【実施例】
【0039】
[1]CXorf48遺伝子の発現
本実施例では、CXorf48遺伝子が、正常組織では、精巣以外で発現していないが、様々ながん細胞株およびがん組織では発現が高いことを示す。
【0040】
[1−1]まず、試料として、メラノサイトを含む正常組織、及びメラノーマ細胞株8検体を用い、Isogen(ニッポンジーン社)を用いてmRNAを抽出し、GoScript
TMReverse Transcription System(Promega社)を用いてcDNAを合成し、TakaraTaq polymerase(Takara Bio社)を用いてPCRを行った。
図1に、得られた増幅産物のシグナルを示す。なお、PCRのプライマーは、全てのアイソフォームが検出できる、以下のものを用いた。
【0041】
Forward:5’-GTTGTGCCTCGCCATCTTTATG-3’(配列番号2)
Reverse:5’-TGCACTGGGGTGATAGAAATCG-3’(配列番号3)
図1に示されるように、正常組織においては、CXorf48遺伝子は精巣においてのみ発現が観察され、メラノーマ細胞では、高頻度で、高レベルの発現が観察された。
【0042】
[1−2]次に、試料として、固形腫瘍細胞株13検体、造血器腫瘍細胞株(多発性骨髄腫細胞株を含む)15検体を用い、同様にして、RT−PCRを行った。今回は、増幅産物を電気泳動して得られたシグナルを、imageJを用いて定量し、ヒトメラノーマ細胞株である501Aを基準としてCXorf48遺伝子の発現量を比較した。
図2に、各試料において得られたシグナルと、発現量の相対値を示す。
【0043】
図2Aに示されるように、CXorf48遺伝子は、様々な種類の腫瘍(アストログリオーマ、グリオブラストーマ、肺がん、膵がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、腎がん)において、発現していた。また、
図2Bに示されるように、様々な種類の造血器腫瘍(慢性骨髄性白血病、バーキットリンパ腫、組織球性リンパ腫、多発性骨髄腫)において、発現していた。
【0044】
このように、CXorf48遺伝子は、正常組織では、精巣以外で発現していないが、様々ながん細胞株および腫瘍組織で、高レベルで発現している。従って、CXorf48遺伝子をターゲットとすることで、広範な種類の腫瘍を治療することができる。
【0045】
[1−3]次に、試料として、慢性骨髄性白血病(Chronic Myelogenous Leukemia;CML)患者検体20検体、 健常人リンパ球5検体を用い、同様にして、RT−PCRを行った。
図3に、得られた増幅産物のシグナルを示す。
【0046】
図3に示されるように、CML患者においても、高頻度(20例中17例)でCXorf48遺伝子の発現が検出された。
【0047】
このように、CXorf48遺伝子は、CML患者においても、高頻度で、高レベルで発現している。従って、CXorf48遺伝子は、CML患者に対するがん免疫療法のためのターゲット遺伝子として有効である。
【0048】
[1−4]さらに、試料として、慢性骨髄性白血病(CML)細胞株(KU812)、または多発性骨髄腫(Multiple myeloma)細胞株(KMS34)において、それぞれ、抗CD34抗体(Miltenyi Biotec社130-081-002)と抗CD38抗体(Miltenyi Biotec社130-092-219)、または抗CD138抗体(Miltenyi Biotec社130-081-301)を用い、FACSを用いたソーティングにより、がん幹細胞分画、すなわちCD34陽性CD38陰性KU812細胞分画及びCD138陰性KMS34細胞分画を採取した(CMLのがん幹細胞分画については、Blood (1996) 88(5):1796-1804を参照のこと。また、多発性骨髄腫のがん幹細胞分画については、Cancer Letters(2009) 277:1-7を参照のこと。なお、これらの文献を本明細書に援用する。)。そして、同様にして、RT−PCRを行い、CXorf48遺伝子の発現量を比較した。
図4に、各試料において得られたシグナルと、発現量の相対値を示す。
【0049】
図4に示されるように、CD34陽性CD38陰性KU812細胞分画、及びCD138陰性KMS34細胞分画で得られたがん幹細胞においても、CXorf48遺伝子の発現が検出できた。従って、CXorf48遺伝子は、CML患者に対するがん免疫療法のターゲット遺伝子として、非常に有効である。
【0050】
[2]HLA−A
*2402陽性健常人PBMCを用いたCTLの誘導
まず、HLA−A
*2402陽性健常人から末梢血をヘパリン採血し、その末梢血に等量のPBS(Phospate Buffered Salines;Sigma-Aldrich社)を加え、Lymphoprep(Nycomed 社)に重層して遠心し(2000rpm、30分、室温)、PBMCが含まれる中間層をPBMC分画として分離した。得られたPBMCに対し、MACS法を用い、CD14陽性細胞を単離した。この細胞を、IL−4(最終濃度100ng/ml)及びGM−CSF(最終濃度100ng/ml)を添加した10%AB型ヒト血清添加AIM−V培地(GIBCO社)で、37℃、5%CO
2環境下で(以下、全ての培養は同環境条件で行った)5日間培養した後、TNF−α(最終濃度20ng/ml)を培地に添加し、さらに2日間培養した。
【0051】
得られた樹状細胞に対し配列番号1からなるペプチド50μg/mlを加えて室温で3時間反応させ、X線照射(50Gy)したものとPBMCに対してMACS(Magnetic Cell Sorting)法を用いて単離されたCD8陽性細胞を1:20の割合で混合し、IL−7(最終濃度10ng/ml)を添加した培地で7日間刺激培養した。なお、培養途中(1日目及び4日目)で、培地にIL−2(最終濃度20u/ml)を添加した。
【0052】
得られた細胞に対し、PBMCにphytohaemagglutinin(SIGMA社)を96時間加えて作成したPHAblastに配列番号1からなるペプチド50μg/mlを加えてX線照射(100Gy)した細胞を2:1で混合し、さらに、7日間刺激培養した。なお、培養途中(1日目及び4日目)で、培地にIL−2(最終濃度20u/ml)を添加した。
【0053】
得られた細胞に対し、再度、前回と同じ方法で配列番号1からなるペプチド50μg/mlをパルスしたPHAblastを2:1の割合で混合し、さらに、7日間刺激培養して、目的のCTLを得た。
【0054】
[3]
51Cr細胞傷害試験
[2]で得られたCTL(effector細胞)を、10%ABヒト血清添加AIM−Vを用いて、アイソトープ(
51Cr)で標識した標的細胞(target細胞)1X10
3細胞/ウェルと様々な比率(E/T比;effector/target ratio 0.3:1〜30:1)で混合し、4時間培養後、上清を回収し、上清中の放射線量を測定した。
【0055】
まず、標的細胞として、配列番号1からなるペプチド5μg/mlを室温で1時間添加したC1R−A24細胞を用い、コントロールとして、等量のDMSOを添加したC1R−A24細胞、HIVペプチド(RYLRDQQLL:配列番号4)、K562細胞(HLA−A
*2402陰性、CXorf48陽性)を用いた。
【0056】
得られた放射線量から、下式に従って、細胞傷害割合(Cytotoxicity)を算出し、グラフにプロットした。
【0057】
Cytotoxicity (%) =(Experimental
51Cr release (cpm) - Spontaneous
51Cr release (cpm))X100/(Maximum
51Cr release (cpm) - Spontaneous
51Cr release (cpm))
Maximum
51Cr release ; 標的細胞にTritonXを加えて100%傷害した場合の
51Cr放出
Spontaneous
51Cr release ;標的細胞にmediumのみを加えた場合の
51Cr放出
図5に示されるように、配列番号1からなるペプチドを添加したC1R−A24細胞を標的細胞として用いた場合にのみ、特異的に細胞障害活性が検出された。このように、配列番号1からなるペプチドによって誘導されたCTLは、HLA−A
*2402拘束性に抗原特異的な細胞障害活性を有する。
【0058】
次に、標的細胞として、メラノーマ患者由来のメラノーマ細胞(HLA−A
*2402陽性、CXorf48陽性)を用いた。コントロールとしては、526mel細胞(HLA−A
*2402陰性、CXorf48陽性)を用いた。同様に、細胞傷害割合を算出し、グラフにプロットした。
【0059】
図6に示されるように、生体由来であるHLA−A
*2402陽性メラノーマ細胞に対しても、細胞障害活性が検出された。このように、配列番号1からなるペプチドによって誘導されたCTLは、腫瘍細胞に対する抗腫瘍薬として有効である。
【0060】
[4]ELISpot法(Enzyme-Linked Immunospot法)
抗ヒトIFN-γ抗体(Mabtech社)をPBSで15倍希釈した溶液を1ウエルあたり100μl加え、4℃で一晩コーティングした96穴プラスティックプレートを用い、1ウエル当たり、各細胞5.0x10
4個でCTLと標的細胞をAIM−V培地中で1:1で混合した。37℃、5%CO
2環境下で24時間培養後、細胞を洗浄し、アルカリフォスファターゼで標識した抗ヒトIFN-γ抗体(Mabtech社)を反応させた。これに発色基質としてBCIP(5-bromo-4-chloro-3-indolyl phosphatase)(BIORAD社)およびNBT(nitroblue tetrazolium)(BIORAD社)を加えて発色させ、T細胞が産生したIFN-γをスポットとして検出した。そして、ELISpotアナライザーにて各ウエルのスポット数を測定し、グラフ化した。
【0061】
標的細胞としては、配列番号1からなるペプチドを添加したC1R−A24細胞及びKMS21(HLA−A
*2402陽性、CXorf48陽性)を用い、コントロールとして、培地のみ、DMSO添加C1R−A24細胞、HIVペプチドを添加したC1R−A24細胞、K562細胞(HLA−A
*2402陰性、CXorf48陽性)を用いた。
【0062】
図7に示されるように、配列番号1からなるペプチドを添加したC1R−A24細胞及びKMS21からは、それぞれDMSO添加C1R−A24細胞及びDMSO添加C1R−A24細胞に比べ、有意に多量のIFN-γが分泌された。
【0063】
このように、配列番号1からなるペプチドによって誘導されたCTLは、HLA−A
*2402拘束性に抗原特異的なIFN-γ分泌を生じる活性を有する。