(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)の条件を満たす剤において、更に、全高級アルコールに対するC20以上の高級アルコールの質量比が0.005〜0.9である請求項1又は請求項2に記載のエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願が開示する発明の実施形態を、その最良の実施形態を含めて説明する。
【0022】
まず、用語の説明をする。本明細書において「毛髪」とは、特に限定されないが、好ましくは頭に生えた状態の毛髪をいう。また、毛髪は、好ましくはヒトの毛髪である。
【0023】
本明細書において「酸化染毛剤組成物」とは、酸化染料を配合する染毛剤組成物を意味する。噴射剤とともにエアゾール容器に収容し、泡状に吐出して使用するので、エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物である。当該エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は複数剤式である。2剤式としても良いし、3剤式以上としても良い。好ましくは、2剤式である。
【0024】
説明の便宜上、本願が開示する発明の説明において、エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物を構成する各剤は噴射剤を含有しないものとして記載する。なお、後述する実施例では、噴射剤を含有しない当該各剤は「原液」と呼び、噴射剤を充填してエアゾール容器に封入される。噴射剤及びエアゾール容器については後述する。
【0025】
本明細書においてエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物の「混合物」とは、エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物を構成する複数剤の混合物を指す。本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は複数剤が使用時にエアゾール容器から吐出されるため、当該混合物は泡状である場合が多い。しかし、毛髪に適用した後の、破泡した混合物を指す場合もある。
【0026】
複数剤式のエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は、アルカリ剤を配合する第1剤と酸化剤を配合する第2剤とを含む複数剤を使用直前に混合して染毛処理を行う。本願が開示する発明において当該複数剤の混合方法と毛髪への適用方法は特に限定されないが、好ましくは、
(1)複数剤をエアゾール容器から別々に吐出させた後、毛髪に適用する前に混合する、
(2)複数剤をエアゾール容器から別々に吐出させた後、毛髪に適用する際に混合する、
(3)複数剤をエアゾール容器から別々に吐出させた後、毛髪に適用後に毛髪上で混合する、
(4)エアゾール容器内やヘッド内において複数剤を混合するようにし、当該混合物をエアゾール容器から吐出させた後、毛髪に適用する、
のいずれかである。
【0027】
吐出させた各剤又は混合物は、いったん手やブラシに取った後、あるいは直接、毛髪に適用することが好ましい。ここで手を用いる場合は、手袋を装着することが好ましい。泡を適用する範囲は、毛髪全体であってもよく、特定の部分のみであってもよい。
【0028】
以上の通り、本願はエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物を用いる染毛方法をも開示する。
【0029】
粘度は25℃においてB型粘度計を用い、2号ローターで1分間、12rpm/minの測定条件で求めることができる。B型粘度計の具体例としては、例えばBL型粘度計VISCOMETER(東機産業株式会社製)を挙げることができる。
【0030】
〔エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物〕
本願は、複数剤を使用時に吐出して混合するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物であって、下記(A)の条件を満たす剤を構成に含むエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物を開示する。
【0031】
(A)乳化物であり、非イオン性界面活性剤、C20以上の高級アルコール、及びC18以下の高級アルコールを配合し、かつ、前記非イオン性界面活性剤と高級アルコールとの質量比が、非イオン性界面活性剤/高級アルコール=1.5〜50である。
【0032】
当該(A)条件の説明に先立って、エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物の基本的な構成を説明する。
【0033】
−第1剤−
本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は、アルカリ剤を配合する第1剤を構成に含む。
【0034】
第1剤におけるアルカリ剤の配合量は0.5〜20質量%であることが好ましい。また、第1剤のpHは8〜12であることが好ましい。
【0035】
第1剤の剤型は、エアゾール容器から泡状に吐出できる限り特に限定されない。乳化物、可溶化物等を例示できる。好ましくは、乳化物である。
【0036】
第1剤はアルカリ剤を配合する。アルカリ剤として、例えば、アンモニア、アンモニウム塩、アルカノールアミン、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0037】
第1剤は酸化染料を配合する。更に、直接染料を配合しても良い。酸化染料の配合量は0.01〜7質量%が好ましい。
【0038】
酸化染料は、酸化重合によって発色可能な化合物である。酸化染料は特に限定されないが、例えば、染料中間体、カップラー、メラニン前駆物質等が挙げられる。
【0039】
より具体的には、例えば、酸化染料として、フェニレンジアミン及びその誘導体、フェノール誘導体、アミノフェノール及びその誘導体、ジフェニルアミン及びその誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラゾール誘導体、ピロリジン誘導体、トルエン誘導体、インドール誘導体、ピロール誘導体、並びにイミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0040】
更に具体的には、例えば、染料中間体としては、フェニレンジアミン類(但し、メタフェニレンジアミンを除く。)、アミノフェノール類(但し、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール及びパラメチルアミノフェノールを除く。)、トルイレンジアミン類(但し、トルエン−3,4−ジアミン及びトルエン−2,4−ジアミンを除く。)、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N−フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類(但し、2,6−ジアミノピリジンを除く)等が挙げられる。
【0041】
カップラーとしては、ピロガロール、レゾルシン、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、パラメチルアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール等が挙げられる。
【0042】
酸化染料は、酸化重合によって発色可能な化合物の塩を含む概念である。例えば、上記した各化合物の酸付加塩等が挙げられる。好ましくは、有機酸の付加塩、無機酸の付加塩等が挙げられる。
【0043】
これら酸化染料は単独で配合しても良く、組み合わせて配合しても良い。
【0044】
直接染料として、例えば、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、分散染料等がある。これら直接染料は単独で配合しても良く、組み合わせて配合しても良い。
【0045】
上記酸性染料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、かっ色201号、黒色401号等を例示できる。
【0046】
上記塩基性染料としては、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Blue 99、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等を例示できる。
【0047】
上記天然染料としては、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素等を例示できる。
【0048】
上記ニトロ染料としては、4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等を例示できる。
【0049】
上記分散染料としては、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等を例示できる。
【0050】
−第2剤−
本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は、酸化剤を配合する第2剤を構成に含む。
【0051】
第2剤における酸化剤の配合量は0.1〜15質量%であることが好ましい。また、第2剤のpHは1〜5であることが好ましい。
【0052】
第2剤の剤型は、好ましくは乳化物、可溶化物である。より好ましくは乳化物である。
【0053】
第2剤は酸化剤を配合する。酸化剤として、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤は単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの酸化剤の中でも、メラニンの分解に優れることから、好ましくは過酸化水素である。
【0054】
−各剤における他の成分−
上記第1剤及び第2剤を含む複数剤を、本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は含む。複数剤は上述した成分の他、任意の成分を配合しても良い。例えば、水、ヒドロキシエチルセルロースを含む水溶性ポリマー、高級アルコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールを含む溶剤、界面活性剤、脂肪酸、増粘剤、塩基性アミノ酸を除くアミノ酸類、油脂、ロウ類、シリコーン類、流動パラフィンを含む炭化水素、ソルビトール、マルトース等の糖類、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐成分、EDTA−2Na、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等のキレート成分、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、フェノキシエタノール、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定成分、pH調整成分、亜硫酸Na等の酸化防止剤、植物又は生薬抽出物、アスコルビン酸類を含むビタミン類、香料等から選ばれる1種以上を配合しても良い。また、例えば、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0055】
〔複数剤の少なくとも1つが満たすべき条件〕
本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は複数剤式で構成される。その複数剤のうちの1つが、以下の(A)条件を満たす必要がある。以下の(A)条件を満たすのは第1剤又は第2剤が好ましい。より好ましくは、以下の(A)条件を第1剤が満たす。また、2以上の複数剤が以下の(A)条件を満たしても良く、第1剤及び第2剤が以下の(A)条件を満たしても良い。
【0056】
本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は、複数剤のうちの少なくとも1つが以下の(A)条件を満たす。以下の(A)条件を満たす当該剤を、説明の便宜上、(A)剤と称する。
【0057】
(A)乳化物であり、非イオン性界面活性剤、C20以上の高級アルコール、及びC18以下の高級アルコールを配合し、かつ、前記非イオン性界面活性剤と高級アルコールとの質量比が、非イオン性界面活性剤/高級アルコール=1.5〜50である。
【0058】
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシアルキレン付加型、糖付加型、グリセリン付加型、アルカノールアミド付加型がある。これらの1種又は2種以上を使用してよい。以下の具体例においても同様である。
【0059】
ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型を例示できる。糖付加型非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリグルコシド等の糖エーテル類、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の糖エステル類、脂肪酸グリコールアミド等の糖アミド類を例示できる。グリセリン付加型非イオン性界面活性剤としては、アルキルグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル等を例示できる。アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸モノアルカノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド等を例示できる。
【0060】
エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例として、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEミリスチルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEポリオキシプロピレン(以下、POPともいう)セチルエーテル等を例示できる。
【0061】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例として、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等を例示できる。
【0062】
非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンを含む場合、その重合数は、2〜50であることが好ましい。
【0063】
(A)剤は非イオン性界面活性剤を配合する。非イオン性界面活性剤の配合量は0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0064】
非イオン性界面活性剤として、起泡性向上の観点から、(A)剤がC14以下のPOEアルキルエーテルを配合することが好ましい。具体的には、POEラウリルエーテル、POEミリスチルエーテルを例示できる。当該ポリオキシエチレンの重合数は、2〜30であることが好ましい。C14以下のアルキル基は飽和であることが好ましく、また、直鎖型であることが好ましい。
【0065】
上記C14以下のPOEアルキルエーテルと、C16以上のPOEアルキルエーテルを併用することがより好ましい。C16以上のPOEアルキルエーテルとして、POEセチルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEベヘニルエーテルを例示できる。当該ポリオキシエチレンの重合数は、2〜50であることが好ましい。C16以上のアルキル基は飽和であることが好ましく、また、直鎖型であることが好ましい。
【0066】
(A)剤における、非イオン性界面活性剤の質量比「C16以上のPOEアルキルエーテル/C14以下のPOEアルキルエーテル」=0.1〜7とすることが好ましい。より好ましくは、0.5〜3である。これらの比率の範囲内であれば、起泡性がより向上する。
【0067】
(A)剤は、起泡性向上の観点から、カチオン性界面活性剤であるC16以下のアルキルトリメチルアンモニウム及びその塩を配合してもよい。具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム及びこれらの塩を例示できる。これらの1種又は2種以上を使用できる。また、カチオン性界面活性剤におけるC16以下のアルキル基は飽和であることが好ましく、また、直鎖型であることが好ましい。
【0068】
C16以下のアルキルトリメチルアンモニウム及びその塩の配合量は0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましい。
【0069】
(A)剤は、高級アルコールを配合する。高級アルコールとは、炭素数6以上の1価の高級アルコールを言う。当該高級アルコールは直鎖型及び分岐型の高級アルコールを含む概念である。また、飽和及び不飽和の高級アルコールを含む概念である。これらの1種又は2種以上を使用してよい。以下の具体例においても同様である。
【0070】
(A)剤における高級アルコールの配合量は、0.5質量%以上が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、0.5〜3質量%が更に好ましい。これらの好ましい配合量の範囲内である場合、染毛力の向上、泡質の向上という利点が得られる。
【0071】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノール等を例示できる。
【0072】
(A)剤は、C20以上の高級アルコールとC18以下の高級アルコールを併用する。
【0073】
C20以上の高級アルコールとして、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノールを例示できる。好ましくは、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールである。
【0074】
(A)剤はC20以上の高級アルコールを配合する。当該C20以上の高級アルコールの配合量は0.1〜3質量%が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましい。
【0075】
C18以下の高級アルコールとして、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、2−ヘキシルデカノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールを例示できる。好ましくは、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコールである。
【0076】
(A)剤はC18以下の高級アルコールを配合する。当該C18以下の高級アルコールの配合量は0.1〜3質量%が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましい。
【0077】
(A)剤において、全高級アルコールに対するC20以上の高級アルコールの質量比「C20以上の高級アルコール/高級アルコール」=0.005〜0.9であることが好ましい。より好ましくは0.01〜0.9である。更に好ましくは、0.1〜0.8である。「全高級アルコール」にはC20以上の高級アルコール量も含まれる。(A)剤における高級アルコール配合比率がこれらの好ましい範囲内であれば、乳化物安定性、染毛力及び泡質がバランス良く良好となる。
【0078】
(A)剤において、非イオン性界面活性剤と高級アルコールとの質量比は、「非イオン性界面活性剤/高級アルコール」=1.5〜50である。当該比率が1.5未満であると乳化物安定性及び泡質が不十分となる傾向にある。一方、当該比率が50を超えると染毛力及び泡質が不十分となる傾向にある。当該比率は1.5〜40が好ましく、1.5〜30がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。
。当該比率がこれらの好ましい範囲内である場合、染毛力、乳化安定性、泡質がバランス良く向上するという利点がある。
【0079】
上記非イオン性界面活性剤と高級アルコールとの質量比の演算において、非イオン性界面活性剤は好ましくはエーテル型非イオン性界面活性剤である。一方、高級アルコールは好ましくは直鎖型高級アルコールである。
【0080】
(A)剤は、溶剤を配合しても良い。溶剤として、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数5以下の1価の低級アルコール、ポリオール類やその低級アルキルエーテル類が挙げられる。ポリオール類としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。ポリオールの低級アルキルエーテル類としては、前述のポリオールのモノ低級アルキルエーテルやポリ低級アルキルエーテル(例えば、ジ低級アルキルエーテル)などが挙げられる。
【0081】
(A)剤における溶剤の配合量は10質量%以下とすることが好ましく、0.01〜8質量%とすることがより好ましい。これらの好ましい範囲内とすることで、染毛力が向上し、(A)剤を乳化状にしやすくなる。
【0082】
(A)剤の粘度は2000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは
1〜2000mPa・sであり、更に好ましくは50〜1500mPa・sである。粘度を上記好ましい範囲内とすることで、塗布時の操作性が向上するという利点がある。
【0084】
〔各剤の混合〕
前記第1剤及び第2剤を含む複数剤の混合比は適宜決定可能である。前記第1剤と第2剤の混合比は、第1剤:第2剤=1:5〜5:1が好ましい。また、混合物のpHは7〜12であることが好ましい。
【0085】
〔噴射剤〕
本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物には、周知の噴射剤を使用することができる。例えば、LPG、ジメチルエーテル等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス等の圧縮ガスを例示できる。これらの中でも液化ガスが好ましい。これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0086】
上記(A)剤は乳化物であり、製造の工程から考えて、(A)剤は噴射剤を含まない原液の段階においても、噴射剤が充填された後においても、乳化物である。即ち、噴射剤充填後に乳化物であれば、(A)剤に該当する原液も乳化物であったと合理的に推定できる。
【0087】
エアゾール容器に収容するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物を構成する各剤と噴射剤の質量比は、90:10〜98:2であることが好ましい。
【0088】
〔エアゾール容器〕
本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物は、周知のエアゾール容器に収容可能である。アルカリ剤を配合する第1剤と酸化剤を配合する第2剤とを使用直前に混合する必要があるため、通常、第1剤と第2剤は別々に収容される。第1剤と第2剤は、別々のエアゾール容器に収容されても良い。噴射剤の力により吐出されると、噴射剤が膨張して泡が形成される。
【0089】
例えば、上記特許文献3に開示されたエアゾール容器を使用できる。当該エアゾール容器は第1剤と第2剤を別々の容器に収容し、ヘッド部から泡状の酸化染毛剤組成物を吐出する。後述する実施例では、このタイプのエアゾール容器を使用する。
【0090】
また、例えば、1本の缶の中に2つのパウチ及び連結部材を収容し、混合物を泡状に吐出するエアゾール容器も使用できる。内袋を有するエアゾール容器において、内袋の中に各剤と噴射剤(発泡用)を収容し、内袋の外に噴射剤(押出し用)を収容するエアゾール容器も使用できる。
【0091】
エアゾール容器の材質や内圧は、アルカリ剤、酸化剤、噴射剤の種類やエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物の収容方法に合わせて適宜決定可能である。
【0092】
以上の通り、エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物、並びに噴射剤及びエアゾール容器を構成に含む製品をも本願は開示する。
【実施例】
【0093】
以下、実施例について記載する。本願が開示するエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。評価結果は、表1〜4、7に示した。
【0094】
<エアゾール式泡状酸化染毛剤組成物の調製>
〔実施例1〜33〕
表1〜4及び6に示される各成分を配合することにより、実施例1〜33の第1剤用原液を乳化物として調製した。また、表5及び7に示される各成分を配合することにより、実施例1〜33の第2剤用原液を乳化物として調製した。実施例1〜32は表1〜4に示す第1剤用原液及び表5に示す第2剤用原液を使用する。実施例33は表6に示す第1剤用原液及び表7に示す第2剤用原液を使用する。なお、表1〜7の配合量を示す数値の単位は、質量%である。また、実施例中の精製水の残量とは、各実施例の第1剤用原液及び第2剤用原液を各100質量%として、その残量を意味する。
【0095】
更に、各実施例の第1剤用原液及び第2剤用原液を同時混合吐出機構を備えたエアゾール容器に充填し、それぞれ表1〜7に示される質量比で噴射剤(LPG)を充填して、各実施例の第1剤及び第2剤を調製した。
【0096】
このエアゾール容器より各実施例の第1剤及び第2剤を吐出させて、実施例1〜33のエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物を得た。
【0097】
なお、各実施例の第1剤及び第2剤は乳化物である。
【0098】
〔比較例1〜5〕
また、表4に示される各成分を配合することにより、比較例1〜5の第1剤用原液を調製した。比較例2〜5の第1剤用原液は乳化物として調製できたが、比較例1の第1剤用原液は乳化物として調製できなかった。また、表5に示される各成分を配合することにより、比較例1〜5の第2剤用原液を調製した。なお、表4及び5の配合量を示す数値の単位は、質量%である。また、比較例中の精製水の残量とは、各比較例の第1剤用原液及び第2剤用原液を各100質量%として、その残量を意味する。
【0099】
更に、比較例2〜5の第1剤用原液及び第2剤用原液を同時混合吐出機構を備えたエアゾール容器に充填し、それぞれ表4及び5に示される質量比で噴射剤(LPG)を充填して、比較例2〜5の第1剤及び第2剤を調製した。
【0100】
このエアゾール容器より各比較例の第1剤及び第2剤を吐出させて、比較例2〜5のエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物を得た。
【0101】
なお、比較例2〜5の第1剤及び第2剤は乳化物である。比較例1の第1剤は乳化物とすることができず、比較例1は粘度測定以外の以下の試験の評価ができなかった。
【0102】
(乳化物の安定性試験)
試験方法:各例の実施例1〜32及び比較例2〜5の第1剤用原液、並びに実施例33の第2剤用原液を60℃の恒温槽にて保存した。
【0103】
評価方法:目視にて乳化物が分離しているか否かを確認し、乳化物が分離するまでに要した日数により評価した。
評価基準:分離するまでの日数が、1週間以上であった場合には「5」、3日以上1週間未満であった場合には「4」、1日以上3日未満であった場合には「3」、12時間以上1日未満であった場合には「2」、12時間未満であった場合には「1」と評価した。
【0104】
上記した試験は加速試験である。よって、加速試験の結果が良好であれば、各剤用原液と噴射剤を充填した各剤をエアゾール容器内・常温で保管した場合でも良好な効果が得られると合理的に推定される。
【0105】
(染毛処理)
実施例1〜33及び比較例2〜5の各組成物を上記エアゾール容器より1.5g吐出し、白毛の人毛毛束(以下、単に「毛束」という)1gに、手を用いて塗布し、その毛束を恒温槽(30℃)で30分間放置した。次いで、毛束に付着した前記組成物を水洗し、その後、毛束をシャンプー及びリンス(コンディショナー)で、それぞれ1回処理した。続いて、その毛束を温風で乾燥した。このようにして、前記組成物を用いて毛束に染毛処理を施した。
【0106】
(染毛力試験)
実施例1〜33及び比較例2〜5の各組成物を用いた染毛処理後の毛束をパネラーが目視で観察し、染毛力を評価(官能評価)した。具体的には、「染毛力が優れている」場合を「5」、「染毛力が幾分優れている」場合を「4」、「染毛力が普通である」場合を「3」、「染毛力がやや劣る」場合を「2」、「染毛力が劣る」場合を「1」とした。こうして得られた各評価対象ごとの10名のパネラーの評価の平均点を算出し、平均点に少数点以下の数値がある場合には四捨五入を行って評価を決定した。評価結果は、表1〜4、7に示した。
【0107】
(泡質試験)
実施例1〜32及び比較例2〜5の第1剤、並びに、実施例33の第2剤を、25℃の条件下、平らな板上に上記エアゾール容器より3g吐出した。当該吐出物を指でのばして、泡のきめ細かさ(粗くない細かい泡が良好と評価される。)を評価した。評価基準は、以下の通りである。
5:パネラー10人中「優れる」と答えた人が7人以上
4:パネラー10人中「優れる」と答えた人が5〜6人
3:パネラー10人中「優れる」と答えた人が3〜4人
2:パネラー10人中「優れる」と答えた人が2人
1:パネラー10人中「優れる」と答えた人が1人以下
【0108】
以下、参考写真1〜4を用いて泡の状態を説明する。参考写真1はきめが細かい泡である。参考写真2は、きめが細かい泡に該当しない、きめが粗い泡である。参考写真3は、試験における吐出直後の泡である。左側はきめが粗い泡である。右側はきめが細かい泡である。参考写真4は試験における指でのばした後の泡の写真である。左側はきめが粗い泡である。右側はきめが細かい泡である。
【0109】
〔参考写真1〕
【0110】
〔参考写真2〕
【0111】
〔参考写真3〕
【0112】
〔参考写真4〕
【0113】
なお、表5に示す第2剤及び表6に示す第1剤は、きめが細かい泡であった。
【0114】
(起泡性試験)
実施例1〜33及び比較例2〜5の各組成物を25℃の条件下、平らな板上に上記エアゾール容器より3g吐出した。この吐出直後に泡の嵩高さ(起泡性)をパネラー10名が目視で評価(官能評価)した。
実施例1〜33はいずれも良好な起泡力を発揮した。特に、実施例4は他の実施例と比べて「嵩高い」と評価したパネラーが多く、より優れた起泡性を発揮した。この試験の結果の表への記載は省略した。
【0115】
(粘度測定)
実施例1〜32及び比較例1〜5の第1剤用原液、並びに、実施例33の第2剤用原液の粘度は、B型粘度計にて、ローターNo.2、回転数12rpm、25℃、1分間の条件で測定した。
【0116】
表の記載方式の説明をする。高級アルコールの右側に記載した括弧書は当該高級アルコールの炭素数を示す。非イオン性界面活性剤のPOEに続く括弧書はPOEの重合数を示す。表には、原液である第1剤又は第2剤の処方(質量%表記)と、原液と噴射剤の比が記載してあり、原液と噴射剤の比は質量比である。「ノニオンSAA/高級OH」は非イオン性界面活性剤と高級アルコールとの質量比を意味する。「C20↑/全高級OH」は全高級アルコールに対するC20以上の高級アルコールの質量比を意味する。モノエタノールアミン液、アンモニア水、過酸化水素水は%(w/w)である。
【0117】
〔表1〕
【0118】
〔表2〕
【0119】
〔表3〕
【0120】
〔表4〕
【0121】
〔表5〕
【0122】
〔表6〕
【0123】
〔表7〕