(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まず第1実施形態について説明する。
図1から
図3を参照すると、
図1には本発明の第1実施形態に係る飛翔体の全体構成図、
図2には
図1のA−A線に沿う断面図、
図3には拘束機構の拡大断面図がそれぞれ示されており、以下これらの図に基づき説明する。
【0012】
図1に示す飛翔体1は、尖頭形状の頭部2と円筒形状の胴体4とからなり、胴体4の後部外周には4つの後翼6が、前部外周には2つの前翼8がそれぞれ設けられている。
当該飛翔体1の胴体4は、前部に物資又は小型爆弾等の搭載物10を搭載する搭載部12が形成され、当該搭載部12より後側にはロケットモータが搭載されたモータ部14が形成されている。
【0013】
搭載部12は、モータ部14側の基部12aを除き、飛翔体1の軸方向を分割面として当該軸方向と垂直方向に2分割された一対の外筒16(外筒部)により外殻が構成されている。
上記各前翼8は各外筒16の前部に設けられており、詳しくは、
図2(a)(b)に示すように、外筒16の内面側に設けられたアクチュエータ18から外筒16を貫通して延びる回転軸20に連結されている。当該前翼8は、飛翔体1に搭載された図示しない制御装置の制御の下、アクチュエータ18の作動により、翼面を
図2(a)に示す飛翔体1の軸方向と平行な状態から、
図2(b)に示す飛翔体1の軸方向と垂直な方向まで回転可能である。このように、当該前翼8の角度を変更することで飛翔体1の操舵が行われる。
【0014】
次に
図3(a)(b)に示すように、頭部2には外筒16の前端を拘束し、所定の時期に当該拘束を解除可能な拘束機構22(拘束手段)が設けられている。当該拘束機構22は、
図3(a)に示すように、可動式の係合片22aが、外筒16の前端にて胴体内側及び前方に向けて突出した爪部16aと係合することで外筒16を拘束するものである。なお、外筒16の後端については、搭載部12の基部12aに嵌合しているものとする。そして、
図3(b)に示すように、当該拘束機構22の係合片22aと爪部16aとの係合が外れると、外筒16の拘束が解除され、外筒16は胴体4の外側に自由に移動可能となる。
【0015】
より具体的な拘束機構22の構成は、
図4に示されている。当該
図4(a)(b)に示すように、拘束機構22における係合片22aは平面視において一部切り欠かれた円盤状をなしており、当該係合片22aは拘束機構22が有する図示しないアクチュエータにより中心軸周りに回転可能である。当該拘束機構22は、外筒拘束時においては
図4(a)に示すように、係合片22aの切り欠かれていない側が、頭部2と外筒16とに跨るように配置されることで、上記
図3(a)のように外筒16の爪部16aと係合する。一方、拘束解除時においては
図4(b)に示すように、係合片22aを中心軸周りに回転させ、切り欠き面を頭部2と外筒16との境界面と一致させることで、上記
図3(b)のように外筒16の爪部16aとの係合を外して、拘束を解除する。
【0016】
なお、拘束機構22の構成はこれに限られるものではなく、例えば
図5(a)(b)に示す拘束機構の変形例のように、係合片22a’が前後方向に摺動可能な棒状をなした構成としても構わない。当該変形例の拘束機構22’は、外筒拘束時においては
図5(a)に示すように、係合片22a’の先端部分が、頭部2と外筒16とに跨るように配置されることで、上記
図3(a)に示すように外筒16の爪部16aと係合する。一方、拘束解除時においては
図5(b)に示すように、拘束機構22’が有するソレノイド22b’の作用により係合片22a’が前方に摺動することで、上記
図3(b)のように外筒16の爪部16aとの係合を外して、拘束を解除する。
【0017】
このように構成された第1実施形態における飛翔体1は、搭載物10を所定の領域に散布するため、所定の時期に外筒16を分離して搭載部12の開頭を行う。以下、当該飛翔体1における搭載部12の開頭動作について説明する。
図6には、第1実施形態における飛翔体の搭載部の開頭動作図が示されており、以下同図に基づき説明する。なお、
図6は説明の簡略化のため搭載部12部分を断面図で示している。
【0018】
図6(a)は、上記
図1の状態と同様で、飛翔体1開頭前の状態である。この状態では、前翼8は飛翔体1の操舵に必要な範囲で回転するのみで、大きく回転することはない。
搭載物10を散布する所定の時期に到達した際には、制御装置の制御の下、上述したようにして拘束機構22を解除した後、
図6(b)に示すように、前翼8の翼面が飛翔体1の軸方向に対して垂直となるまで回転させる。前翼8が軸方向に対して、即ち飛翔方向に対して、垂直をなすことで、当該翼面は飛翔体1の飛翔に伴う空気抵抗(空気力)を大きく受けることとなる。
【0019】
そして
図6(c)に示すように、各外筒16は、前部に設けられた前翼8が受ける空気抵抗により(白抜き矢印)、嵌合されている後端を支点として外側に回転して分離し始める。胴体4より外側に分離し始めた外筒16は、前翼8に加えて外筒16の内面においても空気抵抗を受け、さらに胴体4から分離していくこととなる。外筒16は一定以上回転すると後端の嵌合も外れて、外筒16が胴体4から完全に分離することとなる。その後に、飛翔体1の搭載部12から搭載物10が散布される。
【0020】
以上のようにして、本実施形態における飛翔体1においては、拘束機構22による拘束解除後、操舵に用いる前翼8を垂直方向にまで回転させることで、外筒16の前部に空気力を与え、当該空気力により外筒16を分離させることができる。
このように、空気力により外筒16を分離できることから、特に火工品や圧縮スプリング等の大がかりな装置を設けることなく、操舵に用いる前翼8を利用して大きな追加部品等なく、容易な構成で安定的に搭載部12の開頭を行うことができる。特に本実施形態では拘束機構22の解除においても火工品を用いないことから開頭時における飛翔体1や搭載物10への影響も低減することができる。
【0021】
次に第2実施形態について説明する。
図7、8を参照すると、
図7には本発明の第2実施形態に係る飛翔体の全体構成図、
図8には当該飛翔体の正面図がそれぞれ示されており、以下これらの図に基づき説明する。
図7に示す飛翔体30は、尖頭形状の頭部32と円筒形状の胴体34とからなり、胴体34の後部外周に4つの後翼36が設けられている。当該第2実施形態の飛翔体30は、後翼36により操舵するものとする。
【0022】
当該飛翔体30の胴体34は、前部に物資又は小型爆弾等の搭載物40を搭載する搭載部42が形成され、当該搭載部42より後側にはロケットモータが搭載されたモータ部44が形成されている。
搭載部42は、モータ部44側の一部分を除き、飛翔体30の軸方向を分割面とし当該軸方向と垂直方向に2分割された一対の外筒46(外筒部)により外殻が構成されている。当該外筒46の後端は、搭載部42の基部42aに嵌合しており、外筒46の前端については、上記第1実施形態と同様の拘束機構により拘束されているものとし、詳しい説明は省略する。
【0023】
飛翔体30の頭部32には外筒46と対応して2箇所に開口機構50(空気力付与手段)が設けられている。詳しくは、開口機構50は、
図8(a)に示すように頭部32の外周の一側及び他側に可動式で略半円形状のシャッタ52(開閉手段)が設けられている。当該シャッタ52は
図8(b)に示すように、頭部32内に収納されることで、当該頭部32に形成された開口部54を開放するものである。当該開口部54は尖頭形状をなしている頭部32の外周にて開口していることから、飛翔方向に対して開口することとなる。
【0024】
具体的な開口機構50の構成は、
図9に示されている。当該
図9(a)(b)に示すように、頭部32内部には、開口部54から外筒46前部の内面までに亘って連通する空気導入通路56が形成されている。シャッタ52下部の内面にはラック部52aが形成されており、頭部32内部には当該ラック部52aと噛合する歯車58が設けられている。このように構成された開口機構50は、歯車58を開口機構50が有する図示しないアクチュエータにより回転することで、
図9(a)に示したシャッタ52により開口部54を閉塞した状態から、
図9(b)に示すようにシャッタ52を頭部32内に収納し、開口部54を開放することが可能である。
【0025】
なお、開口機構50の構成はこれに限られるものではなく、例えば
図10(a)(b)に示す開口機構の変形例のように、シャッタ52’下端に頭部32内部へと摺動可能な棒状の摺動部60’を設けた構成としても構わない。当該変形例における開口機構50’は、摺動部60’を開口機構50’が有するソレノイド62’の作用により頭部32内部へと摺動させることで、
図10(a)に示したシャッタ52’により開口部54を閉塞した状態から、
図10(b)に示すようにシャッタ52’を頭部32内に収納し、開口部54を開放することが可能である。
【0026】
このように構成された第2実施形態における飛翔体30においても、搭載物40を所定の領域に散布するため、所定の時期に外筒46を分離して搭載部42の開頭を行う。以下、当該飛翔体30における搭載部42の開頭動作について説明する。
図11には、第2実施形態における飛翔体の搭載部の開頭動作図が示されており、以下同図に基づき説明する。なお、
図11は説明の簡略化のため搭載部42部分を断面図で示している。
【0027】
図11(a)は、上記
図7の状態と同様で、飛翔体30開頭前の状態である。この状態では開口機構50のシャッタ52は閉塞状態にあり空気導入通路56内に空気が導入されることはない。
搭載物40を散布する所定の時期に到達した際には、上記第1実施形態と同様に拘束機構を解除した後、
図11(b)に示すように、開口機構50のシャッタ52を開放する。このようにシャッタ52が開放されると、飛翔体30の飛翔に伴うラム圧により、飛翔方向に対して開口している開口部54に空気が導入され(白抜き矢印)、空気導入通路56を通って外筒46前部内面へと送られる。
【0028】
そして
図11(c)に示すように、外筒46は前部内面から空気力に押されることで(白抜き矢印)、嵌合されている後端を支点として外側に回転して分離し始める。胴体34より外側に分離し始めた外筒46は、外筒46の内面において空気抵抗を受け、さらに胴体34から分離していくこととなる。外筒46は一定以上回転すると後端の嵌合も外れて、外筒46が胴体34から完全に分離することとなる。その後に、飛翔体30の搭載部42から搭載物40が散布される。
【0029】
以上のようにして、本実施形態における飛翔体30においては、拘束機構による拘束解除後、シャッタ52を開放してラム圧により空気を開口部54から空気導入通路56内に導入し、外筒46前部の内面から空気力を与えることで外筒46を分離させることができる。
このように、空気力により外筒46を分離できることから、特に火工品や圧縮スプリング等の大がかりな装置を設けることなく、シャッタ52で開口部54を開放するだけの、比較的容易な構成で安定的に外筒46を分離して開頭を行うことができる。特に本実施形態においても外筒46の分離及び拘束機構の解除においても火工品を用いないことから飛翔体30や搭載物40への影響も低減することができる。
【0030】
以上で本発明に係る飛翔体の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記各実施形態における飛翔体1はロケットモータであるが、飛翔体はこれに限られるものではない。
また、上記第1実施形態では前翼8により、上記第2実施形態では後翼36により操舵するものとしているが、操舵手段はこれに限られるものではない。例えば上記第1実施形態において、後翼で操舵を行うものであっても構わない。
【0031】
また、上記各実施形態では、搭載部12、42において外筒16、46を2分割にしているが、2分割以上に分割した外筒であればよく、当該分割した数に応じて前翼や開口機構のような空気力付与手段及び拘束機構を設ければよい。
また、上記第1実施形態では、開頭時において、前翼8を回転させるアクチュエータ18が外筒16と一体となって分離される構成であるが、開頭時に前翼を回転させるためのアクチュエータが胴体内に残るような構成としても構わない。
【0032】
また、上記第1実施形態では、開頭時に、空気抵抗を最大限受けるために前翼8を飛翔方向に対して垂直になるまで回転させているが、必ずしも垂直になるまで回転させる必要はなく、外筒を分離するのに十分な空気抵抗を受けることができる角度にまで回転させればよい。