特許第5983968号(P5983968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983968
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】電力増幅回路及び電力増幅モジュール
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20160823BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H03F1/32
   H03F3/24
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-550044(P2014-550044)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2013068049
(87)【国際公開番号】WO2014083876
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-262761(P2012-262761)
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】長谷 昌俊
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−004987(JP,A)
【文献】 特開2007−306278(JP,A)
【文献】 特開2002−359321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/32
H03F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバイアス電圧に応じたゲインで第1の信号を増幅して第2の信号を出力する第1の増幅素子と、
第2のバイアス電圧のレベルに応じたゲインで前記第2信号を増幅して第3の信号を出力する第の増幅素子と、
前記第1の増幅素子と同等のゲイン特性を有し、第3のバイアス電圧のレベルに応じたゲインで前記第1信号を増幅して第4の信号を出力する第の増幅素子と、
前記第4の信号のレベルの上昇に伴って低下する前記第2のバイアス電圧を生成する可変バイアス電圧生成回路と、
を備える電力増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力増幅回路であって、
前記第の増幅素子のサイズは、前記第の増幅素子のサイズより小さい、
電力増幅回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力増幅回路であって、
複数の前記第の増幅素子を備え、
前記可変バイアス電圧生成回路は、前記複数の第の増幅素子のうちの少なくとも1つのために前記バイアス電圧を生成する、
電力増幅回路。
【請求項4】
請求項3に記載の電力増幅回路であって、
前記可変バイアス電圧生成回路は、前記複数の第の増幅素子のうちの最終段の増幅素子のために前記バイアス電圧を生成する、
電力増幅回路。
【請求項5】
請求項3に記載の電力増幅回路であって、
前記可変バイアス電圧生成回路は、前記複数の第の増幅素子のうちの1つの増幅素子のために第1のレベルの前記第2のバイアス電圧を生成し、前記複数の第の増幅素子のうちの他の1つの増幅素子のために第2のレベルの前記第2のバイアス電圧を生成する電圧調整回路を含む、
電力増幅回路。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記可変バイアス電圧生成回路は、
前記第の増幅素子の出力信号のレベルの上昇に伴って低下する電圧を生成する抵抗を含み、
前記抵抗によって生成される前記電圧に応じた前記第2のバイアス電圧を生成する、
電力増幅回路。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記第2のバイアス電圧に基づいて前記第の増幅素子のバイアス電流を生成する第1のバイアス電流生成回路をさらに備える、
電力増幅回路。
【請求項8】
請求項7に記載の電力増幅回路であって、
所定レベルの前記第3のバイアス電圧に基づいて前記第の増幅素子のバイアス電流を生成する第2のバイアス電流生成回路をさらに備える、
電力増幅回路。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記可変バイアス電圧生成回路は、
前記第3の増幅素子の出力信号の交流成分を減衰させるフィルタ回路を含み、
前記フィルタ回路の出力信号に基づいて前記第2のバイアス電圧を生成する、
電力増幅回路。
【請求項10】
請求項9に記載の電力増幅回路を備える電力増幅モジュールであって、
前記フィルタ回路は、コンデンサを含み、
前記コンデンサは、前記第1〜第3の増幅素子を含む半導体集積回路とは別に形成されている、
電力増幅モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電力増幅モジュールであって、
前記半導体集積回路は、多層基板上に実装され、
前記コンデンサは、前記多層基板の層間容量により形成されている、
電力増幅モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅回路及び電力増幅モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動体通信機においては、基地局へ送信する信号の電力を増幅するために電力増幅回路(パワーアンプ)が用いられる(例えば、特許文献1)。近年、携帯電話においては、高速なデータ通信の規格である、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)やLTE(Long Term Evolution)、LTE−Advancedなどの変調方式が採用されてきている。このような通信規格では、通信速度を向上させるために、位相や振幅のずれを小さくすることが重要となる。すなわち、電力増幅回路に高い線形性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−37454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電力増幅回路では、増幅素子の非線形性により、電力増幅回路の線形性に影響が生じることがある。例えば、増幅素子であるトランジスタの制御電極に印加されるバイアス電圧を一定に制御する場合、電力増幅回路の線形性を保つためには、トランジスタのベース電流IBEも一定であることが理想的である。しかしながら、実際には、トランジスタの非線形性により、出力電力のレベルが高い領域、すなわち電力増幅回路への入力信号のレベルが高い領域において、トランジスタのベース電流IBEが増加してしまうことがある。そして、トランジスタのベース電流IBEが増加すると、電力増幅回路のゲインが上昇し、線形性の低下を招くこととなる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電力増幅回路における線形性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電力増幅回路は、入力信号及びバイアス電圧のレベルに応じたゲインで入力信号を増幅して出力する第1の増幅素子と、第1の増幅素子と同等のゲイン特性を有し、入力信号を増幅して出力する第2の増幅素子と、第2の増幅素子の出力信号のレベルの上昇に伴って低下するバイアス電圧を生成する可変バイアス電圧生成回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力増幅回路における線形性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態である電力増幅回路を含む送信ユニットの構成例を示す図である。
図2】電力増幅回路の構成の一例を示す図である。
図3図2に示した電力増幅回路の回路構成の一例を示す図である。
図4A】送信電力のレベルとバイアス電流(ベース電流)IBE4との関係の一例を示す図である。
図4B】送信電力のレベルと模擬用のパワーアンプのゲインとの関係の一例を示す図である。
図4C】送信電力のレベルとバイアス電圧VBIAS2,VBIAS3との関係の一例を示す図である。
図4D】送信電力のレベルとバイアス電流(ベース電流)IBE2,IBE3との関係の一例を示す図である。
図4E】送信電力のレベルと電力増幅用のパワーアンプのゲインとの関係の一例を示す図である。
図5】全段のパワーアンプのためのバイアス電圧を制御する場合の電力増幅回路30の構成例を示す図である。
図6図5に示した電力増幅回路の回路構成の一例を示す図である。
図7】電力増幅回路を含む電力増幅モジュールの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である電力増幅回路を含む送信ユニットの構成例を示す図である。送信ユニット10は、例えば、携帯電話等の移動体通信機において、音声やデータなどの各種信号を基地局へ送信するために用いられる。なお、移動体通信機は基地局から信号を受信するための受信ユニットも備えるが、ここでは説明を省略する。
【0010】
図1に示すように、送信ユニット10は、変調部20、送信電力制御部25、電力増幅回路30、フロントエンド部35、及びアンテナ40を含んで構成される。
【0011】
変調部20は、HSUPAやLTE等の変調方式に基づいて入力信号を変調し、無線送信を行うための高周波(RF)信号を生成する。RF信号は、例えば、数百MHzから数GHz程度である。
【0012】
送信電力制御部25は、送信電力制御信号に基づいて、RF信号の電力を調整して出力する。送信電力制御信号は、例えば、基地局から送信される適応電力制御(APC)信号に基づいて生成される。例えば、基地局は、移動体通信機からの受信信号を測定することにより、移動体通信機における送信電力を適切なレベルに調整するためのコマンドとして、適応電力制御信号を移動体通信機に送信することができる。
【0013】
電力増幅回路30は、送信電力制御部25から出力されるRF信号(RFIN)の電力を、基地局に送信するために必要なレベルまで増幅し、増幅信号(RFOUT)を出力する。
【0014】
フロントエンド部35は、増幅信号に対するフィルタリングや、基地局から受信する受信信号とのスイッチングなどを行う。フロントエンド部35から出力される増幅信号は、アンテナ40を介して基地局に送信される。
【0015】
図2は、電力増幅回路30の構成の一例を示す図である。図2に示すように、電力増幅回路30は、パワーアンプ100,102,104,106、整合回路(Matching Network)110,112,114,116、バイアス電圧生成回路120,122、可変バイアス電圧生成回路124、バイアス電流生成回路130,132,134,136、及びコンデンサ140を含んでいる。
【0016】
パワーアンプ100,102,104は、三段の電力増幅回路を構成しており、入力されるRF信号(RFIN)を増幅し、増幅信号(RFOUT)を出力する。ここで、パワーアンプ100,102,104のゲインは、入力信号及びバイアス電圧のレベルに応じたものとなる。例えば、バイアス電圧が固定レベルである場合において、入力信号のレベルの上昇に伴ってバイアス電流(ベース電流IBE)が増加すると、パワーアンプ100,102,104のゲインは増大することとなる。また例えば、バイアス電圧が低下すると、バイアス電流(ベース電流IBE)が減少し、パワーアンプ100,102,104のゲインは減少することとなる。なお、パワーアンプ100,102,104の入出力には、インピーダンスマッチングを行うための整合回路110,112,114,116が設けられている。
【0017】
バイアス電圧生成回路120は、所定レベルの電圧VBIASに基づいて、パワーアンプ100のための固定バイアス電圧VBIAS1を生成する。そして、バイアス電流生成回路130は、バイアス電圧VBIAS1に基づいて、パワーアンプ100のバイアス電流(ベース電流)IBE1を生成する。
【0018】
可変バイアス電圧生成回路124は、パワーアンプ102,104のための可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3を生成する。具体的には、可変バイアス電圧生成回路124は、パワーアンプ106の出力信号のレベルの上昇に伴って低下する可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3を生成する。なお、可変バイアス電圧生成回路124は、フィルタ回路150及び電圧調整回路152を含んでいる。フィルタ回路150は、パワーアンプ106の出力信号に含まれる交流成分(基本波成分及び高調波成分)を減衰させる。そして、電圧調整回路152は、フィルタ回路150の出力信号のレベルに応じた可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3を生成する。
【0019】
バイアス電流生成回路132は、バイアス電圧VBIAS2に基づいて、パワーアンプ102のバイアス電流(ベース電流)IBE2を生成する。同様に、バイアス電流生成回路134は、バイアス電圧VBIAS3に基づいて、パワーアンプ104のバイアス電流(ベース電流)IBE3を生成する。
【0020】
パワーアンプ106は、パワーアンプ100,102,104において電力増幅を行うトランジスタ(増幅素子)と同等のゲイン特性でサイズの小さいトランジスタを含んで構成される。パワーアンプ106は、整合回路110及びコンデンサ140を介して入力される信号の増幅を行う。つまり、パワーアンプ106は、パワーアンプ100,102,104の動作を模擬する回路である。なお、パワーアンプ106のサイズは、パワーアンプ100,102,104と同程度であってもよいが、小さいサイズとすることにより、チップサイズや消費電力の増大を抑制することができる。
【0021】
バイアス電圧生成回路122は、所定レベルの電圧VBIASに基づいて、パワーアンプ106のための固定バイアス電圧VBIAS4を生成する。そして、バイアス電流生成回路136は、バイアス電圧VBIAS4に基づいて、パワーアンプ106のバイアス電流(ベース電流)IBE4を生成する。
【0022】
図3は、図2に示した電力増幅回路30の回路構成の一例を示す図である。図3に示す構成では、パワーアンプ100は、トランジスタ200、コイル210、及びコンデンサ220を含んでいる。トランジスタ200は、例えば、ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)や電界効果トランジスタ(FET)等の増幅素子である。以後、本実施形態で用いられるトランジスタはHBTであることとして説明するが、FET等の他のトランジスタを用いることも可能である。パワーアンプ102も同様に、トランジスタ202、コイル212、及びコンデンサ222を含んでいる。また、パワーアンプ104は、トランジスタ204、コイル214、及びコンデンサ224を含んでいる。
【0023】
バイアス電圧生成回路120は、ダイオード接続されたトランジスタ230,232、及び抵抗240を含んでいる。トランジスタ230,232には、電圧VBIASが抵抗240を介して印加されている。そして、バイアス電圧生成回路120は、抵抗240とトランジスタ230のコレクタとの間に生じる、固定レベルのバイアス電圧VBIAS1を、バイアス電流生成回路130に出力する。
【0024】
バイアス電流生成回路130は、トランジスタ250及びコンデンサ260を含んでいる。バイアス電流生成回路130は、トランジスタ250のベースに印加されるバイアス電圧VBIAS1に基づいてバイアス電流(ベース電流)IBE1を生成し、該バイアス電流を、抵抗300を介してトランジスタ200のベースに供給する。
【0025】
バイアス電圧生成回路122は、ダイオード接続されたトランジスタ234,236、及び抵抗242を含んでいる。トランジスタ234,236には、電圧VBIASが抵抗242を介して印加されている。そして、バイアス電圧生成回路122は、抵抗242とトランジスタ234のコレクタとの間に生じる、固定レベルのバイアス電圧VBIAS4を、バイアス電流生成回路136に出力する。
【0026】
バイアス電流生成回路136は、トランジスタ256及びコンデンサ266を含んでいる。バイアス電流生成回路136は、トランジスタ256のベースに印加されるバイアス電圧VBIAS4に基づいてバイアス電流(ベース電流)IBE4を生成し、該バイアス電流を、抵抗306を介してトランジスタ206のベースに供給する。
【0027】
パワーアンプ106は、トランジスタ206を含んでいる。トランジスタ206は、トランジスタ200,202,204と同等のゲイン特性でサイズの小さい増幅素子である。トランジスタ206のベースには、整合回路110から出力される信号がコンデンサ140を介して入力されている。トランジスタ206のコレクタには、バッテリ電圧VBATTが抵抗270を介して印加され、トランジスタ206のエミッタは接地されている。トランジスタ206は、ベースに入力される信号を増幅した出力信号として、コレクタ電流ICE4を生成する。
【0028】
なお、トランジスタのサイズとは、HBTなどのバイポーラ接続型トランジスタではエミッタ電極の面積であり、MOSFETなどのFETではゲート電極の電極幅である。また、パワーアンプにおいては出力段に近いトランジスタほどサイズを大きく設計するが、トランジスタ206のサイズを多段接続されたパワーアンプを構成するトランジスタ200,202,204の中で最も小さいトランジスタ200よりも小さくすることで、電力増幅回路30を低消費電力化および小型化することができる。
【0029】
可変バイアス電圧生成回路124は、抵抗270、フィルタ回路150、及び電圧調整回路152を含んでいる。抵抗270は、パワーアンプ106の出力信号(コレクタ電流ICE4)のレベルの上昇に伴って低下する電圧VOUT4を生成する。
【0030】
フィルタ回路150は、抵抗280及びコンデンサ282を含むローパスフィルタを構成している。ローパスフィルタのカットオフ周波数は、例えば、150MHz程度であり、フィルタ回路150は、パワーアンプ106の出力信号に含まれる交流成分(基本波成分及び高調波成分)、すなわち、電圧VOUT4に含まれる交流成分を減衰させることができる。なお、ローパスフィルタの構成は、抵抗280及びコンデンサ282に限られず、例えば、抵抗280の代わりにコイルを用いることとしてもよい。また、フィルタ回路150は、ローパスフィルタに限られず、帯域除去フィルタ等であってもよい。
【0031】
電圧調整回路152は、抵抗290,292を含んでいる。電圧調整回路152は、フィルタ回路150の出力信号からバイアス電圧VBIAS2,VBIAS3を生成し、それぞれ、トランジスタ252,254のベースに印加する。なお、抵抗290,292の抵抗値は、パワーアンプ102,104のゲインに応じて任意に定めることができる。
【0032】
バイアス電流生成回路132は、トランジスタ252及びコンデンサ262を含んでいる。バイアス電流生成回路132は、トランジスタ252のベースに印加される可変バイアス電圧VBIAS2に基づいてバイアス電流(ベース電流)IBE2を生成し、該バイアス電流を、抵抗302を介してトランジスタ202のベースに供給する。
【0033】
バイアス電流生成回路134は、トランジスタ254及びコンデンサ264を含んでいる。バイアス電流生成回路134は、トランジスタ254のベースに印加される可変バイアス電圧VBIAS3に基づいてバイアス電流(ベース電流)IBE3を生成し、該バイアス電流を、抵抗304を介してトランジスタ204のベースに供給する。
【0034】
図3に示した構成に基づいて、電力増幅回路30の動作について説明する。パワーアンプ100,102,104は、三段の増幅回路を構成しており、入力信号RFINを増幅し、増幅信号RFOUTを出力する。この入力信号RFINは、整合回路110及びコンデンサ140を介してパワーアンプ106にも入力されている。パワーアンプ106を構成するトランジスタ206は、ベースに入力される信号を増幅した出力信号(コレクタ電流ICE4)を生成する。
【0035】
トランジスタ206は、トランジスタ200,202,204と同様に、送信電力のレベル(入力信号RFINのレベル)が高い領域において非線形なゲイン特性を有する。そのため、図4Aに示すように、送信電力のレベル(入力信号RFINのレベル)が高い領域において、バイアス電流(ベース電流)IBE4が上昇する。これに伴い、図4Bに示すように、パワーアンプ106のゲインが増大し、パワーアンプ106の出力信号(コレクタ電流ICE4)のレベルが上昇することとなる。
【0036】
可変バイアス電圧生成回路124は、抵抗270によって、パワーアンプ106の出力信号を電圧VOUT4に変換する。なお、電圧VOUT4は、出力信号のレベルの上昇に伴って低下する。フィルタ回路150は、電圧VOUT4から交流成分(基本波成分及び高調波成分)を減衰させて直流成分を抽出する。そして、電圧調整回路152は、抵抗290,292により、フィルタ回路150の出力から可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3を生成し、バイアス電流生成回路132,134に供給する。なお、可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3は、パワーアンプ106の出力信号(コレクタ電流ICE4)のレベルの上昇に伴って低下する電圧となる。
【0037】
図4Cは、送信電力のレベルとバイアス電圧VBIAS2,VBIAS3との関係の一例を示す図である。図4Dは、送信電力のレベルとバイアス電流(ベース電流)IBE2,IBE3との関係の一例を示す図である。また、図4Eは、送信電力のレベルと電力増幅用のパワーアンプのゲインとの関係の一例を示す図である。図4C図4Eにおいて、実線は、バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3が可変である場合を示し、破線は、バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3が固定である場合を示している。
【0038】
図4Cに示すように、可変バイアス電圧生成回路124は、送信電力のレベル(入力信号RFINのレベル)が高い領域において、可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3を低くすることができる。そのため、図4Dに示すように、送信電力のレベル(入力信号RFINのレベル)が高い領域において、パワーアンプ102,104のためのバイアス電流(ベース電流)IBE2,IBE3の上昇を抑制することができる。そして、バイアス電流(ベース電流)IBE2,IBE3の上昇が抑制されることにより、図4Eに示すように、送信電力のレベル(入力信号RFINのレベル)が高い領域において、パワーアンプ102,104のゲインが増大することを抑制することができる。これにより、電力増幅回路30における線形性を高めることが可能となる。
【0039】
なお、図2及び図3では、電力増幅回路30の一例として、三段のパワーアンプによる構成を示したが、パワーアンプの段数はこれに限られず、一段や二段であってもよいし、四段以上であってもよい。また、図2及び図3で示した構成では、二段目及び三段目のパワーアンプ102,104のためのバイアス電圧VBIAS2,VBIAS3を制御することとしたが、制御対象のバイアス電圧はこれに限られない。例えば、パワーアンプ104のためのバイアス電圧VBIAS3のみを制御することとしてもよいし、全段のパワーアンプ100,102,104のためのバイアス電圧VBIAS1,VBIAS2,VBIAS3を制御することとしてもよい。
【0040】
図5は、全段のパワーアンプのためのバイアス電圧を制御する場合の電力増幅回路30の構成例を示す図である。図2に示した構成との違いは、バイアス電圧生成回路120の代わりに、可変バイアス電圧生成回路400の電圧調整回路410が、パワーアンプ100のための可変バイアス電圧VBIAS1を生成する点である。なお、電圧調整回路410は、図2の構成と同様に、パワーアンプ102,104のための可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3も生成する。
【0041】
図6は、図5に示した電力増幅回路30の回路構成の一例を示す図である。図3に示した構成との違いは、電圧調整回路410が、フィルタ回路150と抵抗290,292の間に、抵抗420を備える点である。そして、電圧調整回路410は、抵抗420のフィルタ回路150側の端子に生じる電圧を、可変バイアス電圧VBIAS1として、バイアス電流生成回路130に供給する。したがって、可変バイアス電圧VBIAS1は、可変バイアス電圧VBIAS2,VBIAS3と同様に、送信電力のレベル(入力信号RFINのレベル)が高い領域において低くなるように制御される。
【0042】
図7は、電力増幅回路30を含む電力増幅モジュール(複合モジュール)の構成の一例を示す図である。電力増幅モジュール500は、多層基板510を用いて構成されている。多層基板510の主面上には、電力増幅回路30を集積化した半導体集積回路520が実装されている。なお、電力増幅回路30を構成する全ての素子を集積化する必要はなく、一部の素子は半導体集積回路520の外部に設けてもよい。例えば、フィルタ回路150を構成するコンデンサ282は、サイズが大きくなることがあるため、多層基板510の主面上にチップコンデンサ530として形成してもよい。また、多層基板510の隣接する層間の電極対540により形成される層間容量を、コンデンサ282として用いてもよい。
【0043】
以上、本実施形態の電力増幅回路及び電力増幅モジュールについて説明した。本実施形態によれば、電力増幅用のパワーアンプ(増幅用パワーアンプ)の動作を模擬するパワーアンプ(模擬パワーアンプ)の出力信号のレベルの上昇に伴って、増幅用パワーアンプのためのバイアス電圧を低下させることができる。つまり、増幅用パワーアンプに固定バイアス電圧を供給した場合にゲインが増大する領域において、バイアス電圧を低下させることによってゲインの増大を抑制することができる。これにより、電力増幅回路における線形性を高めることが可能となる。
【0044】
そして、本実施形態の電力増幅回路によれば、模擬パワーアンプのサイズを増幅用パワーアンプのサイズより小さくすることにより、チップサイズや消費電力の増大を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態の電力増幅回路によれば、電力増幅回路が複数段のパワーアンプによって構成される場合において、最終段のパワーアンプや、最終段に近いパワーアンプのためのバイアス電圧を制御することにより、電力増幅回路全体でのゲインの変動を効果的に抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の電力増幅回路によれば、電力増幅回路が複数段のパワーアンプによって構成される場合において、各パワーアンプのためのバイアス電圧のレベルを、各パワーアンプのゲインに応じたレベルとすることができる。
【0047】
また、本実施形態の電力増幅回路によれば、フィルタ回路によって模擬パワーアンプの出力信号の交流成分を減衰させることにより、交流成分によるバイアス電圧の変動を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の電力増幅モジュールによれば、電力増幅回路におけるフィルタを構成するコンデンサを、電力増幅用のパワーアンプの半導体集積回路とは別に形成することができる。例えば、半導体集積回路を多層基板上に実装し、多層基板上に実装されるチップコンデンサや、多層基板の層間容量を、フィルタを構成するコンデンサとして用いることができる。これにより、半導体集積回路のサイズの増大を抑制することができる。
【0049】
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 送信ユニット
20 変調部
25 送信電力制御部
30 電力増幅回路
35 フロントエンド部
40 アンテナ
100,102,104,106 パワーアンプ
110,112,114,116 整合回路
120,122 バイアス電圧生成回路
124,400 可変バイアス電圧生成回路
130,132,134,136 バイアス電流生成回路
140 コンデンサ
150 フィルタ回路
152,410 電圧調整回路
200,202,204,206 トランジスタ
210,212,214 コイル
220,222,224 コンデンサ
230,232,234,236 トランジスタ
240,242 抵抗
250,252,254,256 トランジスタ
260,262,264,266,282 コンデンサ
270,280,290,292,300,302,304,306,420 抵抗
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7