(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の実施形態の概略について説明する。
【0019】
本発明の実施形態は、給電装置の複数のポートから給電される電力を、1台の受電装置に対して変換供給するアダプタである。例えば、給電装置に、信号送受と給電の双方を行う1ポートと、信号送受を行わない給電のみの1ポートを用意する。そして、受電装置はデータ通信用の通信信号を、受電装置の一部の端子で送受する一方で、受電装置の全ての端子で受電をする。
【0020】
こうすることにより、給電装置の1ポート当たりの給電電力の2倍を消費する受電装置に対してもPoE給電することを可能とする。
【0021】
以上が、本発明の実施形態の概略である。
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態は、給電装置100、供給電力増幅装置201及び受電装置300を含む。
【0024】
ここで、供給電力増幅装置201は、給電装置100と受電装置300との間に接続されるコネクタである。具体的には、供給電力増幅装置201は、給電装置100の2つのポートと接続される。また、一方で、本実施形態の供給電力増幅装置201は、受電装置300の1つのポートと接続される。
【0025】
そして本実施形態では、供給電力増幅装置201により、給電装置100が受電装置300に対して給電する電力を増幅する。
【0026】
この点について説明するが、その前提として、まずPoEにおける給電方式が二種類あることについて説明する。
【0027】
PoEでは、1本のLANケーブルにてEthernet機器間を接続する。この1本のLANケーブルは、8本の絶縁被覆付き銅線が2本ずつ撚り合わされて、4対のツイストペアを構成している。そして、PoEでは、この4対ツイストペアの内の2対、又は4対を利用する。
【0028】
まず、シグナルペア(Alternative A)という給電方式では、4対のツイストペアのうち2対((1)(2)対と、(3)(6)対)のそれぞれの対を電力供給線及びデータ通信線の双方として使用し、残りの2対((4)(5)対と、(7)(8)対)については特に使用しない。
【0029】
これに対し、スペアペア(Alternative B)という給電方式では、4対のツイストペアのうち2対((1)(2)対と、(3)(6)対)をデータ通信線として使用し、残りの2対((4)(5)対と、(7)(8)対)を電力供給線として使用する。
【0030】
このように、方式によって、何れのツイストペアを利用するかという相違はあるが、何れの方式を利用した場合であっても、1本のLANケーブルにてEthernet機器間のデータ通信と、Ethernet機器に対する給電とが同時に実現される。
【0031】
この点、PoEに準拠した給電装置は、シグナルペア給電、又はスペアペア給電の何れかの方式に対応している。一方で、PoEに準拠した受電装置はどちらの給電方式にも対応可能な回路構成を取っている。
【0032】
そして、受電装置を給電装置に接続すると、機器間でPoE認証が行われ、給電装置側が対応している給電方式で給電が行われる。
【0033】
通常ではこのような構成を取っているため、同時に両方の給電方式を使用することはできない。
【0034】
しかし、かかる構成を応用し、両方の給電方式から同時に給電を受けることが可能な受電装置が存在する。この受電装置はシグナルペア及びスペアペアに対して独立した認証回路を実装することで、両方式からの同時給電を実現している。
【0035】
ただし、受電装置に対して同時給電を行なうためには、同時給電に対応した受電装置だけでは足りず、同時給電に対応した専用の給電装置も必要であった。
【0036】
そこで、給電装置100が同時給電に対応した専用の給電装置でない場合であっても、本実施形態では供給電力増幅装置201を給電装置100及び受電装置300の間に挿入することによって同時給電を実現する。
【0037】
次に、このような同時給電を実現するための供給電力増幅装置201の詳細な構成について、
図2を参照して説明する。
【0038】
図2を参照すると、供給電力増幅装置201は、第1の給電側コネクタ210、第2の給電側コネクタ220、スイッチ230、第1のLANトランス240、第2のLANトランス250及び受電側コネクタ260を含む。
【0039】
第1の給電側コネクタ210及び第2の給電側コネクタ220は、LANに準拠したコネクタであって、通常はLANケーブルに実装される8極8芯のオスコネクタである。第1の給電側コネクタ210及び第2の給電側コネクタ220は、給電装置100のポートに接続される。第1の給電側コネクタ210及び第2の給電側コネクタ220は、8極8芯に対応する8つの端子を含む。
【0040】
スイッチ230は、2接点8回路を持つスライドスイッチ等の位置保持型スイッチである。なお、スイッチ230は、2接点8回路には限定されず、N接点回路をM個使用することでも代用可能である(ここで、N及びMは正の整数であり、且つ、N×M=8の関係を満たすものとする。)。
【0041】
第1のLANトランス240及び第2のLANトランス250は、PoEに対応したLAN用のトランスである。第1のLANトランス240及び第2のLANトランス250の入力側は、スイッチ230を介して第1の給電側コネクタ210が接続される。また、第1のLANトランス240及び第2のLANトランス250の出力側の中点には受電側コネクタ260が接続される。なお、第1のLANトランス240及び第2のLANトランス250は、特に本実施形態特有のものである必要はなく、汎用のLANトランスを利用することができる。
【0042】
受電側コネクタ260は、LANに準拠したコネクタであって、LANケーブル400を接続するための8極8芯のメスコネクタである。受電側コネクタ260にはLANケーブル400が挿入される。これにより、LANケーブル400を介して、供給電力増幅装置201と受電装置300とが接続される。受電側コネクタ260は、8極8芯に対応する8つの端子を含む。
【0043】
これら、供給電力増幅装置201に含まれる各部は以下のように使用される。
【0044】
まず、上述したように、PoEに準拠した給電装置である給電装置100は、LANケーブル内の8本の線のうち、4本を使用して受電装置に給電を行う。そのため、残りの4本は給電に対しては未使用となっている。(シグナルペアならば1/2/3/6番線を使用して給電を行い、スペアペアならば4/5/7/8番線を使用して給電を行なう。)
そこで、これら未使用の4本の線も利用するために、オスコネクタである第1の給電側コネクタ210及び第2の給電側コネクタ220を給電装置100の任意の2ポートに接続する。
【0045】
そして、給電装置100に接続した2ポートのうち、一方のポートの給電未使用線に他方のポートの給電線を接続する。そして、給電装置100の給電方式に応じて、スイッチ230を切り替える。これによりメスコネクタである受電側コネクタ260に対し、8線全てを使用したシグナルペア及びスペアペアの同時給電を可能とする。そして、メスコネクタである受電側コネクタ260に、シグナルペア及びスペアペアの同時給電に対応した受電装置である受電装置300を、LANケーブル400を介して接続する。これにより、シグナルペア及びスペアペアの同時給電を実現できる。
【0046】
なお、
図2中にも[凡例]として記載しているが、各コネクタ(第1の給電側コネクタ210、第2の給電側コネクタ220及び受電側コネクタ260)内にて括弧書きで記載している数字は、各端子に接続される信号線の線番号を表す。また、スイッチ230内において接点を表す丸において、丸が塗りつぶされていないものがシグナルペアの場合に使用される接点を表し、丸が網掛けとなっているものがスペアペアの場合に使用される接点を表す。
【0047】
また、他の機器である給電装置100及び受電装置供給電力増幅装置201の構成については、当業者によってよく知られているため、図面を参照した説明を省略する。ただし、受電装置供給電力増幅装置201は、シグナルペア及びスペアペアの両方の給電方式から同時に給電を受けることが可能な受電装置であるとする。一方で、給電装置100は同時給電に対応した専用の給電装置でなくともよい。
【0048】
次に、供給電力増幅装置201の動作について、
図3のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0049】
まず、給電装置100による給電の給電方式が、シグナルペアであるのかスペアペアであるのかが確認される(ステップS11)。
【0050】
ここで、給電装置100による給電の給電方式が、シグナルペアであった場合(ステップS11においてYes)について先に説明する。この場合スイッチ230がシグナルペアに設定される。具体的には、スイッチ230が
図2に表すシグナルペア側に切り替えられる(ステップS12)。
【0051】
これによって、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は受電側コネクタ260の1/2/3/6番線へ直接接続される。また、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線は第2のLANトランス250の入力側に接続され、第2のLANトランス250の出力側が受電側コネクタ260の4/5/7/8番線に接続される。このとき、第2のLANトランス250の出力側の中点に第2の給電側コネクタ220の1/2/3/6番線が接続される(ステップS13)。
【0052】
この場合、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は、通信信号の送受信及びシグナルペアによる給電に使用されることとなる。また、受電側コネクタ260の1/2/3/6番線は、通信信号の送受信及びシグナルペアによる受電に使用されることとなる。
【0053】
更に、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線及び第2の給電側コネクタ220の1/2/3/6番線はスペアペアによる給電に使用されることとなる。更に、受電側コネクタ260の4/5/7/8番線はスペアペアによる受電に使用されることとなる。
【0054】
このように、ステップS12及びステップS13の動作によって、受電側コネクタ260に対しシグナルペア及びスペアペアの両方に給電するルートができる。
【0055】
次に、給電装置100による給電の給電方式が、スペアペアであった場合(ステップS11においてNo)について説明する。この場合スイッチ230がスペアペアに設定される。具体的には、スイッチ230が
図2に表すスペアペア側に切り替えられる(ステップS14)。
【0056】
これによって、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線は受電側コネクタ260の4/5/7/8番線へ直接接続される。また、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は第1のLANトランス240の入力側に接続され、第1のLANトランス240の出力側が受電側コネクタ260の1/2/3/6番線に接続される。このとき、第1のLANトランス240の出力側の中点に第2の給電側コネクタ220の4/5/7/8番線が接続される(ステップS15)。
【0057】
この場合、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線は、スペアペアによる給電に使用されることとなる。また、受電側コネクタ260の4/5/7/8番線は、スペアペアによる受電に使用されることとなる。
【0058】
更に、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は通信信号の送受信に使用されることとなる。更に、第2の給電側コネクタ220の1/2/3/6番線はシグナルペアによる給電に使用されることとなる。更に、受電側コネクタ260の1/2/3/6番線は通信信号の送受信及びシグナルペアによる受電に使用されることとなる。
【0059】
このように、ステップS14及びステップS15の動作により、受電側コネクタ260に対しシグナルペア及びスペアペアの両方に給電するルートができる。
【0060】
ステップS12及びステップS13の動作を行った場合、又はステップS14及びステップS15の動作を行った場合の何れの場合であっても、ステップS16に進む。
【0061】
そしてステップS16では、第1の給電側コネクタ210及び第2の給電側コネクタ220のそれぞれが給電装置100のポートに接続される(ステップS16)。なお、第1の給電側コネクタ210及び第2の給電側コネクタ220のそれぞれは、給電装置100に含まれるポートの内の任意のポートに接続することができる。
【0062】
次に、受電側コネクタ260が、LANケーブル400を介して受電装置300のポートに接続される(ステップS17)。
【0063】
そして、ステップS16及びステップS17による接続が行われると、給電装置100と受電装置の間でシグナルペア及びスペアペアの両方に対しPoE認証が実施される(ステップS18)。
【0064】
その後の動作であるステップS19乃至ステップS21では、シグナルペア方式に関する処理と、スペアペア方式に関する処理がそれぞれ並列に行われる。そのため、図中ではこれら2つの処理を並列に記載する。また、以下の説明においてもこれらの処理毎に別途説明する。
【0065】
なお、図中のステップS18と、ステップS19−a及びステップS19−bとの間の二重線はステップS18が行われた後に、ステップS19−aとステップS19−bが並列して処理されることを表すものである。
【0066】
まず、シグナルペア方式に関する処理について説明する。ただし、これはシグナルペア方式に関する処理がスペアペア方式に関する処理に先立って行われることを意味するものではない。これら両処理は上述したように並列に行われる。
【0067】
まず、シグナルペア認証が成功したか否かを確認する(ステップS19−a)。ここで、シグナルペア認証が成功したならば(ステップS19−aにおいてYes)、シグナルペアによる充電が開始される(ステップS20−a)。一方で、シグナルペア認証に失敗したならば(ステップS19−aにおいてNo)、シグナルペアによる給電は停止される(ステップS20−c)。
【0068】
次に、スペアペア方式に関する処理について説明する。
【0069】
まず、スペアペア認証が成功したか否かを確認する(ステップS19−b)。ここで、スペアペア認証が成功したならば(ステップS19−bにおいてYes)、スペアペアによる充電が開始される(ステップS20−b)。一方で、スペアペア認証に失敗したならば(ステップS19−bにおいてNo)、スペアペアによる給電は停止される(ステップS20−c)。
【0070】
このように、シグナルペア方式及びスペアペア方式の何れかの方式において認証が成功すれば、認証が成功した方式による給電が行われる。ここで、認証の成功の可否により以下のような3つの場合の何れかの場合になる。
【0071】
(1)仮に受電装置300が両方式の同時受電に対応しているPoE準拠の受電装置であった場合には、両方の方式で給電が行なわれる。そのため、受電装置300はPoE規格で定められた、給電装置の1つのポートで供給可能な電力の、2倍の電力を最大で受電することが可能となる。
【0072】
(2)また、仮に受電装置300が両方式の同時受電に対応していないPoE準拠の受電装置であった場合には、何れかの方式による認証のみが成功し、他方の認証が成功しない。ここで、認証と同様、給電もシグナルペア、スペアペアで独立しているため、各々に対して給電開始、停止が行われる。結果として、受電装置300に対して何れかの方式によりPoE規格で定められた電力のみが供給されることとなる。つまり、受電装置300が意図しない大電力を受けたり、給電装置100が無駄に電力を消費したりすることは無い。
【0073】
(3)更に、仮に受電装置300がそもそもPoE規格に準拠しない装置であった場合には、何れの方式による充電も行われない。
【0074】
データ通信に関して、上記(1)乃至(3)の何れの場合であっても、シグナルペアであれば第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線及び受電側コネクタ260の第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線が直結され、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線及び受電側コネクタ260の第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線が第2のLANトランス250を介して接続される。
【0075】
また、(1)乃至(3)の何れの場合であっても、スペアペアであれば、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線及び受電側コネクタ260の1/2/3/6番線が第1のLANトランス240を介して接続され、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線及び受電側コネクタ260の第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線が直結される。
【0076】
つまり、上記(1)乃至(3)の何れの場合であっても、通信信号の送受信は行われ、供給装置100及び受電装置300間のデータ通信を行なうことができる。
【0077】
なお、かかるデータ通信では8線全てを使用することが可能であることから、1000BASE−T等の規格でデータ通信を行なう場合や、それ以前に策定された8線全てはデータ通信では使用しない規格でデータ通信を行なう場合も含めて、通常通りの動作が可能である。
【0078】
以上説明した本第1の実施形態は、以下に示すような多くの効果を奏する。
【0079】
第1の効果は、一般的な給電装置を用いて受電装置への供給電力を最大で2倍にできることである。そのため、一般的な従来使用していたPoE準拠の給電装置をそのまま利用できることである。
【0080】
その理由は、給電装置がシグナルペア及びスペアペアによる同時給電に対応していない一般的な給電装置であったとしても、供給電力増幅装置を2つの給電用のポートに接続することによって、この2つの給電用のポートを用いて受電装置への供給を行なうからである。
【0081】
第2の効果は、受電装置が電力不足等の場合には追加せざるを得なかった追加電源(ACアダプタ等)を不要とできることにある。
【0082】
その理由は、上記の第1の効果により供給電力が増大し、追加電源(ACアダプタ等)が無くとも受電装置を動作可能にできるからである。
【0083】
第3の効果は、供給電力を増やすための配線の増加、及び給電装置や受電装置等機器への変更が不要であることにある。
【0084】
その理由は、本実施形態では、給電装置及び受電装置間に本実施形態における供給電力増幅装置を接続するのみで、供給電力を増やすことができるからである。
【0085】
第4の効果は、供給電力を増やすために新たに電源やその他設備を用意する必要がなく、導入が容易であることにある。
【0086】
その理由は、給電装置及び受電装置間に本実施形態における供給電力増幅装置を接続するのみで、供給電力を増やすことができ、結果として新たな電源やその他設備が不要となるからである。
【0087】
第5の効果は、本実施形態における供給電力増幅装置201を接続した場合であっても、データ通信は従来通りに行えることである。
【0088】
その理由は、本実施形態における、給電装置100、供給電力増幅装置201及び受電装置300のそれぞれは、PoE規格をベースにしており、PoE規格に準拠したデータ通信を妨げないからである。
【0089】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0090】
第2の実施形態の基本的な構成は、上述した第1の実施形態の構成と共通する。ただし、上述した第1の実施形態では、第1の給電側コネクタ210と第2の給電側コネクタ220という二つの給電側コネクタを用意していたが、本実施形態では、第2の給電側コネクタ220の部分を内部給電装置270へ置き換える点において異なる。
【0091】
具体的には、
図4を参照すると本実施形態は、給電装置100、供給電力増幅装置202、受電装置300及びLANケーブル400に加えて、AC100V電源500を含む。
【0092】
ここで、本実施形態における給電装置100及び受電装置300に関しては、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0093】
本実施形態の供給電力増幅装置202は、給電装置100の1つのポートと接続される。また、本実施形態の供給電力増幅装置202は、AC100V電源500と電源ケーブル電源ケーブル273を介して接続される。
【0094】
また、AC100V電源500は、交流100Vの電圧を供給する電源である。AC100V電源500は、例えば、一般的な家庭用電源により実現される。
【0095】
次に、供給電力増幅装置202の内部に含まれる機能ブロックについて
図4を参照して詳細に説明する。
【0096】
図4を参照すると、供給電力増幅装置202は、第1の給電側コネクタ210、スイッチ230、第1のLANトランス240、第2のLANトランス250、受電側コネクタ260及び内部給電装置270を含む。ここで、供給電力増幅装置202の、第1の給電側コネクタ210、第1のLANトランス240、第2のLANトランス250及び受電側コネクタ260の各部については、第1の実施形態の同名称の各部と同様の機能であるので、説明を省略する。また、図中に[凡例]として記載されている内容についても、
図2と同様であるので説明を省略する。
【0097】
第1の実施形態のスイッチ230は、2接点8回路を持つスライドスイッチ等の位置保持型スイッチであったが、本実施形態のスイッチ230は、2接点10回路を持つスライドスイッチ等の位置保持型スイッチである。また、第1の実施形態のスイッチ230は、第1の給電側コネクタ210と接続されていたが、本実施形態のスイッチ230は、内部給電装置270とも接続される。なお、本実施形態のスイッチ230は、2接点10回路には限定されず、K接点回路をL個使用することでも代用可能である(ここで、K及びLは正の整数であり、且つ、K×L=10の関係を満たすものとする。)。
【0098】
内部給電装置270は、電源回路271、PSE回路272及び電源ケーブル273を含む。そして、内部給電装置270は、受電装置300に対して給電を行なうための給電装置として機能する。
【0099】
電源回路271は、AC100V電源500を介して供給電力増幅装置202に供給されるAC100Vを、受電装置に供給するDC48Vに変換するAC−DC電源回路である。変換さることにより生成されたDC48Vの電圧は、PSE回路272に出力される。
【0100】
なお、今回は供給電力増幅装置202内部の電源回路271にて変換を行っているが、このようにするのではなく、電源回路271をDC48V出力のACアダプタに置き換え、供給電力増幅装置202内部に電源回路271を設けないようにしても良い。このように置き換えた場合、AC−DC電源回路は本実施形態の供給電力増幅装置202の外部に実装されることになる。
【0101】
PSE回路272は、PoEに準拠した給電装置(PSE:Power Sourcing Equipment)に代わって、PoEに準拠した認証動作及び給電動作を行う回路である。具体的には、PSE回路272は、受電装置300との間で認証動作を行なう。そして、認証に成功した場合には、電源回路271が出力するDC48Vの電圧を用いて受電装置300に対して給電を行なう。
【0102】
電源ケーブル273は、電源回路271へAC100Vの電圧を供給するための電源ケーブルである。電源ケーブル273はAC100V電源500と接続されることにより、AC100V電源500から出力されるAC100Vの電圧を電源回路271に対して供給する。
【0103】
次に、
図5のフローチャートを参照して第2の実施形態の動作について詳細に説明する。
【0104】
まず、ステップS31では、ステップS11同様に、給電装置100による給電の給電方式が、シグナルペアであるのかスペアペアであるのかが確認される(ステップS31)。
【0105】
先に、給電装置100による給電の給電方式が、シグナルペアであった場合(ステップS31においてYes)について説明する。この場合スイッチ230がシグナルペアに設定される。具体的には、スイッチ230が
図4に表すシグナルペア側に切り替えられる(ステップS32)。
【0106】
これによって、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は受電側コネクタ260の1/2/3/6番線へ直接接続される。また、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線は第2のLANトランス250の入力側に接続され、第2のLANトランス250の出力側が受電側コネクタ260の4/5/7/8番線に接続される。このとき、第2のLANトランス250の出力側の中点にPSE回路272の出力が接続される(ステップS33)。
【0107】
この場合、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は、通信信号の送受信及びシグナルペアによる給電に使用されることとなる。また、受電側コネクタ260の1/2/3/6番線は、通信信号の送受信及びシグナルペアによる受電に使用されることとなる。
【0108】
更に、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線及びPSE回路272の出力はスペアペアによる給電に使用されることとなる。更に、受電側コネクタ260の4/5/7/8番線はスペアペアによる受電に使用されることとなる。
【0109】
これら、ステップS32及びステップS33の動作により、受電側コネクタ260に対しシグナルペア及びスペアペアの両方に給電するルートができる。
【0110】
次に、給電装置100による給電の給電方式が、スペアペアであった場合(ステップS31においてNo)について説明する。この場合スイッチ230がスペアペアに設定される。具体的には、スイッチ230が
図2に表すスペアペア側に切り替えられる(ステップS34)。
【0111】
これによって、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線は受電側コネクタ260の4/5/7/8番線へ直接接続される。また、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は第1のLANトランス240の入力側に接続され、第1のLANトランス240の出力側が受電側コネクタ260の1/2/3/6番線に接続される。このとき、第1のLANトランス240の出力側の中点にPSE回路272の出力が接続される(ステップS35)。
【0112】
この場合、第1の給電側コネクタ210の4/5/7/8番線は、スペアペアによる給電に使用されることとなる。また、受電側コネクタ260の4/5/7/8番線は、スペアペアによる受電に使用されることとなる。
【0113】
更に、第1の給電側コネクタ210の1/2/3/6番線は通信信号の送受信に使用されることとなる。更に、PSE回路272の出力はシグナルペアによる給電に使用されることとなる。更に、受電側コネクタ260の1/2/3/6番線は通信信号の送受信及びシグナルペアによる受電に使用されることとなる。
【0114】
これら、ステップS34及びステップS35の動作により、受電側コネクタ260に対しシグナルペア及びスペアペアの両方に給電するルートができる。
【0115】
ステップS32及びステップS33の動作、又はステップS34及びステップS35の動作の何れを行った場合であっても、次にステップS36に進む。
【0116】
そしてステップS36では、電源ケーブル273を介して、電源回路271がAC100V電源500に接続される(ステップS36)。
【0117】
次に、第1の給電側コネクタ210が電装置100のポートに接続される(ステップS36)。なお、第1の給電側コネクタ210は、給電装置100に含まれるポートの内のそれぞれ任意のポートに接続することができる。
【0118】
次に、400を介して、受電側コネクタ260が、受電装置300のポートに接続される(ステップS37)。
【0119】
ステップS36及びステップS37による接続が行われると、給電装置100と受電装置の間でシグナルペア及びスペアペアの両方に対しPoE認証が実施される(ステップS38)。
【0120】
その後の動作である、ステップS40乃至ステップS42の動作は、
図3を参照して説明したステップS19乃至ステップS21の動作と同様なので、説明を省略する。また、第2の実施形態が、認証の結果に応じて、上述した(1)乃至(3)の場合の何れかになる点についても第1の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0121】
以上説明した第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に、上述の第1乃至第3の効果及び5の効果を奏する。更に、第2の実施形態は以下に記載する第6の効果を奏する。
【0122】
第2の実施形態が奏する第6の効果は、給電装置の1つのポートのみを使用して、先に説明した第1の実施形態と同様の動作を実施できることである。
【0123】
その理由は、供給電力増幅装置の内部に、内部給電装置を追加したからである。
【0124】
また、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0125】
変更を施した形態の一例として、
図6を参照して第2の実施形態の変形例について説明する。
図6を参照すると、本変形例は、給電装置100、供給電力増幅装置群2000、複数の第1の受電装置300、AC100V電源500及び共有電源ケーブル600を含む。
【0126】
ここで、本変形例の目的は、1つのAC100V電源(本変形例では、AC100V電源500に相当)から多ポートに対し給電を拡張することである。
【0127】
具体的には、供給電力増幅装置群2000内に、第1の供給電力増幅装置202−1乃至第5の供給電力増幅装置202−5を含ませる。なお、各供給電力増幅装置202の機能は
図4及び5を参照して説明した第2の実施形態の供給電力増幅装置202と同等である。また、給電装置100及びAC100V電源500の機能も第2の実施形態と同等である。よって、これら装置の構成及び機能については説明を省略する。更に、今回は、供給電力増幅装置202及び第1の受電装置300を5台ずつ図示しているが、これは例示に過ぎず、これらの機器を6台以上としても良いし、これらの機器を4台以下としても良い。
【0128】
次に、これら各機器間の接続について説明する。
【0129】
これら各供給電力増幅装置202に含まれる受電側コネクタ260は、それぞれが、第1の受電装置300−1乃至第5の受電装置300−5の何れかと1対1で接続される。
【0130】
また、これら各供給電力増幅装置202に含まれる第1の給電側コネクタ210は、それぞれが、給電装置100の何れかのポートと1対1で接続される。
【0131】
更に、これら各供給電力増幅装置202に含まれる内部給電装置270は、それぞれが、共有電源ケーブル600を介してAC100V電源500に接続される。
【0132】
そして、これらの各機器が第2の実施形態と同様に動作することにより、第1の受電装置300−1乃至第5の受電装置300−5のそれぞれに対しての給電が実現されると共に、給電装置100と、第1の受電装置300−1乃至第5の受電装置300−5それぞれとの間のデータ通信が実現される。
【0133】
すなわち、本変形例は、第2の実施形態が奏する効果と別途の第7の効果として、1つのAC100V電源から多ポートに対し給電を拡張することが可能となる、という効果を奏する。
【0134】
なお、背景技術の欄で述べた特許文献1に記載の技術と、本願発明の実施形態との差異について述べる。
【0135】
特許文献1に記載の技術において信号線上に電流を重畳させて給電するのは、給電スイッチングハブ2のポート9aから受電スイッチングハブ3aへ給電する対より線ケーブル7のみである。すなわち、この区間においてはシグナルペアにより、受電スイッチングハブ3aの4つのピンに対して給電が行われている。
【0136】
その後段の、その他の受電スイッチングハブ3b、3c、3dに対しては、対より線ケーブル7は信号送受のみであり、給電用ケーブル8を介して給電されている(特許文献1の
図2等参照)。従ってこれらの区間では、スペアペアにより、受電スイッチングハブ3b、3c、3dのそれぞれ4つのピンに対して給電が行われている。
【0137】
更に、IPカメラ等6へ接続される変換コード22のプラグ33は、1、2、3、6ピンが信号用、4、5、7、8ピンが給電用と別れており、信号線に電力を重畳させてはいない。つまり、シグナルペアにより、IPカメラ等6の4つのピンに対して給電が行われている。
【0138】
つまり、特許文献1に記載の技術では、何れの区間においても、1つのポートの4つのピンを使用した給電のみが行われている。
【0139】
一方、本発明の実施形態では、受電装置は、1、2、3、6ピンで信号を送受し、1乃至8の全ピンで給電を受けている。従って、特許文献1に記載の技術とは構成が明らかに相違する。
【0140】
また、特許文献1に記載の技術や一般的なPoEに準拠した技術と異なり、本発明の実施形態では、この8つの全てのピンにて給電を受けるという相違点があることから、給電される電力が最大で2倍とできる、という効果を奏する。
【0141】
なお、上記の給電装置、供給電力増幅装置及び受電装置のそれぞれは、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記の給電装置、供給電力増幅装置及び受電装置により行なわれる通信方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0142】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0143】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0144】
(付記1) 給電装置と接続するための複数の給電側ポートと、受電装置と接続するための1つの受電側ポートを備え、
前記複数の給電側ポートの内の何れかのポートと、前記受電側ポートとを接続することによって前記給電装置及び前記受電装置間で送受信される通信信号の中継を行い、
前記複数の給電側ポートの各ポートと、前記受電側ポートとを接続することによって前記給電装置から前記受電装置へ供給される電力の中継を行なう、
ことを特徴とする供給電力増幅装置。
【0145】
(付記2) 前記給電側ポートは複数の端子を含んでおり、前記給電装置の種別に応じて前記電力の中継に用いる端子を異ならせることを特徴とする付記1に記載の供給電力増幅装置。
【0146】
(付記3) 前記給電装置には、
前記通信信号の送受信と前記電力の供給とを前記給電側ポートに含まれる同一の端子を介して行なう第1の給電装置と、
前記通信信号の送受信と前記電力の供給とを前記給電側ポートに含まれる異なる端子を介して行なう第2の給電装置とがあり、
前記第1の給電装置及び前記第2の給電装置の何れの給電装置が接続された場合であっても、前記通信信号の中継及び前記電力の中継が可能なことを特徴とする付記1又は2に記載の供給電力増幅装置。
【0147】
(付記4) 前記複数の給電側ポートは同一の規格に準拠しており、
前記複数の給電側ポートのそれぞれを、前記給電装置が備える複数のポートの内の何れのポートに接続した場合であっても、前記通信信号の中継及び前記電力の中継が可能なことを特徴とする付記1乃至3の何れか1に記載の供給電力増幅装置。
【0148】
(付記5) 接続された前記受電装置が前記給電装置による電力の供給には対応していない受電装置であったとしても、前記通信信号の中継は可能なことを特徴とする付記1乃至4の何れか1に記載の供給電力増幅装置。
【0149】
(付記6) 第1の給電側ポートの第1の端子と、受電側ポートの第1の端子とを接続することによって前記通信信号の中継及び前記電力の中継を行い、
第2の給電側ポートの第1の端子と、受電側ポートの第2の端子とを接続することによって前記電力の中継を更に行なうことを特徴とする付記1乃至5の何れか1に記載の供給電力増幅装置。
【0150】
(付記7) 第1の給電側ポートの第1の端子及び第2の給電側ポートの第2の端子の双方と、受電側ポートの第1の端子とを接続することによって前記通信信号の中継及び前記電力の中継を行い、
第1の給電側ポートの第2の端子と、受電側ポートの第2の端子とを接続することによって前記電力の中継を更に行なうことを特徴とする付記1乃至6の何れか1に記載の供給電力増幅装置。
【0151】
(付記8) 第1の給電側ポートを前記給電装置に接続し、第2の給電側ポートを前記給電装置に代えて外部電源に接続し、
第2の給電側ポートと、前記受電側ポートとを接続することによって前記外部電源から前記受電装置へ供給される電力の中継を行なうことを特徴とする付記1乃至7の何れか1に記載の供給電力増幅装置。
【0152】
(付記9) 複数の供給電力増幅装置を備えた供給電力増幅システムであって、
前記複数の供給電力増幅装置は、付記8に記載の供給電力増幅装置であり、
前記複数の供給電力増幅装置がそれぞれ異なる受電装置に接続すると共に、前記複数の供給電力増幅装置が同一の給電装置及び同一の外部電源に接続することを特徴とする供給電力増幅システム。
【0153】
(付記10) 給電装置と接続するための複数の給電側ポートと、受電装置と接続するための1つの受電側ポートを備えたコンピュータに組み込まれる供給電力増幅プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記複数の給電側ポートの内の何れかのポートと、前記受電側ポートとを接続することによって前記給電装置及び前記受電装置間で送受信される通信信号の中継を行い、
前記複数の給電側ポートの各ポートと、前記受電側ポートとを接続することによって前記給電装置から前記受電装置へ供給される電力の中継を行なう、
供給電力増幅装置として機能させることを特徴とする供給電力増幅プログラム。
【0154】
(付記11) シグナルペア給電方式を設定した場合、第1の入力ポートの端子(1、2、3、6)が受電装置への出力端子(1、2、3、6)へ接続するとともに、第1の入力ポートの端子(4、5、7、8)がLANトランスを介して、第2のポートの入力端子(1、2、3、6)と共に、受電装置への出力端子(4、5、7、8)と接続し、スペアペア給電方式を設定した場合、第1の入力ポートの端子(4、5、7、8)が受電装置への出力端子(4、5、7、8)へ接続するとともに、第1の入力ポートの端子(1、2、3、6)がLANトランスを介して、第2の入力ポートの端子(4、5、7、8)と共に、受電装置への出力端子(1、2、3、4)と接続し、受電装置への出力端子(1、2、3、6)を用いて通信し、全ての出力端子(1〜8)を用いて給電する供給電力増幅装置。