特許第5984186号(P5984186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984186
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】2軸押出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/40 20060101AFI20160823BHJP
   B29C 47/10 20060101ALI20160823BHJP
   B29C 47/68 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B29C47/40
   B29C47/10
   B29C47/68
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-44935(P2013-44935)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-172230(P2014-172230A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】歳内 繁人
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−280254(JP,A)
【文献】 特開平7−314531(JP,A)
【文献】 特開2004−142283(JP,A)
【文献】 特開2009−248486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/00−47/96
B29B 7/00− 7/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料投入口を形成したテーパ筒状のホッパ部と、該ホッパ部に続いて先端に材料排出口を形成したテーパ筒状の圧縮部とを備えたケーシング内に、テーパ状のスクリュー羽根を配設した2本のスクリュー軸を回転可能に設けた2軸押出機において、圧縮部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランスの大きさを、ホッパ部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランスの大きさの0.5〜0.8倍に設定してなることを特徴とする2軸押出機。
【請求項2】
ホッパ部のケーシングの内壁、圧縮部のケーシングの内壁とを別部材で構成てなることを特徴とする請求項記載の2軸押出機。
【請求項3】
圧縮部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさを、ホッパ部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさよりも大きく設定するようにしたことを特徴とする請求項又は記載の2軸押出機。
【請求項4】
圧縮部の位置のスクリュー羽根の肉厚の大きさを、ホッパ部の位置のスクリュー羽根の肉厚の大きさよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1、又は記載の2軸押出機。
【請求項5】
材料排出口にメッシュスクリーンを着脱可能に配設したことを特徴とする請求項1、2、又は記載の2軸押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2軸押出機に関し、特に、大きな押出力が得られるようにした2軸押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、未成形のゴム原料やプラスチック原料等の高粘度物質(以下、「材料」という。)をスクリュー羽根にて押し出しながら次工程に適した形状に予備成形するために2軸押出機が汎用されている。
【0003】
この2軸押出機として、材料投入口を形成したテーパ筒状のホッパ部と、該ホッパ部に続いて先端に材料排出口を形成したテーパ筒状の圧縮部とを備えたケーシング内に、テーパ状のスクリュー羽根を配設した2本のスクリュー軸を回転可能に設けた2軸押出機(以下、「2軸テーパ押出機」という場合がある。)がある。
ところで、この2軸押出機は、ホッパ部の位置では、材料投入口から投入された塊状の材料を噛み込み、圧縮部に供給する機能を、圧縮部の位置では、材料を圧縮し、材料排出口から材料を押し出すために要する圧力を生じさせ、かつ、材料の逆流を抑えて処理量を確保する機能を、それぞれ要求される。
このため、従来の2軸テーパ押出機においては、圧縮部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさを、ホッパ部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさよりも大きく設定するようにされていた(例えば、特許文献1〜2参照。)。
一方、材料に含まれる異物を除去するために、材料排出口にメッシュスクリーンを配設して押し出しを行うストレーニング工程を実施するために1軸押出機が使用されているが、この1軸押出機は、材料投入口の間口が小さく、また、噛み込み性が劣るため、事前に材料を小さく予備加工する必要があり、生産性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−164578号公報
【特許文献2】特開2006−305976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記2軸テーパ押出機の場合、軸径が一定のストレートスクリュー押出機と比較して、製作精度等の関係上、運転時のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁との接触を防止するために、ケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランスを大きく設定する必要があり、この大きなクリアランスによって、材料の逆流が生じやすく、材料排出口から材料を押し出す圧力を高めることが困難で、例えば、材料に含まれる異物を除去するために、材料排出口にメッシュスクリーンを配設する場合のような大きな押し出し圧力が必要とされる用途には使用できなかった。
【0006】
本発明は、上記従来の2軸テーパ押出機の有する問題点に鑑み、材料排出口から材料を押し出すための圧力を高めることができるようにすることによって、大きな押し出し圧力が必要とされる用途にも使用できる2軸押出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の2軸押出機は、材料投入口を形成したテーパ筒状のホッパ部と、該ホッパ部に続いて先端に材料排出口を形成したテーパ筒状の圧縮部とを備えたケーシング内に、テーパ状のスクリュー羽根を配設した2本のスクリュー軸を回転可能に設けた2軸押出機において、圧縮部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランスの大きさを、ホッパ部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランスの大きさの0.5〜0.8倍に設定してなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、ホッパ部のケーシングの内壁、圧縮部のケーシングの内壁とを別部材で構成てなるようにすることができる。
【0009】
また、圧縮部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさを、ホッパ部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさよりも大きく設定することができる。
【0010】
また、圧縮部の位置のスクリュー羽根の肉厚の大きさを、ホッパ部の位置のスクリュー羽根の肉厚の大きさよりも大きく設定することができる。
【0011】
また、材料排出口にメッシュスクリーンを配設することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の2軸押出機によれば、圧縮部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランスの大きさを、ホッパ部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランスの大きさの0.5〜0.8倍に設定することにより、圧縮部における材料の逆流を生じにくくすることができ、材料排出口から材料を押し出すための圧力を高めることができる。そして、これによって、大きな押し出し圧力が必要とされる用途にも使用できる。
【0013】
また、ホッパ部のケーシングの内壁と、圧縮部のケーシングの内壁とを別部材で構成してなるようにすることによって、ホッパ部のケーシングの内壁を製缶によって、圧縮部のケーシングの内壁を機械加工によって、それぞれ製作することができ、製作コストを低廉にできる。
【0014】
また、圧縮部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさを、ホッパ部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度の大きさよりも大きく設定することにより、材料排出口から材料を押し出すための圧力を一層高めることができる。
【0015】
また、圧縮部の位置のスクリュー羽根の肉厚の大きさを、ホッパ部の位置のスクリュー羽根の肉厚の大きさよりも大きく設定することにより、材料排出口から材料を押し出すための圧力を一層高めることができる。
【0016】
また、材料排出口にメッシュスクリーンを配設することにより、一連の工程で材料に含まれる異物を除去することができ、材料の品質の向上と工程の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の2軸押出機の一実施例を示す説明図である。
図2】同2軸押出機の平面断面図である。
図3】同2軸押出機のケーシングの説明図である。
図4】本発明の2軸押出機の変形実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の2軸押出機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図3に、本発明の2軸押出機の一実施例を示す。
この2軸押出機は、従来の2軸テーパ押出機と同様、材料投入口11aを形成したテーパ筒状のホッパ部11と、このホッパ部11に続いて先端に材料排出口12aを形成したテーパ筒状の圧縮部12とを備えたケーシング1内に、テーパ状のスクリュー羽根21を配設した2本のスクリュー軸2を回転可能に設けるようにしている。
そして、本実施例において、圧縮部12のケーシングの内壁面12bとスクリュー羽根21の外縁とのクリアランスD2の大きさを、ホッパ部11のケーシングの内壁面11bとスクリュー羽根21の外縁とのクリアランスD1の大きさよりも小さく設定するようにしている。
【0020】
ここで、クリアランスD1の大きさは、特に限定されるものではないが、従来の2軸テーパ押出機と同程度、具体的には、2軸押出機の大きさに応じて、3〜15mm程度に設定するようにし、クリアランスD2の大きさは、D1の大きさの0.5〜0.8倍程度、好ましくは、0.5〜0.7倍程度に設定するようにする。
【0021】
これにより、圧縮部12における材料の逆流を生じにくくすることができ、材料排出口12aから材料を押し出すための圧力を高めることができる。
【0022】
ところで、ケーシングの内壁面11b、12bとスクリュー羽根21の外縁とのクリアランスD1、D2の大きさは、ケーシングの内壁面11b、12bの寸法、スクリュー羽根21の外縁の寸法、あるいはその両方を調整することによって設定することができるが、本実施例においては、図3に示すように、スクリュー羽根21の外縁の寸法を、基端側から先端側に向けて漸次寸法が減少するテーパ状に形成するようにし(従来の2軸テーパ押出機と同様。)、ケーシングの内壁面11b、12bの寸法(内径)を調整することによって、圧縮部12のケーシングの内壁面12bとスクリュー羽根21の外縁とのクリアランスD2の大きさが、ホッパ部11のケーシングの内壁面11bとスクリュー羽根21の外縁とのクリアランスD1の大きさよりも小さくなるようにしている。
これにより、隣接するスクリュー羽根21同士の接触を生じることなく、材料の逆流が生じる要因となる圧縮部12に存在するクリアランスを小さくすることができる。
【0023】
この場合、ケーシング1のうち、ホッパ部11のケーシングの内壁を製缶によって、圧縮部12のケーシングの内壁を製作精度の上げやすい機械加工によって、それぞれ製作するようにすることができる。
これにより、ケーシング1全体を機械加工によって製作する場合と比較して、ケーシング1の製作コストを低廉にできる。
【0024】
また、本実施例においては、圧縮部12の位置のスクリュー羽根21とスクリュー軸2の軸心を含む面とがなす角度α2の大きさを、ホッパ部11の位置のスクリュー羽根21とスクリュー軸2の軸心を含む面とがなす角度α1の大きさよりも大きく設定するようにする(従来の2軸テーパ押出機と同様。)とともに、圧縮部12の位置のスクリュー羽根21の肉厚t2の大きさを、ホッパ部11の位置のスクリュー羽根21の肉厚t1の大きさよりも大きく設定するようにしている。
ここで、スクリュー羽根21の肉厚t1の大きさは、従来の2軸テーパ押出機と同程度に設定するようにし、肉厚t2の大きさは、肉厚t1の大きさの1.5〜3.0倍程度、好ましくは、1.8〜2.5倍程度に設定するようにする。
これにより、材料排出口12aから材料を押し出すための圧力を一層高めることができる。
【0025】
なお、スクリュー羽根21は、通常、スクリュー軸2に板状部材を溶接等により取り付けて形成する関係上、本実施例のように、ホッパ部11の位置のスクリュー羽根21の肉厚t1の大きさ及び圧縮部12の位置のスクリュー羽根21の肉厚t2の大きさは、それぞれ一定に設定しているが、削り出し等により形成する場合には、スクリュー羽根21の肉厚の大きさが、基端側から先端側に向けて漸次増大するように形成することもできる。
【0026】
この2軸押出機によれば、従来の2軸テーパ押出機と同様、ホッパ部11の材料投入口11aから投入された塊状の材料を噛み込み、圧縮部12に円滑に供給する機能を有しながら、圧縮部12における材料の逆流を生じにくくすることができ、材料排出口12aから材料を押し出すための圧力を高めることができる。
そして、これによって、大きな押し出し圧力が必要とされる用途にも使用できる。
【0027】
具体的には、図1に示すように、材料排出口12aに、メッシュスクリーン31a、31bを配設し、メッシュスクリーン31a、31bを介して、異物を除去した材料を、その後段に配設したローラヘッド4に材料を供給するようにすることができる。
この場合、メッシュスクリーン31a、31bは、スライド機構32を介して、使用と清掃とを交互に行うことができるようにしている。
また、図4に示す変形実施例のように、メッシュスクリーン31bに代えて、スペーサ31cを配設することにより、選択的にメッシュスクリーン31aを通さずに材料を通過させるようにすることもできる。
これにより、一連の工程で材料に含まれる異物を除去することができ、材料の品質の向上と工程の短縮化を図ることができる。
【0028】
以上、本発明の2軸押出機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の2軸押出機は、材料排出口から材料を押し出すための圧力を高めることができるようにすることによって、大きな押し出し圧力が必要とされる用途にも使用できる特性を有することから、材料に含まれる異物を除去するために、材料排出口にメッシュスクリーンを配設する場合のような大きな押し出し圧力が必要とされる用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ケーシング
11 ホッパ部
11a 材料投入口
11b ホッパ部のケーシングの内壁面
12 圧縮部
12a 材料排出口
12b 圧縮部のケーシングの内壁面
2 スクリュー軸
21 スクリュー羽根
31a メッシュスクリーン
31b メッシュスクリーン
32 スライド機構
4 ローラヘッド
D1 ホッパ部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランス
D2 圧縮部のケーシングの内壁面とスクリュー羽根の外縁とのクリアランス
α1 ホッパ部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度
α2 圧縮部の位置のスクリュー羽根とスクリュー軸の軸心を含む面とがなす角度
t1 ホッパ部の位置のスクリュー羽根の肉厚
t2 圧縮部の位置のスクリュー羽根の肉厚
図1
図2
図3
図4