(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984123
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/83 20060101AFI20160823BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
G01N27/83
G02B23/24 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-548353(P2013-548353)
(86)(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公表番号】特表2014-503069(P2014-503069A)
(43)【公表日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】KR2012000110
(87)【国際公開番号】WO2012093865
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0001344
(32)【優先日】2011年1月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】595027240
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ スタンダーズ アンド サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】リュウ カンサン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソーヤン
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ナーム ソンハン
(72)【発明者】
【氏名】ペク ウンボン
【審査官】
佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−201655(JP,A)
【文献】
特開平03−127017(JP,A)
【文献】
特開平07−198683(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/127316(WO,A1)
【文献】
特開2005−338046(JP,A)
【文献】
特開昭63−221239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の外部および内部の表面欠陥を漏れ磁束の測定によって測定する非破壊探傷装置であって、
前記圧力容器の外部の一側に設けられ、且つ前記圧力容器の長さ方向において当該圧力容器よりも長く形成された、前記圧力容器を磁化するコイル巻台と、
前記圧力容器の外部の他側に配列された複数個の第1磁界検知センサが設けられたセンサ支持体と、
前記圧力容器を磁化して前記コイル巻台によって発生した磁束の方向に対して垂直の方向に磁束を発生させるヨークと、
前記ヨークの下方に設けられた第2磁界検知センサと、
前記圧力容器の内部に挿入され、前記圧力容器の内部の表面欠陥を測定するために一つ以上の第3磁界検知センサが取り付けられた内視鏡と、を含み、
前記ヨーク及び前記内視鏡を、前記圧力容器を前記長さ方向に沿う回転軸を中心として回転させたときに、前記長さ方向に移動させることが可能に構成されていることを特徴とする、漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置。
【請求項2】
前記コイル巻台によって発生した磁束は、前記圧力容器を貫通し、前記圧力容器を貫通する磁束の方向に対して垂直の方向に位置する前記圧力容器の外部表面の欠陥は、前記第1磁界検知センサによって検出される磁気信号を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置。
【請求項3】
前記ヨークによって発生した磁束の方向に対して垂直の方向に位置する前記圧力容器の外部表面の欠陥は、前記第2磁界検知センサによって検出される磁気信号を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置。
【請求項4】
前記ヨークの両先端にはスチールブラシが装着されていることを特徴とする、請求項1に記載の漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置。
【請求項5】
前記各磁界検知センサは、サーチコイル(search coil)センサ、フラックスゲート(flux gate)センサ、ホール効果(hall effect)センサ、GMRセンサ、AMRセンサ、TMRセンサ、およびPHRセンサを含むことを特徴とする、請求項1に記載の漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置に関し、より詳細には、圧力容器の欠陥によって発生する不規則な磁気信号を検出して不良有無を把握することができる。すなわち、圧力容器に磁界を印加すると容器の亀裂や欠陥のある部分から磁束が漏れるが、これを磁気センサで測定して容器の不良有無をより迅速に診断する方式に関する。
【背景技術】
【0002】
欠陥を検査するために使用される非破壊的方法としては、目視検査、超音波探傷、放射線探傷、磁粉探傷、浸透探傷、渦流探傷などが挙げられる。目視検査および超音波探傷は、検査者の経験および主観に依存するため信頼性および再現性に劣っているという欠点があり、放射線探傷は、探傷面に対して垂直の亀裂などの線状欠陥に対する探傷が困難であるという欠点があり、渦流探傷は、伝導体材料の表面または表面近くの欠陥のみを探傷することができる。
【0003】
被検体の内外部壁の欠陥によって漏れる磁束を測定する漏れ磁束(MFL;magnetic flux leakage)測定法は、磁界を使用することにより強磁性体からなる構造体のみで使用できるが、検査が比較的容易で、試験体の大きさや形状などから受ける影響が少なく、欠陥の種類を容易に識別することができる。
【0004】
図1は欠陥部位から磁束が漏れる現象について図示しているが、被検体60を磁化したときに欠陥61は大きい磁気抵抗を起こし、この際、迂回した磁束は欠陥の周囲に集束することになり、結果、有効磁界の強度を増加させる。磁気誘導の大きい増加は有効磁界の強度を増加させる。被検体は内部応力によって引張応力を受け、これにより被検体の欠陥は応力上昇者の役割を行うことになり、欠陥周辺の透磁率が増加する。
【0005】
そのため、被検体に流れる磁力線は、
図1に示したように透磁率が増加した欠陥の底部に集束して流れることになり、この小さい領域において磁力線はマグネチックラインダイポール(magnetic line dipole)のように挙動する。このダイポールは、被検体内の乱れた磁界と同じ方向を有し、欠陥内の漏れ磁束と反対方向を有する磁界を生成する。これにより、欠陥が存在する側、あるいは反対側でも漏れ磁束を測定することで欠陥を探知することができる。
【0006】
前記のような漏れ磁束を検出する装備として様々なものが提案されて来たが、その一例として、
図2のようなヨークタイプの探傷装置が挙げられる。探傷装置は、被検体60を磁化するためのヨーク30と、ヨーク30に巻線されたコイルに電流を印加する電源供給機と、磁界検知センサと、磁界検知センサの出力信号を分析する分析装備と、などからなる。
【0007】
容器の製作過程で不良品を見つけ出すために、従来は超音波検査方法を使用したが、この方法は検査装置と容器の表面が堅固に接触していない場合、正確な測定が困難で、欠陥発生可能性が最も高いドームの曲面部分に対しては正確な検査がなされなかったが、本発明に係る非接触方式によれば、曲面部の検査も可能であり、容器の大きさに関係なく正確に欠陥有無を把握することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような従来技術を改善するために導き出されたものであり、圧力容器の欠陥によって発生する不規則な磁気信号を検出して不良有無を把握することができる。すなわち、圧力容器に磁界を印加すると容器の亀裂や欠陥のある部分から磁束が漏れるが、これを磁気センサで測定して容器の不良有無をより迅速に診断する方式に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を果たし、従来技術の問題点を解決するために、本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置は、圧力容器の外部の一側に設けられ、且つ前記圧力容器の長さ方向において当該圧力容器よりも長く形成された、前記圧力容器を磁化するコイル巻台と、前記圧力容器の外部の他側に配列された複数個の第1磁界検知センサが設けられたセンサ支持体と、前記圧力容器を磁化して前記コイル巻台によって発生した磁束の方向に対して垂直の方向に磁束を発生させるヨークと、前記ヨークの下方に設けられた第2磁界検知センサと、前記圧力容器の内部に挿入され、前記圧力容器の内部の表面欠陥を測定するために一つ以上の第3磁界検知センサが取り付けられた内視鏡と、を含む。そして、前記ヨーク及び前記内視鏡
を、前記圧力容器を前記長さ方向に沿う回転軸を中心として回転させ
たときに、前記長さ方向に移動
させることが可能に構成されている。
【0010】
また、本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置において、前記コイル巻台によって発生した磁束は、前記圧力容器を貫通し、前記圧力容器を貫通する磁束の方向に対して垂直の方向に位置する前記圧力容器の外部表面の欠陥は、前記
第1磁界検知センサによって検出される磁気信号を変化させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置において
、前記ヨークによって発生した磁束の方向に対して垂直の方向に位置する前記圧力容器の外部表面の欠陥は、前記
第2磁界検知センサによって検出される磁気信号を変化させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置において、前記ヨークの両先端にはスチールブラシが装着されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置において、前記
各磁界検知センサは、サーチコイル(search coil)センサ、フラックスゲート(flux gate)センサ、ホール効果(hall effect)センサ、GMRセンサ、AMRセンサ、TMRセンサ、およびPHRセンサを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置によれば、欠陥の方向による欠陥検出能力を高めるために磁化方向を変えることができる。外部欠陥の場合、圧力容器を1回転させる間に欠陥測定を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】磁化した被検体の欠陥部位から発生した漏れ磁束の形状を示す図である。
【
図2】従来の漏れ磁束の測定による非破壊探傷装置を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0019】
図3は本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置の構成を示す図である。
【0020】
本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置は、
図3に示したように、コイル巻台(coil winding mount)100と、センサ支持体(sensor support)200と、ヨーク300と、内視鏡400と、を含む。
【0021】
本発明の一実施例に係る漏れ磁束の測定による圧力容器の非破壊探傷装置は、圧力容器500の外部および内部の表面欠陥を測定するものである。
【0022】
本発明の一実施例に係るコイル巻台100は、圧力容器500の外部の一側に設けられて圧力容器500を磁化する。
【0023】
本発明の一実施例に係るセンサ支持体200は、圧力容器500の外部の他側に複数個の磁界検知センサ210を配列して設ける。また、センサ支持体200に磁界検知センサ210を固定するためのセンサホルダ230も備える。
【0024】
本発明の一実施例に係るコイル巻台100によって発生した磁束φ
1は、
図3に示したように圧力容器500を貫通する。圧力容器500を貫通する磁束φ
1の方向に対して垂直の方向に位置する外部表面の欠陥Aは、磁界検知センサ210によって検出される磁気信号を変化させる。
【0025】
これにより、圧力容器500を1回転させる間に外部表面の欠陥Aの検出を完了することができる。圧力容器500を回転させるための手段として、圧力容器500にハンドルが取り付けられるようにするか、モータとベルトなどが設けられてもよい。圧力容器500には回転軸が設けられている。これは、当業者の判断によって多様な方法で実現することができる。また、圧力容器500の回転速度を調節して表面欠陥の検出速度を調節することができる。
【0026】
上述のように、本発明は、圧力容器500が回転させながら欠陥検出の過程を繰り返すようになっている。すなわち、圧力容器500を回転軸周りに回転させると圧力容器500が回転するようになっているが、これにより圧力容器500が1回転する間に外部表面の欠陥Aの検出を完了することができる。
【0027】
また、内部表面の欠陥測定においても、内視鏡400の位置移動をねじのピッチ移動のように、すなわち、圧力容器500の1回転に1ピッチの間隔で内視鏡400を移動させると、より迅速で精密な内部表面の欠陥測定が可能となる。
【0028】
検査対象の圧力容器500をコイル巻台100によって磁化すると圧力容器500の欠陥Aの部位から漏れ磁束が発生し、磁界検知センサ210はこれを検知して欠陥位置を検出する。
【0029】
磁界検知センサ210は、例えば、漏れ磁束によって変形した電圧を測定し、この電圧レベルによって圧力容器500の欠陥有無および欠陥位置を検出することができる。
【0030】
本発明の一実施例に係るヨーク300は、
図3に示したように、圧力容器500を磁化してコイル巻台100によって発生した磁束φ
1の方向に対して垂直の方向に磁束φ
2を発生させる。これは、コイル巻台100によって発生した磁束φ
1で探知が困難な方向に位置した欠陥を検出するためである。
【0031】
ヨーク300は、圧力容器500と非接触である。また、ヨーク300は、ヨーク300の外部に巻き取られてヨーク300に磁界を形成するコイルと、コイルに電源を供給する電源供給機と、を含むことができる。
【0032】
電源供給機が発生させる磁界によって磁束φ
2がヨーク300に発生して圧力容器500に印加されると、圧力容器500に相互誘導作用を起こして磁束φ
2が形成され、この圧力容器500に欠陥Bが存在する場合、圧力容器500のインピーダンスが変化することにより、磁束φ
2の大きさが欠陥Bの周辺で変化する。
【0033】
磁束φ
2の大きさもまた欠陥Bの大きさに応じて変化する。このような磁束φ
2の大きさの変化および変化の位置を磁界検知センサ310が探知して測定信号を発生すると、増幅回路で測定信号をフィルタリングして増幅し、増幅された測定信号を信号処理機で処理して欠陥Bの位置および大きさを算出することで、圧力容器500内の欠陥の存在有無、欠陥の位置および大きさを検出することができる。
【0034】
本発明の一実施例に係るヨーク300の下方に、上述のように、磁界検知センサ310が設けられている。ヨーク300によって発生した磁束φ
2の方向に対して垂直の方向に位置する外部表面の欠陥Bは、磁界検知センサ310によって検出される磁気信号を変化させる。
【0035】
本発明の一実施例に係るヨーク300の両先端にはスチールブラシ330を装着することができる。ヨーク300は、フェライトまたは電気鉄板のような高透磁率の材料からなることが好ましい。ヨーク300は蹄鉄形に具現されることができる。
【0036】
これにより、圧力容器500を回転させると同時にヨーク300を1ピッチずつ前進させることで外部表面の欠陥Bの検出を完了することができる。
【0037】
本発明の一実施例に係る内視鏡400は、圧力容器500の内部の表面欠陥を測定するためのものであり、一つ以上の磁界検知センサ410が取り付けられた内視鏡400を圧力容器500の内部に挿入する。圧力容器500の内部の表面欠陥を測定する過程は、内視鏡400を使用すること以外は上述の過程と同様である。
【0038】
上述の磁界検知センサ210、310、410はサーチコイル(search coil)センサ、フラックスゲート(flux gate)センサ、ホール効果(hall effect)センサ、GMRセンサ、AMRセンサ、TMRセンサ、およびPHRセンサなどに具現されることができる。
【0039】
非破壊探傷装置は、磁界検知センサ210、310、410から発生した測定信号を増幅およびフィルタリングする回路と、増幅およびフィルタリングした測定信号を処理して圧力容器500内の欠陥の位置および大きさを算出する信号処理機と、を含むことができる。
【0040】
信号処理機は、増幅およびフィルタリングした測定信号を微分して欠陥の位置および大きさを算出する微分処理機をさらに含むことができる。このような微分処理により欠陥の位置および大きさをより正確に算出することができる。
【0041】
前記のように本発明によれば、欠陥の方向による欠陥検出能力を高めるために磁化方向を変えることができる。外部欠陥の場合、圧力容器を1回転させる間に欠陥測定を完了することができる。
【0042】
本発明の主な特徴は、圧力容器を回転させながら表面欠陥を検出する際により迅速に検出作業を完了でき、上述のように欠陥が磁束の方向に対して垂直の方向に位置する場合、磁界検知センサによって容易に検出できる点を利用して磁化方向を変えることにある。すなわち、磁化方向を変えるためにコイル巻台およびヨークを使用する。
【0043】
以上、本発明について限定された実施例と図面を用いて説明したものの、本発明は前記の実施例に限定されず、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であればこのような記載から多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明の思想は下記の特許請求の範囲によってのみ把握しなければならず、その均等または等価的な変形は、いずれも本発明の思想の範疇に属するといえる。