(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983998
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】粉末成形装置と同装置による粉末充填方法
(51)【国際特許分類】
B30B 11/00 20060101AFI20160823BHJP
B30B 11/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
B30B11/00 F
B30B11/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-143842(P2012-143842)
(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-4620(P2014-4620A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮介
【審査官】
水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−196263(JP,A)
【文献】
特開2010−234379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/00
B30B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイプレート(6)上を摺動する給粉ボックス(13)から、成形金型のダイ(1)、
下パンチ(2)及びコアロッド(4)によって作り出されるキャビティ(5)に粉末(P
)を投入し、その粉末を前記下パンチ(2)とそれに対向させた上パンチ(3)とで加圧
して成形する粉末成形装置であって、前記コアロッド(4)の上面(4a)が、前記給粉
ボックス(13)の前進方向に向って下り傾斜の平面の斜面で形成され、さらに、キャビティ(5)に対する粉末投入時に前記コアロッド(4)がダイ(1)の上面よりも低い位置に置かれ、キャビティ(5)に対する粉末投入後にそのコアロッド(4)がダイ(1)に対して相対的に上昇するオーバーフィル動作が実行され、そのオーバーフィル動作で前記コアロッド(4)上の粉末が給粉ボックス(13)の前進方向に押し流されるように構成された粉末成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末成形装置におけるキャビティへの粉末充填方法であって、前記給粉ボックス(13)から前記キャビティ(5)に粉末(P)を投入するときに、前記コアロッド(4)を、前記ダイ(1)の上面よりも下方に保持し、前記キャビティ(5)への粉末投入後にそのコアロッド(4)を前記ダイ(1)に対して粉末投入時よりも相対的に上昇させるオーバーフィル動作を実行して当該コアロッドの上にある粉末を給粉ボックス(13)の前進方向前方側に押し流すことを特徴とする粉末充填方法。
【請求項3】
前記オーバーフィル動作の実行後に前記給粉ボックス(13)を後退させ、さらに、その後に、前記下パンチ(2)を前記ダイ(1)に対して相対的に下降させるアンダーフィルを動作を実行する請求項2に記載の粉末充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧粉体を製造する粉末成形装置、詳しくは、得られる圧粉体の各部の密度差を小さくするのに有効な粉末成形装置と同装置による粉末充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結部品用の圧粉体、中でも中心に穴のある圧粉体の成形は、ダイと上下のパンチとコアロッドを組み合わせた金型を有する粉末成形装置を用いて行われる。その粉末成形装置では、ダイと下パンチとコアロッドによってその3者間に作り出されるキャビティに対してダイプレート上を摺動する給粉ボックスから粉末が投入される。
【0003】
ホッパに収納された粉末がホースを通して給粉ボックスに導入され、その粉末が給粉ボックスからキャビティに投入される。このとき、製品形状によってはキャビティの開口が局所的に狭くなることがあり、そのようなケースでは開口が局所的に狭くなっているところでキャビティに対する粉末の導入が不十分になって製品に密度差が生じることから、下記特許文献1は、その問題の解消策を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−35998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1は、製品形状に起因した密度差に対応した発明であるが、製品の密度差は、金型のキャビティの各部に対する給粉ボックスからの粉末投入時間が一定しないなどの理由によっても発生する。
【0006】
給粉ボックスは、退避点からダイプレート上を摺動してキャビティ上に移動する。そのために、キャビティの各部(退避点に近い側と遠い側)に対する給粉ボックスからの粉末の投入時間に差が生じる(給粉ボックスの前進方向前方側ほど投入時間が短い)。
【0007】
これに加えて、給粉ボックス内の粉末は同ボックスの前進方向前方にあるものから先にキャビティに投入されることから、キャビティ内粉末に対する残存粉末の重量の影響は給粉ボックス内での粉末残存量が少ない側(給粉ボックスの前進方向前方側)で小さくなる。
【0008】
これ等のことが原因で、給粉ボックスの前進方向前部側でキャビティ内粉末の充填密度が小さくなって圧粉体の成形密度がばらつく。
【0009】
この発明は、各部の成形密度が平均化された圧粉体を得るために、給粉ボックスからの粉末の投入時間差などに起因したキャビティの各部での粉末の充填密度のばらつきを抑制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明においては、ダイプレート上を摺動する給粉ボックスから、成形金型のダイ、下パンチ及びコアロッドによって作り出されるキャビティに粉末を投入し、その粉末を前記下パンチとそれに対向させた上パンチとで加圧して成形する粉末成形装置を以下の通りに構成した。
【0011】
即ち、前記コアロッドの上面(先端)を、前記給粉ボックスの前進方向に向って下り傾
斜の
平面の斜面にし、さらに、キャビティに対する粉末投入時に前記コアロッドがダイの上面よりも低い位置に置かれるようにし、キャビティに対する粉末投入後にそのコアロッドがダイに対して相対的に上昇するオーバーフィル動作を実行させ、そのオーバーフィル動作で前記コアロッド上にある粉末を給粉ボックスの前進方向に向って押し流すようにした。
【0012】
この粉末成形装置のコアロッドの上面の傾斜角や前記オーバーフィル動作のストロークは、圧粉体の密度差を補正するのに必要な粉末の量を求め、その量に応じて設定する。コアロッドの上面の傾斜角が大きいほどコアロッドの上面上に投入される粉末の量(これが補正に利用される)は多くなる。
【0013】
この粉末成形装置による金型のキャビティへの粉末充填は、前記給粉ボックスから前記キャビティに粉末を投入するときに、コアロッドをダイの上面よりも下方に保持し、キャビティへの粉末投入後にそのコアロッドをダイに対して粉末投入時よりも相対的に上昇させ、このオーバーフィル動作で当該コアロッド上にある粉末を給粉ボックスの前進方向前方側に押し流す方法で行う。この発明は、かかる粉末充填方法も併せて提供する。
【0014】
この方法による充填後に、給粉ボックスを給粉位置から退避させてキャビティ上の粉末を掻き均し、好ましくはその後にさらに、下パンチを前記ダイに対して相対的に下降させるアンダーフィル動作を実行させ、このアンダーフィル動作でコアロッドの上面に残存した粉末を滑落させて上下のパンチによる加圧成形を実施する。
【0015】
なお、コアロッドの上面上に保持された粉末には、アンダーフィル動作を実行するときに併せて振動などを加えることができる。この振動などの付与は、コアロッドの上面の傾斜角が小さいときには特に、上面上の粉末の滑落を促進するための有効な手段となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の粉末成形装置とそれを用いた粉末充填方法では、コアロッドの上面を一方向に傾斜させ、そのコアロッドを、キャビティに対する粉末投入後にダイに対して相対的に上昇させる。
【0017】
このオーバーフィル動作により、コアロッド上にある粉末が給粉ボックスの前進方向前方側に押し流され、これにより、従来粉末の充填密度が低くなっていた領域(コアロッドよりも給粉ボックスの前進方向前方側)に粉末が補われてキャビティの各部における粉末の充填密度が平均化される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の粉末成形装置の一例の要部を示す断面図
【
図2】
図1の粉末成形装置の一部を成形完了状態にして示す拡大断面図
【
図3】
図1の粉末成形装置のコアロッドの上部を示す斜視図
【
図4】(a)〜(e):この発明の粉末成形装置による粉末充填の行程図
【
図5】この発明の粉末成形装置で成形した製品の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面の
図1〜
図5に基づいて、この発明の粉末成形装置の実施の形態を説明する。
図1は、粉末成形装置の基本形態を示したものであって、ダイ1、下パンチ2、上パンチ3、及びコアロッド4からなる金型を備えている。金型のダイ1、下パンチ2、コアロッド4の3者間には、原料粉末の投入されるキャビティ5が形成される。
【0020】
図示の下パンチ2は、単一のパンチであるが、焼結部品の形状によっては、複数に分割されたパンチが用いられる。上パンチ3も同様である。
【0021】
ダイ1は、ダイプレート6に支持されている。また、下パンチ2は、ベースプレート7に支持された下パンチプレート8に固定され、上パンチ3は、プレス機の上ラム(図示せず)に駆動される上パンチプレート9に固定されている。
【0022】
さらに、プレス機の下ラム(これも図示せず)に駆動されるヨーク10上にシリンダアクチュエータ11が設けられており、コアロッド4は、そのシリンダアクチュエータのピストンロッド11aに保持されている。
【0023】
ダイプレート6は連結ロッド12を介してヨーク10につながれており、そのダイプレート6上に、給粉ボックス13が配置されている。この給粉ボックス13は、移動ガイド(図示せず)に案内されてダイプレート6上を摺動する。この給粉ボックス13が退避点からキャビティ5の直上の給粉位置に移動してその給粉ボックス13に導入された粉末がキャビティ5に投入される。
【0024】
14は、ガイドピン14aとブッシュ14bを組み合わせた摺動ガイドであって、ダイプレート6と上パンチプレート9の位置決め精度を高める目的で設けられている。
【0025】
コアロッド4は、上面4aが、給粉ボックス13の前進方向に向って下り傾斜の斜面で形成されている。その上面4aの水平面に対する傾斜角θ(
図2、
図3参照)やオーバーフィルのストロークは、圧粉体の密度差を補正するのに必要な粉末の量を求めて設定する。
【0026】
次に、このように構成された例示の粉末成形装置の動作を
図4に基づいて説明する。
図4(a)に示すように、コアロッド4は、ダイ1の上面よりも下方に保持されており、この状態で、給粉ボックス13が退避点から
図4(b)に示すように給粉位置に移動してダイ1と下パンチ2とコアロッド4との間に作り出されたキャビティ5に粉末Pが投入される。
【0027】
そしてその後に、
図4(c)に示すように、コアロッド4をダイ1に対して相対的に上昇させるオーバーフィルが実行される。このオーバーフィル動作により、コアロッド4上にある粉末Pが給粉ボックス13の前進方向前方側に押し流され、これにより、従来粉末の充填密度が低くなっていた領域(コアロッドよりも給粉ボックスの前進方向前方側)に粉末が補われる。
【0028】
コアロッド4は、上端がダイ1の上面と同じ高さ位置になったら上昇を停止し、この状態で
図4(d)に示すように、給粉ボックス13が後退して投入した粉末Pが均一に掻きならされ、キャビティ5上の余剰粉末が除去される。
【0029】
その後、
図4(e)に示すように、下パンチ2のアンダーフィルが実行される。そのアンダーフィルは、ダイ1とコアロッド4をキャビティ5内の粉末Pがコアロッドの上面4aよりも下になる位置まで上昇させて位置固定の下パンチ2をダイ1とコアロッド4に対して相対的に下降させる方法でなされる。このとき、コアロッドの上面4aの傾斜角θが十分に大きければ上面4a上に残存している粉末は自然に滑落する。
【0030】
コアロッドの上面4a上に残存した粉末は、上パンチ3との間に噛み込まれると好ましくないので、上記したアンダーフィル動作を実行して成形行程に移る前に滑落させるのがよい。コアロッドの上面4a上に残存した粉末の円滑な滑落が期待しにくいときには、アンダーフィル動作を実行するときにコアロッドを上下動させたり、コアロッドに振動を付与したりして滑落を助成すると好ましい。
【0031】
この振動の付与などは、コアロッドの上面の傾斜角が小さいときには特に、上面上の粉末の滑落を促進する効果をもたらす。
【0032】
アンダーフィル動作の実行後に、プレス機の上ラムが駆動されて上パンチ3がキャビティ5に押し込まれ、下パンチ2と上パンチ3による粉末の圧縮成形が行われる。
【0033】
なお、圧粉体の密度差を補正するのに必要な粉末の量は、製品(圧粉体)とコアロッドの断面積の比に応じて変動する。例えば、軸直角に切断した位置での圧粉体の断面積をA、コアロッドの断面積をBとして、A>Bの条件が成立するときには、A<Bの条件が成立するときよりも補正に要する粉末の量が多くなる。従って、このときには、コアロッドの上面の傾斜角θをA<Bの条件が成立するときよりも大きくする。
【実施例】
【0034】
図1に示した粉末成形装置を使用して
図5に示した含油軸受(その圧粉体)を成形した。その含油軸受は、内径d:φ18.5mm、外径D:φ24.0mm、高さH:19.0mmである。
【0035】
このケースでの前述の圧粉体の断面積Aとコアロッドの断面積Bの比は、A/B=0.68であった。
【0036】
粉末成形装置は、コアロッドの上面の傾斜角をθ=5°に設定した。また、
図4(b)、(c)でのオーバーフィル(コアロッドのダイに対する相対的上昇)のストロークは25mm、
図4(e)でのアンダーフィルのストロークは7.5mmとした。
【0037】
この条件に基づいて粉末を成形した結果、上端がフラットなコアロッドを使用して粉末投入後にオーバーフィル動作を実行しない従来方法で成形した圧粉体で生じていた密度差がこの発明の方法では、無視できるほど小さくなった。
【0038】
上述したように、この発明の粉末成形装置によれば、キャビティに粉末を投入した後に実施されるコアロッド4のオーバーフィル動作によってキャビティ内粉末の、コアロッド4よりも給粉ボックスの前進方向前方における充填密度が高められ、これにより、キャビティの各部における粉末の充填密度が平均化されて得られる成形体の各部の密度差が小さくなる。
【符号の説明】
【0039】
1 ダイ
2 下パンチ
3 上パンチ
4 コアロッド
4a 上面
5 キャビティ
6 ダイプレート
7 ベースプレート
8 下パンチプレート
9 上パンチプレート
10 ヨーク
11 シリンダアクチュエータ
11a ピストンロッド
12 連結ロッド
13 給粉ボックス
14 摺動ガイド
14a ガイドピン
14b ブッシュ
P 粉末