(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
[空調制御システムの構成例]
図1は、本発明の第1の実施形態における空調制御システムの構成例を示している。
この図に示す空調制御システムは、空調制御対象としての1つの空間100における空気調和を行うためのシステムである。この空間100は、例えば、食堂、休憩スペース、フリーアドレスオフィス、図書館の閲覧スペースなどのように比較的大きなスペースであり、人が流動的に入出し、また、その内部における人の定位置は特に定められていないような場所に相当する。
【0020】
図1に示す空間100においては、空調設備101と、センサ102と、温度センサ103と、表示装置104とが備えられる。
空間100において、空調設備101は複数が備えられる。これら複数の空調設備101は、空間100の空調を行う。また、複数の空調設備101は、空調制御装置200の制御により、それぞれ異なる空調環境が設定される複数の空調環境領域を空間100において形成し、また、空間100におけるこれらの空調環境領域の分布を変更できるように設置される。
【0021】
センサ102は、人分布状態判定部201が判定を行うにあたって利用する空間100内の所定の検出対象を検出する。以降の説明では、センサ102は、検出対象として人を検出する。空間100において、センサ102は、複数が備えられる。これら複数のセンサ102は、それぞれが異なる領域における人を検出するように設置される。
【0022】
なお、人を検出するためのセンサ102としては、例えば、赤外線などを利用した人感センサを採用することができる。あるいは、空間100の利用者にIC(Integrated Circuit)カードを携帯させたうえで、センサ102としてICカードリーダを備えてもよい。この場合には、ICカードリーダにより、人の入退出の情報が取得できる。
あるいは、施設の居住者にRFIDタグを携帯させたうえで、センサ102としてRFID(Radio Frequency IDentification)タグ対応のリーダーライターを備えてもよい。
【0023】
温度センサ103は、空間100における温度(気温)を検出する。空間100において、温度センサ103は複数が備えられる。これら複数の温度センサ103は、例えば空間100においてそれぞれが異なる領域における温度を検出するように設置される。
【0024】
なお、
図1においては、各1つの空調設備101とセンサ102と温度センサ103とが対応するように示されているが、これらの間で特に対応関係が無くともよい。したがって、空調設備101とセンサ102と温度センサ103の各数は、それぞれが異なっていてもよい。
【0025】
表示装置104は、空調制御装置200の表示制御にしたがって、空間における複数の空調環境領域ごとの状況を示す情報を表示する。
表示装置104は、例えば、空間100の入り口付近などに設置される。この入り口から入ってきた利用者は、表示装置104に表示されている情報を見ることにより、複数の空調環境領域のうちで、例えば自分の好みの状況にある空調環境領域がどれであるのかを知ることができる。そして、この利用者は、空間100に入った際に、自分の好みの状況にある空調環境領域に迷うことなく向かうことができる。
つまり、表示装置104は、空間100の利用者に、自分に適した空調環境が設定されている空調環境領域を的確に知ってもらうための役割を有する。
【0026】
[空調制御装置の構成例]
次に、同じ
図1を参照して、空調制御装置200の構成例について説明する。
空調制御装置200は、空間100における空調制御を行う。つまり、空調制御装置200は、空間100における複数の空調設備101の運転を制御する。
【0027】
そのうえで、空調制御装置200は、空間100においてそれぞれ異なる空調環境が設定される複数の空調環境領域を形成するように空調設備101を制御する。また、空調制御装置200は、複数の空調環境領域の空間100における分布について、空間100における利用者(人)の分布状況に応じて変更する。また、空調制御装置200は、このような空調制御のもとでの空間100における複数の空調環境領域ごとの状況を示す情報を表示装置104に表示させる。
【0028】
このために、空調制御装置200は、人分布状態判定部201、空調制御部202、表示情報生成部203及び表示制御部204を備える。
人分布状態判定部201は、センサ102が出力する検出情報に基づいて空間100における利用者(人)の分布状態を判定する。本実施形態において、人分布状態判定部201は、人の分布状態として、空間100において形成されている複数の空調環境領域ごとに存在する人が過密状態であるか否かについて判定する。つまり、人分布状態判定部201は、過密状態の空調環境領域の有無について判定する。
過密状態であるか否かを判定するにあたり、人分布状態判定部201は、例えば、空調環境領域の人の数あるいは人口密度が一定値以上であるか否かについて判定すればよい。
【0029】
なお、以降の説明において、人の数あるいは人口密度が一定値以上であると判定される空調環境領域については過密空調環境領域という。
また、以降において、人分布状態判定部201は、人口密度を利用して判定を行う場合を例に挙げて説明する。人口密度は、例えば空調環境領域の床面積を、その空調環境領域に存在する人の数で除算することにより求めることができる。
【0030】
空調制御部202は、空間100における複数の空調環境領域を形成するように空調設備101を制御する。この際、空調制御部202は、人分布状態判定部201により判定された人の分布状態に基づいて、空間100における空調環境領域の分布を変更するように空調設備101を制御する。
そのうえで、第1の実施形態の空調制御装置200は、人分布状態判定部201により過密空調環境領域が有ると判定された場合には、その過密空調環境領域を拡大するとともに、過密空調環境領域の各空調環境領域を縮小する。
【0031】
表示情報生成部203は、前記表示装置に表示させる表示情報として、前記空間における複数の空調環境領域ごとの状況を示す表示情報を生成する。
第1の実施形態において、表示情報生成部203は、例えば現在の空間100における複数の空調環境領域ごとの分布状態を示す情報と、現在の空間100における複数の空調環境領域ごとの設定温度を示す情報を含む表示情報を生成する。なお、ここでの設定温度とは、空調制御部202が空調制御を行うにあたって目標値と設定している空調環境領域ごとの気温である。
【0032】
表示情報生成部203は、空調制御部202による空調設備101に対する制御状況に基づいて、現在の空間100における複数の空調環境領域ごとの分布状態を示す情報を生成することができる。また、表示情報生成部203は、現在の空間100における複数の空調環境領域ごとの設定温度については、空調制御部202から取得することができる。
【0033】
表示制御部204は、表示情報生成部203により生成された表示情報を表示装置104にて表示させるための制御を実行する。
これにより、第1の実施形態においては、表示装置104において、空間100における空調環境領域の分布状態と、空調環境領域ごとの設定温度の情報が示される空調状況画像が表示される。
【0034】
[空調状況画像例]
図2は、表示装置104の表示画面104Aにおいて表示される空調状況画像の一例を示している。
表示画面104Aにおいては空間画像Pacが表示される。空間画像Pacは、空間100を平面方向から俯瞰したイメージの画像である。
この図の空間画像Pacにおいては、破線で示すように、空間100が5つの空調環境領域Aac1〜Aac5に分割された例を示している。このように、空調状況画像においては、空間100における空調環境領域Aac1〜Aac5ごとの分布状態が示される。
なお、空間画像Pacにおける空調環境領域Aac1〜Aac5は、例えば色分けなどされて表示されることが好ましい。このように色分けされることで、利用者は、空調環境領域Aac1〜Aac5の分布状態が把握しやすくなる。また、色分けに際して、例えば例えば設定温度が低いほうから高い方にかけて寒色系から暖色系に変えていくように空調環境領域Aac1〜Aac5ごとの色を設定することで、利用者は、より感覚的に空調環境領域Aac1〜Aac5の分布状態を把握しやすくなる。
【0035】
また、表示画面104Aにおいて空間画像Pacの上側には、空間画像Pacにおける空調環境領域Aac1〜Aac5ごとに対応して、温度表示領域Atm1〜Atm5がそれぞれ表示される。温度表示領域Atm1〜Atm5は、それぞれ、空調環境領域Aac1〜Aac5についての温度状態として設定温度を示す。
【0036】
この図の例では、空調環境領域Aac1〜Aac5は、空調環境領域Aac1、Aac2、Aac3、Aac4、Aac5の順で設定温度が高くなっている。この図では、空調環境領域Aac1〜Aac5の設定温度は、それぞれ、温度表示領域Atm1〜Atm5において24℃、25℃、26℃、27℃、28℃と示されているように、1℃ごとに異なるように設定した例が示されている。
なお、以降の説明において、空調環境領域Aac1〜Aac5について特に区別する必要の無い場合には、空調環境領域Aacと記載する。また、温度表示領域Atm1〜Atm5について特に区別する必要の無い場合には、温度表示領域Atmと記載する。
【0037】
前述のように、表示装置104は、空間100の入り口付近に設置されることで、空間100を利用するために利用者が空間100に入ろうとするときに、その利用者が見やすいようになっている。
そして、利用者が例えば
図2のように表示された空調状況画像を見ることによっては、現在、空間100において複数の空調環境領域がどのような状態で分布しており、また、それぞれの空調環境領域がどのような設定温度であるのかを知ることができる。
例えば、ある程度広いうえに特に定位置がないような空間を利用する際には、その空間のどのあたりに居るべきか迷うこともある。上記のように空調空間領域の分布が表示されていれば、利用者は、自分の好みの空調環境が設定されている空調空間領域を自分が居るべき場所として選ぶことができ、無駄に迷うことが無くなる。
【0038】
ただし、例えばその日の天気や空間100におけるテーブル、椅子や他の設備の配置などに応じて、或る特定の空調環境領域に利用者が集中する場合がある。そして、例えばその空調環境領域の容積に対して利用者の数が一定以上にまで増加してしまうと、その空調環境領域において許容範囲を超えるような混雑の状況が生じてしまい、利用者が窮屈さを感じる場合がある。また、利用者の増加に伴って熱負荷が増加してしまい、設定温度を維持することが難しくなったり、空調制御における使用電力が増加するという可能性もある。
【0039】
そこで、第1の実施形態の空調制御装置200は、以下のように、利用者が過密となった空調環境領域が生じた場合に、その空調環境領域を拡大する。
例えば、
図2に例示した空調環境領域Aac1〜Aac5のうち、空調環境領域Aac1において許容範囲を超える程度にまで利用者が増加したとする。
これに伴い、人分布状態判定部201は、空調環境領域Aac1は過密空調環境領域であると判定する。これは、例えば人分布状態判定部201が、人の分布状態として空調環境領域Aac1において利用者が過密になったと判定していることに相当する。
【0040】
上記のように空調環境領域Aac1が過密空調環境領域であると判定されるのに応じて、空調制御部202は、空調環境領域Aacの状態について、
図2から
図3の空調状況画像に相当する状態に変化させる。
図3における空調環境領域Aac1は、例えば
図2においては空調環境領域Aac1に隣接していた空調環境領域Aac2側に延伸するように拡大される。このように空調環境領域Aac1が拡大されるのに応じて、他の空調環境領域Aac2〜Aac5の各々は縮小される。
空調制御部202は、この
図3に示す空調環境領域Aacの分布状態となるように、空間100における空調設備101のそれぞれを適宜制御する。
なお、本実施形態において、過密空調環境領域を拡大する際の拡大率の決定の仕方については特に限定されない。例えば、拡大率は予め定めた固定値であってもよい。また、過密空調環境領域の人口密度や人の数などに応じて拡大率を決定してもよい。
【0041】
空調制御部202は、上記のように空調環境領域Aacの分布を変更するために、空間100に備えられる空調設備101の運転の制御を変更する。例えば、空調制御部202は、空間100において
図3の空調環境領域Aac1の範囲内に設置されている空調設備101について、実温度が設定温度の24℃となるように制御する。また、空調制御部202は、空間100において
図3の空調環境領域Aac2〜Aac5の各範囲内に設置されている空調設備101について、空調環境領域Aac2〜Aac5ごとの実温度がそれぞれの設定温度(25℃、26℃、27℃、28℃)となるように制御する。
【0042】
また、上記のように空調制御部202が運転制御を切り替えるのに応じて、表示情報生成部203は、運転制御が切り替えられた後の空間100における空調環境領域Aac1〜Aac5の分布状態と、これら空調環境領域Aac1〜Aac5の設定温度を示す表示情報を生成する。表示制御部204は、このように生成された表示情報を表示装置104に表示させる。
これにより、表示装置104の表示画面104Aに表示される空調状況画像は、
図2から
図3に示す内容に変化する。
【0043】
このように空調環境領域Aacの分布が変更されることにより、過密空調環境領域であった空調環境領域Aac1はその容積が拡大される。これにより、空調環境領域Aacの過密状態が解消され、空調環境領域Aac1に存在する利用者の快適性を保つことが可能になる。
その一方で、他の空調環境領域Aac2〜Aac5は、それぞれの分布が縮小されたうえで空間100において依然として形成されている。これらの空調環境領域Aac2〜Aac5は、過密空調環境領域ではなかったために、そこに存在している利用者の数もさほど多くはない。したがって、他の空調環境領域Aac2〜Aac5は、それぞれが縮小されはするものの、そこに存在する利用者の快適性が大きく損なわれることにはならない。
【0044】
また、上記のように空調環境領域Aacの分布が変更されるのに応じて、表示装置104は、
図3の空調状況画像を表示する。これにより、利用者は、空調環境領域Aacの分布が変更されたことと、変更後の空調環境領域Aacごとの設定を視覚的に把握することができる
【0045】
[処理手順例]
図4のフローチャートは、第1の実施形態における空調制御装置200が実行する処理手順例を示している。
空調制御装置200において、空調制御部202は、例えば空間100における空調運転の開始に伴って、初期の空調環境を形成する(ステップS101)。これとともに、表示情報生成部203は、この初期の空調環境に対応する表示情報を生成し、表示制御部204は、生成された表示情報を表示装置104に表示させる(ステップS101)。
なお、この初期の空調制御の際、空調制御装置200は、空調環境の初期設定内容が示す空間100における複数の空調環境領域Aacの分布状態と空調環境領域Aacごとの設定温度にしたがって、空調設備101ごとの運転を制御する。
【0046】
なお、空調環境の初期設定内容は、例えば運転管理者によって予め固定的に設定されたものであってもよい。この場合、空調制御部202は、空調制御装置200において記憶された空調環境の初期設定内容のデータを読み出し、この読み出したデータが示す初期設定内容にしたがって空調制御を実行すればよい。
あるいは、例えば空調制御部202が例えば過去の実績などを利用した学習処理によって空調環境の初期設定内容を生成してもよい。
【0047】
次に、人分布状態判定部201は、人の存在を検出するセンサ102ごとの検出情報を入力し(ステップS102)、入力した検出情報に基づいて、複数の空調環境領域Aacのうちで過密空調環境領域が有るか否かについて判定する(ステップS103)。
過密空調環境領域が無いと判定した場合(ステップS103−NO)、人分布状態判定部201は、ステップS102に処理を戻す。
これに対して、過密空調環境領域が有ると判定された場合(ステップS103−YES)、空調制御部202は、以下の空調制御を実行する。つまり、空調制御部202は、
図2から
図3への遷移として例示したように、過密空調環境領域の空調環境領域Aacを拡大するとともに、過密空調環境領域以外の各空調環境領域Aacを縮小するための空調制御を実行する(ステップS104)。
【0048】
表示情報生成部203は、ステップS104に応じて空調制御部202により変更された空調制御を反映した表示情報を生成する(ステップS105)。これにより、表示情報は、変更前の空調制御に対応した内容から、変更後の空調制御に対応した内容に更新される。
表示制御部204は、ステップS105により生成された表示情報を示す空調状況画像を表示装置104に表示させる(ステップS106)。これにより、表示装置104に表示される空調状況画像の内容は、
図2から
図3への遷移として例示したように変更される。空調制御装置200は、例えば、空間100における空調設備101の運転期間において、ステップS102〜S106の処理を繰り返し実行する。
【0049】
<第2の実施形態>
[概要]
続いて、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態における空調制御システムの構成については
図1と同様でよい。
第1の実施形態における空調環境領域Aacの変更にあたっては、過密空調環境領域以外の空調環境領域のそれぞれを均等に縮小していた。例えば、空調環境領域Aacごとの設定温度などの空調環境は、例えば一定以上の利用者が利用する見込みがあると想定される範囲で決定される。このことからすれば、過密空調環境領域以外の空調環境領域を均等に縮小することは、どの空調環境領域Aacの利用者についても配慮していることになるので妥当である。
しかし、例えば日にちや時間帯によっては、或る特定の空調環境領域については利用者が不在、あるいはほとんど存在していないような状況となる可能性がある。つまり、人の数または人の密度が一定値以下の過疎空調環境領域が生じる可能性がある。
例えば、第1の実施形態において空調環境領域の分布を変更する際には、このような過疎空調環境領域についても、他の過密空調環境領域以外の空調環境領域とともに均等に縮小される。しかし、このように過密空調環境領域以外の他の空調環境領域を縮小する場合、利用者が不在もしくはこれに近い状態の過疎空調環境領域により、利用者が存在する他の空調環境領域が必要以上に狭くなってしまう可能性がある。
【0050】
そこで、第2の実施形態における空調制御部202は、空間100において空調環境領域が有り、かつ、過疎空調環境領域が有る場合に以下のように空調制御を変更する。つまり、空調制御部202は、過密空調環境領域を拡大するとともに、過密空調環境領域以外の過疎空調環境領域を優先して縮小する。
【0051】
この場合、過密空調環境領域を拡大するのに応じて過疎空調環境領域を縮小する際、まず、過疎空調環境領域のみが縮小されるので、過密空調環境領域以外の空調環境領域のうち、過疎空調環境領域ではない空調環境領域については縮小されることがなくなる。
【0052】
[空調制御の変更例]
ここで、第2の実施形態における空調制御の変更例について説明する。
まず、現在の空間100における空調制御の状態は
図2の空調状況画像に示すのと同様の状態にある。この状態のもとで、空調環境領域Aac1の利用者が増加したことにより、空調環境領域Aac1が過密空調環境領域であると人分布状態判定部201により判定されたとする。
この場合、第2の実施形態における人分布状態判定部201は、さらに、人口密度(または人の数)が一定以下の過疎空調環境領域が有るか否かについて判定する。
ここで、過度空調環境領域は無いと判定された場合、空調制御部202は、第1の実施形態と同様の空調制御の変更を行う。つまり、空調制御部202は、
図3に示したように、過密空調環境領域と判定された空調環境領域Aac1を拡大し、他の空調環境領域Aac2〜Aac5について均等に縮小する。
【0053】
これに対して、人分布状態判定部201が
図2における空調環境領域Aac5について過疎空調環境領域であると判定した場合、空調制御部202は、次のように空調制御を変更する。
つまり、空調制御部202は、空調環境領域Aac1を拡大する。そのうえで、空調制御部202は、この拡大分に応じて空調環境領域Aac1以外の空調環境領域Aac2〜5を縮小するにあたり、過疎空調環境領域である空調環境領域Aac5を優先して縮小させる。
【0054】
図5は、上記のように空調環境領域Aacの分布を変更した場合の一例を示している。この
図5においては、まず、
図2の空調環境領域Aac1と同じ分布により、空調環境領域Aac1が形成されている。そのうえで、
図2において空調環境領域Aac5が分布していた部分も、空調環境領域Aac1に置き換えられている。これに応じて、
図5における2つの空調環境領域Aac1のそれぞれに対応する温度表示領域Atm1−1、Atm1−2は、いずれも同じ24℃の設定温度を示す。
このように。
図5における空調環境領域Aac1は、空間100において隣接してはいないが、
図2の状態から拡大されているものである。
【0055】
また、この
図5の例では、
図2において存在していた空調環境領域Aac5は消滅している。つまり、第2の実施形態においては、過疎空調環境領域として判定された空調環境領域Aacについては、過密空調環境領域の拡大に応じて縮小した結果として、空間100から消滅してよい。
【0056】
このように空間100における空調環境領域Aacが変更されることで、過密状態でもなく過疎状態でもない空調環境領域Aac2〜4については、過疎空調環境領域により無駄にその容積が圧迫されない。これにより、例えば空調環境領域Aac2〜4に存在している利用者の快適性を保つことができる。
【0057】
なお、第2の実施形態において、例えば過密空調環境領域の拡大分よりも過疎空調環境領域のほうが大きい場合、過密空調環境領域の拡大に伴って縮小される過疎空調環境領域は、過密空調環境領域の拡大分との差分に応じた分が残る。
また、過密空調環境領域の拡大分よりも過疎空調環境領域のほうが小さい場合、過密空調環境領域の拡大に伴っては、まず、元の過疎空調環境領域を過密空調環境領域と同じ空調環境領域に置き換える。そのうえで、余った拡大分については、第1の実施形態と同様に、残る過密空調環境領域以外の空調環境領域を均等に縮小させればよい。
【0058】
[処理手順例]
図6のフローチャートは、第2の実施形態における空調制御装置200が実行する処理手順例を示している。なお、
図6において、
図4と同様の処理となるステップについては同一符号を付して、ここでの説明は省略する。
この図に示す処理において、人分布状態判定部201は、ステップS103により過密空調環境領域が有ると判定した場合、さらに、過疎空調環境領域が有るか否かについて判定する(ステップS103A)。
【0059】
過疎空調環境領域は無いと判定された場合(ステップS103A−NO)、空調制御部202は、
図4と同様のステップS104の処理を実行する。
一方、過疎空調環境領域が有ると判定された場合(ステップS103A−YES)、空調制御部202は、以下の処理を実行する。つまり、空調制御部202は、ステップS103により過密空調環境領域であると判定された空調環境領域Aacを拡大し、その拡大分に応じて、ステップS103Aにより過疎空調環境領域であると判定された空調環境領域Aacを縮小する(ステップS104A)。
ステップS104またはステップS104Aの処理を実行した後は、
図4と同様に、ステップS105、S106の処理を実行する。
【0060】
<変形例>
次に、本実施形態についての各種の変形例について説明する。
これまでの実施形態の説明において、
図2、
図3、
図5における温度表示領域Atmは、設定温度を表示する例を挙げているが、温度表示領域Atmに表示させる温度情報としては、これに限定されるものではない。
一例として、温度表示領域Atmには、対応の空調環境領域Aacにおける現在の実温度を表示させてもよい。実温度を示す温度表示領域Atmを表示させるには、表示情報生成部203が温度情報として対応の空調環境領域Aacの実温度を示す情報を表示情報に含めるようにすればよい。例えば、表示情報生成部203は、温度センサ103ごとにより検出された温度と、空間100における各温度センサ103の設置位置とに基づいて、現在の空間100における複数の空調環境領域Aacごとの実温度を求めることができる。
【0061】
また、温度表示領域Atmとしては、例えば、現在における設定温度と現在における実温度をともに表示させてもよい。
図7(a)は、温度表示領域Atmとして現在における設定温度と現在における実温度をともに表示させた場合の表示態様の一例である。
図7は、空調状況画像における温度表示領域Atmの部分を抜き出して示している。
【0062】
図7(a)において、温度表示領域Atm1と温度表示領域Atm11は、それぞれ、同じ空調環境領域Aac1に対応する設定温度と実温度を示している。温度表示領域Atm2と温度表示領域Atm12は、それぞれ、同じ空調環境領域Aac2に対応する設定温度と実温度を示している。温度表示領域Atm3と温度表示領域Atm13は、それぞれ、同じ空調環境領域Aac3に対応する設定温度と実温度を示している。温度表示領域Atm4と温度表示領域Atm14は、それぞれ、同じ空調環境領域Aac4に対応する設定温度と実温度を示している。温度表示領域Atm5と温度表示領域Atm15は、それぞれ、同じ空調環境領域Aac5に対応する設定温度と実温度を示している。
【0063】
また、空調制御部202が空調制御を空調環境領域Aacの分布を変更するために空調制御を切り替えたとしても、目標とする空調環境領域Aacの分布状態が形成されるにはある程度の時間を要する。このような空調制御の切り替え直後において現在の空調状況として、目標の空調環境領域Aacの分布状態や設定温度などを表示させた場合には、現実の空調状態との乖離が大きくなってしまう可能性がある。
そこで、例えば、空調状況画像として、現在の状況だけではなく、一定時間後の将来において予定あるいは予測される状況を表示してもよい。
例えば、空調制御部202が空調制御を切り替えたタイミングから一定時間にわたっては、一定時間後に予定される空調環境領域Aacの分布として、空調制御の切り替えにより形成される空調環境領域Aacの分布を表示する。
また、空調制御の切り替えに伴って空調環境領域の設定温度を変更するような場合もあり得る。そこで、このように変更された設定温度を、一定時間後に予定される空調環境領域Aacの設定温度として温度表示領域Atmに表示してもよい。
【0064】
また、温度表示領域Atmにおいて、一定時間後に予測される実温度を表示させてもよい。一定時間後の実温度は、例えば温度センサ103により検出される現在の実温度と、空調制御部202による現在の空調制御の内容や、過去の実績データや学習データなどを利用して予測することができる。なお、例えば空調制御部202が実温度の予測を行うこととしたうえで、その予測結果を表示情報生成部203が入力するようにしてよい。あるいは、表示情報生成部203自身が実温度の予測を行ってもよい。
【0065】
また、例えば温度表示領域Atmにおいて、現在の設定温度と一定時間後の実温度とを合わせて表示させるなど、現在と一定時間後の状況を同時に表示させてもよい。
また、現在の空調状況を示す表示情報と空調状況を示す表示情報とを切り替えて表示装置104に表示させるようにしてもよい。この場合、表示情報生成部203は、現在の空調状況を示す表示情報と、一定時間後に予定または予測される空調状況を示す表示情報とを生成する。そして、表示制御部204が、現在の空調状況を示す表示情報と空調状況を示す表示情報とを切り替えて表示装置104に表示させるための制御を実行する。また、表示の切り替えは、例えば一定時間ごとに自動で行われるようにしてもよいし、利用者の操作に応じて行うようにしてもよい。
【0066】
また、これまでの説明では、温度表示領域Atmにおいて温度としての値を表示していた。しかし、利用者にとっては、空調環境領域Aacごとの空調制御の違いが数値化されて提示されるよりは、より感覚的な表示内容により提示されるほうがかえって分かりやすい場合もある。
一例として、
図7(b)の温度表示領域Atmとして示すように、空調環境領域Aacごとの空調制御、空調効果の違いを冷房の強弱を説明する文章、単語などを表示してもよい。また、図示は省略するが、例えば、空調環境領域Aacごとの空調制御、空調効果の違いを、それぞれ異なるアイコンなどとしての絵柄を温度表示領域Atmに表示させることにより表現してもよい。
【0067】
また、空調制御部202による空調環境領域Aacごとの空調制御としては、単に設定温度を変更するだけではなく、他の要素を組み合わせてもよい。例えば、空調制御部202は、複数の空調環境領域Aacについて同じ設定温度を設定したうえで、それぞれにおけるファンの運転強度を変更して気流の度合いを変化させる。これにより、空調環境領域Aacごとにおける体感温度が異なってくる。
なお、このように空調制御を行う場合には、例えば、空調状況画像において、空調環境領域Aacごとの気流の状態の違いを知らせるための文字や絵柄などを表示させてもよい。また、この場合においては、温度表示領域Atmに表示すべき温度情報として、体感温度を表示させるようにしてもよい。
【0068】
また、これまでの説明では、人分布状態判定部201が空間100における人の分布状態(過密空調環境領域あるいは過疎空調環境領域の有無)を判定する際には、センサ102が人を検出した検出情報に基づき、人口密度あるいは人の数を直接的に求めていた。
しかし、例えば、以下のように空調環境領域における人の分布状態を判定することもできる。この場合、センサ102は検出対象を温度とする。なお、
図1の空調制御システムの構成では温度センサ103も備えられていることから、例えば、この温度センサ103をセンサ102として流用してもよい。そして、人分布状態判定部201は、温度センサ103により検出される温度に基づいて、空調環境領域Aacにおける人口密度あるいは人の数を推定する。
冷房を例に挙げれば、例えば運転率が一定の条件では、空調環境領域Aacにおける人口密度あるいは人の数が多いほど熱負荷は高くなり、その空調環境領域Aacの温度が上昇する。このように、空調環境領域Aacにおける人口密度あるいは人の数は、空調設備101に対する運転率が既知であれば空調環境領域Aacの温度から推定することが可能である。このことに基づき、人分布状態判定部201は、例えば空調設備101に対する運転率とセンサ102により検出される温度をパラメータとする所定の演算により、人口密度あるいは人の数を推定すればよい。そして、人分布状態判定部201は、この推定した結果に基づいて空間100における人の分布状態(過密空調環境領域あるいは過疎空調環境領域の有無)を判定するというものである。
【0069】
また、これまでの説明においては、表示装置104は、空間100の入り口付近に設置されるものとしている。しかし、これに限定されることなく、例えば、表示装置104は、入り口付近だけではなく、空間100内における要所にも設置されてよい。そのうえで、例えば、表示装置104を複数設けて、それぞれを空間100における机の上などに配置するようにしてもよい。
また、空間100とは遠隔しているが、空間100に赴く利用者が多いような場所や空間にも表示装置104を設置してよい。一例として、企業の設備内において、空間100が食堂やミーティングルームなどである場合、これ以外の執務室などのある空間に表示装置104を配置するというものである。これにより、社員が執務室から食堂やミーティングルームなどに移動しようとする際に表示装置104を見ることで、予め食堂やミーティングルームの空調環境を知っておくことができる。
【0070】
また、空間100における空調環境領域Aacの分布のパターンについては、例えば
図2、
図3、
図5などに示したように、空間100を縦割りにするようなものに限定されない。例えば、空間100を格子状に分割するように空調環境領域Aacを分布させてもよい。
【0071】
また、
図1における空調制御部202における各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより空調制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0072】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0073】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。