(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術の場合、金属部分と非金属部分とを分離するための閾値を適切に設定することが要求される。このため、この閾値が適切でない場合は、金属の位置を高精度に特定することが困難であるため、金属アーチファクトを適切に除去できない虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、CT撮影領域内の金属体位置を適切に特定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、被写体における、金属体を含んだ領域をX線CT撮影することによって取得された投影データを再構成して、CT画像データを取得する画像処理装置であって、前記投影データを基礎として、所定のX線吸収係数を持つ仮想金属体が前記X線CT撮影の撮影領域に擬似的に配置されたときの擬似投影データを演算により取得する擬似投影データ取得部と、前記擬似投影データを再構成して、擬似CT画像データを生成する擬似CT画像データ生成部と、前記擬似CT画像データにおける、前記仮想金属体に対応する輝度である仮想金属体輝度を取得する仮想金属体輝度取得部と、前記投影データを再構成したCT画像データにおいて、前記仮想金属体輝度に対応する輝度を持つ金属相当領域の位置を特定する位置特定部と、前記投影データにおける、前記金属相当領域の輝度について、X線吸収によるX線強度の低下を補正する補正処理を行うことにより、補正投影データを取得する補正処理部と、前記補正投影データを再構成して、補正CT画像データを取得する補正CT画像データ取得部とを備えている。
【0010】
また、第2の態様は、第1の態様に係る画像処理装置において、前記補正処理部は、前記投影データにおける、前記金属相当領域の輝度について、該金属相当領域周囲の輝度に応じて前記補正処理を実行する。
【0011】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る画像処理装置において、前記補正CT画像データにおける、前記金属相当領域の輝度を、前記CT画像データにおける、同位置の輝度に応じて変換することにより、前記補正CT画像データと前記CT画像データとを合成する合成処理部、をさらに備えている。
【0012】
また、第4の態様は、第1から第3までの態様のいずれか1態様に係る画像処理装置において、前記投影データは、被写体内の部分領域のみにX線を照射する局所X線CT撮影により取得される。
【0013】
また、第5の態様は、第1から第4までの態様のいずれか1態様に係る画像処理装置において、前記投影データは、X線を発生するX線発生器と、被写体を透過した前記X線を検出するX線検出器と、前記X線発生器と前記X線検出器とを前記被写体を挟んで対向させた状態で支持する支持体と、前記支持体を旋回軸周りに旋回駆動して、前記X線発生器と前記X線検出器とを前記被写体の周りで旋回させる支持体旋回駆動部とを備えているX線CT撮影装置により取得され、前記仮想金属体は、前記旋回軸と平行に延びるように配置された円柱体または略円柱体とされる。
【0014】
また、第6の態様は、第5の態様に係る画像処理装置において、前記X線CT撮影装置は、被写体を保持する被写体保持部、をさらに備えており、前記仮想金属体は、前記被写体保持部に保持された前記被写体の位置情報に基づいて決定される前記金属体とは異なる位置に擬似的に配置される。
【0015】
また、第7の態様は、第1から第6までの態様のいずれか1態様に係る画像処理装置において、前記位置特定部は、前記仮想金属体の輝度に対応する輝度を閾値として、前記CT画像データを2値化することにより、前記仮想金属体に相当する金属相当領域と、前記仮想金属体に相当しない領域とを区別する。
【0016】
また、第8の態様は、第3の態様に係る画像処理装置において、前記擬似投影データ取得部は、前記投影データを基礎として、相互に前記X線吸収係数が異なる複数種類の仮想金属体が擬似的に配置された場合における、前記擬似投影データを演算により取得し、前記位置特定部は、前記投影データを再構成した前記CT画像データにおいて、前記複数種類の仮想金属体それぞれの前記仮想金属体輝度に対応する輝度を持つ領域の位置を、前記金属相当領域として個別に特定する。
【0017】
また、第9の態様は、第8の態様に係る画像処理装置において、前記補正処理部は、前記投影データにおける、前記複数種類の仮想金属体のうち前記X線吸収係数が低い一部の仮想金属体に相当する前記金属相当領域のX線吸収度から、該仮想金属体に対応する金属体のX線吸収度に相当するX線吸収度を差し引くことで、前記輝度を補正する。
【0018】
また、第10の態様は、第8または第9の態様に係る画像処理装置において、前記位置特定部は、前記2種類の仮想金属体のそれぞれの輝度に対応する輝度を閾値として、前記CT画像データを3値化することにより、前記2種類の前記仮想金属体のうち、前記X線吸収係数が高い方に対応する金属体領域、前記X線吸収係数が低い方に対応する金属体領域、および、前記2種類の前記仮想金属体のどちらにも対応しない領域を区別する。
【0019】
また、第11の態様は、第1から第10までの態様のいずれか1態様に係る画像処理装置において、前記補正処理部は、前記投影データにおける前記金属体位置の領域を、隣接する1以上の画素を含めるように拡大した領域を、前記補正処理の対象領域とする。
【0020】
また、第12の態様は、第1から第11までの態様のいずれか1態様に係る画像処理装置において、前記補正処理部は、前記投影データ中の、前記金属相当領域と当該金属相当領域外の領域との境界部分の投影データについて、ローパスフィルタ処理を行う。
【0021】
また、第13の態様は、X線CT撮影装置であって、第1から第12までの態様のいずれか1態様に係る画像処理装置を備えている。
【0022】
また、第14の態様は、被写体における、金属体を含んだ領域をX線CT撮影することによって取得された投影データを再構成して、CT画像データを取得する画像処理方法であって、(a)前記投影データを基礎として、所定のX線吸収係数を持つ仮想金属体が前記X線CT撮影の撮影領域に擬似的に配置されたときの擬似投影データを演算により取得する工程と、(b)前記擬似投影データを再構成して、擬似CT画像データを取得する工程と、(c)前記擬似CT画像データにおける、前記仮想金属体の仮想金属体輝度を取得する工程と、(d)前記投影データを再構成したCT画像データにおいて、前記仮想金属体輝度に対応する輝度を持つ金属相当領域の位置を特定する工程と、(e)前記投影データにおける、前記金属相当領域の輝度について、X線吸収によるX線強度の低下を補正する補正処理を行うことにより、補正投影データを取得する工程と、(f)前記補正投影データを再構成して、補正CT画像データを取得する工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0023】
第1から第14までの態様によると、擬似的に配置された仮想金属体の輝度を取得し、該輝度と同等の輝度の位置を特定することで、撮影領域に含まれる金属体の位置を高精度に特定することができる。したがって、その部分を補正処理することにより、再構成により取得されるCT画像において発生する金属アーチファクトを良好に低減することができる。
【0024】
また、第2の態様によると、位置が特定された金属相当領域の輝度が、その周囲の輝度に応じて補間される。このため、金属相当領域を周囲の輝度に合わせて補正できる。したがって、再構成により取得されるCT画像(断層面画像)において発生する金属アーチファクトを低減することができる。
【0025】
また、第3の態様によると、補正CT画像データにおける補正された金属部分の輝度が、元のCT画像データにおける輝度に変換される。これにより、金属アーチファクトが低減されたCT画像上に、実際の金属体を写し込むことができる。
【0026】
また、第4の態様によると、CT撮影対象領域が局所である場合において、CT画像データにおける金属体の位置を良好に抽出することができる。
【0027】
また、第5の態様によると、擬似的に配置される仮想金属体の形状が、X線CT撮影装置の支持体の旋回軸と平行に延びる略円柱体とされる。このため、擬似投影データが表す、複数の擬似投影画像間において、仮想金属体によるX線吸収度がほぼ均一となる。これにより、妥当な仮想金属輝度を取得できるため、仮想金属体に対応する金属体の位置を良好に特定することができる。
【0028】
また、第6の態様によると、被写体保持部に保持された被写体の位置情報に基づいて、被写体内に現存する金属体の位置が特定されるため、該金属体の位置とは異なる位置を選んで、仮想金属体を擬似的に配置することができる。
【0029】
また、第7の態様によると、金属体に相当する領域と、金属体に相当しない領域とを区別することができる。
【0030】
また、第8の態様によると、被写体の撮影領域内に、複数種類の金属体が含まれる場合において、それぞれの金属体毎に、位置を特定することができる。
【0031】
また、第9の態様によると、元の投影データから、X線吸収係数が高い一部の仮想金属体に相当する金属体を除いた、補正投影データを補正処理により生成することができる。このため、金属体以外の部分のX線吸収度の情報をできるだけ残して、CT画像を生成することができる。
【0032】
また、第10の態様によると、2種類の金属体のそれぞれに対応する領域と、金属体以外の領域とを良好に区別することができる。
【0033】
また、第11の態様によると、投影画像上における、金属体周囲に発生するノイズを含んだ輝度に基づいて、金属相当領域の輝度が補間処理されることを低減できる。
【0034】
また、第12の態様によると、ローパスフィルタ処理によって、金属領域と非金属領域の境界部分が鮮明となることを抑制することができる。これによって、CT再構成計算時における、エイリアシングが抑制され、画像再構成の精度を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0037】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るX線CT撮影装置1の概略斜視図である。
図2は、
図1に示されるX線CT撮影装置1の概略構成を示すブロック図である。
図3は、
図1に示される画像処理装置80が備える機能ブロックを、データの流れと共に示す図である。また、
図4は、金属アーチファクト除去の流れ図である。
【0038】
図1に示されるX線CT撮影装置1は、関心領域についてCT撮影領域を設定するともに、表示手段としての機能を兼ね備え、操作者の操作を受け付ける操作手段である操作表示部61と、該操作表示部61によって設定されたCT撮影領域に対してX線CT撮影を実行して、投影データを収集する本体部2と、本体部2において収集された投影データを処理して、各種画像を生成する情報処理装置8とに大別される。X線撮影の場において、本体部2は、好ましくは中空の縦長直方体状の防X線室70に収容されている。
【0039】
本体部2の本体制御部60、および、情報処理装置8の制御部、演算部801は、X線CT撮影を含むX線撮影のプログラムに従ってX線撮影を実行する。
【0040】
本体部2と、防X線室70の壁面に装着された操作表示部61と、防X線室70の外部に配置された情報処理装置8とは、接続ケーブル83によって相互に接続されている。
【0041】
本体部2は、被写体M1に向けてX線の束で構成される、X線コーンビームBXを含んだX線ビームを内部に備えたX線発生器10aから出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたあと、被写体M1を透過したX線ビームを内部に備えたX線検出器21で検出するX線検出部20とを備えている。また本体部2は、X線発生部10とX線検出部20とをそれぞれ支持する支持体である旋回アーム30と、鉛直方向に延びる支柱50と、旋回アーム30を吊り下げるとともに、支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な昇降部40と、本体制御部60とをさらに備えている。X線発生部10、X線検出部20及びX線発生部10のX線検出部20側に配置されているビーム成形機構により撮像機構が構成されている。
【0042】
なお、X線検出器21としては、例えばMOSセンサ、CCDセンサ、TFTが挙げられるが、CMOSセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)やX線蛍光増倍管(XII)、その他の固体撮像素子等、様々なものを採用することができる。
【0043】
X線発生部10及びX線検出部20は、旋回アーム30の旋回部30cの両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
【0044】
旋回アーム30は、正面視略逆U字状であり、上端部に備えた旋回軸31を旋回中心として旋回する。なお、本実施形態において、旋回中心は上部フレーム41に対して固定された位置とされている。また、旋回アーム30両端のそれぞれに、X線発生部10とX線検出部20とが取り付けられている。
【0045】
なお、本実施形態に係る旋回アーム30は、U字状に形成されているが、その他の形状とされてもよい。例えば、円柱状部材の外周部に、ボール軸受けなどを介して回転可能に嵌め込まれた環状部材を旋回アームとすることも考えられる。この場合、該環状部材にX線発生部10とX線検出部20とが対向するように取り付けられる。
【0046】
以下においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向、すなわち縦方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向及びZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする。なお、X軸及びY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線CT撮影装置1において位置決めされて支柱50に正対したときの、被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。また、以下において、Z戦方向を鉛直方向、X軸方向とY軸方向の2次元方向で規定される平面上の方向を水平方向と呼ぶこともある。
【0047】
これに対して、旋回する旋回アーム30上の三次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらx軸およびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする。本実施形態および以降の各実施形態では、z軸方向とZ軸方向は平行となっている。また、本実施形態に係る旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を回転軸として旋回する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
【0048】
また、
図1に示されるX線発生部10、X線検出部20を上から平面視したときにX線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向とし、この(+y)方向に直交する水平な右手方向(
図1において、旋回アーム30の向きにおいて、被写体M1の正面側)を(+x)方向とし、鉛直方向上向きを(+z)方向とする。
【0049】
昇降部40は、上部フレーム41(支持体保持部)と下部フレーム42とで構成されており、鉛直方向に沿って立設された支柱50に係合している。機能する上部フレーム41には、旋回軸31が取り付けられている。昇降部40が支柱50に沿って鉛直方向に移動することによって、旋回アーム30が上下に移動する。
【0050】
なお、旋回アーム30を旋回させる構造としては、上部フレーム41に対しては旋回不能に固定された旋回軸31に対し、旋回アームの旋回部30cを旋回可能に設け、旋回アーム30を旋回軸31に対して旋回駆動するようにしてもよい。また、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30の旋回部30cを旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30が旋回するようにしてもよい。
【0051】
図1に示される例では、前者が採用されており、この場合、旋回用モータ37(支持体旋回駆動部)を旋回アーム30内部に固定し、不図示のベルトやプーリなどの伝達機構により、旋回用モータ37の回転力が旋回用モータ37を固定する旋回アーム30の回転に作用するようにする。
【0052】
また、上部フレーム41に、旋回軸31を中心として、旋回アーム30を旋回させる旋回用モータを設け、不図示のベルトやプーリ、回転軸などからなり、旋回軸31中を通る伝達機構により、不図示の旋回用モータによる回転力が旋回アーム30に伝達されることで、旋回アーム30が旋回するようにしてもよい。
【0053】
無論、後者のように、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30の旋回部30cを旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30を旋回する構造を採用してもよい。この場合、旋回用モータ37を上部フレーム41内部に固定し、不図示のローラなどの伝達機構により、旋回用モータ37の回転力が旋回軸31の回転に作用するようにすればよい。
【0054】
なお、本実施形態では、旋回軸31は、鉛直方向に沿って延びるように構成されているが、鉛直方向に対して任意の角度で傾けて配置されることも考えられる。
【0055】
また、旋回軸31と旋回アーム30の間には、不図示のベアリングが介在している。このため、旋回アーム30は、旋回軸31に対してスムーズに回転することができる。なお、旋回軸31、ベアリング、ベルトやプーリ、回転軸などからなる伝達機構および旋回用モータは、旋回アーム30を旋回させる旋回機構の一例である。本実施形態では、定位置に回転しないように固定された旋回軸31に対して旋回アーム30が旋回する。しかしながら、前述のとおり、旋回アーム30に固定された旋回軸31を上部フレーム41に対して回転させることで、旋回アーム30を旋回させることも考えられる。この場合、上部フレーム41側に、旋回軸31を回転可能に支持するベアリングが形成される。
【0056】
下部フレーム42には、被写体M1(ここでは、人体の頭部)を左右の両側から固定するイヤロッドや、顎を固定するチンレストなどを含む、被写体保持部421が設けられている。
【0057】
旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降部40が昇降することにより、適当な位置に配置される。そして、その状態で被写体M1が被写体保持部421に固定される。なお、被写体保持部421は、
図1に示される例では、被写体M1の体軸が旋回軸31の軸方向とほぼ同じ方向となるように被写体M1を保持する。
【0058】
本体制御部60は、本体部2の各構成の動作を制御する制御部であり、例えば、X線規制制御部および駆動制御部として機能する。本体制御部60は、
図1に示されるように、X線検出部20の内部に配置されている。
【0059】
また、本体制御部60の外側、すなわちX線検出部20の+Y側の面には、各種命令を入カするためのボタン類、または、各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部62が取り付けられている。
【0060】
本体部2を収容する防X線室70の外側には、本体制御部60と接続し、各種命令を入力操作するためのボタンなどや各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部61が取り付けられている。
【0061】
なお、操作者(術者)は操作表示部62を介して本体部2を操作するようにしてもよいし、操作表示部61を介して本体部2を操作するようにしてもよい。操作表示部62と操作表示部61とで操作内容や表示内容が、異なっていてもよいし、あるいは、操作表示部62と操作表示部61とで、操作内容や表示内容の一部あるいは全部が、共通するようにしてもよい。
【0062】
また、防X線室70が省略されるなどの場合は、操作表示部61が省絡されてもよい。また、操作表示部62と操作表示部61のどちらか一方を省略することもできる。以下においては、操作表示部61による表示や操作について説明するが、操作表示部62による表示や操作に置き換えてもよい。
【0063】
操作表示部61は、生体器官などの撮影領域の位置などを指定することなどにも用いられる。また、X線撮影には各種のモードがあるが、操作表示部61の操作によって、モードの選択ができるようにしてもよい。
【0064】
図3に示されるように、演算部801は、画像処理装置80が備えるCPUが、所定のプログラムにしたがって動作することにより、通常CT画像データ取得部11P、擬似投影データ取得部21P、擬似CT画像データ生成部22P、仮想金属体輝度取得部31P、位置特定部41P、補正処理部51P、補正CT画像データ取得部52Pおよび合成処理部61Pとして機能する。
【0065】
X線検出器21の各検出素子が検出する信号は、被写体を透過したX線の強度を示す信号である。この透過X線の強度を示す信号が被写体を透過したX線の強度を示す信号である。この透過X線の強度を示す信号がX線の吸収率(または吸光度)を示す信号に変換されることにより、
図4に示される通常投影データ11Dが生成され、記憶部802に保存される(
図4:ステップS100)。
【0066】
通常CT画像データ取得部11Pは、この通常投影データ11Dを再構成(逆投影)することで、通常CT画像データ12Dを取得する(
図4:ステップS101)。この再構成の演算処理については、特に限定されるものではないが、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法を適用することができる。生成される通常CT画像データ12Dは、CT撮影領域に対応する3次元ボリュームデータであり、X線吸収度に応じたボクセル値(輝度)を有するボクセルで構成される。
【0067】
擬似投影データ取得部21Pは、所定のX線吸収係数を持つ仮想金属体を前記X線CT撮影の撮影領域に擬似的に配置する。このとき、仮想金属体は、望ましくは非金属領域に配置される。このため、擬似投影データ取得部21Pは、通常CT画像データ12Dを所定の閾値で2値化する(
図4:ステップS102)。この閾値は、初期値として記憶部802などに予め保存されていてもよいし、ボクセル値のヒストグラムなどが解析されることで自動的に取得されるようにしてもよい。あるいは、操作者(術者など)が指定できるようにすることも考えられる。いずれにしても、所定の閾値で2値化することにより、金属領域と非金属領域とが区別される。なお、この領域の区別は、CT撮影領域内に現存在する金属領域(金属体)を避けて、仮想金属体の配置する場所を決定するだけのものである。したがって、この閾値は、金属領域と非金属領域とを厳密に区別するものである必要はなく、おおよそ区別できる値であればよい。
【0068】
なお、上記のステップS102の処理により金属領域を避けて仮想金属体の配置場所を決定する構成を省略し、代わりに被写体保持部421に保持された被写体M1の位置情報に基づいて、仮想金属体の配置位置が決定されてもよい。つまり、被写体M1の位置が判れば、被写体M1の金属体の位置がおおよそ明らかな場合がある。例えば歯科診療においては、金属体は、歯列弓上の位置に配置されることがほとんどであるため、被写体M1の位置から該金属体のおおよその位置を特定することは比較的容易である。例えば、金属体が存在するとしても、その箇所は歯列弓上のいずれかの位置であると定めることができ、一般的な骨格の人体頭部の歯列弓に該当する箇所には仮想金属体を配置しないようにすれば、金属体と仮想金属体が位置的に重複することは避けられる。仮想金属体の配置箇所としては、例えば後述する
図7に示す仮想金属体91VM、93VMのような位置に配置することが考えられる。もちろん、被写体M1の位置情報と、上述した2値化処理により得られる金属体の位置情報とに基づいて、仮想金属体の配置位置が決定されてもよい。
【0069】
擬似投影データ取得部21Pは、非金属領域に仮想金属体を擬似的に配置して、擬似投影データ21Dを演算により取得する(
図4:ステップS103)。なお、投影データ上における、各画素毎が示すX線吸収度は、透過する物質のX線吸収率によって定められる。つまり、仮想金属体のX線吸収係数μが既知であれば、以下の式に基づき、この仮想金属体を透過したX線強度Iが算出される。
【0070】
I = I
0・exp(−μ・T) ・・・式(1)
式(1)において、exp(x)はe(自然対数の底、ネイピア数)のx乗を表すものとし、I
0は、元のX線強度(つまり、仮想金属体が配置されていないときのX線透過率)を示しており、TはX線が透過する仮想金属体の距離を示している。μは仮想金属体のX線減弱係数である。
【0071】
例えば、ボクセルサイズを0.3mm立方として、仮想金属体が金とされる場合、X線の吸収係数(減弱係数)μは0.97、仮想金属体がチタンとされる場合、X線吸収係数μは0.94とされる。ただし、X線吸収係数μは、被写体M1のCT撮影領域に現存する金属の状態またはX線CT撮影が行われる環境などに合わせて適宜設定される。
【0072】
擬似投影データ取得部21Pは、式(1)に基づいて、通常投影データ11Dが表す投影画像の各画素毎に、仮想金属体を擬似的に配置した場合の、新たなX線吸収度を示す画素値を算出する。これにより、擬似投影データ21Dが取得される。
【0073】
擬似CT画像データ生成部22Pは、擬似投影データ21Dを再構成することにより、擬似CT画像データ22Dを生成、取得する(
図4:ステップS104)。この演算処理は、ステップS102において、通常CT画像データ取得部11Pが実行する演算処理と同様である。
【0074】
仮想金属体輝度取得部31Pは、擬似CT画像データ22Dにおける、仮想金属体に対応する輝度(仮想金属体輝度31D)を取得する(
図4:ステップS105)。なお、仮想金属体輝度31Dは、1のボクセル値ではなく、複数のボクセル値を含んでいてもよい。例えば、一定範囲内にあるボクセル値が、仮想金属体輝度31Dとされてもよい。
【0075】
位置特定部41Pは、仮想金属体輝度31Dに対応する輝度を持つ金属相当領域、具体例として仮想金属体と同じ吸収係数となる領域の位置を、仮想金属体と同種の金属体が存在する位置(金属体位置)として特定する(
図4:ステップS106)。これにより、仮想金属体と同程度のX線吸収係数をもつ金属体の位置(金属体位置)が特定される。位置特定部41Pは、特定した金属体位置を位置特定データ41Dとして記憶部802に保存する。なお、位置特定部41Pが、金属体相当領域の位置を特定する範囲を指定できるようにしてもよい。例えば、金属体の大まかな位置がすでに既知であるなどの場合において、範囲を限定することで、演算処理の時間を短縮することができる。
【0076】
補正処理部51Pは、通常投影データ11Dにおける、位置特定部41Pによって特定された金属体位置について、X線吸収によるX線強度の低下を補正する補正処理を行うことにより、補正投影データ51Dを生成、取得する(
図4:ステップS107)。具体的には、通常投影データ11Dの投影画像における、金属体位置の輝度を、その所定方向に関して隣接する両隣の画素の輝度に基づいて、補正処理する。補正処理方法としては、演算が容易な線形補間が好適である。しかしながら、多項式補間、ウェーブレット補間など、その他の補間処理技術またはこれに類似する補間処理技術が採用されてもよい。
【0077】
補正CT画像データ取得部52Pは、補正投影データ51Dを再構成することにより、補正CT画像データ52Dを生成、取得する(
図4:ステップS108)。これにより、金属体部分が適当な輝度で補正されたCT画像データ(ボリュームデータ)が生成される。また、このときに使用される補正投影データ51Dは、補正処理により金属体が除去され、代わりに、隣接する組織と同程度のX線透過率を有する組織で埋められたような、アーチファクトが生じにくいデータとなる。(ただし、比較的X線吸収率が低い金属の場合は、後述のチタンのように、特別な処理をすることもある。)したがって、補正CT画像データ52Dは、金属体に由来する金属アーチファクトが低減されたデータとなる。なお、金属体の大まかな位置が既知である場合、この補正投影データ51Dの再構成する範囲を、金属体の周囲に限定し、CT撮影領域の残りの部分については、通常CT画像データ12Dをそのまま流用すればよい。これにより、補正CT画像データ52Dの取得にかかる演算処理の時間を短縮することができる。
【0078】
合成処理部61Pは、通常CT画像データ12Dと補正CT画像データ52Dとを合成することにより、合成CT画像データ61Dを生成、取得する(
図4:ステップS109)。詳細には、補正CT画像データ52Dにおける、補正された金属相当領域の輝度を、通常CT画像データ12Dにおける同位置の輝度(つまり、金属体に相当する元々の輝度)に変換する。金属相当領域の位置は、位置特定部41Pによって特定されているため、正確に変換できる。これにより、金属体の輝度に関する情報が、補正CT画像データ52Dに埋め込まれることとなる。
【0079】
操作部82を介して、操作者が断層面の位置を指定すると、画像処理装置80は、その指定された位置における断層面画像を、合成CT画像データ61Dを用いて生成し、表示部81に表示する。(
図4:ステップS110)。合成CT画像データ61Dは、金属体が除去されることで金属アーチファクトが低減された補正CT画像データ52D上に、金属体に関する輝度情報が埋め込まれた3次元ボリュームである。このため、この合成画像データ61Dが用いられることにより、金属アーチファクトが低減され、かつ、金属体が正確な位置に写り込んでいるCT画像を取得することができる。
【0080】
以上が、金属アーチファクト除去処理の流れについての説明である。次に、金属アーチファクト除去処理の具体的な適用例について説明する。
【0081】
図5は、通常投影データ11Dが表す通常投影画像90の一例を示す図である。
図5に示される例では、CT撮影領域内に、金属体として歯科の補綴物として用いられる複数の金部材91M、および、複数のチタン部材93Mが含まれている。具体的に、金部材91Mは、人工歯牙として用いられており、チタン部材93Mは、該人工歯牙を顎部に取り付けるためのインプラント用ボルトとして用いられている。
【0082】
通常投影画像90では、X線吸収が大きい部分ほど、画素の輝度が明るくなるように画像が表現されている。金部材91Mおよびチタン部材93Mの部分でX線が吸収されるため、通常投影画像90上では、金部材91Mおよびチタン部材93Mの部分で輝度が明るくなっている。
【0083】
図6は、通常CT画像データ12Dが表す通常CT画像91の一例を示す図である。
図6に示される通常CT画像91は、下顎の高さ付近(具体的には、
図5に示されるライン90Lの高さ)の水平面(XY平面)に関する断層面画像である。
図6に示されるように、通常の再構成(例えば、FBP法)が行われた場合、金属体(ここでは、金部材91M)の周辺(破線で囲まれている領域)でスジ上のノイズ(金属アーチファクト)が発生している。
【0084】
図7は、通常CT画像91を2値化した2値化CT画像データが表す2値化CT画像92の一例を示す図である。上述したように、擬似投影データ取得部21Pは、仮想金属体を擬似的に配置する位置を決定するため、通常CT画像データ12Dを2値化する(
図4:S102)。このため、通常CT画像91について、2値化されることで、金属体部分(金部材91M)と非金属体部分とが分離されることとなる。擬似投影データ取得部21Pは、このようにして抽出される金属以外の領域(非金属領域)に、仮想金属体(ここでは、仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VM)を擬似的に配置する。
図7に示される例では、歯列弓で囲繞される領域に、具体的には歯列弓の内側の舌部を貫くように、仮想金属体が配置されている。
【0085】
仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VMは、X線CT撮影装置1の支持体である旋回アーム30の旋回軸31と平行に延びる円柱状部材とされている。仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VMのz軸方向の長さは、通常CT画像データ12Dが表すCT撮影領域のz軸方向の長さよりも長いか、もしくは、同程度のとなるように設定されている。
【0086】
図8は、擬似投影データ21Dが表す擬似投影画像93の一例を示す図である。擬似投影画像93は、通常CT画像91の各画素毎に、上述した式(1)を用いて、仮想金属体を配置した場合の新たなX線吸収度を算出したものである。ここでは、仮想金部材91VMのX線吸収係数μを0.97とし、仮想チタン部材93VMのX線吸収係数μを0.94としている。CT撮影領域に仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VMが擬似的に配置されることにより、仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VMが擬似的に写り込んだ擬似投影画像93が取得される。
図8では仮想金部材91VMが配置上、手前になるので、仮想金部材91VMのみが見えているが、別の角度の擬似投影画像93は仮想チタン部材93VMも写り込んでいることがわかる画像となる。
【0087】
上述したように、仮想金部材91VMおよび仮想チタン部材93VMは、円柱体とされている。このため、擬似投影データ21Dが表す、複数の擬似投影画像93間において、仮想金属体によるX線吸収度がほぼ均一となる。これにより、妥当な仮想金属体輝度31Dを取得できるため、仮想金属体に対応する金属体の位置を良好に特定することができる。ただし、仮想金属体の形状または大きさは、任意に変更することができる。好ましくは円柱体または略円柱体とする。
【0088】
図9は、擬似CT画像データ22Dが表す擬似CT画像94の一例を示す図である。
図9に示されるように、擬似投影データ21Dが再構成されることにより、仮想金属体を含む擬似CT画像データ22Dが取得される。これにより、擬似CT画像データ22上における、仮想金部材91VMおよび仮想チタン部材93VMの輝度を取得される(
図4:ステップS105)。この輝度が、仮想金属体輝度31Dとして取得される。なお、
図9は、仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VMの位置を強調するため、仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VMのみが強調して描かれた図となっている。
【0089】
なお、擬似CT画像データ22Dにおいて、仮想金属体輝度31Dは、一つの輝度ではなく、ある程度幅広い輝度をとる場合がある。そのため、仮想金部材91VMおよび仮想チタン部材93VMのそれぞれに対応する輝度が所要範囲の輝度に設定される。ここでは、X線吸収係数μが0.97以上に相当する輝度を、仮想金部材91VMに対応する輝度とされ、X線吸収係数μが0.94以上0.97未満に相当する輝度を、仮想チタン部材93VMに対応する輝度とされる。
【0090】
位置特定部41Pは、仮想金属体輝度31Dに対応する輝度を持つ領域を金属相当領域として特定する。具体的には、金属相当領域として、仮想金部材91VMについては金相当領域を、仮想チタン部材93VMについてはチタン相当領域を特定する。
【0091】
擬似投影データ21Dを得ることによって、同じ再構成条件下で仮想金属体部分のCT画像と金属体部分のCT画像の再構成ができる。例えば、被写体によって骨密度が異なるなど、仮に条件が異なることがあっても、金属相当領域の特定の精度を高いものとすることができる。
【0092】
図10は、金相当領域(白色)、チタン相当領域(灰色)および非金属相当領域(黒色)に分離された領域分離CT画像95の一例を示す図である。なお、具体的に、金相当領域とは、通常CT画像データ12Dにおいて、仮想金部材91VMの輝度に対応する輝度(ここでは、X線吸収係数μが0.97以上)を有する領域であり、チタン相当領域とは、仮想チタン部材93VMの輝度に対応する輝度(X線吸収係数μが0.94以上0.97未満)を有する領域であり、非金属相当領域とは、金相当領域およびチタン相当領域のいずれにも該当しない領域(X線吸収係数μが0.94未満の領域)である。領域分離CT画像95を表現するCT画像データ(領域分離CT画像データ)は、具体的には、仮想金部材91VMおよび仮想チタン部材93VMに関する仮想金属体輝度31Dを閾値として、通常CT画像データ12Dを3値化することにより生成される。通常CT画像データ12Dを2値化することにより領域分離CT画像95を生成してもよい。例えば、X線吸収係数μが0.94以上の領域を金属相当領域とすればよい。
【0093】
位置特定部41Pは、このような領域分離CT画像95を表す領域分離CT画像データを取得すると、2次元平面上に投影する演算処理を行う。この結果、2次元平面で表現される投影画像上において、金相当領域、チタン相当領域および非金属相当領域を区別することができる。このように、位置特定部41Pは、金属体である金およびチタンの位置を特定して、位置情報を位置特定データ41Dとして取得する。
【0094】
図11は、金属相当領域に関する金属抽出投影画像96の一例を示す図である。
図11に示される金属抽出投影画像96は、通常CT画像データ12Dのうち、領域分離CT画像データが示す金属相当領域について、X線CT撮影でX線を照射するのと同じ方向(この場合は、被写体M1の左側)からX線を照射したと仮定して得られる投影画像であり、所定の演算処理により取得される画像である。
図11では、図示の都合上、金属相当領域以外の領域(背景)が灰色で示されている。金属抽出投影画像96に示されるように、金相当領域では、X線がほぼ吸収されるため輝度が飽和している。これに対して、これに対して、チタン相当領域では、部分的にX線の透過が起こるため、輝度が高い部分または輝度が低い部分が存在することが判る。この金属抽出投影画像96は、次に説明する補正処理の際に使用される。
【0095】
図12は、補正投影データ51Dが表す補正投影画像97の一例を示す図である。補正投影画像97は、補正処理部51Pが、位置特定データ41Dを参照することにより、通常投影データ11Dに含まれる金属体部分を、補正処理することによって取得された画像である。補正投影画像97に示されるように、本実施形態では、金相当領域とチタン相当領域との間で、異なる補正処理が実行される。この補正処理について、次に説明する。
【0096】
図13は、金相当領域に対して補正処理部51Pが実行する補間処理を説明する図である。
図13では、通常投影データ11Dが表す通常投影画像90(例えば、
図5参照)において、水平方向(x軸方向)に並ぶ複数の画素の内側部分に金相当領域として特定された連続する複数の画素91pと、該複数の画素91pの両側に位置する画素(画素92p、93pなど)が図示されている。また、各画素群の輝度が、それぞれ
図13の下段に示される2次元グラフ上にプロットされている。このプロットされた点を繋いだ折れ線グラフから判るように、金相当領域を構成する画素91pは、X線吸収度が周辺よりも大きいため、周辺よりも高い輝度91Bを有している。
【0097】
補正処理部51Pがこのような一連の画素91pを補間処理する場合、x軸方向に関して、金相当領域に相当する一連の画素91pの周囲、例えば両隣にある画素92p、93pを抽出する。そして、補正処理部51Pは、それらの画素92p、93pの輝度92B、93Bを用いて補間することにより、連続する画素91p毎に新たな輝度94Bを決定する。例えば、線形補間(直線補間)が行われる場合は、
図13に示されるように、画素92pの輝度92Bと、画素93pの輝度93Bとが、破線で示される線分91Lで結ばれる。そして、一連の画素91p毎に、線分91L上の対応する位置の輝度が、画素91pの新たな輝度94Bとして採用される。
【0098】
なお、
図13に示される例では、通常投影画像90の水平方向に関して補間処理が行われている。しかしながら、通常投影画像90の垂直方向に関して補間処理が行われてもよい。つまり、垂直方向に関して、金属相当領域に隣接する画素の輝度を用いて、補間処理が行われてもよい。補間に用いられる周囲の画素としては、左右の両隣の画素も考えられるし、上下の両隣の画素も考えられる。また、上下左右の隣接画素であってもよい。
【0099】
また、通常投影画像90上における、金部材91M周辺に対応する画素(例えば、画素92p、93pなど)の輝度は、金部材91MのX線吸収度が極めて高いため、ノイズを含む輝度を有している可能性がある。そこで、位置特定部41Pによって特定された金相当領域が、画像上の水平方向または垂直方向に隣接する1以上の画素分、具体例として1画素または2画素分拡大させる(太らせる)ことも考えられる。この拡大された拡大領域を新たな金相当領域として、補正処理部51Pが上記補間処理を実行することも考えられる。これにより、ノイズを含む可能性のある画素(例えば画素92p、93p)の輝度が補間処理に用いられることを抑制できる。
【0100】
以上のように、金相当領域については、金相当領域の外側にある領域の境界部分に相当する画素の輝度を用いて、輝度の補間処理が行われることにより、金相当領域が元の通常投影画像90から除去される。これに対して、チタン相当領域については、元の通常投影画像90におけるチタン相当領域から、チタン部材93のX線吸収度を除去する補正処理が行われる。具体的には、
図5に示されるような通常投影画像90のチタン相当領域の各画素について、チタン部材93Mの透過により起こるX線吸収量に相当する輝度(つまり、金属抽出投影画像96上において対応する位置の画素が有する輝度)分を差し引く演算処理が行われる。これにより、通常投影画像90から、チタン部材93Mに相当するX線吸収度を除いた投影画像を取得することができる。
【0101】
チタンなどの比較的X線吸収率が低い金属の場合、金などのX線吸収率の高い金属に比べてX線の透過は比較的起こりやすい。このため、通常投影画像90上における、X線がチタン部材93Mを透過した位置の画素が示すX線吸収度は、そのX線が透過したチタン部分以外の情報(歯牙、筋肉組織などの生体組織)を含んでいる。したがって、チタン相当領域については、上述した輝度を差し引きすることにより、チタンを除くX線吸収度に関する情報を残すことで、被写体M1のCT撮影領域の情報を、補正処理によってできるだけ損なうことなく保存することができる。もちろん、チタン相当領域についても、金相当領域と同様に、
図13にて説明した線形補間などの補正処理が適用されてもよい。
【0102】
なお、チタン部材93Mは、金部材91Mに比べて、X線の吸収率が低いことから、再構成したときに金属アーチファクトが発生し難いと考えられるため、補正処理が行われなくてもよい。しかしながら、チタン部材93MがX線の軌道上に複数存在する場合など、X線のチタン部材93Mの透過距離が長くなる場合、急激な衰弱が発生する。このため、投影データを再構成したときに、チタン部材93Mによる金属アーチファクトが発生する虞がある。したがって、良質なCT画像を得るためには、チタン相当領域のような比較的X線吸収率の低い金属部材についても、その金属に由来するX線吸収度を通常投影データ11Dから除去する補正処理が行われることが好ましい。
【0103】
図14は、補正CT画像データ52Dが表す補正CT画像98の一例を示す図である。
図14に示されるように、上記補正処理によって、通常CT画像91(
図6参照)に写り込んでいた金部材91Mおよびチタン部材93Mが、全部または部分的に除去された補正CT画像98が生成される。
図14に示されるように、補正CT画像98では、金属体が除去されることにより、これらの周囲に発生していた、図示の破線で囲まれた領域の金属アーチファクトが低減されている。
【0104】
図15は、合成CT画像データ61Dが表す合成CT画像99の一例を示す図である。合成CT画像データ61Dは、上述したように、補正CT画像データ52Dにおける、金属相当領域(金相当領域、チタン相当領域)の輝度(ボクセル値)が、通常CT画像データ12Dにおける同位置の輝度に変換されることにより得られたボリュームデータである。この処理により、金属体が除去されている合成CT画像データ61Dに、金属体に関する情報が追加されることとなる。これにより、
図15に示される合成CT画像99のように、金属体が除去された補正CT画像98上に、金属体の画像が合成されることとなる。したがって、合成CT画像データ61Dによると、金属アーチファクトが低減された、本来のCT撮影領域を表すCT画像を生成することができる。
【0105】
なお、画像再構成の精度を上げるために、補正処理部51Pがローパスフィルタ処理を行うようにしてもよい。一般に、多数の画素からなる検出面を有するX線検出器21でX線像を受光する場合、金属領域と非金属領域の境界をエッジとして、該エッジの画像が鮮明であれば、このエッジ部分の投影データの画像信号が高周波成分となる。すると、CT再構成計算時に、エイリアシングの効果によって、エッジ部分が再構成画像に影響を及ぼす場合がある。そのため、エッジ部分のみにローパスフィルタを適用し、この影響を低減させるように構成することもできる。
【0106】
このような構成によれば、上述の位置特定部41Pによる金属体位置の特定を高精度に行うことできる。このため、X線検出器21の検出面で受けた通常投影データ中の金属相当領域と該金属相当領域外の領域との境界に相当する位置、すなわち上述のエッジの位置の特定も高精度にできる。このことを利用して、検出されたエッジの位置のみにローパスフィルタを適用して、エイリアシングを抑制し画像再構成の精度を向上することが可能である。
【0107】
また、X線CT撮影装置1により、局所撮影が行われてもよい。局所撮影とは、被写体M1の内部にある部分領域、すなわち局部のみにX線を照射して透過したX線を検出する、あるいは、該局部を含む領域にX線を照射して該局部を透過したX線のみを検出して、CT画像を再構成する撮影である。例えば歯科診療においては、埋もれた智歯の領域において、智歯が横倒しの状態になっていないかどうかの診察、各種腫瘍の広がりについての診察、または、歯列弓の一部およびその周辺部(舌側部分もしくは頬側部分)などの診察などが行われる場合がある。このような場合、例えば2、3本の歯牙を局所的撮影対象物として、局所CT撮影領域が設定される。このような局所撮影で取得される投影画像では、X線束の広がりが小さいため、大きな領域を撮影する場合よりも散乱線の発生量が少なく、ノイズの少ないCT画像を再構成することができる。
【0108】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0109】
例えば、上記実施形態では、仮想金属体として仮想金部材91VM、仮想チタン部材93VMを擬似的に配置するようにしているが、その他の仮想金属を配置するようにしてもよい。1種類の仮想金属体のみであってもよいし、3種類以上の仮想金属体を配置するようにしてもよい。
【0110】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。