特許第5984155号(P5984155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5984155情報処理装置、プログラム、及び、情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984155
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、及び、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20160823BHJP
   G06F 19/00 20110101ALI20160823BHJP
【FI】
   G08G1/00 C
   G06F19/00 110
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-196355(P2014-196355)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-71383(P2016-71383A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年1月12日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」(CREST)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】原 聡
(72)【発明者】
【氏名】ルディー・レイモンド・ハリー・プテラ
(72)【発明者】
【氏名】森村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】牟田 英正
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−115877(JP,A)
【文献】 特開平02−114383(JP,A)
【文献】 特開2005−182383(JP,A)
【文献】 特開2009−018623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
G06F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエージェントを用いるシミュレーションの途中において複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する集計部と、
複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の良否の予測に用いる特徴データを生成する生成部と、
前記特徴データに基づき、シミュレーション結果の良否を予測する予測部と、
複数のシミュレーション条件のそれぞれを用いて前記シミュレーションを実行する実行部と、
それぞれのシミュレーション条件を用いたシミュレーションの途中で生成された複数の特徴データと、複数の対応するシミュレーション結果に基づいて、前記予測部を学習させる学習処理部と、
前記シミュレーション結果が不良と予測されたことに応じて、前記シミュレーションを中断する中断部と、
を備え、
前記中断部は、前記複数のシミュレーション条件のシミュレーションを最後まで実行して得られた複数の評価のうち、予め定められた数の上位の評価に基づいて、前記シミュレーションを中断する基準を変更する、
情報処理装置。
【請求項2】
複数のエージェントを用いるシミュレーションの途中において複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する集計部と、
複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の良否の予測に用いる特徴データを生成する生成部と、
前記特徴データに基づき、シミュレーション結果の良否を予測する予測部と、
複数のシミュレーション条件のそれぞれを用いて前記シミュレーションを実行する実行部と、
それぞれのシミュレーション条件を用いたシミュレーションの途中で生成された複数の特徴データと、複数の対応するシミュレーション結果に基づいて、前記予測部を学習させる学習処理部と、
前記シミュレーション結果が不良と予測されたことに応じて、前記シミュレーションを中断する中断部と、
を備え、
前記中断部は、前記予測部により予測された評価に応じた確率でシナリオに係るシミュレーションを中断する、
情報処理装置。
【請求項3】
複数のエージェントを用いるシミュレーションの途中において複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する集計部と、
複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の良否の予測に用いる特徴データを生成する生成部と、
前記特徴データに基づき、シミュレーション結果の良否を予測する予測部と、
複数のシミュレーション条件のそれぞれを用いて前記シミュレーションを実行する実行部と、
それぞれのシミュレーション条件を用いたシミュレーションの途中で生成された複数の特徴データと、複数の対応するシミュレーション結果に基づいて、前記予測部を学習させる学習処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項4】
前記シミュレーション結果が不良と予測されたことに応じて、前記シミュレーションを中断する中断部を更に備える、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記中断部は、前記シミュレーションを中断したことに応じて、異なるシミュレーション条件を用いたシミュレーションを開始させる、
請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記予測部は、シミュレーションの最終時点における評価の予測値を算出し、算出した前記予測値に基づいてシミュレーション結果の良否を予測する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、シミュレーション途中の複数の時点における前記複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、前記特徴データを生成し、
前記予測部は、前記複数の時点の前記エージェントの数に基づく前記特徴データから、前記シミュレーションの最終時点における評価の予測値を算出する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記生成部は、シミュレーションの実行途中の前記評価に更に基づいて、前記特徴データを生成する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理装置として機能させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
前記コンピュータの集計部が、複数のエージェントを用いるシミュレーションの途中における複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する集計段階と、
前記コンピュータの生成部が、複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の良否の予測に用いる特徴データを生成する生成段階と、
前記コンピュータの予測部が、前記特徴データに基づき、シミュレーション結果の良否を予測する予測段階と、
前記コンピュータの実行部が、複数のシミュレーション条件のそれぞれを用いて前記シミュレーションを実行する実行段階と、
前記コンピュータの学習処理部が、それぞれのシミュレーション条件を用いたシミュレーションの途中で生成された複数の特徴データと、複数の対応するシミュレーション結果に基づいて、前記予測段階で用いる予測モデルを学習する学習処理段階と、
前記コンピュータの中断部が、前記シミュレーション結果が不良と予測されたことに応じて、前記シミュレーションを中断する中断段階と、
を備え、
前記中断段階において、前記複数のシミュレーション条件のシミュレーションを最後まで実行して得られた複数の評価のうち、予め定められた数の上位の評価に基づいて、前記シミュレーションを中断する基準を変更する、
情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
前記コンピュータの集計部が、複数のエージェントを用いるシミュレーションの途中における複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する集計段階と、
前記コンピュータの生成部が、複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の良否の予測に用いる特徴データを生成する生成段階と、
前記コンピュータの予測部が、前記特徴データに基づき、シミュレーション結果の良否を予測する予測段階と、
前記コンピュータの実行部が、複数のシミュレーション条件のそれぞれを用いて前記シミュレーションを実行する実行段階と、
前記コンピュータの学習処理部が、それぞれのシミュレーション条件を用いたシミュレーションの途中で生成された複数の特徴データと、複数の対応するシミュレーション結果に基づいて、前記予測段階で用いる予測モデルを学習する学習処理段階と、
前記コンピュータの中断部が、前記シミュレーション結果が不良と予測されたことに応じて、前記シミュレーションを中断する中断段階と、
を備え、
前記中断段階において、前記予測段階で予測された評価に応じた確率でシナリオに係るシミュレーションを中断する、
情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
前記コンピュータの集計部が、複数のエージェントを用いるシミュレーションの途中における複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する集計段階と、
前記コンピュータの生成部が、複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の良否の予測に用いる特徴データを生成する生成段階と、
前記コンピュータの予測部が、前記特徴データに基づき、シミュレーション結果の良否を予測する予測段階と、
前記コンピュータの実行部が、複数のシミュレーション条件のそれぞれを用いて前記シミュレーションを実行する実行段階と、
前記コンピュータの学習処理部が、それぞれのシミュレーション条件を用いたシミュレーションの途中で生成された複数の特徴データと、複数の対応するシミュレーション結果に基づいて、前記予測段階で用いる予測モデルを学習する学習処理段階と、
を備える情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、及び、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通状態をシミュレーションする方法(例えば、特許文献1〜5)、及び、多数のエージェントに基づいてエージェントベースの交通シミュレーションをする方法が知られている(例えば、非特許文献1)。ここで、シミュレーションが実行される多数のシナリオから、良好な評価(例えば、良好なKPI:Key Performance Indices)を与えるシナリオを特定しようとすると、全てのシナリオについて多数のエージェントの挙動等をシミュレートする必要があり、膨大な計算量が必要となる。
【0003】
シナリオに含まれる情報からシミュレーション結果を予測することで、結果が悪いシナリオを省略して計算量を削減する手法も知られている(例えば、非特許文献2)。しかし、この方法では、十分なシミュレーション結果の予測精度が得られなかった。
[特許文献1]特開2004−078482号公報
[特許文献2]特開2005−215909号公報
[特許文献3]特開2011−186746号公報
[特許文献4]特開2013−134155号公報
[特許文献5]特開平7−21487号公報
[非特許文献1]Gomes, G., A. May, and R. Horowitz. 2004. "Congested Freeway Microsimulation Model Using VISSIM".Transportation Research Record: Journal of the Transportation Research Board (1876): 71−81.
[非特許文献2]Beers, W. C. M. V., and J. P. C. Kleijnen. 2004. "Kriging Interpolation in Simulation: A Survey". In Proceedings of the 2004 Winter Simulation Conference, edited by R. G. Ingalls, M. D. Rossetti, J. S. Hara, Raymond, Morimura, and Muta Smith, and B. A. Peters, 113−121: Piscataway, New Jersey: Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE), Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エージェントベースのシミュレーションに用いる複数のシナリオのうち、良好な結果が得られるものをより少ない計算量で特定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、複数のエージェントを用いるシミュレーションの途中において複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する集計部と、複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の予測に用いる特徴データを生成する生成部と、を備える情報処理装置、当該情報処理装置に用いるプログラム、及び、当該情報処理装置に用いる方法を提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の情報処理装置10のブロック図を示す。
図2】本実施形態の情報処理装置10による学習処理のフローを示す。
図3】情報処理装置10が処理対象とする交通規制シミュレーションの一例を示す。
図4】交通規制シミュレーションにおける各エージェントの状況の一例を示す。
図5図4の状況において各状態を取るエージェント数の一例を示す。
図6】本実施形態の情報処理装置10による予測処理のフローを示す。
図7】情報処理装置10による学習及び予測処理の一例を示す。
図8】情報処理装置10による学習及び予測処理の別の一例を示す。
図9】コンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10のブロック図を示す。情報処理装置10は、シミュレーション対象となるシナリオについて、エージェントベースのシミュレーションを実行する。情報処理装置10は、複数のシナリオの一部を実行して、シミュレーション途中のエージェントの状態からシミュレーション結果の良否を予測する予測モデルを学習する。
【0010】
そして、情報処理装置10は、残りのシナリオについて、学習した予測モデルに基づいてシミュレーション途中のエージェントの状態からシミュレーションの評価を予測し、評価の予測結果が良好なシナリオのみ最後までのシミュレーションを実行する。情報処理装置10は、取得部110、実行部120、集計部130、生成部160、学習処理部170、予測部180、及び、中断部190を備える。
【0011】
取得部110は、情報処理装置10の外部又は内部のデータベース20から、複数のシナリオの各々についてのシミュレーション条件を取得する。例えば、取得部110は、学習時には学習用のシナリオについてのシミュレーション条件を取得し、予測時には予測対象のシナリオについてのシミュレーション条件を取得する。取得部110は、取得した複数のシミュレーション条件を実行部120及び生成部160に供給する。
【0012】
実行部120は、複数のシミュレーション条件のそれぞれを用いて、複数のエージェントを用いるエージェントベースのシミュレーションを実行する。例えば、実行部120は、各シミュレーション条件に基づき、市街地を走行する複数の車両をエージェントとするシミュレーションを実行して、各時点の各エージェントの現在位置等の属性を算出する。また、実行部120は、各時点の最大渋滞長等の各シナリオについてのシミュレーションの評価を算出してよい。
【0013】
実行部120は、シミュレーションに設定される最終時点に到る前の途中時点の各エージェントの属性を集計部130に供給する。また、実行部120は、シミュレーションの途中時点におけるKPI等のシミュレーションの評価を生成部160に供給してもよい。
【0014】
更に実行部120は、学習時には、複数のシナリオについて、シミュレーション結果を学習処理部170に供給する。例えば、実行部120は、シミュレーションの最終時点における評価を学習処理部170に供給する。実行部120は、予測時には、複数のシナリオについて、シミュレーションの最終時点における評価を中断部190に供給してよい。
【0015】
集計部130は、エージェントの属性に基づいて、シミュレーションの途中時点において複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する。例えば、集計部130は、エージェントである車両の位置等により、複数のエージェントを予め定義された複数の状態に分類し、各状態に分類されたエージェントの数をシナリオごとに集計する。集計部130は、集計した結果を生成部160に提供する。
【0016】
生成部160は、集計部130が集計した複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の予測に用いる特徴データを生成する。例えば、生成部160は、シミュレーション途中において各状態を取るエージェントの数を各要素とするベクトル又は行列を含む特徴データを各シナリオについて生成する。
【0017】
また、生成部160は、更にシミュレーションの途中時点の評価及び/又はシミュレーション条件を含む特徴データを生成してもよい。生成部160は、生成した特徴データを学習時には学習処理部170に供給し、予測時には予測部180に供給する。
【0018】
学習処理部170は、それぞれのシミュレーション条件を用いたシミュレーションの途中時点で生成された複数の特徴データと、複数の対応するシミュレーション結果に基づいて、予測部180を学習させる。例えば、学習処理部170は、複数のシナリオについての特徴データとシミュレーション結果との対応を学習して、シミュレーションの途中の特徴データからシミュレーションの結果を予測する予測モデルを学習する。学習処理部170は、予測モデルを予測部180に提供する。
【0019】
予測部180は、シミュレーションの途中時点の特徴データに基づき、予測モデルを用いてシミュレーション結果の良否を予測する。例えば、予測部180は、各シナリオについて、特徴データを予測モデルに入力してシミュレーションの最終時点における評価の予測値を算出し、算出した予測値に基づいてシミュレーション結果の良否を予測する。予測部180は、予測した結果を中断部190に供給する。
【0020】
中断部190は、シミュレーション結果が不良と予測されたことに応じて、シミュレーションを中断する。例えば、あるシナリオについてシミュレーション途中での特徴データ等に基づいて予測された評価が良好でない場合、中断部190は、実行部120に当該シナリオに係るシミュレーションを中断させる。中断部190は、シミュレーションを中断したことに応じて、実行部120に異なるシミュレーション条件を用いたシミュレーションを開始させる。
【0021】
このように情報処理装置10は、シミュレーションの途中時点における各状態のエージェント数に基づいて、最終時点の評価を予測する予測モデルを学習する。各状態を取るエージェント数は、全エージェントの属性と同様にシミュレーションの途中時点のエージェント全体の状況を表すが、エージェント全体の属性と比較してデータ量が非常小さい。従って、情報処理装置10によると、より少ない計算資源を利用してシミュレーション結果を予測することができる。
【0022】
そして、情報処理装置10によると、予測結果に応じて、良好な結果が得られる可能性が高いシナリオのみシミュレーションを最後まで続行するので、複数のシナリオのうち、良好な結果が得られるシナリオをより効率的に特定することができる。
【0023】
図2は、本実施形態の情報処理装置10による学習処理のフローを示す。本実施形態において、情報処理装置10は、S110〜S170の処理を実行することにより、シミュレーションの評価を予測する予測モデルを学習する。なお、ここでは、情報処理装置10が、市街地を走行する複数の車両をエージェントとし、交通規制により生じる渋滞長等を評価する場合を具体例として説明するが、情報処理装置10の処理対象はこれに限られず、他の対象(人、動植物、微生物、ロボット、又は微粒子等)の挙動をシミュレートしてもよい。
【0024】
まず、S110において、取得部110は、情報処理装置10の外部又は内部のデータベース20等から、複数の学習用のシナリオについてのシミュレーション条件を取得する。例えば、取得部110は、N+M個の全シナリオのうち学習対象とするN個のシナリオについて、市街地の予め定められた複数の道路上に設ける交通規制の条件をシミュレーション条件として取得する。
【0025】
一例として、取得部110は、交通規制シミュレーションの対象区域内のR個の道路の交通規制についてのシミュレーション条件θ=(θ,θ,…,θ∈{0,1}4Rを取得する。ここでθ∈{0,1}(i=1,2,…,R)となり、i番目の道路の条件に係るベクトルθは、1番目の要素θi1が1であれば「道路iに交通規制なし」を表し、2番目の要素θi2が1であれば「道路iは一方通行(一方向は通行禁止で逆方向の交通量は2倍)」を表し、3番目の要素θi3が1であれば「道路iは逆一方通行(一方向の交通量は2倍で逆方向は通行禁止)」を表し、4番目の要素θi4が1であれば「道路iは通行止め(両方向とも通行禁止)」を表す。
【0026】
すなわち、この場合、シミュレーション条件θは、4R次元バイナリベクトルとなる。例えば、道路iに「道路iは逆一方通行」の規制が敷かれている場合、道路iに関する条件はθ=(0,0,1,0)となる。
【0027】
取得部110は、シミュレーション条件として、複数のエージェントの初期状態等を含むシミュレーション条件を取得してもよい。取得部110は、取得した複数のシミュレーション条件を実行部120及び生成部160に供給に提供する。
【0028】
次に、S120において、実行部120は、複数のシミュレーション条件のうちの実行対象となる1つのシミュレーション条件について、複数のエージェントを用いるエージェントベースのシミュレーションを最終時点まで実行する。例えば、実行部120は、実行対象のシミュレーション条件に係る交通規制が敷かれた状況下で、市街地を走行する複数の車両をエージェントとする交通規制シミュレーションを実行する。
【0029】
実行部120は、シミュレーションの途中時点における、各エージェントの状況及び動作等を含む複数のエージェントの属性を取得する。例えば、実行部120は、交通規制シミュレーションの途中時点における各エージェントの現在位置、及び、目的地等を属性として取得する。
【0030】
実行部120は、シミュレーションの途中の一時点又は複数時点において各エージェントの属性を取得してよい。例えば、実行部120がエージェントの60分間の挙動をシミュレートする場合、実行部120は、中間時点であるシミュレーション開始後30分時点の各エージェントの属性を取得してよい。
【0031】
また、例えば、シミュレーション長さが60分である場合、実行部120は、シミュレーション開始後10分、開始後20分、開始後30分までの各時点で各エージェントの属性を取得してよい。実行部120は、途中時点における各エージェントの属性を集計部130に供給する。
【0032】
また、実行部120は、シミュレーションの最終時点、若しくは、途中時点及び最終時点における、シミュレーションの評価を算出してよい。実行部120は、途中時点として、エージェントの属性の取得と同じ時点でシミュレーションの評価を算出してよい。例えば、実行部120は、途中時点として、交通規制シミュレーションの途中の1時点又は複数時点において発生した渋滞長さを算出してよい。実行部120は、各時点について複数種類の評価を算出してよい。例えば、実行部120は、複数種類の評価として市街地の中心部の渋滞長さ、及び、市街地の郊外の渋滞長さを算出してよい。
【0033】
一例として、シミュレーション長さが60分である場合、実行部120は、シミュレーション開始後10分(途中時点)、開始後20分(途中時点)、開始後30分(途中時点)、及び、開始後60分(最終時点)におけるシミュレーションの評価を、ζ10min、ζ20min、ζ30min、及びζ60minとしてそれぞれ取得し、シミュレーション途中の評価ζKPI={ζ10min,ζ20min,ζ30min}を生成してよい。
【0034】
実行部120は、シミュレーションの最終時点における評価を学習処理部170に供給する。また、実行部120は、シミュレーションの途中時点におけるシミュレーションの評価ζKPIを生成部160に供給してよい。
【0035】
次に、S130において、集計部130は、シミュレーションの途中において複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する。例えば、まず、集計部130は、エージェントの属性が得られた時点ごとに、複数のエージェントのそれぞれを、属性に基づいて予め定められた状態のいずれかに割り当てる。そして集計部130は、複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する。
【0036】
一例として、集計部130は、シミュレーション途中の時点q(q∈Q|Qは1以上の整数)において「道路iに侵入した状態」にあるエージェント数(車両数)を集計してよい。同様に集計部130は、時点qにおいて「道路iから退出した状態」にあるエージェント数を集計してよい。また、集計部130は、時点qにおいて「道路iに滞在中の状態」にあるエージェント数を集計してよい。集計部130は、集計した結果を生成部160に提供する。
【0037】
次に、S140において、生成部160は、集計部130が集計した複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の予測に用いる特徴データを生成する。例えば、生成部160は、1又は複数の時点における複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、特徴データを生成する。
【0038】
一例として、生成部160は、途中時点q(q∈Q|Qは1以上の整数)において「道路i(i∈R)に侵入した状態」にあるエージェント数を要素ζIn,i,qとして有するR×Q行列ζInを生成し、時点qにおいて「道路iから退出した状態」にあるエージェント数(車両数)を要素ζOut,i,qとして有するR×Q行列ζOutを生成し、時点qにおいて「道路iに滞在中の状態」にあるエージェント数(車両数)を要素ζStay,i,qとして有するR×Q行列ζStayを生成し、これらから特徴データx={ζIn,ζOut,ζStay}を生成してよい。
【0039】
また、生成部160は、シミュレーションの途中時点の評価及び/又はシミュレーション条件を更に含む特徴データxを生成してもよい。一例として、生成部160は、シミュレーション条件θ及びシミュレーションの途中時点の評価ζKPIに基づいて、特徴データx={θ、ζKPI、ζIn,ζOut,ζStay}を生成してよい。生成部160は、生成した特徴データxを学習処理部170に供給する。
【0040】
次に、S150において、実行部120は、全ての学習対象のシナリオについてのシミュレーションが終了したかを判断する。全ての学習対象のシナリオのシミュレーションが終了したと判断する場合、実行部120は処理をS170に進め、そうでない場合はS160に進める。
【0041】
S160において、実行部120は、学習対象のシナリオのうち未だシミュレーションを実行していない新しいシナリオの処理を開始する。実行部120は、新しいシナリオについて再びS120の処理を開始する。
【0042】
S170において、学習処理部170は、複数の学習用のシナリオのシミュレーションを実行した結果を利用して、各シナリオの特徴データからシミュレーションの結果を予測する予測モデルを学習する。例えば、学習処理部170は、カーネルリッジ回帰を用いて予測モデルを学習してよい。
【0043】
一例として、学習処理部170は、数式1に基づいて特徴データxから、シミュレーションの評価g(x)を予測する予測モデルを生成する。ここで、pは、予測モデルにおける評価の種類を示す。すなわち、学習処理部170は、p∈PとなるP個の評価について、それぞれ予測モデルを生成してよい。
【数1】
【0044】
ここで、Jは特徴データにおける特徴の種類数(例えば、特徴データx={θ,ζKPI,ζIn,ζOut,ζStay}であれば5種類であり、x=θ、x=ζKPI、x=ζIn、x=ζOut、x=ζStayとなる)を示し、Lはカーネル関数の数を示し、αlj及びβは実数パラメータを示す。k(・)はガウシアンカーネル関数であり、例えば、ks(w,w')=exp(−||w−w'||/2σ)である。σはガウシアンカーネルの幅パラメータである。また、u(l)は、xに対応するl番目のカーネル中心である。例えば、u(l)は、トレーニングデータでありx(l)がセットされる。この場合、N=Lとなる。
【0045】
学習処理部170は、数式2を最適化することに基づいて、シミュレーションの最終時点の評価g(x)を予測する予測モデルを学習する。
【数2】
【0046】
ここで、y(n)はn番目のシナリオ(n∈N)において得られた最終時点のシミュレーションの評価を示し、x(n)はn番目のシナリオにおける特徴データを示し、AはAlj=αljとなる要素を含む行列であり、||・||は行列のフロベニウスノルムを示し、ρは非負の正則化パラメータを示す。すなわち、学習処理部170は、最終的なシナリオの評価yと予測される評価g(x)との差の学習用の全シナリオの総和、及び、||A||で示される罰則項の和が最小となるような、行列A及びβを学習する。
【0047】
学習処理部170は、行列A及びβを、数式3及び数式4により解析的に算出してよい。
vec(A)=(GG+NρILJ−1=G(HGG+NρI−1 …数式3
β=1(Y−Gvec(A))/N …数式4
【0048】
ここで、Yは(y(1),y(2),…,y(N)を示し、Gは(vec(K(x(1))),vec(K(x(2))),…,vec(K(x(N))))を示し、vec(・)はベクトル化演算子を示し、1は全要素の値が1のN次元ベクトルを示し、IはN×Nの単位行列を示し、ILJはLJ×LJの単位行列を示し、HはI−1/Nを示す。正則化パラメータ及び幅パラメータσはユーザが予め設定してよく、交差検証のようなモデル選択法で決定してもよい。
【0049】
学習処理部170は、学習した予測モデルを予測部180に提供する。例えば、学習処理部170は、数式1〜4に基づいて学習した行列A及びβ等を予測部180に供給する。
【0050】
このように情報処理装置10は、複数の学習用のシナリオのシミュレーションを実行した結果を利用して、シミュレーションの途中における各状態のエージェント数に基づき、シミュレーションの最終時点の評価yを予測する予測モデルg(x)を学習する。
【0051】
図3は、情報処理装置10が処理対象とする交通規制シミュレーションの一例を示す。例えば、実行部120は、シミュレーション条件をそれぞれ規定する複数のシナリオについて、図3に示すような市街地の交通状況をシミュレートする。例えば、実行部120は、シミュレーション開始から60分後における市街地の中心部(図中の点線内側領域)において発生する渋滞の距離の総和、又は、市街地の郊外(図中の点線外側領域)において発生する渋滞の距離の総和等を、シミュレーションの最終時点の評価(KPI)として算出してよい。
【0052】
図4は、交通規制シミュレーションにおける途中の時点qにおける各エージェントの状況の一例を示す。実行部120は、複数のエージェントとしてA〜Dの道路上に存在する4台の車両の属性及び動作等をシミュレートする。図示するように、ある1台の車両は道路A上で停止し、別の1台の車両は道路AからCに移動し、別の1台の車両は道路BからDに移動し、別の1台の車両は道路D上を移動している。集計部130は、4台の車両の現在位置、移動元、速度、及び、目的地等の属性から、これらの車両を複数の状態に割り当てる。
【0053】
図5は、図4の状況において各状態を取るエージェント数の一例を示す。例えば、集計部130は、図4の状況から、「道路Aに侵入した状態」にあるエージェント数ζIN,A,q=0を集計し、「道路Bに侵入した状態」にあるエージェント数ζIN,B,q=0を集計し、「道路Cに侵入した状態」にあるエージェント数ζIN,C,q=1を集計し、「道路Dに侵入した状態」にあるエージェント数ζIN,D,q=1を集計する。
【0054】
また、集計部130は、図4の状況から、「道路Aから退出した状態」にあるエージェント数ζOut,A,q=1を集計し、「道路Bから退出した状態」にあるエージェント数ζOut,B,q=1を集計し、「道路Cから退出した状態」にあるエージェント数ζOut,C,q=0を集計し、「道路Dから退出した状態」にあるエージェント数ζOut,D,q=0を集計する。
【0055】
また、集計部130は、図4の状況から、「道路Aに滞在した状態」にあるエージェント数ζStay,A,q=1を集計し、「道路Bに滞在した状態」にあるエージェント数ζStay,B,q=0を集計し、「道路Cに滞在した状態」にあるエージェント数ζStay,C,q=0を集計し、「道路Dに滞在した状態」にあるエージェント数ζStay,D,q=1を集計する。
【0056】
図6は、本実施形態の情報処理装置10による予測処理のフローを示す。本実施形態において、情報処理装置10は、S210〜S290の処理を実行することにより、予測対象のシナリオについて、シミュレーションの最終時点の評価を予測しつつ、予測結果が良好な一部のシナリオについてのみ最終時点までのシミュレーションを実行する。
【0057】
まず、S210において、取得部110は、情報処理装置10の外部又は内部のデータベース20等から、複数の予測対象のシナリオについてのシミュレーション条件を取得する。例えば、取得部110は、N+M個の全シナリオのうち学習対象のN個のシナリオに含まれなかったM個のシナリオについて、市街地の予め定められた複数の道路上に設ける交通規制の条件をシミュレーション条件として取得する。取得部110は、S110の学習用のシナリオに対する処理と同様に、S210の処理を実行してよい。
【0058】
次にS220において、実行部120は、予測対象のシナリオに係る複数のシミュレーション条件のうちの1つのシミュレーション条件を実行対象として、S120と同様にシミュレーションを実行する。ここで、実行部120は、最終時点までシミュレーションを実行せずに途中の時点までのシミュレーションを実行する。例えば、実行部120は、S130においてエージェント数が集計された時点(例えば、60分長のシミュレーションの場合は、開始後30分時点)までのシミュレーションを実行する。
【0059】
実行部120は、シミュレーションの途中時点における、各エージェントの状況及び動作等を含む複数のエージェントの属性を取得する。実行部120は、途中時点における各エージェントの属性を集計部130に供給する。また、実行部120は、S120と同様に、シミュレーションの1又は複数の途中時点における評価を算出して、生成部160に供給してよい。
【0060】
次にS230において、集計部130はS130と同様にシミュレーションの途中において複数の状態のそれぞれそれを取るエージェントの数を集計する。集計部130は、集計した結果を生成部160に提供する。
【0061】
次にS240において、生成部160は、集計部130が集計した複数の状態のそれぞれを取るエージェントの数に基づいて、シミュレーションの結果の予測に用いる特徴データを生成する。生成部160は、S140と同様の処理を実行して特徴データを生成してよい。生成部160は、生成した特徴データを予測部180に提供する。
【0062】
次にS250において、予測部180は、シミュレーションの途中の特徴データに基づき、予測モデルを用いてシミュレーション結果の良否を予測する。例えば、予測部180は、シミュレーション途中の1又は複数の時点のエージェントの数に基づく特徴データから、シミュレーションの最終時点における評価の予測値を算出してよい。
【0063】
一例として、まず、予測部180は、学習された行列A及びβが反映された数式1に、特徴データx={θ,ζKPI,ζIn,ζOut,ζStay}を代入した計算を実行することで、シミュレーションの最終時点の評価g(x)(例えば、渋滞長さ)を予測する。予測部180は、予測した評価の値を中断部190に供給する。
【0064】
次にS260において、中断部190は、予測部180が予測した評価を「良好」とするか判断する。例えば、中断部190は、予測された評価が予め定められた閾値以上(又は閾値未満)であれば評価が良好であると判断し、評価が予め定められた閾値未満(又は閾値以上)であれば評価が良好でないと判断してよい。例えば、中断部190は予測された渋滞長さが所定未満であれば評価が良好であると判断してよい。
【0065】
判断結果が「良好」であった場合、中断部190は、実行部120によるシミュレーションを再開させるために処理をS270に進める。中断部190は、判断結果が「良好」でない場合、実行部120によるシミュレーションを中断させるために処理をS280に進めて、実行中のシナリオに係るシミュレーションを中断してよい。
【0066】
また、例えば、中断部190は、複数のシミュレーション条件のシミュレーションを実行部120が最後まで実行して得られた複数の評価のうち、予め定められた数の上位の評価に基づいて、シミュレーションを中断する基準となる閾値を変更してよい。一例として、中断部190は、実行済みのシミュレーションに係る評価の中で、予め定められた順位の評価を閾値としてよい。
【0067】
また、例えば、中断部190は、予測部180により予測された評価に応じた確率で、処理をS280に進めることにより、確率的に実行中のシナリオに係るシミュレーションを中断してよい。
【0068】
S270において、実行部120は、途中時点からシミュレーションを再開し、シミュレーションを最終時点まで実行する。これにより、実行部120は、予測部180により結果が良好であると予測されたシナリオについてのみ、最終時点までのシミュレーションを実行する。実行部120は、シミュレーションを最後まで実行して得られた評価を中断部190に供給してよく、これにより中断部190はシミュレーションの最終時点までの評価に基づいて閾値を変更することができる。
【0069】
S280において、中断部190は予測対象のM個のシナリオについてシミュレーションが終了したか判断する。中断部190は、シミュレーションが終了したと判断する場合、処理を終了し、そうでない場合は処理をS290に進める。シミュレーションが終了したと判断する場合、実行部120は、図2でシミュレーションを実行したN個の学習対象のシナリオ及びM個の予測対象のシナリオのうち、最終時点における評価が良好(例えば、評価が所定の順位内、又は、評価が所定の値以上)であったシナリオを選出してよい。
【0070】
S290において、中断部190は、実行部120によりシミュレーションを実行中のシナリオについて、途中時点からシミュレーションを再開させずに中断させる。実行部120は、シミュレーションが中断されたことに応じて、予測対象のシナリオのうち未だシミュレーションを実行していない新しいシナリオの処理を開始する。実行部120は、新しいシナリオについて再びS220の処理を実行する。
【0071】
このように、情報処理装置10は、学習処理部170が生成した予測モデルを利用して、シミュレーションの途中における各状態のエージェント数に基づく特徴データxに基づき、シミュレーションの最終時点の評価yを予測する。これにより、情報処理装置10は、複数のシナリオのシミュレーションを実行する際に、シミュレーション途中で予測された最終時点の評価が悪い場合は当該シナリオを中断することにより、結果が良好なシナリオを特定するために無駄な計算資源が消費されることを防ぐことができる。
【0072】
なお、本図の説明では、情報処理装置10がシナリオ1つずつについて途中までのシミュレーションを行い、シミュレーションを中断するか再開するか判断していく形態を示した。これに代えて、情報処理装置10は全ての予測対象のシナリオについて途中までのシミュレーションを行い、その時点の全シナリオについての最終時点の評価の予測に基づいて最後まで実行するシナリオを選択してもよい。
【0073】
図7は、情報処理装置10による学習及び予測処理の一例を示す。図中のグラフの横軸は複数のシナリオのそれぞれを示し、縦軸は各シナリオのシミュレーションを実行した結果の最終時点の評価を示す。本例では、情報処理装置10は、評価が一定以上となるシナリオを全て特定することを目的とすることを想定する。情報処理装置10は、図示するようにシミュレーション対象の全シナリオについて、学習用のシナリオと予測対象のシナリオとに区別して処理する。
【0074】
例えば、情報処理装置10は、まず最初に全シナリオのうちの一部を学習用のシナリオとして、図2に係る学習処理を実行して予測モデルを生成する。情報処理装置10は、学習用のシナリオを実行部120が実行したことに応じて、縦棒グラフに示すような各シナリオについてのシミュレーションの最終時点の評価を得る。
【0075】
次に、情報処理装置10は、全シナリオのうちの残りの部分を予測対象のシナリオとして、予測モデルに基づき図6に係る予測処理を実行する。ここで、情報処理装置10の中断部190は、シミュレーションの途中で予測される最終時点の評価(図中の点線の縦棒グラフに対応)が一定の中止基準よりも小さい場合、シミュレーションの実行を途中で中断し、実行部120が別のシナリオのシミュレーションを開始する。これにより、情報処理装置10は、悪い結果が予測される一部のシナリオのシミュレーション(点線の縦棒グラフのシナリオ)の実行を途中で省略することができる。
【0076】
図8は、情報処理装置10による学習及び予測処理の別の一例を示す。図中のグラフの横軸及び縦軸は図7と共通である。本例では、情報処理装置10が、全シナリオから結果が良好な予め定められた数のシナリオ(例えば、評価が上位10位以内に含まれる10個のシナリオ)を特定することを目的とする。
【0077】
情報処理装置10は、図7の場合と同様に学習用のシナリオのシミュレーションを実行して予測モデルを生成する。情報処理装置10は、シミュレーションの途中で予測される最終時点の評価が選出対象の上位シナリオ(例えば、上位10位)に入らないと判断するとシミュレーションの実行を中断する。ここで、予測対象のシナリオの処理が進むにつれて、良好な評価を与えるシナリオが蓄積されるので、上位シナリオに含まれるための基準は高くなる。
【0078】
従って、情報処理装置10の中断部190は、予測対象のシナリオのシミュレーションが進むについて、シミュレーションの中止基準となる閾値をより厳しい方向に変更してよい。例えば、情報処理装置10の中断部190は、その時点における選択対象の上位シナリオの評価(例えば、その時点における上位10位のシナリオの評価)を、シミュレーションの実行を中断するための中止基準としてよい。
【0079】
また、例えば、中断部190は、中止基準にマージンを持たせるために、その時点における選択対象の上位シナリオから予め定められた順位分(例えば10位分)下位側の評価(例えば、その時点における上位20位のシナリオの評価)、又は、上位シナリオから予め定められた値分低い評価等を、シミュレーションの実行を中断するための中止基準としてよい。
【0080】
本例によると、中断部190は、図示するように予測対象のシナリオの処理が進むについて、中止基準を引き上げるように徐々に変更する。これにより、中断部190は、シナリオの処理が進むについて無駄なシナリオの処理のシミュレーションを大幅に省略することができる。
【0081】
図9は、情報処理装置10として機能するコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部を備える。
【0082】
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0083】
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、有線又は無線によりネットワークを介して他の装置と通信する。また、通信インターフェイスは、通信を行うハードウェアとして機能する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
【0084】
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続するとともに、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
【0085】
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
【0086】
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を情報処理装置10として機能させるプログラムは、取得モジュール、実行モジュール、集計モジュール、生成モジュール、学習処理モジュール、予測モジュール、及び、中断モジュールを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、取得部110、実行部120、集計部130、生成部150、学習処理部170、予測部180、及び、中断部190としてそれぞれ機能させてよい。
【0087】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である取得部110、実行部120、集計部130、生成部150、学習処理部170、予測部180、及び、中断部190として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置10が構築される。
【0088】
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD−ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0089】
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060(CD−ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020及び外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。
【0090】
例えば、情報処理装置10の記憶部は、取得部110、実行部120、集計部130、生成部150、学習処理部170、予測部180、及び、中断部190から受け取った/へ提供するデータを適宜記憶してよい。例えば、記憶部は、取得部110から入力されたデータを受け取って記憶してよい。また、記憶部は、学習処理部170が学習した結果等を記憶してよい。
【0091】
なお、本実施形態の説明において、一の構成要素(例えば、取得部110)から別の構成要素(例えば、実行部120)に情報(例えば、複数のシミュレーション条件)を供給したと記載するときは、一の構成要素から別の構成要素に直接情報を受け渡すことだけでなく、記憶部への情報の格納及び情報の読み出しを介して情報を渡すことをも含んでよい。
【0092】
本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
【0093】
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすか否かを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
【0094】
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0095】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0096】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0097】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、明細書の実施形態に要素A、要素B、及び要素Cを備える発明が記載されている場合、他に特段の記載がなければ、要素Aのみ、要素Bのみ、要素Cのみ、要素AとBのみ、要素AとCのみ、及び要素BとCのみの発明が意図される。
【0098】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0099】
10 情報処理装置、20 データベース、110 取得部、120 実行部、130 集計部、150 生成部、170 学習処理部、180 予測部、190 中断部、1900 コンピュータ、2000 CPU、2010 ROM、2020 RAM、2030 通信インターフェイス、2040 ハードディスクドライブ、2050 フレキシブルディスク・ドライブ、2060 CD−ROMドライブ、2070 入出力チップ、2075 グラフィック・コントローラ、2080 表示装置、2082 ホスト・コントローラ、2084 入出力コントローラ、2090 フレキシブルディスク、2095 CD−ROM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9