(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パラレルイメージングにより収集された複数チャネル分の磁気共鳴信号を、k空間の第1領域に第1間隔で配置し、前記第1領域より広範囲の第2領域に、前記第1間隔より大きい第2間隔で配置する配置部と、
前記k空間に配置されたk空間データのうち第2間隔のk空間データに基づいて、複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成する生成部と、
前記第1領域に配置された第1間隔のk空間データと、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データと、複数チャネル分の感度分布とに基づいて、磁気共鳴画像を再構成する再構成部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
前記配置部は、前記磁気共鳴信号を、k空間の中心部分に対応する前記第1領域に前記第1間隔で配置し、k空間の周辺部分を含む広範囲の前記第2領域に前記第2間隔で配置する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記生成部は、前記第2間隔のk空間データに基づいて中間磁気共鳴画像を再構成し、前記中間磁気共鳴画像を複数チャネル分の感度分布に基づいて逆再構成することで、前記複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記生成部は、前記第2間隔のk空間データから複数チャネル分の第1折り返し画像群を再構成し、前記第1折り返し画像群に対して複数チャネル分の感度分布を適用することで、中間磁気共鳴画像を再構成し、前記中間磁気共鳴画像を複数チャネル分の感度分布に基づいて逆再構成することで、前記複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成し、
前記再構成部は、前記第1領域に配置された第1間隔のk空間データ、及び、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データのうち、少なくとも一部のk空間データから、複数チャネル分の第2折り返し画像群を再構成し、前記第2折り返し画像群に対して複数チャネル分の感度分布を適用することで、前記磁気共鳴画像を再構成する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記生成部によって事前知識を用いて前記中間磁気共鳴画像を再構成し、且つ、前記再構成部によって事前知識を用いて前記磁気共鳴画像を再構成する場合に、前記中間磁気共鳴画像の再構成に適用される事前知識の強度が、前記磁気共鳴画像の再構成に適用される事前知識の強度より高くなるように設定される、請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記生成部は、前記第2間隔のk空間データに対して、前記第1間隔のk空間データから導出された補間係数を適用することで、前記複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成し、
前記再構成部は、前記第1領域に配置された第1間隔のk空間データ、及び、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データのうち、少なくとも一部のk空間データに対して、前記感度分布から導出された補間係数を適用することで、磁気共鳴画像を再構成する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記生成部は、前記第2間隔のk空間データに対して、前記第1間隔のk空間データから導出された補間係数を適用することで、前記複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成し、
前記再構成部は、前記第1領域に配置された第1間隔のk空間データ、及び、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データのうち、少なくとも一部のk空間データから、複数チャネル分の第2折り返し画像群を再構成し、前記第2折り返し画像群に対して複数チャネル分の感度分布を適用することで、前記磁気共鳴画像を再構成する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記配置部は、前記第2間隔が前記第1間隔の整数倍となるように前記磁気共鳴信号をk空間に配置する、請求項1〜7のいずれかひとつに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記配置部は、時系列に並ぶ所定フレーム数分の磁気共鳴信号を、時間方向においても前記第1間隔と前記第2間隔とで配置する、請求項1〜8のいずれかひとつに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記配置部は、時系列に並ぶ所定フレーム数分の磁気共鳴信号をk空間に配置する場合に、k空間データが配置される位置と、k空間データが配置されない位置とが、フレーム毎に異なるように配置する、請求項1〜9のいずれかひとつに記載の磁気共鳴イメージング装置。
パラレルイメージングにより収集された複数チャネル分の磁気共鳴信号が、k空間の第1領域に第1間隔で配置され、前記第1領域より広範囲の第2領域に、前記第1間隔より大きい第2間隔で配置された、k空間データを記憶する記憶部と、
前記k空間に配置されたk空間データのうち第2間隔のk空間データに基づいて、複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成する生成部と、
前記第1領域に配置された第1間隔のk空間データと、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データと、複数チャネル分の感度分布とに基づいて、磁気共鳴画像を再構成する再構成部と
を備える、画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置及び画像処理装置を詳細に説明する。なお、特に断らない限り、2次元のk空間データを例に説明するが、以下に述べる手法は、k空間データの次元数が2でなくても利用できる。なお、各実施形態の説明では、k空間のkx方向(周波数エンコード方向)では間引きを行わないものとして説明するが、この説明は、kx方向について間引きを行う収集方法に対する適用を制限するものではない。また、以下の説明では、k空間を格子状に収集する例を示すが、パラレルイメージング技術を利用できる収集方法である限り、格子状以外のスキャン方法を利用してk空間データを収集することを制限するものでもない。また、k空間データ及びMR画像は、特に断らない限り、複素数で表現されているものとする。医療診断で用いられるMR画像は、例えば、以下の実施形態で説明するMR画像に対し、各画素について複素数の大きさを求めることで得られる。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100を示すブロック図である。
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル102と、傾斜磁場電源103と、寝台104と、寝台制御部105と、送信コイル106と、送信部107と、受信コイルアレイ108と、受信部109と、シーケンス制御部110と、計算機システム120とを備える。なお、MRI装置100に被検体P(例えば、人体)は含まれない。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、永久磁石、超伝導磁石などである。傾斜磁場コイル102は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル102は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源103から個別に電流を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0012】
傾斜磁場電源103は、傾斜磁場コイル102に電流を供給する。ここで、傾斜磁場コイル102によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてNMR信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてNMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0013】
寝台104は、被検体Pが載置される天板104aを備え、寝台制御部105による制御のもと、天板104aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル102の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台104は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部105は、計算機システム120による制御のもと、寝台104を駆動して天板104aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0014】
送信コイル106は、傾斜磁場コイル102の内側に配置され、送信部107からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信部107は、対象とする原子の種類及び磁場の強度で決まるラーモア周波数に対応するRFパルスを送信コイル106に供給する。
【0015】
受信コイルアレイ108は、傾斜磁場コイル102の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられるNMR信号を受信する。受信コイルアレイ108は、NMR信号を受信すると、受信したNMR信号を受信部109へ出力する。なお、第1の実施形態において、受信コイルアレイ108は、複数の受信コイルを有するコイルアレイである。
【0016】
受信部109は、受信コイルアレイ108から出力されるNMR信号に基づいてNMRデータを生成する。具体的には、受信部109は、受信コイルアレイ108から出力されるNMR信号をデジタル変換することによってNMRデータを生成する。また、受信部109は、生成したNMRデータをシーケンス制御部110へ送信する。なお、受信部109は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル102などを備える架台装置側に備えられていてもよい。ここで、第1の実施形態において、受信コイルアレイ108の各コイルエレメント(各受信コイル)から出力されるNMR信号は、適宜分配合成されることで、チャネルなどと呼ばれる単位で受信部109に出力される。このため、NMRデータは、受信部109以降の後段の処理においてチャネル毎に取り扱われる。コイルエレメントの総数とチャネルの総数との関係は、同一の場合もあれば、コイルエレメントの総数に対してチャネルの総数が少ない場合、あるいは反対に、コイルエレメントの総数に対してチャネルの総数が多い場合もある。以下において、「受信コイル毎(チャネル毎)」のように表記する場合、その処理が、コイルエレメント毎に行われてもよいし、あるいは、コイルエレメントが分配合成されたチャネル毎に行われてもよいことを示す。なお、分配合成のタイミングは、上述したタイミングに限られるものではない。NMR信号若しくはNMRデータは、後述する画像再構成部122による再構成処理の前までに、チャネル単位に分配合成されればよい。
【0017】
シーケンス制御部110は、計算機システム120から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源103、送信部107及び受信部109を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源103が傾斜磁場コイル102に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部107が送信コイル106に送信するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信部109がNMR信号を検出するタイミングなどが定義される。
【0018】
なお、シーケンス制御部110は、傾斜磁場電源103、送信部107及び受信部109を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信部109からNMRデータを受信すると、受信したNMRデータを計算機システム120へ転送する。
【0019】
計算機システム120は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行い、インタフェース部121、画像再構成部122、記憶部123、入力部124、表示部125、及び制御部126を有する。
【0020】
インタフェース部121は、シーケンス情報をシーケンス制御部110へ送信し、シーケンス制御部110からNMRデータを受信する。また、インタフェース部121は、NMRデータを受信すると、受信したNMRデータを記憶部123に格納する。記憶部123に格納されたNMRデータは、後述する収集部126aによってk空間に配置される。この結果、記憶部123は、複数チャネル分のk空間データを記憶する。
【0021】
画像再構成部122は、記憶部123によって記憶されたk空間データに対して、フーリエ変換処理などの再構成処理を施すことによって、スペクトラムデータや画像データを生成する。記憶部123は、インタフェース部121によって受信されたNMRデータや、収集部126aによってk空間に配置されたk空間データ、画像再構成部122によって生成された画像データなどを記憶する。例えば、記憶部123は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどである。入力部124は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力部124は、例えば、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチなどの選択デバイス、あるいはキーボードなどの入力デバイスである。表示部125は、制御部126による制御のもと、スペクトラムデータや画像データなどの各種の情報を表示する。表示部125は、例えば、液晶表示器などの表示デバイスである。
【0022】
制御部126は、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、制御部126は、入力部124を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部110に送信することによって撮像を制御する。また、制御部126は、撮像の結果としてシーケンス制御部110から送られるNMRデータに基づいて行われる画像の再構成を制御したり、表示部125による表示を制御したりする。例えば、制御部126は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
【0023】
ここで、第1の実施形態に係るMRI装置100は、第1間隔による間引きと、第1間隔より大きい第2間隔による間引きとを規則的に用いてk空間データを収集することで、撮像時間の短縮を図りつつ、再構成されるMR画像の画質を向上するものである。かかる機能は、例えば上述した制御部126内に備えられる各部による制御によって実現される。
図1に示すように、制御部126は、収集部126aと、算出部126bとを備える。
【0024】
収集部126aは、所望の解像度に対応するk空間ラインに対して、第1間隔による間引きと、第1間隔より大きい第2間隔による間引きとを規則的に用いて、k空間データを受信コイル毎(チャネル毎)に収集する。例えば、収集部126aは、シーケンス制御部110などを制御して、NMRデータを受信コイル毎(チャネル毎)に収集し、収集したNMRデータをk空間に配置して、記憶部123に格納する。このとき、収集部126aは、収集したNMRデータを、k空間の第1領域に第1間隔で配置し、第1領域より広範囲の第2領域に、第1間隔より大きい第2間隔で配置する。収集部126aによる処理の詳細は、後述する。
【0025】
算出部126bは、収集部126aによって受信コイル毎(チャネル毎)に収集され、記憶部123に格納されたk空間データを用いてMR画像を算出する。例えば、算出部126bは、画像再構成部122などを制御して、また、記憶部123に格納されたk空間データを用いて、MR画像を算出する。また、例えば、算出部126bは、算出したMR画像を表示部125に表示するように制御する。
図1に示すように、算出部126bは、k空間データ生成部126cと、MR画像算出部126dとを備える。
【0026】
k空間データ生成部126cは、収集部126aによって第2間隔による間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データを用いて、第2間隔による間引きで間引かれたk空間ラインを埋める位置のk空間データであって第1間隔のk空間データを、受信コイル毎(チャネル毎)に生成する。また、k空間データ生成部126cは、受信コイル毎(チャネル毎)に生成した第1間隔のk空間データを、MR画像算出部126dに送る。なお、k空間データ生成部126cによる処理の詳細は、後述する。
【0027】
MR画像算出部126dは、k空間データ生成部126cによって受信コイル毎(チャネル毎)に生成された第1間隔のk空間データと、第1間隔による間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データとを受信コイル毎(チャネル毎)に組み合わせて、MR画像を算出する。なお、MR画像算出部126dによる処理の詳細は、後述する。
【0028】
ここで、SENSE及びGRAPPAを説明する。一般に、SENSEの場合、MRI装置は、予めトレーニング用にk空間データを収集し、収集したk空間データを再構成し、各受信コイル(各チャネル)の感度分布(感度マップとも呼ばれる)を求めておく。例えば、MRI装置は、事前撮像(診断画像を撮像する本撮像に先行する撮像)として感度マップ撮像(キャリブレーションスキャンなどとも称される)を行ってトレーニング用のk空間データ(キャリブレーションデータなどとも称される)を収集し、感度分布を求める。トレーニング後の撮像時、MRI装置は、k空間データを等間隔で間引いて収集する。例えば、MRI装置は、偶数番目のk空間ラインのみを収集する。次に、MRI装置は、収集したk空間データで各チャネル(受信コイル毎のk空間データ)を再構成すると、折り返し(fold)されたMRI画像が得られる。その後、MRI装置は、各チャネルのMRI画像とトレーニングにより求めた感度分布とを利用して折り返し成分を分離し(unfolding)、高解像度のMRI画像を求める。間引きサンプリングを行うため、撮像時間を短縮できる。例えば、偶数番目のサンプルのみをサンプリングするなら、その撮像時間は1/2になる。SENSEにおけるunfoldの過程で生成する線形システムは、未知の画素数とコイルの数の関係によってはill-posedあるいはill-conditionedと呼ばれる線形システムになることがあり、その場合は、線形システムを安定化させるために、解に関する事前知識を導入して正則化(regularize)しても良い。
【0029】
一方、GRAPPAの場合、MRI装置は、k空間データを等間隔に間引いて収集し、間引かれたデータをk空間上で近傍のデータから推定する。この推定は、全チャネルのk空間データを利用して各チャネルの欠落データを重み付き線形和で算出する方法で行われる。その重みは、トレーニング用にk空間の一部(例えば、k空間の中心部分)をフルサンプリング(間引きなしで収集)した上で、トレーニング用のデータから算出する。
【0030】
k空間データを、対象とする原子の分布のフーリエ変換を撮像したデータと考えると、その低周波領域にあたる部分(「k空間の中心部分」と呼ぶことにする)は、高周波領域にあたる部分(「k空間の周辺部分」と呼ぶことにする)と比べて収集された値の大きさが大きくなることが知られている。SENSEやGRAPPAでは(GRAPPAのトレーニング用データを除いて)等間隔に間引くため、同一の密度でk空間の中心部分及び周辺部分を収集している。しかし、MRI画像の画質に大きく寄与するk空間の中心部分でのサンプリング密度を周辺部分よりも高くすることで、同じk空間ライン数での再構成画質を上げられると考えられる。
【0031】
可変密度でランダムに収集されたk空間データに対してパラレルイメージング技術を適用することも考えられる。しかし、例えば所望のサンプリング密度関数を生成し、それにしたがってサンプリング密度を変化させた場合、SENSEであれば、unfoldingで扱う画素数が増大する。GRAPPAであれば、推定式の数が爆発的に増大し、また疎に収集された部分の推定に多くのトレーニング用ラインも必要となる。
【0032】
第1の実施形態に係るMRI装置100は、「密な」第1間隔による間引きで収集したk空間データに対してパラレルイメージング技術を適用することで、高画質のMR画像を得ようとしている。もっとも、撮像時間との関係から、k空間ラインの全てを第1間隔による間引きで収集することは、必ずしも好ましくない。このため、第1の実施形態に係るMRI装置100は、k空間全体については、「粗い」第2間隔による間引きでk空間データを収集しつつ、k空間の中心部分については、「密な」第1間隔による間引きでk空間データを収集し、この第2間隔による間引きで収集したk空間データを用いて、間引かれたk空間ラインを埋める第1間隔のk空間データを生成する。
【0033】
ここで、第1の実施形態に係るMRI装置100は、「粗い」第2間隔のk空間データを用いて「密な」第1間隔のk空間データを生成する際にもパラレルイメージング技術を適用する。このように、第1の実施形態に係るMRI装置100は、パラレルイメージング技術を複数回適用することで高画質のMR画像を得るものであり、その目的のために、異なる間隔で間引かれたデータを、ランダムでなく規則的に収集するものである。すなわち、MRI装置100は、少なくとも第2間隔による間引きでk空間データを収集する場合には、k空間全体に亘り等間隔にデータを収集するように規則的に収集することで、パラレルイメージング技術の適用を可能にしている。なお、これは、既存のパラレルイメージング技術を流用できる形でk空間データの収集に制約を加えているともいえる。また、第1の実施形態においては、少なくとも第2間隔による間引きでk空間データを収集する場合には、k空間全体に亘り等間隔にデータを収集する例を説明するが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、MRI装置100は、第2間隔による間引きでk空間データを収集する場合に、k空間の周辺部分の一部についてはk空間データを収集せずに、ゼロフィル処理を実行してもよい。
【0034】
以下、収集部126aによる処理を詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態におけるk空間データのサンプリング間隔を説明するための図であり、等間隔のパラレルイメージング技術で用いられる収集パターンの一例を示す。なお、
図2において、kxは、周波数エンコード方向を示し、kyは、位相エンコード方向を示す。また、
図2において、kx方向に充填されるデータポイント群を表す矢印は、1k空間ラインを示す。また、実線の矢印は、間引かれずに収集されるk空間ラインを示し、破線の矢印は、間引かれることで収集されないk空間ラインを示す。
【0035】
図2の(A)に示す収集パターン201は、2k空間ラインのうち1k空間ラインを間引く(1k空間ラインのみ収集する)収集パターン(以下、「2サンプル間隔」と呼ぶ)である。また、
図2の(B)に示す収集パターン202は、4k空間ラインのうち3k空間ラインを間引く(1k空間ラインのみ収集する)収集パターン(以下、「4サンプル間隔」と呼ぶ)である。
【0036】
ここで説明する収集方法は、次の考えに基づく。以下、A、Bは1よりも大きい実数とする。また、以下においては、A、Bが整数である場合を例に説明するが、例えば、パラレルイメージング技術であるSENSEは、(foldされる画素の数が位置によって変化することを考慮すれば)整数でない間引き間隔に対しても適用できるから、SENSEを用いて構成する場合にA、Bが整数である必要はない。
【0037】
長い間隔Aの間引きで得られたk空間データに対し、間隔Aに対応した画像再構成が可能であるなら、再構成されたMR画像から、より短い間隔Bで間引きされたk空間を再生成することも可能である。したがって、より短い間隔Bにおいて収集されたデータについては真の値を、収集されていないデータについては再生成されたk空間データをそれぞれ用いて、間隔Bに対応した画像再構成も可能である。そこで、間隔Aでは全てのk空間ラインを収集するが、間隔Bでは一部のk空間ラインのみを収集することを考える。収集されるk空間ラインの数を考えると、このような収集方法(以下、第1の実施形態の収集方法)で得られたk空間データの再構成により得られるMR画像の画質は、間隔Aでの等間隔収集に対する再構成で得られるMR画像よりも高画質で、間隔Bでの等間隔収集に対する再構成で得られるMR画像よりも低画質であると考えられる。第1の実施形態の収集方法を用いる場合の画質を、収集するk空間ラインの数の増加量を抑えながら、間隔Bでの等間隔収集に近づけるには、k空間において信号強度が高い中心部分においては間隔B、信号強度が低い周辺部分においては間隔Aで収集されることが多いように、収集パターンを定めることが好ましいと考えられる。
【0038】
図3は、第1の実施形態におけるk空間データの収集パターンを示す図であり、第1の実施形態に好適な収集パターンの一例を示す。
図3に示す収集パターン301は、A=4、B=2としたときの(2次元k空間に対する)収集パターンを表している。間隔A(=4)でのk空間ライン304は全てサンプリング対象とするが、間隔B(=2)でのk空間ライン302及び303のうち、k空間の中心部分に近いk空間ライン302は収集の対象とするが、k空間の周辺部分であるk空間ライン303は収集の対象としない。
【0039】
別の例として、
図4は、第1の実施形態におけるk空間データの収集パターンを示す図であり、3次元k空間に対する収集パターンの一例を示す。なお、
図4においては、ky及びkz方向(位相エンコード方向)のみを図示しており、kx方向(周波数エンコード方向)は図示を省略している。このため、各丸印は「1」k空間ラインに相当する。また、黒丸印は、間引かれずに収集されるk空間ラインを示し、白丸印は、間引かれることで収集されないk空間ラインを示す。
【0040】
図4に示す収集パターンは、ky方向、kz方向のそれぞれについて、A=4、B=2としたときの収集パターンを表している。この収集パターンは、
図3のky方向に対するサンプリング位置を、
図4におけるky方向、kz方向のそれぞれの軸に適用し、ky方向及びkz方向の両軸で収集対象とされた位置のみ収集対象とすることで、3次元に拡張した例である。例えば位置401は収集対象とするが、位置402は収集対象としないことになる。なお、
図4においては、ky方向及びkz方向の両軸で間引きを行う収集パターンを例示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、いずれか一方の軸でのみ間引きを行い、他方の軸ではフルサンプリングするサンプリングパターンでもよい。例えば、ky方向では間引きを行うが、kz方向はフルサンプリングするサンプリングパターンでもよい。また、例えば、kz方向では間引きを行うが、ky方向はフルサンプリングするサンプリングパターンでもよい。
【0041】
なお、上記では、A=4、B=2の例を示した。すなわち、第1の実施形態に係る収集部126aは、k空間ラインを間引かずに収集する間隔が、整数回に1回(例えば、4回に1回、2回に1回)であり、且つ間隔Aが間隔Bの整数倍となるように、間隔A及び間隔Bを設定したが、例えばA=6、B=2のように2以外の比率を用いても良いし、A=3、B=1.5のようにAあるいはBとして整数以外の値を用いても良いし、A=5、B=2のようにAがBの整数倍でなくても良い。但し、AをBの整数倍に設定すると、前段のパラレルイメージングで用いたk空間データは、全て後段のパラレルイメージングで利用できることになり、間隔Bで再生成されたノイズを含む推定サンプル値を利用する数を減らせるため、AをBの整数倍に設定しない場合と比べ画質は向上すると期待できる。なお、用いる画像再構成手法によっては(例えば、GRAPPAであれば)2段階での再構成を行わなくても良い。GRAPPAを用いた例については後述する。
【0042】
[実施形態におけるサンプリング方法を用いた全体の流れ]
図5は、第1の実施形態における処理手順を示すフローチャートであり、サンプリング位置を制限する形で可変密度サンプリングをする場合に、MRI装置100で実行される画像再構成の流れを示す。
【0043】
まず、収集部126aが、k空間全体を間隔Aによる間引きで収集するとともに、k空間の中心部分を間隔Bによる間引きで収集する(ステップS501)。言い換えると、収集部126aは、間隔Aのk空間ライン全てと、間隔Bのk空間ラインの一部を含むk空間ラインの集合(k空間ラインセット)を収集する。この過程は先に説明した通りであるが、形式的には次のようにいえる。ステップS501では、A及びBを整数(A>B>=2)とするとき、次の3条件を満たすk空間ラインを収集する。(1)k空間内で間隔Aによる間引きで収集されたk空間ラインである第1k空間ラインセットを全て含む。(2)k空間内で間隔Bによる間引きで収集されたk空間ラインである第2k空間ラインセットのうち、第1k空間ラインセット内のk空間ラインとは異なるk空間ラインを1以上含む。(3)第2k空間ラインセット内のk空間ラインの総数を、間隔Bでの全てのk空間ライン数よりも小さくする。例えば、収集部126aは、シーケンス制御部110を制御することで、上述した収集を行うことができる。
【0044】
次に、算出部126bが、ステップS501において収集されたk空間データを用いてMR画像を算出する(ステップS502)。例えば、算出部126bは、画像再構成部122を制御することで、記憶部123に記憶されたk空間データを再構成してMR画像を得る。なお、算出部126bは、収集部126aによって収集される位置を何らかの方法で知っているものとする。例えば、算出部126bは、サンプリング位置を予め定めておく。また、例えば、収集部126aが、算出部126bにk空間データを送る際に、サンプリング位置についての情報を送るようにする。
【0045】
続いて、算出部126bは、ステップS502において再構成されたMR画像を表示部125に表示するように制御する(ステップS503)。
【0046】
図6は、第1の実施形態における処理手順を示すフローチャートであり、算出部126bによるMR画像の再構成方法の流れの一例を示す。また、説明図として
図7を参照しながら、MR画像の再構成方法について説明する。
【0047】
まず、k空間データ生成部126cは、収集部126aによって収集されたk空間データ(例えば、
図7に示すk空間データ701)の入力を受け付ける(ステップS601)。なお、k空間データ生成部126cが、k空間データのサンプリング位置を既知でない場合、このステップS601において、収集部126aからk空間データのサンプリング位置の情報の入力を更に受け付ければよい。
【0048】
続いて、k空間データ生成部126cは、間隔Aによる間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データを用いて、中間MR画像を再構成する(ステップS602)。なお、ここで生成したMR画像は最終出力として用いるMR画像ではないため、便宜上、中間MR画像と呼ぶことにする。例えばSENSEを用いるのであれば(SENSEで解く式の1例については後で述べる)、k空間データ生成部126cは、入力を受け付けたk空間データ701を各チャネルについて(受信コイル毎(チャネル毎)に)再構成したうえで、感度分布703を用いて間隔Aに対応したunfoldingを実行する。なお、
図7においては、間引き前の解像度で再構成した折り返し画像702を示しているが、間引き後の解像度で再構成してSENSEを実行しても良い。
【0049】
このステップS602を言い換えると、まず、k空間データ生成部126cは、間隔Aによる間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データ701それぞれを再構成して折り返し画像702それぞれを得る。続いて、k空間データ生成部126cは、折り返し画像702それぞれに、各受信コイル(各チャネル)の感度分布703をそれぞれ適用してパラレルイメージング技術のunfolding(展開)を行うことで、中間MR画像704を算出する。
【0050】
次に、k空間データ生成部126cは、ステップS602において再構成した中間MR画像を、感度分布703を用いて逆再構成する(ステップS603)。具体的には、次の手順で逆再構成を行う。中間MR画像は1枚の画像である。まず、k空間データ生成部126cは、この中間MR画像内の各画素について各感度分布703を適用し、重み付けされたチャネル毎(受信コイル毎)の中間MR画像を生成する。生成されたチャネル毎の中間MR画像はfoldingされていない画像(折り返されていない画像)であるため、k空間データ生成部126cは、folding過程を実行する(収集対象とした位置の位相に依存して決まる重みにしたがって重み付きの加算を行う。重みは離散フーリエ変換の変換式からわかる)。
【0051】
このステップS603を言い換えると、まず、k空間データ生成部126cは、算出した中間MR画像704に対して各受信コイル(各チャネル)の感度分布703をそれぞれ適用し、各受信コイル(各チャネル)の感度が反映された中間MR画像704´それぞれを算出してから、算出した中間MR画像704´それぞれを逆再構成して、k空間データを受信コイル毎(チャネル毎)に生成する。また、k空間データ生成部126cは、受信コイル毎(チャネル毎)に生成したk空間データそれぞれを間引くことで、間隔Bのk空間データ705(推定)を受信コイル毎(チャネル毎)に生成する。
【0052】
そして、MR画像算出部126dが、ステップS603において逆再構成により得られた推定k空間データ705、及びステップS601で入力として受け付けたk空間データ701を利用して、間隔Bのk空間データを(チャネル毎に)生成し、間隔Bでの再構成を行い、最終的なMR画像709を得る(ステップS604)。間隔Bでの再構成は、例えばSENSEを用い、感度分布703及び先の操作で生成したk空間データを用いてunfolding(展開)を行い、MR画像709を得る、という操作により実行できる。間隔Bのk空間データは、例えばステップS601で入力として与えられたk空間ラインについてはそのk空間データを、ステップS601の入力では欠落しているが間隔Bでの再構成に必要なk空間ラインについてはステップS603の逆再構成によって得られたk空間データを用いることができる。なお、例えば、ステップS601で入力として与えられたk空間データについては、逆再構成によって得られたk空間データとの重み付き平均を用いても良い。
【0053】
このステップS604を言い換えると、まず、MR画像算出部126dが、k空間データ生成部126cによって受信コイル毎(チャネル毎)に生成された間隔Bのk空間データ705と、収集部126aによって実際に収集されたk空間データ701のうちの間隔Bのk空間データとを組み合わせて、受信コイル毎(チャネル毎)の間隔Bのk空間データ706それぞれを生成する。なお、
図7において、間隔Bのk空間データ705と組み合わされる、実際に収集された間隔Bのk空間データは、楕円707で囲まれる中心部分の実線のk空間ラインである。また、組み合わせは、実際に収集されたk空間データによる上書処理でも良く、あるいは、両者を重み付けて組み合わせても良い。そして、MR画像算出部126dは、間隔Bのk空間データ706それぞれを再構成して折り返し画像708それぞれを得て、折り返し画像708それぞれに、各受信コイル(各チャネル)の感度分布703をそれぞれ適用してパラレルイメージング技術のunfolding(展開)を行うことで、最終出力としてのMR画像709を算出する。
【0054】
以上の説明では、画像再構成をSENSEの2段構成として実行する場合について説明したが、3段以上の構成としても良い。例えば3段構成であれば、算出部126bは、次のように再構成を実行する。算出部126bは、C及びDをC>Dを満たすAの約数として、まずA及びCに対して(つまりCを先に述べたBとして)2段階の再構成(ステップS601〜604)を行う。その後、算出部126bは、C及びDに対して(つまりDを先に述べたBとして)感度分布を用いた逆再構成(ステップS603)及び再構成(ステップS604)を実行する。なお、先に説明した例と同様に、CとDは必ずしもAの約数である必要はない。また、3段以上の構成のうち、最後の1段階については、間引きのないフルサンプリングでも良い。
【0055】
[SENSEにおけるプライアの利用]
ところで、高速撮像によってk空間の一部が欠落したk空間データからMR画像を再構成する方法として、撮像したk空間データの他にプライア(Prior)を評価し、それらを統合してMR画像を再構成する方法が知られている。プライアは、事前知識とも呼ばれる。ここで、算出部126bは、事前知識を用いて中間MR画像を算出し、且つ事前知識を用いて最終出力のMR画像を算出する場合に、中間MR画像の算出に適用される事前知識の強度(以下、適宜「プライア強度」)が、最終出力のMR画像の算出に適用されるプライア強度より高くなるように設定してもよい。なお、プライアについては、例えば、「Tsao J. et al., “Unifying Linear Prior-Information-Driven Methods for Accelerated Image Acquisition,” Mag. Reson. In Med. 46: 652-660, 2001.」を参照(特に、p.653内のTable 1. Summary of Reconstruction Methodsで、Static refererence imageと呼ばれている正則化項が利用できる)。プライア強度をλ、foldingされた入力画像をρalias、推定MR画像をρ、静的参照MR画像をρstatic(「事前知識」、「決め付け画像」とも呼ばれる)、ノイズ共分散行列をΨ、Sを感度行列、Rを正則化に用いる行列とすると、例えば、正則化を用いたSENSEは次の形で与えることができる。
【数1】
【0056】
SENSEの考え方やその詳細については、「Pruessmann K. P. et al., “SENSE:Sensitivity Encoding for Fast MRI,” Mag. Reson. In Med. 42: 952-962, 1999.」に記載されている。なお、λ=0とすれば正則化を用いないSENSEの式になる。プライアとSENSEは、例えば、SENSEで解く方程式にプライア項を追加することで組み合わせて利用できる。その際、パラメータとしてプライア強度を設定することになる。第1の実施形態における2段構成を用いる場合には、例えば前段のプライア強度を後段のプライア強度と比べ強くすることで、ノイズを生成しやすい間隔Aにおいて、SENSEのノイズを抑制できる。なお、例えば前段でλ>0、後段でλ=0としても(つまりプライアを前段のみで用いても)良い。
【0057】
なお、ここで述べたプライアの利用方法は特にSENSEに限定するものではなく、例えばk−tSENSEでも良い。また、時系列でk空間データを撮像する場合には、収集を行った各サンプリング位置で時間方向に平均をとることで平均k空間データを算出し、その平均k空間データを再構成した上で、再構成されたMR画像を静的参照MR画像として用いてもよい(「Tsao J. et al., “k-t BLAST and k-t SENSE: Dynamic MRI With High Frame Rate Exploiting Spatiotemporal Correlations, ” Mag. Reson. In Med. 50: 1031-1042, 2003.」を参照)。
【0058】
[フィルタ]
2段以上の構成を用いる場合の利点は、前段の出力に対して、高画質化操作、例えば、非線形ノイズ除去フィルタを適用できることである。
図8は、第1の実施形態の変形例における処理手順を示すフローチャートである。例えば、k空間データ生成部126cは、ステップS802の再構成処理と、ステップS804の逆再構成処理との間で、フィルタ適用ステップS803を実行できる。
【0059】
ここで利用するフィルタとしては、例えば、εフィルタがあげられる。εフィルタとは、各画素を逐次注目画素として切り替えながら、次の操作を行うフィルタであり、複素数データに対しても利用できる。まず、k空間データ生成部126cは、ステップS802において再構成された中間MR画像について、注目画素を中心とする別途定めた範囲の画素値を抽出する。次に、k空間データ生成部126cは、注目画素と周辺画素の画素値の差の大きさが一定以上であれば、周辺画素の画素値を別途定めた値(例えば注目画素自身の値)とみなし、そうでなければ周辺画素の画素値をそれ自身の画素値とみなしたうえで、周辺画素の重み付き平均をとる。εフィルタを用いれば、あまり処理量を増やさずに、輪郭を保ちながらノイズを選択的に低減できる。なお、フィルタ適用ステップS803で適用するフィルタがεフィルタである必然性はなく、他のフィルタを用いても良い。
【0060】
上述したように、第1の実施形態によれば、k空間データを適切に収集することができ、ひいてはMR画像の画質を向上することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、パラレルイメージング技術としてSENSEを用いる手法を説明してきたが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、算出部126bは、パラレルイメージング技術としてSMASH系のGRAPPAを用いても良い。
【0062】
[GRAPPAを利用した再構成]
GRAPPAを利用してMR画像の再構成が行われる場合、収集部126aは、間隔A及び間隔Bに対応するサンプリング位置のk空間データに加えて、GRAPPAのトレーニング用のデータとしてk空間の中心部分のk空間データを間引きなしで収集しておく。この場合、k空間データ生成部126cは、間隔Bのk空間データから、間隔Aのk空間データを間隔Bで補間するための補間係数を算出できる。そして、k空間データ生成部126cは、この補間係数を間隔Aのk空間データに適用することで、間引かれた位置の間隔Bのk空間データを推定する。また、k空間データ生成部126cは、トレーニング用のデータから、間隔Bのk空間データを補間するための補間係数を算出できる。そして、k空間データ生成部126cは、この補間係数を間隔Bのk空間データに適用することで、残りの位置のk空間ラインを推定する。こうして、k空間データ生成部126cは、k空間内のk空間ライン全てを推定できる。なお、この間引きなしで収集されたトレーニング用のデータのことを、「感度分布」、「キャリブレーションデータ」などと称する場合がある。
【0063】
すなわち、k空間データ生成部126cは、間隔Aによる間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データに対して、間隔Bによる間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データから導出された補間係数を適用することで、間隔Bのk空間データを受信コイル毎(チャネル毎)に推定する。この間隔Bのk空間データ(推定)は、間隔Aによる間引きで間引かれたk空間ラインを埋める位置のk空間データである。また、MR画像算出部126dは、推定された間隔Bのk空間データと、実際に収集された間隔Bのk空間データとを組み合わせた受信コイル毎(チャネル毎)のk空間データに対して補間係数を適用することで、k空間内のk空間ライン全てを推定し、MR画像を算出する。
【0064】
このように、GRAPPAを利用した場合、k空間データ生成部126cは、間隔を、任意ではなく、例えば間隔A及び間隔Bの2つに限定しているため、補間係数集合を、限定した数分(例えば、2つ)トレーニングするだけで、可変密度サンプリングを実現できるという効果がある。
【0065】
[GRAPPA及びSENSEによる多段の再構成]
また、MRI装置100は、GRAPPA及びSENSEによる多段の再構成により画像再構成を行うものとし、まず間隔が大きいGRAPPAを利用して、より小さな間隔でのSENSEに必要なk空間ラインを算出し、次にSENSEを実行して再構成を行っても良い。
【0066】
図9は、第2の実施形態におけるMR画像算出処理を示す図である。まず、第1の実施形態と同様、k空間データ生成部126cは、収集部126aによって収集されたk空間データ(例えば、
図9に示すk空間データ901)の入力を受け付ける。次に、k空間データ生成部126cは、間隔Aによる間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データに対して、間隔Bによる間引きで受信コイル毎(チャネル毎)に収集されたk空間データから導出された補間係数を適用することで、間隔Bのk空間データ902(推定)を受信コイル毎(チャネル毎)に生成する。この間隔Bのk空間データ902(推定)は、間隔Aによる間引きで間引かれたk空間ラインを埋める位置のk空間データである。
【0067】
その後は、第1の実施形態と同様であり、MR画像算出部126dが、k空間データ生成部126cによって受信コイル毎(チャネル毎)に生成された間隔Bのk空間データ902(推定)と、収集部126aによって実際に収集されたk空間データ901のうちの間隔Bのk空間データとを組み合わせて、受信コイル毎(チャネル毎)の間隔Bのk空間データ903それぞれを生成する。なお、
図9において、間隔Bのk空間データ902(推定)と組み合わされる、実際に収集された間隔Bのk空間データは、楕円904で囲まれる中心部分の実線のk空間ラインである。そして、MR画像算出部126dは、間隔Bのk空間データ903それぞれを再構成して折り返し画像905それぞれを得て、折り返し画像905それぞれに、各受信コイル(各チャネル)の感度分布906をそれぞれ適用してパラレルイメージング技術のunfolding(展開)を行うことで、最終出力としてのMR画像907を算出する。
【0068】
(他の実施形態)
実施形態は、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に限られるものではない。
【0069】
上述した実施形態においては、例えば、収集部126aが、第1間隔による間引きと、第1間隔より大きい第2間隔による間引きとを規則的に用いて、k空間データを受信コイル毎(チャネル毎)に収集することを想定した。しかしながら、実施形態はこれに限られるものではない。すなわち、実施形態は、どのようにk空間データが収集されたかに限定されるものではない。「第1領域に第1間隔で配置され、第1領域より広範囲の第2領域に、第1間隔より大きい第2間隔で配置されたk空間データ」が存在すればよい。すなわち、上述した実施形態、及び、後述する実施形態においては、「収集」を前提に説明したが、実施形態は、どのように収集されたかに限定されるものではなく、所定の配置パターでk空間に配置されたk空間データが存在すればよい。
【0070】
この場合、例えば、
図3や
図4等は、k空間データの配置パターン(サンプリングパターンなどとも称される)の一例を示す図として解釈することができる。例えば、
図3に示す配置パターン301は、第1間隔=2、第2間隔=4としたときの(2次元k空間に対する)配置パターンを表している。第2間隔(=4)でのk空間ライン304は全て配置の対象とするが、第1間隔でのk空間ライン302及び303のうち、k空間の中心部分に近いk空間ライン302は配置の対象とするが、k空間の周辺部分であるk空間ライン303は配置の対象としない。
【0071】
例えば、第1の実施形態で説明した例の場合、収集部126aは、パラレルイメージングにより収集された複数チャネル分のNMRデータを、記憶部123のk空間の第1領域に第1間隔で配置し、第1領域より広範囲の第2領域に、第1間隔より大きい第2間隔で配置する。例えば、収集部126aは、NRMデータを、k空間の中心部分に対応する第1領域に第1間隔で配置し、k空間の周辺部分を含む広範囲の第2領域に第2間隔で配置する。k空間データ生成部126cは、第2間隔のk空間データから複数チャネル分の第1折り返し画像群(例えば、
図7の702)を再構成し、第1折り返し画像群に対して複数チャネル分の感度分布(例えば、
図7の703)を適用することで、中間磁気共鳴画像(例えば、
図7の704)を再構成し、中間磁気共鳴画像を複数チャネル分の感度分布(例えば、
図7の703)に基づいて逆再構成することで、複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成する(例えば、
図7の705)。MR画像算出部126dは、第1領域に配置された第1間隔のk空間データ、及び、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データのうち、少なくとも一部のk空間データから、複数チャネル分の第2折り返し画像群(例えば、
図7の708)を再構成し、第2折り返し画像群に対して複数チャネル分の感度分布(例えば、
図7の703)を適用することで、磁気共鳴画像(例えば、
図7の709)を再構成する。
【0072】
また、例えば、第2の実施形態で説明した例(GRAPPAを利用した再構成)の場合、収集部126aは、パラレルイメージングにより収集された複数チャネル分のNMRデータを、記憶部123のk空間の第1領域に第1間隔で配置し、第1領域より広範囲の第2領域に、第1間隔より大きい第2間隔で配置する。例えば、収集部126aは、NRMデータを、k空間の中心部分に対応する第1領域に第1間隔で配置し、k空間の周辺部分を含む広範囲の第2領域に第2間隔で配置する。k空間データ生成部126cは、第2間隔のk空間データに対して、第1間隔のk空間データから導出された補間係数を適用することで、複数チャネル分の第1間隔のk空間データを生成する。MR画像算出部126dは、第1領域に配置された第1間隔のk空間データ、及び、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データのうち、少なくとも一部のk空間データに対して、感度分布から導出された補間係数を適用することで、磁気共鳴画像を再構成する。
【0073】
また、例えば、第2の実施形態で説明した例(GRAPPA及びSENSEによる多段の再構成)の場合、収集部126aは、パラレルイメージングにより収集された複数チャネル分のNMRデータを、記憶部123のk空間の第1領域に第1間隔で配置し、第1領域より広範囲の第2領域に、第1間隔より大きい第2間隔で配置する。例えば、収集部126aは、NRMデータを、k空間の中心部分に対応する第1領域に第1間隔で配置し、k空間の周辺部分を含む広範囲の第2領域に第2間隔で配置する。k空間データ生成部126cは、第2間隔のk空間データに対して、第1間隔のk空間データから導出された補間係数を適用することで、複数チャネル分の第1間隔のk空間データ(例えば、
図9の902)を生成する。MR画像算出部126dは、第1領域に配置された第1間隔のk空間データ、及び、第2間隔のk空間データに基づいて生成された第1間隔のk空間データのうち、少なくとも一部のk空間データから、複数チャネル分の第2折り返し画像群(例えば、
図9の905)を再構成し、第2折り返し画像群に対して複数チャネル分の感度分布(例えば、
図9の906)を適用することで、磁気共鳴画像(例えば、
図9の907)を再構成する。
【0074】
なお、k空間の第1領域に第1間隔で配置され、第2領域に第2間隔で配置されるタイミングは、必ずしも同じタイミングである必要はない。例えば、ある段階のk空間には、その第2領域に第2間隔でk空間データが配置されていればよい。言い換えると、この段階において、k空間の第1領域に第1間隔のk空間データが配置されていなくてもよい。例えば、k空間データ生成部126cは、この段階で、この第2間隔のk空間データから第1間隔のk空間データを生成する処理を実行することができる。第1領域に第1間隔でk空間データを配置する処理は、k空間データ生成部126cによる処理の前後に行ってもよいし、並行して行ってもよい。並行して行う場合、配置からMR画像再構成までの全体の処理時間を短縮することができる。更に、実施形態は、第1間隔でk空間データが配置されるk空間と、第2間隔でk空間データが配置されるk空間とが、同一のk空間でない場合を含む。
【0075】
[時系列データのサンプリング]
上述した実施形態においては、時系列でない、2次元又は3次元のk空間データを収集する場合を例に説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。実施形態に係るMRI装置100は、時系列に並ぶ所定フレーム数のk空間データ(以下、適宜「時系列データ」)を収集する場合にも、上述した各種処理を実行できる。例えば、収集部126aは、時系列データを収集する場合に、間隔Aによる間引きと間隔Bによる間引きとを位相エンコード方向に規則的に用いてk空間データを収集するとともに、間隔Aによる間引きと間隔Bによる間引きとを時間方向にも規則的に用いてk空間データを収集する。また、収集部126aは、時系列データを収集する場合に、間引かれずに収集されるk空間ラインの位置をフレーム毎に変更する。
【0076】
図10は、他の実施形態におけるk空間データのサンプリング間隔を示す図であり、例えばk−tSENSEで用いられるようなサンプリング位置の例を示す。なお、
図10においては、ky方向(位相エンコード方向)及び時間方向のみを図示しており、kx方向(周波数エンコード方向)は図示を省略している。このため、各丸印は「1」k空間ラインに相当する。また、黒丸印は、間引かれずに収集されるサンプリング位置1001を示す。また、点線の枠1002〜1005は、それぞれ、時刻t=1〜4において収集されたk空間データであることを示す。k−tSENSEについては、「Tsao J. et al., “k-t BLAST and k-t SENSE: Dynamic MRI With High Frame Rate Exploiting Spatiotemporal Correlations, ” Mag. Reson. In Med. 50: 1031-1042, 2003.」を参照。
【0077】
図10に示す例の場合、収集部126aは、各時刻tについて、間隔A=4(4サンプル間隔)、間隔B=2(2サンプル間隔)として位相エンコード方向のサンプリング位置を定めている。また、収集部126aは、4サンプル間隔で収集を行う部分(k空間の周辺部分)については周期4で(4時刻単位で)、2サンプル間隔で収集を行う部分(k空間の中心部分)については周期2で(2時刻単位で)、サンプリング位置を順に変化させる。すなわち、収集部126aは、時間方向についても、間隔Aによる間引きと間隔Bによる間引きとを規則的に用いてk空間データを収集する。このように、収集部126aは、時間方向の周期的なサンプリング位置を、サンプル間隔A及びサンプル間隔Bの両方について確保できるので、k−tSENSEをそのまま用いることができる。
【0078】
なお、k空間データの充填方法は、必ずしも
図10に示すように、左から右の順である必要はなく、例えば、右から左の順であっても良い。より一般的には、各時刻のk空間データをフレームと呼ぶものとして、収集部126aは、時系列に並ぶ連続するAフレーム分のサンプリング位置を重ね合わせた場合に、k空間内の全サンプリング位置と一致するように、サンプリング位置を定めれば良い。このように、収集部126aは、位相エンコード方向のサンプリング位置を時系列で切り替えながらk空間データを収集する。
【0079】
[他の構成]
また、上述した実施形態においては、医用画像診断装置であるMRI装置100が各種処理を実行する場合を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、MRI装置100に替わり、画像処理装置や、MRI装置100と画像処理装置とを含む画像処理システムが、上述した各種処理を実行してもよい。ここで、画像処理装置とは、例えば、ワークステーション、PACS(Picture Archiving and Communication System)の画像保管装置(画像サーバ)やビューワ、電子カルテシステムの各種装置などである。この場合、例えば、画像処理装置は、MRI装置100によって収集されたk空間データを、MRI装置100から、若しくは、画像サーバからネットワーク経由で受信することで、あるいは、記録媒体を介して操作者から入力されることなどで、受け付けて、記憶部に記憶する。そして、画像処理装置は、記憶部に記憶したこのk空間データを対象として、上述した各種処理(例えば、算出部126bによる処理)を実行すれば良い。なお、上述した実施形態においては、MR画像を表示部125に表示する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではなく、MRI装置100は、MR画像を算出後、表示することなく、例えば記憶部123に画像データを出力するなどして、処理を終了しても良い。この場合、例えば、MRI装置100や画像処理装置によって算出されたMR画像は、他の装置などによって利用される。
【0080】
[プログラム]
上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態のMRI装置や画像処理装置による効果と同様な効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータ又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピュータは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態のMRI装置や画像処理装置と同様な動作を実現することができる。もちろん、コンピュータがプログラムを取得する場合又は読み込む場合はネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
【0081】
また、記憶媒体からコンピュータや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(ミドルウェア)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
【0082】
さらに、記憶媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0083】
また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0084】
なお、実施形態におけるコンピュータ又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。
【0085】
また、実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0086】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置、画像処理装置、システム及び方法によれば、k空間データの収集を適切に行うことができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。