【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、実際には、皮膚の構成要素の保湿改善に有用な生物学的活性である、エンドウのペプチド加水分解物を識別した。
【0021】
本発明による特徴的で有用な生物活性は、エンドウ加水分解物のアクアポリン、グリコサミノグリカン及びフィラグリンの発現を増大する能力によって生体外で明確にされた。
【0022】
「アクアポリン、グリコサミノグリカン及びフィラグリンの発現を改善することができる活性作用剤」は、遺伝子発現を直接的又は間接的に調節することによって又は翻訳後集合若しくはタンパク質安定化のようなその他の生物学的プロセスによって、前記化合物のタンパク質合成を改善することができるいかなる物質でもあると理解される。
【0023】
本発明によると、アクアポリンは3型アクアポリン、すなわちAQP3であることが好ましく、該アクアポリンは角化細胞膜に存在する。
【0024】
本発明は、より具体的には、エンドウ(Pisum sativum L.)のペプチド加水分解物を、その水流へのプラス作用並びに角質層、表皮の基底層、及び真皮における貯水能力の改善により、皮膚の構成要素の保湿を改善するために美容的に使用することに関する。
【0025】
「構成要素の保湿」は、皮膚の全部分、すなわち真皮、表皮の基底層(又は増殖性表皮)及び角質層に関係する水分量と理解される。
【0026】
「ペプチド加水分解物」は、ペプチドによって主に代表される化合物の混合物と理解される。
【0027】
「局所塗布」は、本発明による活性作用剤、又は前記作用剤を含有する組成物を、皮膚又は粘膜の表面に塗布又は広げることであると理解される。
【0028】
「生理学的に許容可能な」は、本発明による活性作用剤、又は前記作用剤を含有する組成物が、毒性又は不耐性反応を引き起こすことなく皮膚又は粘膜に接触するのに好適であることを表すと理解される。
【0029】
本発明による活性作用剤は、植物由来タンパク質を抽出した後、生物学的に活性なペプチドフラグメントを放出する制御加水分解を行うことによって得ることができる。
【0030】
植物中に存在する多数のタンパク質はその構造内に生物学的に活性なペプチドフラグメントを含有する可能性が高い。制御加水分解は、このペプチフラグメントの放出を可能にする。本発明を実施するには、最初に問題のタンパク質を抽出し、その後該タンパク質を加水分解すること、又は未最初に加工の抽出物を加水分解し、その後ペプチドフラグメントを精製することが可能であるが、必ずしも必要ではない。本発明による生物学的に活性なペプチドに相当するペプチドフラグメントを精製せずに特定の加水分解した抽出物を使用し、同時に適切な分析手段を用いることによって前記フラグメントの存在を確実とすることも可能である。
【0031】
植物全体、又は植物の特定部分(葉、種子等)を使用して抽出を実施することができる。
【0032】
本発明によると、より具体的には、マメ科(fabaceae)エンドウ種Pisum sativum L由来の植物種子を使用する。用語「エンドウ」は種子も包含し、種子自体はタンパク質に富む(25%)。
【0033】
本発明の加水分解物の調製には、当業者に既知のすべての抽出又は精製方法が使用できる。
【0034】
第1段階で、種子は植物粉砕機を用いて粉砕される。得られた粉末を、その後標準的な有機溶媒(アルコール、ヘキサン又はアセトン)によって「脱脂」することができる。
【0035】
続いて、タンパク質が(改良)標準方法(Osborne,1924)に従って抽出される。粉砕された植物材料は、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)型の不溶性(0.01〜20%)吸着製品を含有するアルカリ溶液中に懸濁される。実際には、加水分解操作及びその後の精製がこの手法によって促進されることが観察された。特に、タンパク質と相互作用するフェノール性物質の濃度は明らかに低かった。
【0036】
タンパク質、炭水化物及びおそらくは脂質を含有する可溶性タンパク質が、遠心分離及び濾過の段階の後に回収される。この未処理溶液は、その後制御条件下で加水分解され、可溶性ペプチドを生成する。加水分解は、分子が水によって分解される化学反応と定義され、この反応は中性、酸性又は塩基性媒体中で起こることができる。本発明によると、加水分解はタンパク質加水分解酵素によって化学的に及び/又は有利に実施される。したがって、植物由来のエンドプロテアーゼ(パパイン、ブロメライン、フィシン)及び微生物(アスペルギルス属、リゾプス属、バチルス属)の使用を本明細書で引用することができる。前記と同じ理由で、すなわち、ポリフェノール性物質を排除するために、この制御加水分解段階の間に多量のポリビニルポリピロリドンを反応媒体に添加する。酵素の熱的不活性化及び濾過によって残渣の酵素及びポリマーを除去した後、低分子量のペプチド化合物を選択するために得られた濾液(溶液)を再度精製する。分離は限外濾過及び/又はクロマトグラフィー法により有利に起こすことができる。
【0037】
この段階で、エンドウの加水分解物は、乾燥重量70〜80g/kgm、タンパク質レベル55〜65g/l、糖レベル2〜5g/l及びポリフェノールレベル1〜3g/lによって特徴づけられる。
【0038】
本発明により得られる加水分解物を、当業者が周知の代表的技法を用いて、物理化学的特性並びにタンパク質及びペプチド化合物の含有量について、定性的及び定量的に分析する。得られる加水分解物は、分子量が5kDa未満のペプチドで構成される。
【0039】
次の段階は、水又は水性溶媒の混合物への希釈段階である。したがって、本発明の活性作用剤は、水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化又はプロポキシ化グリコール、環状ポリオール又はこれらの溶媒のいずれかの混合物のような1つ又はそれ以上の生理学的に許容可能な溶媒で有利に可溶化される。希釈された活性作用剤は、その後滅菌濾過によって滅菌される。
【0040】
この段階の後、エンドウのペプチド加水分解物は、0.5〜5.5g/lのペプチド化合物含有量で特徴づけられる。このペプチド加水分解物は本発明の活性作用剤に相当する。
【0041】
この希釈段階の後、活性作用剤を、リポソーム又は美容分野で使用されるその他のマイクロカプセルのような美容又は薬学的キャリアに封入又は含有することも、粉末状有機ポリマー又はタルク及びベントナイトのような鉱物支持体上に吸着させることもできる。
【0042】
本発明の第2の態様は、生理学的に許容可能な媒体中に本発明によるエンドウのペプチド加水分解物を活性作用剤として有効量を含む美容組成物を、皮膚の保湿を維持又は修復するために使用することである。
【0043】
本発明の特定の態様によると、エンドウのペプチド加水分解物は、皮膚の乾燥を抑制するための美容組成物に活性作用剤として使用することもできる。
【0044】
本発明の有利な実施形態によると、本発明による活性作用剤は、有効量、すなわち最終組成物の全重量を基準にして約0.0001%〜20%の濃度、好ましくは約0.05%〜5%の濃度で存在する。
【0045】
本発明に従って使用できる組成物は、いかなる適切な方法でも、特に経口、非経口又は局所的に適用することができ、さらに組成物の配合は、当業者によって、特に美容又は皮膚科学的組成物用に適応されるであろう。本発明の組成物は局所適用されるように有利に設計される。したがって、これらの組成物は、生理学的に許容可能な媒体を含有しなければならず、すなわち皮膚及び上皮付属器への適合性があり、すべての美容又は皮膚科学的形態を網羅する。
【0046】
本発明の組成物は、具体的には水溶液、水性アルコール溶液又は油性溶液、水中油型乳剤、油中水型乳剤、又は複数の乳剤の形態で存在することができ、また皮膚、粘膜、唇及び/又は上皮付属器上への塗布に適応されたクリーム、懸濁液、さらには粉末の形態でも存在できる。これらの組成物は、多少の流体であることもでき、クリーム、ローション、ミルク、漿液、ポマード、ジェル、ペースト又はムースの外観を有することもできる。また、スティックとして固体形態で存在すること、又はエアゾールとして皮膚に適用されることもできる。さらにはスキンケア製品として及び/又はメーキャップ製品としても使用できる。
【0047】
さらに、この組成物の組は想定される出願範囲において従来使用されている添加剤並びにその配合に必要な添加剤、例えば共溶媒(エタノール、グリセロール、ベンジルアルコール、ダンパ…)、増粘剤、薄め液、乳化剤、酸化防止剤、着色剤、遮光剤、顔料、充填剤、防腐剤、香料、消臭剤、精油、少数元素、必須脂肪酸、界面活性剤、被膜形成ポリマー、ケミカルフィルタ又は鉱物、保湿剤又は温泉水等を含む。水溶性の、好ましくは天然の、ポリマー、例えば多糖又はポリペプチド、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース型のセルロース誘導体、又は合成ポリマー、ポロキサマー、カーボマー、シロキサン、PVA又はPVP、及び特にISP社が販売するポリマーを例として挙げることできる。
【0048】
いかなる場合にも、当業者はこれらの添加剤及びその割合が、本発明の組成物に所望される有利な特性に有害でないような形で選択されることを確実とするであろう。これらの添加剤は、例えば、組成物の全重量の0.01%〜20%の濃度で存在することができる。本発明の組成物が乳剤である場合、脂肪相は組成物の全重量を基準にして5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%で存在することができる。組成物に使用される乳化剤及び共乳化剤は、関連分野で一般的に使用されるものから選択される。例えば、組成物の全重量を基準にして0.3〜30重量%の割合で使用できる。
【0049】
本発明の活性作用剤は、単独でも他の活性作用剤と共にでも使用できることは十分に理解される。
【0050】
さらに、本発明に従って使用できる組成物は、本発明による活性作用剤の作用形式を促進するよう設計された他の活性作用剤を少なくとも1つ有利に含有する。非限定的には、次の種類の成分を挙げることができる:他のペプチド活性作用剤、植物抽出物、治癒剤、老化防止剤、しわ防止剤、無痛化剤、抗フリーラジカル、抗UV剤、真皮微小分子合成又はエネルギー代謝を刺激するための作用剤、保湿剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、並びに皮膚分化、皮膚着色又は脱色の調節剤、並びに爪及び毛髪の成長を刺激する作用剤。
【0051】
抗フリーラジカル剤、酸化防止剤、又は真皮微小分子合成若しくはエネルギー代謝の刺激剤を使用することが好ましい。より具体的な実施形態において、本発明の組成物は、エンドウのペプチド加水分解物に加えて、以下を含む。
−少なくとも1つの、シトクロムc活性化化合物、及び/又は
−少なくとも1つの、アクアポリン活性化化合物のような保湿化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、サーチュイン活性化化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、細胞接着改善化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカンのような基質タンパク質産生を改善するための化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、プロテアソーム活性を調節するための化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、概日リズムを調節するための化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、HSPタンパク質を調節するための化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、細胞内エネルギーを増大するための化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、皮膚の着色を調節するための化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、コエンザイムQ10を活性化するための化合物、及び/又は、
−少なくとも1つの、トランスグルタミナーゼ又はHMG−CoA還元酵素のようなバリア機能を改善するための化合物。
−少なくとも1つの、ミトコンドリアを保護するための化合物。
【0052】
上記の化合物は、植物のペプチド加水分解物のような天然物であるこることも、ペプチド化合物のような合成物であることもできる。
【0053】
本発明の第3の目的は、本発明のエンドウのペプチド加水分解物を含む組成物を処置すべき皮膚に局所塗布することを特徴とする、皮膚の老化中に起こる水分バランスの崩れを修復することを目的とする美容処置方法である。
【0054】
本発明の第4の目的は、エンドウ(Pisum sativum L.)のペプチド加水分解物の有効量を、保湿活性作用剤として、皮膚の病的乾燥の処置を目的とする医薬組成物の調製に使用することである。
【0055】
本発明のこの形態によると、組成物は、医薬的使用のための経口投与に好適である。したがって、組成物は、特に錠剤、液体カプセル、粉末カプセル、チューイングガム、飲み込み用粉末、例えば単独で又は液体、シロップ、ジェル及び当業者に既知のその他の形態との即時混合の形態であることができる。これらの組成物はさらに、想定される出願範囲において一般的に使用されるいずれかの添加剤、並びにその配合に必要な添加剤、例えば溶剤、増粘剤、薄め液、酸化防止剤、防腐剤、精油、その他の活性医薬成分、ビタミン類、必須脂肪酸等を含む。