(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984199
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20160823BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20160823BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20160823BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L23/30 F
H01L23/14 M
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-282673(P2011-282673)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-135010(P2013-135010A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(72)【発明者】
【氏名】今井 貞人
【審査官】
金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−108744(JP,A)
【文献】
特開2011−151248(JP,A)
【文献】
特開2011−192930(JP,A)
【文献】
特開2009−081196(JP,A)
【文献】
特開2011−216588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割ラインにより形成された輪郭線を有する金属基板と、
該金属基板の前記輪郭線の内側の表面上に形成された白色系のセラミックインクと、
前記金属基板の表面が露出する基板表面部分と、
前記セラミックインク上に配置された導電パターンと、
前記セラミックインク上にライン状に複数実装され且つワイヤーボンドにより前記導電パターンに接続されると共に互いに接続された発光素子と、
前記複数の発光素子を囲うように前記セラミックインク上に固着されたリング状の封止枠と、
前記発光素子を封止する封止樹脂と、
を備え、
前記金属基板は前記基板表面部分に分割ラインからその内側に向かって形成された半円形のネジ止め部を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記セラミックインクは前記発光素子を実装する位置に凹部を有し、該凹部の深さが前記発光素子のジャンクション面が前記セラミックインクの表面上に出る深さに設定されている請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光素子はそのジャンクション面が前記セラミックインクの表面上に出る埋め込み丈で前記セラミックインクに埋め込まれた状態に固着実装されている請求項1記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明等に使用する発光ダイオード等を用いた発光装置に関するものであり、特に、金属基板を用いたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発光装置では、絶縁性樹脂基板上に発光素子を実装したものが多かった。近年、照明等に用いるため印加する電流を高めてより明るく発光させるものが製品化されており、電流の増加と共に発光素子が発する熱も増加し、その熱を放熱させることが必要となっている。そこで、発光素子を実装する基板に放熱性に優れたアルミ板を使用し、その表面にアルミナ層をコーティングした複合基板を用いることが知られている(例えば、特許文献1、第3図、第4図参照)。
【0003】
また、絶縁性と光の取り出し効率を高めるため、セラミックインクを基板上に設けることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−9982号公報
【特許文献2】特開2011−151248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の発光装置では、アルミナ層やセラミックインクを基板表面の全面に設けたものとなっていた。このため、大型基板に複数の発光装置を形成し、それを分割することで個々の発光装置に分離して形成する場合、スクライブやダイシング等の工程でアルミナ層やセラミックインクにクラックが入ることがあった。このようにアルミナ層やセラミックインクにクラックが生じると、基板上に形成されたパターンや発光素子を接続するワイヤーが断線したり、絶縁耐圧が低下するという問題が生じる。
【0006】
このため、特許文献2に記載されているように、金属基板の表面に樹脂製の絶縁層を形成し、その上に導電パターンやセラミックインクを設けることが必要とされていた。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決し、セラミックインクからなる絶縁層のクラックを防ぎ、樹脂製の絶縁層を設けることなく、断線や絶縁耐圧の低下を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光装置は、分割ラインにより形成された輪郭線を有する金属基板と、該金属基板の前記輪郭線の内側の表面上に形成された白色系のセラミックイン
クと、前記金属基板の表面が露出する基板表面部分と、前記
セラミックインク上に配置された導電パターンと、前記
セラミックインク上にライン状に複数実装され且つワイヤーボンドにより前記導電パターンに接続されると共に互いに接続された発光素子と、前記複数の発光素子を囲うように前記
セラミックインク上に固着されたリング状の封止枠と、前記発光素子を封止する封止樹脂と、を備え、前記金属基板
は前記基板表面部分に
分割ラインからその内側に向かって形成された半円形のネジ止め部を有している。
【0009】
また、この発光装置における前記
セラミックインクは前記発光素子を実装する位置に凹部を有し、該凹部の深さが前記発光素子のジャンクション面が前記
セラミックインクの表面上に出る深さに設定されている。また、前記発光素子はそのジャンクション面が前記
セラミックインクの表面上に出る埋め込み丈で前記絶縁層に埋め込まれた状態に固着実装されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光装置では、セラミックインクからなる絶縁層を金属基板の外形となる分割ラインより内側に形成している。これにより、大型基板上に複数個形成された発光装置を分離するときに、絶縁層にクラックが入ることを防ぐことができる。また、分割ラインと絶縁層との間にある絶縁層が形成されていない部分にネジ止め部を設けているので、ネジ止め時にこのネジ止め部にネジの頭部等から絶縁層に力が直接加わってクラックが入ることを防ぐことができる。このため、樹脂製の絶縁層を設けることなく、絶縁耐圧の低下を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明における発光装置は、上記のように絶縁層にクラックが入ることを防ぐことができるので、絶縁層の上に導電パターンを形成しても断線することがなく、信頼性を高めることができる。
【0012】
また、本発明における発光装置では、絶縁層にクラックが入ることを防ぐことができるので、導電パターンが形成されている絶縁層の上に発光素子を実装したり、絶縁層に発光素子を埋め込んで実装することで、確実に取り付けることができる。特に、絶縁層に発光素子を埋め込むと、発光素子をボンディングペースト等で接着する必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例に係る発光装置を示す正面図である。
【
図3】
図2に示す発光装置の一部変更例を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す発光装置を同時に複数製造する際に用いる大型基板を示す正面図である。
【
図5】
図4に示す大型基板に絶縁層を形成した状態を示す正面図である。
【
図6】
図5に示す大型基板の絶縁層上に導電パターンを形成し、発光素子を実装した状態を示す正面図である。
【
図7】
図6に示す大型基板に封止枠と封止樹脂を設け、スクライブ等によって分割ラインを形成した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び
図2は本発明の一実施例に係る発光装置を示す正面図及びA−A断面図である。1は金属基板であり、本実施例ではアルミ板を用いている。この金属基板1は、後述する大型基板を分割することにより形成されたものであり、その外形の輪郭線1aが分割ラインにより形成されている。
【0015】
2は光を反射する白色系のセラミックインクからなる絶縁層である。この絶縁層2は、金属基板1の輪郭線1aより内側に形成されている。これにより、絶縁層2の外側には、絶縁層2が形成されずに金属基板1の表面が露出する基板表面部分1cが形成される。本実施例では、この絶縁層2が形成されていない基板表面部分1cに、金属基板1の側面側から食い込むような半円形の凹部からなるネジ止め部1bが設けられている。なお、本実施例では、セラミックインクとして、無機酸化物の粉末材料を含有し、約160℃で硬化する粘性液体からなるものを使用している。また、絶縁層2の厚みは、厚くすることで絶縁耐圧を高めることができるが、10〜30μmの範囲で使用環境に応じて設定される。
【0016】
3,4は絶縁層2上に印刷、蒸着等によって形成された導電パターンである。この導電パターン3は、絶縁層2の中央寄りに所定の間隔をあけて相対するように配置された直線状又は円弧状をなすパターンからなる。また、導電パターン4は、電極端子を構成するものであり、絶縁層2の四隅に配置され、それぞれ近接する導電パターン3に接続されている。
【0017】
5は絶縁層2上に複数実装された発光ダイオード等の発光素子である。この発光素子5は、導電パターン3の間にライン状に実装されてワイヤーボンド等によって導電パターン3に接続されると共に互いに接続されている。
【0018】
6はリング状の封止枠であり、発光素子5を囲うように絶縁層2上に固着されている。この封止枠6の高さは、発光素子5よりもわずかに高くなるように設定されている。なお、この封止枠6は、導電パターン4をスルーホール等で裏面に回し、金属基板1の全面を封止する場合には設けなくても良い。
【0019】
7はエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等からなる透光性を有する封止樹脂である。この封止樹脂7は封止枠6内に注入されて発光素子5を封止している。
【0020】
上記構成からなる発光装置の場合、金属基板1の輪郭線1aよりも内側に絶縁層2が設けられているため、大型基板を分割して個々の発光装置とする際に、絶縁層2が分断されてしまったり分割の応力が加わることがない。これにより、分割時に絶縁層2にクラックが入る危険性がなくなる。
【0021】
また、金属基板1の輪郭線1aと絶縁層2との間には絶縁層2が形成されていない基板表面部分1cが設けられており、ここにネジ止め部1bを設けているので、ネジ止め部1bに係合するネジからの力が直接絶縁層2に加わることがない。これにより、ネジ止め部1b周辺においても絶縁層2が割れることがなくなる。
【0022】
図3は
図2に示す発光装置の一部変更例を示す断面図である。この発光装置では、絶縁層2上の発光素子5を実装する位置に凹部2aを設け、その中に発光素子5を実装するか、又は、硬化前の絶縁層2に発光素子5を埋め込むことで固着して実装している。
【0023】
凹部2aを形成する場合又は発光素子5を埋め込む場合、発光素子5のジャンクション面(発光面)が絶縁層2の表面上に出るように凹部2aの深さ又は発光素子5を埋め込む丈を設定している。
【0024】
上記のように発光素子5を絶縁層2の凹部2a内に実装したり、絶縁層2に埋め込んで実装することにより、絶縁層2の表面に発光素子5の発光面が近づくことになり、光の反射効率を高めることができる。また、発光素子5を絶縁層2に埋め込んで実装する場合には、発光素子5をボンディングペースト等の接着剤で固着する必要がなくなる。また、前述したように、絶縁層2にクラックが入って割れることがないため、発光素子5を絶縁層2に埋め込むだけで確実に固定することができる。
【0025】
次に、
図4乃至
図7に基づいて上記発光装置の製造工程を説明する。
図4に示すように、本実施例においては、複数の発光装置の形成が可能なアルミ板等からなる大型基板10を使用している。この大型基板10には、個々の発光装置が形成される領域に対応するネジ止め部1bが、円形又は半円形の貫通孔として形成されている。
【0026】
この大型基板10の表面には、
図5に示すように、個々の発光装置が形成される領域の内部にセラミックインクを塗布、印刷する等により絶縁層2を形成する。この絶縁層2は、それぞれ所定の間隔をあけて配置されると共にネジ止め部1bの周囲を避けて形成される。このため、各絶縁層2の周囲には大型基板10の表面が露出する基板表面部分1cが設けられる。ここで約160℃の温度で焼成して絶縁層2を硬化させるか又は、発光素子5を埋め込んだ後に焼成して硬化させる。
【0027】
上記のように絶縁層2を形成した後、導電パターン3,4を蒸着、印刷等によって形成する。次いで、
図6に示すように、複数の発光素子5を絶縁層2の上に実装して導電パターン3や隣接する発光素子同士をワイヤーボンドすることで接続するか又は、前工程にて絶縁層2に埋め込まれた複数の発光素子5を導電パターン3や隣接する発光素子同士をワイヤーボンドすることで接続する。また、導電パターン3と導電パターン4とをワイヤーボンドする。
【0028】
その後、
図7に示すように、封止枠6で発光素子5を囲み、その中に封止樹脂7を充填して封止する。この段階で個々の発光装置は完成しており、ここで大型基板10の表面に縦横に分割ライン10a,10bをスクライブ等で形成する。この分割ライン10a,10bは、大型基板10上の絶縁層2が形成されていない基板表面部分1cに形成されており、ダイシング等によってこの分割ライン10a,10bから個々の発光装置に分割する。
【0029】
上記のように分割、分離された発光装置では、絶縁層2が分割されることがないので、分割時に絶縁層2にクラックが入る危険性が低くなる。これによって絶縁層2の上に形成されている導電パターン3,4や発光素子5が断線したり外れることがなくなる。
【符号の説明】
【0030】
1 金属基板
1a 輪郭線
1b ネジ止め部
1c 基板表面部分
2 絶縁層
2a 凹部
3,4 導電パターン
5 発光素子
6 封止枠
7 封止樹脂
10 大型基板
10a,10b 分割ライン