(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1送電側電極と、第2送電側電極と、送電側基準電位に接続された送電側基準電位電極と、前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極に電圧を印加する電圧印加回路とを有する送電装置と、
第1受電側電極と、第2受電側電極と、受電側基準電位に接続された受電側基準電位電極と、前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極に生じる電圧を負荷へ供給する負荷回路とを有する受電装置と、
備え、
前記送電装置に前記受電装置を載置して、前記第1送電側電極及び前記第1受電側電極を対向させ、前記第2送電側電極及び前記第2受電側電極を対向させ、前記送電側基準電位電極及び前記受電側基準電位電極を対向させて、前記送電装置から前記受電装置へ電界結合により電力を伝送する電力伝送システムにおいて、
前記送電装置は、
前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極の間に直列接続された第1送電側キャパシタ及び第2送電側キャパシタを有し、
前記第1送電側キャパシタ及び前記第2送電側キャパシタの接続点は、前記送電側基準電位電極に接続され、
前記受電装置は、
前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極の間に直列接続された第1受電側キャパシタ及び第2受電側キャパシタを有し、
前記第1受電側キャパシタ及び前記第2受電側キャパシタの接続点は、前記受電側基準電位電極に接続され、
前記第1送電側電極及び前記第1送電側キャパシタの接続点をP1、
前記第1受電側電極及び前記第1受電側キャパシタの接続点をP2、
前記第2送電側電極及び前記第2送電側キャパシタの接続点をP3、
前記第2受電側電極及び前記第2受電側キャパシタの接続点をP4、
前記第1送電側キャパシタ及び前記第2送電側キャパシタの接続点をP5、
前記第1受電側キャパシタ及び前記第2受電側キャパシタの接続点をP6、
で表し、
P1−P4間に生じる寄生容量をC
14、P1−P6間に生じる寄生容量をC
16、
P2−P3間に生じる寄生容量をC
23、P2−P5間に生じる寄生容量をC
25、
P3−P6間に生じる寄生容量をC
36、
P4−P5間に生じる寄生容量をC
45、
前記第1送電側キャパシタ及び前記第2送電側キャパシタそれぞれの容量をC
15,C
35、
前記第1受電側キャパシタ及び前記第2受電側キャパシタそれぞれの容量をC
26,C
46、
前記第1送電側電極及び前記第1受電側電極の間に生じる容量をC
A、
前記第2送電側電極及び前記第2受電側電極の間に生じる容量をC
P、
で表したとき、
【数1】
ただし、
ΣG=C
A+C
P+C
14+C
23+C
26+C
46+C
25+C
45、かつ、
ΣL=C
A+C
P+C
14+C
23+C
16+C
36+C
15+C
35、
を満足している、電力伝送システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、受電装置を送電装置に載置した場合、例えば、種類の異なる電極間、例えば、送電装置のアクティブ電極と、受電装置のパッシブ電極との間に容量(以下、クロス容量と言う)が形成されることがある。このクロス容量は、受電装置を送電装置に載置した際に位置ずれが生じると、特に大きくなる。特許文献1では、このようなクロス容量の影響を考慮しておらず、クロス容量が原因で、受電装置側の基準電位が変動し、受電装置に誤作動が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、送電装置に受電装置を載置した際に、送電装置及び受電装置の基準電位の安定化を図ることができる電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1送電側電極と、第2送電側電極と、送電側基準電位に接続された送電側基準電位電極と、前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極に電圧を印加する電圧印加回路とを有する送電装置と、第1受電側電極と、第2受電側電極と、受電側基準電位に接続された受電側基準電位電極と、前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極に生じる電圧を負荷へ供給する負荷回路とを有する受電装置と備え、前記送電装置に前記受電装置を載置して、前記第1送電側電極及び前記第1受電側電極を対向させ、前記第2送電側電極及び前記第2受電側電極を対向させ、前記送電側基準電位電極及び前記受電側基準電位電極を対向させて、前記送電装置から前記受電装置へ電界結合により電力を伝送する電力伝送システムにおいて、前記送電装置は、前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極の間に直列接続された第1送電側キャパシタ及び第2送電側キャパシタを有し、前記第1送電側キャパシタ及び前記第2送電側キャパシタの接続点は、前記送電側基準電位電極に接続され、前記受電装置は、前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極の間に直列接続された第1受電側キャパシタ及び第2受電側キャパシタを有し、前記第1受電側キャパシタ及び前記第2受電側キャパシタの接続点は、前記受電側基準電位電極に接続され、前記第1送電側電極及び前記第1送電側キャパシタの接続点をP1、前記第1受電側電極及び前記第1受電側キャパシタの接続点をP2、前記第2送電側電極及び前記第2送電側キャパシタの接続点をP3、前記第2受電側電極及び前記第2受電側キャパシタの接続点をP4、前記第1送電側キャパシタ及び前記第2送電側キャパシタの接続点をP5、前記第1受電側キャパシタ及び前記第2受電側キャパシタの接続点をP6、で表し、P1−P4間に生じる寄生容量をC14、P1−P6間に生じる寄生容量をC
16、P2−P3間に生じる寄生容量をC
23、P2−P5間に生じる寄生容量をC
25、P3−P6間に生じる寄生容量をC
36、P4−P5間に生じる寄生容量をC
45、前記第1送電側キャパシタ及び前記第2送電側キャパシタそれぞれの容量をC
15,C
35、前記第1受電側キャパシタ及び前記第2受電側キャパシタそれぞれの容量をC
26,C
46、前記第1送電側電極及び前記第1受電側電極の間に生じる容量をC
A、前記第2送電側電極及び前記第2受電側電極の間に生じる容量をC
P、で表したとき、
【0009】
【数1】
【0010】
ただし、ΣG=C
A+C
P+C
14+C
23+C
26+C
46+C
25+C
45、かつ、ΣL=C
A+C
P+C
14+C
23+C
16+C
36+C
15+C
35、を満足していることを特徴とする。
【0011】
この構成では、クロス容量を考慮した式(1)及び式(2)(以下、安定条件という)を満足することで、受電装置の基準電位を送電装置の基準電位に近づけることができる。このため、送電装置及び受電装置の基準電位を安定化できる。これにより、基準電位が不安定になることに起因する不具合を防止できる。
【0012】
前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極は平板状であり、同一平面上に設けられ、前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極は平板状であり、同一平面上に設けられ、前記送電側基準電位電極及び前記受電側基準電位電極は、平板状であり、前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極、並びに、前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極を間に挟んで対向することが好ましい。
【0013】
この構成では、電極の形状、大きさ又は電極間の距離等の最小限の調整をするだけで、基準電位の安定条件を満足させることができる。
【0014】
前記送電装置は、載置された前記受電装置と接する筐体の載置面から内側に向かって積層された第1絶縁層及び第2絶縁層を有し、前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極は、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の間に形成され、前記送電側基準電位電極は、前記第1絶縁層とは反対側の前記第2絶縁層の最外層に形成され、前記受電装置は、載置した前記送電装置と接する筐体の載置面から内側に向かって積層された第3絶縁層及び第4絶縁層を有し、前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極は、前記第3絶縁層及び前記第4絶縁層の間に形成され、前記受電側基準電位電極は、前記第3絶縁層とは反対側の前記第4絶縁層の最外層に形成され、前記第2絶縁層及び前記第4絶縁層それぞれは、平面方向において、誘電率及び厚さの比率が均一であり、前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層は同じ誘電率であり、平面方向において、前記誘電率、及び、前記第1絶縁層と前記第3絶縁層との合計厚さの比率が均一である、ことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、絶縁層の厚さ及び誘電率の微調整、又は、小さい補正容量の追加で、基準電位の安定条件を満足させることができる。
【0016】
前記第1絶縁層は、前記第1送電側電極と前記送電側基準電位電極との間、及び、前記第2送電側電極と前記送電側基準電位電極との間の少なくとも一方の領域の誘電率が、他の領域と異なっていることが好ましい。
【0017】
この構成では、第1送電側電極又は第2送電側電極に厚みがあり、第1絶縁層の厚さが平面方向において均一でない場合であっても、電極間の誘電率を変えることで、平面方向において、誘電率及び厚さの比率を均一にすることができる。
【0018】
前記第4絶縁層は、前記第1受電側電極と前記受電側基準電位電極との間、及び、前記第2受電側電極と前記受電側基準電位電極との間の少なくとも一方の領域の誘電率が、他の領域と異なっていることが好ましい。
【0019】
この構成では、第1受電側電極又は第2受電側電極に厚みがあり、第4絶縁層の厚さが平面方向において均一でない場合であっても、電極間の誘電率を変えることで、平面方向において、誘電率及び厚さの比率を均一にすることができる。
【0020】
前記送電装置及び前記受電装置の何れかは容量調整用素子を有し、前記容量調整用素子の容量を含めて、前記式(1)及び前記式(2)を満足していることが好ましい。
【0021】
この構成では、電極の形成後であっても、最小限の容量素子を追加することで、基準電位の安定条件を満足させることができる。
【0022】
前記送電側基準電位電極は、前記第1送電側電極及び前記第2送電側電極の少なくとも一方と対向する部分に、凹部、凸部又は開口部を有していることが好ましい。
【0023】
この構成では、第1送電側電極又は第2送電側電極に厚みがあり、第1絶縁層の厚さが平面方向において均一でない場合であっても、送電側基準電位電極に凹部等を形成することで、第1絶縁層の厚さを変えることができる。これにより、平面方向において、第1絶縁層の誘電率及び厚さの比率を均一にすることができる。
【0024】
前記受電側基準電位電極は、前記第1受電側電極及び前記第2受電側電極の少なくとも一方と対向する部分に、凹部、凸部又は開口部を有していることが好ましい。
【0025】
この構成では、第1受電側電極又は第2受電側電極に厚みがあり、第4絶縁層の厚さが平面方向において均一でない場合であっても、受電側基準電位電極に凹部等を形成することで、第4絶縁層の厚さを変えることができる。これにより、平面方向において、第4絶縁層の誘電率及び厚さの比率を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、式(1)及び式(2)を満足することで、受電装置の基準電位を送電装置の基準電位に近づけることができる。このため、送電装置及び受電装置の基準電位を安定化できる。これにより、基準電位が不安定になることに起因する不具合を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本実施形態に係る電力伝送システム1の回路図である。
【0029】
電力伝送システム1は、送電装置101と受電装置201とを備えている。受電装置201は負荷回路RLを備えている。この負荷回路RLは充電回路及び二次電池を含む。なお、二次電池は受電装置201に対し着脱式であってもよい。そして、受電装置201は、その二次電池を備えた、例えば携帯電子機器である。携帯電子機器としては携帯電話機、携帯音楽プレーヤ、ノート型PC、デジタルカメラなどが挙げられる。送電装置101は、載置された受電装置201の二次電池を充電するための充電台である。
【0030】
送電装置101は、直流電圧を出力する電源10を備えている。電源10はACアダプタである。ACアダプタは商用電源に接続されていて、AC100V〜240Vを例えばDC5Vや19Vへ変換する。
【0031】
電源10にはインバータ回路11が接続されている。インバータ回路11は、4つのMOS−FETによるスイッチ素子を備えている。スイッチ素子は不図示のドライバによりPWM制御される。インバータ回路11は、スイッチ素子がオンオフされることで、電源10からの直流電圧を交流電圧に変換する。
【0032】
インバータ回路11の出力側には昇圧トランスT1の1次巻線が接続されている。インバータ回路11で変換された交流電圧は、昇圧トランスT1に印加される。昇圧トランスT1の2次巻線には、アクティブ電極12及びパッシブ電極13が接続されている。昇圧トランスT1は、インバータ回路11から印加された交流電圧を昇圧し、アクティブ電極12及びパッシブ電極13へ印加する。
【0033】
アクティブ電極12は、本発明に係る「第1送電側電極」に相当する。パッシブ電極13は、本発明に係る「第2送電側電極」に相当する。
【0034】
また、送電装置101は基準電位電極14を備えている。基準電位電極14は、送電装置101の基準電位に接続されている。送電装置101の基準電位は、絶対的なアース電位と同電位であって、大地(又は送電装置101が置かれている机等)に接続することが望ましい。基準電位電極14は、本発明に係る「送電側基準電位電極」に相当する。
【0035】
アクティブ電極12及びパッシブ電極13には、直列接続されたキャパシタCa1,Cp1が接続されている。キャパシタCa1,Cp1は、後に詳述するが、受電装置201の基準電位の安定化を目的として設けられている。キャパシタCa1,Cp1の接続点は、送電装置101の基準電位に接続されている。キャパシタCa1は、本発明に係る「第1送電側キャパシタ」に相当し、キャパシタCp1は、本発明に係る「第2送電側キャパシタ」に相当する。
【0036】
昇圧トランスT1の2次巻線には、キャパシタC1が接続されている。このキャパシタC1は、昇圧トランスT1の漏れインダクタンスL1と共に直列共振回路を形成する。
【0037】
受電装置201は、アクティブ電極22及びパッシブ電極23を備えている。アクティブ電極22は、本発明に係る「第1受電側電極」に相当し、パッシブ電極23は、本発明に係る「第2受電側電極」に相当する。送電装置101に受電装置201を載置(装着)した場合、アクティブ電極12,22、パッシブ電極13,23がそれぞれ間隙を介して対向する。この対向配置により、アクティブ電極12,22間、パッシブ電極13,23間に静電容量が形成され、電界結合する。この結合を介して送電装置101から受電装置201へ電力が伝送される。
【0038】
アクティブ電極22及びパッシブ電極23には、直列接続されたキャパシタCa2,Cp2が接続されている。キャパシタCa2,Cp2は、キャパシタCa1,Cp1と同様に、受電装置201の基準電位の安定化を目的として設けられている。キャパシタCa2,Cp2の接続点は、送電装置101の基準電位に接続されている。キャパシタCa2は、本発明に係る「第1受電側キャパシタ」に相当し、キャパシタCp2は、本発明に係る「第2受電側キャパシタ」に相当する。
【0039】
また、受電装置201は基準電位電極24を備えている。基準電位電極24は、受電装置201の基準電位に接続されている。基準電位電極24は、送電装置101に受電装置201を載置(装着)した場合、その一部が基準電位電極14と対向する。これにより、受電装置201の基準電位は、対向する基準電位電極14,24で形成される容量を介して、送電装置101の基準電位に接続する。基準電位電極24は、本発明に係る「受電側基準電位電極」に相当する。
【0040】
アクティブ電極22及びパッシブ電極23には、降圧トランスT2の1次巻線が接続されている。降圧トランスT2の2次巻線には、ダイオードブリッジDBが接続され、さらに、キャパシタC3及びインダクタL2からなる平滑回路が接続されている。降圧トランスT2は、アクティブ電極22及びパッシブ電極23に誘起される電圧を降圧する。ダイオードブリッジDB及び平滑回路は、降圧トランスT2により降圧された電圧を整流及び平滑し、負荷回路RLへ供給する。
【0041】
また、降圧トランスT2の1次巻線にはキャパシタC2が接続されている。このキャパシタC2は、降圧トランスT2の2次巻線と共に並列共振回路を形成する。この並列共振回路は、送電装置101に形成される直列共振回路と共振周波数が同じに設定されている。送電装置101及び受電装置201の共振回路の共振周波数を同じに設定することで、送電装置101から受電装置201へ効率よく電力伝送が行える。
【0042】
図2は、送電装置101に受電装置201を載置した状態での回路の概略図である。
図2では、
図1に示す回路の一部の図示を省略している。また、
図1で説明した電源10及びインバータ回路11は、
図2では、電源Einとして図示している。
【0043】
送電装置101は筐体101Aを備えている。受電装置201は筐体201Aを備えている。送電装置101の筐体101Aに、受電装置201の筐体201Aが載置されることで、送電装置101から受電装置201へ電力が伝送される。以下では、筐体101Aに筐体201Aを載置した際に、互いに接する面を筐体101A,201Aの載置面と言う。
【0044】
送電装置101のアクティブ電極12及びパッシブ電極13は、筐体101Aの載置面に沿って、同一平面上に設けられている。基準電位電極14は、アクティブ電極12及びパッシブ電極13が筐体101Aの載置面側に位置するように、アクティブ電極12及びパッシブ電極13と平行に設けられている。また、送電装置101は、筐体101Aの載置面とは反対側の面に沿って設けられたシールド電極15を備えている。シールド電極15は、基準電位電極14と同電位である。
【0045】
受電装置201のアクティブ電極22及びパッシブ電極23は、筐体201Aの載置面に沿って、同一平面上に設けられている。基準電位電極24は、アクティブ電極22及びパッシブ電極23が筐体201Aの載置面側に位置するように、アクティブ電極22及びパッシブ電極23と平行に設けられている。また、受電装置201は、筐体201Aの載置面とは反対側の面に沿って設けられたシールド電極25を備えている。シールド電極25は、基準電位電極24と同電位である。
【0046】
以上のように、受電装置201を送電装置101に載置した場合、アクティブ電極12,22が対向し、パッシブ電極13,23が対向する。また、基準電位電極14,24は、間にアクティブ電極12,22及びパッシブ電極13,23を挟むように対向する。さらに、シールド電極15,25は、その間に、アクティブ電極12,22、パッシブ電極13,23及び基準電位電極14,24を挟む。このシールド電極15,25により、送電装置101及び受電装置201内で生じたノイズの輻射が抑制される。
【0047】
図3(A)は、送電装置101の載置面の透視平面図である。
図3(B)は、
図3(A)のIII−III線の断面図である。
【0048】
アクティブ電極12及びパッシブ電極13は平板状である。アクティブ電極12は矩形状であり、パッシブ電極13は、アクティブ電極12を囲うように形成されている。また、基準電位電極14は、平面視で、アクティブ電極12及びパッシブ電極13の全体を包含する大きさを有している。
【0049】
送電装置101には、筐体101Aの載置面から内側に向かって、絶縁層16,17が形成されている。アクティブ電極12及びパッシブ電極13は、絶縁層16,17の間に設けられている。基準電位電極14は、絶縁層17の最外層に設けられている。絶縁層16,17は、例えば樹脂等、絶縁性部材であれば、部材は限定されない。絶縁層16は、本発明に係る「第1絶縁層」に相当し、絶縁層17は、本発明に係る「第2絶縁層」に相当する。
【0050】
図4(A)は、受電装置201の載置面の透視平面図である。
図4(B)は、
図4(A)のIV−IV線の断面図である。
【0051】
アクティブ電極22及びパッシブ電極23は平板状である。アクティブ電極22は矩形状であり、パッシブ電極23は、アクティブ電極22を囲うように形成されている。また、基準電位電極24は、平面視で、アクティブ電極22及びパッシブ電極23の全体を包含する大きさを有している。
【0052】
受電装置201には、筐体201Aの載置面から内側に向かって、絶縁層26,27が形成されている。アクティブ電極22及びパッシブ電極23は、絶縁層26,27の間に設けられている。基準電位電極24は、絶縁層27の最外層に設けられている。絶縁層26,27は、例えば樹脂等、絶縁性部材であれば、部材は限定されない。絶縁層26は、本発明に係る「第3絶縁層」に相当し、絶縁層27は、本発明に係る「第4絶縁層」に相当する。
【0053】
図4に示す電極を有する受電装置201を、
図3に示す電極を有する送電装置101に載置した場合、平面視での電極の大きさ及び形状の違いから、クロス容量が生じる。以下に、クロス容量について説明する。
【0054】
図5は、クロス容量について説明するための断面図である。
図5に示す断面図は、送電装置101及び受電装置201の載置面が接するように、
図3(B)の断面図に
図4(B)の断面図を重ねたものに相当する。
【0055】
受電装置201を送電装置101に載置した場合、アクティブ電極12,22が対向し、パッシブ電極13,23が対向する。このとき、長方形状であるアクティブ電極12,22は、その長手方向が直交するよう対向する。したがって、
図5に示すように、アクティブ電極22は、アクティブ電極12と対向しない部分を有する。アクティブ電極22のアクティブ電極12と対向しない部分は、基準電位電極14と対向し(図中破線領域SP1,SP2)、その領域SP1,SP2に容量が生じる。この容量がクロス容量となる。
【0056】
同様に、パッシブ電極23は、パッシブ電極13と対向しない部分を有し、その部分は基準電位電極14と対向し(図中破線領域SP3,SP4,SP5,SP6)、その領域SP3,SP4,SP5,SP6に容量が生じる。この容量がクロス容量となる。
【0057】
図5で説明したクロス容量は一例であり、送電装置101に対する受電装置201の載置位置に応じて、生じるクロス容量は異なる。以下に、電力伝送システム1に生じるクロス容量について説明する。
図6は、寄生容量を含む電力伝送システム1の一部の回路図である。
【0058】
図1の回路において、キャパシタCa1とアクティブ電極12との接続点をP1、キャパシタCa2とアクティブ電極22との接続点をP2、キャパシタCp1とパッシブ電極13との接続点をP3、キャパシタCp2とパッシブ電極23との接続点をP4とする。また、キャパシタCa1,Cp1の接続点をP5、キャパシタCa2,Cp2の接続点をP6とする。
【0059】
この場合、P1−P4間、P1−P6間、P2−P3間、P2−P5間、P3−P6間、P4−P5間それぞれに寄生容量が生じる。P1−P4間には寄生容量C
14が生じ、P1−P6間には寄生容量C
16が生じる。P2−P3間には寄生容量C
23が生じ、P2−P5間には寄生容量C
25が生じる。P3−P6間には寄生容量C
36が生じ、P4−P5間には寄生容量C
45が生じる。
【0060】
なお、
図6では、
図1で説明したキャパシタC1a,Cp1,Ca2,Cp2は、説明の便宜上、それぞれ、C
15,C
35,C
26,C
46の符号で表す。また、アクティブ電極12,22間に形成される容量をC
A、パッシブ電極13,23間に形成される容量をC
P、基準電位電極14,24間に形成される容量をC
Gで表す。また、各容量のキャパシタンスは、各容量と同符号で表すものとする。
【0061】
この
図6に示す回路において、以下の式(1)及び式(2)を満たすことで、受電装置201の基準電位を、送電装置101の基準電位に近づけることができる。送電装置101の基準電位は、大地(又は机等)に接続され、安定しているため、受電装置201の基準電位を送電装置101の基準電位に近づけることで、受電装置201の基準電位も安定化が図れる。なお、送電装置101の基準電位は大地に接続されていなくてもよく、大地に対して漏えいする電解をシールド電極で遮蔽することによって、受電装置201の基準電位の安定化を図るようにしてもよい。
【0063】
ただし、
ΣG=C
A+C
P+C
14+C
23+C
26+C
46+C
25+C
45、かつ、
ΣL=C
A+C
P+C
14+C
23+C
16+C
36+C
15+C
35、である。
【0064】
以下に、式(1)及び式(2)の条件の導出方法、及び、前記条件を満足することで、受電装置201の基準電位が送電装置101の基準電位に近づく理由について説明する。
【0065】
まず、
図1の回路において、アクティブ電極22及びパッシブ電極23を短絡した場合について考える。
図7は、受電装置201のアクティブ電極22及びパッシブ電極23を短絡した場合の、
図6の等価回路図である。
【0066】
受電装置201のアクティブ電極22及びパッシブ電極23を短絡した場合、P2,P4が同電位となり、
図7の上図に示す回路となる。
図7の上図に示す回路をスター・メッシュ変換により、
図7の下図に示すブリッジ回路となる。ここで、ブリッジ回路のキャパシタC
15’,C
16’,C
35’,C
36’は、それぞれ以下の式で表せる。
【0068】
図7のブリッジ回路において、ブリッジ回路の平衡条件から、
C
35’/C
15’=C
36’/C
16’ …(3)
を満足することで、P5,P6間の電位差Vcは0となる。
【0069】
次に、
図1の回路において、アクティブ電極12及びパッシブ電極13を短絡した場合について考える。
図8は、送電装置101のアクティブ電極12及びパッシブ電極13を短絡した場合の、
図6の等価回路図である。
【0070】
送電装置101のアクティブ電極12及びパッシブ電極13を短絡した場合、P1,P3が同電位となり、
図8の上図に示す回路となる。
図8の上図に示す回路をスター・メッシュ変換により、
図8の下図に示すブリッジ回路となる。ここで、ブリッジ回路のキャパシタC
25’,C
26’,C
45’,C
46’は、それぞれ以下の式で表せる。
【0072】
図8のブリッジ回路において、ブリッジ回路の平衡条件から、
C
45’/C
25’=C
46’/C
26’ …(4)
を満足することで、P5,P6間の電位差Vcは0となる。
【0073】
前記式(3)及び式(4)から、式(1)及び式(2)の条件を導出できる。そして、式(1)及び式(2)の条件を満足することで、P5−P6間の電位差Vcは0となる。すなわち、送電装置101及び受電装置201の基準電位は等しくなる。その結果、受電装置201の基準電位は安定する。
【0074】
次に、式(1)及び式(2)の条件を満たすための送電装置101及び受電装置201の構造例について説明する。
【0075】
図9は、送電装置101に受電装置201を載置した状態における電極部分の断面図である。
図9は、
図5に示す断面図に相当する。
【0076】
前記式(1)及び式(2)を満足するために、絶縁層16,17,26,27それぞれは、平面方向において、厚みと誘電率との比率が均一にしてある。なお、アクティブ電極12及びパッシブ電極13と、アクティブ電極22及びパッシブ電極23との間は、二つの絶縁層16,26を一つの絶縁層とみなす。
【0077】
具体的には、アクティブ電極12及びパッシブ電極13と基準電位電極14との間の絶縁層17では、誘電率をε1、厚さをd1で表すと、平面方向において、ε1/d1が均一にされている。また、アクティブ電極22及びパッシブ電極23と基準電位電極24との間の絶縁層27では、誘電率をε2、厚さをd2で表すと、平面方向において、ε2/d2が均一にされている。さらに、アクティブ電極12及びパッシブ電極13と、アクティブ電極22及びパッシブ電極23との間の絶縁層16,26では、誘電率をε3、合計厚さをd3で表すと、平面方向において、ε3/d3が均一にされている。
【0078】
なお、絶縁層16,26は正規の位置に対向した場合に均一になればよい。各絶縁層の誘電率が同じであれば、絶縁層16,26の境界面は必ずしも平面である必要は無く、例えば、絶縁層16,26が嵌合するように凹凸形状があってもよい。また、各絶縁層16,17,26,27の厚みd1、d2、d3が同じであれば、各絶縁層の誘電率が異なっていてもよい。
【0079】
以上のように、各絶縁層の厚さ及び誘電率を調整すれば、式(1)及び式(2)を満たす。なお、
図9に示す構造では、各電極の厚みによる影響は無視している。そこで、以下に、電極の厚みを考慮した場合の構造例について説明する。
【0080】
図10は、各電極の厚みを考慮した場合の構造例について説明するための図である。
図10では、受電装置201側の電極及び絶縁層についてのみ図示している。
【0081】
アクティブ電極22及びパッシブ電極23は厚みがある。このため、絶縁層27において、基準電位電極24がアクティブ電極22及びパッシブ電極23に対向している部分の厚みT1と、基準電位電極24がアクティブ電極22及びパッシブ電極23に対向していない部分の厚みT2とでは、T1<T2の関係となる。そこで、
図10に示すように、アクティブ電極22及びパッシブ電極23に対向する基準電位電極24の領域に
図10における上側に突出する凸部24Aを設ける。これにより、厚みT1は大きくなり、T1とT2とを略同じにすることができる。この結果、
図9で説明したように、各絶縁層の平面方向において、誘電率と厚さとの比率を均一にすることができる。
【0082】
なお、誘電率と厚さとの比率が均一とは、比率の値が絶縁層の平面方向において完全に同じである必要はなく、式(1)及び式(2)を満たし、受電装置201の基準電位が送電装置101の基準電位に近づく範囲内であればよい。また、誘電率と厚さとの比率は、絶縁層の平面方向において均一に分布していなくてもよい。例えば、絶縁層の平面方向において、一部の誘電率と厚さとの比率が高く、他の部分での比率が低い場合なども含まれる。
【0083】
図11は、絶縁層の平面方向において、誘電率と厚さとの比率が均一に分布していない場合の構造例について説明するための図である。
図11では、受電装置201側の電極及び絶縁層についてのみ図示している。
【0084】
図11(A)では、絶縁層27におけるアクティブ電極22と基準電位電極24との間に絶縁層27のその他の部分よりも誘電率の低い低誘電率部27Aを設け、パッシブ電極23と基準電位電極24との間に、絶縁層27のその他の部分よりも誘電率の低い低誘電率部27Bを設けている。この低誘電率部27A,27Bは、絶縁層27の平面方向における誘電率と厚さとの比率が均一となる誘電率を有している。低誘電率部27A,27Bを設けることで、受電装置201は、絶縁層27の平面方向において、一部の誘電率が他の部分の誘電率よりも低い構造となる。この場合、電極の厚みにより、絶縁層27の厚さが平面方向において均一でない場合であっても、誘電率を変えることで、絶縁層27の厚さと誘電率との比率を均一にできる。
【0085】
図11(B)では、基準電位電極24は、アクティブ電極22及びパッシブ電極23が対向する一部に形成された開口(基準電位電極24の非形成部)24B,24Cを有している。この場合は、アクティブ電極22と基準電位電極24との間の誘電率もパッシブ電極23と基準電位電極24との間の誘電率も絶縁層27と同じ誘電率を有しているが、絶縁層27の平面方向において、アクティブ電極22とパッシブ電極23を設けた領域の絶縁層27の厚みがその他の領域よりも小さくなる。その際に、適切な大きさの開口24B,24Cが形成されることで、アクティブ電極22と基準電位電極24の間の静電容量やパッシブ電極23と基準電位電極24の間の静電容量が小さくなるように調整し、等価的に誘電率を下げることで、絶縁層27の厚さと誘電率の比率を均一にすることができる。
【0086】
このように、低誘電率部27A,27Bを設け、又は、開口24B,24Cを形成することで、基準電位の安定条件を満たすよう調整することができる。なお、
図11(A)及び
図11(B)において、低誘電率部27A,27Bを設ける位置、及び、開口24B,24Cを形成する位置は、アクティブ電極22及びパッシブ電極23が対向する位置であることが好ましい。この位置に低誘電率部27A,27B等を設けることで、相手側、すなわち、送電装置101側との間で形成される寄生容量への影響はない。
【0087】
なお、
図10及び
図11では、受電装置201側について説明したが、送電装置101側についても同様である。
【0088】
図12は、各電極の配線を考慮した場合の構造例について説明するための図である。
図2で説明したように、各電極には配線が接続されている。このため、電極部以外の寄生容量、例えば、配線による寄生容量の影響が無視できない場合には、電極間の容量を削減し、又は、追加することで、式(1)及び式(2)を満たすようにする。なお、
図12では、受電装置201側の電極及び絶縁層についてのみ図示している。
【0089】
図12(A)は、容量を削減する場合の構成例である。この場合、アクティブ電極22が対向する基準電位電極24の一部に
図12(A)における上側に突出する凸部24Dが設けられ、パッシブ電極23が対向する基準電位電極24の一部に開口24Eが設けられている。また、パッシブ電極23と基準電位電極24との間には、低誘電率層27Cが設けられている。
【0090】
図12(B)は、容量を追加する場合の構成例である。この場合、アクティブ電極22が対向する基準電位電極24の一部に
図12(B)における下側に凹む凹部24Fが設けられている。また、パッシブ電極23と基準電位電極24との間には、高誘電率層27Dが設けられている。
【0091】
このように、配線等による影響によって式(1)及び式(2)が満たさなくおそれがあるが、適宜容量を削除又は追加することで、これを回避できる。
【0092】
なお、容量を追加する場合、電極の形状を変えず、キャパシタを絶縁層に内蔵もしくは絶縁基板表面に配線して接続するようにしてもよい。
【0093】
図13は、キャパシタを追加した場合の電力伝送システム1の回路の概略図である。この場合、送電装置101において、アクティブ電極12及びパッシブ電極13と基準電位電極14との間に、キャパシタC41,C42を接続している。また、受電装置201において、アクティブ電極22及びパッシブ電極23と基準電位電極24との間に、キャパシタC51,C52を接続している。キャパシタC41,C42,C51,C52は、例えば積層セラミックコンデンサからなり、本発明に係る「容量調整用素子」に相当する。この場合、電極等を形成した後であっても、キャパシタを適宜追加することで、式(1)及び式(2)を満たすことができる。このキャパシタを接続する位置は、適宜変更可能である。