(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油状液が封入されたピストン室を有する金属製のシリンダハウジングと、上記ピストン室内を上記油状液に流動抵抗を与える隙間を保持した状態で軸線方向に移動可能なピストンと、基端部が上記ピストンに連結され、先端部が上記シリンダハウジングのロッド導出孔から外部に液密に突出し、該先端部に制動すべき移動物体が衝突するロッドと、該ロッドを上記シリンダハウジングから突出する方向に付勢する復帰機構とを有するショックアブソーバにおいて、
上記シリンダハウジングに形成された上記ロッド導出孔の端部に、緩衝性を有する合成樹脂からなる筒状の軸受を取付けて、該軸受の中心孔内に上記ロッドを摺動自在に挿通させると共に、該軸受の先端を上記シリンダハウジングの外端面よりも外側に突出させて上記移動物体が当接する当接部とすることにより、該軸受に、上記ロッドをガイドする機能と、上記移動物体が上記シリンダハウジングの外端面に当接するのを防止するストッパの機能とを兼備させ、
上記ロッド導出孔の上記軸受よりピストン室側の位置に、粉塵の侵入を防止する集塵部材と、潤滑油を保持して該潤滑油をロッドの表面に供給する潤滑部材とを設けた、
ことを特徴とする低発塵・耐粉塵ショックアブソーバ。
上記シリンダハウジングは、上記ピストン室を有するハウジング本体と、該ハウジング本体の端部に結合されたロッドカバーとを有し、該ロッドカバーに上記軸受と集塵部材と潤滑部材とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバ。
上記ロッド導出孔のピストン室側端の位置に、上記ロッドの外周面に摺接するロッドパッキンを配設し、該ロッドパッキンの位置と上記ロッドのストロークとの関係を、該ロッドが上記軸受内に完全に押し込まれたとき該ロッドの上記ロッドパッキンと接触する部分が、上記ロッドの突出時に上記軸受から外部に露出しないような関係に設定したことを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバ。
上記溝は、上記ロッドが初期位置にあるとき上記軸受から露出し、該ロッドが移動物体で上記軸受内に押し込まれるとき該軸受の内周面に接触するような位置に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のショックアブソーバ。
【背景技術】
【0002】
従来、移動物体を停止させる際の衝撃を、粘性流体の流動抵抗を利用して緩衝するようにしたショックアブソーバは、例えば、特許文献1や特許文献2等に開示されているように、極めて一般的に知られている。
この種のショックアブソーバは、ピストン室内に鉱油などの油状液を充填すると共に、制動用のピストンを、油状液の流通間隙を保った状態に収容し、該ピストンに連結したロッドを、上記シリンダハウジングの外部に延出させた構成を有し、該ロッドの先端に移動物体が衝突してピストンを押圧すると、ピストン室内に充填されている油状液がピストンの摺動方向と逆向きに移動し、この際に上記流通間隙を流れる油状液の流動抵抗により、上記移動物体の運動エネルギーを吸収するものである。
【0003】
上記ショックアブソーバでは、通常、シリンダハウジングの先端部のロッドカバーから突出しているロッドの先端に移動物体が衝突して、該ロッドが後退移動したとき、該移動物体がロッドカバーの先端面に接触するまで移動して停止位置の位置決めをするように構成されている。
そして、通常はロッドカバーがステンレス鋼等の金属製であり、ピストンが移動物体の衝突により後退移動して、該移動物体がロッドカバーに衝突する度に、移動物体と該ロッドカバーとの間の相互のずれ動きの摩擦等により微細な金属の粉塵が発生し、それ以前に移動物体がロッドの先端に衝突したときにも粉塵が発生するのが通例である。また、上記ロッドとそれが摺動自在に支持されているシリンダハウジングのロッドパッキンや軸受部材との間でも摩耗粉が発生することになる。このため、例えば、半導体素子等を取り扱う設備環境では、金属粉が付着すると素子の特性が影響を受ける可能性があることから、従来のショックアブソーバを、半導体製造分野等の金属粉塵を嫌う環境下でそのまま使用するのは不適切である。
【0004】
このような問題に対する対策としては、ショックアブソーバにおいて移動物体がロッドやロッドカバーに衝突する際の粉塵を可及的に低減させ、また、ロッドとシリンダハウジングのロッドパッキンや軸受部材との間でも摩耗粉が発生しない構成を採用するなどの対応を行い、あるいは、上述の発塵部位をカバーして粉塵の飛散を抑制したり、該発塵部位の粉塵を強制的に吸引したり、更には、移動物体とそれが衝突して発塵するショックアブソーバの発塵部位を、設備全体がその発塵の影響を受けることが少ないような場所に移設するなどの対応を行うことが必要になるが、前者の対応が低コストでの実現を期待できるのに対し、後者の対応では設備が高コスト化する可能性があり、前者の対応によって粉塵の発生を低減させることが望まれる。
【0005】
更に、上述したようなショックアブソーバでは、シリンダハウジングから外部に突出させたロッドに移動物体が衝突したときに、上述のように発生した粉塵等が該ロッドに付着していると、それがシリンダハウジング内に侵入して内部構造の摩耗等の原因になり、そのため、ロッドの周囲に防塵ワイパー等を配設して異物の侵入を抑制する必要があり、一方、上記ロッドはシリンダハウジングの軸受に潤滑のための油膜を介して摺動自在に保持させているため、シリンダハウジング内への上記異物の侵入を抑制すると同時に、上記軸受を通して潤滑のための油膜の外部流出を避けることも必要になる。しかも、上記潤滑のための油膜の流出が進行すると、シリンダハウジング内に充填して流動抵抗により移動物体の運動エネルギーを吸収させている油状液までも流出し、ショックアブソーバとしての性能を損なうことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、基本的には、移動物体がシリンダハウジングに衝突するのを防止して粉塵の発生を防止し、それに加えて、ロッドにより粉塵等の異物がシリンダハウジングの内に持ち込まれるのを防止すると共に、軸受を通して潤滑のための油膜が外部に流出するのを抑止できるようにした低発塵・耐粉塵ショックアブソーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によれば、油状液が封入されたピストン室を有する金属製のシリンダハウジングと、上記ピストン室内を上記油状液に流動抵抗を与える隙間を保持した状態で軸線方向に移動可能なピストンと、基端部が上記ピストンに連結され、先端部が上記シリンダハウジングのロッド導出孔から外部に液密に突出し、該先端部に制動すべき移動物体が衝突するロッドと、該ロッドを上記シリンダハウジングから突出する方向に付勢する復帰機構とを有するショックアブソーバにおいて、上記シリンダハウジングに形成された上記ロッド導出孔の端部に、緩衝性を有する合成樹脂からなる筒状の軸受を取付けて、該軸受の中心孔内に上記ロッドを摺動自在に挿通させると共に、該軸受の先端を上記シリンダハウジングの外端面よりも外側に突出させて上記移動物体が当接する当接部とすることにより、該軸受に、上記ロッドをガイドする機能と、上記移動物体が上記シリンダハウジングの外端面に当接するのを防止するストッパの機能とを兼備させ、上記ロッド導出孔の上記軸受よりピストン室側の位置に、粉塵の侵入を防止する集塵部材と、潤滑油を保持して該潤滑油をロッドの表面に供給する潤滑部材とを設けたことを特徴とする低発塵・耐粉塵ショックアブソーバが提供される。
【0009】
上記構成を備えた低発塵・耐粉塵ショックアブソーバにおいては、緩衝性のある合成樹脂からなる筒状の軸受がロッドを摺動自在に軸支する一方で、移動物体のロッド先端への衝突後に該移動物体をシリンダハウジングに当接させることなく停止させるストッパとしても機能することになり、しかも上記緩衝性のある合成樹脂で形成した軸受に移動物体が衝突しても粉塵が発生することはなく、移動物体を所定の停止位置に緩衝停止させることができる。
また、潤滑部材に含浸させたグリース等の潤滑剤が逐次ロッド表面に補給されて油膜が形成されるので、該ロッドが円滑に摺動し、一方、上記集塵部材により、ロッドに付着した粉塵を捕捉して内部への侵入を防止することができるだけでなく、該集塵部材によりロッドに付着して外部に流出する油膜を掻き集めて保持し、油膜の流出による外部環境の汚染を防止すると同時に、油膜の損耗を緩和することができる。
なお、上記潤滑部材に含浸させたグリース等の潤滑剤が逐次ロッド表面に補給されてその残量が少なくなり、その補給が実質的にできなくなったときには、ピストン室内に充填している油状液が上記潤滑剤の代用として油膜形成に用いられ、潤滑剤の場合と同様な機能を維持する。
【0010】
本発明において、上記軸受の軸線方向長さは、上記ロッドの直径と同等以上であることが望ましい。
また、本発明において好ましくは、上記シリンダハウジングは、上記ピストン室を有するハウジング本体と、該ハウジング本体の端部に結合されたロッドカバーとを有し、該ロッドカバーに上記軸受と集塵部材と潤滑部材とが設けられていることである。
上記集塵部材及び潤滑部材はそれぞれ多孔質素材により形成され、上記集塵部材はドライ状態に保持されていることが望ましい。
【0011】
本発明においては、ロッド導出孔のピストン室側端の位置に、上記ロッドの外周面に摺接するロッドパッキンを配設し、該ロッドパッキンの位置と上記ロッドのストロークとの関係を、該ロッドが上記軸受内に完全に押し込まれたとき該ロッドの上記ロッドパッキンと接触する部分が、上記ロッドの突出時に上記軸受から外部に露出しないような関係に設定されている。
このような構成も、ロッドに付着した粉塵をシリンダハウジング内に侵入させるのを抑制するために有効なものであり、また、ロッドに付着して油膜が外部に流出するのを抑制するためにも有効なものである。
【0012】
また、本発明においては、上記ロッドの外面に、上記軸受に対する該ロッドの接触面積を小さくするための溝を形成することができる。
上記溝は、上記ロッドが初期位置にあるとき上記軸受から露出し、該ロッドが移動物体で上記軸受内に押し込まれるときに該軸受の内周面に接触するような位置に形成されていることが望ましく、また、上記溝の深さは、上記ロッドの基端側に向けて次第に深くなっていることが望ましい。
上記溝は、円形であっても螺旋形であっても構わない。また、上記溝の内部には、上記軸受の内周面に付着した粉塵を捕捉する粉塵捕捉材が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明のショックアブソーバは、移動物体がシリンダハウジングに衝突するのを防いで粉塵の発生を防止し、それに加えて、ロッドにより粉塵等の異物がシリンダハウジングの内に持ち込まれるのを防止すると共に、軸受を通して潤滑のための油膜が外部に流出するのを抑止できるので、粉塵を嫌う環境下において使用できるだけでなく、粉塵等の異物の侵入を抑制できる構成を備えているので、粉塵の多い環境下での使用においても長寿命を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2は、本発明に係る低発塵・耐粉塵ショックアブソーバの第1実施形態を示すものである。このショックアブソーバ50Aは、主要部材として、油状液が封入されたピストン室5を有するシリンダハウジング1と、上記ピストン室5内に、上記油状液に流動抵抗を与える隙間を保持した状態で軸線L方向に移動可能に収容されたピストン6と、基端が上記ピストン6に連結され、先端がシリンダハウジング1のロッド導出孔10から外部に液密に導出されたロッド7と、該ロッド7を上記シリンダハウジング1から突出する方向に付勢する復帰機構としての復帰用ばね8とを有し、上記ロッド7の先端に衝突する移動物体4を、上記ピストン6がピストン室5を移動するときの上記油状液の流動抵抗によって緩衝的に停止させるものである。
上記シリンダハウジング1は、図示のように、上記ピストン室5を有する金属製のハウジング本体2と、上記ロッド7を外部に液密に導出する金属製のロッドカバー3とを結合することにより構成するのが望ましいが、それに限るものではない。
【0016】
上記シリンダハウジング1のロッドカバー3に形成された上記ロッド導出孔10は、その外側端の位置に孔径の拡大された軸受収容孔10aを有し、該軸受収容孔10a内に、緩衝性のある合成樹脂からなる筒状の軸受12が、密に挿入された状態で装着され、該軸受12の中心孔12a内を上記ロッド7が摺動自在に挿通している。また、上記軸受12の軸線L方向の両端面は、該軸線Lと直交する平坦面に形成され、一方の先端面は、上記ロッドカバー3の外端面3aよりも外側に突出し、上記移動物体4が当接する当接部12bとなっている。該軸受12がシリンダハウジング1から突出する突出長は、上記ロッド7の先端に移動物体4が衝突して該ロッド7がシリンダハウジング1内に押し込まれ、上記移動物体4が上記当接部12bに当接して該軸受12が圧縮変形しても、該移動物体4がシリンダハウジング1の外端面、即ち上記ロッドカバー3の外端面3aに衝突するのを防止できるような長さである。
【0017】
この構成により、緩衝性のある合成樹脂からなる上記軸受12は、上記ロッド7を摺動自在に支持し且つガイドする一方で、該ロッド7の先端への移動物体4の衝突後に該移動物体4を最終的に上記ロッドカバー3に当接させることなく停止させるストッパとしても機能する。しかも、上記緩衝性のある合成樹脂で形成した軸受12は、移動物体4が衝突しても粉塵を発生することがなく、移動物体4を所定の停止位置に緩衝的に停止させることができる。上記軸受12に適した摺動性や耐衝撃性を備えた素材としては、例えば、PPS樹脂等を用いることができる。
上記ロッド7を安定的にガイドさせるため、上記軸受12の軸線L方向の長さSは、上記ロッド7の直径と同等か又はそれより大きいことが望ましい。
【0018】
また、上記ハウジング本体2には、上記ロッドカバー3が取付けられている側と反対側のヘッド側端部に、上記ピストン室5に油状液を充填するための注入孔14が形成され、該注入孔14は、上記油状液に予圧を与えるための調圧部材を兼ねるプラグ15を螺着することにより閉じられている。このプラグ15は、雄螺子部を上記注入孔14の雌螺子部に螺合することで該注入孔14に取り付けられ、該プラグ15を前進させてシール部材15aを注入孔14内の円筒部14aに沿って押し込むことにより、上記シリンダハウジング1内の油状液を加圧するものであり、これにより油状液の漏洩分を予めピストン室5に圧入しておくことができる。
【0019】
上記ハウジング本体2の上記ロッドカバー3を取り付けた側であるロッド側端部には、後述のアキュムレータを形成するためのホルダー18が保持されている。該ホルダー18は、シリンダハウジング1の内部空間のロッド側端部の外周面にOリング19を備え、また、該ホルダー18の上記ロッドカバー3側の端部には、上記ロッド7の外周面に摺接してその周面をシールするロッドパッキン20を収容するための切欠き部21が形成されている。
【0020】
上記シリンダハウジング1のロッドカバー3に形成された上記ロッド導出孔10の内部には、以下に詳述するように、粉塵の侵入を防止する集塵部材24と、潤滑油を保持して上記ロッド7の外周面に供給する潤滑部材25とが、軸受収容孔10aよりもシリンダハウジング1の内側寄りの位置、即ち上記ピストン室5側の位置に設けられている。上記ハウジング本体2とロッドカバー3とが一体化されている場合にも、ロッド導出孔10における軸受収容孔10aよりもピストン室5側の位置に、上記集塵部材24と潤滑部材25とを設ければよい。
【0021】
上記ピストン室5内には、上記ピストン6が、該ピストン6の外周面と上記ピストン室5の内周面との間に上記油状液に流動抵抗を与えるための隙間を保持した状態で、軸線L方向に移動可能に収容されている。
上記ピストン6は、上記ロッド7の基端部の細径化された細径部7aに取付けられ、該ロッド7とピストン6との間に一方向流路が設けられている。この一方向流路は、上記ピストン6が
図2に示すように圧縮側室5a側に向けて押し込まれるときには、該圧縮側室5aから開放側室5bに向かう油状液の流通を阻止し、上記ピストン6が
図1に示すように開放側室5b側に向けて復帰するときには、該開放側室5bから上記圧縮側室5aに向かう油状液の流通を許容するもので、以下のように形成されている。
【0022】
即ち、上記ロッド7の細径部7aの外周面とピストン6の中心孔6aの内周面との間には、該ピストン6の表面側と裏面側とを常時連通させる常開隙間22aを介在させ、また、上記ロッド7の上記細径部7aの一端側の段部7bと、上記ピストン6の該段部7bに対面する側面6bとを、それぞれ平坦面に形成して、該平坦面を、上記ピストン6の軸線L方向への若干の移動により相互に接離可能とすることにより、上記段部7bと側面6bとの間に開閉隙間22bを形成し、
図2のように、上記段部7bが該ピストン6に当接した場合には上記開閉隙間22bが閉鎖されて油状液の流通が阻止され、
図1のように、上記段部7bがピストン6から離間した場合には、上記開閉隙間22bが開放して上記油状液が流通するようにし、それにより、上記常開隙間22aと開閉隙間22bとで上記一方向流路が形成されている。
【0023】
また、上記ロッド7におけるピストン6よりも更に基端部よりの位置には、止め環により円環状のばね受け27を取付け、該ばね受け27とピストン室5におけるヘッド側端との間に、上記ピストン6を上記開放側室5b側に向けて付勢する上記復帰用ばね8を介装し、この復帰用ばね8で、上記ピストン6及びロッド7が常に
図1の初期位置に復帰するように付勢されている。そして、上記ロッド7の細径部7aの軸線方向の長さは、上記ピストン6の厚さよりも若干大きくし、しかもピストン6を上記ロッド7の細径部7a上で軸線方向に遊動可能とする長さを、上記ばね受け27のロッド7先端への取付位置により設定し、そこを流れる油状液がピストン6の復帰動作に適した円滑な流れを確保できるように形成している。
【0024】
上記アキュムレータを形成するためのホルダー18は、ロッド7の外周を取り囲む円筒状のスリーブ29を備え、該スリーブ29の周囲に蓄圧室30が区画形成され、この蓄圧室30の内部に独立気泡の発泡体からなる弾性部材31が収容されて、アキュムレータが構成されている。該弾性部材31は、非圧縮状態での軸方向長さが上記蓄圧室30の軸線L方向長さとほぼ同じであり、
図1の初期位置にある状態では、前記ピストン室5の注入孔14から圧入された油状液の圧力により該弾性部材31が弾性的に圧縮された状態にある。また、上記蓄圧室30の内部は、連通路を通じて上記ピストン室5と相互に連通しているので、上記ピストン室5の内部に封入された油状液も、圧縮された上記弾性部材31の弾性復元力によって加圧された状態にある。
【0025】
上記ピストン6及びロッド7が、
図1に示す初期位置から
図2に示す緩衝停止位置に向けて移動する場合には、上記圧縮側室5aの油状液が開放側室5bに移動するが、上記ピストン6及びロッド7の移動に伴って開放側室5bにロッド7が侵入してくるため、その侵入したロッド7の体積分の油状液を収容する空間をシリンダハウジング1内に用意する必要がある。この空間は、上記蓄圧室30の内部に収容した弾性部材31の圧縮変形により生成され、逆に、ピストン6が上記緩衝停止位置から初期位置に戻る際には、上記開放側室5bの油状液が上記圧縮側室5aに戻ることになるが、この油状液は上記蓄圧室30の内部に圧入された油状液が先に圧縮された弾性部材31の復帰膨張で押し戻されることにより得られるものである。
【0026】
上述したように、上記ロッド導出孔10には、粉塵の侵入を防止する上記集塵部材24が、該ロッド導出孔10の軸受収容孔10a側に配設されている。該集塵部材24は、多孔質素材により形成され、ドライ状態に保持されて粉塵の吸着性能を有し、上記ロッド7に付着した粉塵が上記ロッドパッキン20側へ侵入するのを防止するものである。なお、上記集塵部材24を形成する多孔質素材は、ロッド7に付着して外部に流出する油膜を掻き集めて保持する機能をも有することができるように、液体吸収性を有するものであることが望まれる。
また、上記ロッド導出孔10には、潤滑油を保持する上記潤滑部材25が、上記集塵部材24よりもピストン室5側の位置に配設されている。該潤滑部材25は、多孔質素材により形成されたもので、潤滑剤を含浸して該潤滑剤を上記ロッド表面に供給するものである。
上記集塵部材24及び潤滑部材25を構成する多孔質素材は、フエルト状部材等によって形成するのが望ましい。
【0027】
上記構成により、上記潤滑部材25に含浸させたグリース等の潤滑剤が逐次ロッド7の表面に補給されて油膜が形成されるので、該ロッド7が円滑に摺動し、一方、上記ロッド導出孔10における軸受収容孔10a側に、ドライ状態で粉塵の吸着を行う多孔質素材からなる上記集塵部材24を設けているので、ロッド7に付着した粉塵を該集塵部材24で捕捉して内部への侵入を抑制できるだけでなく、上記ロッド7に付着して外部に流出する油膜を該集塵部材24により掻き集めて保持し、油膜の流出による外部環境の汚染を可及的に防止すると同時に、油膜の損耗を大きく緩和することができる。
なお、上記潤滑部材25に含浸させたグリース等の潤滑剤が逐次ロッド表面に補給されてその残量が少なくなり、該潤滑剤の補給が実質的にできなくなったときには、ピストン室5内に充填している油状液が上記潤滑剤の代用として油膜形成に用いられ、それによって潤滑剤の場合と同様な機能を維持させることができる。
【0028】
また、上記集塵部材24及び潤滑部材25を備えたロッド導出孔10のピストン室5側端には、上記ロッド7の外周面とスリーブ29の内周面との間をシールするロッドパッキン20が配設されている。該ロッドパッキン20の配設位置と上記ロッド7の動作ストロークとの関係は、
図2に示すように、ロッド7が上記軸受12内に完全に押し込まれた際に該ロッド7の外周面の上記ロッドパッキン20に接触する部分が、
図1に示すように、上記ロッド7が後退して上記軸受12から突出した時に上記軸受12から外部に露出しないような関係に設定されている。このような構成も、ロッド7に付着した粉塵をシリンダハウジング1内に侵入させるのを抑制するために有効なものであり、また、ロッド7に付着した油膜が外部に流出するのを抑制するためにも有効なものである。
【0029】
一般的に、ショックアブソーバにおいては、移動物体4がロッド7の先端に対して該ロッド7の軸線L方向に沿う方向で衝突するとは限らず、上記軸線L方向に対して若干の角度的なずれをもって衝突することもあり、このような場合に、上述したようにシリンダハウジング1のロッド導出孔10に上記集塵部材24や潤滑部材25を配設すると、ロッド7をそれだけ長くする必要があることから、角度的なずれをもって衝突した移動物体4からの衝撃力の影響がロッド7及び軸受12に対してより大きいものになると推測される。しかしながら、このようにロッドに対しその軸線方向に角度的に傾いた方向に向けて移動物体4が衝突する場合には、ロッド導出孔10の軸受収容孔10aに密嵌する合成樹脂製の軸受12の存在により、傾いた方向への力によるロッドへの影響が低減され、それにより、上記ロッドへの負荷を軽減してその摺動を安定させると共に、上記集塵部材や潤滑部材の動作を安定させ、結果的に、ロッドパッキンへの摩耗粉等の進入を低減し、その磨耗も軽減させることができる。
【0030】
このように、上記低発塵・耐粉塵ショックアブソーバ50Aによれば、移動物体4とロッドやシリンダハウジングとの衝突時に粉塵が発生するのを抑制し、それに加えて、粉塵等の異物の侵入を抑制すると共に、軸受を通して潤滑のための油膜が外部に流出するのを抑止することができ、そのため、金属粉塵を嫌う環境下においてもこのショックアブソーバを使用することが可能となり、また、粉塵の多い環境下においても長寿命を維持させることができる。
【0031】
図3−
図4は本発明に係るショックアブソーバの第2実施形態を示すものである。この第2実施形態のショックアブソーバ50Bが上記第1実施形態のショックアブソーバ50Aと相違する点は、ロッド7の外周面に、上記軸受12の中心孔12aの内周面に対する該ロッド7の接触面積を小さくするための溝33が形成されていることである。これ以外の構成は実質的に上記第1実施形態のショックアブソーバ50Aと同じであるから、主要な同一構成部分に該第1実施形態のショックアブソーバ50Aと同じ符号を付してその説明は省略し、上記溝33に関連する構成の説明を以下に行うこととする。
【0032】
一般に、ショックアブソーバを使用する作業環境下においては、粉塵の粒径が数μm程度まで細径化すると、該粉塵の粒子は重力支配下から静電気支配下に置かれるため、ロッド7の表面に付着した粒子は上記集塵部材24で除去されにくくなる。このため、ロッド7表面に付着した粒子が上記合成樹脂製の軸受12の中心孔12a内周面に付着して堆積し易くなる。
このような問題を解消するため、この第2実施形態のショックアブソーバ50Bでは、ロッド7の外面に溝33を形成することにより、軸受12に対する該ロッド7の接触面積を小さくして、該軸受12内に持ち込まれる粉塵の量を少なくしたものである。
【0033】
上記溝33は、上記ロッド7の外周を取り巻く円形の溝であって、その溝幅Wは、上記軸受12の長さSより小さく且つ溝33の全周にわたり一定であるが、該溝33の深さは該溝33の幅W方向に一定ではなく、
図5に示すように、ロッド7の基端側(
図5の右側)に向けて次第に深くなっている。即ち、上記溝33は、三角形の2辺で囲まれたような断面形状を有していて、ロッド先端側の第1溝端33aからロッド基端側の第2溝端33bに向けて該溝の深さが次第に深くなる方向に傾斜する底壁33cと、上記第2溝端33bに形成された側壁33dとを有し、上記底壁33cの上記第1溝端33a側の端部は、上記ロッド7の外周面7cと同位置にあり、上記底壁33cの上記第2端33b側の端部は、上記側壁33dの下端即ち内径端に連なっている。
【0034】
上記第2溝端33b側に形成される最深部での溝の深さDは、ロッド7の直径によって好ましい深さが異なり、通常は、該ロッド7の直径の0.5−20%程度の深さが好ましいが、より好ましくは0.5−5%程度の深さにすることである。
また、上記側壁33dは、必ずしも軸線Lに対して直角である必要はなく、外径側にいくほど次第にロッド7の基端側に近づくような角度に傾斜していてもよい。
【0035】
上記溝33が形成されているロッド7上の位置は、該ロッド7が
図3の初期位置にある場合、即ち、軸受12から最大限突出した状態にある場合には、該溝33が上記軸受12の外に露出し、上記ロッド7が移動物体で上記軸受12内に押し込まれるとき該溝33が上記軸受12の中心孔12aの内周面に接触できるような位置である。
この場合、上記溝33は、
図4に示すように、上記ロッド7が移動物体4で軸受12内に最大限押し込まれて緩衝停止位置に達したとき、上記軸受12を通り過ぎて集塵部材24の手前の位置に止まるか、あるいは、
図6に示す第3実施形態のショックアブソーバ50Cのように、上記集塵部材24と重なる位置、即ち該集塵部材24の内部に止まるような位置に形成されていることが望ましい。しかし、上記溝33は、上記軸受12の内部に止まるような位置に形成されていても良い。言い換えれば、上記溝33は、上記ロッド7が上記緩衝停止位置まで押し込まれても上記潤滑部材25に接触しない位置に形成されていることが望ましく、これにより、上記潤滑部材25に含浸された潤滑油がこの溝33によって外部に持ち出されるのを防止することができる。
【0036】
また、
図7に示す第4実施形態のショックアブソーバ50Dのように、前記溝33はロッド7に複数形成することもできる。この場合、複数の溝33は、等間隔で配置されていても、不規則な間隔で配置されていてもよく、また、該複数の溝33の配置は、
図7に鎖線で示すように、上記ロッド7が緩衝停止位置まで押し込まれた際に、最もロッド7の基端側にある溝33aが、上記集塵部材24の手前の位置か又は該集塵部材24と重なる位置を占め、その他の溝33が、上記軸受12を通り過ぎるか又は該軸受12の内部に止まるような配置であることが望ましい。
【0037】
かくして上記第2−第4実施形態のショックアブソーバ50B−50Dのように、上記ロッド7の外周に溝33を形成することにより、該ロッド7が上記軸受12内に押し込まれたとき、該軸受12に対するロッド7の接触面積が上記溝33幅の分だけ小さくなるため、上記ロッド7に溝33を形成しない場合に比べ、該ロッド7の外周面に付着して上記軸受12内に持ち込まれる粉塵の量が少なくなり、該軸受12の内周面に粉塵が付着することによるロッド7の摺動性の低下を来しにくくなる。
また、上記軸受12内に押し込まれた上記ロッド7が初期位置に復帰する際に、上記軸受12の内周面に付着した粉塵が、上記溝33のエッジ特に第2溝端33b側のエッジで掻き取られて外部に排出されるため、軸受12に対する除塵効果も得られるという利点もある。
なお、上記溝33の内部には、
図5に鎖線で示すように、フェルト状をした粉塵捕捉材35を設けることもでき、これにより、上記軸受12の内周面に付着した粉塵を該粉塵捕捉材35で掻き取って捕捉し、外部に効率よく排出することができる。
【0038】
上記第2−第4実施形態では、上記溝33が円形をしているが、この溝33は、
図8に示す第5実施形態のショックアブソーバ50Eのように、螺旋形であってもよい。このような螺旋形の溝33を形成する場合、該溝33の長さは、ロッド7を一周以上取り巻くような長さであることが望ましい。
【0039】
また、上記溝33は、幅W方向に一定の深さを有するものであってもよく、あるいは、断面がU字形をしていても構わない。
更には、ロッド7の外周を取り巻く上記円形又は螺旋形の溝33の代わりに、軸線Lと平行に延びる直線状の溝や、螺旋の一部をなす曲線状の溝等をロッド7の外面に形成してもよく、この場合、複数の溝を上記軸線Lの回りに等間隔で配置することが望ましい。