(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のDFBレーザ素子の製造方法では、EB露光により回折格子が基板の主面に形成されるので、基板の主面内において回折格子のデューティ比のばらつきが大きくなる場合がある。このため、ウエハ上の1ラインにおいて、回折格子のデューティ比を測定した場合、測定されたデューティ比がウエハ上の回折格子のデューティ比に対する平均的な値から外れていることがある。したがって、測定されたデューティ比に基づいてDFBレーザ素子を作製すると、所望の結合係数κが得られないことがある。結合係数κは、閾値電流およびスロープ効率などのレーザ特性に影響を及ぼすので、結合係数κの変動が生じることにより、レーザ特性に悪影響を与えることがある。
【0005】
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、回折格子構造のデューティ比のばらつきに起因するレーザ特性の悪化を低減する半導体レーザ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体レーザ素子の製造方法は、(a)第1方向に沿って交互に配列された凸部と凹部とを有する回折格子構造を基板の主面上に形成する工程と、(b)回折格子構造を形成した後、主面を撮像し、撮像された画像データに基づいて凸部に対応する第1領域と凹部に対応する第2領域との面積比を示す値を算出する工程と、(c)予め定められた結合係数となるように面積比を示す値に基づいてスペーサ層の厚さを決定する工程と、(d)回折格子構造を覆うようにスペーサ層を成長する工程と、(e)スペーサ層上に活性層を成長する工程と、を備え、凸部および凹部は、第1方向と交差する第2方向に沿って延在することを特徴とする。
【0007】
このような半導体レーザ素子の製造方法によれば、回折格子構造が形成された主面を撮像した画像データにおける第1領域と第2領域との面積比は、回折格子構造のデューティ比と関連付けられる。このため、第1方向に沿って測定した回折格子構造のデューティ比に代えて、第1領域と第2領域との面積比を示す値に基づいてスペーサ層の厚さを決定することができる。これにより、回折格子構造のデューティ比のばらつきに起因するレーザ特性の悪化を低減することが可能となる。
【0008】
面積比を示す値を算出する工程では、走査型電子顕微鏡を用いて主面を撮像することが好ましい。また、面積比を示す値を算出する工程では、画像データにおいて、第1領域と第2領域との境界を決定し、境界に基づいて面積比を示す値を算出することが好ましい。走査型電子顕微鏡を用いて撮像された画像では、第1領域と第2領域とが交互に並んでいる。このため、第1領域と第2領域との境界を決定することによって、各領域を識別できる。そして、回折格子構造の第1方向に沿って測定したデューティ比に代えて、境界によって識別した第1領域と第2領域との面積比を示す値に基づいてスペーサ層の厚さを決定することにより、回折格子構造のデューティ比のばらつきに起因するレーザ特性の悪化を低減することが可能となる。
【0009】
回折格子構造を形成する工程では、電子線露光法により回折格子構造を主面に形成することが好ましい。電子線露光法により形成された回折格子構造は、主面内においてデューティ比のばらつきが大きい。このため、第1方向に沿って測定した回折格子構造のデューティ比に代えて、第1領域と第2領域との面積比を示す値に基づいてスペーサ層の厚さを決定することにより、回折格子構造のデューティ比のばらつきに起因するレーザ特性の悪化を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回折格子構造のデューティ比のばらつきに起因するレーザ特性の悪化を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、可能な場合には、同一又は相当要素には同一の符号を付す。
【0013】
図1は、本実施形態に係る半導体レーザ素子の構造を概略的に示す図である。半導体レーザ素子1は、例えばDFBレーザ素子であって、例えば1.31μmの波長λで発振する。この半導体レーザ素子1の幅は300μm程度で、素子長Lは300μm程度である。
図1に示されるように、半導体レーザ素子1は、半導体基板11(基板)と、回折格子層12と、スペーサ層13と、活性層14と、クラッド層15と、コンタクト層16と、上部電極21と、下部電極22とを備える。
【0014】
半導体基板11は、例えばn型のInPにより構成され、その厚さは例えば150μm程度である。回折格子層12は、例えばn型のInGaAsPにより構成され、半導体基板11の主面11aに設けられている。回折格子層12の厚さは、例えば50nm程度である。この回折格子層12では、半導体基板11の主面11aの法線軸NVに直交する第1方向(以下、「長さ方向」という。)に沿って複数の凹部12aと複数の凸部12bとが、交互に設けられ、回折格子Gを成している。長さ方向に沿って凹部12a(又は凸部12b)が設けられる間隔であるピッチPは、発振波長λに応じて決定され、例えば200〜250nm程度である。複数の凹部12aのそれぞれは、法線軸NVおよび長さ方向で規定される面に交差する第2方向(以下、「幅方向」という。)に沿って延びている。この凹部12aの深さD(回折格子Gの深さ)は、例えば50nm程度である。また、複数の凸部12bのそれぞれは、幅方向に沿って延びている。
【0015】
スペーサ層13は、例えばn型のInPにより構成され、複数の凹部12aを埋め、回折格子G全体を覆うように主面11aに設けられている。このスペーサ層13の厚さdsは、回折格子Gのデューティ比Rと所望の結合係数κ(予め定められた結合係数κ)とに応じて決定され、例えば170nm程度である。ここで、回折格子Gのデューティ比Rとは、回折格子Gにおける凸部12bと凹部12aとの割合(凸部12bと凹部12aとの比)を意味する。活性層14は、例えばMQW(Multi Quantum Well:多重量子井戸)構造を有する活性層であって、スペーサ層13上に設けられている。活性層14の厚さは例えば150nm程度である。クラッド層15は、例えばp型InPにより構成され、活性層14上に設けられている。このクラッド層15の厚さは例えば2000nm程度である。
【0016】
コンタクト層16は、例えばp型のInGaAsにより構成され、クラッド層15上に設けられている。このコンタクト層16の厚さは、300nm程度である。上部電極21は、例えばTiPtおよびAu等の金属により構成され、コンタクト層16上に設けられている。下部電極22は、例えばAuGeおよびAu等の金属により構成され、半導体基板11の裏面11b上に設けられている。
【0017】
次に、
図2〜
図5を参照して、半導体レーザ素子1の製造方法について説明する。
図2は、半導体レーザ素子1の製造方法を示すフローチャートである。
図3は、SEM写真の一例を示す図である。
図4は、結合係数κを一定とした場合の回折格子Gのデューティ比Rとスペーサ層13の厚さdsとの関係を示す図である。
図5は、κ=70cm
−1とするためのスペーサ層13の厚さdsの一例を示す図である。
【0018】
図2に示されるように、まず、半導体基板11の主面11aに回折格子Gを形成する(回折格子形成工程S01)。具体的に説明すると、主面11aにInGaAsPからなる回折格子層12を形成する。さらに、回折格子層12上に不図示のレジストを塗布し、EB露光法(電子線露光法)によりレジストにパターンを形成する。このパターンは、凹部12aに対応する領域に設けられる。すなわち、パターンは、主面11aの長さ方向に沿ってピッチPで設けられ、各パターンは幅方向に沿って延在するように設けられる。そして、パターンが形成されたレジストをマスクとして、ドライエッチング又はウェットエッチングを行い、回折格子層12に凹部12aを形成する。その後、回折格子層12上のレジストを除去する。
【0019】
回折格子Gを形成後、回折格子GのピッチPを測定する(ピッチ測定工程S02)。EB露光により形成された回折格子Gは、本番ウエハに30μm(w)×300μm(L)程度の範囲に規則的に配列されている。このため、回折格子Gが形成されていない部分の影響をうけ、光学的な測定によりピッチPおよび回折効率を求めることは困難である。したがって、ピッチPの測定については、ダミーウエハに回折角が測定可能なサイズの回折格子を形成して、この回折角からピッチPを求める。また、回折格子Gの深さDを測定する(深さ測定工程S03)。例えば、AFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)により、回折格子Gの深さDを測定する。なお、ピッチ測定工程S02において測定されたピッチPは、発振波長λとなるように、EB露光法によるパターン描画のプログラムを補正するために使用される。また、深さ測定工程S03において測定された深さDは、後述のスペーサ層形成工程S06において、凹部12aを埋め戻す(平坦化する)ためのスペーサ層13の量を決定するために使用される。
【0020】
そして、回折格子Gのデューティ比Rを測定する(デューティ比測定工程S04)。このデューティ比測定工程S04では、回折格子Gが形成された半導体基板11(本番ウエハ)そのものを用い、回折格子Gのデューティ比RをSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)を用いて測定する。例えば、SEMを用いて、回折格子Gが形成された主面11aのうち所定の範囲(例えば、1.2μm×1.0μm程度の範囲)を撮像する。この撮像されたSEM写真(画像データ)をコンピュータ等を用いて解析し、SEM写真において凸部12bに対応する第1領域と凹部12aに対応する第2領域とを識別する。なお、撮像範囲および撮像箇所は、主面11a内のデューティ比ばらつきを考慮して決められる。例えば、主面11aの中心付近について1箇所撮像してもよいし、ばらつきが大きいと予想される場合は、主面11aの複数箇所について撮像してもよい。次に、コンピュータ等により、第1領域と第2領域との面積比を算出し、算出された面積比を回折格子Gのデューティ比Rとみなす。
【0021】
図3を用いて、デューティ比測定工程S04を具体的に説明する。
図3に示されたSEM写真30は、回折格子Gが形成された後、主面11aの所定の範囲を撮像して得られた画像データである。このSEM写真30では、第1領域31と第2領域32とが境界B(B1,B2,B3,・・・)を介して交互に配列されている。この第1領域31は、凸部12bに対応する領域である。第2領域32は、凹部12aに対応する領域である。グレースケール写真においては、境界Bの輝度が第1領域31の輝度および第2領域32の輝度よりも大きくなる。このため、SEM写真30において、配列方向に沿ったラインごとに、輝度の極大点を複数箇所で検出し、各ラインにおいて検出された輝度の極大点を、配列方向と直交する方向に沿って結ぶことによって第1領域31と第2領域32との境界Bを決定する。
【0022】
次に、SEM写真30における第1領域31と第2領域32との面積比を算出する。まず、SEM写真30のうち任意の周期分の画像データを取り出す。すなわち、第1領域31の数と第2領域32の数が等しくなるように、画像データを取り出す。例えば、境界B1と境界B11とに挟まれた領域(5周期分)の画像データを取り出す。そして、各境界Bによって第1領域31と第2領域32とを識別し、第1領域31の面積の合計と第2領域32の面積の合計とを算出する。この例では、第1領域31の面積の合計S1は、境界B1と境界B2とに挟まれた第1領域31の面積と、境界B3と境界B4とに挟まれた第1領域31の面積と、境界B5と境界B6とに挟まれた第1領域31の面積と、境界B7と境界B8とに挟まれた第1領域31の面積と、境界B9と境界B10とに挟まれた第1領域31の面積と、を合計することにより算出される。また、第2領域32の面積の合計S2は、境界B2と境界B3とに挟まれた第2領域32の面積と、境界B4と境界B5とに挟まれた第2領域32の面積と、境界B6と境界B7とに挟まれた第2領域32の面積と、境界B8と境界B9とに挟まれた第2領域32の面積と、境界B10と境界B11とに挟まれた第2領域32の面積と、を合計することにより算出される。このようにして算出された合計S1と合計S2との比S1:S2を、回折格子Gのデューティ比Rとみなす。
【0023】
なお、SEM写真30内の第1領域31の数と第2領域32の数は、撮像範囲および撮像箇所などの撮像条件に応じて異なる。このため、SEM写真30内の第1領域31の面積の合計S1と、SEM写真30内の第2領域32の面積の合計S2とに基づいて、回折格子Gのデューティ比Rを算出する場合、第1領域31の面積の合計S1および第2領域32の面積の合計S2を補正することが好ましい。例えば、SEM写真30内の第1領域31の数に対する第2領域32の数の割合を第1領域31の面積の合計S1に掛けて補正し、補正後の第1領域の面積の合計Sa1と第2領域の面積の合計S2との比Sa1:S2を回折格子Gのデューティ比Rとしてもよい。
【0024】
続いて、デューティ比測定工程S04において測定したデューティ比Rに基づいて、スペーサ層13の厚さdsを決定する(スペーサ層厚さ決定工程S05)。スペーサ層厚さ決定工程S05では、デューティ比Rに基づいて、所望の結合係数κとなるようにスペーサ層13の厚さdsを決定する。
図4に示されるように、結合係数κを一定とした場合、回折格子Gのデューティ比Rとスペーサ層13の厚さdsとは所定の関係を有する。ここで、グラフC
64は、結合係数κ=64cm
−1とした場合の回折格子Gのデューティ比Rとスペーサ層13の厚さdsとの関係を示すグラフである。グラフC
70は、結合係数κ=70cm
−1とした場合の回折格子Gのデューティ比Rとスペーサ層13の厚さdsとの関係を示すグラフである。このように、結合係数κを一定とするためのスペーサ層13の厚さdsは、デューティ比Rが0.50の場合に最大となり、デューティ比Rが0.50から減少又は増加するにしたがって小さくする必要がある。また、同じデューティ比Rでは、目的とする結合係数κが大きいほどスペーサ層13の厚さdsは小さくする必要がある。
【0025】
結合係数κを一定とするためのスペーサ層13の厚さdsは、
図4に示されるように、回折格子Gのデューティ比Rに対して連続的に変化するように設定してもよいが、
図5に示されるように、回折格子Gのデューティ比Rの範囲ごとに段階的に設定されてもよい。
図5の例では、結合係数κ=70cm
−1とするために、回折格子Gのデューティ比Rが0.30以上0.35未満の場合、スペーサ層13の厚さdsは160nmに設定する。また、回折格子Gのデューティ比Rが0.35以上0.40未満の場合、スペーサ層13の厚さdsは171nmに設定する。また、回折格子Gのデューティ比Rが0.40以上0.45未満の場合、スペーサ層13の厚さdsは182nmに設定する。また、回折格子Gのデューティ比Rが0.45以上0.50未満の場合、スペーサ層13の厚さdsは188nmに設定する。
【0026】
そして、スペーサ層厚さ決定工程S05において決定された厚さdsでスペーサ層13を主面11a上に形成する(スペーサ層形成工程S06)。このスペーサ層13は、凹部12aを埋め、凸部12bを覆うように形成される。スペーサ層形成工程S06では、スペーサ層厚さ決定工程S05において決定された厚さdsが同一のウエハを集め、複数のウエハに対してスペーサ層13の成長を行うようにしてもよい。その後、スペーサ層13上に活性層14、クラッド層15およびコンタクト層16を、その順にエピタキシャル成長する(エピタキシャル成長工程S07)。なお、図示されていないが、コンタクト層16上には、さらにp側電極が形成され、半導体基板11の裏面には、n側電極が形成される。以上のようにして、半導体レーザ素子1が作製される。なお、ピッチ測定工程S02、深さ測定工程S03およびデューティ比測定工程S04は、いずれの順に行ってもよく、また2以上の工程を並行して行ってもよい。
【0027】
次に、
図6を参照して、半導体レーザ素子1の製造方法の作用効果について説明する。
図6は、AFMにより測定したデューティ比R
AFMとSEMにより測定したデューティ比R
SEMとの関係を示す図である。すなわち、
図6に示されるグラフの横軸はAFMにより測定した回折格子Gのデューティ比R
AFMを示し、縦軸はSEMにより測定した回折格子Gのデューティ比R
SEMを示す。また、各プロットは、1つのウエハに対して、AFMを用いて回折格子Gの長さ方向に沿って1ラインだけ測定することによって得られたデューティ比R
AFMと、SEMを用いて回折格子Gの所定の範囲を撮像することによって得られたデューティ比R
SEMと、を座標とする。また、図中に描かれた右上がりの直線は、デューティ比R
AFMとデューティ比R
SEMとが等しい座標を結ぶ線であって、この直線から離れるほど各測定方法により得られたデューティ比のずれが大きいことを表している。
【0028】
図示されるように、デューティ比R
AFMに対して、デューティ比R
SEMが±0.1以上違うものがある。SEMによる測定の方が精度が高いと考えられることから、AFMでの1点(1ライン)測定では、デューティ比を精度良く測定できていないことが分かる。したがって、SEM写真の面積比から回折格子Gのデューティ比Rを求めることが有効であることが分かる。
【0029】
以上のように、AFMでは、200〜250nm程度のピッチ内にあるデューティ比0.3〜0.6を正確に検出することが難しい。また、EB露光により形成した回折格子Gは、主面11a内においてデューティ比がばらついている。したがって、AFMにより長さ方向に沿って1ラインを測定しただけでは、局所的なデューティ比しか測定できないので、正確なデューティ比(ウエハの代表値)を測定できないことがある。このため、AFMにより測定したデューティ比R
AFMに基づいてスペーサ層13の厚さdsを設定した場合、所望の規格化結合係数κLが得られず、モードホップが多発したり、閾値電流およびスロープ効率などのレーザ特性に悪影響を与えることがある。このように、AFMにより測定したデューティ比R
AFMに基づいてスペーサ層13の厚さdsを設定することは、歩留まりを低下させる原因となっている。
【0030】
一方、SEMによる回折格子Gのデューティ比の測定では、回折格子Gが形成された主面11aのうち一定の範囲を撮像し、撮像された画像データにおいて凹部12aに対応する領域と凸部12bに対応する領域との面積比を算出する。この算出された面積比を回折格子Gのデューティ比Rとみなすことによって、長さ方向に沿って1ラインを測定して得られたデューティ比に代えて、凹部12aに対応する領域と凸部12bに対応する領域との面積比をデューティ比Rとすることができる。したがって、デューティ比R
SEMは、デューティ比R
AFMよりも精度が高いといえる。そして、このデューティ比R
SEMに合わせてエピ厚(スペーサ層13の厚さds)を調整し、所望の規格化結合係数κLとなるようにする。このため、測定起因による回折格子Gのデューティ比Rの誤差を低減し、規格化結合係数κLの変動によりレーザ特性が変化することを抑制できる。
【0031】
規格化結合係数κLは、回折格子Gの組成、回折格子Gのデューティ比R、スペーサ層13の厚さdsおよび素子長Lにより決定される。ここで、素子長Lは一定であるから、結合係数κは、回折格子Gの組成、回折格子Gのデューティ比Rおよびスペーサ層13の厚さdsにより決定される。また、回折格子Gの組成は厳密に制御可能であるから、結合係数κは、回折格子Gのデューティ比Rとスペーサ層13の厚さdsとに基づいて決定されることになる。このため、算出されたデューティ比Rに応じてスペーサ層13の厚さdsを調整することにより、所望の結合係数κを得ることができる。その結果、所望の規格化結合係数κLからの変動を抑制することができ、規格化結合係数κLの変動によるレーザ特性の変化を抑制することが可能となる。
【0032】
回折格子のピッチ、深さおよびデューティ比を測定する場合、光学的な回折角などにより光学的に測定する方法が一般的である。光学的な測定では、深さおよびデューティ比のいずれかが変化した場合に回折効率などの1つの指標の変化として示されるので、デューティ比が変化したことを明確に捉えることは難しい。よって、深さおよびデューティ比の測定にはAFMなどを併用する。ただし、この場合、EB露光により形成した回折格子のようにウエハ面内でのデューティ比のばらつきが大きいものは、一次元的な範囲(ライン)に対する測定では評価が難しい。このため、二次元的な範囲に対するデューティ比を求めることが有効であり、SEMでの面積比によるデューティ比測定を行うことが有効である。
【0033】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【0034】
例えば、上記実施形態では、デューティ比測定工程S04において、SEM写真における第1領域と第2領域との面積比に基づいて回折格子Gのデューティ比Rを算出している。そして、スペーサ層厚さ決定工程S05において、デューティ比Rに基づいてスペーサ層13の厚さdsを決定している。これに代えて、SEM写真内の第1領域と第2領域との面積比を算出し、算出した面積比に基づいてスペーサ層13の厚さdsを決定してもよい。この場合、第1領域と第2領域との面積比とスペーサ層13の厚さdsとの対応関係をテーブル等に予め記憶しておいてもよい。この面積比とスペーサ層13の厚さdsとの対応関係は、撮像範囲および撮像箇所などの撮像条件並びに結合係数κごとに記憶されていてもよい。