特許第5984193号(P5984193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5984193ダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム及び突き上げ動作干渉回避システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984193
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム及び突き上げ動作干渉回避システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20160823BHJP
   H01L 21/67 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
   H01L21/68 E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-544175(P2014-544175)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2012078449
(87)【国際公開番号】WO2014068763
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝之
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−214477(JP,A)
【文献】 特開2005−277273(JP,A)
【文献】 実開昭59−189240(JP,U)
【文献】 特開2012−099680(JP,A)
【文献】 特開2012−238847(JP,A)
【文献】 特開平01−220454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハをダイシングして形成した複数のダイが貼着された伸縮可能なダイシングシートの外周部を内側・外側の両エキスパンドリングで挟み込んで張設したウエハパレットと、前記ウエハパレットを複数段に収容したマガジンと、前記マガジン内のウエハパレットをピックアップ位置へ引き出す引き出し機構と、前記ピックアップ位置の下方に配置された突き上げポットを上下動させる突き上げ機構とを備え、前記引き出し機構により前記マガジン内のウエハパレットをピックアップ位置へ引き出して前記ダイシングシート上のダイを吸着ノズルに吸着してピックアップする際に、前記突き上げ機構により前記突き上げポットをダイシングシートの下面に接触又は近接する所定のシート吸着位置まで上昇させて該ダイシングシートを該突き上げポットの上面に吸着した状態で、該突き上げポット内の突き上げピンを該突き上げポットの上面から上方に突出させることで、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を前記突き上げピンで突き上げて、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システムにおいて、
前記ウエハパレット上の外側のエキスパンドリングを検知対象物とする対物センサを備え、前記引き出し機構により前記マガジン内のウエハパレットを前記ピックアップ位置へ引き出す際に該ウエハパレット上の外側のエキスパンドリングが前記対物センサの検知エリアを通過するように構成され、前記対物センサの検出結果と前記ウエハパレットの移動量との関係に基づいて前記外側のエキスパンドリングの外径を計測する手段と、前記外側のエキスパンドリングの外径計測値と前記内側・外側の両エキスパンドリングの合計幅とに基づいて前記内側のエキスパンドリングの内径を算出する手段とを備えていることを特徴とするダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム。
【請求項2】
前記マガジン内には、前記ウエハパレットと、トレイ部品を積載したトレイパレットとが混載され、
前記引き出し機構により前記マガジン内のトレイパレットを前記ピックアップ位置へ引き出す際に前記対物センサの検出結果に基づいて該トレイパレット上のトレイ部品の載置状態の正常/異常を監視する手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム。
【請求項3】
ウエハをダイシングして形成した複数のダイが貼着された伸縮可能なダイシングシートの外周部を内側・外側の両エキスパンドリングで挟み込んで張設したウエハパレットと、前記ウエハパレットの下方に配置された突き上げポットを上下動させる突き上げ機構と、前記ダイシングシート上のダイを撮像するカメラとを備え、前記ダイシングシート上のダイを吸着ノズルに吸着してピックアップする際に、前記突き上げ機構により前記突き上げポットをダイシングシートの下面に接触又は近接する所定のシート吸着位置まで上昇させて該ダイシングシートを該突き上げポットの上面に吸着した状態で、該突き上げポット内の突き上げピンを該突き上げポットの上面から上方に突出させることで、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を前記突き上げピンで突き上げて、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システムにおいて、
前記内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所を前記カメラで撮像して、それらの撮像画像を処理して前記内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所の位置を認識する画像処理手段と、前記画像処理手段により認識した前記内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所の位置に基づいて該内側のエキスパンドリングの内径を算出する手段とを備えていることを特徴とするダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム。
【請求項4】
ウエハをダイシングして形成した複数のダイが貼着された伸縮可能なダイシングシートの外周部を内側・外側の両エキスパンドリングで挟み込んで張設したウエハパレットと、前記ウエハパレットの下方に配置された突き上げポットを上下動させる突き上げ機構とを備え、前記ダイシングシート上のダイを吸着ノズルに吸着してピックアップする際に、前記突き上げ機構により前記突き上げポットをダイシングシートの下面に接触又は近接する所定のシート吸着位置まで上昇させて該ダイシングシートを該突き上げポットの上面に吸着した状態で、該突き上げポット内の突き上げピンを該突き上げポットの上面から上方に突出させることで、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を前記突き上げピンで突き上げて、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システムにおいて、
上方に位置する計測対象点までの高さを計測する高さ計測センサが前記ウエハパレットの下方を水平方向に移動するように設けられ、
前記高さ計測センサで前記ウエハパレットの下端の高さを計測しながら、その計測対象点が前記内側のエキスパンドリングの内周縁を横切るように該高さ計測センサを水平方向に移動させ、該高さ計測センサの計測値が変化する位置を前記内側のエキスパンドリングの内周縁の位置と判定する処理を該内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所で行い、該内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所の位置に基づいて該内側のエキスパンドリングの内径を算出することを特徴とするダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム。
【請求項5】
前記高さ計測センサは、前記突き上げポットと一体的に水平方向に移動するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載のダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システムで計測した前記内側のエキスパンドリングの内径に基づいて前記突き上げポットが該内側のエキスパンドリングの内縁と干渉しないように該突き上げポットの水平方向の移動範囲を設定する手段を備えていることを特徴とするダイ供給装置の突き上げ動作干渉回避システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のダイが貼着された伸縮可能なダイシングシートを張ったエキスパンドリングの内径を計測する機能を備えたダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システム及び突き上げ動作干渉回避システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1(特開2010−129949号公報)に記載されているように、ダイを供給するダイ供給装置を部品実装機にセットして、部品実装機でダイを回路基板に実装するようにしたものがある。ダイ供給装置は、ダイシングされたウエハが貼着された伸縮可能なダイシングシートを装着したウエハパレットと、前記ダイシングシートの下方に配置された突き上げポットを上下動させる突き上げ機構とを備え、ダイ供給装置の吸着ノズル又は部品実装機の吸着ノズルを下降させて前記ダイシングシート上のダイを吸着してピックアップする際に、突き上げ機構により突き上げポットをダイシングシートの下面に接触又は近接する所定のシート吸着位置まで上昇させて該ダイシングシートを該突き上げポットの上面に吸着した状態で、該突き上げポット内の突き上げピンを該突き上げポットの上面から上方に突出させる突き上げ動作を行うことで、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を該突き上げピンで突き上げて該ダイの貼着部分を該ダイシングシートから部分的に剥離させながら、該吸着ノズルで該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするようにしている。
【0003】
ここで、ウエハパレットは、複数のダイが貼着された伸縮可能なダイシングシートの外周部を内側・外側の両エキスパンドリングで挟み込んで張設した構成となっており、ダイシングシート上のダイを吸着ノズルで吸着してピックアップする際に、突き上げポットは、ダイシングシートを張ったウエハパレットの内側のエキスパンドリング内に位置して該ダイシングシートの下面に接触又は近接し、且つ、吸引状態で該ダイシングシートの下面に沿ってXY方向に移動するため、突き上げポットがウエハパレットの内側のエキスパンドリングと干渉することを避ける必要がある。このため、ウエハパレットをダイ供給装置にセットする際に、突き上げポットがウエハパレットの内側のエキスパンドリングと干渉しないXY方向の移動可能範囲の情報を作業者がダイ供給装置の制御用コンピュータに入力する必要があり、その入力作業が面倒であった。
【0004】
そこで、特許文献2(特開2012−99680号公報)に記載されているように、ダイシングシート上のウエハのサイズ及び/又はピックアップ動作範囲(エキスパンドリングの内径寸法)に関するウエハ情報を書き込んだ情報記録部をウエハパレットに設けると共に、前記情報記録部に記述されたウエハ情報を読み取る情報読取り部(リーダ)と、この情報読取り部で読み取ったウエハ情報に基づいて突き上げポットのXY方向の移動可能範囲を自動設定するようにしたものがある。この構成では、ウエハパレットの情報記録部からウエハ情報を情報読取り部で読み取って突き上げポットのXY方向の移動可能範囲を自動設定するため、突き上げポットがウエハパレットの内側のエキスパンドリングと干渉しないXY方向の移動可能範囲の情報を入力する作業を行う必要がなくなり、生産性を向上できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−129949号公報
【特許文献2】特開2012−99680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のように、ウエハパレットに、ウエハ情報を書き込んだ情報記録部を設ける構成では、間違った径のエキスパンドリングがウエハパレットに装着されている場合に、当該ウエハパレットの情報記録部から読み取ったエキスパンドリングの内径寸法が実際の内径寸法と異なるため、ダイシングシート上のダイを吸着ノズルで吸着してピックアップする際に、突き上げポットがエキスパンドリングと干渉して破損する可能性があった。しかも、ウエハパレットに情報記録部が設けられていない場合は、エキスパンドリングの内径寸法のデータを作業者がダイ供給装置の制御用コンピュータに入力する必要があり、その入力作業が面倒であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ウエハをダイシングして形成した複数のダイが貼着された伸縮可能なダイシングシートの外周部を内側・外側の両エキスパンドリングで挟み込んで張設したウエハパレットと、前記ウエハパレットを複数段に収容したマガジンと、前記マガジン内のウエハパレットをピックアップ位置へ引き出す引き出し機構と、前記ピックアップ位置の下方に配置された突き上げポットを上下動させる突き上げ機構とを備え、前記引き出し機構により前記マガジン内のウエハパレットをピックアップ位置へ引き出して前記ダイシングシート上のダイを吸着ノズルに吸着してピックアップする際に、前記突き上げ機構により前記突き上げポットをダイシングシートの下面に接触又は近接する所定のシート吸着位置まで上昇させて該ダイシングシートを該突き上げポットの上面に吸着した状態で、該突き上げポット内の突き上げピンを該突き上げポットの上面から上方に突出させることで、該ダイシングシートのうちの吸着しようとするダイの貼着部分を前記突き上げピンで突き上げて、該吸着ノズルに該ダイを吸着して該ダイシングシートからピックアップするダイ供給装置のエキスパンドリング内径計測システムにおいて、前記ウエハパレット上の外側のエキスパンドリングを検知対象物とする光センサ等の対物センサを備え、前記引き出し機構により前記マガジン内のウエハパレットを前記ピックアップ位置へ引き出す際に該ウエハパレット上の外側のエキスパンドリングが前記対物センサの検知エリアを通過するように構成され、前記対物センサの検出結果と前記ウエハパレットの移動量との関係に基づいて前記外側のエキスパンドリングの外径を計測する手段と、前記外側のエキスパンドリングの外径計測値と前記内側・外側の両エキスパンドリングの合計幅とに基づいて前記内側のエキスパンドリングの内径を算出する手段とを備えた構成としたものである。
【0008】
この構成では、マガジン内のウエハパレットをピックアップ位置へ引き出す際に、該ウエハパレット上の外側のエキスパンドリングを光センサ等の対物センサで検出して、その対物センサの検出結果とウエハパレットの移動量との関係に基づいて外側のエキスパンドリングの外径を計測できるため、外側のエキスパンドリングの外径計測値と内側・外側の両エキスパンドリングの合計幅とに基づいて内側のエキスパンドリングの内径を算出することができる。これにより、ウエハパレットに、内側のエキスパンドリングの内径等のデータを記録した情報記録部が設けられていなくても、内側のエキスパンドリングの内径を自動的に計測することができ、突き上げ動作時に突き上げポットが内側のエキスパンドリングと干渉して破損することを防止できると共に、内側のエキスパンドリングの内径等のデータを作業者が入力する作業を行う必要がなくなり、生産性を向上できる。
【0009】
この場合、対物センサは、内径計測専用の対物センサを新たに設けても良いが、マガジン内に、ウエハパレットと、トレイ部品を積載したトレイパレットとを混載した部品供給装置に本発明を適用する場合は、トレイパレット上のトレイ部品の載置状態の正常/異常を監視するために設置された光センサ等の対物センサを使用して内側のエキスパンドリングの内径を計測するようにしても良い。
【0010】
一般に、ダイ供給装置には、ダイシングシート上のダイを撮像するカメラが装備されていることを考慮して、本発明は、内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所を前記カメラで撮像して、それらの撮像画像を処理して前記内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所の位置を画像処理手段により認識し、認識した内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所の位置に基づいて該内側のエキスパンドリングの内径を算出するようにしても良い。
【0011】
或は、本願発明は、上方に位置する計測対象点までの高さを計測する高さ計測センサを、ウエハパレットの下方を水平方向に移動するように設け、前記高さ計測センサで前記ウエハパレットの下端の高さを計測しながら、その計測対象点が前記内側のエキスパンドリングの内周縁を横切るように該高さ計測センサを水平方向に移動させ、該高さ計測センサの計測値が変化する位置を前記内側のエキスパンドリングの内周縁の位置と判定する処理を該内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所で行い、該内側のエキスパンドリングの内周縁の少なくとも3箇所の位置に基づいて該内側のエキスパンドリングの内径を算出するようにしても良い。
【0012】
この場合、高さ計測センサは、突き上げポットと一体的に水平方向に移動するように設けるようにすると良い。このようにすれば、突き上げポットを移動させる突き上げ機構を利用して高さ計測センサを水平方向に移動させることができ、高さ計測センサ専用の移動機構を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施例1におけるダイ供給装置の外観斜視図である。
図2図2は突き上げユニットとその周辺部分の外観斜視図である。
図3図3はウエハパレットの外観斜視図である。
図4図4は突き上げ動作時に突き上げポットを吸着位置まで上昇させた状態を示す一部破断拡大図である。
図5図5は突き上げ動作時に突き上げポットから突き上げピンを突出させた状態を示す一部破断拡大図である。
図6図6は光センサとウエハパレットとの位置関係を示す縦断面図である。
図7図7は実施例1の内側のエキスパンドリングの内径の計測方法を説明する図である。
図8図8は実施例2の内側のエキスパンドリングの内径の計測方法を説明する図である。
図9図9は実施例3の内側のエキスパンドリングの内径の計測方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した3つの実施例1〜3を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図1乃至図7に基づいて説明する。
まず、図1を用いてダイ供給装置11の構成を概略的に説明する。
【0016】
ダイ供給装置11は、マガジン保持部22(トレイタワー)、パレット引き出しテーブル23、XY移動機構25、突き上げ機構28(図2参照)等を備え、パレット引き出しテーブル23を部品実装機(図示せず)に差し込んだ状態にセットされる。
【0017】
ダイ供給装置11のマガジン保持部22内に上下動可能に収納されたマガジン(図示せず)には、ウエハ張設体30を装着したウエハパレット32と、トレイ部品を積載したトレイパレットとが多段に混載され、生産中にマガジンからウエハパレット32又はトレイパレットがパレット引き出しテーブル23上のピックアップ位置に引き出されるようになっている。
【0018】
図3に示すように、ウエハ張設体30は、ウエハを碁盤目状にダイシングして形成したダイ31を貼着した伸縮可能なダイシングシート34を、円形の開口部を有するダイシングフレーム33に接着等により固定し、該ダイシングフレーム33の開口部内で該ダイシングシート34を内側・外側の両エキスパンドリング44,45(図6参照)で挟み込んでエキスパンドしたものであり、該ダイシングフレーム33がパレット本体35にねじ止め等により取り付けられている。
【0019】
突き上げ機構28(図2参照)は、突き上げポット37をウエハパレット32のダイシングシート34下方の空間領域をXY方向に移動させるように構成されている。そして、ダイシングシート34のうちのピックアップ(吸着)しようとするダイ31の貼着部分をその下方から突き上げポット37の突き上げピン39(図4図5参照)で局所的に突き上げることで、当該ダイ31の貼着部分をダイシングシート34から部分的に剥離させてダイ31をピックアップしやすい状態に浮き上がらせるようにしている。
【0020】
この突き上げ機構28は、サーボモータ(図示せず)を駆動源として突き上げ機構28全体が上下動するように構成されている。ダイピックアップ動作時には、突き上げ機構28が上昇して突き上げポット37の上面がウエハパレット32のダイシングシート34にほぼ接触する所定のシート吸着位置まで上昇すると、ストッパ機構(図示せず)によって突き上げ機構28の上昇が止まり、更に上昇動作を続けると、突き上げポット37の上面から突き上げピン39(図4図5参照)が上方に突出して、ダイシングシート34のうちのピックアップしようとするダイ31の貼着部分を突き上げるようになっている。この場合、駆動源となるサーボモータの回転量を調整することで、突き上げピン39の突き上げ高さ位置(突き上げ量)を調整できるようになっている。
【0021】
図1に示すように、XY移動機構25には、吸着ヘッド41とカメラ42とが組み付けられ、該XY移動機構25によって吸着ヘッド41とカメラ42が一体的にXY方向に移動するように構成されている。吸着ヘッド41には、ダイシングシート34上のダイ31を吸着する吸着ノズル43(図4図5参照)が上下動するように設けられている。カメラ42は、ダイシングシート34上のダイ31を上方から撮像してその撮像画像を画像処理することで、吸着ノズル43で吸着しようとするダイ31の位置を認識できるようになっている。
【0022】
ダイ供給装置11の制御コンピュータ(図示せず)は、ダイシングシート34上のダイ31のうち、吸着しようとするダイ31をカメラ42で撮像して得られた画像を処理して該ダイ31の位置を認識して、該ダイ31の突き上げ位置及び吸着位置を決定し、図5に示すように、ダイシングシート34のうちのピックアップ(吸着)しようとするダイ31の貼着部分をその下方から突き上げポット37の突き上げピン39で局所的に突き上げることで、当該ダイ31の貼着部分をダイシングシート34から部分的に剥離させてダイ31をピックアップしやすい状態に浮き上がらせながら、該ダイ31を吸着ノズル43に吸着してピックアップする。
【0023】
尚、部品実装機の吸着ノズル(図示せず)でダイシングシート34上のダイ31を吸着するようにしても良い。また、マガジンからトレイパレットがパレット引き出しテーブル23上のピックアップ位置に引き出された場合は、該トレイパレットに積載されたトレイ部品が部品実装機の吸着ノズルで吸着される。
【0024】
図1に示すように、パレット引き出しテーブル23の両側のうちのマガジン保持部22に近い位置には、ウエハパレット32上の外側のエキスパンドリング45を検知対象物とする対物センサである透過型の光センサ46,47(投光素子と受光素子)が、ウエハパレット32の引き出し方向と直角の方向に対向するように設置され、図7に示すように、引き出し機構によりマガジン内のウエハパレット32をパレット引き出しテーブル23上のピックアップ位置へ引き出す際に、該ウエハパレット32上の外側のエキスパンドリング45が光センサ46,47の検知エリア(光軸)を通過し、その通過の際に光センサ46,47の光軸が外側のエキスパンドリング45で遮られて受光側の光センサ47(受光素子)の出力がオンからオフに切り替わるように構成されている。この光センサ46,47は、パレット引き出しテーブル23上にトレイパレットが引き出される場合には、該トレイパレット上のトレイ部品の載置状態の正常/異常を監視する光センサとしても用いられる。
【0025】
ダイ供給装置11の制御コンピュータ(図示せず)は、引き出し機構によりマガジン内のウエハパレット32をパレット引き出しテーブル23上のピックアップ位置へ引き出す際に、光センサ46,47の検出結果とウエハパレット32の移動量との関係に基づいて外側のエキスパンドリング45の外径Rout を計測する。具体的には、引き出し機構によりマガジン内のウエハパレット32をパレット引き出しテーブル23上のピックアップ位置へ引き出す際に、該ウエハパレット32上の外側のエキスパンドリング45が光センサ46,47の検知エリア(光軸)を通過し、その通過の際に光センサ46,47の光軸が外側のエキスパンドリング45で遮られて受光側の光センサ47の出力がオンからオフに切り替わるため、受光側の光センサ47の出力がオフに切り替わった位置から再びオンに切り替わる位置までのウエハパレット32の移動量が外側のエキスパンドリング45の外径Rout に相当する(図7参照)。このウエハパレット32の移動量は、引き出し機構を駆動するモータ等の駆動源の動作量(制御量)等により検出される。
【0026】
外側のエキスパンドリング45の外径Rout の計測値と内側・外側の両エキスパンドリング44,45の合計幅Wとに基づいて次の(1)式により内側のエキスパンドリング44の内径Rinを算出する。
Rin=Rout −W×2 ……(1)
ここで、内側・外側の両エキスパンドリング44,45の合計幅Wは、予め定数としてダイ供給装置11の制御コンピュータの記憶装置(図示せず)に記憶されている。
【0027】
尚、予め、上記(1)式により外側のエキスパンドリング45の外径Rout をパラメータとして内側のエキスパンドリング44の内径Rinを算出するテーブルを作成して、そのテーブルを制御コンピュータの記憶装置に記憶しておき、外側のエキスパンドリング45の外径Rout の計測後に、このテーブルを参照して外側のエキスパンドリング45の外径Rout の計測値に対応する内側のエキスパンドリング44の内径Rinを求めるようにしても良い。この際、必要に応じて補間補正により内側のエキスパンドリング44の内径Rinを算出すれば良い。
【0028】
以上のようにして計測した内側のエキスパンドリング44の内径Rinに基づいて突き上げポット37が該内側のエキスパンドリング44の内縁と干渉しないように該突き上げポット37の水平方向(XY方向)の移動範囲を設定する。
【0029】
以上説明した本実施例1によれば、マガジン内のウエハパレット32をピックアップ位置へ引き出す際に、該ウエハパレット32上の外側のエキスパンドリング45を光センサ46,47で検出して、その光センサ46,47の検出結果とウエハパレット32の移動量との関係に基づいて外側のエキスパンドリング45の外径を計測するようにしているため、外側のエキスパンドリング45の外径計測値と内側・外側の両エキスパンドリング44,45の合計幅とに基づいて内側のエキスパンドリング44の内径を算出することができる。これにより、ウエハパレット32に、内側のエキスパンドリング44の内径等のデータを記録した情報記録部が設けられていなくても、内側のエキスパンドリング44の内径を自動的に計測することができ、突き上げ動作時に突き上げポット37が内側のエキスパンドリング44と干渉して破損することを防止できると共に、内側のエキスパンドリング44の内径等のデータを作業者が入力する作業を行う必要がなくなり、生産性を向上できる。
【0030】
尚、本発明は、内径計測専用の光センサを新たに設けても良いが、本実施例1のように、マガジン内に、ウエハパレット32とトレイパレットとを混載している場合は、トレイパレット上のトレイ部品の載置状態の正常/異常を監視するために光センサ46,47が設置されているため、この光センサ46,47を使用して内側のエキスパンドリング44の内径を計測することができ、内径計測専用の光センサを新たに設ける必要がない。
【実施例2】
【0031】
次に、図8を参照して本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一の部分については前記実施例1と同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分を説明する。
【0032】
本実施例2では、ダイシングシート34上のダイ31を撮像するカメラ42を使用して、画像処理技術により内側のエキスパンドリング44の内径を計測するものであり、まず、内側のエキスパンドリング44の内周縁の3箇所をカメラ42で撮像して、それらの撮像画像をダイ供給装置11の制御コンピュータ(画像処理手段)で処理して、内側のエキスパンドリング44の内周縁の3箇所の位置を画像処理により認識し、認識した内側のエキスパンドリング44の内周縁の3箇所の位置に基づいて該内側のエキスパンドリング44の内径を算出するようにしている。
【0033】
図8に示すように、カメラ42の撮像画像には、内側のエキスパンドリング44とダイシングシート34とが部分的に写っているため、ダイ供給装置11の制御コンピュータで撮像画像を処理して輝度(明暗度)が変化する位置を内側のエキスパンドリング44の内周縁と認識する。例えば、1つの撮像画像の中に、内側のエキスパンドリング44の内周縁と交差する1本のシークラインを作成し、このシークライン上の輝度の変化パターンを求めて、輝度がステップ的に変化する位置(点)を内側のエキスパンドリング44の内周縁と認識し、その位置のXY座標(X1 ,Y1)を求める。このような画像処理を内側のエキスパンドリング44の内周縁の3箇所で行うことで、内側のエキスパンドリング44の内周縁の3箇所(3点)の位置のXY座標(X1 ,Y1)、(X2 ,Y2)、(X3 ,Y3)を求める。これら3点(X1 ,Y1)、(X2 ,Y2)、(X3 ,Y3)を通る円は一義的に決まるため、3点(X1 ,Y1)、(X2 ,Y2)、(X3 ,Y3)を通る円の中心座標と直径を算出し、この円を内側のエキスパンドリング44の内周縁と認識して、その内径(円の直径)を求める。このような画像処理による内側のエキスパンドリング44の内径の計測は、ダイ供給装置11の制御コンピュータによって自動的に行われる。
【0034】
尚、内側のエキスパンドリング44の内周縁と交差するシークラインの作成は、ダイ供給装置11の制御コンピュータによって自動的に行っても良いし、作業者が制御コンピュータの表示装置(図示せず)に表示された撮像画像を見ながら手動操作でシークラインの位置を指定するようにしても良い。また、内側のエキスパンドリング44の内周縁の4箇所以上の点を画像処理により認識し、認識した4箇所以上の点に最も近接する円の中心座標と直径を算出し、この円を内側のエキスパンドリング44の内周縁と認識して、その内径(円の直径)を求めるようにしても良い。
【0035】
以上説明した本実施例2でも、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0036】
次に、図9を参照して本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一の部分については前記実施例1と同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分を説明する。
【0037】
本実施例3では、上方に位置する計測対象点までの高さを計測するレーザセンサ等の非接触式の高さ計測センサ51を突き上げ機構28(又は突き上げポット37)に設け、高さ計測センサ51が突き上げポット37と一体的に水平方向(XY方向)に移動するように構成している。
【0038】
内側のエキスパンドリング44の内径を計測する場合は、高さ計測センサ51でウエハパレット32の下端の高さを計測しながら、その計測対象点が内側のエキスパンドリング44の内周縁を横切るように該高さ計測センサ51を水平方向に移動させ、該高さ計測センサ51の計測値がステップ的に変化する位置を内側のエキスパンドリング44の内周縁の位置と判定する処理を該内側のエキスパンドリング44の内周縁の少なくとも3箇所で行い、該内側のエキスパンドリング44の内周縁の少なくとも3箇所の位置に基づいて、前記実施例2と同様の手法で、該内側のエキスパンドリング44の内径を算出する。尚、高さ計測センサ51の水平方向の位置(XY座標)の認識は、突き上げポット37(突き上げピン39)の水平方向の位置を認識する機能を用いて行われる。
【0039】
以上説明した本実施例3でも、前記実施例1とほぼ同様の効果を得ることができる。
尚、本実施例3では、高さ計測センサ51を突き上げポット37と一体的に水平方向に移動するように構成しているため、突き上げポット37を移動させる突き上げ機構28を利用して高さ計測センサ51を水平方向に移動させることができ、高さ計測センサ51専用の移動機構を設ける必要がない。但し、本発明は、高さ計測センサ51専用の移動機構を設ける構成としても良い。
【0040】
また、ウエハパレット32上の外側のエキスパンドリング45を検出する対物センサは、光センサに限定されず、超音波センサ、赤外線センサ等であっても良い。
【0041】
その他、本発明は、上記各実施例1〜3に限定されず、例えば、ダイ供給装置11の構成やウエハパレット32の構成を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
11…ダイ供給装置、22…マガジン保持部、23…パレット引き出しテーブル、25…XY移動機構、28…突き上げ機構、30…ウエハ張設体、31…ダイ、32…ウエハパレット、33…ダイシングフレーム、34…ダイシングシート、37…突き上げポット、39…突き上げピン、41…吸着ヘッド、42…カメラ、43…吸着ノズル、44…内側のエキスパンドリング、45…外側のエキスパンドリング、46,47…光センサ(対物センサ)、51…高さ計測センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9