(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合面に圧力を付与させた後、予め設定された時間を経過したとき、前記制御部は、前記接合面に圧力を付与しないように前記加圧部を制御することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の通電加熱接合装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、熱溶着法では、金属部材全体を樹脂の溶融温度以上に加熱するので、金属表面からの輻射熱で、樹脂部材の溶着部分以外の部分が変形する場合があるという問題がある。さらに、温度上昇に伴い金属部材の表面が酸化等に起因し変色する場合があるという問題がある。
【0007】
一方、特許文献1に記載の接合方法は、金属部材と樹脂部材の材質が非常に限定されるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、金属部材と樹脂部材の材質が限定されずに、変形せずに樹脂部材を金属部材に接合することが可能な通電加熱接合装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通電加熱接合装置は、金属からなる第1の被接合部材と樹脂からなる第2の被接合部材とを接合する通電加熱接合装置であって、前記第1の被接合部材を挟持して、前記第1の被接合部材と電気的に導通可能な複数の電極と、前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材との接合面に圧力を付与する加圧部と、前記第1の被接合部材の温度を検知する温度センサと、前記温度センサが検知した温度が予め設定した温度になった後、
前記予め設定した温度を維持しながら、前記接合面に圧力を
継続して付与させるように前記加圧部を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の通電加熱接合装置によれば、第1の被接合部材の温度が予め設定した温度になるまで、接合面に圧力を付与しないので、第2の被接合部材の温度上昇する部分は少ない。よって、第2の被接合部材には屈曲、圧縮などの変形がほとんど生じない。
【0011】
また、本発明の通電加熱接合装置において、前記電極に電流を供給する電源を備え、 前記温度センサが検知した温度が前記予め設定した温度以下のとき、前記電源を作動し、前記温度センサが検知した温度が前記予め設定した温度を超えたとき、前記電源を停止させることが好ましい。
【0012】
この場合、温度センサが検知した温度と予め設定した温度とを参照して、電極に電流を供給する電源の作動、停止を行うので、第1の被接合部材の温度を予め設定した温度に確実に維持することができる。
【0013】
また、本発明の通電加熱接合装置において、前記接合面に付与される圧力を検知する圧力センサを備え、前記圧力センサが予め設定した圧力を超えたとき、前記制御部は、前記接合面に圧力を付与しないように前記加圧部を制御することが好ましい。
【0014】
この場合、第2の被接合部材の接合面付近の部分の溶融量を制限することが可能となり、第2の被接合部材の過大な溶け込みを確実に防止することができる。
【0015】
また、本発明の通電加熱接合装置において、前記接合面に圧力を付与させた後、予め設定された時間を経過したとき、前記制御部は、前記接合面に圧力を付与しないように前記加圧部を制御することが好ましい。
【0016】
この場合、第2の被接合部材の接合面付近の部分の溶融量を制限することが可能となり、第2の被接合部材の過大な溶け込みを確実に防止することができる。
【0017】
また、本発明の通電加熱接合装置において、前記予め設定した温度は、前記第2の被接合部材の軟化温度以上、且つ前記第2の被接合部材の溶融温度未満であ
る。
【0018】
これにより、予め設定した温度に達した第1の被接合部材から接合面を介して第2の被接合部材に伝熱されて、第2の被接合部材が軟化温度以上となって軟化して接合面に付与された圧力によって接合が可能となる。そして、第2の被接合部材は、溶融温度を超えて温度上昇しないので、過大な変形や溶け込みなどが生じない。尚、予め設定した温度は、第2の被接合部材の軟化温度又は軟化温度より十度から数十度程度高い温度であればよく、溶融温度より大幅に低い温度であることがより好ましい。
【0019】
また、本発明の通電加熱接合装置において、大気雰囲気で前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材とを接合することが好ましい。
【0020】
この場合、第1の被接合部材と第2の被接合部材との接合部分を真空雰囲気や不活性ガス雰囲気にする必要がないので、装置を簡素化すること可能となる。尚、第2の被接合部材の溶融温度未満の温度で接合するので、接合面に酸化被膜は発生しない。
【0021】
また、本発明の通電加熱接合装置において、前記加圧部は弾性体を有し、前記弾性体の弾性力によって前記接合面に圧力を付与することが好ましい。
【0022】
この場合、接合面に急激に大きな圧力が付与されることが防止され、第2の被接合部材の過大な溶け込みを確実に防止することができる。
【0023】
本発明の通電加熱接合方法は、金属からなる第1の被接合部材と樹脂からなる第2の被接合部材とを接合する通電加熱接合方法であって、前記第1の被接合部材と電気的に導通可能な複数の電極間に前記第1の被接合部材を挟持して通電し、前記第1の被接合部材の温度が前記第2の被接合部材の軟化温度以上、且つ前記第2の被接合部材の溶融温度未満である予め設定した温度になった後、
前記予め設定した温度を維持しながら、前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材との接合面に圧力を
継続して付与することを特徴とする。
【0024】
本発明の通電加熱接合方法によれば、第1の被接合部材の温度が予め設定した温度になるまで、接合面に圧力を付与しないので、第2の被接合部材の温度上昇する部分は少ない。よって、第2の被接合部材には屈曲、圧縮などの変形がほとんど生じない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態である通電加熱接合装置1について説明する。
【0027】
図1から
図3を参照して、通電加熱接合装置1は、金属からなる被接合部材M1と樹脂からなる被接合部材M2とを接合する装置である。通電加熱接合装置1は、電極ユニット10、加圧ユニット20、温度センサ30及び制御ユニット40を備えている。これらは図示しない架台に搭載されている。
【0028】
被接合部材M1は、通電可能な金属であれば、その材質は特に限定されない。被接合部材M1の材質として、例えば、ステンレス鋼などの鉄鋼材料、 銅、アルミニウム、亜鉛などの単体非鉄金属、アルミニウム、 ニッケル、クロム、チタン、銅等を含む各種合金などの金属材料が挙げられる。
【0029】
被接合部材M2は、樹脂であれば、その材質は特に限定されない。被接合部材M2の材質として、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)ポリアミド(PA)を含む各種合成樹脂や天然樹脂が挙げられる。
【0030】
被接合部材M1は、ここでは、段差を有する円柱形状である。そして、被接合部材M2は、ここでは、内部に段差を有する円筒形状である。被接合部材M1を被接合部材M2に入れ込むことにより、被接合部材M1,M2の段差同士が当接すると共に、被接合部材M1の外周面と被接合部材M2の内周面とが接触する。そして、被接合部材M1の上下両端部は、被接合部材M2から突出する。尚、被接合部材M1,M2の接合面は、粗面であることが好ましいが、鏡面であってもよい。
【0031】
電極ユニット10は、上下一対の電極11,12と下電極12を押し上げる押上機構13とから構成されている。押上機構13は、ここでは、ばね13aと、ばね13aを下電極12との間で自由長より短い予め設定された長さに規制するためのブロック体13bとから構成されている。尚、押上機構13によって押し上げられる下電極12から被接合部材M1に作用する圧力は、被接合部材M2の材質や形状に応じて異なるが、例えば5N乃至100Nである。そして、この圧力は、ばね13aを交換することによって変更可能である。
【0032】
上電極11は、ここでは、銅、モリブデン、タングステンなどからなる上通電電極11aと、上通電電極11aの下部に固定された抵抗体11bとからなっている。
【0033】
下電極12は、ここでは、銅、モリブデン、タングステンなどからなる下通電電極12aと、下通電電極12aの上部に固定された抵抗体12bとからなり、下通電電極12aの下部がベークライト等からなる絶縁体14を介して基礎台15に固定されている。
【0034】
上下通電電極11a,12aと被接合部材M1との間に放電が生じないように、これらの間には、例えば1mm以上の隙間が設けられている。
【0035】
抵抗体11b,12bは、通電により発熱する材質、例えば、カーボン、カーボン複合材、炭化ケイ素、ステンレスなどからなる。そして、抵抗体11bは、被接合部材M1の上面に接触するが、被接合部材M2には接触しないように構成され、ここでは、円板状に形成されている。抵抗体12bは、被接合部材M1の下面に接触するが、被接合部材M2には接触しないように構成され、ここでは、円板状に形成されている。
【0036】
上下電極11,12は、その軸線が同一線上となるように配置されており、その間に被接合部材M1が挟持される。そして、上下通電電極11a,12aは、それぞれ図示しないケーブルを介して電源16に接続されており、通電可能に構成されている。被接合部材M1を抵抗体11b,12bで挟んだ状態で上下通電電極11a,12aに通電することにより、被接合部材M1全体を均一に加熱することができる。
【0037】
電源16は、ここでは、インバータ制御パルス電源である。この電源16は、整流回路、ダイオードやサイリスタを有するインバータを備えており、発生させるパルスのパルス波形、パルス幅、パルス間隔、電流、電圧等のパルス特性調整要素が制御ユニット40により変更可能に構成されている。
【0038】
加圧ユニット20は、上通電電極11aが固定された加圧ブロック21と、加圧ブロック21を駆動させるための駆動源22と、駆動源22の駆動力を伝達し、加圧ブロック21を上下動させるボールねじ機構23とから構成されている。
【0039】
加圧ブロック21は、銅、モリブデン、タングステンなどからなり、上通電電極11aを固定するための図示しない固定機構を備えている。加圧ブロック21は、ここでは、汎用性を持たせるために正方形板状に形成されているが、上通電電極11aの上面に合せて円板状に形成してもよい。
【0040】
尚、上通電電極11a及び加圧ブロック21は、図示しない冷却機構により純水や水道水などの冷却流体が循環されて、冷却可能に構成されている。また、下通電電極12aも、図示しない冷却機構により純水や水道水などの冷却流体が循環されて、冷却可能に構成されている。
【0041】
駆動源22は、ここでは減速機付きのサーボモータである。サーボモータ22には、エンコーダ22aが付設されており、図示しない架台に配置されている。
【0042】
ボールねじ機構23は、上下方向に延び外周面にねじ溝が形成されたねじ軸23aと、内周面にねじ溝が形成されたナット23bと、これらのねじ溝間に収容された複数のボール23cとから構成されている。ナット23bは、加圧ブロック21の上部にベークライト等からなる絶縁体24及び圧力センサ25を介して固定されている。ねじ軸23aは、サーボモータ22の回転軸に減速機を介して接続されている。サーボモータ22が回転駆動することにより、ねじ軸23aが回転して、ナット23b、ひいては加圧ブロック21がねじ軸23aに対して相対的に上下移動する。
【0043】
圧力センサ25は、例えば、上下方向の圧力を測定する一軸のロードセルであるが、多軸の圧力センサを用いてもよい。圧力センサ25により、被接合部材M1,M2の接合面に付与される圧力を間接的に検知することができる。
【0044】
サーボモータ22の回転駆動力がボールねじ機構23で上下方向の駆動力に変換され、加圧ブロック21が上下動する。
【0045】
そして、サーボモータ22の駆動を停止させると、その後、加圧ブロック21の位置が維持される。このとき、加圧ユニット20は、被接合部材M2の変位を規制して接合面に圧力を付与しており、本発明の加圧部として機能する。
【0046】
温度センサ30は、被接合部材M1の温度、好ましくは被接合部材M1の接合面近傍の温度を検知する。温度センサ30は、ここでは、赤外線放射温度計などの非接触式のものである。尚、温度センサ30は、被接合部材M1の表面に接触させて温度を測定する熱電対等の接触式センサで代用してもよく、非接触式のものと接触式のものを併用してもよい。
【0047】
制御ユニット40は、CPU、ROM、RAM、I/O等から構成されており、操作部41及び表示部42が電気的に接続されている。操作部41は、ここでは、起動スイッチ、スタートスイッチ等の各種の操作スイッチ、タッチパネル等からなる入力盤などから構成されている。操作部41から入力された情報は、制御ユニット40に送信される。
【0048】
また、制御ユニット40には、エンコーダ22a、圧力センサ25及び温度センサ30から検知信号が入力される。制御ユニット40は、これら検知信号、操作部41から入力された情報及びその記憶部に格納された設定圧力Ps、下限設定圧力Ps1、設定温度Ts、設定保持時間Hsなどの制御情報に基き、電源16及びサーボモータ22に制御信号を出力する。尚、制御ユニット40は、本発明の制御部に相当する。
【0049】
ここで、設定温度Tsは、被接合部材M2の軟化温度、又は被接合部材M2の軟化温度より1℃〜数十℃程度の所定温度高い温度であり、予め試行実験などで適宜設定される。ただし、設定温度Tsは、被接合部材M2の溶融温度未満であり、より好ましくは被接合部材M2の溶融温度より大幅に低い温度である。
【0050】
温度センサ30は、検知温度が設定温度Tsを超えたとき、電源16をオフさせるオフ信号を電源16に直接出力する。また、温度センサ30は、検知温度が設定温度Ts以下となったとき、電源16をオンさせるオン信号を電源16に直接出力する。このように、制御ユニット40を介することなく温度センサ30から電源16に信号を直接出力するので、被接合部材M1の温度Tを設定温度Tsに素早く復帰させることが可能となる。従って、被接合部材M1の温度Tが設定温度Tsに常に維持される。
【0051】
また、制御ユニット40には、表示部42が電気的に接続されている。表示部42は、ここでは、デジタル表示パネル、ランプなどから構成されている。表示部42は、制御ユニット40への入力、又は制御ユニット40での演算結果に基く情報を制御ユニット40から受信し、その情報を表示する。
【0052】
次に、上述した通電加熱接合装置1を用いて、本発明の第1実施形態に係る通電加熱接合方法を実施する際の処理について
図4を参照して説明する。尚、以下のS3〜S11の処理は、制御ユニット40により実行される。
【0053】
先ず、作業者は、下電極12の上に被接合部材M1,M2を設置する(S1)。尚、このとき、位置決めピンなどによって被接合部材M1,M2の設置を補助してもよい。
【0054】
作業者により操作部41のスタートスイッチがONされると(S2:YES)、サーボモータ22を駆動させて、上電極11を下降させる(S3)。これにより、被接合部材M1が上下電極11,12によって挟持される。尚、このとき、上下電極11,12により挟持されることによって被接合部材M1に作用する圧力は、上下電極11,12及び被接合部材M1が互いに確実に接触する程度の圧力である。
【0055】
被接合部材M1を上下電極11,12で挟持した状態を保ちながら、電源16を始動させて上下電極11,12を通電する(S4)。これにより、被接合部材M1が加熱されて温度が上昇する。この状態では、被接合部材M2は、大きな圧力で被接合部材M1と接触しているわけではなく、被接合部材M1との接触面付近の部分も然程温度が上昇せず変形も発生しない。
【0056】
その後、温度センサ30が検知する被接合部材M1の温度Tが設定温度Tsになったとき(S5:YES)、設定温度Tsを維持した状態を保ちながら、サーボモータ22を駆動させて、加圧ブロック21を下降させて、加圧ブロック21で被接合部材M1を所定の設定圧力Psで被接合部材M2に押し付ける(S6)。
【0057】
尚、設定温度Tsの維持は、温度センサ30が、オフ信号又はオン信号を電源16に直接出力することによって行われる。また、設定圧力Psであるか否かは、圧力センサ25からの検知値を監視することで判断される。
【0058】
そして、予め設定された所定の設定温度Tsを維持した状態を保ち、且つ被接合部材M2を加圧ブロック21で押し付けた状態を、予め設定された所定の設定保持時間Hs継続する(S7)。尚、設定保持時間Hs継続したか否かは、制御ユニット40の図示しないタイマを参照して判断される。
【0059】
この間、被接合部材M2の被接合部材M1との接触面である段差付近の部分は加熱されて温度が上昇する。尚、被接合部材M1の外周面と被接合部材M2の内周面との間には微少な隙間があり空気の断熱層となるので、被接合部材M2の内周面はほとんど加熱されず、段差付近の部分のみ加熱される。
【0060】
さらに、この間、圧力センサ25が検出した圧力Pが予め設定された所定の下限設定圧力Ps1未満となったか否かを監視する(S8)。下限設定圧力Ps1は、被接合部材M2の被接合部材M1との接触面付近の部分が溶融した状態での圧力Pであり、被接合部材M2の材質や形状等を考慮して設定すればよい。下限設定圧力Ps1を設定することにより、被接合部材M2の溶け込み量を調整することができる。
【0061】
設定保持時間Hs経過後、電源16を停止して、上下電極11,12の通電を終了する(S9)。圧力センサ25が検出した圧力が下限設定圧力Ps1未満となったときは、異常終了する。そして、図示しない冷却機構により下通電電極12a及び加圧ブロック21に冷却流体が循環させて、被接合部材M1,M2を冷却する(S10)。制御ユニット40の図示しないタイマを参照して予め設定された冷却時間が経過したとき、冷却は終了される。尚、温度センサ30が検出した温度が予め設定された温度未満になったとき、冷却を終了させてもよい。ただし、設定温度Tsのみ、又は下限設定圧力Ps1のみで判定してもよい。
【0062】
その後、サーボモータ22を駆動させて加圧ブロック21を上昇させて上電極11を上昇させる(S11)。
【0063】
これにより、被接合部材M2の被接合部材M1との接触面付近の溶融した部分は温度が低下して硬化し、被接合部材M1と被接合部材M2とは強固に接合される。被接合部材M2の被接合部材M1との接触面付近以外の部分は溶融せず、軟化開始温度以上となる部分も少ないので、被接合部材M2には、歪み、屈曲、圧縮などの変形がほとんど生じない。
【0064】
その後、作業者が接合部材を取り出す(S12)。
【0065】
従来のように被接合部材M2を被接合部材M1に押圧しながら被接合部材M1を加熱すると、加熱過程における熱が被接合部材M2に流れ込むため、被接合部材M2全体の温度が上昇する。そのため、被接合部材M2は品質保障温度を超えて品質は劣化し、さらに歪み、屈曲、圧縮などの変形が生じる。
【0066】
本実施形態では、被接合部材M1の温度Tが設定温度Tsになるまで(S5:YES)、被接合部材M1を被接合部材M2に大きな圧力で押圧しないので、被接合部材M2の軟化開始温度以上となる部分は少なく、被接合部材M2に歪み、屈曲、圧縮などの変形がほとんど生じない。また、被接合部材M2の品質保障温度を超える部分も少ないので、被接合部材M2の品質は良好に維持される。
【0067】
さらに、本実施形態では、被接合部材M1の温度Tを設定温度Tsに、例えば+−1℃の精度で維持しているので、最適な条件で被接合部材M2の接合面付近の部分が軟化するので、発泡などが発生しない。そのため、接合強度は良好なものとなる。
【0068】
また、被接合部材M2の溶融温度未満の温度で接合するので、接合面に酸化被膜は発生せず、通常の大気雰囲気で接合することができる。そのため、接合部分を真空雰囲気や不活性ガス雰囲気にする必要がなく、装置を簡素化することが可能となる。
【0069】
尚、被接合部材M1、M2の凸の角部を鋭くする一方、被接合部材M1、M2の凹の角部に丸みを帯びさせれば、被接合部材M1の角部が被接合部材M2の角部に強く押し当り、角部同士が確実に接合される。そして、この角部同士の接合は円周状に亘るので、接合した部材の気密性が良好となる。
【0070】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態である通電加熱接合装置101について説明する。
【0071】
図5から
図7を参照して、通電加熱接合装置101は、金属からなる矩形板状の被接合部材M1と樹脂からなる矩形板状の被接合部材M2とを接合する装置である。通電加熱接合装置101は、上述した通電加熱接合装置1と類似するので、同一又は対応する部材には同一の符号を付し、異なる箇所についてのみ説明する。
【0072】
通電加熱接合装置101は、電極ユニット110、加圧ユニット120、温度センサ30及び制御ユニット40を備えている。これらは図示しない架台に搭載されている。
【0073】
電極ユニット110は、上下一対の電極111,112と上電極111を上下動させる上下動機構113とから構成されている。上下動機構113は、ここでは、エアシリンダである。
【0074】
上電極111は、ここでは、銅、モリブデン、タングステンなどからなる上通電電極111aと、上通電電極11aの下部に固定された抵抗体111bとからなり、上通電電極111aは、ベークライト等からなる絶縁体115を介して、エアシリンダ113のピストン113aの下端部に固定されている。
【0075】
下電極112は、ここでは、銅、モリブデン、タングステンなどからなる下通電電極112aと、下通電電極112aの上部に固定された抵抗体112bとからなり、下通電電極112aの下部がベークライト等からなる絶縁体114を介して図示しない架台に固定されている。
【0076】
上電極111の抵抗体111bは、被接合部材M1の上面に接触するが、被接合部材M2には接触しないように構成され、ここでは、被接合部材M1の上面の約半分に接触するような矩形板状に形成されている。
【0077】
下電極112の抵抗体112bは、被接合部材M1の下面に接触するが、被接合部材M2には接触しないように構成され、ここでは、被接合部材M1の下面が略全面接触するような矩形板状に形成されている。
【0078】
下電極112の下通電電極112aは、その上面に、被接合部材M1の上に配置された被接合部材M2が安定的に配置されるように構成されている。具体的には、下通電電極112aには、被接合部材M2の両側面を位置決めするためのガイド片112cが形成されている。また、溶融した被接合部材M2が付着しないように、接合面付近では下通電電極112aは被接合部材M2と接触しないように構成されている。
【0079】
上下電極111,112は、その中心軸線が偏心して配置されているが、被接合部材M1は、それぞれの上下面が抵抗体111b,112bと面接触するので、上下電極111,112の間に安定的に挟持される。そして、被接合部材M1を抵抗体111b,112bで挟んだ状態で上下通電電極111a,112aに通電することにより、被接合部材M1の接合面を含む約半分の部分を均一に加熱することができる。
【0080】
加圧ユニット120は、被接合部材M2と接触する加圧ブロック121と、加圧ブロック121を駆動させるための駆動源22と、駆動源22の駆動力を伝達し、加圧ブロック21を上下動させるボールねじ機構23とから構成されている。
【0081】
加圧ブロック121は、銅、モリブデン、タングステンなどからなり、被接合部材M2の上面に面接触する加圧プレート121aと、加圧プレート121aと一体的に設けられたブロック体121bと、加圧プレート121aとブロック体121bとの間に配置された弾性体121cとから構成されている。加圧プレート121aは、被接合部材M2の上面に接触するが、被接合部材M1及び上電極11には接触しないように構成されている。加圧プレート121aは、ここでは、被接合部材M2の接合面の上方に位置する上面に接触するように矩形板状に形成されている。
【0082】
弾性体121cは、加圧プレート121aとブロック体121bとを離間させる方向に弾性力を作用させるものであり、ばね、例えば渦巻きばねから構成されている。尚、図示しないが、加圧プレート121aとブロック体121bとはその間の最大隙間超えて離間しないように構成されている。
【0083】
サーボモータ22の回転駆動力がボールねじ機構23で上下方向の駆動力に変換され、加圧ブロック121が上下動する。
【0084】
そして、サーボモータ22の駆動を停止させると、その後、加圧ブロック121の位置が維持される。このとき、加圧ユニット120は、被接合部材M2の変位を弾性体121cの弾性力より規制して接合面に圧力を付与しており、本発明の加圧部として機能する。
【0085】
上述した通電加熱接合装置101を用いて、本発明の第2の実施形態に係る通電加熱接合方法を実施する際の処理は、上述した本発明の第1の実施形態に係る通電加熱接合方法と類似するので、
図4を参照して異なる箇所についてのみ説明する。
【0086】
作業者により操作部41のスタートスイッチがONされると(S2:YES)、エアシリンダ113を駆動させて、上電極111を下降させる(S3)。これにより、被接合部材M1が上下電極111,112によって挟持される。尚、このとき、上下電極111,112により挟持されることによって被接合部材M1に作用する圧力は、上下電極111,112及び被接合部材M1が互いに確実に接触する程度の圧力である。
【0087】
そして、被接合部材M1を上下電極111,112で挟持した状態を保ちながら、電源16を始動させて上下電極111,112を通電する(S4)。これにより、被接合部材M1が加熱されて温度が上昇する。この状態では、被接合部材M2は、単に被接合部材M1の上に載置されているだけであり、被接合部材M1との接触面付近の部分も然程温度が上昇せず変形も当然に生じない。
【0088】
その後、温度センサ30が検知する被接合部材M1の温度Tが設定温度Tsになったとき(S5:YES)、設定温度Tsを維持した状態を保ちながら、サーボモータ22を駆動させて、加圧ブロック121を下降させて、加圧プレート121aで被接合部材M2を所定の設定圧力Psで被接合部材M1に押し付ける(S6)。尚、このとき、弾性体121cの存在によって、設定圧力Psを超える大きな圧力が急激に被接合部材M2に作用することが防止される。
【0089】
そして、予め設定された所定の設定温度Tsを維持した状態を保ち、且つ被接合部材M2を加圧プレート121aで押し付けた状態を、予め設定された所定の設定保持時間Hs継続する(S7)。さらに、この間、圧力センサ25が検出した圧力Pが予め設定された所定の下限設定圧力Ps1未満となった否かを監視する(S8)。
【0090】
設定保持時間Hs経過後、電源16を停止して、上下電極111,112の通電を終了する(S9)。そして、図示しない冷却機構により下通電電極112a及び加圧ブロック121に冷却流体が循環させて、被接合部材M1,M2を冷却する(S10)。
【0091】
その後、サーボモータ22を駆動させて加圧ブロック121を上昇させると共に、エアシリンダ113を駆動させて上電極111を上昇させる(S11)。
【0092】
これにより、被接合部材M2の被接合部材M1との接触面付近の溶融した部分は温度が低下して硬化し、被接合部材M1と被接合部材M2とは強固に接合される。被接合部材M2の被接合部材M1との接触面付近以外の部分は軟化せず、軟化開始温度以上となる部分も少ないので、被接合部材M2には、歪み、屈曲、圧縮などの変形がほとんど生じない。
【0093】
その後、作業者が接合部材を取り出す(S12)。
【0094】
これにより、本実施形態によれば、被接合部材M1の温度Tが設定温度Tsになるまで(S5:YES)、被接合部材M1を被接合部材M2に押圧しないので、被接合部材M2の軟化開始温度以上となる部分は少なく、被接合部材M2に歪み、屈曲、圧縮などの変形がほとんど生じない。また、被接合部材M2の品質保障温度を超える部分も少ないので、被接合部材M2の品質は良好に維持される。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被接合部材M1に対する電極の個数や設置部位などに関して限定されない。
【0096】
また、上電極11,111を動作させる場合について説明した。しかし、これに限定されず、下電極12,112を動作させてもよく、上下電極11,12,111,112を共に動作させてもよい。
【0097】
また、加圧ブロック21,121をボールねじ機構23で往復動作させる場合について説明した。しかし、加圧ブロック21,121を往復動作させる機構は、これに限定されず、公知の機構を用いればよい。例えば、直線移動ガイド機構を用いてもよい。
【0098】
また、第2の実施形態では、弾性体121cを備える場合について説明した。しかし、弾性体121cを備えることなく、加圧プレート121aとブロック体121bとを一体化させて、サーボモータ22の駆動による力をそのまま、接合面に圧力として付与してもよい。
【0099】
また、通常の大気雰囲気で被接合部材M1,M2を接合する場合について説明した。しかし、これに限定されず、被接合部材M1,M2の接合面を含む部分を真空雰囲気や窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気として接合してもよい。
【0100】
例えば、少なくとも被接合部材M1,M2の接合面を含む部分をする真空化ユニットを通電加熱接合装置1,101が備えていてもよい。これにより、例え接合温度が被接合部材M1の融点近傍となっても接合面に酸化被膜が発生することが抑制され、接合が容易且つ強固となる。
【0101】
真空化ユニットとしては、例えば、通電加熱接合装置1,101全体を取り囲むチャンバと、チャンバ内を真空化させる真空化装置と、チャンバ内の真空状態を破壊する真空破壊装置とから構成すればよい。真空化装置は、例えば、チャンバ内の気体を図示しない給排気管を介して排出する真空ポンプである。真空破壊装置は、例えば、給排気管を介してチャンバ内に気体を供給する気体供給ポンプである。真空破壊装置は、チャンバ内に外気を導入させるために、給排気管に設けたバルブなどであってもよい。
【0102】
そして、チャンバ内の真空度(圧力)を検知するピラニー式などの真空センサを設置さし、チャンバの正面側に、被接合部材M1,M2を出し入れするための扉が設けることが好ましい。尚、温度センサ30は、チャンバののぞき窓の外部に設置すればよい。
【0103】
また、被接合部材M1,M2の形状は、例えば、パイプ状、バルク状、厚板状、薄板状など任意の形状であってもよく、溝加工、穴開け加工など任意の加工が施されていてもよい。そして、被接合部材M1,M2の形状及びその接合部の形状や位置に応じて、上下電極11,12,111,112及び加圧ユニット20,120を適宜構成すればよい。
【0104】
また、被接合部材M1に2個以上の被接合部材M2を同時に接合するものであってもよい。
【0105】
(実施例)
以下、本発明の実施例に挙げて説明する。
【0106】
上述した通電加熱接合装置101を用いて、被接合部材M1と被接合部材M2とを接合した。被接合部材M1の材質は、アルミニウム(A1050)、タフピッチ銅(C1100)、ステンレス鋼(SUS304)、又は普通鋼板(SPCC)であり、被接合部材M2の材質は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリアミド(PA)66であった。
【0107】
被接合部材M1として長さ49mm、幅12mm、厚さ1.5mmの細長片を、被接合部材M2として長さ49mm、幅12mm、厚さ3mmの細長片をそれぞれ用意し、これら細長片を接合面が長さ12mm、幅12mmとなるよう配置して接合した。
【0108】
設定温度Ts、設定保持時間Hs、上下電極111,112への印加電流I、設定圧力Psは、表1に示すように設定した。
【0109】
接合した部材を引張剪断試験を行った結果、全ての実施例で被接合部材M2の母材が破断した。これより、接合強度は強固であることが分かった。