特許第5984251号(P5984251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5984251医用画像処理システム、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984251
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】医用画像処理システム、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20160823BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A61B5/00 D
   A61B5/00 G
   G06T1/00 290B
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-81059(P2012-81059)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-141602(P2013-141602A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】13/347,396
(32)【優先日】2012年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】パブロス・パパジョージオ
(72)【発明者】
【氏名】イアン・プール
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−029502(JP,A)
【文献】 特表2011−510415(JP,A)
【文献】 特開2008−200139(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0036410(US,A1)
【文献】 特開2011−067253(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0069873(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/093146(WO,A1)
【文献】 特表2009−504220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにネットワークを介して接続された第1の医用画像処理装置と第2の医用画像処理装置とを備え、
前記第1の医用画像処理装置は、第1の医用画像データの第1の参照基準への第1の位置合わせ情報を計算する第1の計算部、及び前記第1の医用画像データと前記第1の参照基準とを記憶する第1の記憶部、を備え、
前記第2の医用画像処理装置は、第2の医用画像データの第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を計算する第2の計算部、及び前記第2の医用画像データと前記第2の参照基準とを記憶する第2の記憶部、を備え、
前記第1の医用画像処理装置は、さらに、前記第1の位置合わせ情報と、前記第1の医用画像データから発生される表示用の画像データである第1のキー画像データとを含むメッセージを、前記ネットワークを介して送信する通信部を備え、
前記第2の医用画像処理装置は、さらに、前記第1の位置合わせ情報と前記第2の位置合わせ情報とに基づき、前記第2の医用画像データから前記第1のキー画像データと解剖学的に位置整合した表示用の画像データである第2のキー画像データを生成する位置合わせ部を備える、医用画像処理システム。
【請求項2】
前記第1の参照基準は、健常者の標準的な3次元解剖学構造を示す第1のアトラスデータを示し、前記第2の参照基準は、健常者の標準的な3次元解剖学構造を示す第2のアトラスデータを示す、請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項3】
前記第1の参照基準と前記第2の参照基準とは各々解剖学的構造体のリストを備えている、請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項4】
前記第1の参照基準と前記第2の参照基準とは、実質的に同一である、請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項5】
前記第1の位置合わせ情報は、前記第1の医用画像データの座標系から前記第1の参照基準及び前記第2の参照基準に共通する座標系への第1の変換情報であり、
前記第2の位置合わせ情報は、前記第2の医用画像データの座標系から前記共通する座標系への第2の変換情報であり、
前記位置合わせ部は、前記第1の変換情報と前記第2の変換情報とを組み合わせて前記第1の医用画像データと前記第2の医用画像データとを位置合わせする、
請求項4に記載の医用画像処理システム。
【請求項6】
前記第1の参照基準と前記第2の参照基準とは、実質的に異なり、
前記位置合わせ部は、前記第1の位置合わせ情報、前記第2の位置合わせ情報、及び前記第1の参照基準の前記第2の参照基準への第3の位置合わせ情報を利用して、前記第1の医用画像データと前記第2の医用画像データとを位置合わせする、
請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項7】
前記第1の位置合わせ情報は、前記第1の医用画像データの座標系から前記第1の参照基準の座標系への第1の変換情報であり、
前記第2の位置合わせ情報は、前記第2の医用画像データの座標系から前記第2の参照基準の座標系への第2の変換情報であり、
前記第3の位置合わせ情報は、前記第1の参照基準の座標系から前記第2の参照基準の座標系への第3の変換情報であり、
前記位置合わせ部は、前記第1の変換情報、前記第2の変換情報、及び前記第3の変換情報を組み合わせて前記第1の医用画像データを前記第2の医用画像データに位置整合させる、
請求項6記載の医用画像処理システム。
【請求項8】
前記第1の医用画像処理装置は、第1の画像診断装置に含まれ、
前記第2の医用画像処理装置は、第2の画像診断装置に含まれる、
請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項9】
前記第1のキー画像データは、前記第1の医用画像データのうちの、ユーザの指示に従う位置に関するキー画像データである、
請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項10】
前記第2の医用画像処理装置は、前記第2のキー画像データを表示する表示部、をさらに備える請求項9記載の医用画像処理システム。
【請求項11】
前記表示部は、前記第1のキー画像データと前記第2のキー画像データとを同時に、または、順番に連続して表示する、請求項10記載の医用画像処理システム。
【請求項12】
前記第1の参照基準は異なる時刻に関する複数のバージョンを有し、
前記第2の参照基準は異なる時刻に関する複数のバージョンを有する、
請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項13】
前記第1の医用画像データ及び前記第2の医用画像データは、単一の画像のデータ、複数の画像のデータ、または、ボリュームデータである、請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項14】
前記位置合わせされた第1の医用画像データと第2の医用画像データとを表示する表示部、をさらに備える請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項15】
ネットワークを介して他の医用画像処理装置に接続された医用画像処理装置であって、
第2の医用画像データと第2の参照基準とを記憶する記憶部と、
前記第2の医用画像データの前記第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を計算する計算部と、
前記ネットワークを介して前記他の医用画像処理装置から、前記他の医用画像処理装置における第1の医用画像データの第1の参照基準への第1の位置合わせ情報と、前記第1の医用画像データから発生される表示用の画像データである第1のキー画像データとを含むメッセージを受信する通信部と、
前記受信された第1の位置合わせ情報と前記計算された第2の位置合わせ情報とに基づき、前記記憶された第2の医用画像データから、前記受信した第1のキー画像データと解剖学的に位置整合した表示用の画像データである第2のキー画像データを生成する位置合わせ部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項16】
第2の医用画像データと第2の参照基準とを記憶する記憶部を備えた医用画像処理装置が実行する医用画像処理方法であって、
前記第2の医用画像データの前記第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を計算し、
ネットワークを介して他の医用画像処理装置から、前記他の医用画像処理装置における第1の医用画像データの第1の参照基準への第1の位置合わせ情報と、前記第1の医用画像データから発生される表示用の画像データである第1のキー画像データを含むメッセージを受信し、
前記受信された第1の位置合わせ情報と前記計算された第2の位置合わせ情報とに基づき、前記記憶された第2の医用画像データから、前記受信した第1のキー画像データと解剖学的に位置整合した表示用の画像データである第2のキー画像データを生成すること、
を具備する医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理システム、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像データの処理では、同じ患者の異なる医用画像、例えば、CT、MR、または、PETの医用画像内で同じ解剖学的位置を示すことは役立つことが多い。
【0003】
例えば、通常、CT胸部検診においては、同じ患者に実施された過去の胸部CT検診を参照することが必要である。他の例では、人体の同じ部分のCTとMRの両方の検診を使用して多くの病状が診断されている。その場合、より正確なまたはより多くの情報をもたらす結果は、CTのスキャン結果とMRのスキャン結果とを組み合わせて表示または処理することで得ることができる。これは表示のための処理の場合に特に当てはまることであり、その目的としては、同一の解剖学的構造が出現するCT及びMRの各データセットにおいて、空間的に関連付けられた各医用画像を生成し、その解剖学的構造を示すことが挙げられる。
【0004】
同じまたは異なるスキャン方式を使用して異なる時刻に得られた特定の構造体または特定のタイプの構造体、例えば、肺結節などが関連付けられることも望まれている。
【0005】
同じ患者に対する複数のスキャン間の時間差は、例えば数時間もしくは数日間など短いことも、例えば数年間など長いこともある。異なるスキャンにより得られたデータをまとめて処理する必要性、または、1回のスキャンから得られた情報を別のスキャンの解析において使用する必要性は、特に各スキャンが時間的に大きく隔たっているかまたは異なる場所で得られている場合に、大きな技術的困難を提示する可能性がある。
【0006】
例えば、ある患者は2004年に上海で胸部CTスキャンを受け、正常であると報告されたとする。また、同じ患者は2005年に東京で胸部CTスキャンを受け、2個の結節が発見されたとする。病気の進行を検証するために2004年に得られたCTのデータセットにおける結節の位置を調べることが所望され得る。しかし、技術的、法的、または、他の理由により、特に異なる国の病院間で大きなサイズの三次元データセットを共有するのは困難である。
【0007】
他の例において、発作を起こしている患者は2002年に脳MRスキャンを受け、続いて、大脳浮腫の治療を受けたとする。同じ患者は脳卒中を起こした後で2009年に緊急でCTスキャンを受けたとする。この患者が過去に脳卒中を起こした部位を緊急CTスキャンのデータにおいて示すことが望ましい。しかし、2002年に得られた三次元のMRデータセットは、保存スペースが限られているために削除される。多くの病院の通常の慣行に従って、二次元のキー画像データのみが保存されている。したがって、所望の領域を正確に指し示すことが不可能となり得る。
【0008】
さらなる例において、患者はサンパウロの病院で腹部CTスキャンを受けたとする。肝臓の病変が検出され、良性であるか、または、経過観察が必要であると考えられ得る。そこで、3ヶ月後にブラジルの人里離れた町をモバイルCTトラックが訪れ、同じ患者にCTスキャンが実施されたとする。モバイルCTトラック内のCTスキャナによって得られたCTデータと並べて病院で得られたCTデータを示すことが、モバイルCTトラックのオペレータにとっては望ましい。しかし、モバイルCTトラックと病院との間でデータを送信するために利用可能なワイヤレス帯域幅は限られており、モバイルCTトラックと病院との間でデータを共有することは実際には困難または不可能である。
【0009】
上記の各例は、データが遠く離れた場所間で共有されるべきであるという状況下、または、データが時間的に大きく離れた時点で得られたという状況下における事例である。しかし、特に分散型サーバアーキテクチャが使用されている場合、同じ病院内に所在するシステム間でさえ、データの共有には同じく問題があることがある。
【0010】
多くのシステムにおいて、セントラルサーバは、ネットワークを介して多くの異なる医用画像診断装置、例えばCTスキャナやMRスキャナに接続されている。各医用画像診断装置は、その装置が実施した測定結果をセントラルサーバに送信する。送信された測定結果は通常このセントラルサーバで画像保存通信(PACS)システム内に記録および保存される。これら測定結果は、通常は1つまたは一連の医用画像を有する医用画像データセットの形態になっている。医用画像は医用画像診断装置の前にいるオペレータによって閲覧および処理可能である。
【0011】
異なる医用画像診断装置から、または、異なる時刻に得られた医用画像または他の結果を関連付ける場合、通常、関連付け処理は、セントラルサーバで実施されている。解剖学的構造体の位置は、異なる時刻に、または、異なる装置により得られた医用画像データセット間ではほとんど常に異なっている。2つの画像データセットを関連付けする場合、セントラルサーバは、通常、剛体レジストレーション処理または非剛体レジストレーション処理を実行する。例えば、診断の一般的慣行では、1つの医用画像データセットを参照基準として他の医用画像データセットを参照基準にレジストレーションするか、または、異なる各医用画像データセットを対にしてレジストレーションしている。
【0012】
例えば医学研究の目的で、一般的な参照基準との比較を可能にするために多くの異なる患者からの画像データセットを1つのアトラスにレジストレーションすることも知られている。
【0013】
より近年では、複数の医用画像診断装置からのデータを処理するために分散型サーバアーキテクチャが使用可能であることが提案されており、ここでは独立したサーバが各医用画像診断装置と関連づけられている。例えば、1台のサーバがCTスキャナに付属し、他のサーバがMRスキャナに付属し、さらなるサーバがさらなるCTスキャナに付属している。個々のサーバはネットワークを介して互いに、かつ、少なくとも1台のクライアントサーバに接続されている。これらのサーバは相互接続されているものの、各サーバは、その連動した医用画像診断装置によって生成された医用画像データを保存および処理するように構成されている。例えば、CTスキャナに付属しているサーバはCTデータを処理および保存し、第2のCTスキャナに付属しているサーバは第2のCTスキャナからのデータを処理および保存し、かつ、MRスキャナに付属しているサーバはそのMRデータを処理および保存する。
【0014】
このような分散型サーバシステムにおいて、第1のCTスキャナと連動した第1のサーバ上で実行されている処理アプリケーションは、そのCTスキャナからのデータに直接アクセス可能であるが、ネットワークを介した時間のかかるデータ転送を要求することによってのみ第2のCTスキャナまたはMRスキャナからのデータにアクセス可能である。N個のデータセットにわたり構造体の場所を関連付けるために、非最適なインプリメンテーションではデータセットの最大O(N2)回の比較が必要となることがあり、各比較は2個のデータセット間のレジストレーション情報を生成する。さらに進んだインプリメンテーションでは1個のデータセットが参照基準に指定されているが、それでもO(N)回の比較を必要とすることがあり、その際、他のデータセットの各々は、この参照基準とともにレジストレーションされる。前述の分散型システムを使用したN個のデータセットのレジストレーションと相関の処理のインプリメンテーションには、ネットワークを介したCTまたはMRのデータセットの最大O(N2)回の送信が必要なことがある。なぜなら、各アプリケーションが、直接比較のためにそのアプリケーションが必要とするデータへのアクセスを試みるからである。1個のデータセットを参照基準に指定することが実践的であるとしても、レジストレーションを実行するためには、それでも1台のサーバに最大O(N)個のデータセットを送信することが必要となるであろう。そのような大量のデータの送信および処理は、時間もかかり、かつ、非効率でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開2008/0118125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
目的は、医用画像の位置合わせに関する効率を向上することが可能な医用画像処理システム、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本実施形態に係る医用画像処理システムは、互いにネットワークを介して接続された第1の医用画像処理装置と第2の医用画像処理装置とを備える。前記第1の医用画像処理装置は、第1の医用画像データの第1の参照基準への第1の位置合わせ情報を計算する第1の計算部、及び前記第1の医用画像データと前記第1の参照基準とを記憶する第1の記憶部、を備える。前記第2の医用画像処理装置は、第2の医用画像データの第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を計算する第2の計算部、及び前記第2の医用画像データと前記第2の参照基準とを記憶する第2の記憶部、を備える。前記第1の医用画像処理装置は、さらに、前記第1の位置合わせ情報と、前記第1の医用画像データから発生される表示用の画像データである第1のキー画像データとを含むメッセージを、前記ネットワークを介して送信する通信部を備える。前記第2の医用画像処理装置は、さらに、前記第1の位置合わせ情報と前記第2の位置合わせ情報とに基づき、前記第2の医用画像データから前記第1のキー画像データと解剖学的に位置整合した表示用の画像データである第2のキー画像データを生成する位置合わせ部を備える
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る医用画像処理システムの概略図。
図2図1の医用画像診断装置に連動したサーバを示す概略図。
図3図1の実施形態を使用して実行されたレジストレーション処理を示すフロー図。
図4】本実施形態の応用例1に係る医用画像処理システムの概略図。
図5図4の医用画像処理システムによるレジストレーション処理の結果を示す図。
図6】本実施形態の応用例2に係る医用画像処理システムの処理の流れを模式的に示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像処理システム、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法を説明する。
【0020】
本実施形態に係る医用画像処理システムは、第1の計算部、第2の計算部、及び位置合わせ部を有する。第1の計算部は、第1の医用画像データの第1の参照基準への第1の位置合わせ情報を計算する。第2の計算部は、第2の医用画像データの第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を計算する。位置合わせ部は、第1の位置合わせ情報と第2の位置合わせ情報とを利用して第1の医用画像データと第2の医用画像データとを位置合わせする。
【0021】
図1は、本実施形態に係る医用画像処理システムの構成を示す図である。
【0022】
図1の医用画像処理システムは、2台のCTスキャナ2、4とMRスキャナ6とを備えている。各スキャナ2、4、6は固有のサーバを有する。具体的には、CTスキャナ2はCTサーバ8に接続され、CTスキャナ4はCTサーバ10に接続され、MRスキャナ6はMRサーバ12に接続されている。
【0023】
サーバ8、10、12は、ネットワーク14を介してPACSサーバ16とクライアント端末18とに接続されている。クライアント端末18は、医用画像や画像処理後の医用画像をユーザに提示するよう動作可能である。図1に係る医用画像処理システムは、単一のクライアント端末18とクライアント端末18に接続されたディスプレイ20とを含んでいる。クライアント端末18は、例えば、パーソナルコンピュータである。
【0024】
図1の医用画像処理システムは、説明を具体的に行うため、2台のCTスキャナと単一のMRスキャナとを含んでいるとした。しかしながら、本実施形態に係る医用画像処理システムは、いずれの数及びタイプのスキャナやサーバも含んでもよい。
【0025】
図2は、サーバ8の詳細な構成を示す図である。サーバ8は、メモリ30と処理リソースとネットワークカード34とを含んでいる。メモリ30は、単一のハードディスクドライブ、または複数のハードディスクドライブからなる。処理リソースは、CPU32により実現される。ネットワークカード34は、ネットワーク14を利用して通信するためのカードである。サーバ8は、様々な画像処理手順の実施を指示するために、および、画像データを表示するために、オペレータにより使用されるターミナル36とディスプレイ38とに接続されていてもよい。
【0026】
各スキャナによって実施されたスキャン結果は、CTサーバ8のメモリ30内において画像データベース40の形式で保存されている。また、メモリ30は、参照基準データセット42をアトラスデータセットの形式で保存している。
【0027】
具体的には、メモリ30は、画像データベース40と参照基準データベース42とを有している。画像データベース40は、CTサーバ8により発生された第1の医用画像データセット(CT画像データセット)を記憶している。参照基準データベース42は、第1の参照基準(アトラスデータセット)を記憶している。また、メモリ30は、他のサーバ10,12から送信された第2の医用画像データセットの第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を記憶している。
【0028】
本実施形態において医用画像データセットは、一回の3次元スキャンにより発生される、3次元的な直交座標系により規定される単一の画像データファイル(ボリュームデータあるいはマルチスライスデータ)を指すものとする。
【0029】
CPU32は、例えば、画像解析機能やレンダリング機能等の画像処理を実行可能に構成されている。画像解析機能は、構造の測定もしくは識別などに利用される。レンダリング機能は、断面画像、投影画像、サーフェスレンダリング画像、および、得られたデータから生成された他の合成画像などを提示するために利用される。
【0030】
本実施形態においてCPU32は、計算部及び位置合わせ部として機能する。計算部として機能する場合、CPU32は、画像データベース40に記憶されている第1の医用画像データ(図2の場合、CTスキャナ2により発生されたCT画像データ)の第1の参照基準への第1の位置合わせ情報を計算する。位置合わせ部として機能する場合、CPU32は、第1の位置合わせ情報と、他のサーバ10,12から送信された第2の医用画像データ(図2の場合、CTスキャナ4により発生されたCT画像データ、あるいは、MRスキャナ6により発生されたMR画像データ)の第2の参照基準への第2の位置合わせ情報とを利用して第1の医用画像データと第2の医用画像データとを位置合わせする。換言すれば、第2の医用画像データに解剖学的に位置整合した第1の医用画像データが生成される。これにより第1の医用画像データと第2の医用画像データとが位置合わせされる。
【0031】
計算された第1の位置合わせ情報は、他のサーバ10,12からの要求に応答して、ネットワークカード34によりネットワーク14を介して要求元のサーバ10,12に送信されても良い。また、ネットワークカード34は、第2の医用画像データに位置合わせされた第1の医用画像データをネットワーク14を介してクライアント端末18に送信しても良い。さらに、ネットワークカード34は、位置合わせされていない第1の医用画像データをネットワーク14を介して他のサーバ10,12及びクライアント端末18に送信しても良い。クライアント端末18には、第1の医用画像データと位置整合して表示される他の医用画像データ(第2の医用画像データ)が他のサーバ10,12から送信される。そしてクライアント端末18は、位置合わせされた第1の医用画像データと第2の医用画像データとをディスプレイ20に表示する。
【0032】
なお、図2においては、スキャナ及びサーバの組合せの一例として、CTスキャナ2及びCTサーバ8の組合せを例示した。しかしながら、図2のスキャナ及びサーバは、CTスキャナ4及びCTサーバ10の組合せであっても、MRスキャナ6及びMRサーバ12であっても良い。この場合、CTサーバ10及びMRサーバ12の構成は、図2のCTサーバ8と同一の構成を有している。
【0033】
位置合わせは、レジストレーション(registration)と呼ばれている。また、位置合わせ情報は、第1の医用画像データと第2の医用画像データとを解剖学的に位置合わせするために必要な情報である。例えば、位置合わせ情報は、第1の医用画像データの座標系と第2の医用画像データとの間の座標変換式やベクトル等の変換情報を有している。また、位置合わせ情報は、位置合わせに利用した特徴点の座標を含んでもよい。例えば、位置合わせ情報は、DICOM規格におけるレジストレーションデータに対応する。
【0034】
動作時において、スキャナ2、4、6は、患者または他の被験者に対してスキャンを実施し、かつ、それらのサーバ8、10、12に画像データを保存する。サーバ8、10、12は、それらのスキャナ2、4、6から得られて保存されたデータセットに対して画像処理を実行する。以下に説明するように、各サーバ8、10、12が各医用画像データセットを得ると、各医用画像データセットをサーバに保存されているアトラスデータセットに自動的にレジストレーションし、そのデータセットと一緒にレジストレーションを示すレジストレーションデータを保存する。レジストレーション処理は、オペレータから要求された時、他の処理により要求された時、または、他のデバイスにより要求された時に実行される。
【0035】
複数のサーバ8、10、12は、シンクライアント技術を使用して、画像データの処理結果をクライアント端末18にて放射線科医または他の医療専門家などのユーザに提示可能である。接続は、TCP/IPまたは同様のネットワークを使用して1つまたは複数のサーバからクライアント端末18で実行されているクライアントアプリケーションへと確立されている。クライアントアプリケーションは、複数のサーバ8、10、12からの複数の医用画像を同時に表示可能である。また、クライアントアプリケーションは、ユーザによる制御信号を適切なサーバに返信するためのサブシステムに組み込まれたユーザインターフェースも提供する。
【0036】
上述のように、異なる医用画像診断装置から得られた複数の医用画像データセットを組み合わせて処理または表示することは、多くの画像処理にとって有用である。この際、同じ位置が各医用画像データセット内の同じ解剖学的構造体に帰することができるように、患者の解剖学的構造を参照して医用画像データセットを共通の座標系にレジストレーションすることを必要とする。
【0037】
スキャナ2、4、6のうちの異なるスキャナを使用して得られた異なるサーバ8、10、12に保存されている医用画像データセットを、サーバ8、10、12間での医用画像データセットまたは他の大量のデータの通信を必要とせずにレジストレーションすることが可能となる。
【0038】
図3は、本実施形態に係るレジストレーション処理の典型的な流れを示す図である。処理手順は、対にしての比較またはサーバ8、10、12間での大量のCT、MR、または、PETの医用画像データセットの送信を必要とせずに、異なるCTやMR、PETの医用画像データセットまたは他の医用画像データセットにおいて解剖学的構造体の相関を得ることが可能である。
【0039】
上述のように、図1の実施形態では、患者アトラスデータセットの形式で参照基準データセットがサーバ8、10、12の各々に保存されている。患者アトラスデータセットは、CTまたはMRにおける患者の全般的な解剖学的構造の合成画像である。このアトラスデータセットは製品の開発中にコンパイルされ、製造中に各CTまたはMRサーバ製品に組み込まれる。各アトラスデータセットは、CTもしくはMR等の実際の走査形式と同じデータタイプのものであると良い。また、各アトラスデータセットは、CTもしくはMRスキャナによって生成されるスカラー測定値の代わりに、例えば、各空間位置における測定値もしくは計算指標のベクトルを備える追加のデータを含むデータタイプのものであってもよい。
【0040】
アトラスは、人体の全体が示され、性別および他の相違による主な解剖学的変異が示され、かつ、人体各部が正常な状態で示されるように、CTまたはMRの十分な実際のデータセットを集めることによって作成される。アトラスを作成する目的で健康な被験者の医用画像を入手することは現実的または倫理的でないため、患者の医用画像は適切な匿名化および法的手続きの後に使用されている。事実、何らの病変または異常も視覚化されていないという意味では、多くの患者の医用画像は正常である。他のデータセットは正常な解剖学的構造と異常な解剖学的構造とが混ざり合っている。このような医用画像を使用するために、ある専門家は医用画像の異常な部分と正常な部分とに注釈を付けている。正常な部分のみがアトラスに含まれる資格を持つことになる。専門家は解剖学的変異による分類も示唆することがある。その後、正常な医用画像データは解剖学的変異ごとに分類するため、および、異なる走査形式の医用画像診断装置からのデータをレジストレーションを促進する方法でマージするために処理される。結果として得られたデータはCTスキャナ、MRスキャナ、PETスキャナ、または、これらスキャナに接続されたサーバに組み込まれる。
【0041】
換言すれば、アトラスは、健常者の標準的な3次元的解剖学的構造を模式的に示す3次元的な画像データである。すなわち、アトラスは、解剖学的構造、または解剖学的構造における特定の器官に関する解剖図譜である。
【0042】
全ての関連アトラスデータを備えた単一の組み合わせアトラスは、いくつかの実施形態において、各患者画像データセットを伴ったレジストレーションのために使用可能である。他の実施形態において、アトラスデータのサブセットを備えたアトラスは、患者の特徴に基づき選択可能である。例えば、63歳の女性患者について得られた医用画像データは、55歳と70歳の間の女性患者の医用画像データから生成されたアトラスデータにレジストレーション可能である。
【0043】
図1の実施形態において、CTサーバ8、10に保存された各CTアトラスデータセットは同一であり、かつ、各々CTデータを備えている。MRサーバ12に保存されたMRアトラスデータセットは、CTサーバ8、10に保存されたアトラスデータセットとは異なり、かつ、MRデータを備えている。CTアトラスデータセットおよびMRアトラスデータセットをレジストレーションするための前段のレジストレーション処理が実行される。MRアトラスデータセットとCTアトラスデータセットとにおける位置間のマッピングを可能にするレジストレーションデータは、個々のアトラスデータセットとともにサーバ8、10、12に保存されている。また、同一のアトラスデータセットまたは他の参照基準データセットは、サーバ8、10、12の各々に保存されていてもよい。
【0044】
上述のように、各医用画像データセットは、参照基準に自動的にレジストレーションされる。図3の処理の場合、ステップS50の第1段階において、CTスキャナ2により得られた患者の第1の医用画像データセットは、CTサーバ8に保存された患者アトラスデータセットと比較され、第1の医用画像データセットから患者アトラスデータセットへのレジストレーションデータが計算される。レジストレーション処理は、例えば、剛体レジストレーションと非剛体レジストレーションとのいずれか、または、その組合せにより実行される。
【0045】
レジストレーション処理は、初期的なマッチング処理を有している。初期的なマッチング処理は、患者アトラスデータセットの位置と、患者アトラスデータセットによって示された画像と第1のデータセットによって示された画像との間の許容可能なマッチングをもたらす第1のデータセットの位置との間の食い違いに対して初期検索が実行される。初期マッチング手順は、参照基準データセットと真実の位置に近い測定データセットとの間の垂直方向の食い違いを決定するために、横方向での異なる開始点から多くの高速検索を実行することを備えている。いずれの適した検索およびマッチング手順も使用可能であり、いずれの適した最適化技術または解空間を検索するための他の技術も備えてよい。例えば、この最適化のためにPowell法が使用されている。使用可能な他の最適化法には、シミュレートアニーリング法(simulated annealing)、Broyden−Fletcher−Goldfarb−Shanno(BFGS)法、および、単体法がある。
【0046】
初期マッチング手順において得られた食い違いまたは変換は開始点として使用され、次の段階ではさらに精密なマッチング手順が実行され、この手順は、患者アトラスデータセットによって示された三次元画像とともに、第1の医用画像データセットによって示された三次元画像の最良のレジストレーションを提供する剛体変換を検索することを備えている。再び、解空間の検索のためのいずれの適した最適化技術または他の技術も使用可能である。開始点として初期マッチング手順で得られた食い違いまたは変換を使用することによって、最善の剛体変換の検索が検索空間の極大値または極小値に固着しないように、さらに精密なマッチング手順が合理的な開始場所で開始されることが確実になる。
【0047】
図1の実施形態において、剛体変換は、第1の医用画像データセットの患者アトラスデータセットへのレジストレーションデータを得るために、必要に応じて第1の医用画像データセットの座標を置き換え、かつ、回転させる。代案となる実施形態では、非剛体変換が使用される。いくつかのそのような代案実施形態において、剛体変換が先ず得られ、かつ、最適な非剛体レジストレーションに対する検索のための開始点として使用される。
【0048】
この場合、サーバに保存され、かつ、医用画像データセットを伴うデータは、第1の医用画像データセットから得られてオペレータ、例えば、放射線科医によって選択された第1のキー画像データ、および、オペレータの知見に関する注記または他の情報も含んでいる。
【0049】
キー画像は、医用画像データセットに基づいて発生される表示用の2次元画像データである。例えば、第1のキー画像は、医用画像データセットに多断面再構成処理(MPR処理)することにより発生されるMPR画像や、ボリュームレンダリング処理することにより発生されるボリュームレンダリング画像、投影処理することにより発生される投影画像である。例えば、キー画像は、読影時等において医師等による指示に従って、医用画像データセットに基づく複数の表示画像の中から選択される。
【0050】
続いて、患者の第2の医用画像データセットを生成するためにMRスキャナ6を使用して、MR測定が患者に対して実施される。MRスキャナ6を使用して得られた患者の第2の医用画像データセットは、第2の医用画像データセットから患者アトラスへのレジストレーションデータを計算するために、MRサーバ12に保存されている患者アトラスデータセットと比較される。レジストレーション処理がこの比較のために使用される。
【0051】
1台のサーバ上で実行されているアプリケーションが解剖学的構造体または画像を異なるサーバに保存されている患者の他の医用画像から得られた解剖学的構造体または画像と相関させる必要のある場合がある、この時、このアプリケーションは、その構造体の座標を現在のスキャン空間からアトラス空間に変換する。続いて、アプリケーションは、第2の医用画像のアトラス空間へのレジストレーションを見出すために他のサーバまたはリポジトリに照会し、レジストレーションの数学的逆数を計算する。そして、第1の医用画像の座標をアトラス空間の座標系から第2の医用画像の座標系へ変換するためにレジストレーションの逆数を使用する。
【0052】
例えば、図1の実施形態において、例えばCTとMRの画像データを相関させるために、同じ患者に対して実施されたCTとMRの両方の測定値を相関させることが所望される。第2の画像データセットを得るためにMRスキャナ6を使用したオペレータ、例えば、放射線科医は、CTスキャンが既に実施されていることを、その患者に関連した電子化された患者記録から決定する。この放射線科医がCTおよびMRの両方の医用画像を管理している場合、放射線科医は記録に照会せずとも過去のCT医用画像を知っていてよく、かつ、患者に対するCTとMRの組み合わせスキャンプログラムの一環としてCTスキャンやMRスキャンを実施してもよい。
【0053】
すなわち、ステップS50において、CTサーバ8は、CT画像データセットをCTアトラスデータセットにレジストレーションし、第1の位置合わせ情報(CTレジストレーションデータ)を計算する。また、ステップS50において、MRサーバ12は、MR画像データセットをMRアトラスデータセットにレジストレーションし、第2の位置合わせ情報(MRレジストレーションデータ)を計算する。CTアトラスデータセットとMRアトラスデータセットとが位置整合している場合、CTアトラスデータセットからMRアトラスデータセットへのレジストレーションデータもCTサーバ8からMRサーバ12に送信する必要がない。反対に、CTアトラスデータセットとMRアトラスデータセットとが位置整合していない場合、CTアトラスデータセットからMRアトラスデータセットへのレジストレーションデータをCTサーバ8からMRサーバ12に送信する必要がある。
【0054】
ステップS52において、オペレータは、MRサーバ12に対して、CTサーバ8にメッセージを送信して第1の医用画像データセットから得られた第1のキー画像データを要求するように指示する。これに応じて、CTサーバ8は、MRサーバ12に、第1の医用画像データセットの座標系による第1のキー画像データを送信する。CTサーバ8は、MRサーバ12に、第1のレジストレーションデータ、および、必要であれば、CTアトラスデータセットのMRアトラスデータセットへのレジストレーションを示すデータも送信する。
【0055】
すなわち、ステップS52においてCTサーバ8は、CT画像データセットに基づく第1のキー画像データと第1のレジストレーションデータとをMRサーバ12に送信する。
【0056】
ステップS54においてMRサーバ12のCPU32は、第1のレジストレーションデータを処理し、かつ、第1の医用画像データセットのレジストレーションデータによって示されたCTアトラスデータセットへのマッピングに基づき、CTサーバ8から受信した第1のキー画像データの座標を第1の医用画像データセットの座標系からCTアトラス空間の座標系に変換する。
【0057】
換言すれば、ステップS54においてMRサーバ12は、第1のレジストレーションデータを利用して第1のキー画像データの座標をアトラス空間の座標系に変換する。
【0058】
CTアトラスデータセットとMRアトラスデータセットとが異なる場合、ステップS54において、第1のキー画像データの座標をCTアトラス空間の座標系からMRアトラス空間の座標系に変換される処理がMRサーバ12により行われる。
【0059】
ステップS56においてMRサーバ12のCPU32は、第2の医用画像データセットのMRアトラスデータセットへのマッピングの逆数を計算する。CPU32は、この逆数を第1の医用画像データセットに基づく第1のキー画像データ(この場合、CT画像データセット)に適用し、この第1のキー画像データの座標をCTアトラスデータの座標系から第2の医用画像データセット(MR画像データセット)の座標系に変換する。
【0060】
ステップS58においてMRサーバ12のCPU32は、第1の医用画像データセットの第1のキー画像データの座標に対応する第2の医用画像データセットからデータを選択する。
【0061】
換言すれば、ステップS58においてMRサーバ12は、第2の医用画像データセットに基づいて、第1のキー画像データの座標に対応する第2のキー画像データを発生する。第1のキー画像データと第2のキー画像データとは、第1のレジストレーションデータ及び第2のレジストレーションにより、第2の医用画像データセットの座標系において解剖学的に位置整合している。
【0062】
ステップS60においてMRサーバ12は、第1のキー画像データと第2のキー画像データとを、第2の医用画像データセットの座標系である共通の座標空間に同時または連続に表示する。第1のキー画像データと第2のキー画像データとは、横に並べて表示された場合、合同に見える。
【0063】
上記説明により、本実施形態に係る医用画像処理システムは、少なくとも第1の計算部、第2の計算部、及び位置合わせ部を有している。第1の計算部は、第1の医用画像データの第1の参照基準への第1の位置合わせ情報を計算する。第2の計算部は、第2の医用画像データの第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を計算する。位置合わせ部は、第1の位置合わせ情報と第2の位置合わせ情報とを利用して第1の医用画像データと第2の医用画像データとを位置合わせする。
【0064】
具体的には、第1の参照基準は、健常者の標準的な3次元解剖学構造を示す第1のアトラスデータを示し、第2の参照基準は、健常者の標準的な3次元解剖学構造を示す第2のアトラスデータを示している。また、第1の参照基準と第2の参照基準とは各々解剖学的構造体のリストを有していてもよい。
【0065】
例えば、第1の医用画像データ及び第2の医用画像データは、単一の画像のデータ、複数の画像のデータ、または、ボリュームデータである。
【0066】
また、本実施形態に係る医用画像処理システムは、位置合わせされた第1の医用画像データと第2の医用画像データとを表示する表示部をさらに備えていてもよい。表示部は、例えば、図1のクライアント端末18に接続されたディスプレイ20に対応する。
【0067】
例えば、第1の参照基準と第2の参照基準とは、実質的に同一である。この場合、第1の位置合わせ情報は、第1の医用画像データの座標系から第1の参照基準及び第2の参照基準に共通する座標系への第1の変換情報である。また、第2の位置合わせ情報は、第2の医用画像データの座標系から共通座標系への第2の変換情報である。位置合わせ部は、第1の変換情報と第2の変換情報とを組み合わせて第1の医用画像データと第2の医用画像データとを位置合わせする。
【0068】
また、第1の参照基準と第2の参照基準とは、実質的に異なっていても良い。この場合、位置合わせ部は、第1の位置合わせ情報、第2の位置合わせ情報、及び第1の参照基準の第2の参照基準への第3の位置合わせ情報を利用して、第1の医用画像データと第2の医用画像データとを位置合わせする。詳細には、第1の位置合わせ情報は、第1の医用画像データの座標系から第1の参照基準の座標系への第1の変換情報である。第2の位置合わせ情報は、第2の医用画像データの座標系から第2の参照基準の座標系への第2の変換情報である。第3の位置合わせ情報は、第1の参照基準の座標系から第2の参照基準の座標系への第3の変換情報である。位置合わせ部は、第1の変換情報、第2の変換情報、及び第3の変換情報を組み合わせて第1の医用画像データを第2の医用画像データに位置整合させる。
【0069】
本実施形態に係る医用画像処理システムは、互いにネットワークを介して接続された第1の医用画像処理装置と第2の医用画像処理装置とを備えている。第1の医用画像処理装置は、上述のCTサーバ8、CTサーバ10、及びMRサーバ12のうちの何れか一つであり、第2の医用画像処理装置は、上述のCTサーバ8、CTサーバ10、及びMRサーバ12のうちの何れか他方である。また、第1の医用画像処理装置と第2の医用画像処理装置とは、上述のCTスキャナ2、CTスキャナ4、及びMRスキャナ6に組み込まれた医用画像処理装置であっても良い。
【0070】
第1の医用画像処理装置は、第1の計算部及び第1の記憶部を有している。第1の記憶部は、第1の医用画像データと第1の参照基準とを記憶している。第2の医用画像処理装置は、第2の計算部、位置合わせ部、及び第2の記憶部を有している。第2の記憶部は、第2の医用画像データと第2の参照基準とを記憶する。
【0071】
第1の医用画像処理装置は、さらに、ネットワークを介して第2の医用画像処理装置にメッセージを送信する通信部を備えていても良い。メッセージは、第1の位置合わせ情報を含んでいる。また、メッセージは、前記第1の医用画像データのうちの、ユーザの指示に従う位置に関する第1のキー画像データを含んでいてもよい。この場合、位置合わせ部は、第1の位置合わせ情報と第2の位置合わせ情報とを利用して、第2の医用画像データのうちの、第1のキー画像データに解剖学的に位置整合する第2のキー画像データを生成する。第2の医用画像処理装置は、第2のキー画像データを表示する表示部をさらに備えていてもよい。表示部は、第1のキー画像データと第2のキー画像データとを同時に、または、順番に連続して表示する。
【0072】
換言すれば、第1の医用画像処理装置は、ネットワークを介して他の医用画像処理装置に接続された医用画像処理装置である。第1の医用画像処理装置は、医用画像データと参照基準とを記憶する記憶部と、医用画像データの参照基準への位置合わせ情報を計算する計算部と、位置合わせ情報をネットワークを介して他の医用画像処理装置に送信する通信部と、を備えている。
【0073】
また、第2の医用画像処理装置は、換言すれば、ネットワークを介して他の医用画像処理装置に接続された医用画像処理装置である。第2の医用画像処理装置は、第1の医用画像データと第1の参照基準とを記憶する記憶部と、第1の医用画像データの第1の参照基準への第1の位置合わせ情報を計算する計算部と、他の医用画像処理装置から第2の医用画像データの第2の参照基準への第2の位置合わせ情報を受信する通信部と、第1の位置合わせ情報と第2の位置合わせ情報とを利用して第1の医用画像データと第2の医用画像データとを位置合わせする位置合わせ部と、を備えている。
【0074】
各CTまたはMRデータセットをローカルに保存された参照基準と比較し、共通の参照基準空間へのマッピングに基づき異なるCTまたはMRデータセットを相関させることによって、異なる場所に保存されたいずれの2つのデータセット間のレジストレーションも、その場所間でのデータセットの送信を要求せずに計算可能となる。異なるCTとMRのデータセットにおける構造体の相関は、対にしての何らの比較またはサーバ間でのCTもしくはMRデータの何らの送信もせずに達成可能である。この処理は、レジストレーションA→B、B→C、および、A→Cがある場合に(A→B、B→C)の数学的組み合わせがA→Cの近似となるという性質に基づいている。この処理は、異なる医用画像間の相関を可能にする一方で分散型サーバアーキテクチャを使用可能とするためにサーバ間での送信を必要とするデータの量の大幅な削減を可能とする。
【0075】
この処理は、N個の医用画像の各々をアトラスにレジストレーションするためにO(N)回の比較を使用し、所望されない限り、そのレジストレーションを達成するためにCTまたはMRデータの何らの通信も必要としない。レジストレーションを達成するために、通常は少量のレジストレーションデータのみが異なるサーバ間で通信されている。
【0076】
代案となる実施形態において、データの処理および表示はサーバまたは他のデバイスのいずれか1つで実行可能である。例えば、CTおよびMRのデータセットからのキー画像は、クライアント端末18に送信可能であり、かつ、ディスプレイ20上で共通の座標空間に表示可能である。第1の医用画像データセットおよび第2の医用画像データセットからの画像または他のデータの表示は、いずれの一般的な座標空間、例えば、アトラス空間、第1の医用画像データセットの座標空間、または、第2の医用画像データセットの座標空間においても可能である。
【0077】
本実施形態に係るレジストレーション処理において、CT画像データセットとMR画像データセットとの間の相関は、CT画像データセットに基づくキー画像データに対応するMR画像データセットに基づくキー画像データを選択および表示するために使用される。しかし、本実施形態に係るレジストレーション処理は、キー画像データの表示には限定されず、異なる医用画像データセットを相関させるために使用することができる。例えば、本実施形態に係るレジストレーション処理は、構造の測定または識別などの画像解析機能を実行すること、ならびに、断面画像、投影画像、サーフェスレンダリング画像、および、得られたデータから生成された他の合成画像などのレンダリング機能を備えることができる。共通のアトラス空間へのレジストレーションに基づく相関により、医用画像データセット間での直接的なレジストレーションを施すこと無く、異なる医用画像データセットの対応する部分をレジストレーションすることが可能になる。
【0078】
本実施形態に係る医用画像処理システムは、時間経過に伴う患者の解剖学的構造の変化を示す医用画像データに描出される解剖学的構造の変化を追跡するために使用される。この医用画像データは、CTスキャナ等の医用画像診断装置を使用して収集可能である。
【0079】
例えば、本実施形態に係る医用画像処理システムは、肺結節を時系列で追跡するために使用されてもよい。患者がCTスキャンを受けるごとに、CTサーバ8上で実行されているアプリケーションは、現在のCT画像データセットにアクセスし、その現在のCT画像データセットに描出されている肺結節の位置を決定して測定することが可能である。各結節の位置は、ローカルに保存されている患者のアトラスデータセットへのレジストレーションデータに基づいて、患者アトラスの座標系に変換される。続いて、各結節の位置は、相互アトラス空間へのマッピングに基づき、同一の患者について過去にCTスキャン等により収集された医用画像データセットにおける結節の位置と相関可能である。これによって、異なる時点で得られた医用画像データセット間の直接のレジストレーションを必要とせずに病気の進行を明示することができる。現在の医用画像データセットに描出された結節と過去の医用画像データセットに描出された結節とのマッチングに要する時間を削減することができる。
【0080】
解剖学的構造の時系列変化を追跡するための本実施形態に係る応用例1に係る医用画像処理システムを図4図5とを参照しながら説明する。図4は、応用例1に係る医用画像処理システムの構成を示す図である。図4においては、CTスキャナ2およびMRスキャナ6は、異なる場所、例えば、異なる病院に設置されている。この場合、応用例1に係る医用画像処理システムは、分散型サーバアーキテクチャを有していない。代わりに、CTスキャナ2からのデータが、病院74にあるPACSシステムの一部をなすサーバ70に提供されて保存される。MRスキャナ4からのデータは、病院76にあるPACSシステムの一部をなすサーバ72に提供されて保存される。
【0081】
CTスキャナ2によって患者にCTスキャンが実施され、この患者に関するCT画像データが発生される。発生されたCT画像データがCTスキャナ2に保存されているアトラスデータセットにマッピングされる。続いて、CT画像データとマッピングを示すレジストレーションデータとがサーバ70に保存される。オペレータによる指示に従ってCT画像データセットに対して画像解析が施され、オペレータの知見を示すデータもCT画像データセットとともにサーバ70に保存される。例えば、オペレータは脳に病変を発見した場合、脳断面に関するキー画像データと病変の位置とがCT画像データセットとともに保存される。キー画像80と病変の位置82とは図5に示されている。
【0082】
続いて、病院76においてMRスキャナ6を使用して同じ患者にMRスキャンが実施され、MR画像データが収集される。そして、MR画像データの、MRスキャナ6に保存されているアトラスデータセット84へのマッピングが自動的に実行される。アトラスデータセットはCTスキャナ2に保存されているものと同じである。続いて、MR画像データセットとアトラスデータセットへのマッピングを示すレジストレーションデータとがサーバ72に保存される。
【0083】
病院76内の放射線科医は、MR画像データセットを検討し、CTスキャンが過去に実施されていることをこの患者に関する電子患者記録に従って注記する。放射線科医は、過去のCTスキャンに関した情報の要求を病院74内のサーバ70に送信する。サーバ70は、病変を示す位置データとアトラスデータセットへのマッピングを示すレジストレーションデータとともに、CT画像データセットに基づくキー画像データを病院76内のサーバ72に送信する。
【0084】
サーバ72(あるいは、サーバ72に接続されたターミナル(図示せず)で実行されているアプリケーションソフトウエア)は、サーバ70から送信されたデータから病変の位置を決定し、サーバ70から得られたレジストレーションデータ(CT画像データセットのアトラスへのマッピングを示す)を使用して、病変の位置座標をアトラス空間内の位置座標に変換する。サーバ72は、MR画像データセットのアトラスデータセットへのレジストレーションの逆数を使用して、MR画像データセット空間内の等価な位置を決定し、その等価な位置を示すMR画像データセットの一部を選択する。サーバ72は、MR画像データセットの選択された一部を処理して、サーバ70から受信したCTキー画像と幾何学的に合同な画像を生成する。
【0085】
本実施形態において、1つの病院または他の場所で過去に得られたCT画像から得られた知見は、大量のCT画像データまたはMR画像データの送信を必要せずに、一般的な座標系において、その後に別の病院または別の場所で得られたMR画像データから得られたデータ上に重ね合わせることが可能である。
【0086】
なお、病変の位置は、サーバ72ではなく、サーバ70においてアトラス空間の座標系に変換されても良い。この場合、アトラス空間における病変の座標は、サーバ70からサーバ72に送信される。
【0087】
上述の本実施形態においては、異なる場所にある医用画像データセットは患者アトラスにマッピングされるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。患者アトラスへのマッピングに限られず、マッピングはいずれの適した参照基準にも実行可能である。特定の実施形態では、異なる場所でまたは異なる時刻に同じ患者から得られた医用画像データセットの各々は、解剖学的な特徴点のリストにマッピングされる。この場合、医用画像データセットに含まれる解剖学的な特徴点の位置は、画像処理により自動的に、または、ユーザからの指示に従って手動的に識別される。
【0088】
解剖学的な特徴点として使用可能な解剖学的構造体の例には、C5左つい骨(または他のつい骨)の重心、左大腿骨頭の中心、左右の冠状動脈、左内腸骨動脈の分岐点、ウィリス氏動脈環の前交通動脈の中間点、大脳の前交連および後交連、膵頭部先端、胆管の分岐、左の腎臓の重心または他の幾何学的尺度、左二頭筋のとう骨への遠位結合点、および、骨格、神経、血管、または、他の器官の形態に基づく多くの他の構造体がある。
【0089】
解剖学的構造体が特徴点として使用されるための主な要件は、特徴点が精密かつ明確に定義されていること、および、正しい結果をもたらす有用な可能性のあるCT、MR、または、PETの医用画像またはそのような医用画像の組み合わせにおいて、解剖学的構造体の位置を自動的に決定する少なくとも1つのアルゴリズムが存在することである。いずれの適した数、例えばいくつかの実施形態においては20以上の解剖学的構造体も使用されてよい。解剖学的構造体の十分なサブセットが識別され、かつ、両方の医用画像データセットにおいて正しく位置が決定されている限りは、全ての解剖学的構造体が全ての医用画像データセットにおいて識別されること、または、識別された各解剖学的構造体の位置が正しく決定されることさえも重要ではない。
【0090】
例えば、病院のCTスキャナを使用し、その後、CTスキャナトラックのCTスキャナを使用して、異なるスキャン時刻及び異なるスキャン場所に関する同一患者のCT医用画像が得られる。病院のCTスキャナにより得られた第1のCT画像データセットは、解剖学的な特徴点の位置を識別するために処理される。解剖学的な特徴点の位置を示す第1のマッピングデータは、第1のCT画像データセットとともに保存される。原則として、特徴点は、オペレータによって識別可能である。しかし、オペレータによる識別は、非常に少数の特徴点以外では現実的ではない。本実施形態では可能な限り多くの特徴点が自動処理によって識別される。この場合、オペレータも第1のCT画像データセットから結節の位置を識別し、結節の位置も第1のCTデータセットとともに保存される。
【0091】
その後、CTスキャナトラックのCTスキャナにより得られた第2のCT画像データセットについても、解剖学的な特徴点の位置を識別するためにオペレータターミナルにより画像処理され、特徴点の位置を示すマッピングデータが第2のCTデータセットとともに保存される。
【0092】
オペレータは、この病院によって過去にCTスキャンが実施されていたことを電子患者記録から決定する。オペレータからの指示に従って、そのCTスキャンに関する医用画像データセットの要求が病院内のサーバに対して送信される。これに応じて、その病院のサーバは、第1のCT画像データセットにおける解剖学的な特徴点の位置を示す第1のマッピングデータをCTスキャナトラックのオペレータターミナルに送信する。病院のサーバは、第1のCT画像データセットから決定された結節の位置を示すデータおよび他の関連した情報、例えば、病院のオペレータにより作成された注記も送信する。
【0093】
CTスキャナトラックのオペレータターミナルは、第1のCT画像データセット内の解剖学的な特徴点の位置を、第2のCT画像データセット内の対応する解剖学的な特徴点の位置にマッピングするためのマッピング処理を実行する。マッチング処理は、誤って識別された特徴点、あるいは、位置が不正確に決定された特徴点の存在に対して強靭なものである限り使用可能である。例えば、このようなマッチング処理は、第1のCT画像データセットと第2のCT画像データセットとの両方で識別された特徴点の共通のサブセットを選択し、続いて、アフィン変換の最小自乗回帰を実行することによって達成可能である。
【0094】
続いて、このマッピング処理は、第1のCTデータセット内の結節の位置を第2のCTデータセット内の対応する結節の位置にマッピングするために使用される。CTスキャナトラックのオペレータターミナルは、第1のCTデータセットをもとに過去に決定された結節の位置を示す表示インジケータを含めて、CTスキャナトラックの表示デバイスに第2のCT画像データセットを表示可能である。したがって、新しい結節が発生したか否かをオペレータが決定することを可能にする。過去のスキャンにより得られた医用画像データセットは、異なる場所で後に実施されたスキャンにより得られた医用画像データセットにレジストレーションされ、レジストレーションされた過去の医用画像データセットと後の医用画像データセットとが並べて表示される。本実施形態によれば、このレジストレーションを実施するために医用画像データセット全体の送信は必要ない。
【0095】
本実施形態において、CTスキャナ2、4の各々に保存されている患者アトラスは同一であり、かつ、これらは対応する患者アトラスまたはMRスキャナ6に保存されている他の参照基準にレジストレーションされる。時間の経過とともに、アトラスまたは他の参照基準を構築するために利用可能な正常なデータおよびレジストレーション技術のライブラリが改善されてもよい。これにより、患者のさらに大きな部分についてさらに正確なレジストレーションを可能にする新しい患者アトラスまたは他の参照基準の構築を可能にする。さらなる実施形態において、この新しいアトラスが利用可能となった後に製造された各スキャナには、古いもの(バージョン1)と新しいもの(バージョン2)の両方のアトラスが組み込まれている。各スキャナは、アトラス(例えば、バージョン1およびバージョン2のアトラス)またはスキャナに保存されている他の参照基準の各々への医用画像データセットのレジストレーションを実行する。レジストレーションの結果(レジストレーションデータ)は、対応する医用画像データセットとともに保存される。
【0096】
続いて、両方のスキャンに利用可能な最善のレジストレーションを使用して医用画像間の比較が可能となる。例えば、過去の医用画像がバージョン1のアトラスにのみレジストレーションされ、現在の医用画像がバージョン1のアトラスとバージョン2のアトラスの両方にレジストレーションされている場合、過去と現在の医用画像を相関させるためには、バージョン1のアトラスのレジストレーションのみが使用されることになる。これに対して、さらなる医用画像がバージョン1のアトラスとバージョン2のアトラスの両方にレジストレーションされた場合は、バージョン2のアトラスのレジストレーションが現在の医用画像とさらなる医用画像を相関させるために使用されることになる。図6は、本実施形態に係る応用例2に係る医用画像処理システムの処理の流れを模式的に示す図である。図6には、CTスキャナ90、MRスキャナ92、ならびに、ネットワークを介してCTスキャナ90およびMRスキャナ92に接続されたPACSサーバ94を使用して実施された様々な動作のタイミングチャートが示されている。
【0097】
タイミングチャートの開始点において、「V1アトラス」と呼ばれる患者アトラス96の第1のバージョンがCTスキャナ90とMRスキャナ92との両方に保存されている。CT撮影日1において、患者に対するCTスキャナを使用したCTスキャンから第1のCT画像データセット98が得られる。CT画像データセット98はV1アトラスにレジストレーションされる。V1アトラスへのレジストレーションに関するレジストレーションデータはPACSサーバ94に送信される。レジストレーションデータはPACSサーバ94に保存される。CT画像データセット98はCTスキャナ90に保存される。
【0098】
また、CT画像データセット98に基づくキー画像データがオペレータからの指示に従ってCTスキャナ90により発生される。キー画像データは、CTスキャナ90からPACSサーバ94に送信され、保存される。
【0099】
その後、第1のMR画像データセット100を得るためにMR撮影日2にMRスキャナ92を使用してこの患者に対してMRスキャンが実施される。MR画像データセット100はV1アトラスにレジストレーションされる。V1アトラスへのレジストレーションに関するレジストレーションデータは、PACSサーバ94に送信され、PACSサーバ94に保存される。MR画像データセット100はMRスキャナ92に保存される。
【0100】
また、MR画像データセット100に基づくキー画像データがオペレータからの指示に従ってMRスキャナ92により発生される。キー画像データは、MRスキャナ92からPACSサーバ94に送信され、保存される。
【0101】
CT撮影日3およびCT撮影日5にCTスキャナ90を使用してこの患者にさらなるCTスキャンが行われる。CT撮影日3においてCT画像データセット102が得られ、CT撮影日5においてCT画像データセット104が得られる。また、MR撮影日4にMRスキャナ92を使用してこの患者にさらなるMRスキャンが行われ、MR画像データセット106が得られる。過去のCTスキャンおよびMRスキャンの場合のように、V1アトラスへのレジストレーションが実行され、キー画像およびレジストレーションデータがPACSサーバ94に送信され、そこで保存される。
【0102】
「V2アトラス108」と呼ばれる更新済み患者アトラスは、CT撮影日3とMR撮影日4との間にCTスキャナ90に配信され、CTスキャナ90に保存されたとする。このため、MR撮影日4に実施されたMR画像データセット106とCT撮影日5に実施されたCT画像データセット104との各々は、V2アトラス108にレジストレーションされる。MR画像データセット106のV2アトラス108へのレジストレーションに関するレジストレーションデータと、CT画像データセット104のV2アトラス108へのレジストレーションに関するレジストレーションデータとは、PACSサーバ94に送信され、保存される。
【0103】
続いて、例えば、MR画像データセット106をCT画像データセット98に相関させる場合、V1アトラスへのレジストレーションがMR画像データセット106とCT画像データセット98との相関を決定するために使用されることになる。これに対して、MR画像データセット106をCT画像データセット104に相関させる場合、V2アトラスへのレジストレーションがMR画像データセット106とCT画像データセット104との相関を決定するために使用される。なぜなら、MR画像データセット106とCT画像データセット104との両方がV2アトラスにレジストレーションされているからである。
【0104】
上述の実施形態において、対象となっている医用画像データセットの特定の部分、例えば、特定の解剖学的構造体には関係なく、画像データセットのレジストレーションのために同じ参照基準、例えば、同一のアトラスデータセットが使用されている。代案となる実施形態において、対象となっている医用画像データセットの特定の部分、例えば、特定の解剖学的構造体とは独立したレジストレーションおよびマッピングでの使用のために、参照基準の一部、例えば、アトラスデータセットの一部が選択されても良い。
【0105】
例えば、オペレータが患者の心肺系に関心を持っている場合、レジストレーションに先立ってアトラス選択ステップが実行されてもよい。この選択ステップでは、胸部域を示す患者アトラスデータセットの一部が選択され、患者のアトラスデータセットの選択された部分のみがその後の画像データセットのレジストレーションおよびマッピングで使用される。したがって、このレジストレーションおよびマッピングについては、アトラスデータセット全体が使用された場合よりも正確な胸部域のレジストレーションが得られる。同様の手順は、参照基準が解剖学的構造体のリストを備えている場合にも適用可能である。この場合、胸部域内または胸部域近くに位置する解剖学的構造体のみがレジストレーションおよびマッピングで使用されるために選択される。
【0106】
上述の実施形態においては、医用画像データセットは、CTスキャナ、MRスキャナ、および、PETスキャナにより発生された医用画像データセットであるとした。しかしながら、本実施形態に係る医用画像データセットはこれに限定されない。
【0107】
かくして本実施形態によれば、医用画像の位置合わせに関する効率を向上することが可能な医用画像処理システム、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法を提供することが実現する。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
2…CTスキャナ、4…CTスキャナ、6…MRスキャナ、8…CTサーバ、10…CTサーバ、12…MRサーバ、14…ネットワーク、16…PACSサーバ、18…クライアント端末、20…ディスプレイ、30…メモリ、32…CPU、34…ネットワークカード、36…ターミナル、38…ディスプレイ、40…画像データベース、42…参照基準データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6