特許第5984143号(P5984143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984143
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】電気炉の操業方法及びその電気炉
(51)【国際特許分類】
   C22C 33/04 20060101AFI20160823BHJP
   C21B 11/10 20060101ALI20160823BHJP
   C21B 13/12 20060101ALI20160823BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20160823BHJP
   F27B 3/22 20060101ALI20160823BHJP
   F27B 3/19 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C22C33/04 H
   C21B11/10
   C21B13/12
   F27B3/18
   F27B3/22
   F27B3/19
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-132312(P2013-132312)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-7268(P2015-7268A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】竹林 優
(72)【発明者】
【氏名】山口 允裕
(72)【発明者】
【氏名】山際 雅幸
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−001938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 33/04
C21B 11/10
C21B 13/12
F27B 3/18
F27B 3/19
F27B 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェロニッケル製錬において、直径10〜25mの電気炉内に焼成鉱石を投入して該焼成鉱石を還元熔解する電気炉の操業方法であって、
前記焼成鉱石を還元熔融して得られた熔体層の上部に、未熔解の焼成鉱石からなる鉱石層を含む高さ2.2〜2.9mの空間を形成させ、
前記電気炉には、直径50〜300mmの空気取り入れ孔が、該電気炉の天井に設けられた電極を中心とする同心円の円周上に均等に1電極当たり4〜16ヶ所設けられ、
前記電気炉には、直径900〜1800mmの排ガス排出孔が、該電気炉の天井に設けられた電極から離れた位置で、且つ、該電気炉の中心に対して同心円の円周上に均等に2〜4ヶ所設けられ、
前記空間の圧力は、大気圧を基準とした圧力として、−5〜−70Paの範囲に維持することを特徴とする電気炉の操業方法。
【請求項2】
前記電気炉内には、原料の焼成鉱石を投入するための投原管を介して、該焼成鉱石をチョークフィード式で投入し、
前記空間において、前記熔体層の上部に形成された前記鉱石層が、前記投原管の下端に接した状態とすることを特徴とする請求項1に記載の電気炉の操業方法。
【請求項3】
フェロニッケル製錬において、焼成鉱石を投入して還元溶解するための直径10〜25mの電気炉であって、
投入された前記焼成鉱石を還元熔融して得られた熔体層の上部に、未熔解の焼成鉱石からなる鉱石層を含む高さ2.2〜2.9mの空間が形成され、
直径50〜300mmの空気取り入れ孔が、当該電気炉の天井に設けられた電極と同心円の円周上に均等に1電極当たり4〜16ヶ所設けられ、
直径900〜1800mmの排ガス排出孔が、当該電気炉の天井に設けられた電極から離れた位置で、且つ、当該電気炉の中心に対して同心円の円周上に均等に2〜4ヶ所設けられ、
前記空間の圧力は、大気圧を基準とした圧力として、−5〜−70Paの範囲に維持されることを特徴とする電気炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉の操業方法及びその電気炉に関し、より詳しくは、フェロニッケル製錬において使用する電気炉で発生し、その電気炉に続けて設けられる排ガス処理設備に流れ込むCOガスの量を大幅に低減させることができる電気炉の操業方法及びその電気炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェロニッケル製錬において使用する電気炉では、ニッケル酸化鉱を焼成して得られた、還元用石炭を含む焼鉱が還元熔融され、熔融して得られた熔体は、フェロニッケル(メタル)とスラグとに比重分離される。また、電気炉から発生した電気炉排ガスは、排ガス煙道を経て排ガス処理設備に送られる。
【0003】
具体的に、フェロニッケル製錬の電気炉では、石炭等の炭材を使用して原料の鉱石(焼鉱)が還元熔融される。このとき、この電気炉内においては、還元剤としての石炭中の炭素が鉱石を還元する直接還元と、石炭中の炭素が空気中あるいは鉱石中の酸素と結合して生成するCOガスにより鉱石を還元する間接還元とが進行している。そのため、電気炉内では、多量のCOガスが常に存在している状態となっている。
【0004】
この電気炉から排出される排ガス(以下、「電気炉排ガス」ともいう)については、その電気炉排ガス中のCO濃度が例えばコークス炉排ガスのように6〜8%と高ければ、電気炉排ガスを燃焼装置等で燃料として使うことも可能となる。
【0005】
また、例えば特許文献1には、バッチ式でスクラップを溶解する製鋼用電気炉において、その電気炉内にノズルを使用して酸素を含むガスを吹き込むことにより、電気炉内のCOガスを燃焼させてエネルギー効率を高くする技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、一般的に、フェロニッケル製錬において使用する電気炉排ガス中のCO濃度は比較的低く、他の燃焼装置に再利用することは困難である。また、特許文献1に開示された製鋼用電気炉の技術では、フェロニッケル製錬で使用する電気炉には好ましく適用することができない。したがって、このフェロニッケル製錬の電気炉から排出される電気炉排ガスについては、必要に応じて、例えば煙突先端や煙道の途中で燃焼させるなどして浄化・冷却して無害化した後に、大気放出するのが一般的となる。
【0007】
ところが一方で、その電気炉から排出される電気炉排ガスは、例えば電気炉内の異常反応等により、COガス濃度がCOガスの爆発しない限界濃度である約12.5%を超える可能性がある。そのため、排ガス処理設備における火種の存在、特に排ガス処理設備として電気集塵機で除塵処理している場合にはスパークの発生により、爆発事故が発生する可能性が高くなるおそれがある。
【0008】
また、電気炉排ガス中のCOガス濃度が爆発限界を超えない場合であっても、排ガス処理設備からのガス漏洩等により、作業者等がCOガスに曝露されるおそれにも配慮することが必要であり、電気炉排ガスの取り扱いは安全衛生上の注意事項が非常に多い。
【0009】
このようなことから、フェロニッケル製錬の電気炉での操業(還元熔融処理操業)においては、COガス濃度を極力低い状態とした排ガスが排出されるようにすることが好ましい。具体的には、電気炉出口の排ガス中のCO濃度を、ばらつきを考慮しても12.5%以上には増加させることがないようにすることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−317046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、フェロニッケル製錬にて使用する電気炉の操業において、電気炉から排出される排ガス中のCO濃度を効果的に低減させることができる電気炉の操業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電気炉内の熔体層の上部に一定容量の空間を形成させるようにすることで、電気炉内で発生したCOガスの燃焼を促進させることを可能にし、排ガス中に含まれるCOガス濃度を効果的に低減させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明に係る電気炉の操業方法は、フェロニッケル製錬において、直径10〜25mの電気炉内に焼成鉱石を投入して該焼成鉱石を還元熔解する電気炉の操業方法であって、前記焼成鉱石を還元熔融して得られた熔体層の上部に、未熔解の焼成鉱石からなる鉱石層を含む高さ2.2〜2.9mの空間を形成させ、前記電気炉においては、直径50〜300mmの空気取り入れ孔が、該電気炉の天井に設けられた電極を中心とする同心円の円周上に均等に1電極当たり4〜16ヶ所設けられ、前記電気炉においては、直径900〜1800mmの排ガス排出孔が、該電気炉の天井に設けられた電極から離れた位置で、且つ、該電気炉の中心に対して同心円の円周上に均等に2〜4ヶ所設けられ、前記空間の圧力としては、大気圧を基準とした圧力として、−5〜−70Paの範囲に維持することを特徴とする
【0016】
また、前記電気炉内には、原料の焼成鉱石を投入するための投原管を介して、該焼成鉱石をチョークフィード式で投入するようにし、前記空間において、前記熔体層の上部に形成された前記鉱石層が、前記投原管の下端に接した状態とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る電気炉は、フェロニッケル製錬において、焼成鉱石を投入して還元溶解するための直径10〜25mの電気炉であって、投入された前記焼成鉱石を還元熔融して得られた熔体層の上部に、未熔解の焼成鉱石からなる鉱石層を含む高さ2.2〜2.9mの空間が形成され、前記電気炉においては、直径50〜300mmの空気取り入れ孔が、該電気炉の天井に設けられた電極を中心とする同心円の円周上に均等に1電極当たり4〜16ヶ所設けられ、前記電気炉においては、直径900〜1800mmの排ガス排出孔が、該電気炉の天井に設けられた電極から離れた位置で、且つ、該電気炉の中心に対して同心円の円周上に均等に2〜4ヶ所設けられ、前記空間の圧力としては、大気圧を基準とした圧力として、−5〜−70Paの範囲に維持されることを特徴とする
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気炉内の熔体層の上部に空間を形成させるようにしているので、形成させた空間にCOガスによる被還元物である酸素(空気)、または未熔解の鉱石層を有効に存在させることができ、電気炉内で発生したCOガスの燃焼を促進させることができる。これにより、電気炉内で発生した排ガス中に含まれるCOガス濃度を効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】還元熔融工程における焼鉱の還元熔融時の電気炉の状態を説明する断面模式図である。
図2】熔体層の上部に所望の空間を形成させたときのCOガス低減のメカニズムを説明するための模式図である。
図3】電気炉の天井部を上方からみたときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電気炉の操業方法の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0022】
本実施の形態に係る電気炉の操業方法は、フェロニッケル製錬において、ニッケル酸化鉱石を焼成して得られた焼成鉱石(焼鉱)を投入して還元熔融するための電気炉の操業方法であり、その電気炉から排出される排ガス(電気炉排ガス)中のCOガス量を大幅に低減させることを可能にする操業方法である。
【0023】
[フェロニッケル製錬について]
先ず、フェロニッケル製錬プロセスについて概略説明する。フェロニッケルの製錬方法は、ニッケル酸化鉱石(以下、単に「鉱石」ともいう)を原料として、鉱石を乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた鉱石(乾燥鉱石)の焼成と部分還元を行う焼成及び部分還元工程と、得られた焼成鉱石(焼鉱)を電気炉内で還元熔融する還元熔融工程とを有する。
【0024】
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。このガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱換算でNi品位が2.1〜2.5重量%、Fe品位が11〜23重量%、MgO品位が20〜28重量%、SiO品位が29〜39重量%、CaO品位が0.5重量%未満、灼熱減量が10〜15重量%である。
【0025】
乾燥工程では、所定の調合品位となるように原料鉱石を配合した後に、ロータリードライヤー等を使用して、その原料鉱石中の水分の一部を除去する。具体的には、例えば鉱石中の水分を15〜25%程度に調整する。なお、水分調整された鉱石を乾燥鉱石という。
【0026】
焼成及び部分還元工程では、乾燥工程を経て得られた乾燥鉱石をロータリーキルン内に装入し、石炭等の還元剤と必要に応じて熔剤を添加して、乾燥鉱石中に含まれる残りの水分を完全に除去するとともに、乾燥鉱石を部分的に還元して焼成鉱石(焼鉱)を得る。
【0027】
還元熔解工程では、焼成及び部分還元工程にて産出された焼鉱を電気炉(還元炉)内に搬送投入し、石炭等の炭材(還元剤)を使用して、その焼鉱を電気炉内で還元熔融(熔解)する。詳しくは後述するが、この電気炉は、例えば三相交流電極式電気炉であり、炉上ビンに接続された焼鉱シュートを介して焼鉱が投入される。電気炉内では、投入された焼鉱が電極に通電された電流によって熔融され、メタル(粗フェロニッケル)とスラグとが形成される。形成されたメタルとスラグは、比重差によって分離し、電気炉の底部にメタル層(下層)が、その上部にスラグ層(上層)が形成される。
【0028】
[還元熔融工程にて使用する電気炉について]
ここで、図1に、還元熔融工程における焼鉱の還元熔融時の電気炉の状態を説明するための断面模式図を示す。なお、この図1においては、電気炉1として、三相交流電極式電気炉を使用した場合を一例として挙げる。
【0029】
電気炉1は、直径が約10〜25m程度の大きさの円筒形状であって、またその高さ(炉底から炉頂までの高さ)が約4〜10m程度の大きさの炉であり、その内部が耐火物により構成されている。この電気炉1においては、焼鉱の還元熔融に伴って、その内部に、焼鉱が熔融されて得られた熔体の層(熔体層)11が形成される。この熔体層11は、上述したように、比重によって分離した、底部のメタル層11Aと、そのメタル層11Aの上部に存在するスラグ層11Bとからなる。
【0030】
電気炉1には、その天井部に還元熔解させるための焼鉱を投入するための投原管21が複数設けられており、投原管21を介して連続的又は断続的に焼鉱が投入される。したがって、操業時においては、上述した熔体層11表面(スラグ層11Bの表面)を、投原管21を介して投入された焼鉱、すなわち未熔解の焼鉱からなる層(鉱石層)12が覆った状態が形成されることになる。
【0031】
また、電気炉1には、3本の電極22a〜22c(例えば炭素電極)が電気炉1の天井部から垂下して設けられている。電気炉1では、それら3本の電極22a〜22cをスラグ層11Bまで浸漬させて3相交流電流を印加することで、電極22a〜22cからメタル層11A、スラグ層11Bに直接通電させて抵抗発熱(ジュール熱)を生じさせる。そして、その熔体からのジュール熱により、スラグ層11Bの上部に形成された鉱石層12を構成する焼鉱が熔解され、メタルとスラグとが生成する。なお、焼鉱の熔解に際しては、電極22a〜22cをスラグ層11Bまで浸漬させない状態としてアークを発生させ、そのアーク熱で直接的に焼鉱を熔解させる方法を用いてもよい。
【0032】
また、電気炉1には、その下部にメタルホール23とスラグホール24とが設けられている。メタルホール23は、電気炉1の内部に形成されたメタル層11Aが存在する位置に対応して設けられ、そのメタルホール23を介してメタルが抜き出される。また、スラグホール24は、電気炉1の内部に形成されたスラグ層11Bが存在する位置に対応して設けられ、そのスラグホール24を介してスラグが抜き出される。
【0033】
さらに、図1に示すように、電気炉1には、その天井部に、燃焼用空気取り入れ孔25が1つ以上設けられている。この燃焼用空気取り入れ孔25は、電気炉1内で発生したCOガスを燃焼させるための空気を外部から取り入れるための空気孔である。詳しくは後述するが、この燃焼用空気取り入れ孔25は、例えば、電気炉1の天井から垂下された電極22a〜22cを中心とする同心円の円周上に均等に複数設けられている。
【0034】
また、図1に示すように、電気炉1には、その天井部に、排ガス排出孔26が1つ以上設けられている。この排ガス排出孔26は、電気炉1から排出される排ガス(電気炉排ガス)を排出するための排出口である。また、詳しくは後述するが、この排ガス排出孔26は、例えば、電気炉1の中心に対して同心円の円周上に複数設けられている。さらに、排ガス排出孔26には、その所定の箇所に、排出される電気炉排ガス中のCO濃度を測定することができるCO濃度計が設けられており、CO濃度計による濃度測定値に基づいて、煙道内での無害化処理の条件を決定し、また操業の安全性を確保するようにしている。
【0035】
なお、電気炉1内で発生し、排ガス排出孔26から排出された電気炉排ガスは、排出用配管に設けられた排ガスファンによって吸引され、例えば、排ガス中に含まれる粗粒ダストを除去するための煙塵室(バルン煙道)や細粒ダストを除去するための電気集塵機等を経て、煙突から大気に排出される。
【0036】
[電気炉内で発生したCOガスの低減]
さて、フェロニッケル製錬の還元熔解工程においては、上述したように、電気炉1内において焼鉱が還元熔融されるに伴ってCOガスが発生する。このCOガスは、電気炉1の天井部に設けられた排ガス排出孔26を介して排ガスとして排出されるが、操業安全性の向上の観点から、あるいは無害化処理の効率性の観点から、その排ガスに含まれるようになるCOガスを極力低減させることが望ましい。
【0037】
そこで、本実施の形態に係る電気炉の操業方法では、電気炉1内において、投入した焼鉱を還元熔融して得られた熔体層11の上部に、未熔解の焼成鉱石からなる鉱石層12を含む所定の高さの空間30(図1中の点線囲み部)を形成させるように操業する。
【0038】
具体的には、熔体層11の上部に、鉱石層12を含む高さ2.2〜2.9mの空間30を形成させることが重要となる。なお、この空間30の「高さ」とは、電気炉1の炉底から炉頂の方向(電気炉1の鉛直方向)における熔体層11の上面から炉頂までの形成された空間の長さをいい、熔体層11の上面から炉頂までがこのような高さとなるように操業することで、電気炉1内に一定容量の空間30が形成される。
【0039】
この電気炉の操業方法では、このようにして熔体層11の上部に一定容量の空間30を形成させることによって、その空間30内に、発生したCOガスを燃焼するために必要な酸素(空気)や未熔解の焼鉱を有効に存在させることができる。
【0040】
図2は、熔体層11の上部に所望とする空間30を形成させたときのCOガス低減のメカニズムを説明するための模式図である。図2に示すように、熔体層11の上部(スラグ層11B上部)に未熔解の鉱石層12を含む所定の空間30を形成させると、電気炉1の天井部に設けた燃焼用空気取り入れ孔25から取り入れた空気が滞留できる“場所(空間)”が生まれる。また、この形成された空間30は、未熔解の鉱石層12を含む空間であり、未熔解であって反応性の高い焼鉱が十分に存在し得る“場所(空間)”となる。
【0041】
すると、この空間30に存在するようになった空気や未熔解の焼鉱は、電気炉1内で発生したCOガスと積極的に反応するようになる。すなわち、燃焼用空気取り入れ孔25から取り入れられた空気は、発生したCOガスと燃焼反応を起こし、また、熔体層11上部に積み上げられた未熔解の焼鉱は、発生したCOガスによって間接的に還元(間接還元)されるようになる。これにより、電気炉1内で発生したCOガスは、これら空気や未熔解の焼鉱によって効果的に燃焼され消費されていくことになる。
【0042】
このように、熔体層11の上部に未熔解の鉱石層12を含む所定の高さの空間30を形成させることによって、その空間30内に、十分な酸素(空気)や未熔解の焼鉱を存在させることが可能となり、電気炉1内で発生したCOガスの燃焼を促進させることができる。そして、このようにしてCOガスが燃焼して低減されると、排ガス中に含まれることになるCOガスの濃度も必然的に減少し、高い安全性で以って操業を行うことが可能になるとともに、大気に排出する際の無害化処理もより効率的に行うことが可能となる。
【0043】
(空間の高さについて)
熔体層11の上部に形成させる空間30の高さについては、COガスが効果的に燃焼されるのに十分な容量を確保できる高さとすることが必要となる。
【0044】
COガスが効果的に燃焼されるため条件は、電気炉1自体の容量のみならず、原料鉱石の組成、電気炉の操業負荷等によっても左右される。そのため、形成させる空間30としては、使用する電気炉1ごとに最も適切な高さ値が存在することになるが、フェロニッケル製錬の還元熔解工程にて使用する直径10〜25mの電気炉においては、上述したように、その空間30の高さが2.2〜2.9mとなるようにする。
【0045】
この空間30の高さが2.2m未満であると、電気炉1内で発生したCOガスを燃焼させるための酸素や未熔解の鉱石が存在するための空間が十分に得られず、一部のCOガスが燃焼されず電気炉排ガスに混じり、例えばその排ガス中のCO濃度が基準濃度値としての500ppmを超えてしまう。
【0046】
一方で、この空間30の高さが2.9mを超える場合、電気炉1内で発生したCOガスを燃焼するための酸素や未熔解の鉱石を存在させるための空間は十分に確保できるため、電気炉1内のCOガス濃度は効果的に減少し、電気炉出口からの排ガス中のCO濃度も基準濃度値の500ppmを下回わらせることができる。しかしながら、高さが2.9mを超え、またはそれ以上に高くなるようにすると、炉壁の表面積が増加するため、電気炉1内の放散熱が増加し、炉内温度を適切な範囲の維持することができなくなり、効率的な熔融操業が困難となる。さらに、空間30の高さが高くなるに従い、電気炉1を設置する上での設備コストも増加する。したがって、CO濃度を有効に低減させながら効率的な操業を可能にするという観点からすると、形成させる空間30の高さの上限値としては、2.9m以下とすることが好ましい。
【0047】
(炉内圧力について)
本実施の形態に係る電気炉の操業方法においては、その電気炉1内の圧力、すなわち、上述したように熔体層11の上部に形成させる空間30内の圧力を、−5〜−70Paの範囲に維持することが好ましい。
【0048】
ここで、COガスを電気炉1内で効果的に燃焼させるためには、その燃焼に必要な酸素の供給が不可欠となる。通常、フェロニッケル製錬に用いる電気炉の場合、電気炉内にて発生したCOガスが電気炉外部に漏れないような構造を有しており、天井に設けられた燃焼用空気取り入れ孔25によって燃焼用空気が取り入れられる。このとき、電気炉1内の圧力をマイナス圧とすることで、燃焼用空気取り入れ孔25を介して燃焼用空気を効率的に取り込むことができ、COガスの燃焼に必要な酸素を供給させることが可能となる。
【0049】
電気炉1内の圧力の調整は、例えば、電気炉排ガスファンのインバーター調整、電気炉排ガス煙道の途中にあるダンパーの開度調整等により行う。本実施の形態においては、これらのような圧力調整方法により、電気炉1内の圧力を、好ましくは−5〜−70Paの範囲に、より好ましくは−10〜−60Paの範囲に維持することによって、燃焼用空気取り入れ孔25から円滑に燃焼用空気を取り込むことができ、COガスをより効果的に燃焼させることができる。そして、これにより、電気炉1から排出される排ガス中のCO濃度を、例えば爆発やCOガス中毒といった安全衛生上の問題が発生しない程度まで、具体的には500ppm以下程度にまで、より効果的に低減させることができる。
【0050】
空間30の圧力(炉内圧力)が−5Paを超えると、COガスを効率的に燃焼させるため燃焼用空気の必要量を燃焼用空気取り入れ孔25から取り込む(吸い込む)ことができない可能性がある。また、圧力が高すぎると、燃焼用空気取り入れ孔25等から電気炉1内のCOガス等が吹き出してしまう可能性が生じる。
【0051】
一方で、空間30の圧力(炉内圧力)が−70Paを下回ると、電気炉1内に取り込まれる空気量が増加するため、電気炉1内のCOガスの燃焼が十分に進み、排ガス中のCO濃度は効果的に低減することになる。しかしながら、この場合、多量の空気が電気炉1内に入るようになるため、排ガスによる持ち去り顕熱が増加してしまう。このようにして顕熱が増加すると、その顕熱を補償するための電力が増加し、エネルギー効率が悪化する。さらに、排ガスの吸引力が大きくなるため、電気炉1内に存在する微粒の焼鉱が排ガスに飛散してしまい、電気炉での還元熔融によるフェロニッケル実収率が低下する。
【0052】
(鉱石層について)
熔体層11の上部に形成させる空間30は、投原管21を介して投入される未熔解の焼鉱からなる鉱石層12を含むものである。そして、上述したように、鉱石層12を含む空間30の高さを2.2〜2.9mとして十分な空間を形成させるようにすることで、電気炉1内のCOガスを、鉱石層12を構成する焼鉱と効率的に反応させるようにしている。
【0053】
このことから、熔体層11の上部には反応に必要な未反応(未熔解)の焼鉱を有効に存在させることが必要であって、少なくとも、例えば水面に油膜が張ったような薄い焼鉱の層(鉱石層)が存在すればよく、電気炉1から排出される排ガス中のCO濃度は空間の高さで決まることになる。
【0054】
しかしながら、電気炉1内のCOガス濃度をより効果的に低減させるという観点からすると、その焼鉱にて形成される鉱石層12は、厚い層であることがより好ましい。すなわち、空間30内においては、存在する焼鉱の量が多い方が好ましい。
【0055】
ここで、電気炉1内に投入される焼鉱の供給方法としては、電気炉1内の焼鉱の熔解状態を観察しながらバッチで供給するバッチフィード方法(式)と、電気炉1内で生成した熔体(熔体層11)の上部に投原管を介して供給された焼鉱が投原管の先端に接するまで投入して、還元熔融された量に相当する量を新たに連続的に供給するチョークフィード方法(式)がある。
【0056】
電気炉1内では、投入された焼鉱が、石炭等の炭材による直接還元と、電気炉1内で発生したCOガスによる間接還元とにより還元されて熔解する。このとき、バッチフィード方法で焼鉱を供給した場合、電気炉1内の熔体層11の上部に存在することとなる鉱石層12の厚さは薄くなり、発生するCOガスと被還元物である焼鉱との接触機会は少なくなる。一方で、チョークフィード方法で焼鉱を供給すると、熔解した量に相当する量の新たな焼鉱が連続的に供給されるため、熔体層11の上部に形成される鉱石層12は厚くなり、発生するCOガスと被還元物である焼鉱との接触機会は多くなる。
【0057】
すなわち、電気炉1内のCOガスに着目すると、COガスが発生してから排ガス排出孔26を入口とした排ガス煙道に達するまでに、そのCOガスが焼鉱に接触する機会(間接還元反応の機会)はチョークフィード方法によって焼鉱が供給された場合の方が多くなる(図2も参照)。そのため、発生したCOガスが焼鉱との還元反応によって燃焼する量も、チョークフィード方法によって焼鉱を供給した場合の方が多くなる。
【0058】
したがって、本実施の形態に係る電気炉の操業方法においては、チョークフィード方法によって電気炉1内に焼鉱を連続的に供給するようにすることが好ましい。これにより、電気炉1内の熔体層11の上部に極力厚い鉱石層12を存在させることができ、その鉱石層12が電気炉1内に発生したCOガスの燃焼を促進させ、排出される電気炉排ガス中に含まれることになるCOガスをより効果的に低減させることができる。
【0059】
(燃焼用空気取り入れ孔について)
上述したように、電気炉1内で発生したCOガスは、焼鉱との還元反応により還元消費されるとともに、電気炉1内に取り入れた空気によって燃焼される。したがって、外部からの燃焼用空気は、COガスが発生する電極22a〜22cに近い位置、すなわちCO濃度が高い位置に取り入れられるようにすることが好ましい。
【0060】
このことから、COガスを燃焼させるための空気を外部から取り入れるための空気孔である燃焼用空気取り入れ孔25は、天井部から垂下された電極22a〜22cの周囲に設けるようにすることが好ましい。
【0061】
ここで、「電極の周囲」とは、電極が備え付けられた天井部の梁等の構造によって使用する電気炉ごとに異なるが、その電極に最も近い位置であって、燃焼用空気取り入れ孔25を設置することが可能な位置をいう。具体的には、図3に示す電気炉1の天井部を上方からみたときの模式図にあるように、電気炉1の天井部から垂下させて設けた3本の電極22a〜22cのそれぞれを中心とする同心円の円周上であって、その各電極22a〜22cに近接し、取り入れ孔を設置可能な円周上に均等に設けることが好ましい。
【0062】
燃焼用空気取り入れ孔25の大きさとしては、特に限定されないが、直径50〜300mm程度とすることが好ましい。また、燃焼用空気取り入れ孔25の数(設置数)についても、特に限定されないが、1本の電極につき、その円周上に均等に4〜16ヵ所(4〜16ヵ所/電極)設けることが好ましい。
【0063】
燃焼用空気取り入れ孔25の大きさが直径50mmより小さいと、またはその設置数が4ヶ所より少ないと、COガスの燃焼に必要な空気を十分に取り込むことができない可能性がある。一方で、燃焼用空気取り入れ孔25の大きさが直径300mmを超えると、またはその設置数が16ヶ所より多いと、電気炉1内に流れ込む空気量が多くなり、排ガスとなって持ち去られる顕熱が増大し、電気炉1内の熱が不足して操業不良をもたらす可能性があるため好ましくない。
【0064】
(排ガス排出孔について)
さて、例えば上述のように電極の周囲に設置した燃焼用空気取り入れ孔25から取り入れた燃焼用空気は、電極22a〜22cで発生するCOガスと反応した後、電気炉1内を外側(電気炉1の内壁側)に向かって流れていきながら、残っている未反応のCOガスと反応する。したがって、未反応のCOガスと効果的に反応させるために、この燃焼用空気の炉内滞留時間は、長いほど好ましい。
【0065】
燃焼用空気は、最終的に電気炉1に設けた排出孔(排ガス排出孔)26を介して排ガスとして排出されることになる。したがって、その燃焼用空気の炉内滞留時間を長くする観点からすると、燃料用空気を含む排ガスを排出させる排ガス排出孔26は、図3に示す電気炉1の天井部を上方からみたときの模式図にあるように、上述した燃焼用空気取り入れ孔25が設けられている電極の周囲から離れていることが好ましい。また、その排ガス排出孔26としては、排ガスの電気炉1内での流れを円滑にするために、電気炉1の中心に対して同心円の円周上の均等な位置に設けるようにすることが好ましい。
【0066】
排ガス排出孔26の大きさとしては、特に限定されないが、直径900〜1800mm程度とすることが好ましい。また、排ガス排出孔26の設置数についても、特に限定されないが、その電気炉1の中心に対して同心円の円周上に均等に2〜4ヵ所とし、電気炉1の内壁に接する位置、または近接する位置に設けることが好ましい。
【0067】
排ガス排出孔26の大きさが直径900mmより小さいと、またはその設置数が2ヶ所より少ないと、排ガスの排出が円滑に行われないため、燃焼に必要な十分量の空気を電気炉1内に取り入れることができない可能性がある。一方で、排ガス排出孔26の大きさが直径1800mmより大きいと、またはその設置数が4ヶ所より多いと、電気炉1内に入ってくる空気量が多くなり、排ガスとなって持ち去られる顕熱が増大し、電気炉1内の熱が不足して操業不良をもたらす可能性があるため好ましくない。
【0068】
また、例えば、排ガス排出孔26を電気炉1の内径に接する位置、または近接する位置ではなく、電気炉1の中心に近い位置に設けると、燃焼用空気取り入れ孔25から取り入れた燃焼用空気の炉内滞留時間が短くなり、未反応のCOガスと被還元物の空気や未熔解の焼鉱とが反応する時間が不足するため好ましくない。
【0069】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る電気炉の操業方法では、電気炉1内の熔体層11の上部に未熔解の鉱石層12を含む高さ2.2〜2.9mの空間30を形成させるように操業する。このことによって、その空間30内に、電気炉1内で発生したCOガスと反応するのに十分な酸素(空気)や未熔解の焼鉱を存在させることが可能となり、COガスの燃焼を促進させることができる。これにより、電気炉1内のCOガスを効果的に低減させることができ、排ガス中のCOガス濃度を減少させ、高い安全性で以って操業を行うことが可能になる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明についての実施例を比較例と対比しながら説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0071】
≪実施例1≫
フェロニッケル製錬において、焼成及び部分還元工程を経て得られた焼成鉱石(焼鉱)を電気炉内で還元熔融させる還元熔融処理を行った。
【0072】
電気炉としては、炉底から炉頂までの高さが5.0m、内径が16.3mのサイズのものを使用した。また、電気炉には、その天井に設けられた3本の電極のそれぞれを中心とした同心円の円周上に、その電極表面から300mm離れた位置に直径50mmの燃焼用空気取り入れ孔を4ヶ所/電極設けた(図3参照)。また、排ガス排出孔は、直径900mmの大きさとして、電気炉の内径に接するように2ヶ所設けた(図3参照)。
【0073】
実施例1では、電気炉の操業条件として、投入した焼鉱を還元熔融して得られた熔体の深さ(熔体層)が2.8m、その熔体の液面(熔体層の上面)から電気炉の炉頂までの高さが2.2mとなるようにした。また、その熔体の上部(熔体層の上部)には、厚さ1.7mの鉱石層が形成されるように、焼鉱を投入する投原管を介してチョークフィード式で連続的に新たな焼鉱を投入していった。すなわち、熔体層の上部には、鉱石層を含めて2.2の空間が形成されるようにした。なお、このとき、投原管の下端は鉱石層に接している状態となる。また、炉内圧力は−10Paに維持した。
【0074】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は400ppmとなった。これは、電気炉内のCOガスを効果的に低減させることができたことにより、排ガス中のCO濃度を低く抑えることができたものと考えられる。
【0075】
なお、排ガス中のCO濃度は、排ガス排出孔に設けたCO濃度計(赤外線ガス分析計、横河電機株式会社製)により測定した。以下の実施例、比較例でも同様である。
【0076】
≪実施例2≫
実施例2では、電気炉として、炉底から炉頂までの高さが5.7mのサイズのものであって、燃焼用空気取り入れ孔を直径300mmの大きさで16ヶ所/電極設け、さらに排ガス排出孔を直径1800mmの大きさで4ヶ所設けたものを使用した。なお、その他の電気炉の設計条件は実施例1と同様である。
【0077】
また、電気炉の操業条件として、熔体の液面(熔体層の上面)から電気炉の炉頂までの高さが2.9m、すなわち、熔体層の上部に鉱石層を含めて2.9の空間が形成されるようにし、また炉内圧力を−60Paに維持したこと以外は、実施例1と同様にして操業した。
【0078】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は350ppmとなった。実施例1と同様に、電気炉内のCOガスを効果的に低減させることができたことにより、排ガス中のCO濃度を低く抑えることができたものと考えられる。
【0079】
≪実施例3≫
実施例3では、電気炉の操業条件として、焼鉱を投入する投原管を介してバッチフィード式で新たな焼鉱を投入していき、その鉱石層の厚さが0.1mとなるようにした。なお、このとき、投原管の下端は鉱石層に接していない状態となる。また、炉内圧力は−5Paに維持されるようにした。これらのこと以外は、実施例1と同様にして操業した。
【0080】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は480ppmとなり、実施例1及び実施例2と比べて若干濃度は高くなったものの、排ガス中のCO濃度を効果的に低く抑えることができた。
【0081】
≪実施例4≫
実施例4では、電気炉として、炉底から炉頂までの高さが5.7mのサイズのものを使用した。
【0082】
また、電気炉の操業条件として、熔体の液面(熔体層の上面)から電気炉の炉頂までの高さが2.9m、すなわち、熔体層の上部に鉱石層を含めて2.9の空間が形成されるようにした。また、焼鉱を投入する投原管を介してバッチフィード式で新たな焼鉱を投入していき、その鉱石層の厚さが0.1mとなるようにした。なお、このとき、投原管の下端は鉱石層に接していない状態となる。さらに、炉内圧力は−70Paに維持されるようにした。これらのこと以外は、実施例1と同様にして操業した。
【0083】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は420ppmとなり、実施例1及び実施例2と比べて若干濃度は高くなったものの、排ガス中のCO濃度を効果的に低く抑えることができた。
【0084】
≪比較例1≫
比較例1では、電気炉として、炉底から炉頂までの高さが4.4mのサイズのものを使用した。
【0085】
また、電気炉の操業条件として、熔体の液面(熔体層の上面)から電気炉の炉頂までの高さが1.6m、すなわち、熔体層の上部に鉱石層を含めて1.6の空間が形成されるようにした。また、焼鉱を投入する投原管を介してチョークフィード式で連続的に新たな焼鉱を投入していき、その鉱石層の厚さが1.6mとなるようにした。なお、このとき、投原管の下端は鉱石層に接している状態となる。これらのこと以外は、実施例1と同様にして操業した。
【0086】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は680ppmとなり、基準とした500ppmを上回った。このことは、熔体層の上部に形成させた空間が十分な容量ではなかったために、COガスを燃焼させるのに十分な酸素や未熔解の鉱石層を存在させることができず、COガスを効果的に低減させることができなかったためと考えられる。
【0087】
≪比較例2≫
比較例2では、電気炉として、炉底から炉頂までの高さが4.4mのサイズのものであって、燃焼用空気取り入れ孔を直径40mmの大きさで3ヶ所/電極設け、さらに排ガス排出孔を直径800mmの大きさで1カ所設けたものを使用した。なお、その他の電気炉の設計条件は実施例1と同様である。
【0088】
また、電気炉の操業条件として、熔体の液面(熔体層の上面)から電気炉の炉頂までの高さが1.6m、すなわち、熔体層の上部に鉱石層を含めて1.6の空間が形成されるようにした。また、その熔体の上部(熔体層の上部)には、チョークフィード式で厚さ1.6mの鉱石層が形成されるよう新たな焼鉱を投入していった。なお、このとき、投原管の下端は鉱石層に接している状態となる。また、炉内圧力は−10Paに維持されるようにした。これらのこと以外は、実施例1と同様にして操業した。
【0089】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は700ppmとなり、基準とした500ppmを大きく上回った。このことは、熔体層の上部に形成させた空間が十分な容量ではなかったとともに、COガスを燃焼させるのに十分な量の酸素(空気)を取り入れることができず、COガスを効果的に低減させることができなかったためと考えられる。
【0090】
≪比較例3≫
比較例3では、電気炉として、炉底から炉頂までの高さが4.4mのサイズのものであって、燃焼用空気取り入れ孔を直径350mmの大きさで18ヶ所/電極設け、さらに排ガス排出孔を直径1900mmの大きさで5カ所設けたものを使用した。なお、その他の電気炉の設計条件は実施例1と同様である。
【0091】
また、電気炉の操業条件として、熔体の液面(熔体層の上面)から電気炉の炉頂までの高さが1.6m、すなわち、熔体層の上部に鉱石層を含めて1.6の空間が形成されるようにした。また、その熔体の上部(熔体層の上部)には、バッチフィード式で厚さ0.1mの鉱石層が形成されるよう新たな焼鉱を投入していった。なお、このとき、投原管の下端は鉱石層に接していない状態となる。また、炉内圧力は−60Paに維持されるようにした。これらのこと以外は、実施例1と同様にして操業した。
【0092】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は750ppmとなり、基準とした500ppmを大きく上回った。このことは、熔体層の上部に形成させた空間が十分な容量ではなかったとともに、COガスによって間接的に還元熔解される未熔解の鉱石の存在量も少なく、COガスを効果的に低減させることができなかったためと考えられる。
【0093】
≪比較例4≫
比較例4では、電気炉として、炉底から炉頂までの高さが4.4mのサイズのものであって、燃焼用空気取り入れ孔を直径40mmの大きさで3ヶ所/電極設け、さらに排ガス排出孔を直径800mmの大きさで1カ所設けたものを使用した。なお、その他の電気炉の設計条件は実施例1と同様である。
【0094】
また、電気炉の操業条件として、熔体の液面(熔体層の上面)から電気炉の炉頂までの高さが1.6m、すなわち、熔体層の上部に鉱石層を含めて1.6の空間が形成されるようにした。また、その熔体の上部(熔体層の上部)には、チョークフィード式で厚さ1.6mの鉱石層が形成されるよう新たな焼鉱を投入していった。なお、このとき、投原管の下端は鉱石層に接している状態となる。また、炉内圧力は−2Paに維持されるようにした。これらのこと以外は、実施例1と同様にして操業した。
【0095】
この電気炉の操業条件で操業した結果、電気炉出口の排ガス排出孔からの排ガス中に含まれるCOガスの濃度は800ppmとなり、基準とした500ppmを大きく上回った。このことは、熔体層の上部に形成させた空間が十分な容量ではなかったとともに、炉内圧力が高すぎたために、COガスを燃焼させるのに十分な量の酸素(空気)を取り入れることができず、COガスを効果的に低減させることができなかったためと考えられる。
【符号の説明】
【0096】
1 電気炉、11 熔体層、11A メタル層、11B スラグ層、12 鉱石層、21 投原管、22(22a,22b,22c) 電極、23 メタルホール、24 スラグホール、25 燃焼用空気取り入れ孔、26 排ガス排出孔、30 空間
図1
図2
図3