(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記篩は、前記ロータリーキルンに連続して設けられ、30〜70mmの複数の円い穴を有する金属板で形成されてなるトロンメルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉱石中水分の測定方法。
ロータリーキルンを使用して原料鉱石を乾燥させて乾燥鉱石とする乾燥工程と、得られた乾燥鉱石を焼成するとともに部分還元する焼成及び部分還元工程とを含むフェロニッケルの製錬方法であって、
前記乾燥工程では、
前記ロータリーキルンから得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩で篩分けし、
篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石を対象として、非接触型の赤外線吸収式水分計を用いて水分率を求め、
求められた水分率に基づき、前記ロータリーキルンにて燃焼させる燃料の量を調整する
ことを特徴とするフェロニッケルの製錬方法。
【背景技術】
【0002】
フェロニッケル製錬においては、ニッケル鉱石及びニッケル鉱石と一緒に処理する工程内で発生した中間物(繰返物)等の原料(以下、単に「鉱石」という)は、付着水分が25〜35%と高い。そのため、後の工程で鉱石搬送用ベルトコンベアーへの付着等のトラブルを避けるために、最初に、滞留時間が1時間程度のロータリーキルン(ロータリードライヤー)を使用した乾燥工程(以下、「前処理工程」ともいう)で鉱石中の水分を15〜25%まで乾燥させることが一般的である。
【0003】
この乾燥工程で得られた鉱石(乾燥鉱石)は、次の工程である焼成及び部分還元工程に送られて焼鉱となり、その焼鉱はさらに次の工程である還元工程に送られ、粗フェロニッケルとなる。この粗フェロニッケルは、脱硫工程、鋳造工程の順に送られて処理された後、製品であるフェロニッケルとなる。
【0004】
乾燥工程においては、鉱石を所定の水分率に調整できない場合、乾燥工程から焼成及び部分還元工程へ乾燥鉱石を搬送する過程で不具合が発生する。すなわち、乾燥鉱石の水分率が高すぎると、その乾燥鉱石を搬送する過程で、焼成及び部分還元工程にて使用するロータリーキルンに乾燥鉱石を投入するためのシュート(以下、「投原シュート」という)や、乾燥工程から焼成及び部分還元工程に乾燥鉱石を搬送するベルトコンベアーに、乾燥鉱石が付着する不具合、いわゆる“居付き”が生じる。また、水分率が低すぎると、焼成及び部分還元工程におけるロータリーキルン内で乾燥鉱石が粉化され、ダストが多く発生するという不具合(“ダスト発生率の増加”)も生じる。
【0005】
上述した不具合のうち、投原シュートやベルトコンベアーに乾燥鉱石が付着する“居付き”が発生すると、投原シュートの詰まりやベルトコンベアーの片寄りが発生するため、これを除去する必要がある。しかしながら、この居付きを除去するためには、少なくともロータリーキルンを停止させ、炉内温度が低下するのを待ってから人手により除去するしかなく、ロータリーキルンの稼働率が著しく低下してしまうという大きな問題が生じる。
【0006】
一方、上述した不具合のうち、“ダスト発生率の増加”が生じた場合には、ロータリーキルンからの排ガスと共に排出されるダストを分離し、そのダストを原料鉱石と混合して、再度、乾燥工程に戻して処理する必要がある。
【0007】
これらのことから、乾燥鉱石の水分率は、居付きの不具合を確実に避けることができる水分率であり、且つ、ダスト発生率が増加しない水分率に調整するようにしていた。具体的には、得られた乾燥鉱石の水分率を測定し、この値をもとにロータリーキルンで燃焼させる化石燃料の量を調整することで、水分率を調整するようにしていた。そして、その水分率を調整した結果、発生してしまったダストについては、再度、乾燥工程で処理することが一般的である。
【0008】
しかしながら、このダストは、再度乾燥工程で処理することは可能であるものの、そのダスト発生率の増加が恒常化すれば、常時、一定量のダストを乾燥工程で処理しなければならなくなる。すなわち、ダスト発生率が恒常化した場合には、乾燥工程において、常時、燃料使用量が増加する、鉱石を処理する量が抑えられる、等の問題が生じることになる。したがって、ダスト発生率の低減は操業コストを削減するためには不可欠となる。
【0009】
例えば、特許文献1には、ニッケル鉱石等を製錬してフェロニッケルを製造する際の製団工程において、原料に予め水分を添加した後、撹拌して原料中の水分率を均一にすることで団鉱強度を一定以上に制御し、ロータリーキルンの中での粉化を少なくする技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、原料である石炭灰(フライアッシュ)に水を添加して粒状物を得た後、ロータリーキルン等の転動型焼成炉を使用する焼成工程において、ダストの発生を抑える技術が開示されている。
【0011】
また、上述したように、原料に予め所定の水分を添加して水分率を調整し、乾燥等の工程に装入して高い強度の粒状物を得ることによってダスト発生率を抑える技術は、他にも行われている。
【0012】
しかしながら、乾燥鉱石の水分率を測定する方法、すなわち、非接触測定型の測定器を使用して水分率を測定する方法の精度は低く、ばらつきが大きかった。このばらつきが大きいという条件の下では、上述した居付きの発生を確実に避けるために、その水分率は低目に調整せざるを得なかった。そのため、常にダスト発生率が高いという問題があった。
【0013】
以上のことから、乾燥鉱石中の水分率を、居付きの発生を確実に避けられ、且つダスト発生率も抑えることのできる狭い範囲に確実に調整することが可能な、ばらつきの小さい乾燥鉱石中の水分率の測定方法、すなわち、乾燥鉱石中の水分を精度よく測定できる方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、鉱石中水分率の測定精度を向上させ、測定のばらつきを小さくすることができるフェロニッケル製錬における鉱石中水分の測定方法、並びに、その測定方法を適用したフェロニッケル製錬の乾燥工程における乾燥処理方法、及びフェロニッケルの製錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、ロータリードライヤーから排出された乾燥鉱石を所定の目開きの篩で篩分けし、その篩を通過した篩下の乾燥鉱石のみを対象として水分率を求めることで、水分率の測定値のばらつきが小さくなることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明に係る鉱石中水分の測定方法は、フェロニッケル製錬においてロータリーキルンを使用して原料鉱石を乾燥させる乾燥工程にて得られた乾燥鉱石の水分率を測定する鉱石中水分の測定方法であって、前記ロータリーキルンから得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩で篩分けし、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石を対象として、非接触型の
赤外線吸収式水分
計を用いて水分率を求めることを特徴とする。
【0018】
ここで、上述した鉱石中水分の測定方法において、前記篩下の乾燥鉱石の水分率を求めるに際しては、水分率が既知の複数の鉱石標準試料を用いて、該既知の水分率を横軸に、該鉱石標準試料に対して非接触型の
赤外線吸収式水分
計により測定した該既知の水分率に対応する水分相対値を縦軸にとった散布図を使用し、前記篩下の乾燥鉱石を対象として前記非接触型の
赤外線吸収式水分
計により得られた水分相対値から、前記散布図に基づいて水分率を求めるようにすることができる。
【0019】
また、前記篩としては、前記ロータリーキルンに連続して設けられ、30〜70mmの複数の円い穴を有する金属板で形成されてなるトロンメルであることが好ましい。
【0020】
また、前記トロンメルは、前記ロータリーキルンの排出端に接続され、該ロータリーキルンと一体になっていることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る乾燥処理方法は、フェロニッケル製錬においてロータリーキルンを使用して原料鉱石を乾燥させて乾燥鉱石とする乾燥工程における乾燥処理方法であって、前記ロータリーキルンから得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩で篩分けし、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石を対象として、非接触型の
赤外線吸収式水分
計を用いて水分率を求め、求められた水分率に基づき、前記ロータリーキルンにて燃焼させる燃料の量を調整することを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るフェロニッケルの製錬方法は、ロータリーキルンを使用して原料鉱石を乾燥させて乾燥鉱石とする乾燥工程と、得られた乾燥鉱石を焼成するとともに部分還元する焼成及び部分還元工程とを含むフェロニッケルの製錬方法であって、前記乾燥工程では、前記ロータリーキルンから得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩で篩分けし、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石を対象として、非接触型の
赤外線吸収式水分
計を用いて水分率を求め、求められた水分率に基づき、前記ロータリーキルンにて燃焼させる燃料の量を調整することを特徴とする。
【0024】
ここで、上述したフェロニッケルの製錬方法においては、水分率を測定した後の篩下の乾燥鉱石と、篩分けされた篩上の乾燥鉱石とを混合して、それら乾燥鉱石を前記焼成及び部分還元工程に移送する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、乾燥鉱石の水分率測定値のばらつきを小さくすることができ、精度の高い測定結果を得ることができる。そして、得られた精度の高い測定値をフィードバックして乾燥工程における乾燥処理を調整することにより、乾燥鉱石の水分率を極めて的確に調整することができ、移送途中における居付きの発生を防止し、またダスト発生率を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
1.鉱石中水分の測定方法
1−1.篩分け工程
1−2.水分率測定工程
2.フェロニッケルの製錬方法
2−1.乾燥工程
2−2.焼成及び部分還元工程
3.実施例
【0028】
≪1.鉱石中水分の測定方法≫
本実施の形態に係る鉱石中水分の測定方法は、フェロニッケル製錬においてロータリーキルンを使用して原料鉱石を乾燥させる乾燥工程にて得られた乾燥鉱石(予備乾燥物)の水分率を測定する鉱石中水分の測定方法である。
【0029】
具体的に、この測定方法は、ロータリーキルンから得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩で篩分けし、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石を対象として、非接触型の水分測定器を用いて水分率を求める。なお、以下では、乾燥工程にて原料鉱石を乾燥させるために使用するロータリーキルンをロータリードライヤーと称する。
【0030】
図1は、フェロニッケル製錬の乾燥工程において、ロータリードライヤーから排出された乾燥鉱石の水分率を測定する流れを示す模式図である。以下、この
図1を参照しながら、より具体的に説明していく。
【0031】
<1−1.篩分け工程>
本実施の形態に係る鉱石中水分の測定方法では、先ず、ロータリードライヤー11から得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩12で篩分けする。これにより、目開き30〜70mmの篩を通過した篩下の乾燥鉱石である細粒13(以下、「篩下の乾燥鉱石13」ともいう)と、篩を通過しなかった篩上の乾燥鉱石である塊14aとに分別する。
【0032】
この篩分け処理によって篩12を通過しなかった篩上の乾燥鉱石の塊14aについては、
図1に示すように、搬送手段であるベルトコンベアー15bに載置させ、そのベルトコンベアー15bの先に設けられた破砕機16で破砕することによって、例えば30〜120mm程度の小塊14bにする。そして、詳しくは後述するが、破砕して得られた小塊14bをベルトコンベアー15cによって搬送し、篩分けにより篩12を通過した篩下の細粒13と混合させた後に、次工程である焼成及び部分還元工程に移送させてロータリーキルン内に装入する。このように、篩分けして得られた篩上の塊14aを所定の大きさにまで破砕することによって、フェロニッケル製錬の焼成及び部分還元工程に移送する全乾燥鉱石の粒度を所定の範囲に揃えることができる。
【0033】
一方で、篩分け処理によって篩12を通過した篩下の細粒13の乾燥鉱石については、
図1に示すように、篩分け後にベルトコンベアー15aに載置させ、そのベルトコンベアー15aに載置させた状態のままで、非接触型の水分測定器を使用してその細粒13の水分率を求める。すなわち、ロータリードライヤー11から篩分けされた塊14aを除いて、篩下に得られた細粒13の乾燥鉱石のみを対象として、その水分率を測定する。
【0034】
このように、本実施の形態に係る鉱石中水分の測定方法においては、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石である細粒13のみを対象として、非接触型の水分測定器を用いて水分率を求めるようにする。これにより、水分率の測定値のばらつきを小さくすることができる。具体的には、常圧乾燥法等の定量分析を用いて測定した水分率に対して、非接触型の水分測定器で測定した水分率を散布図とした場合に、一次近似の相関係数が0.50以上となる。そして、このように水分率の測定値のばらつきを小さくできることにより、乾燥鉱石の水分率を的確に調整することができ、乾燥鉱石による居付きの発生やダスト発生率の増加という不具合を効果的に抑制することができる。
【0035】
(水分率測定値のばらつき減少のメカニズムについて)
ここで、篩下に得られた乾燥鉱石(細粒13)を水分率測定の対象とすることで、その測定値のばらつきが小さくなる理由についてより詳しく説明する。
【0036】
乾燥鉱石の水分率の測定においては、例えば赤外線吸収式水分計等の非接触型の水分測定器を使用して、ロータリードライヤー11から排出されベルトコンベアー等に載置された乾燥鉱石の上部から赤外線等を照射することによって水分率を測定する。このとき、水分率の測定対象を、篩12を通過した細粒13と30〜120mm程度に破砕した小塊14bとの混合物とした場合には、ベルトコンベヤーに載置された乾燥鉱石の表面積(ベルトコンベアー上に積み上がった乾燥鉱石の山の表面の面積)に占める30〜120mm程度の小塊14bの割合と、ベルトコンベヤーに載っている乾燥鉱石の重量に占める30〜120mm程度の小塊14bの重量の割合とは一致せず、非接触型の水分測定器で測定した水分率は大きくばらついてしまう。このように、積み上がった山の表面積に占める小塊14bの割合と、全重量に占める小塊14bの重量の割合とが一致しないことは、処理する原料鉱石の性状、すなわち原料鉱石に含まれている粘土分の割合等によって大きなばらつきがあることによる。
【0037】
また、篩12を通過した篩下の細粒13は篩12を通過しなかった篩上の塊14aよりも水分率が高い傾向にあり、さらに、その篩上の塊14aを破砕することで、破砕時に生じる摩擦熱によって鉱石が熱くなり、水分の一部が蒸発するようになるため、篩下の細粒13と30〜120mm程度の小塊14bとの水分率の差は大きくなる。このように、水分率変化の影響によって、乾燥鉱石の表面積に占める30〜120mm程度の小塊14bの割合と、乾燥鉱石の重量に占める30〜120mm程度の小塊14bの割合とが異なることで生じる、非接触型の水分測定器で測定した水分率のばらつきは、さらに大きいものとなる。
【0038】
このように、乾燥鉱石の表面積に占める30〜120mmの小塊14bの割合と、乾燥鉱石の重量に占める30〜120mmの小塊14bの割合の違いが、乾燥鉱石中の水分率を測定する際の測定精度が上がらない原因になると推測される。
【0039】
本発明者らは、篩上の塊14aを破砕して得られた30〜120mm程度の小塊14bは、投原シュートや搬送ベルトコンベアーに付着する居付きや、焼成及び部分還元工程のロータリーキルン内部で発生するダスト量に影響しないことに着目した。すなわち、この30〜120mm程度の小塊14bについては、ロータリードライヤー11において乾燥の程度を調整する必要がないものであり、この小塊14bが水分測定値のばらつきの原因となるということに着目した。
【0040】
そこで、本実施の形態に係る鉱石中水分の測定方法においては、ロータリードライヤー11から得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩12で篩分けし、その篩12を通過した篩下の乾燥鉱石13のみを対象として、水分率を求めるようにする。すなわち、ロータリードライヤー11から排出された乾燥鉱石の塊14aを篩分けして除き、そしてその塊14aを破砕して得られた小塊14bと混合する前に、篩下の乾燥鉱石である細粒13のみを対象として水分率を求める。
【0041】
このように、水分測定値のばらつきの原因となる塊14aの乾燥鉱石を除いて、篩下の乾燥鉱石である細粒13のみを水分測定対象とすることにより、その測定値のばらつきを小さくし、測定精度を向上させることができる。そして、その測定した水分率に基づいてロータリードライヤー11での乾燥の程度を調整することにより、居付きの発生やダスト発生率の増加を効果的に防ぐことができる。
【0042】
(篩の目開きについて)
篩12の目開きについては、上述したように、30〜70mmとする。篩12の目開きが70mmを超えると、70mmを超える塊14aが篩を通過して篩下に混じってしまう。すると、ベルトコンベヤー15aで乾燥鉱石を搬送する際に、表面積に占める小塊14bの割合と重量に占める小塊14bの割合の違いが大きくなる。また、表面積に占める小塊14bの割合と重量に占める小塊14bの割合との比は、上述したように、処理する原料の性状、すなわち含まれている粘土分の割合等により大きくばらつく。このことから、篩12の目開きが70mmを超えると、水分率の測定値のばらつきが非常に大きくなる。
【0043】
一方で、篩12の目開きが30mm未満であると、ロータリードライヤー11から排出された乾燥鉱石(予備乾燥物)は15〜25%の付着水分を含むものであるため、篩分けを行う際に篩12の目詰まりが生じてしまう。
【0044】
(篩について)
篩12としては、上述した目開きで乾燥鉱石を分別できるものであれば特に限定されず、例えば振動篩等を用いることができるが、30〜70mm(目開き)の複数の円い穴を有する金属板で形成されてなるものを用いることが好ましい。篩分け処理では、塊が混じった乾燥鉱石を処理するため、この塊による摩耗に強いことが必要となる。この点において、金属板で形成されてなる篩を用いることによって摩耗を防ぐことができ、より効果的な篩分けを行うことを可能にする。また、その金属板で形成されてなる篩の中でも、トロンメルを用いることがより好ましい。トロンメルは、開口部が狭い構造となっているため、発生したダストの回収が容易となり、効率的な処理を行うことを可能にする。
【0045】
また、トロンメル等の篩12の設置位置としては、ロータリードライヤー11に連続的に設けることが好ましく、ロータリードライヤー11の排出端11aに接続されて一体となっていることが特に好ましい。ロータリードライヤー11の排出端11aに接続されて直接つながった構造となっていることにより、新たな設備を設けることなく、簡便に篩分けを行うことができる。
【0046】
<1−2.水分率測定工程>
本実施の形態に係る鉱石中水分の測定方法においては、上述したように、乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩12で篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石である細粒13のみを対象として、その乾燥鉱石の水分率を求めるようにする。
【0047】
この水分率を求めるに際しては、篩12を通過した直後の乾燥鉱石の細粒13を、搬送手段であるベルトコンベアー15aに載っている状態で、その細粒13の上部から非接触型の水分測定器を使用して乾燥鉱石の水分率を測定する。
【0048】
(水分率の測定方法について)
乾燥鉱石の水分率の測定方法としては、特に限定されないが、例えば以下のようにして行う。すなわち、先ず、その水分率が既知であり、且つ、その水分率が15〜25%の範囲にある乾燥鉱石を標準試料として30個以上準備し、これらの標準試料を対象として上述した非接触型の水分測定器を使用して測定する。このときに得られる測定値は、その標準試料の水分率に対応した値(以下、「水分相対値」という)となる。そして、その標準試料の既知の水分率を横軸とし、測定した水分相対値を縦軸として、散布図を作製する。
【0049】
次に、実際の操業においてロータリードライヤー11から排出され篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石である細粒13に対して、非接触型の水分測定器を使用して水分相対値を得る。そして、その水分相対値から、作製した散布図に基づいて、測定対象とした乾燥鉱石の水分率を求める。
【0050】
非接触型の水分測定器としては、特に限定されないが、赤外線吸収式水分計を用いることが好ましい。非接触型の水分率測定器の中でも、赤外線吸収式の水分率測定器は、非常に安価で、しかも耐久性が高いという点で特に好ましい。
【0051】
また、水分率の測定位置としては、特に限定されないが、例えばトロンメル等の篩12から排出された乾燥鉱石である細粒13がベルトコンベアー15aに載置された後、ベルトコンベアー15aの中間付近以降の位置とすることが好ましい。より具体的には、篩12から排出された細粒13の温度が、50℃以下になった位置で測定することが好ましい。このように、細粒13の温度が50℃以下になった位置で水分率を測定することで、細粒13からの湯気の発生が収束するため、非接触型の水分測定器を用いて精度よく測定することができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る鉱石中水分の測定方法においては、ロータリードライヤー11から得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩12で篩分けし、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石である細粒13を対象として、非接触型の水分測定器を用いて水分率を求める。このような測定方法によれば、乾燥鉱石の水分率測定値のばらつきが小さくなり、精度の高い測定結果を得ることができる。そして、得られた精度の高い測定値をフィードバックして乾燥工程における乾燥処理を調整することにより、乾燥鉱石の水分率を極めて的確に調整することができ、移送途中における居付きの発生を防止し、またダスト発生率を低減させることができる。
【0053】
≪2.フェロニッケルの製錬方法≫
次に、上述した鉱石中水分の測定方法を適用した、フェロニッケルの製錬方法について説明する。
【0054】
フェロニッケルの製錬方法は、ロータリードライヤーを使用して原料鉱石であるニッケル酸化鉱石を乾燥させて乾燥鉱石とする乾燥工程と、得られた乾燥鉱石を焼成するとともに部分還元する焼成及び部分還元工程とを含むものである。
【0055】
なお、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。このガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱換算でNi品位が2.1〜2.5重量%、Fe品位が11〜23重量%、MgO品位が20〜28重量%、SiO
2品位が29〜39重量%、CaO品位が0.5重量%未満、灼熱減量が10〜15重量%である。
【0056】
<2−1.乾燥工程>
乾燥工程では、所定の調合品位となるように原料鉱石を配合した後に、ロータリードライヤーを使用して、その原料鉱石中の水分の一部を除去する。具体的には、鉱石中の水分を15〜25%程度に調整する。
【0057】
ここで、本実施の形態においては、
図1に示したように、ロータリードライヤー11から得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩12で篩分けし、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石である細粒13を対象として非接触型の水分測定器により水分率を求める。
【0058】
上述したように、ロータリードライヤー11から得られた乾燥鉱石を目開き30〜70mmの篩12で篩分けし、篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石13を対象として、非接触型の水分測定器を用いて水分率を求めることによって、乾燥鉱石の水分率測定値のばらつきが小さくなり、精度の高い測定結果を得ることができる。
【0059】
そして、このフェロニッケル製錬においては、求められた乾燥鉱石の水分率に基づいて、ロータリードライヤー11にて燃焼させる化石燃料等の燃料の量を調整するようにする。つまり、求められた水分率の結果をフィードバックして、乾燥工程におけるロータリードライヤー11での乾燥処理条件を調整する。
【0060】
ロータリードライヤー11にて使用する燃料の量の調整方法としては、特に限定されないが、例えば測定した水分率が高かった場合には、化石燃料等の燃料の投入量を増加させ、乾燥温度(加熱温度)を高くするようにする。一方で、測定した水分率が高かった場合には、燃料の投入量を減少させ、乾燥温度(加熱温度)を低くするようにする。
【0061】
本実施の形態に係るフェロニッケル製錬においては、このようにして乾燥工程における乾燥処理を行うことによって、得られる乾燥鉱石の水分率を的確に調整することができ、次工程の焼成及び部分還元工程への移送途中での居付きの発生や、焼成及び部分還元工程で装入した乾燥鉱石の粉化を防止してダストの発生量を低減させることができる。
【0062】
なお、ロータリードライヤー11から排出された乾燥鉱石を篩分けして得られた篩上の塊14aについては、上述したように、破砕機16によって30〜120mm程度の小塊14bに破砕し、その後、
図1に示したように、その小塊14bと水分率の測定が終わった篩下の細粒13とをベルトコンベアー15dで混合させて、次工程へ移送する。
【0063】
<2−2.焼成及び部分還元工程>
焼成及び部分還元工程では、乾燥工程を経て得られた乾燥鉱石をロータリーキルン内に装入し、石炭等の還元剤と必要に応じて熔剤を添加して、乾燥鉱石中に含まれる残りの水分を完全に除去するとともに、乾燥鉱石を部分的に還元して焼成鉱石(焼鉱)を得る。
【0064】
上述したように、この焼成及び部分還元工程にて処理される対象の乾燥鉱石は、乾燥工程にて篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石である細粒13と、篩上の塊14aを30〜120mm程度に破砕して得られた小塊14bとの混合物である。
【0065】
この焼成及び部分還元工程では、焼成処理に伴って、乾燥鉱石の一部が粉化してダストとなることがあり、発生したダストは乾燥工程のロータリードライヤーに繰り返し装入されることになる。しかしながら、本実施の形態においては、上述した乾燥工程において、乾燥鉱石の水分率を的確に調整することを可能にしているので、そのダストの発生率を極めて効果的に低減させることができ、乾燥工程への繰り返し量も低減させ、効率的な処理を行うことができる。
【実施例】
【0066】
≪3.実施例≫
以下、本発明についての実施例を比較例と対比しながら説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
フェロニッケル製錬の乾燥工程におけるロータリードライヤーから排出された乾燥鉱石を、目開き30mmの篩で篩分けした。篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石(細粒)に水を添加して水分率を調整した乾燥鉱石(すなわち、水分率が既知の乾燥鉱石)に対して常圧乾燥法で測定した水分率を横軸とし、非接触型の水分測定器で測定した水分相対値を縦軸として散布図を作製した。この散布図の一次近似の相関係数として、0.70を得ることができた。なお、非接触型の水分測定器としては、赤外線吸収式水分計(型式IRMA5161S2、株式会社チノー製)を使用した。
【0068】
次に、3日間のフェロニッケル製錬操業を行い、操業中の乾燥鉱石を目開き30mmの振動篩で篩分けし、篩分け後にベルトコンベアーに載置させた篩下の乾燥鉱石の水分率を非接触型の水分測定器で測定して、作製した散布図に基づいてその乾燥鉱石の水分率を求めた。この非接触型の水分測定器で水分率を測定した乾燥鉱石と同じ乾燥鉱石をサンプリングし、常圧乾燥法で求めた水分率と非接触型の水分測定器で求めた水分率を散布図にすると、一次近似の相関係数は0.71となり、乾燥鉱石の水分率測定結果のばらつきはほとんど無く、基準値とした0.5を上回るものであった。
【0069】
また、測定した水分率に基づいて、乾燥鉱石が所定の水分率となるように調整しながら操業した結果、ダスト発生率は19.6%となった。
【0070】
[実施例2]
ロータリードライヤーから排出された乾燥鉱石を、目開き70mmの篩で篩分けしたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0071】
事前に準備した乾燥鉱石に対して常圧乾燥法で測定した値と、非接触型の水分測定器で測定した値から作製した散布図の一次近似の相関係数は、0.65となった。
【0072】
そして次に、この散布図に基づいて、操業中の乾燥鉱石の水分率を、非接触型の水分測定器で測定した。得られた測定値と、同じ乾燥鉱石の水分率を常圧乾燥法で求めた値を散布図にすると、一次近似の相関係数は0.67となり、乾燥鉱石の水分率測定結果のばらつきはほとんど無く、基準値とした0.5を上回るものであった。
【0073】
また、測定した水分率に基づいて、乾燥鉱石が所定の水分率となるように調整しながら操業した結果、ダスト発生率は19.8%となった。
【0074】
[実施例3]
ロータリードライヤーから排出された乾燥鉱石を、ロータリードライヤーの排出端側に接続された目開き30mmの円い穴を開けた厚さ20mmの金属板を使ったトロンメルを使用して篩分けしたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0075】
事前に準備した乾燥鉱石に対して常圧乾燥法で測定した値と、非接触型の水分測定器で測定した値から作製した散布図の一次近似の相関係数は、0.70となった。
【0076】
そして次に、この散布図に基づいて、操業中の乾燥鉱石の水分率を、非接触型の水分測定器で測定した。得られた測定値と、同じ乾燥鉱石の水分率を常圧乾燥法で求めた値を散布図にすると、一次近似の相関係数は0.69となり、乾燥鉱石の水分率測定結果のばらつきはほとんど無く、基準値とした0.5を上回るものであった。
【0077】
また、測定した水分率に基づいて、乾燥鉱石が所定の水分率となるように調整しながら操業した結果、ダスト発生率は19.6%となった。
【0078】
[比較例1]
ロータリードライヤーから排出された乾燥鉱石を、目開き100mmの篩で篩分けしたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0079】
事前に準備した乾燥鉱石に対して常圧乾燥法で測定した値と、非接触型の水分測定器で測定した値から作製した散布図の、一次近似の相関係数は、0.23であった。
【0080】
そして次に、この散布図に基づいて、操業中の乾燥鉱石の水分率を、非接触型の水分測定器で測定した。得られた測定値と、同じ乾燥鉱石の水分率を常圧乾燥法で求めた値を散布図にすると、一次近似の相関係数は0.22となり、乾燥鉱石の水分率測定結果のばらつきは大きくなり、基準値とした0.5を下回るものであった。
【0081】
また、測定した水分率に基づいて、乾燥鉱石が所定の水分率となるように調整しながら操業した結果、ダスト発生率は21.0%となり、実施例1〜3に比べてダスト発生率が増加した。このことは、測定水分率のばらつきが大きく正確に測定できなかったことにより、ロータリードライヤー内での乾燥処理の調整が効果的にできなかったためであると考えられる。
【0082】
[比較例2]
乾燥鉱石を篩分けした後、篩上の乾燥鉱石を破砕して30〜120mmの小塊とし、得られた小塊と篩分けして得られた篩下の乾燥鉱石とを混ぜ合わせ、それら混ぜ合わせた後の乾燥鉱石に対して非接触型の水分測定器を用いて水分率を測定したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0083】
事前に準備した篩下の乾燥鉱石と篩上の乾燥鉱石を破砕して得られた30〜120mmの小塊とを混ぜ合わせた乾燥鉱石に対して常圧乾燥法で測定した値と、非接触型の水分測定器で測定した値から作製した散布図の、一次近似の相関係数は、0.21であった。
【0084】
そして次に、この散布図に基づいて、操業中の乾燥鉱石の水分率を、非接触型の水分測定器で測定した。得られた測定値と、同じ乾燥鉱石の水分率を常圧乾燥法で求めた値を散布図にすると、一次近似の相関係数は0.20となり、乾燥鉱石の水分率測定結果のばらつきは大きくなり、基準値とした0.5を下回るものであった。
【0085】
また、測定した水分率に基づいて、乾燥鉱石が所定の水分率となるように調整しながら操業した結果、ダスト発生率は21.2%となり、実施例1〜3に比べてダスト発生率が増加した。このことは、測定水分率のばらつきが大きく正確に測定できなかったことにより、ロータリードライヤー内での乾燥処理の調整が効果的にできなかったためであると考えられる。