【文献】
金子敏夫,「新版油圧機器と応用回路」,日本,日刊工業新聞社,1968年 2月29日,3版,p.105, p.125-127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力制御弁は、前記シリンダラインの圧力と前記リターンラインの圧力との圧力差が所定圧よりも高くなるほど、前記アクチュエータから排出される作動流体の流量を少なくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の産業車両の回生油圧装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるバッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100の概略構成図である。
【0011】
バッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100は、油圧発生部1と、リフトシリンダ2と、リフト制御部3と、回生部4と、コントローラ5と、を備える。
【0012】
油圧発生部1は、バッテリ11と、電動機12と、油圧ポンプ13と、を備える。
【0013】
バッテリ11は、バッテリ式フォークリフトを駆動するための電力を蓄え、必要に応じて蓄えた電力を各種の電気部品に供給する。バッテリ11としては、外部からの充電が可能なリチウムイオン二次電池や高容量キャパシタなどを使用することができる。
【0014】
電動機12は、ロータに複数の永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルを巻き付けた三相交流同期モータであり、バッテリ11から電力の供給を受けて回転駆動する。
【0015】
油圧ポンプ13は、固定容量型のポンプである。油圧ポンプ13は、電動機12によって駆動され、電動機12の回転速度に応じた流量の作動油を吐出する。
【0016】
リフトシリンダ2は、リフトシリンダ2内を摺動自在に移動するピストンロッド21によって、ロッド側流体室22とボトム側流体室23とに区画される。リフトシリンダ2は、ボトム側流体室23に対してのみ作動油の供給及び排出(以下「給排」という。)が行われる単動シリンダであって、バッテリ式フォークリフトのフォークを昇降させるための油圧アクチュエータとして機能する。
【0017】
リフト制御部3は、昇降切替弁31と、逆止弁32と、第1パイロットライン33と、第2パイロットライン34と、圧力制御弁35と、を備える。リフト制御部3は、リフトシリンダ2のボトム側流体室23に対する作動油の供給量及び排出量(以下「給排量」という。)を制御することで、フォークの昇降動作を制御する。以下、リフト制御部3の各構成について説明する。
【0018】
昇降切替弁31は、ポンプポート311、リターンポート312及びシリンダポート313の3つのポートと、上昇制御位置(A)、保持制御位置(B)及び下降制御位置(C)の3つの方向切替位置と、を備える手動式の3ポート方向切替弁である。昇降切替弁31は、手動レバー314を操作することで、上昇制御位置(A)、保持制御位置(B)及び下降制御位置(C)のいずれかの位置に切り替えられる。
【0019】
昇降切替弁31を上昇制御位置(A)に切り替えると、油圧ポンプ13から吐出された作動油がリフトシリンダ2のボトム側流体室23に供給され、ピストンロッド21と共にフォークが上昇する。
【0020】
昇降切替弁31を保持制御位置(B)に切り替えると、リフトシリンダ2のボトム側流体室23に対する作動油の給排が停止され、フォークが任意の高さに保持される。
【0021】
昇降切替弁31を下降制御位置(C)に切り替えると、積荷及びフォークの自重によってフォークと共にピストンロッド21が下降し、リフトシリンダ2のボトム側流体室23から作動油が排出される。
【0022】
昇降切替弁31のポンプポート311は、ポンプライン6によって油圧ポンプ13の吐出口と接続される。ポンプライン6は、油圧ポンプ13から吐出された作動油が流れるラインである。
【0023】
昇降切替弁31のリターンポート312は、リターンライン7によって後述する回生切替弁41の入口ポート411と接続される。リターンライン7は、リフトシリンダ2のボトム側流体室23から排出された作動油が流れるラインである。
【0024】
昇降切替弁31のシリンダポート313は、シリンダライン8によってリフトシリンダ2のボトム側流体室23と接続される。シリンダライン8は、昇降切替弁31を上昇制御位置(A)に切り替えたときに、ボトム側流体室23に供給される作動油が流れる供給シリンダライン8aと、昇降切替弁31を下降制御位置(C)に切り替えたときに、ボトム側流体室23から排出された作動油が流れる排出シリンダライン8bと、を備える。
【0025】
逆止弁32は、供給シリンダライン8aに設けられる。逆止弁32は、作動油の流れを一方向に規制して、ボトム側流体室23から排出された作動油が供給シリンダライン8aを流れて昇降切替弁31に戻されるのを防止する。
【0026】
第1パイロットライン33は、圧力制御弁35と昇降切替弁31との間の排出シリンダライン8bに作用する圧力(以下「第1パイロット圧」という。)P1を、圧力制御弁35及び後述する回生切替弁41に導くためのラインである。
【0027】
ここで、リフトシリンダ2と圧力制御弁35との間の排出シリンダライン8bに作用する圧力、すなわち、リフトシリンダ2に作用する負荷圧(以下「リフト負荷圧」という。)をPloadとすると、第1パイロット圧P1は、リフト負荷圧Ploadから圧力制御弁35の通過圧力損失を引いた圧力であって、リフト負荷圧Ploadに極めて近い圧力である。リフト負荷圧Ploadは、フォークを昇降させるときにリフトシリンダ2にかかる負荷であり、リフトシリンダ2のボトム側流体室23の圧力である。したがって、フォークの積荷が重くなるほど、リフト負荷圧Pload及び第1パイロット圧P1は高くなる。
【0028】
第2パイロットライン34は、リターンライン7に作用する圧力(以下「第2パイロット圧」という。)P2を、圧力制御弁35に導くためのラインである。
【0029】
圧力制御弁35は、排出シリンダライン8bに設けられる。圧力制御弁35は、圧力制御弁35内の弁体を常時開弁側に押圧するバネ351を備える。また、圧力制御弁35は、圧力制御弁35内の弁体を開弁側に押圧する第2パイロット圧P2が導かれる開弁側受圧部352と、閉弁側に押圧する第1パイロット圧P1が導かれる閉弁側受圧部353と、を備える。
【0030】
圧力制御弁35はこのように構成され、閉弁側受圧部353に作用する押圧力(第1パイロット圧P1と閉弁側受圧部353の面積Aとの積)P1Aが、バネ351の押圧力Fset1と開弁側受圧部352に作用する押圧力(第2パイロット圧P2と開弁側受圧部352の面積Bとの積)P2Bとの合力よりも大きくなると徐々に閉弁する。つまり圧力制御弁35は、閉弁側受圧部353に作用する押圧力P1Aと開弁側受圧部352に作用する押圧力P2Bとの差がバネ351の押圧力Fset1となるように第1パイロット圧P1を制御して、昇降切替弁31の前後差圧(=P1−P2)が一定になるように制御する。
【0031】
回生部4は、回生切替弁41と、油圧モータ42と、発電機43と、を備える。回生部4は、必要に応じてリフトシリンダ2のボトム側流体室23から排出された作動油で油圧モータ42を駆動して発電機43を回し、発電した電力をバッテリ11へ充電する。以下、回生部4の各構成について説明する。
【0032】
回生切替弁41は、入口ポート411、タンクポート412及び回生ポート413の3つのポートと、回生制御位置(D)及び戻し制御位置(E)の2つの方向切替位置と、を備える3ポート方向切替弁である。
【0033】
回生切替弁41の入口ポート411は、リターンライン7によって昇降切替弁31のリターンポート312に接続される。
【0034】
回生切替弁41のタンクポート412は、タンクライン9によってオイルタンク60と接続される。タンクライン9は、作動油をオイルタンク60に戻すためのラインである。
【0035】
回生切替弁41の回生ポート413は、回生ライン10によってタンクライン9と接続される。回生ライン10には油圧モータ42が設けられる。油圧モータ42は、回生ライン10を流れる作動油によって駆動されて発電機43を回し、発電機43は発電した電力をバッテリ11に充電する。
【0036】
また、回生切替弁41は、回生切替弁41を戻し制御位置(E)に向けて常時押圧するバネ414と、回生切替弁41を回生制御位置(D)に向けて押圧する第1パイロット圧P1が導かれる回生受圧部415と、を備える。回生切替弁41は、回生受圧部415に作用する押圧力(第1パイロット圧P1と回生受圧部415の面積Cとの積)P1Cが、バネ414の押圧力Fset2よりも大きくなったときに回生制御位置(D)に切り替えられる。
【0037】
すなわち、フォークの積荷が所定の重量より重くて回生受圧部415に作用する押圧力P1Cが、バネ414の押圧力Fset2よりも大きくなったときに、回生切替弁41は回生制御位置(D)に切り替えられる。回生切替弁41が回生制御位置(D)に切り替えられると、リターンライン7を流れてきた作動油が回生切替弁41を介して回生ライン10へと流れ、油圧モータ42を駆動する。これにより、発電機43による発電が行われる。
【0038】
一方で、フォークの積荷が所定の重量以下のときは、回生受圧部415に作用する押圧力P1Cがバネ414の押圧力Fset2以下となるので、回生切替弁41は戻し制御位置(E)に切り替えられる。回生切替弁41が戻し制御位置(E)に切り替えられると、リターンライン7を流れてきた作動油が回生切替弁41を介してタンクライン9へと流れ、直接オイルタンク60に戻される。
【0039】
このように、回生受圧部415に作用する押圧力P1Cがバネ414の押圧力Fset2よりも大きいときにだけ回生を実施するのは、回生受圧部415に作用する押圧力P1Cがバネ414の押圧力Fset2以下のとき、すなわち、積荷が軽くて第1パイロット圧P1が低いときに回生ライン10に作動油を流してしまうと、油圧モータ42の作動油入口側の回生ライン10の圧力が低すぎて、油圧モータ42を駆動できないおそれがあるためである。油圧モータ42が駆動できないと、油圧モータ42によって作動油の流れが阻害されてしまうので、昇降切替弁31を通過する作動油の流量が減少し、今度は逆にフォークの下降速度が遅くなるおそれがある。したがって、回生切替弁41のバネ414の押圧力Fset2は、油圧モータ42の駆動負荷を考慮して設定されるものであり、油圧モータ42の特性に応じて適宜設定すれば良いものである。
【0040】
コントローラ5は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ5には、バッテリ式フォークリフトの運転状態を検出するための各種センサ類の信号が入力されており、各種センサ類からの入力信号に基づいて、電動機12の回転速度などを制御する。
【0041】
以下、バッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100の作用及び効果について説明する。
【0042】
まず、本実施形態による圧力制御弁35の作用及び効果について説明する。
【0043】
排出シリンダライン8bに圧力制御弁35を設けなかった場合、昇降切替弁31が下降制御位置(C)に切り替えられていれば、排出シリンダライン8bにはリフト負荷圧Ploadが作用する。リフト負荷圧Ploadは、積荷が重くなるほど高くなる。そのため、昇降切替弁31の前後差圧(=P1−P2)は、積荷が重くなるほど大きくなる。
【0044】
このように、昇降切替弁31の前後差圧が変化してしまうと、昇降切替弁31の開度(換言すれば手動レバー314の操作量)が同じであっても、前後差圧が大きくなるほど昇降切替弁31を通過する作動油の流量が多くなる。その結果、手動レバー314の操作量が同じでも、積荷が重くなるほどフォークの下降速度が速くなってしまい、操作性が悪化する。
【0045】
そこで本実施形態では、排出シリンダライン8bに圧力制御弁35を設けたのである。
【0046】
本実施形態による圧力制御弁35は、昇降切替弁31が下降制御位置(C)に切り替えられると、昇降切替弁31の前後差圧(=P1−P2)が一定となるように、その開度が制御される。つまり本実施形態では、フォークの積荷の重さによって変化するリフト負荷圧Ploadに関係なく、昇降切替弁31の前後差圧が一定となるように圧力制御弁35の開度が制御される。したがって、圧力制御弁35を通過する作動油の流量は、圧力制御弁35の開度に応じた一定の流量となる。
【0047】
これにより、積荷の重さによってフォークの下降速度が変化することがなく、積荷の重さにかかわらずフォークの下降速度を一定にすることができる。よって、フォークを下降させるときの操作性を向上させることができる。なお、バネ351の押圧力Fset1は、所望の下降速度が得られるように、バッテリ式フォークリフトの使用目的等に応じて適宜設定すれば良いものである。
【0048】
次に、本実施形態による回生切替弁41の作用及び効果について説明する。
【0049】
フォークの積荷が軽くて第1パイロット圧P1が低いときに回生ライン10に作動油を流してしまうと、油圧モータ42によって作動油の流れが阻害されて昇降切替弁31を通過する作動油の流量が減少し、今度は逆にフォークの下降速度が遅くなるおそれがある。
【0050】
そこで本実施形態では、回生受圧部415に作用する押圧力P1Cが回生切替弁41のバネ414の押圧力Fset2よりも高いときにのみ、回生制御位置(D)に切り替わるように回生切替弁41を構成し、昇降切替弁31を通過してリターンライン7を流れてきた作動油を回生ライン10へと流すようにした。つまり、フォークの積荷が所定重量よりも重いときだけ、昇降切替弁31を通過してリターンライン7を流れてきた作動油を回生ライン10へと流すようにした。
【0051】
これにより、フォークの積荷が所定重量以下で回生受圧部415に作用する押圧力P1Cが回生切替弁41のバネ414の押圧力Fset2以下のときは、回生切替弁41が戻し制御位置(E)に切り替えられるので、回生切替弁41を通過した作動油はタンクライン9を通って直接オイルタンク60に戻される。そのため、フォークの下降速度が遅くなるのを防止できる。
【0052】
一方で、フォークの積荷が所定重量よりも重くて回生受圧部415に作用する押圧力P1Cが回生切替弁41のバネ414の押圧力Fset2よりも高いときは、回生切替弁41が回生制御位置(D)に切り替えられるので、回生切替弁41を通過した作動油は回生ライン10を通って油圧モータ42を駆動した後、オイルタンク60に戻される。
【0053】
このように、本実施形態によるバッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100によれば、回生切替弁41によってフォークの積荷の重さが所定重量よりも重いときにだけ回生を実施するとともに、圧力制御弁35によって昇降切替弁31の前後差圧が一定となるようにした。これにより、フォークの積荷の重さにかかわらず、フォークの下降速度を手動レバー314の操作量に応じた一定の速度に制御しつつ回生を実施するころができるの。よって、バッテリ式フォークリフトの操作性及び電費を同時に向上させることができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、
図2を参照して説明する。本実施形態は、第1パイロットライン33の圧力に応じて発電機43の負荷を変更する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0055】
図2は、本発明の第2実施形態によるバッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100の概略構成図である。
【0056】
本実施形態によるバッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100は、第1パイロットライン33に第1パイロットライン33の圧力を検出する圧力センサ70を備える。そして、圧力センサ70の検出値に応じて、コントローラ5が発電機43の発電量を制御する。
【0057】
具体的には、フォークの積荷が所定の重量よりも重く、回生切替弁41が回生制御位置(D)に切り替えられたとき、すなわち、第1パイロット圧P1が所定の圧力よりも高くなったときは、フォークの下降速度を一定の速度に維持できる範囲で、第1パイロット圧P1(圧力センサ70の検出値)が高くなるほど発電機43の発電量を増加させる。
【0058】
これにより、フォークの積荷が重いときには発電量を増加させることができるので、発電効率を向上させることができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、
図3を参照して説明する。本実施形態は、リターンライン7に圧力制御弁35を設けた点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0060】
図3は、本発明の第3実施形態によるバッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100の概略構成図である。
【0061】
本実施形態によるバッテリ式フォークリフトの回生油圧制御装置100は、リターンライン7に圧力制御弁35が設けられ、ポンプライン6に逆止弁32が設けられる。そして、圧力制御弁35の閉弁側受圧部353及び回生切替弁41の回生受圧部415には、第1パイロット圧P1として、シリンダイランに作用する圧力、すなわちリフト負荷圧Ploadが導かれる。
【0062】
このような構成にしても、昇降切替弁31の前後差圧(=P1−P2)は、圧力制御弁35によって一定になるように制御されるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0064】
例えば、上記第3実施形態においても、第1パイロットライン33に圧力センサ70を設け、圧力センサ70の検出値に応じて第2実施形態と同様に発電機43の発電量を制御しても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、バッテリ式フォークリフトを例に説明したが、これ以外の産業車両であっても良い。