特許第5984256号(P5984256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984256
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】X線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 320Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-174255(P2012-174255)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-30662(P2014-30662A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】殿塚 浩規
(72)【発明者】
【氏名】西墻 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】西塚 誠一
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−148237(JP,A)
【文献】 特開2000−093413(JP,A)
【文献】 特開2002−058664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を載置する天板を有する寝台と、
X線を発生するX線管球と、
前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線管球を支持する支柱部とを具備し、
前記支柱部は第1乃至第3の支柱部分と第1、第2の連結部とを有し、
前記第1の連結部は、前記第1の支柱部分に対して前記第2の支柱部分を連結し、前記天板短軸と平行な第1の回転軸を有し、
前記第2の連結部は、前記第2の支柱部分に対して前記第3の支柱部分を連結し、前記第1の回転軸と前記第2の支柱部分の中心軸とに直交する第2の回転軸を有し、
前記第3の支柱部分は前記X線管球を支持することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記被検体に対する撮影姿勢の変更指示をオペレータが入力操作するための操作部をさらに備え、
前記撮影姿勢は、第1、第2の撮影姿勢を含み、
前記第1の撮影姿勢においては、前記X線管球のX線中心軸が前記天板面と交差し、
前記第2の撮影姿勢においては、前記X線管球のX線中心軸が前記天板面と平行し、
前記寝台は、前記X線検出部を着脱自在に格納する第1、第2格納部を有し、
前記第1格納部は、前記第1の撮影姿勢の状態における前記X線管球と対向する位置に設けられ、
前記第2格納部は、前記寝台上部の前記第2の撮影姿勢の状態における前記X線管球と対向する位置に前記寝台に対して着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記第1の撮影姿勢における前記X線管球のX線中心軸と前記第2の撮影姿勢における前記X線管球のX線中心軸とが交差する請求項2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記被検体に対する撮影姿勢の変更指示をオペレータが入力操作するための操作部と、
前記支柱部を前記天板の長軸方向に移動させる支柱移動部と、
前記第1の支柱部分に対して前記第2の支柱部分を前記第1の回転軸回りに回転させる第1の回転部と、
前記第2の支柱部分に対して前記第3の支柱部分を前記第2の回転軸回りに回転させる第2の回転部とをさらに具備し、
前記撮影姿勢は、第1、第2の撮影姿勢を含み、
前記第1の撮影姿勢においては、前記X線管球のX線中心軸が前記天板面と交差し、
前記第2の撮影姿勢においては、前記X線管球のX線中心軸が前記天板面と平行し、
前記操作部から前記撮影姿勢の変更指示に応じて、前記第1、第2の回転部とともに前記支柱移動部を制御する制御部とを具備することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記第1の支柱部分に対して前記第2の支柱部分を前記第1の回転軸回りに回転させる第1の回転部と、
前記第2の支柱部分に対して前記第3の支柱部分を前記第2の回転軸回りに回転させる第2の回転部と、
前記第1の回転部に前記第2の回転部を従動させる従動機構とをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像装置は被検体を透過したX線強度に基づいて、被検体の医用情報を画像で提供する装置であり、診断や治療などの医療行為において、重要な役割を果たしている。X線撮像装置は、多岐にわたる医療行為に対応するために、用途別にカスタマイズされた多くの種類が登場している。その中で、寝台を備える一般的なX線撮像装置は、C形アームを搭載したX線撮像装置などに比べると導入コストが安く、設置スペースも狭く済むため、比較的小さな病院や医療施設でも導入されており、広く利用されている。しかしながら、X線撮像装置では、寝台の天板面の対向方向からの撮影(正面撮影)にしか対応していないため、例えば、被検体の関心領域(ROI)に対して正面撮影だけではなく、寝台の天板面と平行な方向からも撮影(側面撮影)したい場合は、被検体が天板上で体を傾ける必要があった。体を傾ける動作は、高齢者にとって、負担が大きい。また、体を傾けてしまうと臓器の位置が正面撮影時の状態から変化してしまう。そのため、正面撮影画像と側面撮影画像とを同じ撮影条件下で比較することができなくなり、正しい診断が出来なくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−371143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、被検体に対する正面撮影と側面撮影とに対応したX線撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、被検体を載置する天板を有する寝台と、X線を発生するX線管球と、前記X線を検出するX線検出部と、前記X線管球を支持する支柱部とを具備し、前記支柱部は第1乃至第3の支柱部分と第1、第2の連結部とを有し、前記第1の連結部は、前記第1の支柱部分に対して前記第2の支柱部分を連結し、前記天板短軸と平行な第1の回転軸を有し、前記第2の連結部は、前記第2の支柱部分に対して前記第3の支柱部分を連結し、前記第1の回転軸と前記第2の支柱部分の中心軸とに直交する第2の回転軸を有し、前記第3の支柱部分は前記X線管球を支持することを特徴とするX線撮像装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係るX線撮像装置の構成を示す図である。
図2】本実施形態に関わるX線撮像装置による正面撮影時のガントリ姿勢を示す図である。
図3】本実施形態に関わるX線撮像装置による側面撮影時のガントリ姿勢を示す図である。
図4】第1の回転部26に第2の回転部27を連動させるための機構構成の一例を示す図である。
図5】正面撮影の姿勢から、側面撮影の姿勢に移行するための各機構部の動作方向を示した図である。
図6】側面撮影の姿勢から、正面撮影の姿勢に移行するための各機構部の動作方向を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るX線撮像装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線撮像装置の構成を示す図である。X線撮像装置は、ガントリ部1と、システム本体3とを備える。ガントリ部1は、天板11と、寝台12と、X線管装置13と、高電圧発生部14と、第1の格納部16と、支柱部17と、第2の格納部18と、基台19と、データ収集部20と、取り付け部28とを有する。システム本体3は、操作部31と、システム制御部32と、撮影制御部33と、画像発生部34と、前処理部35と、記憶部36と、表示処理部37と、ディスプレイ38と、機構制御部39とを有する。
【0009】
基台19は、寝台12と支柱部17とを保持する。寝台12は天板11を有する。天板11は、上下前後移動可能に支持される。寝台12は、天板11の移動させるための第1の移動機構と、第1の移動機構を駆動する第1の駆動部とを有する。天板11には、被検体が載置される。寝台12は、第1の格納部16及び第2の格納部18を有する。第1の格納部16及び第2の格納部18は、X線検出部15を格納及び取り外し可能に保持する構造を有する。第1の格納部16は、天板11下の寝台12内に設けられる。第1の格納部16に格納された状態におけるX線検出部15の検出表面は、正面撮影時にX線管と対向する。第2の格納部18は、天板11を挟んで基台19と対峙する寝台12上部の天板11脇に設けられる。第2の格納部18に格納された状態におけるX線検出部15の検出表面は、側面撮影時にX線管と対向する。寝台12は、第2の格納部18を着脱自在に取り付けるための取り付け部28を有する。取り付け部28は、例えば、第2の格納部18を固定ネジにより寝台12に固定するためのネジ穴である。
【0010】
支柱部17は、第1の支柱部分21と、第2の支柱部分22と、第3の支柱部分23と、第1の連結部24と、第2の連結部25とで構成されている。第1の支柱部分21は、その中心軸が天板11表面に対して垂直になるよう基台19に支持されている。第1の支柱部分21は、基台19に設けられたレール29に沿って移動するための第2の移動機構と、第2の移動機構を駆動する第2の駆動部とを有する。
【0011】
第1の連結部24は、第1の支柱部分21に対して第2の支柱部分22を連結する。第1の連結部24は、第1の支柱部分21に対して第2の支柱部分22を回転軸R1回りに回転させる第1の回転部26を有する。回転軸R1は、天板11表面の短軸と平行な固定軸である。第1の回転部26は、第3の駆動部により駆動される。
【0012】
第2の連結部25は、第2の支柱部分22に対して第3の支柱部分23を連結する。第2の連結部25は、第2の支柱部分22に対して第3の支柱部分23を回転軸R2回りに回転させる第2の回転部27を有する。回転軸R2は、回転軸R1と第2の支柱部分22の中心軸とに直交する。第2の支柱部分22は、第1の支柱部分21に対して回転軸R1回りに回転可能である。そのため、回転軸R2は変動軸である。第2の回転部27は、第4の駆動部により駆動される。第3の支柱部分23は、その先端にX線管装置13を固定している。
【0013】
第1乃至第4の駆動部は、例えばモーターである。しかし、第4の駆動部は当該X線撮像装置に設けなくてもよく、その場合、第2の回転部27は、第1の回転部26に連動されて回転する。第1の回転部26に第2の回転部27を連動させるための機構構成と、連動動作とについては後述する。
【0014】
X線管装置13は、X線管とコリメータとからなる。X線管は、高電圧発生部14からの高電圧(管電圧)の印加によってX線を発生する。X線管はX線を放射するための放射窓を有する。コリメータは、放射窓に取り付けられる。コリメータは、可動絞りを有する。可動絞りは、撮影制御部33による制御に従い、X線管から放射されたX線の照射野を調整する。X線管から放射されたX線は、可動絞りにより、例えば、円錐形状や角錐形状に成形される。
【0015】
X線検出部15は、複数のX線検出素子を有する。複数のX線検出素子は、2次元のアレイ状に配列される。2次元のアレイ状の検出器はFPD(Flat Panel Display:平面検出器)と呼ばれる。FPDの各素子は、X線管装置13から放射され被検体を透過したX線を検出する。FPDの各素子は、検出したX線強度に対応した電気信号を出力する。X線検出部15は、当該X線装置の撮影姿勢に応じて、オペレータにより第1の格納部16又は第2の格納部18へ格納され、また、第1の格納部16又は第2の格納部18から取り外される。そのため、X線検出部15は、格納作業及び取り外し作業をするための機構、例えば、取っ手などを有する。
【0016】
データ収集部20は、X線検出器13から出力された電気信号に各種補正処理、増幅処理、A/D変換処理などを行ったデータを発生する。操作部31は、オペレータがX線撮像装置に対して指示を入力するためのマンマシンインターフェースとして機能する。操作部31は、例えば、正面撮影と側面撮影を切り替えるスイッチ、オペレータからの各種指示、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件の設定指示、撮影条件の設定指示等を装置本体に取り込むためのトラックボール、各種スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、フットペダル、タッチパネルなどを有している。
【0017】
システム制御部32は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。具体的には、システム制御部32は、操作部31を介したオペレータからの指示に従った動作、例えば、X線撮影に関わる動作、機構の移動に関わる動作、画像処理に関わる動作を統括的に制御する。
【0018】
機構制御部39は、システム制御部32による制御に従い、各機構部の移動動作に関わる条件を決定し、第1、第2の移動機構及び第1、第2の回転部に条件に応じた移動制御信号を送信する。撮影制御部33は、システム制御部32による制御に従い、撮影に関わる条件、例えば、X線管電圧、管電流、撮影時間を決定し、高電圧発生部14と、X線検出部15と、データ収集部20とに撮影制御信号を送信する。
【0019】
画像発生部34は、システム制御部32による制御に従い、データ収集部20から出力され、前処理部35で処理されたデータに基づいて2次元X線画像を発生する。記憶部36は、例えば、ハードディスクであり、画像発生部34で発生された2次元X線画像のデータを記憶する。また、オペレータにより操作部31を介して設定された各種項目と、正面撮影における移動条件と、側面撮影における移動条件と、オペレータの各種指示を受けるためのGUI(Graphical User Interface)とを記憶する。
【0020】
表示処理部37は、システム制御部32による制御に従い、記憶部36からGUIや各画像のデータなどを読み出す。そして、読み出された画像に対して画像閲覧に関わる処理、例えば、X線画像の拡大縮小、X線画像へのアノテーションの追加、X線画像の平滑化処理、エッジ処理を施し、ディスプレイ38に表示する。
【0021】
次に、第1の回転部26に第2の回転部27を連動させるための機構構成について図4を用いて説明する。図4は、第1の回転部26に第2の回転部27を連動させるための機構構成の一例を示す図である。
【0022】
第1の支柱部分21に配置されたモーター40にはドライブシャフト41が接続されている。ドライブシャフト41には、第1の歯車42が固定されている。第1の歯車42には第2の支柱部分22に固定された第2の歯車46が噛み合わされている。第2の歯車46はベアリングを介して連結シャフト47に支持されている。連結シャフト47は、第1の支柱部分21と第2の支柱部分22とを連結する。連結シャフト47は、その一端が第1の支柱部分21に固定されていて、他端が第2の支柱部分22にベアリングを介して回転自在に支持されている。第3の歯車48は連結シャフト47に固定されている。
【0023】
第3の歯車48には、第4の歯車49が噛み合わされている。第4の歯車49には、フェースギア状の第5の歯車50が噛み合わされている。第5の歯車50は、固定シャフト52の一端に固定されている。固定シャフト52のもう一端には、傘状の第6の歯車51が固定されている。第6の歯車51に対して、同じ歯数を有する一対の第7の歯車53と第8の歯車54とが互いに対向する位置で噛み合わされている。第7の歯車53には、第1のプーリー部55が固定されている。第8の歯車54には、第2のプーリー部56が固定されている。
【0024】
第1のプーリー部55には、第1のワイヤ57が固定されている。第1のワイヤ57は、その一端が第1のプーリー部55に固定されており、第1のテンショナー59を介して、もう一端が第1の回転ロッド部61に固定されている。第1のテンショナー59は、第1のワイヤ57がたるむのを防ぐとともに、第1のワイヤ57を第1のプーリー部55の巻き取り位置に誘導するために設けられている。第2のプーリー部56には、第2のワイヤ58が接続されている。第2のワイヤ58は、その一端が第2のプーリー部56に固定されており、第2のテンショナー60を介して、もう一端が第2の回転ロッド部62に固定されている。第2のテンショナー60は、第2のワイヤ58がたるむのを防ぐとともに、第2のワイヤ58を第2のプーリー部56の巻き取り位置に誘導するために設けられている。
【0025】
第1の回転ロッド61と第2の回転ロッド部62とは、回転部63に固定されている。回転部63の回転軸R2は回転軸R1に直交する。回転部63は、固定アーム部64により第2の支柱部分22に固定されている。回転部63には、回転アーム部65が接続されている。回転アーム部65は、第3の支柱部分23に固定されている。第3の支柱部分23の先端には、X線管装置13が固定されている。
【0026】
次に、本実施形態に係るX線撮像装置の動作について説明する。動作説明は、当該X線撮像装置にて、被検体のROIに関する正面撮影画像及び側面撮影画像が収集されるまでの手順を例に、図2乃至図3を用いて説明する。図2は、本実施形態に関わるX線撮像装置による正面撮影時のガントリ姿勢を示す図である。図3は、本実施形態に関わるX線撮像装置による側面撮影時のガントリ姿勢を示す図である。
【0027】
本実施形態の説明において、座標は検査室の空間座標系で表現される。具体的には、x軸(側面方向)は天板11表面の短軸と平行であり、z軸は天板11表面の長軸と平行であり、y軸(正面方向)は天板11表面に垂直である。また、x、y、z座標の原点は、基準位置にある天板11表面の中心位置に設定される。
【0028】
本実施形態に係るX線撮像装置では、第1の格納部16に格納された状態におけるX線検出部15の検出表面中心のz座標に対して、第2の格納部18に格納された状態におけるX線検出部15の検出表面中心のz座標が略一致するように、第2の格納部18が寝台12に取り付けられる取り付け部28の位置が調整されている。
【0029】
また、第2の格納部18に格納された状態におけるX線検出部15の検出表面中心のy座標と、回転軸R1のy座標とが略一致するように、第1の支柱部分21の長さと第2の格納部18の高さとが調整されている。
【0030】
また、記憶部36には、正面撮影移動条件と側面撮影移動条件とが記憶されている。正面撮影移動条件は、側面撮影時のガントリ姿勢から正面撮影時のガントリ姿勢に移行する時に、機構制御部39が各駆動部を制御するための条件である。正面撮影移動条件では、側面撮影時のガントリ部1の位置を基準として、第1の回転部26の回転角θ1と第2の回転部27の回転角φ1と第2の移動機構の移動量ΔZ1とが規定されている。
【0031】
回転角θ1と回転角φ1とは、X線管装置13のX線中心線が、第1の格納部16に格納されたX線検出部15の検出表面に垂直になるように設定されている。移動量ΔZ1は、X線管装置13のX線中心線と天板11とが交差する位置のz座標が、第1の格納部16に格納された状態におけるX線検出部15の検出表面中心位置のz座標と一致するように設定されている。なお、X線管装置13のX線中心線と天板11とが交差する位置のx座標が、第1の格納部16に格納された状態におけるX線検出部15の検出表面中心位置のx座標と一致するように、第3の支柱部分23の長さが調整されている。
【0032】
側面撮影移動条件は、正面撮影時のガントリ姿勢から側面撮影時のガントリ姿勢に移行する時に、機構制御部39が各駆動部を制御するための条件である。側面撮影移動条件では、正面撮影時のガントリ部1の位置を基準として、第1の回転部26の回転角θ2と第2の回転部27の回転角φ2と第2の移動機構の移動量ΔZ2とが規定されている。回転角φ2は、X線管装置13のX線中心線が、第2の格納部18に格納されたX線検出部15の検出表面に垂直になるように設定されている。回転角θ2と移動量ΔZ2は、X線管装置13のX線中心線が、第2の格納部18に格納されたX線検出部15の検出表面中心位置を通るように設定されている。
【0033】
ROIに対する正面撮影について説明する。正面撮影時において、第2の格納部18は、オペレータにより寝台12上部の取り付け部28から取り外されている。そして、X線検出部15は、オペレータにより寝台12に設けられた第1の格納部16に格納される。
【0034】
まず、操作部31に設けられた正面撮影ボタンがオペレータにより押される。正面撮影ボタンが押されたのを契機に、機構制御部39は、正面撮影移動条件を記憶部36から読み出す。機構制御部39は、正面撮影移動条件に基づいて、第1の回転部26と、第2の回転部27と第2の移動機構とを制御する。機構制御部39の制御に従い、各駆動部の回転及び移動が行われると、撮影中心軸が、X線管の焦点とX線検出部15の検出表面の中心位置P1とを結ぶ線で規定される。こうして、正面撮影の姿勢への移行が完了する。
【0035】
まず、被検体が天板11に載置される。オペレータは、被検体のROIの中心位置が撮影中心軸上に重なるまで操作部31を介して天板11を前後移動させる。次に、オペレータは、操作部31を介してX線透視やX線撮影の条件などを設定する。設定が終わると、操作部31に設けられたX線透視ボタンが、オペレータにより押される。X線透視ボタンが押されたのを契機に、X線透視が設定した透視条件に基づいて開始される。そして、X線透視画像は繰り返し収集される。収集されたX線透視画像は、記憶部36に記憶されると共に、ディスプレイ38に表示される。
【0036】
オペレータは、ディスプレイ38に表示されたX線透視画像を見ながら、操作部31を介して天板11を移動させ、被検体の位置を調整する。ROIの中心位置がディスプレイ38の中心位置に収まるまで天板11が移動されると、X線透視下の適時に撮影ボタンがオペレータにより押される。そして、ROIに対してX線撮影が行われ、ROI関するX線撮影画像(X線画像)が収集される。収集されたX線画像のデータは記憶部36に記憶される。X線撮影には、高線量のパルスX線が用いられるため、被検体の被ばく線量が多い。そのため、X線撮影は、低線量の連続X線による透視下で撮影タイミングを図り、オペレータによる撮影ボタンの操作を契機に適時実施される。そして、操作部31を介したオペレータによる操作により正面撮影が終了される。
【0037】
次に、同じROIに対する側面撮影について説明する。側面撮影時において、第2の格納部18は、オペレータにより寝台12上部の取り付け部28に取り付けられる。そして、X線検出部15は、オペレータにより第1の格納部16から取り外され、第2の格納部18に格納される。
【0038】
まず、操作部31に設けられた側面撮影ボタンがオペレータにより押される。側面撮影ボタンが押されたのを契機に、機構制御部39は、側面撮影移動条件を記憶部36から読み出す。機構制御部39は、側面撮影移動条件に基づいて、第1の回転部26と、第2の回転部27と第2の移動機構とを制御する。機構制御部39の制御に従い、各駆動部の回転及び移動が行われると、撮影中心軸が、X線管の焦点とX線検出部15の検出表面の中心位置P2とを結ぶ線で規定される。こうして、正面撮影の姿勢から側面撮影の姿勢への移行が完了する。なお、被検体は天板11に載置されたままである。
【0039】
オペレータは、操作部31を介してX線透視やX線撮影の条件などを設定する。設定が終わると、操作部31に設けられたX線透視ボタンが、オペレータにより押される。X線透視ボタンが押されたのを契機に、X線透視が設定した透視条件に基づいて開始される。そして、X線透視画像は繰り返し収集される。収集されたX線透視画像は、記憶部36に記憶されると共に、ディスプレイ38に表示される。
【0040】
オペレータは、ディスプレイ38に表示されたX線透視画像を見ながら、操作部31を介して天板11を移動させ、被検体の位置を調整する。ROIの中心位置がディスプレイ38の中心位置に収まるまで天板11が移動されると、X線透視下の適時に撮影ボタンがオペレータにより押される。そして、ROIに対してX線撮影が行われ、ROI関するX線撮影画像(X線画像)が収集される。収集されたX線画像のデータは記憶部36に記憶される。こうして、同じROIに対する正面撮影と側面撮影が終了される。
【0041】
次に、回転軸R1,R2の回転動作の詳細を説明する。まず、正面撮影時のガントリ姿勢から側面撮影時のガントリ姿勢への移行時の回転動作について図5を用いて説明する。
【0042】
図5は、正面撮影時のガントリ姿勢から、側面撮影時のガントリ姿勢に移行するための各機構部の動作方向を示した図である。なお、本実施形態に係るX線撮像装置では、一方のプーリー部がワイヤを巻き取っている時は、もう一方のプーリー部はワイヤを送り出すようにワイヤが各プーリー部に固定されている。
【0043】
まず、操作部31に設けられた側面撮影ボタンがオペレータにより押される。側面撮影ボタンが押されたのを契機に、機構制御部39は記憶部36に記憶されている側面撮影移動条件を読み出す。側面撮影移動条件には、正面撮影時のガントリ部1の位置から、第1の回転部26が角度φ2で回転されるように、モーター40の回転方向と、回転数と、回転時間とが設定されている。機構制御部39は側面撮影移動条件に基づいてモーター40を制御する。
【0044】
モーター40は機構制御部39による制御に従い、側面撮影移動条件下で回転される。側面撮影時のガントリ姿勢への移行において、ドライブシャフト41及び第1の歯車42が図中矢印の方向に回転される。第1の歯車42が回転すると、第1の歯車42と噛み合わされている第2の歯車46は、第1の歯車42の回転方向と逆向きに回転される。第2の歯車46が回転されると、第2の歯車46を固定している第2の支柱部分22は、第2の歯車46とともに回転軸R1回りに図5中矢印の方向に回転される。連結シャフト47は、第2の歯車46をベアリングを介して支持しており、さらに一端が第1の支柱部分21に固定されているため回転しない。さらに、連結シャフト47に固定されている第3の歯車48も回転しない。したがって、第4の歯車49は、第3の歯車48と噛み合わされているため、第3の歯車48による回転では回転しない。しかし、第4の歯車49は、第2の支柱部分22内に固定されているため、第2の支柱部分22とともに回転し、その歯車の位置が変化する。その位置の変化は、第3の歯車48の中心位置であるため、第4の歯車49は、第3の歯車48に対して回転される。
【0045】
第4の歯車49が回転されると、第4の歯車49と噛み合わされている第5の歯車50が回転される。第6の歯車51は、第5の歯車50とともに固定シャフト52に固定されている。したがって、第6の歯車51は、固定シャフト52とともに第5の歯車50の回転に連動する。第6の歯車51が回転されると、第6の歯車51に対して噛み合わされている第7の歯車53と第8の歯車54とが回転される。第7の歯車53に対して第1のプーリー部55が固定されている。第8の歯車54に対して第2のプーリー部56が固定されている。
【0046】
第1のプーリー部55は図5中矢印の方向に回転され、第1のワイヤ57が巻き取られる。また、第2のプーリー部56は図5中矢印の方向に回転され、第2のワイヤ58が第1のワイヤ57の第1のプーリー部55による巻き取り量分送り出される。すると、第2の支柱部分22に対して、回転自由に支持されている回転部63と共に、第1の回転ロッド部61及び第2の回転ロッド部62は、第1の回転ロッド部61が第1のプーリー部55による第1のワイヤ57の巻き取る力により回転される。その回転方向は、正面撮影時の位置を基準に回転軸R2回りに図中β方向である。回転部63が回転軸R2回りのβ方向に回転されると、回転部63と接続されている回転アーム部65及び回転アーム部65に固定されている第3の支柱部分23とが、正面撮影時の位置を基準に回転軸R2回りに図中β方向に回転される。
【0047】
したがって、第3の支柱部分23の先端に固定されているX線管装置13が回転軸R2回りのβ方向に回転される。なお、第1のプーリー部55による第1のワイヤ57の巻き取り量と、第2のプーリー部56による第2のワイヤ58の送り出し量とは、正面撮影時のガントリ部1の位置から、第2の回転部27が角度θ2で回転されるように各歯車の歯数及び系で調整されている。こうして、正面撮影の姿勢から側面撮影の姿勢への移行が回転軸R1,R2の連動動作により完了される。
【0048】
次に、図6を用いて側面撮影の姿勢から正面撮影の姿勢への移行における第1の回転部26に対する第2の回転部27の連動動作について説明する。図6は、側面撮影の姿勢から、正面撮影の姿勢に移行するための各機構部の動作方向を示した図である。
【0049】
まず、操作部31に設けられた正面撮影ボタンがオペレータにより押される。正面撮影ボタンが押されたのを契機に、機構制御部39は記憶部36に記憶されている正面撮影移動条件を読み出す。正面撮影移動条件には、側面撮影時のガントリ部1の位置から、第1の回転部26が角度φ1で回転されるように、モーター40の回転方向と、回転数と、回転時間とが設定されている。具体的には、正面撮影移動条件に基づくモーター40の回転方向は側面撮影移動条件に基づくモーター40の回転方向と逆である。機構制御部39は正面撮影移動条件に基づいてモーター40を制御する。
【0050】
以降、各歯車及び各シャフトの連動動作は、正面撮影の姿勢から側面撮影の姿勢へ移行する時の動作と同じである。モーター40は機構制御部39による制御に従い、正面撮影移動条件下で回転される。正面撮影時のガントリ姿勢への移行において、ドライブシャフト41及び第1の歯車42が図中矢印の方向に回転される。すると、第2のプーリー部56は図6中矢印の方向に回転され、第2のワイヤ58が巻き取られる。また、第1のプーリー部55は図6中矢印の方向に回転され、第1のワイヤ57が第2のワイヤ58の第2のプーリー部56による巻き取り量分送り出される。
【0051】
すると、第2の支柱部分22に対して、回転自由に支持されている回転部63と共に、第1の回転ロッド部61及び第2の回転ロッド部62は、第2の回転ロッド部62が第2のプーリー部56による第2のワイヤ58の巻き取る力により回転される。その回転方向は、側面撮影時の位置を基準に回転軸R2回りに図中α方向である。回転部63が回転軸R2回りのα方向に回転されると、回転部63と接続されている回転アーム部65及び回転アーム部65に固定されている第3の支柱部分23とが、正面撮影時の位置を基準に回転軸R2回りに図中α方向に回転される。したがって、第3の支柱部分23の先端に固定されているX線管装置13が回転軸R2回りのα方向に回転される。
【0052】
なお、第1のプーリー部55による第1のワイヤ57の送り出し量と、第2のプーリー部56による第2のワイヤ58の巻き取り量とは、側面撮影時のガントリ部1の位置から、第2の回転部27が角度φ1で回転されるように各歯車の歯数及び径で調整されている。こうして、側面撮影の姿勢から正面撮影の姿勢への移行が回転軸R1,R2の連動動作により完了される。
【0053】
なお、上述の第2の回転部27が第1の回転部26に連動して回転動作する説明において、X線管装置13を回転させるための第2の回転部27は、第1のワイヤ57又は第2のワイヤ58が第1のプーリー部55又は第2のプーリー部56により巻き取られることで回転されることとした。第1のプーリー部55及び第2のプーリー部56は、各歯車及び各シャフトと連動して回転される。つまり、モーター40の駆動力を各歯車及び各シャフトが伝え、正面撮影姿勢から側面撮影姿勢への移行と、側面撮影姿勢から正面撮影姿勢への移行とが行われる。しかし、一方の撮影姿勢への移行が、モーター40の駆動力により行われなくてもよい。
【0054】
それは、第8の歯車54及び第2のプーリー部56に代わり、第2の回転部27に接続される回転アーム部65が、例えば、正面撮影姿勢において、伸縮性のある固定ゴムなどで第2の支柱部分22に固定されていてもよい。すると、正面撮影姿勢から側面撮影姿勢への移行のための回転部63の回転は、第1のプーリー部55による第1のワイヤ57の巻き取り動作で行われる。この時、固定ゴムは伸びた状態になる。そして、側面撮影姿勢から正面撮影姿勢への移行のための第2の回転部27の回転は、固定ゴムの正面撮影姿勢時の元の状態に戻ろうとする力(ゴム弾性力)により行われる。
【0055】
本実施形態により、被検体に対する正面撮影と側面撮影とに対応したX線撮像装置の提供が可能となる。本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や趣旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものある。
【符号の説明】
【0056】
1…システム本体、3…ガントリ部、11…天板、12…寝台、13…X線管装置、14…高電圧発生部、15…X線検出部、16…第1の格納部、17…支柱部、18…第2の格納部、19…基台、20…データ収集部、21…第1の支柱部分、22…第2の支柱部分、23…第3の支柱部分、24…第1の連結部、25…第2の連結部、26…第1の回転部、27…第2の回転部、28…取り付け部、29…レール、31…操作部、32…システム制御部、33…撮影制御部、34…画像発生部、35…前処理部、36…記憶部、37…表示処理部、38…ディスプレイ、39…機構制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6