A:糸切れ2回以上4回未満、
B:糸切れ4回以上6回未満、
C:糸切れ6回以上。
S、Aを工程通過性合格とした。
【0060】
F.織物製品の評価
(a)ソフト性
織物の曲げ柔らかさについて、風合い評価経験豊富な検査者(5人)によりソフト性を相対評価した。その結果は、各検査者の評価点の平均値をとり、平均値が、4〜5をS、3〜4をA、2〜3をB、1〜2をCとした。
5点:非常に優れる
4点:やや優れる
3点:普通
2点:やや劣る
1点:劣る
S、Aをソフト性合格とした。
【0061】
(b) 耐久性
引裂強さを測定し、耐久性の指標とした。引裂強さはJIS L1096−2010−引張強さ、シングルタング法(A法)に準じて、織物を測定した。経方向の引裂強力を3回測定し、その平均値により、次の基準で4段階評価した。
S:11.0N 以上
A:10.0 N 以上11.0 N 未満、
B:9.0 N 以上10.0 N 未満、
C:9.0N 未満
S、Aを耐久性合格とした。
【0062】
(c)軽量感
目付けを測定し、軽量感の指標とした。目付けはJIS L1096−2010−標準状態における単位面積当たりの質量、A法に準じて織物測定した。測定を3回実施し、その平均値により、次の基準で4段階評価した。
【0063】
S:19g/m未満、
A:19g/m以上22g/m未満、
B:22g/m以上25g/m未満、
C:25g/m以上
S、Aを軽量感合格とした。
【0064】
(d)品位
染色後の織物の染め斑の程度を、検査者(5人)により4段階評価した。その結果は、各検査者の評価点の平均値をとり、平均値が、4〜5をS、3〜4をA、2〜3をB、1〜2をCとした。
5点:非常に優れる
4点:やや優れる
3点:普通
2点:やや劣る
1点:劣る
S、Aを品位合格とした。
【0065】
(e)工程通過性
ウォータージェットルーム織機にて、織機回転数750rpm、緯糸長1620mmで平織物を10疋(1000m/疋) 製織した際の織機の糸切れによる停台回数を、次の基準で評価した。
S:2回未満、
A:2回以上4回未満、
B:4回以上6回未満、
C:6回以上
S、Aを工程通過性合格とした。
【0066】
〔実施例1〕
(ポリアミドマルチフィラメントの製造)
ポリアミドとして、硫酸相対粘度(ηr)が3.3、融点225℃のナイロン6チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。得られたナイロン6チップを紡糸温度(溶融温度)285℃にて溶融し、紡糸口金より吐出させた(吐出量:11.673g/min)。紡糸口金は、ホール数が30、丸形、孔径φ0.15、6糸条/口金のものを使用した。
【0067】
紡糸口金より吐出後、18℃の冷風の冷却装置を通過させて糸条を室温まで冷却固化し、給油装置で給油するとともに収束し、流体交絡ノズル装置で交絡を施した後、引き取りローラー(第1ゴデッドロール:1GD)速度1747m/min、155℃に加熱した延伸ローラー(第2ゴデッドロール:2GD)を介して2.1倍で延伸し、巻取速度3500m/minで巻き取りを行い、5.9dtex、5フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを得た。
【0068】
得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。
【0069】
(ストッキングの製造)
得られたマルチフィラメントをカバリング糸の被覆糸に用い、18デニールのポリウレタン弾性糸(日清紡ケミカル株式会社製、モビロンK−L22T)を芯糸とし、ドラフト2.6倍に設定し、下撚数2200T/m (Z方向)、上撚数2090T/m (S方向)でダブルカバリングして、ダブルカバリグ弾性糸(DCY)を製造した。
【0070】
得られたDCYを用い、永田精機(株)製のスーパー4編機(針数400本)で、編機の給糸口に供給し、レッグ部をDCYのみで編成した。続いて、ソーピング剤(ニューサンレックスE;2g/L(日華化学社製))を用いて60℃×30分精錬、酸性ハーフミーリング染料(Telon Red A2R;0.14%owf、Telon Yellow A2R;0.16%owf、Telon Blue A2R;0.12%owf(DyStar社製))、均染剤(SeraGalN−FS;0.5%owf(DyStar社製 ))、pHスライド剤(硫酸アンモニウム;4.0%owf)を用い、浴比1:50、100℃×60分でパンティストッキングの一般色であるベージュに染色、フィックス剤(ハイフィックスSW−A;5%owf(大日本製薬))、スカム防止剤(NWH201;1%owf(センカ(株)社製))、炭酸ナトリウムを用いて90℃×45分フィックス処理を行い、120℃で30秒ファイナルセットを行い、パンティストッキング製品とした。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。
【0071】
ストッキング製造の工程通過性は極めて良好であった。ストッキング特性も優れており、ソフト性、耐久性、透明感、品位全てに極めて優れていた。
【0072】
(織物の製造)
得られたマルチフィラメントを、1000本整経を行いビームに巻き、ビームに巻き付けた糸を糊付け・乾燥して経糸準備を行った。続いて、ウオータージェット織機のオサに通し、得られたマルチフィラメントを緯糸に打ち込んで織物を製織した。製織した織物を、精練、180℃×1分で熱セット(中間セット)を行った。続いて、液流染色機により、酸性染料(Nylosan Blue−GFL167%(サンドス社製)1.0%owfを用いて98℃×60分染色処理、合成タンニン(ナイロンフィックス501 センカ社製)3g/lを用いて80℃×20分固着処理を施した。その後、190℃で裏面にカレンダー加工を施した。得られた織物について評価した結果を表1に示す。
【0073】
織物製造の工程通過性は極めて良好であった。織物特性も優れており、特にソフト性、軽量感、耐久性に極めて優れていた。品位は、U%がやや高いレベルであったが良好であった。
【0074】
〔実施例2〕
1GD速度を1503m/min、延伸倍率を2.4に変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。1GD速度を低くして延伸倍率を高く条件設定することで、U%が良好になった。
【0075】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は極めて良好であった。ストッキング特性も優れており、ソフト性、耐久性、透明感、品位全てに極めて優れていた。
【0076】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は極めて良好であった。織物特性も優れており、ソフト性、耐久性、軽量感、品位全てに極めて優れていた。
【0077】
〔実施例3〕
1GD速度を1386m/min、延伸倍率を2.6に変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。1GD速度を低くして延伸倍率を高く条件設定することで、強伸度積、U%が良好になった。
【0078】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は極めて良好であった。ストッキング特性も優れており、ソフト性、耐久性、透明感、品位全てに極めて優れていた。
【0079】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は極めて良好であった。織物特性も優れており、ソフト性、耐久性、軽量感、品位全てに極めて優れていた。
【0080】
〔実施例4〕
紡糸温度を295℃、1GD速度を1577m/min、延伸倍率を2.3に変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。糸条の細化点を下げて冷却がより均一に行われるようにするため紡糸温度を上げ、さらに1GD速度を低くして延伸倍率を高く条件設定をすることで、強伸度積、U%が良好になった。
【0081】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は極めて良好であった。ストッキング特性も優れており、ソフト性、耐久性、透明感、品位全てに極めて優れていた。
【0082】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は極めて良好であった。織物特性も優れており、ソフト性、耐久性、軽量感、品位全てに極めて優れていた。
【0083】
〔実施例5〕
吐出量を8.112g/minに変更した以外は実施例1と同様の方法で、4.1dtex、5フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。総繊度、単糸繊度を細くしたことにより、U%はやや高いレベルとなったが良好な結果を得た。
【0084】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は良好であった。ストッキング特性も優れており、特に、ソフト性、透明感に極めて優れていた。品位は、U%がやや高いレベルであったが良好であった。
【0085】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は良好であった。織物特性も優れており、特に、ソフト性、軽量感に極めて優れていた。品位は、U%がやや高いレベルであったが良好であった。
【0086】
〔実施例6〕
吐出量を10.005g/min、1GD速度を1497m/min、巻取速度を3000m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。紡糸口金−1GD間のドラフト延伸ムラを制御するため、延伸倍率を実施例1と同じとして、1GD速度を低くする条件設定をすることで、U%が極めて良好になった。
【0087】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は良好であった。ストッキング特性も優れており、特に、ソフト性、透明感、品位に極めて優れていた。
【0088】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は良好であった。織物特性も優れており、特に、ソフト性、軽量感、品位に極めて優れていた。
【0089】
〔実施例7〕
吐出量を13.341g/min、1GD速度を2000m/min、巻取速度を4000m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。紡糸口金−1GD間のドラフト延伸ムラを制御するため、延伸倍率を実施例1と同じとして、1GD速度を高くする条件設定をすることで、U%はやや高いレベルとなったが良好な結果を得た。
【0090】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は極めて良好であった。ストッキング特性も優れており、特に、ソフト性、耐久性、透明感に極めて優れていた。品位は、U%がやや高いレベルであったが良好であった。
【0091】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は極めて良好であった。織物特性も優れており、特に、ソフト性、耐久性、軽量感に極めて優れていた。品位は、U%がやや高いレベルであったが、良好であった。
【0092】
〔実施例8〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度が2.7のナイロン6チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。得られたナイロンチップを紡糸温度270℃にて溶融し、吐出量を13.341g/min、1GD速度を1718m/min、延伸倍率を2.4、巻取速度を4000m/minに変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。糸条の細化点を下げて冷却がより均一に行われるようにするため巻取速度を上げ、さらに1GD速度を低くして延伸倍率を高く条件設定をすることで、U%、が良好になった。実施例1と比較して硫酸相対粘度の低いチップを用い、強伸度積は低くなる傾向であるものの、ドラフト延伸ムラを抑制することにより、高い強伸度積を維持しつつ、U%が良好になった。
【0093】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は良好であった。ストッキング特性も優れており、特に、ソフト性、透明感、品位に極めて優れていた。
【0094】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は良好であった。織物特性も優れており、特に、ソフト性、軽量感、品位に極めて優れていた。
【0095】
〔実施例9〕
紡糸口金を、ホール数が36、丸形、孔径φ0.15、6糸条/口金に変更した以外は実施例1と同様の方法で、5.9dtex、6フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。
【0096】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は良好であった。ストッキング特性も優れており、特に、ソフト性、透明感、品位に極めて優れていた。
【0097】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は良好であった。織物特性も優れており、特に、ソフト性、軽量感に極めて優れていた。品位は、U%がやや高いレベルであったが良好であった。
【0098】
〔実施例10〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度が2.7のナイロン6チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。得られたナイロンチップを紡糸温度を270℃にて溶融した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。
【0099】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は良好であった。ストッキング特性も優れており、特に、ソフト性、透明感、品位に極めて優れていた。
【0100】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は良好であった。織物特性も優れており、特に、ソフト性、軽量感、品位に極めて優れていた。
【0101】
〔実施例11〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度が2.8のナイロン66チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。得られたナイロン66チップを紡糸温度290℃にて溶融した以外は実施例1と同様の方法で、5.9dtex、5フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン66マルチフィラメントについて評価した結果を表1に示す。
【0102】
また、得られたナイロン66マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表1に示す。ストッキング製造の工程通過性は極めて良好であった。ストッキング特性も優れており、ソフト性、耐久性、透明感、品位全てに極めて優れていた。
【0103】
また、得られたナイロン66マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表1に示す。織物製造の工程通過性は極めて良好であった。織物特性も優れており、ソフト性、耐久性、軽量感、品位全てに極めて優れていた。
【0104】
〔比較例1〕
1GD速度を1263m/min、延伸倍率を2.8に変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表2に示す。1GD速度を低くして延伸倍率を高く条件設定することにより、U%は良好になったが、伸度が低かった。
【0105】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表2に示す。ストッキング製造時、糸切れが多発し、工程通過性に大きく劣っていた。ストッキング特性は耐久性、透明感、品位に極めて優れていたが、ソフト性はやや風合いが硬く、やや不良であった。
【0106】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表2に示す。織物製造時、糸切れが多発し、工程通過性に大きく劣っていた。織物特性は耐久性、軽量感、品位に極めて優れていたが、ソフト性はやや風合いが硬く、やや不良であった。
【0107】
〔比較例2〕
1GD速度を2293m/min、延伸倍率を1.6に変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表2に示す。1GD速度を高くして延伸倍率を低く条件設定することで、伸度は高く、強伸度積は低く、U%は極めて高かった。
【0108】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表2に示す。ストッキング製造時、糸切れが発生し、工程通過性に劣っていた。ストッキング特性はソフト性、透明感には極めて優れていたが、耐久性、品位に大きく劣っていた。
【0109】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表2に示す。織物製造時、糸切れが発生し、工程通過性に劣っていた。織物特性はソフト性、軽量感に極めて優れていたが、耐久性、品位に大きく劣っていた。
【0110】
〔比較例3〕
吐出量を15.828g/min、1GD速度を1503m/min、延伸倍率を2.4に変更した以外は実施例1と同様の方法で、8.0dtex、5フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表2に示す。
【0111】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表2に示す。ストッキング製造時の工程通過性は極めて良好であった。しかし、総繊度を太くしたことにより、ストッキング特性は、耐久性に極めて優れていたが、ソフト性、透明感に大きく劣っていた。
【0112】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表2に示す。織物製造時の工程通過性は極めて良好であった。しかし、総繊度を太くしたことにより、織物特性は、耐久性に極めて優れていたが、ソフト性、軽量感に大きく劣っていた。
【0113】
〔比較例4〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度が2.7のナイロン6チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。得られたナイロンチップを紡糸温度を270℃にて溶融し、1GD速度を2179m/min、延伸倍率を1.7に変更した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表2に示す。1GD速度を高くして延伸倍率を低く条件設定することで、強伸度積は低く、U%は極めて高かった。
【0114】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表2に示す。ストッキング製造時、糸切れが発生し、工程通過性に劣っていた。ストッキングの特性は、ソフト性、透明性に極めて優れていたが、耐久性、品位に劣っていた。
【0115】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表2に示す。織物製造時、糸切れが発生し、工程通過性に劣っていた。織物特性は、ソフト性、軽量感に極めて優れていたが、耐久性、品位に劣っていた。
【0116】
〔比較例5〕
紡糸口金を、ホール数が24、丸形、孔径φ0.15、6糸条/口金、1GD速度を1442min/m、延伸倍率を2.5に変更した以外は実施例1と同様の方法で、5.9dtex、4フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表2に示す。
【0117】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表2に示す。ストッキング製造の工程通過性は極めて良好であった。しかし、単糸繊度を太くしたことにより、ストッキング特性は、耐久性、透明性、品位に極めて優れていたが、ソフト性に大きく劣っていた。
【0118】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表2に示す。織物製造の工程通過性は極めて良好であった。しかし、単糸繊度を太くしたことにより、織物特性は、耐久性、軽量感、品位に極めて優れていたが、ソフト性に大きく劣っていた。
【0119】
〔比較例6〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度が2.2のナイロン6チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。得られたナイロンチップを紡糸温度を270℃にて溶融した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6マルチフィラメントを製造した。得られたナイロン6マルチフィラメントについて評価した結果を表2に示す。硫酸相対粘度が低いナイロン6チップを用いたことで、強伸度積は低かった。
【0120】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様にストッキングを製造した。得られたパンティストッキング製品のレッグ部について評価した結果を表2に示す。ストッキング製造時、糸切れが発生し、工程通過性に劣っていた。ストッキング特性は、ソフト性、透明性、品位には極めて優れていたが、耐久性に大きく劣っていた。
【0121】
また、得られたナイロン6マルチフィラメントを用い、実施例1と同様に製織、染色加工、カレンダー加工を施し、織物を得た。得られた織物について評価した結果を表2に示す。織物製造時、糸切れが発生し、工程通過性に劣っていた。織物特性は、ソフト性、軽量感、品位には極めて優れていたが、耐久性に大きく劣っていた。
【0122】
〔比較例7〕
吐出量を6.925g/minに変更した以外は実施例1と同様の方法で、3.5dtex、5フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを製造しようとしたが、糸切れが多発し、紡糸は困難であり、目的のマルチフィラメントを得ることはできなかった。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【要約】
総繊度4.0dtex〜6.0dtex、単糸繊度1.2dtex以下、強伸度積9.1以上で、かつ伸度40〜50%であることを特徴とするポリアミドマルチフィラメント。
総繊度、単糸繊度ともに細繊度でありながら、高強伸度積を有し、長手方向の糸斑(U%)の小さなポリアミド繊維を提供する。また、高次工程通過性や生産性に優れ、かつソフト性と耐久性、透明感に優れたストッキング、及びソフト性と耐久性に優れた織物を提供する。