【実施例】
【0011】
図1〜
図8は、この発明の実施例を示すものである。
図7、
図8において、車両1は、車体を構成するサイドフレーム2、エプロンパネル3に、横置きのエンジン4及びトランスミッション5からなるパワートレイン6の左側を、パワートレインマウント7により支持している。なお、パワートレイン6は、パワートレイン6の左側だけでなく、右側及び後側をそれぞれパワートレインマウント7により車体に支持している。
前記パワートレインマウント7は、車体を構成するサイドフレーム2、エプロンパネル3にマウント部材8を取り付け、パワートレイン6にマウントブラケット9を取り付け、マウント部材8とマウントブラケット9とを固定用ねじ部材10で締結している。
【0012】
前記マウント部材8は、
図4〜
図6に示すように、円筒形状の外筒部11と、外筒部11よりも小径の円筒形状で外筒部11内に配置される内筒部12と、外筒部11の内周に内筒部12の外周を支持する弾性部材13とを有している。外筒部11は、外周に3つの取付ブラケット14〜16を固定している。取付ブラケット14〜16は、固定部17〜19を備えている。内筒部12は、軸方向一側にねじ部20を備え、弾性部材13により外筒部11内に弾性的に支持されている。
マウント部材8は、
図7、
図8に示すように、内筒部12のねじ部20をパワートレイン6側に向け、内筒部12の軸方向を車両幅方向に指向させた状態で、2つの取付ブラケット14、15の固定部17、18を取付用ねじ部材21、22でサイドフレーム2に取り付け、残りの1つの取付ブラケット16の固定部19を取付用ねじ部材23でエプロンパネル3に取り付ける。
【0013】
前記マウントブラケット9は、
図1〜
図3に示すように、略四角板形状の基板部24の1つの対角線方向一側に内筒部12を固定する立ち壁状の締結部25を備え、締結部25の両側から対角線方向他側に向けて次第に高さが低くなるように延びる一対の立ち壁状の支持部26、27を備えている。締結部25は、締結面28に貫通する挿通孔29を備えている。基板部24には、1つの対角線方向他側で一対の支持部26、27の内側に固定部30を備え、他の対角線方向両側で支持部26、27の外側にそれぞれ固定部31、32を備えている。
マウントブラケット9は、
図7、
図8に示すように、パワートレイン6を車両1へ組み付ける際に、締結部25がサイドフレーム2側のマウント部材8の内筒部12に対向するように、3つの固定部30〜32を取付用ねじ部材33〜35でパワートレイン側ブラケット36に取り付ける。パワートレイン側ブラケット36は、パワートレイン6を構成するトランスミッション5に固定されている。
【0014】
パワートレインマウント7は、
図7、
図8に示すように、マウント部材8の内筒部12のねじ孔20にマウントブラケット9の締結部25の締結面28を対向させ、締結部25の挿通孔29に挿通した固定用ねじ部材10を内筒部12のねじ部20にねじ込み、マウント部材8とマウントブラケット9とを締結する。
【0015】
このパワートレインマウント7は、
図1〜
図3に示すように、マウント部材8の内筒部12のマウントブラケット9と締結する側の端部に、マウントブラケット9の締結部25の締結面28と直交し、かつ、互いに平行な一対の平面部37、38を設けている。
また、パワートレインマウント7は、マウントブラケット9の締結部25の締結面28に、この締結面28に平行し、かつ、密接して配置される回り止め板39を設けている。回り止め板39は、締結面28に密接する本体部40を備えている。本体部40は、上下方向に延びる一対の平行な側部分41、42と、側部分41、42の上端を連結する上部分43と、側部分41、42の下端を連結する下部分44とによって、内部に孔部45を有する略四角枠板形状に形成される。
回り止め板39は、本体部40の上部分43に係合部46を設け、本体部40の下部分44に爪部47を設けている。係合部46は、本体部40に対してマウントブラケット9側に延びるように設けられ、締結部25の上部の突部48に緩く係合する係合孔49を備えている。爪部47は、本体部40に対してマウントブラケット9側に延びるように設けられ、締結部25の下部の溝部50に密接して係合する。これらの係合部46、及び、爪部47の係合によって、回り止め板39はマウントブラケット9に対して回転を規制される。
この回り止め板39は、本体部40の一対の側部分41、41の孔部45内に、内筒部12を挟むように位置規制部51、52を設けている。位置規制部51、52は、マウント部材8とマウントブラケット9とを固定用ねじ部材10で締結する時に、内筒部12の平面部37、38と接触し、締結部25に対して内筒部12が回転して締結されることを規制する。
この実施例の位置規制部51、52は、本体部40に対して内筒部12側に延びるように設けられ、内筒部12の一対の平面部37、38と平行な一対の縦壁部53、54を備えている。この縦壁部53、54は、一対の平面部37、38を挟んで保持するとともに、一対の平面部37、38と密着する。
【0016】
パワートレインマウント7は、
図7、
図8に示すように、パワートレイン6を車両1へ組み付ける際に、先ず、回り止め板39の係合部46をマウントブラケット9の締結部25の突部48に緩く係合し、回り止め板39の爪部47を締結部25の溝部50に密接して係合することで、マウントブラケット9の締結部25の締結面28に回り止め板39の本体部40を密接して配置する。
次に、サイドフレーム2、エプロンパネル3に取り付けたマウント部材8の内筒部12のねじ孔20に対して回り止め板39を配置した締結部25の締結面28を対向させ、内筒部12のマウントブラケット9側の端部を回り止め板39の孔部45内に挿入して、位置規制部51、52である一対の縦壁部53、54で一対の平面部37、38を挟んで保持するとともに、一対の縦壁部53、54を一対の平面部37、38と密着させる(
図1、
図2参照)。
回り止め板39の一対の縦壁部53、54の間に内筒部12の一対の平面部37、38を密着保持させた状態で、締結部25の挿通孔29に固定用ねじ部材10を挿通して内筒部12のねじ部20にねじ込み、マウント部材8とマウントブラケット9とを締結する。これにより、マウント部材8の内筒部12は、一対の平面部37、38を回り止め板39の一対の縦壁部53、54に密着保持されているため、固定用ねじ部材10の締結時の回転を規制される。
【0017】
このように、パワートレインマウント7の締結構造は、マウント部材8とマウントブラケット9との締結時におけるマウント部材8の内筒部12の回転防止を、マウントブラケット9とは別体の回り止め板39を取付けることで行うことにより、マウントブラケット9自体に回り止め形状を素材で作り込まなくてよいため、マウントブラケット9を軽量にすることがする。
また、このパワートレインマウント7の締結構造は、マウントブラケット9とは別体の回り止め板39の位置規制部51、52が内筒部12の平面部38、39に接触して回り止めをするため、パワートレイン6の揺動時に位置規制部51、52の平面部37、38が接触する面に応力が発生しても、別体の回り止め板39が変形することで応力を吸収し、マウント部材8の内筒部12及びマウントブラケット9に余計な応力がかかることはなく、マウント部材8及びマウントブラケット9の耐久性が向上する。
さらに、このパワートレインマウント7の締結構造は、マウント部材8の内筒部12が捩じれた状態で組付けられることが無くなるので、パワートレインマウント7の防振性能、耐久性能を良い状態で維持でき、パワートレインマウント7に設計どおりの性能を発揮させることができる。
【0018】
また、このパワートレインマウント7の締結構造は、回り止め板39の位置規制部51、52として内筒部12の一対の平面部37、38と平行な一対の縦壁部53、54を備え、この縦壁部53、54で平面部37、38を挟んで保持するとともに、縦壁部53、54を平面部37、38と密着している。
マウント部材8の内筒部12が鋳鉄製の場合、平面部37、38は通常、切削加工によって寸法精度を満足するように仕上られる。そのため、平面部37、38は、表面が未処理(地肌)の加工面として内筒部12に残る。加工面は表面未処理のため、錆の発生が懸念される。
このパワートレインマウント7の締結構造は、内筒部12の平面部37、38を縦壁部53、54で密接して覆うことにより、平面部37、38の露出を抑え、平面部37、38の表面の錆発生を低減させることができる。
さらに、このパワートレインマウント7の締結構造は、マウント部材8をマウントブラケット9に締結する際に、縦壁部53、54が内筒部12を導入するガイドとなり、組付け作業性が向上する。
【0019】
この発明は、上述実施例に限定されることなくも、種々応用改変が可能である。
例えば、上述実施例のパワートレインマウント7の締結構造において、回り止め板40は、本体部40の側部分41、42に、位置規制部51、52として内筒部12の一対の平面部37、38と平行な一対の縦壁部53、54を備えているが、本体部40の側部分41、42を位置規制部51、52とすることもできる。
例えば、
図9〜
図11に示すパワートレインマウント7の締結構造は、位置規制部51、52の変形例を示すものである。変形例の位置規制部51、52は、本体部40の一対の側部分41、42に、内筒部12の一対の平面部37、38と平行な一対の当接部55、56を一体的に備えている。この当接部55、56は、一対の平面部37、38を挟んで保持するとともに、一対の平面部37、38と密着する。
このように、変形例のパワートレインマウント7の締結構造は、本体部41の一対の側部分41、42に、内筒部12の一対の平面部37、38と平行な一対の当接部55、56を一体的に備えることで、前述実施例のように一対の縦壁部53、54を形成する必要がなく、回り止め板39の加工工数を削減することができ、コストの低減を図ることができる。