【実施例】
【0037】
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実験例1
CaO原料、Al
2O
3原料、及びSiO
2原料を所定の割合で混合し、高周波炉で溶融後、急冷却し、アルミノケイ酸カルシウムガラスを合成し、粉砕して粒度をブレーン値で6,000cm
2/gとした。
いっぽう、広葉樹鋸屑250g、針葉樹鋸屑250g、米糠500g、及び水140mlからなる培地を調製し、培地1,000部に対して、表1に示す無定形相の異なる硫酸アルミニウムと、アルミノケイ酸カルシウムガラスとを配合した後、混合し、プラスチック製850ml広口瓶に圧詰めした。
その後、120℃飽和蒸気圧下で加熱殺菌後、ぶなしめじの菌を植え付け、暗所、温度25℃、湿度55%の条件下で2ヶ月間かけて菌を培養した。
菌の培養後、広口瓶の中央に直径1cm程度の穴を開け(菌かき)、充分に吸水させた後、15℃、湿度95%、及び照度20ルックスの条件下で4日間培養して子実体原基を形成し、照度を200ルックスに上げて2週間程度培養を続け、子実体の収量を測定し、コントロール対比と品質とを評価した。
ぶなしめじの栽培実験は製造直後に実施するとともに、紙袋中に密封した状態で室温35℃、相対湿度90%の室温内で1ヶ月間貯蔵後のものについても同様に実験した。
なお、硫酸アルミニウムだけを用いた場合、アルミノケイ酸カルシウムガラスだけを用いた場合、両方とも用いなかった場合を比較例とした。結果を表1に併記する。
【0039】
<使用材料>
硫酸アルミニウムA:硫酸アルミニウム16水塩、市販品、無定形相85%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.00、ブレーン値1,600cm
2/g
硫酸アルミニウムB:硫酸アルミニウム16水塩、市販品、無定形相0%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.00、ブレーン値1,600cm
2/g
硫酸アルミニウムC:硫酸アルミニウムAと硫酸アルミニウムBとの混合品、無定形相30%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.00、ブレーン値1,600cm
2/g
硫酸アルミニウムD:硫酸アルミニウムAと硫酸アルミニウムBとの混合品、無定形相55%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.00、ブレーン値1,600cm
2/g
硫酸アルミニウムE:硫酸アルミニウムAと硫酸アルミニウムBとの混合品、無定形相60%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.00、ブレーン値1,600cm
2/g
硫酸アルミニウムF:硫酸アルミニウムAと硫酸アルミニウムBとの混合品、無定形相70%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.00、ブレーン値1,600cm
2/g
CaO原料 :炭酸カルシウム、関東化学社製、試薬一級
Al
2O
3原料 :酸化アルミニウム、関東化学社製、試薬一級
SiO
2原料 :二酸化ケイ素、関東化学社製、試薬一級
アルミノケイ酸カルシウムガラス:CaO50.0%、Al
2O
3 20.0%、SiO
2 30.0%、ガラス化率100%、ブレーン値6,000cm
2/g
広葉樹鋸屑:ぶな材の鋸屑
針葉樹鋸屑:すぎ材の鋸屑
米糠 :市販品
水 :純水
【0040】
<測定方法>
無定形相 :ガラス化率、硫酸アルミニウム3.5部に酸化マグネシウム1.5部を添加し、メノウ乳鉢で充分混合したのち、粉末X線回折測定を実施した。測定結果をSietronics社製定量ソフト「SIROQUANT」で解析し、無定形相の含有量を求めた。
コントロール対比:収率、きのこの栽培用添加材を添加した場合の子実体収量(g)/無添加の子実体収量(g)×100(%)
品質 :次の基準に基づいて目視評価した。子実体の大きさが揃っていて、傘の開きがない場合は「優」、子実体の大きさが揃っていない、もしくは傘がやや開き気味の場合は「可」、子実体の大きさが揃っておらず、傘もやや開き気味の場合は「不可」とした。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、無定形相が70%以下の硫酸アルミニウムと、アルミノケイ酸カルシウムガラスとを併用したときに、ぶなしめじの品質や収量が向上することが分かる。また、きのこ
の栽培用添加材を1ケ月間貯蔵後に使用しても、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。
【0043】
実験例2
表2に示す硫酸アルミニウムとアルミノケイ酸カルシウムガラスとを使用したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0044】
<使用材料>
硫酸アルミニウムG:硫酸アルミニウム16水塩、市販品、無定形相55%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.50、ブレーン値3,000cm
2/g
硫酸アルミニウムH:硫酸アルミニウム16水塩、市販品、無定形相55%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数1.00、ブレーン値3,000cm
2/g
硫酸アルミニウムI:硫酸アルミニウム16水塩、市販品、無定形相55%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数0.75、ブレーン値3,000cm
2/g
硫酸アルミニウムJ:硫酸アルミニウム16水塩、市販品、無定形相55%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数0.50、ブレーン値3,000cm
2/g
硫酸アルミニウムK:硫酸アルミニウム16水塩、市販品、無定形相55%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数0.25、ブレーン値3,000cm
2/g
【0045】
<測定方法>
結晶化度指数 :粉末X線回折を実施し、測定結果より半値幅を、含有する結晶性鉱物であるミロセビッチ石(Millosevichite)だと面間隔が3.5020Åの結晶面(113)の回折ピーク、アルノーゲン(Alunogen)だと面間隔が0.489Åの結晶面(0-41)の回折ピークからそれぞれ求めた。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数が
1.0以下であるときに、ぶなしめじの品質や収率が向上することが分かる。また、きのこ
の栽培用添加材を1ケ月間貯蔵後に使用しても、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。
【0048】
実験例3
硫酸アルミニウムJを粉砕してブレーン値の異なる硫酸アルミニウムを調製した。調製した硫酸アルミニウムと、アルミノケイ酸カルシウムガラスとを表3に示すように使用したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すように、硫酸アルミニウムのブレーン値が500〜10,000cm
2/gの範囲内では、ぶなしめじの品質や収率には大きな影響がなく、貯蔵1ケ月後も、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。
【0051】
実験例4
表4に示すように、硫酸アルミニウムLとアルミノケイ酸カルシウムガラスとを使用して、最高pHと到達時間の異なるきのこ
の栽培用添加材としたこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0052】
<使用材料>
硫酸アルミニウムL:硫酸アルミニウム8水塩、市販品、無定形相50%、含有する結晶性鉱物の結晶化度指数0.50、ブレーン値1,600cm
2/g
【0053】
<測定方法>
到達時間 :0.1規定の塩酸50mlをビーカーにとり、1gのきのこの栽培用添加材を加えて撹拌し、pHを測定して最初のpHとする。撹拌開始から10分ごとに1規定の塩酸を2ml加え、最初のpHになるまで続けた時に、きのこの栽培用添加材を加えてからpHが3.0に到達するまでの時間
最高pH :到達時間以降、pHが3.0になるまでの間の最高pH
【0054】
【表4】
【0055】
表4に示すように、Fuchs法試験で最高pHが3.5〜4.5であるとき、ぶなしめじの品質や収率が向上することが分かる。この時、きのこ
の栽培用添加材を1ヶ月間貯蔵後に使用しても、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。また、Fuchs法試験で測定したpH3.0までの到達時間が120秒以内であるとき、ぶなしめじの品質や収率が向上することが分かる。この時、きのこ
の栽培用添加材を1ケ月間貯蔵後に使用しても、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。
【0056】
実験例5
表5に示すように硫酸アルミニウムLと、アルミノケイ酸カルシウムガラスの代わりにアルカリ土類金属の複合水酸化物とを使用したこと以外は、実験例4と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0057】
<使用材料>
アルカリ土類金属の複合水酸化物:MgO-Al
2O
3-SiO
2-H
2O系化合物、MgO17.9%、Al
2O
3 26.4%、SiO
2 23.0%、H
2O 32.7%、BET値53m
2/g
【0058】
【表5】
【0059】
表5に示すように、硫酸アルミニウムと、アルカリ土類金属の複合水酸化物とを併用し、Fuchs法試験で測定した最高pHが3.5〜4.5の範囲にある時に、ぶなしめじの品質や収率が向上することが分かる。
【0060】
実験例6
硫酸アルミニウムLと、アルミノケイ酸カルシウムガラス、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びハイドロタルサイトを表6に示す割合で併用したこと以外は実験例4と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0061】
<使用材料>
アルカリ土類金属の酸化物:酸化カルシウム、試薬一級、ブレーン値5,000cm
2/g
アルカリ土類金属の複合酸化物:ジカルシウムシリケート、CaO 65%、SiO
2 35%、ブレーン値6,000cm
2/g
アルカリ土類金属の水酸化物:水酸化カルシウム、試薬一級、ブレーン値5,000cm
2/g
ハイドロタルサイト:Mg
4Al
2(OH)
12CO
3・3H
2O、MgO 34.4%、Al
2O
3 21.7%、CO
2
9.4%、H
2O 34.5%、BET値7.6m
2/g
【0062】
【表6】
【0063】
表6に示すように、硫酸アルミニウムと、アルミノケイ酸カルシウムガラス、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれた一種又は二種以上とを併用すると、さらに、ぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。また、きのこ
の栽培用添加材を1ケ月間貯蔵後に使用しても、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。
【0064】
実験例7
硫酸アルミニウムLと、アルミノケイ酸カルシウムガラス、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びハイドロタルサイトを表7に示す割合で併用したことを併用したこと以外は実験例4と同様に行った。結果を表7に併記する。
【0065】
【表7】
【0066】
表7に示すように、硫酸アルミニウムと、アルミノケイ酸カルシウムガラスと、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれた二種とを併用すると、さらに、ぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。また、きのこ
の栽培用添加材を1ケ月間貯蔵後に使用しても、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。
【0067】
実験例8
硫酸アルミニウムLと、アルミノケイ酸カルシウムガラス、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びハイドロタルサイトを表8に示す割合で併用したこと以外は実験例4と同様に行った。結果を表8に併記する。
【0068】
【表8】
【0069】
表8に示すように、硫酸アルミニウムと、アルミノケイ酸カルシウムガラスと、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれた三種以上とを併用すると、さらに、ぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。また、きのこ
の栽培用添加材を1ケ月間貯蔵後に使用しても、貯蔵開始時と同等にぶなしめじの品質や収率が向上することがわかる。