(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グラフ表示部は、前記検出部による血栓の検出状況に応じて、前記グラフの時間軸方向のスケールを変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
超音波診断装置は、生体内組織の画像を表示する医用画像診断装置である。超音波診断装置は、X線診断装置やX線CT(Computed Tomography)装置などの他の医用画像診断装置に比べ、安価で被曝が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、抹消血管、産婦人科、乳癌の診断などに適用されている。特に、被検体を高いフレームレートでリアルタイムに観察できる特長は、臓器の動態診断に優れているため、心臓の壁運動の不全などの診断に優れている。また、超音波診断のひとつの機能であるドプラ法は、血流を抽出して画像化が可能であり、全診断領域の血流動態診断に効果を発揮する。
【0009】
ところで、重症心不全などに陥った場合、心臓は十分なポンプ機能を果たすことができなくなるため、心臓移植が有効とされている。しかしながら、心臓移植の実績は全世界的に待機患者数の1割程度であり、移植非適応とされる患者も少なくない。そこで、心臓の負担を軽減しながら心機能を回復できる補助人工心臓を用いた治療が行われている。左心補助の場合、左心室心突部から脱血し、ポンプを介し大動脈に血液を流す。それにより、生体心へ負担をかけずに体循環を維持、向上させることが可能となる。補助人工心臓を埋め込んだ場合、埋め込み後の細菌感染による菌血症や免疫反応による炎症、ポンプ内での血流停滞、ポンプ発熱や機械接触により血栓形成が非常に起きやすくなる。これらの要因で発生した血栓は、毛細血管で血管を詰まらせる原因ともなるため、補助人工心臓埋め込み後の血栓コントロールは重要である。
【0010】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置100の構成を示す図である。
図1に示すように、実施形態に係る超音波診断装置100は、装置本体11と、超音波プローブ12と、入力部13と、表示部14とを備える。なお、被検体P及びネットワークを含まない。
【0011】
超音波プローブ12は、複数の圧電振動子を有する。複数の圧電振動子は、後述する超音波送信部21から供給される駆動信号に基づき超音波パルスを発生し、また、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ12は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0012】
超音波プローブ12から被検体Pに超音波パルスが送信されると、送信された超音波パルスは、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信されるエコー信号の振幅は、超音波パルスが反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合のエコー信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
入力部13は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどであり、装置本体11に接続される。また、入力部13は、超音波診断装置100の操作者からの各種指示や設定要求を受け付け、受け付けた各種指示や設定要求を装置本体11に転送する。例えば、入力部13は、操作者から関心領域(ROI(Region Of Interest))の設定要求を受け付け、受け付けた関心領域を装置本体11に転送する。
【0014】
表示部14は、超音波診断装置100の操作者が入力部13を用いて各種指示や設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、表示部14は、後述する画像生成部26によって生成された超音波画像を表示する。また、表示部14は、後述するグラフ表示部28aによって生成されたグラフを表示する。なお、超音波画像は、Bモード画像、Mモード画像、ドプラ画像(カラードプラ画像、パルスドプラ画像など)であり、被検体の形態学的情報や血流情報などを表す。
【0015】
装置本体11は、超音波送信部21と、超音波受信部22と、Bモード処理部23と、ドプラ処理部24と、血栓検出部25と、画像生成部26と、画像メモリ27と、表示処理部28と、制御プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)29と、記憶部30と、インタフェース部31とを備える。なお、装置本体11が備える超音波送信部21及び超音波受信部22などは、集積回路などのハードウェアで構成される場合とプログラムで構成される場合とがある。
【0016】
超音波送信部21は、被検体Pに超音波パルスを送信する。具体的には、超音波送信部21は、パルス発生器21a、送信遅延部21b、及びパルサ21cなどを有し、超音波プローブ12に駆動信号を供給する。パルス発生器21aは、所定の繰り返し周波数(PRF(Pulse Repetition Frequency))の超音波パルスを形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。なお、PRFは、レート周波数(frHz)とも呼ばれる。また、送信遅延部21bは、超音波プローブ12から発生される超音波パルスをビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子毎の送信遅延時間を、パルス発生器21aが発生する各レートパルスに対して与える。また、パルサ21cは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ12に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部21bは、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0017】
超音波受信部22は、被検体Pからエコー信号を受信する。具体的には、超音波受信部22は、プリアンプ22a、受信遅延部22b、及び加算器22cなどを有し、超音波プローブ12が受信したエコー信号に対して各種処理を行う。プリアンプ22aは、エコー信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。図示しないA(Analog)/D(Digital)変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延部22bは、エコー信号に受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器22cは、受信遅延部22bにより受信遅延時間が与えられたエコー信号の加算処理を行う。加算器22cの加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的な受信ビームが形成される。なお、超音波受信部22から出力されるエコー信号は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合など、種々の形態を選択可能である。
【0018】
Bモード処理部23は、超音波受信部22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを行って、Bモードデータを生成する。Bモードデータは、エコー信号の強度を輝度の明るさで示す各走査線のデータである。Bモード処理部23は、生成したBモードデータを、血栓検出部25及び画像生成部26に送る。
【0019】
ドプラ処理部24は、超音波受信部22からエコー信号を受け取り、血流の速度の周波数解析などを行って、ドプラデータを生成する。ドプラデータは、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータである。ドプラ処理部24は、生成したドプラデータを、血栓検出部25及び画像生成部26に送る。
【0020】
血栓検出部25は、エコー信号から被検体Pの血液中に存在する血栓を検出し、血栓の検出結果を定量化した数値情報を生成する。具体的には、血栓検出部25は、Bモード処理部23若しくはドプラ処理部24からBモードデータ若しくはドプラデータを受け取り、受け取ったBモードデータ若しくはドプラデータに対して血栓を検出するための解析処理を実行し、被検体Pの血液中に存在する血栓を検出する。また、血栓検出部25は、血栓の検出結果を定量化した数値情報を生成し、生成した数値情報を記憶部30に送る。なお、血栓検出部25による処理の詳細は、後述する。
【0021】
画像生成部26は、Bモード処理部23によって生成されたBモードデータや、ドプラ処理部24によって生成されたドプラデータから、超音波画像を生成する。具体的には、画像生成部26は、Bモードデータに含まれる複数の走査線のデータを、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線のデータに変換(スキャンコンバート)し、表示画像としての超音波画像を生成する。
【0022】
例えば、画像生成部26は、BモードデータからBモード画像を生成する。また、例えば、画像生成部26は、ドプラデータから、ドプラ画像として、平均速度画像、分散画像、パワー画像、及びこれらの組み合わせ画像などを生成する。なお、画像生成部26に入力される前のデータを「生データ」と呼ぶことがある。
【0023】
画像メモリ27は、Bモード処理部23によって生成されたBモードデータ、ドプラ処理部24によって生成されたドプラデータ、画像生成部26によって生成された超音波画像などを記憶する。例えば、診断の後に、操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっており、静止画像的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能である。
【0024】
表示処理部28は、画像生成部26によって生成された超音波画像に対して、ダイナミックレンジ、輝度、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換などの各種処理を実行し、実行後の超音波画像を表示部14に表示する。例えば、表示処理部28は、画像生成部26によって生成されたBモード画像を表示部14に表示する。また、例えば、表示処理部28は、画像生成部26によって生成されたドプラ画像を表示部14にカラー表示する。また、本実施形態に係る表示処理部28は、グラフ表示部28aと、受付部28bとを備える。
【0025】
グラフ表示部28aは、血栓検出部25によって生成された数値情報に基づいて、血栓の検出結果を示すグラフを表示部14に表示する。具体的には、グラフ表示部28aは、記憶部30を参照し、血栓検出部25によって生成された数値情報を取得すると、取得した数値情報に基づいて、血栓の検出結果を示すグラフを適宜生成し、生成したグラフを表示部14に表示する。なお、グラフ表示部28aによる処理の詳細は、後述する。
【0026】
受付部28bは、画像生成部26によって生成されたBモード画像が、表示処理部28によって表示部14に表示された場合に、Bモード画像上で解析領域の指定を受け付ける。この場合、例えば、血栓検出部25は、受付部28bによって受け付けられた解析領域内で血栓を検出する。また、例えば、ドプラ処理部24は、受付部28bによって受け付けられた解析領域内の血流の流速を示すドプラ波形を出力する。
【0027】
制御プロセッサ29は、情報処理装置(計算機)としての機能を有し、超音波診断装置100における処理全体を制御する。具体的には、制御プロセッサ29は、入力部13を介して操作者から入力された各種指示や設定要求、記憶部30から読み込んだ各種プログラム及び各種設定情報に基づき、超音波送信部21、超音波受信部22、Bモード処理部23、ドプラ処理部24、血栓検出部25、画像生成部26、及び表示処理部28の処理を制御したり、画像メモリ27が記憶する超音波画像などを表示部14にて表示するように制御したりする。
【0028】
例えば、制御プロセッサ29は、エコー信号から血栓を検出し、グラフを表示するための専用プログラム(『画像処理プログラム』)を記憶部30から読み出し、各種処理に関する演算や制御などを実行する。また、例えば、制御プロセッサ29は、記憶部30に記憶された送信遅延パタン、受信遅延パタンを読み出して、送信方向や受信方向に応じて、送信遅延及び受信遅延を切り替える。
【0029】
記憶部30は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための装置制御プログラムや、エコー信号から血栓を検出し、グラフを表示するための専用プログラム(『画像処理プログラム』)、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)、診断プロトコルや各種設定情報などの各種データなどを記憶する。また、記憶部30は、必要に応じて、画像メモリ27が記憶する画像の保管などにも使用される。記憶部30のデータは、インタフェース部31を経由して外部周辺装置に転送することが可能である。
【0030】
インタフェース部31は、入力部13、図示しない外部記憶装置に関するインタフェースである。超音波診断装置100によって取得された超音波画像などのデータや解析結果は、インタフェース部31によって、ネットワークを介して他の装置に転送することが可能である。
【0031】
続いて、本実施形態における血栓検出に関する処理の詳細を説明する。なお、本実施形態においては、一例として、補助人工心臓が埋め込まれた患者の血栓の形成状態を把握することを目的とするケースを例示するが、実施形態はこれに限られるものではない。
【0032】
図2は、実施形態における超音波プローブ12のアプローチを示す図である。
図2に示すように、本実施形態において、超音波診断装置100は、超音波プローブ12を体内に挿入せず、胸骨上窩に置くアプローチにより、大動脈弓で血栓を検出する。大動脈弓は、生体心から大動脈に流れる循環と、心突部から補助人工心臓を介して大動脈に流れるバイパス循環とが合流する部位であり、体循環の源流部に相当する。大動脈弓で検出された血栓は、脳や四肢の末梢に流れていく。このため、本実施形態のように、大動脈弓で検出された血栓の検出結果を定量化した数値情報を生成し、血栓の検出結果を示すグラフを表示することは、治療方針の検討などに役立ち、有用である。なお、本実施形態においては、超音波プローブ12を胸骨上窩に置くアプローチを例示するが、実施形態はこれに限られるものではない。
【0033】
次に、血栓検出部25による処理の詳細を説明する。上述したように、血栓検出部25は、Bモードデータ若しくはドプラデータに対して解析処理を実行し、被検体Pの血液中に存在する血栓を検出する。この解析処理は、例えば、公知の技術を用いて実現することができる。なお、本実施形態においては、Bモードデータ若しくはドプラデータに対して解析処理を実行する例を説明するが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、血栓検出部25は、画像生成部26によって生成されたBモード画像、Mモード画像、ドプラ画像(カラードプラ画像、パルスドプラ画像など)を対象として解析処理を実行してもよい。
【0034】
赤血球や白血球は音響インピーダンスが血漿と類似するため、Bモードデータから血栓を検出することは一般に難しい。一方、血栓は音響インピーダンスが比較的高い。このため、Bモードデータから血栓を検出することは可能である。また、ドプラデータにおいて、血栓は、ドプラ成分のパワーが一瞬、顕著に高い信号となる。このため、ドプラデータから血栓を検出することも可能である。以下、Bモードデータ(Bモード画像用)から血栓を検出する手法1、Bモードデータ(Mモード画像用)から血栓を検出する手法2、ドプラデータから血栓を検出する手法3を順に説明する。なお、血栓を検出する手法は、以下の手法1〜手法3に限られるものではなく、他の公知の技術を適用してもよい。
【0035】
Bモードデータ(Bモード画像用)から血栓を検出する手法1の一例を説明する。被検体の胸骨上窩に超音波プローブ12が置かれると、超音波受信部22によって受信されたエコー信号がBモード処理部23に送られ、画像生成部26によって生成されたBモード画像が、表示処理部28によって表示部14に表示される。すると、まず、受付部28bが、表示部14に表示されたBモード画像上で、解析領域の設定を受け付ける。例えば、
図2に示すように、受付部28bは、表示部14に表示されたBモード画像上で、レンジゲートの設定を受け付ける。血栓検出部25は、この解析領域内で、血栓を検出する。
【0036】
さて、被検体の胸骨上窩に継続して超音波プローブ12が置かれ、Bモードデータは、リアルタイムに収集されるものとする。ここで、血栓検出部25は、Bモード処理部23から受け取ったBモードデータに対して、FSET(Fiber Structure Extraction Technique)による解析処理を実行し、血栓を検出する。
【0037】
具体的に説明すると、Bモードデータには、スペックルパターンと呼ばれる、空間的にランダムに分布する斑点模様が生じる。また、スペックルパターンの信号の振幅確率密度分布は、レイリー分布で近似される。そこで、血栓検出部25は、Bモードデータ内の各画素が、レイリー分布で近似される成分であるか否かの判定を行い、レイリー分布で近似されない非レイリー成分を血栓として検出する。例えば、血栓検出部25は、まず、処理対象とする画素の輝度を保持し、次に、処理対象とする画素周辺の輝度の平均値を算出し、処理対象とする画素の輝度から平均値を差し引いた減算値を算出する。血栓検出部25は、Bモードデータ内の全画素を対象にこの算出を繰り返し、その後、逆対数変換を行う。そして、血栓検出部25は、逆対数変換後、閾値を用いて、レイリー分布で近似される成分であるか否かの判定を画素毎に行う。なお、閾値は、レイリー分布の定義式を基準として、Bモードデータ内の処理画素毎に動的に設定してもよい。
【0038】
続いて、血栓検出部25は、このように検出された血栓の検出結果を定量化し、数値情報を生成する。例えば、手法1の場合、血栓検出部25は、非レイリー成分として抽出され、Bモードデータ上で連続する画素のひと固まりを1血栓と定義し、血栓(画素のひと固まり)の個数、各血栓の面積(ひと固まりに含まれる画素数)、全血栓の総面積(各血栓の面積の合計値)を、単位時間毎に求める。そして、血栓検出部25は、血栓の個数情報を「血栓数」とし、各血栓の面積情報を「血栓のサイズ」とし、全血栓の総面積情報を「血栓量」とする、単位時間毎の数値情報を生成する。この数値情報は記憶部30に格納され、グラフ表示部28aによる処理に利用される。
【0039】
次に、Bモードデータ(Mモード画像用)から血栓を検出する手法2の一例を説明する。なお、解析領域の設定は手法1と同様に行われればよいので説明を割愛する。
【0040】
Mモード画像は、Bモード画像に含まれる複数の走査線のデータの内のある走査線のデータについて、経時変化を表示するものである。すなわち、Mモード画像用のBモードデータは、ある走査線の時系列のデータである。上述したように、走査線のデータは、エコー信号の強度を輝度の明るさで示す。また、上述したように、血栓は音響インピーダンスが比較的高い。このため、走査線上を血栓が通過した場合、輝度に変化が現れる。そこで、血栓検出部25は、走査線のデータを解析し、予め定めた閾値を上回る輝度の画素を、血栓として検出する。また、血栓検出部25は、1本の走査線上における連続性(閾値を上回る輝度の画素が1本の走査線上で連続していること)や、時系列に並ぶ複数の走査線上における時系列方向の継続性(閾値を上回る輝度の画素が時系列方向に継続していること)などから、画素のひと固まりを特定し、この画素のひと固まりを1血栓と定義する。
【0041】
続いて、血栓検出部25は、このように検出された血栓の検出結果を定量化し、数値情報を生成する。例えば、手法2の場合、血栓検出部25は、1本の走査線上において連続し、時系列に並ぶ複数の走査線上において時系列方向に継続している画素のひと固まりを1血栓と定義し、血栓(画素のひと固まり)の個数、各血栓の面積(各画素のひと固まりに含まれる画素数)、全血栓の総面積(各血栓の面積の合計値)を、単位時間毎に求める。そして、血栓検出部25は、血栓の個数情報を「血栓数」とし、各血栓の面積情報を「血栓のサイズ」とし、全血栓の総面積情報を「血栓量」とする、単位時間毎の数値情報を生成する。この数値情報は記憶部30に格納され、グラフ表示部28aによる処理に利用される。
【0042】
なお、Mモード画像用のBモードデータから血栓を検出する手法は手法2に限られず、手法1と同様に、非レイリー成分を血栓として抽出する手法を適用若しくは併用してもよい。
【0043】
次に、ドプラデータから血栓を検出する手法3の一例を説明する。なお、解析領域の設定は手法1と同様に行われればよいので説明を割愛する。
【0044】
ドプラデータは、ドプラ成分のパワーを輝度の明るさで示す。また、上述したように、血栓は、ドプラ成分のパワーが一瞬、顕著に高い信号となる。そこで、血栓検出部25は、ドプラデータを解析し、ドプラ成分のパワーが予め定めた閾値を上回った場合に、血栓として検出する。
【0045】
続いて、血栓検出部25は、このように検出された血栓の検出結果を定量化し、数値情報を生成する。例えば、手法3の場合、血栓検出部25は、ドプラ成分のパワーが閾値を上回った回数を血栓の個数として、単位時間毎に求める。そして、血栓検出部25は、血栓の個数情報を「血栓数」とする、単位時間毎の数値情報を生成する。この数値情報は記憶部30に格納され、グラフ表示部28aによる処理に利用される。
【0046】
なお、ドプラデータから血栓を検出する手法は手法3に限られず、例えば、ドプラデータに含まれる分散情報から血栓を検出してもよい。また、ドプラデータから血栓を検出する手法は、カラードプラ画像及びパルスドプラ画像の両方に適用することができる。
【0047】
なお、上述した血栓検出部25による処理は、Bモードデータやドプラデータのリアルタイムな収集に併せてリアルタイムに行われてもよく、あるいは、事後的に行われてもよい。
【0048】
次に、グラフ表示部28aによる処理の詳細を説明する。グラフ表示部28aは、血栓検出部25によって生成された数値情報に基づいて、血栓の検出結果を示すグラフを表示部14に表示する。なお、グラフ表示部28aは、記憶部30を参照し、血栓検出部25によって生成された数値情報を適宜選択、あるいは必要に応じて加工(例えば、別途集計処理をするなど)をしながら、運用の形態に適したグラフを適宜生成すればよい。すなわち、グラフ表示部28aは、必ずしも、以下に説明する全てのグラフを生成する必要はない。また、以下に説明するグラフは一例に過ぎず、グラフ表示部28aは、以下に説明するグラフ以外のグラフを生成して表示してもよい。縦軸や横軸のスケールの有無も任意である。
【0049】
グラフ表示部28aは、例えば、
(グラフ1)血栓のサイズ分布及びサイズ毎の血栓数の経時変化を示すグラフ
(グラフ2)血栓数(若しくは血栓量)の経時変化を示すグラフ
(グラフ3)血栓数(若しくは血栓量)の累積値の経時変化を示すグラフ
(グラフ4)ドプラ波形と各種血栓情報との相関を示すグラフ
(グラフ5)各種グラフを組み合わせたグラフ
を表示する。
【0050】
図3は、実施形態に係るグラフ1を示す図である。グラフ表示部28aは、血栓検出部25によって生成された数値情報として、所定の時間単位で区切られた、サイズ毎の血栓数を記憶部30から取得する。数値情報を必要に応じて加工することは、前述の通りである。そして、グラフ表示部28aは、例えば、横軸に時間、縦軸に血栓のサイズ、血栓数にカラーを割り当てたグラフを設定し、設定したグラフに血栓検出部25によって生成された数値情報をプロットすることで、血栓のサイズ分布及びサイズ毎の血栓数の経時変化(時間経過に伴う変化)を示すグラフ1を生成する。なお、カラーは、例えば10段階のカラーであり、例えば、輝度が高いほど血栓数が多く、輝度が低いほど血栓数が少なくなるように割り当てられる。
【0051】
図3に示すグラフ1は、ある時刻において、どの程度のサイズの血栓が、どの程度の数存在していたか、また、時間経過に伴いその状況がどのように変化したかを示す。また、グラフ1において、ある時刻における高輝度領域の幅の広さは、血栓のサイズ分布幅が広いこと、すなわち、その時刻にあらゆるサイズの血栓が存在していることを示す。また、グラフ1において、高輝度領域の時間経過に伴う変動は、血栓の存在するピーク時間帯を示す。なお、
図3においては、説明の便宜上カラーを濃淡で表現したが、カラーであっても濃淡であってもよい。
【0052】
ここで、血栓のサイズ分布を示すグラフを表示する意味を説明する。小さなサイズの血栓が多数存在する場合と、大きなサイズの血栓が多数存在する場合とで、その危険度は同等ではない。例えば、大きなサイズの血栓が多数存在する場合は、小さなサイズの血栓が末梢血管で閉塞を起こす前に、比較的太い血管や太い血管にある狭窄部で大きなサイズの血栓が閉塞を起こす可能性が高いと推測できる。このように、血栓のサイズ分布を示すグラフを表示することは有用である。
【0053】
次に、
図4は、実施形態に係るグラフ1の変形例を示す図である。
図4に示すように、実施形態に係るグラフ表示部28aは、血栓の検出状況に応じて、時間軸方向のスケールを適宜変更する。例えば、グラフ表示部28aが、
図4の(A)に示すように、秒単位のスケールで40秒間の経時変化を表示していたとする。ここで、例えば、1分間にわずかの血栓しか検出されない状況の場合、
図4の(A)に示すように、グラフ1において高輝度領域は分散してしまい、血液中に存在する血栓の全体像を把握し辛くなる。そこで、グラフ表示部28aは、
図4の(B)に示すように、横軸のスケールを長い時間単位(例えば分単位)に変更する。例えば、スケールの変更の目安となる閾値(例えば、1分間に検出された血栓の個数)を予め定めておき、血栓検出部25が、血栓の検出状況と閾値とを比較し、比較の結果、閾値を下回る血栓しか検出されない状況の場合に、グラフ表示部28aにスケールの変更を指示すればよい。
【0054】
なお、グラフ1の実施形態は上述した形態に限られるものではない。例えば、血栓の検出状況に応じて自動的に変更するのではなく、予め定めたタイミングで変更してもよい。また、例えば、スケールを変更するのではなく、
図4の(A)に示すグラフ1と(B)に示すグラフ1とを表示部14に並列表示してもよい。
【0055】
次に、
図5は、実施形態に係るグラフ2を示す図である。グラフ表示部28aは、血栓検出部25によって生成された数値情報として、所定の時間単位で区切られた血栓数を記憶部30から取得する。そして、グラフ表示部28aは、例えば、横軸に時間、縦軸に血栓数を割り当てたグラフを設定し、設定したグラフに血栓検出部25によって生成された数値情報をプロットすることで、血栓数の経時変化を示すグラフ2を生成する。
図5に示すグラフ2は、検出された血栓数の瞬時値を示す。
【0056】
なお、グラフ2の実施形態は上述した形態に限られるものではない。例えば、グラフ表示部28aは、血栓検出部25によって生成された数値情報として、所定の時間単位で区切られた血栓量を取得してもよい。ここで、血栓量は、全血栓の総面積情報である。そして、グラフ表示部28aは、例えば、横軸に時間、縦軸に血栓量を割り当てたグラフを設定し、設定したグラフに血栓検出部25によって生成された数値情報をプロットすることで、血栓量の経時変化を示すグラフ2を生成する。また、グラフ2についても、グラフ1と同様に、スケールの変更を適用することができる。
【0057】
次に、
図6は、実施形態に係るグラフ3を示す図である。グラフ表示部28aは、血栓検出部25によって生成された数値情報として、所定の時間単位で区切られた血栓数の累積値を記憶部30から取得する。そして、グラフ表示部28aは、例えば、横軸に時間、縦軸に血栓数を割り当てたグラフを設定し、設定したグラフに血栓検出部25によって生成された数値情報をプロットすることで、血栓数の累積値の経時変化を示すグラフ3を生成する。
図6に示すグラフ3は、ある時刻から累積された血栓数を示す。グラフ3は、例えば、長時間に及ぶ手術において血栓の形成状態をモニタリングする場合等に有用である。なお、グラフ3についても、グラフ1と同様に、スケールの変更を適用することができる。また、グラフ3についても、グラフ2と同様に、血栓量の累積値とすることもできる。
【0058】
次に、
図7は、実施形態に係るグラフ4を示す図である。グラフ表示部28aは、血栓検出部25によって生成された数値情報を記憶部30から取得するとともに、画像生成部26によってリアルタイムに生成されたドプラ波形を受け取り、グラフとドプラ波形とを時間軸上で同期させて並列表示する。ドプラ波形は、血液の流速を示す波形であり、ドプラ処理部24によって生成されたドプラデータに基づき、画像生成部26によって生成されたものである。画像生成部26は、例えば、Bモード画像上に設定されたサンプルボリュームに対するドプラ偏移量を、時系列的に出力する。例えば、
図7に示すように、グラフ表示部28aは、血栓数の経時変化を示すグラフとドプラ波形とを、両者の横軸のスケールを一致させて並列に表示する。
【0059】
このように、血栓の検出結果を示すグラフとドプラ波形とを並列表示する場合、血栓検出部25は、血栓を検出する手法として、ドプラデータから血栓を検出する手法を採用することが望ましい。その理由は、例えば、医療現場における一連のルーチンの中に、ドプラデータを収集してドプラ波形を表示する手技が含まれていたとする。この場合、血栓検出部25が、血栓を検出する手法として、ドプラデータから血栓を検出する手法を採用すれば、ひとつのドプラデータから、血栓の検出結果を示すグラフ及びドプラ波形の両方を生成することができる。また、この場合、受付部28bによってBモード画像上で受け付けられた領域の指定は、血栓検出部25及びドプラ処理部24の両方に用いられればよい。すなわち、血栓検出部25は、この領域内で血栓を検出し、ドプラ処理部24は、この領域をサンプルボリュームとして、この領域内の血流の流速を示すドプラ波形を出力すればよい。
【0060】
血栓の存在診断は、心臓の動き不全、補助人工心臓の性能不全などと関連付けて評価されることが望ましい。この点、グラフ4は、ドプラ波形とともに血栓の経時変化を示すものであるので、有用である。また、グラフ4は、例えば、血栓が浮遊している瞬間の流れを観察する場合などに有用である。例えば、ドプラ波形の振幅が大きいところは血流が速い時相(心収縮期)であることを示し、振幅が小さいところは血流が遅い時相(心拡張期)であることを示すとする。この場合、軽い血栓であれば、血栓数の瞬時値は、このドプラ波形と同期して同様の傾向を示し、例えば、ドプラ波形の振幅が大きいところで血栓数の瞬時値も高くなり、ドプラ波形の振幅が小さいところで血栓数の瞬時値も低くなると考えられる。一方、重い血栓であれば、血栓数の瞬時値は、ドプラ波形と同期しないと考えられる。
【0061】
なお、グラフ4の実施形態は上述した形態に限られるものではない。例えば、ドプラ波形の時間レンジとグラフの時間レンジとを一致させず、例えば、グラフの時間レンジをドプラ波形の時間レンジよりも大きく設定し、例えば、グラフについては、計測開始からの全ての経時変化を表示してもよい。
【0062】
次に、
図8〜10は、実施形態に係るグラフ5を示す図である。例えば、
図8に示すように、グラフ表示部28aは、解析領域の設定に用いたBモード画像と、グラフ1とを並列表示してもよい。また、例えば、
図9に示すように、グラフ表示部28aは、例えば、解析領域の設定に用いたBモード画像と、スケールの異なる2種類のグラフ1とを並列表示してもよい。また、例えば、
図10に示すように、グラフ表示部28aは、解析領域の設定に用いたBモード画像と、グラフ1と、ドプラ波形と、グラフ2とを並列表示してもよい。この他、
図8〜10に図示したものに限られず、グラフ表示部28aは、
図2〜7に示した各種グラフを、適宜組み合わせて表示することができる。更に、グラフ表示部28aは、解析領域の設定に用いたBモード画像の代わりに、リアルタイムに収集されているBモード画像、Mモード画像、ドプラ画像を表示してもよい。
【0063】
上述してきたように、本実施形態によれば、適切に血栓をモニタリングすることができる。まず、超音波プローブ12を体内に挿入することなく、体表から簡便に血栓をモニタリングする手法である。また、超音波診断装置100は、被検体Pの血栓の形成状態を、定量的に(あるいは半定量的に)利用者に提示するので、利用者は、適切に血栓をモニタリングすることができる。例えば、超音波診断装置100は、エコー信号から、被検体の血液中に存在する血栓を検出し、血栓のサイズ分布及びサイズ毎の血栓数の経時変化を示すグラフ(例えば、
図3に示すグラフ1)を表示する。このグラフは、利用者に対して、適切な治療方法を選択するための指標となる情報を提供し得る。
【0064】
更に、本実施形態によれば、血栓の検出結果を示すグラフとドプラ波形とを時間軸上で同期させて並列表示するので、利用者は、例えば、血栓の形成状態と血流の状態とを関連付けて把握し得る。
【0065】
以上、実施形態を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。
【0066】
上述の実施形態においては、血栓検出部25は、血栓の検出結果を定量化した数値情報を生成するものとして説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。血栓検出部25は、更に、検出した血栓を明示する画像(例えば、血栓に対応する画素にカラーを割り当て、Bモード画像に重畳させた画像など)を生成し、生成した画像を記憶部30に送ってもよい。この場合、例えば、グラフ表示部28aは、記憶部30を参照して血栓検出部25によって生成された画像を取得し、血栓の検出結果を示すグラフを表示する際に、取得したこの画像を並列表示してもよい。なお、例えば、表示処理部28が、Bモード画像やドプラ画像を表示する際に、血栓検出部25によって生成された画像を並列表示してもよい。
【0067】
また、
図11は、他の実施形態に係る画像処理装置200の構成を示す図である。上述の実施形態においては、超音波診断装置100が血栓検出部25やグラフ表示部28aを備えるものとして説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。血栓検出部25による処理やグラフ表示部28aによる処理は、必ずしも超音波診断装置100にて実行されずに、別の筐体である画像処理装置200にて実行されてもよい。
図11に示すように、画像処理装置200は、データ記憶部210と、表示部220と、血栓検出部230と、グラフ表示部240とを備える。
【0068】
データ記憶部210は、例えば、超音波診断装置100からネットワークを介して受信したり、操作者からの入力を受け付けるなどして、解析処理の対象となるBモードデータやドプラデータを記憶する。血栓検出部230は、データ記憶部210に記憶されたBモードデータやドプラデータから、被検体の血液中に存在する血栓を検出し、血栓の検出結果を定量化した数値情報を生成する。また、グラフ表示部240は、数値情報に基づいて、血栓の検出結果を示すグラフを表示部220に表示する。この他、血栓検出部230は、上述した実施形態における血栓検出部25と同様の処理を行い、グラフ表示部240は、上述した実施形態におけるグラフ表示部28aと同様の処理を行うことができる。
【0069】
また、上述の実施形態で説明した、血栓検出部25による処理手順やグラフ表示部28aによる処理手順は、記憶部30に予め記憶された『画像処理プログラム』を制御プロセッサ29などのコンピュータが実行することによって実現することができる。この『画像処理プログラム』は、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この『画像処理プログラム』は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD(Compact Disk)−ROM(Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical Disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、制御プロセッサ29などのコンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0070】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の超音波診断装置、画像処理装置及びプログラムによれば、簡便かつ適切に血栓をモニタリングすることができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。